JPH11106939A

JPH11106939A - アクリル樹脂含有金属表面処理組成物、処理方法及び処理金属材料

Info

Publication number: JPH11106939A
Application number: JP26555297A
Authority: JP
Inventors: Yasuhiro Shibata; 康弘柴田; Tomoyuki Sugata; 智之菅田; Atsuhiko Touchiyuu; 敦彦當仲; Susumu Maekawa; 進前川; Kiyotada Yasuhara; 清忠安原
Original assignee: Nippon Paint Co Ltd
Current assignee: Nippon Paint Co Ltd
Priority date: 1997-09-30
Filing date: 1997-09-30
Publication date: 1999-04-20

Abstract

(57)【要約】【課題】耐食性や塗膜密着性を改善し、更にすべり性
を付与する金属表面処理組成物を提供する。【解決手段】水溶性、水分散性又はエマルション性の
いずれかであって、少なくともアミノ基もしくはアンモ
ニウム基のいずれか一方、水酸基及び疎水基を含むアク
リル樹脂と、重金属又はその塩と、を含有することを特
徴とするアクリル樹脂含有金属表面処理組成物である。
前記アクリル樹脂内のアミノ基もしくはアンモニウム基
は、少なくとも下記化１又は化２に示す構造を有する。【化１】【化２】

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はアクリル樹脂含有金
属表面処理組成物、処理方法及び処理金属材料、特に耐
食性、塗膜密着性やすべり性（「潤滑性」ともいう）を
改良したアクリル樹脂含有金属表面処理組成物、処理方
法及び処理金属材料に関する。

【０００２】

【従来の技術】食缶、自動車のボディー、鋼板のコイル
コーティング、建材等の金属材の表面処理として、従来
はリン酸塩処理、クロメート処理やノンクロメート処理
等が行われていた。例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム等
の金属表面の塗料、接着剤等の有機皮膜を塗布する際
に、前処理としてリン酸塩処理によって金属表面にリン
酸塩皮膜を形成させる。次いで、塗料等の有機皮膜をそ
の上面に塗布することによって耐食性、塗膜密着性を向
上できる。しかし、従来のリン酸塩処理方法等における
金属表面処理組成物は、耐食性、塗膜密着性やすべり性
が必ずしも近年の要求に対して十分ではなかった。

【０００３】そこで、通常更に耐食性の向上を図るため
に、リン酸塩処理の後、プライマー塗料を塗布してから
塗料を塗装する方法が行われていた。しかし、プライマ
ーを塗装すると、耐食性及び塗膜密着性は向上するもの
の、塗装工程が増加して作業が煩雑になると共に、塗装
コストが高くなるという課題を有していた。

【０００４】そこで、高度な耐食性及び塗膜密着性を付
与しつつ、プライマー塗装を省略することを目的とする
金属表面処理剤として、例えば特開平５−１１７８６９
号公報の「複合皮膜形成用金属表面処理剤」が提案され
ている。上記公報の金属表面処理剤は、陽イオン性窒素
原子を１個以上含み、分子量が１，０００〜１，００
０，０００である陽イオン性有機高分子化合物又はその
塩を含有するリン酸塩表面処理液からなることが開示さ
れている。

【０００５】また、特開昭５１−７３９３８号公報の
「アルミニウム及びその合金の表面処理法」には、特
に、表面処理を行う金属をアルミニウム等に限定して、
耐食性及び塗膜密着性を付与することを目的とする金属
表面処理法が提案されている。この金属表面処理法は、
酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸等の水溶性樹
脂又はエマルション樹脂を含む有機高分子皮膜形成物質
と、水溶性チタン化合物とを主成分とする処理液を用い
ることが記載されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記金
属表面処理剤や処理法は、従来の金属表面処理剤に比べ
れば耐食性及び塗膜密着性が向上するものの、近年の要
求水準には未だ到達していない。

【０００７】特に、アルミニウム又はその合金を用いて
食缶を製造する場合には、上記金属表面処理剤等では、
ジャミング防止が図れず、また鋼板のコイルコーティン
グにおいては、潤滑性に欠けるという問題点があった。

【０００８】本発明は、耐食性や塗膜密着性を改善し、
更にすべり性を付与するアクリル樹脂含有金属表面処理
組成物、処理方法及び処理金属材料を提供することを目
的としたものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ために、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組
成物は、水溶性、水分散性又はエマルション性のいずれ
かであって、少なくともアミノ基もしくはアンモニウム
基のいずれか一方、水酸基及び疎水基を含むアクリル樹
脂と、重金属又はその塩と、を含有する。

【００１０】従って、重金属又はその塩からなる無機皮
膜によって透水性が抑制されるので、耐食性が向上す
る。また、アクリル樹脂の中のアミノ基もしくはアンモ
ニウム基は、（重）金属に配位するので、上記無機皮膜
は、アクリル樹脂を介して相互に連結される。従って、
無機皮膜の凝集破壊が防止され、ほぼ均一な塗装下地用
皮膜を金属表面に形成させることができる。このため、
塗装下地用皮膜と上塗塗膜との密着性が向上する。本発
明における塗装下地用皮膜とは、アクリル樹脂によって
連結された上記無機皮膜からなる金属表面に形成された
皮膜をいう。更に、上記アクリル樹脂が塗装下地用皮膜
表面にほぼ均一に存在するので、摩擦抵抗を下げること
ができ、すべり性を向上させることができる。

【００１１】また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物は、前記アクリル樹脂内のアミノ基もし
くはアンモニウム基が、少なくとも下記化７又は化８に
示す構造を有する。

【００１２】

【化７】

【化８】更に、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記アクリル樹脂が、分子量１０００当り、アミ
ノ基及びアンモニウム基から選ばれる少なくとも１種を
１〜１０個、水酸基を１〜１０個、疎水基を１〜５個、
を含有する。

【００１３】また、アクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記アクリル樹脂に含まれるアミノ基もしくはア
ンモニウム基が、少なくとも下記化９又は化１０に示す
構造のモノマーを共重合させることにより導入される。

【００１４】

【化９】

【化１０】また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記アクリル樹脂に含まれる水酸基が、少なくと
も下記化１１に示す構造のモノマーを共重合させること
により導入される。

【００１５】

【化１１】また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記アクリル樹脂に含まれる疎水基が、少なくと
も下記化１２に示す構造のモノマーを共重合させること
により導入される。

【００１６】

【化１２】更に、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記重金属が、ジルコニウム、モリブデン、タン
グステン、ニオブ、ニッケル、コバルト、マンガン、タ
ンタルの少なくとも１種である。

【００１７】また、本発明に係る金属表面処理方法は、
上記アクリル樹脂含有金属表面処理組成物を金属表面に
接触させ、引き続き水洗・乾燥させることを特徴とす
る。

【００１８】更に、本発明に係る表面処理金属材料は、
上記アクリル樹脂含有金属表面処理組成物を用いて表面
処理されたことを特徴とする。

【００１９】

【発明の実施の形態】本発明に係るアクリル樹脂含有金
属表面処理組成物は、水溶性、水分散性又はエマルショ
ン性のいずれかであって、少なくともアミノ基もしくは
アンモニウム基のいずれか一方、水酸基及び疎水基を含
むアクリル樹脂と、重金属又はその塩と、を含有する。
より好ましくは、アクリル樹脂含有金属表面処理組成物
は、前記アクリル樹脂内のアミノ基もしくはアンモニウ
ム基が、少なくとも下記化１３又は化１４に示す構造を
有する。

【００２０】

【化１３】

【化１４】また、本発明におけるアクリル樹脂の分子量は、５００
〜１００，０００であり、好ましくは１，０００〜２
０，０００である。分子量が５００未満の場合には、耐
食性が低下する。一方、分子量が１００，０００を越え
ると、親水性が低下する。

【００２１】また、本発明において、金属表面処理組成
物に対してアクリル樹脂の含有量は、０．０１〜１０ｇ
／ｌであり、好ましくは０．１〜５ｇ／ｌである。アク
リル樹脂の含有量が０．０１ｇ／ｌ未満の場合には、バ
インダー効果が発揮されず、塗装下地用皮膜の物理的な
耐久性が低下する。一方、アクリル樹脂の含有量が１０
ｇ／ｌを超えると、塗装下地用皮膜と金属表面との密着
性が低下する。

【００２２】また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物は、前記アクリル樹脂が、分子量１００
０当り、アミノ基及び／又はアンモニウム基を１〜１０
個と、水酸基を１〜１０個と、疎水基を１〜５個と、を
含有する。分子量１０００当りアミノ基及び／又はアン
モニウム基が１個未満の場合には、親水性及び金属への
付着性が低下する。一方、分子量１０００当りアミノ基
及び／又はアンモニウム基が１０個を超えると、耐食性
が低下する。

【００２３】また、分子量１０００当り水酸基が１個未
満の場合には、親水性及び塗膜密着性が低下する。一
方、分子量１０００当り水酸基が１０個を超える場合に
は、耐食性が低下する。更に、分子量１０００当り疎水
基が１個未満の場合には、耐食性及びすべり性が低下す
る。一方、分子量１０００当り疎水基が５個を超える場
合には、親水性及び塗膜密着性が低下する。

【００２４】また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物は、前記アクリル樹脂に含まれるアミノ
基もしくはアンモニウム基は、少なくとも下記化１５又
は化１６に示す構造のモノマーを共重合させることによ
り導入される。

【００２５】

【化１５】

【化１６】また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記アクリル樹脂に含まれる水酸基が、少なくと
も下記化１７に示す構造のモノマーを共重合させること
により導入される。

【００２６】

【化１７】更に、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記アクリル樹脂に含まれる疎水基が、少なくと
も下記化１８に示す構造のモノマーを共重合させること
により導入される。

【００２７】

【化１８】本発明におけるアクリル樹脂含有金属表面処理組成物中
のアクリル樹脂としては、以下に示すモノマーの共重合
体が好適である。すなわち、（１）アミノ基（アンモニ
ウム基）含有アクリルモノマーとしては、Ｎ，Ｎ−ジメ
チルアミノエチル（メタ）アクリレート、Ｎ，Ｎ−ジエ
チルアミノエチル（メタ）アクリレート、（メタ）アク
リルアミド、Ｎ，Ｎ−ジメチルアクリルアミド、Ｎ−メ
チロールアクリルアミド、Ｎ−メチルアミノプロピル
（メタ）アクリルアミド、Ｎ，Ｎ−ジメチルアミノプロ
ピル（メタ）アクリルアミド、Ｎ−エチルアミノプロピ
ル（メタ）アクリルアミド、Ｎ，Ｎ−ジエチルアミノプ
ロピル（メタ）アクリルアミド、及びこれらのクロライ
ド塩等が挙げられる。

【００２８】また、（２）水酸基含有アクリルモノマー
としては、２−ヒドロキシエチル（メタ）アクリレー
ト、ヒドロキシプロピル（メタ）アクリレート、４−ヒ
ドロキシブチル（メタ）アクリレート、２，３−ジヒド
ロキシプロピル（メタ）アクリレート等が挙げられる。

【００２９】（３）疎水基含有モノマーとしては、ｎ−
ブチル（メタ）アクリレート、ｉ−ブチル（メタ）アク
リレート、ｔ−ブチル（メタ）アクリレート、ｎ−ヘキ
シル（メタ）アクリレート、２−エチルヘキシル（メ
タ）アクリレート、ラウリル（メタ）アクリレート、ス
テアリル（メタ）アクリレート、シクロヘキシル（メ
タ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレー
ト、スチレン、ｐ−ｔ−ブチルスチレン、ビニルトルエ
ン、ビニルフェノール、ベンジル（メタ）アクリレート
等が挙げられる。

【００３０】（４）その他、更に加えてよいモノマーと
しては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタ
コン酸、アクリロニトリル等が挙げられる。

【００３１】上記モノマーからなる共重合体の共重合比
は、アミノ基（アンモニウム基）含有アクリルモノマー
が５〜６０重量％、水酸基含有アクリルモノマーが２０
〜８０重量％、疎水基含有モノマーが５〜５０重量％、
その他のモノマーが０〜３０重量％である。好ましく
は、アミノ基（アンモニウム基）含有アクリルモノマー
が２０〜４０重量％、水酸基含有アクリルモノマーが３
０〜６０重量％、疎水基含有モノマーが２０〜４０重量
％である。

【００３２】上記共重合体におけるアミノ基（アンモニ
ウム基）含有アクリルモノマーの共重合比が５重量％未
満の場合には、親水性が低下し又、アクリル樹脂と重金
属又はその塩とからなる無機皮膜同士の連結性が低下す
る。一方、上記共重合体におけるアミノ基（アンモニウ
ム基）含有アクリルモノマーの共重合比が６０重量％を
超えると、耐食性が低下する。

【００３３】また、上記共重合体における水酸基含有ア
クリルモノマーの共重合比が２０重量％未満の場合に
は、親水性及び塗膜密着性が低下する。一方、上記共重
合体における水酸基含有アクリルモノマーの共重合比が
８０重量％を超える場合には、耐食性は低下する。

【００３４】更に、上記共重合体における疎水基含有モ
ノマーの共重合比が５重量％未満の場合には、すべり性
及び耐食性が低下する。一方、上記共重合体における疎
水基含有モノマーの共重合比が５０重量％を超える場合
には、親水性及び塗膜密着性が低下する。

【００３５】重金属また、本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処理組成
物は、前記重金属が、ジルコニウム（Ｚｒ）、モリブデ
ン（Ｍｏ）、タングステン（Ｗ）、ニオブ（Ｎｂ）、ニ
ッケル（Ｎｉ）、コバルト（Ｃｏ）、マンガン（Ｍ
ｎ）、タンタル（Ｔａ）の少なくとも１種である。上記
重金属の供給源は、上記重金属の錯フッ化物が好まし
く、その他硝酸塩、リン酸塩も挙げられる。

【００３６】本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処
理組成物に対して重金属の錯フッ化物の含有量は、０．
０１〜１０ｇ／ｌが好ましい。重金属の錯フッ化物の含
有量が０．０１ｇ／ｌ未満の場合には、耐食性が低下す
る。一方、重金属の錯フッ化物の含有量が１０ｇ／ｌを
超える場合にも、耐食性が低下する。

【００３７】本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処
理組成物は、更にリン酸又はリン酸塩を含有してもよ
い。リン酸又はリン酸塩としては、Ｈ₃ＰＯ₄、Ｎａ₃
ＰＯ₄、Ｎａ₂ＨＰＯ₄、ＮａＨ₂ＰＯ₄、（ＮＨ₄）
₃ＰＯ₄等が挙げられる。上記アクリル樹脂含有金属表
面処理組成物に対してリン酸又はリン酸塩の含有量は、
０．０１〜２０ｇ／ｌであり、好ましくは、０．０５〜
０．１ｇ／ｌである。リン酸又はリン酸塩の含有量が
０．０１ｇ／ｌ未満の場合には、耐食性が低下する。リ
ン酸又はリン酸塩の含有量が２０ｇ／ｌを超えると、塗
膜密着性が低下する。

【００３８】本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面処
理組成物は、必要に応じて、以下のエッチング剤やエッ
チング助剤を含有してもよい。

【００３９】エッチング剤エッチング剤としては、フッ化水素及びその塩が挙げら
れる。そして、このエッチング剤は、金属表面処理組成
物に対して０．００５〜０．５ｇ／ｌ含有してもよい。
エッチング剤の含有量が０．００５ｇ／ｌ未満の場合に
は、エッチング性が不足し、塗装下地用皮膜が十分に金
属表面に形成されない。一方、エッチング剤の含有量が
０．５ｇ／ｌを超えると、エッチングが過多になる。

【００４０】エッチング助剤エッチング助剤としては、過酸化水素（Ｈ₂Ｏ₂）、亜
硝酸（ＨＮＯ₂）、ＨＢＦ₄及びその塩が挙げられる。
そして、このエッチング助剤のうち過酸化水素（Ｈ₂Ｏ
₂）、亜硝酸（ＨＮＯ₂）、又はその塩は、金属表面処
理組成物に対して０．００５〜５ｇ／ｌ含有してもよ
い。含有量が０．００５ｇ／ｌ未満の場合には、耐食性
が低下する。一方、含有量が５ｇ／ｌを超えても、耐食
性が低下する。また、ＨＢＦ₄又はその塩は、金属表面
処理組成物に対して０．００３〜０．２ｇ／ｌ含有する
のが好ましい。含有量が０．００３ｇ／ｌ未満の場合に
は、耐食性が低下する。一方、含有量が０．２ｇ／ｌを
超えても、耐食性が低下する。

【００４１】処理条件と処理方法本発明に係る金属表面処理方法は、上記アクリル樹脂含
有金属表面処理組成物を金属表面に接触させ、引き続き
水洗・乾燥させる。また、上記金属表面処理組成物のｐ
Ｈは、約２．０〜５．０であり、好ましくは２．５〜
３．５である。この時、ｐＨの調整は、ＮａＯＨ、アン
モニア水溶液、硝酸等により行う。本発明の金属表面処
理組成物と金属材料との接触温度は、常温（例えば２０
℃）〜９０℃、好ましくは３５〜６５℃である。一般に
は、金属材料と本発明に係るアクリル樹脂含有金属表面
処理組成物との接触時間は、接触温度が高いほど短くな
る。

【００４２】金属材料に対してスプレー塗布を行う場
合、約５秒間〜５分間、好ましくは１０〜６０秒間本発
明の組成物と接触させるのが一般的である。浸漬法を用
いる場合には、上記接触時間より長い接触時間を要す
る。その他、フローコート法、ロールコート法で接触さ
せても良い。

【００４３】上記のように、表面処理を施された金属材
料は、水洗され、乾燥工程が入る。乾燥温度は１５０〜
２４０℃であり、乾燥温度が１５０℃未満では、耐食性
が低下する。上記水洗については、金属材料と本発明の
組成物とを接触させた後、表面処理された金属材料を水
洗し、化成皮膜とならなかった本発明の組成物を除去す
る。本発明によれば、無機−有機化成皮膜を一段処理で
得ることができる。

【００４４】更に、本発明の好ましい他の実施態様を以
下に示す。

【００４５】１．重金属は、ジルコニウム、ニオブ、マ
ンガン、タンタルの少なくとも１種であることを特徴と
する金属表面処理組成物である。

【００４６】２．アクリル樹脂の分子量は、５００〜１
００，０００であることを特徴とする金属表面処理組成
物である。

【００４７】３．本発明の金属表面処理組成物に対する
アクリル樹脂の含有量は、０．０１〜１０ｇ／ｌであ
る。

【００４８】４．本発明の金属表面処理組成物に対する
アクリル樹脂の含有量は、０．１〜５ｇ／ｌである。

【００４９】５．アクリル樹脂共重合体のモノマーの共
重合比は、アミノ基（アンモニウム基）含有アクリルモ
ノマーが５〜６０重量％、水酸基含有アクリルモノマー
が２０〜８０重量％、疎水基含有モノマーが５〜５０重
量％、その他のモノマーが０〜３０重量％である。

【００５０】６．アクリル樹脂共重合体中のアミノ基
（アンモニウム基）含有アクリルモノマーが２０〜４０
重量％、水酸基含有アクリルモノマーが３０〜６０重量
％、疎水基含有モノマーが２０〜４０重量％である。

【００５１】７．重金属の供給源は、その重金属の錯フ
ッ化物、硝酸塩、リン酸塩である。８．本発明の金属表面処理組成物に対して重金属の錯フ
ッ化物の含有量は、０．０１〜１０ｇ／ｌである。

【００５２】９．更に、リン酸又はリン酸塩を含有する
ことを特徴とする金属表面処理組成物である。

【００５３】１０．上記「９．」のリン酸又はリン酸塩
は、Ｈ₃ＰＯ₄、Ｎａ₃ＰＯ₄、Ｎａ₂ＨＰＯ₄、Ｎａ
Ｈ₂ＰＯ₄、（ＮＨ₄）₃ＰＯ₄であることを特徴とす
る金属表面処理組成物である。

【００５４】１１．本発明の金属表面処理組成物に対し
てリン酸又はリン酸塩の含有量は、０．０１〜２０ｇ／
ｌである。

【００５５】１２．更に、エッチング剤を含有すること
を特徴とする金属表面処理組成物である。

【００５６】１３．エッチング剤は、フッ化水素及びそ
の塩であることを特徴とする金属表面処理組成物であ
る。

【００５７】１４．エッチング剤の含有量は、本発明の
金属表面処理組成物に対して０．００５〜５ｇ／ｌであ
る。

【００５８】１５．更に、エッチング助剤を含有するこ
とを特徴とする金属表面処理組成物である。

【００５９】１６．エッチング助剤は、過酸化水素（Ｈ
₂Ｏ₂）、亜硝酸（ＨＮＯ₂）、ＨＢＦ₄及びその塩で
ある。

【００６０】１７．過酸化水素（Ｈ₂Ｏ₂）、亜硝酸
（ＨＮＯ₂）、又はその塩の含有量は、本発明の金属表
面処理組成物に対して０．００５〜５ｇ／ｌである。

【００６１】１８．ＨＢＦ₄又はその塩の含有量は、本
発明の金属表面処理組成物に対して０．００３〜０．２
ｇ／ｌである。

【００６２】

【実施例】次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を
具体的に説明する。

【００６３】実施例１〜１１及び比較例１〜３（１）被処理物：Ａｌ−Ｍｎ系（ＪＩＳ−Ａ３００４）
アルミニウム合金板をＤＩ加工等して得られた成型缶。

【００６４】（２）表面処理皮膜評価方法：ａ）耐沸水黒変性：ここで沸水黒変性とは、食缶（アル
ミ缶）における、殺菌のために行う水道水等による沸水
処理時に、未塗装部の素地が水中の金属と作用して黒色
化する現象に対する耐性をいう。

【００６５】本実施例及び比較例の組成物によって表面
処理を行った金属材料を沸騰水道水中に３０分間浸漬し
た後の外見評価を次の基準で行った。

【００６６】 ○ ：外観の変化なし △ ：僅かに黒変 × ：黒変ｂ）表面処理皮膜表面のすべり性：本実施例の方法で表
面処理を行った金属材料を「ＨＥＩＤＯＮ−１４型」試
験機で５ｍｍφ鋼球、荷重５０ｇ、触針速度３００ｍｍ
／ｍｉｎ．で動摩擦係数を求めた。

【００６７】 ○ ：０．６未満 △ ：０．６〜０．８ × ：０．８を超える場合ｃ）上塗り塗膜密着性：バーコーターによってＢＡＳＦ
社製塗料（ＥＢ−７０−００１Ｎ１５０ｍｇ／ｍ²／Ｅ
Ｂ−６９−００２Ｎ６０ｍｇ／ｍ²）を処理金属材料
に塗装する。そしてこの塗装された金属材料を、ウェッ
ジベンディング加工し、折れ曲り部をニチバン製セロテ
ープによりテープ剥離した時の塗膜剥離評価を次の基準
で行った。

【００６８】 ○ ：テープ剥離幅が１５ｍｍ未満 △ ：テープ剥離幅が１５〜２０ｍｍ × ：テープ剥離幅が２０ｍｍを超える。

【００６９】（３）金属表面処理条件：（実施例１）Ａｌ−Ｍｎ系（ＪＩＳ−Ａ３００４）成型
缶を３０ｇ／ｌ濃度の酸性脱脂剤（「サーフクリーナー
ＮＨＣ２５０」、日本ペイント（株）製）を用いて７５
℃、６０秒スプレーの条件で脱脂した後、水洗した。次
に、リン酸ジルコニウム系処理剤（「アルサーフ４４
０」、日本ペイント（株）製）を２０ｇ／ｌに希釈した
水溶液に、表１に示す水溶性アクリル樹脂を０．５ｇ／
ｌ溶解させて本発明の金属表面処理組成物を作製し、そ
の組成物を用いて、５０℃で２０秒間スプレー処理を行
った。その後、水道水で水洗し、１９０℃で２分間加熱
乾燥を行った。その評価結果を表３に示す。

【００７０】（実施例２〜１１及び比較例１〜３）実施
例２〜１１及び比較例１〜３は、表１に示した水溶性ア
クリル樹脂と重金属の錯フッ化物とを、表２に示す配合
量で作製された金属表面処理組成物であって、これらの
組成物を上述の実施例１に準じて、表面処理を行った。
その評価結果を表３に示す。

【００７１】

【表１】註）ＨＥＡ：２−ヒドロキシエチルアクリレートＨＥＭＡ：２−ヒドロキシエチルメタクリレートＨＢＡ：４−ヒドロキシブチルアクリレートＤＭＡＥＡ：Ｎ，Ｎ−ジメチルアミノエチルアクリレー
トＤＭＡＥＭＡ：Ｎ，Ｎ−ジメチルアミノエチルメタクリ
レートＤＭＡＰＡＡ：Ｎ，Ｎ−ジメチルアミノプロピルアクリ
ルアミドＤＭＡＰＭＡ：Ｎ，Ｎ−ジメチルアミノプロピルメタク
リルアミドＮＢＡ：ｎ−ブチルアクリレートＥＨＡ：２−エチルヘキシルアクリレートＣＨＭＡ：シクロヘキシルメタクリレートＬＭＡ：ラウリルメタクリレートＳＭＡ：ステアリルメタクリレートＴＢＭＡ：ｔ−ブチルメタクリレート

【表２】註）アルサーフ４４０；リン酸ジルコニム系処理剤、日
本ペイント（株）製

【表３】これらの結果から、本発明の金属表面処理用組成物によ
れば、耐沸水黒変性、すべり性、上塗塗膜密着性のいず
れの性能も従来のものと比べ向上していることが判明し
た。

【００７２】

【発明の効果】以上のように、本発明に係る金属表面処
理組成物によれば、重金属又はその塩からなる無機皮膜
によって透水性が抑制されるので、耐食性が向上する。
また、アクリル樹脂中のアミノ基（アンモニウム基）
は、（重）金属に配位するので、上記無機皮膜は、アク
リル樹脂を介して相互に連結される。従って、無機皮膜
の凝集破壊を防止することができ、ほぼ均一な塗装下地
用皮膜を金属表面に形成することができる。このため、
塗装下地用皮膜と上塗塗膜との密着性が向上する。ここ
で、塗装下地用皮膜とは、金属表面に形成されたアクリ
ル樹脂によって連結された上記無機皮膜からなる皮膜を
いう。更に、上記アクリル樹脂が塗装下地用皮膜表面に
ほぼ均一に存在するので、摩擦抵抗を下げることがで
き、すべり性を向上させることができる。

【００７３】従って、本発明に係る金属表面処理組成物
によれば、従来に比べ著しく耐食性や塗膜密着性を改善
することができ、更にすべり性を付与することができ
る。また、本発明の金属表面処理組成物によれば、アル
ミニウム又はその合金を用いて食缶を製造する場合に
は、ジャミングを防止することができ、コイルコーティ
ングにおいては、潤滑性を付与することができる。

【００７４】本発明の金属表面処理組成物は、食缶、自
動車のボディー、鋼板のコイルコーティング、建材等の
金属表面処理に用いることができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者前川進東京都品川区南品川４丁目１番地15号日本ペイント株式会社東京事業所内 (72)発明者安原清忠東京都品川区南品川４丁目１番地15号日本ペイント株式会社東京事業所内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】水溶性、水分散性又はエマルション性の
いずれかであって、少なくともアミノ基もしくはアンモ
ニウム基のいずれか一方、水酸基及び疎水基を含むアク
リル樹脂と、重金属又はその塩と、を含有することを特
徴とするアクリル樹脂含有金属表面処理組成物。
【請求項２】請求項１に記載のアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物において、前記アクリル樹脂内のアミノ基もしくはアンモニウム基
は、少なくとも下記化１又は化２に示す構造を有するこ
とを特徴とするアクリル樹脂含有金属表面処理組成物。【化１】【化２】
【請求項３】請求項１又は請求項２に記載のアクリル
樹脂含有金属表面処理組成物において、前記アクリル樹脂は、分子量１０００当り、アミノ基及
びアンモニウム基から選ばれる少なくとも１種を１〜１
０個、水酸基を１〜１０個、疎水基を１〜５個、を含有
することを特徴とするアクリル樹脂含有金属表面処理組
成物。
【請求項４】請求項１に記載のアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物において、前記アクリル樹脂に含まれるアミノ基もしくはアンモニ
ウム基は、少なくとも下記化３又は化４に示す構造のモ
ノマーを共重合させることにより導入されることを特徴
とするアクリル樹脂含有金属表面処理組成物。【化３】【化４】
【請求項５】請求項１に記載のアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物において、前記アクリル樹脂に含まれる水酸基の少なくとも一つ
は、下記化５に示す構造のモノマーを共重合させること
により導入されることを特徴とするアクリル樹脂含有金
属表面処理組成物。【化５】
【請求項６】請求項１に記載のアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物において、前記アクリル樹脂に含まれる疎水基の少なくとも一つ
は、下記化６に示す構造のモノマーを共重合させること
により導入されることを特徴とするアクリル樹脂含有金
属表面処理組成物。【化６】
【請求項７】請求項１に記載のアクリル樹脂含有金属
表面処理組成物において、前記重金属は、ジルコニウム、モリブデン、タングステ
ン、ニオブ、ニッケル、コバルト、マンガン、タンタル
の少なくとも１種であることを特徴とするアクリル樹脂
含有金属表面処理組成物。
【請求項８】請求項１から請求項７のいずれかに記載
のアクリル樹脂含有金属表面処理組成物を金属表面に接
触させ、引き続き水洗・乾燥させることを特徴とする金
属表面処理方法。
【請求項９】請求項１から請求項７のいずれかに記載
のアクリル樹脂含有金属表面処理組成物を用いて表面処
理されたことを特徴とする表面処理金属材料。