JPH11106218A - 磁気記録媒体用金属磁性粉末 - Google Patents

磁気記録媒体用金属磁性粉末

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JPH11106218A
JPH11106218A JP9268957A JP26895797A JPH11106218A JP H11106218 A JPH11106218 A JP H11106218A JP 9268957 A JP9268957 A JP 9268957A JP 26895797 A JP26895797 A JP 26895797A JP H11106218 A JPH11106218 A JP H11106218A
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JP
Japan
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iron oxide
hydroxide
magnetic powder
weight
slurry
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JP9268957A
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English (en)
Inventor
Michihito Igaki
通人 井垣
Ryoichi Hashimoto
良一 橋本
Kenichi Suzuki
憲一 鈴木
Shigeo Fujii
滋夫 藤井
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】粒径が小さく、高保磁力、高飽和磁化及び狭磁
化反転磁界分布を有し、耐酸化性に優れ、粒子同士の凝
集や融着がなく、分散性良好で、高充填可能な金属磁性
粉末、それに用いる含水酸化鉄、それを用いた磁性記録
媒体を提供すること。 【解決手段】第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液とを
混合し、得られた第一鉄含有沈殿物アルカリ性懸濁液中
に酸素含有ガスを通気し、得られた含水酸化鉄スラリー
のpHを6以下に調整し、分散させる含水酸化鉄の製
法、該含水酸化鉄の表面に酸化物又は水酸化物の被膜を
形成し、該含水酸化鉄を水洗し、炭素化合物被膜を形成
し、不活性ガス雰囲気中で加熱脱水し、還元性ガスで還
元し、酸素含有ガスで酸化する金属磁性粉末の製造方
法、該金属磁性粉末及び樹脂結合剤を基体に塗布してな
る磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、含水酸化鉄および
その製造方法、該含水酸化鉄を用いた金属磁性粉末、そ
の製造方法およびそれを含有する磁気記録媒体に関す
る。さらに詳しくは、高密度磁気記録媒体の中でも特に
短波長領域で高出力を必要とする磁気記録媒体、該磁気
記録媒体に好適に用いられる金属磁性粉末およびその製
造方法、ならびに該金属磁性粉末に用いられる含水酸化
鉄およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種の記録方式の発展には著しい
ものがあるが、なかでも磁気記録再生装置の小型軽量化
の進歩は顕著である。それにつれて、磁気テープ、磁気
ディスク等の磁気記録媒体に対する高性能化の要求が大
きくなってきている。磁気記録媒体に、このような要求
を満足させるためには、高い保磁力と高い飽和磁化を有
する磁性粉末が必要である。
【0003】そこで、従来、磁気記録媒体用の磁性粉末
には、一般に針状のマグネタイト、マグヘマイトまたは
これらの粉末をコバルトで変性させた、いわゆるコバル
ト含有酸化鉄が用いられているが、近年、より高出力を
有する磁気記録媒体を得るために、より高い保磁力およ
び飽和磁化を持つ強磁性の金属磁性粉末(メタル磁性
粉)が開発されており、前記金属磁性粉末は、オーディ
オ用メタルテープ、8mmVTR用メタルテープ、デジ
タルオーディオテープ(DAT)、デジタルデータスト
レージテープ(DDS)、業務用磁気記録テープなどに
広く用いられている。
【0004】最近では、小型軽量化、長時間記録化およ
び高画質化が図られた磁気記録装置の開発が盛んに行な
われており、かかる装置に対応した磁気テープにも、高
性能化および高密度記録化、換言すれば高出力化、特に
短波長領域での高出力化および低ノイズ化が求められて
いる。
【0005】磁気記録媒体の高出力化を図るためには、
一般に、用いられる金属磁性粉末の保磁力および飽和磁
化を高くする必要がある。
【0006】前記保磁力を高くするためには、金属磁性
粉末の粒子サイズを小さくさせるとともに、軸比(長軸
径/短軸径)を増大させ、形状異方性を高くし、さらに
該金属磁性粉末の粒子内部の結晶子サイズを短軸径に近
づけるように大きく成長させる必要がある。
【0007】また、前記飽和磁化を高くするためには、
一般に、金属磁性粉末の粒子内部になるべく非磁性成分
を含有させずに、粒子の酸化を防止させる必要があり、
そのためには、粒子表層の酸化被膜の緻密さ、厚さ等に
工夫を施す必要がある。
【0008】一方、磁気記録媒体の低ノイズ化を図るた
めには、金属磁性粉末の粒子径を微細化させることが有
効である。すなわち、磁気記録媒体の単位体積あたりの
粒子数を多くすることにより、ノイズの低減化を図るこ
とができることが一般に知られている。また、金属磁性
粉末の粒子の分散性は、テープの表面性に大きな影響を
与えるため、凝集や融着がない単分散粒子は、磁気記録
媒体の低ノイズ化を図るための重要な因子の1つであ
る。
【0009】また、粒子の磁気特性のなかでは狭保磁力
分布特性が重要であるため、磁気特性が均質な金属磁性
粉末の開発が、磁気記録媒体の高出力化および低ノイズ
化の観点から待ち望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に鑑みてなされたものであり、粒子径が非常に小さ
く、高保磁力、高飽和磁化および狭磁化反転磁界分布
(狭保磁力分布)を有し、耐酸化性に優れ、粒子同士の
凝集や融着がみられず、分散性が良好で、しかも高充填
が可能な金属磁性粉末およびその製造方法、該金属磁性
粉末に用いられる含水酸化鉄およびその製造方法、なら
びに該金属磁性粉末が用いられた磁性記録媒体を提供す
ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、(1) 第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水溶液と
を混合し、得られた第一鉄含有沈殿物のアルカリ性懸濁
液中に酸素含有ガスを通気したのち、得られた含水酸化
鉄スラリーのpHを6以下に調整し、分散させることを
特徴とする含水酸化鉄の製造方法、(2) 炭酸アルカ
リが、炭酸カリウムまたは炭酸水素カリウムである前記
(1)記載の含水酸化鉄の製造方法、(3) 炭酸アル
カリ水溶液が水酸化アルカリを含有するものである前記
(1)記載の含水酸化鉄の製造方法、(4) 水酸化ア
ルカリが、水酸化カリウムである前記(3)記載の含水
酸化鉄の製造方法、(5) 第一鉄塩水溶液が、第一鉄
塩のFe100重量部に対して水可溶性コバルト塩のC
o0.1〜45重量部の割合で、水可溶性コバルト塩を
溶解させたものである前記(1)〜(4)いずれか記載
の含水酸化鉄の製造方法、(6) アルカリ性懸濁液を
外部循環させながら、該アルカリ性懸濁液に酸素含有ガ
スを通気する前記(1)〜(5)いずれか記載の含水酸
化鉄の製造方法、(7) 含水酸化鉄スラリーを外部循
環させて分散させながら、該含水酸化鉄スラリーのpH
を6以下に調整する前記(1)〜(6)いずれか記載の
含水酸化鉄の製造方法、(8) 前記(1)〜(7)い
ずれか記載の含水酸化鉄の製造方法によって製造されて
なる含水酸化鉄、(9) 前記(8)記載の含水酸化鉄
の表面に酸化物または水酸化物の被膜を形成させ、酸化
物または水酸化物の被膜が形成された含水酸化鉄を水洗
した後、該酸化物または水酸化物の被膜上に炭素化合物
の被膜を形成させ、不活性ガス雰囲気中で加熱脱水さ
せ、還元性ガスで還元させ、ついで酸素含有ガスで酸化
させることを特徴とする金属磁性粉末の製造方法、(1
0) 含水酸化鉄が、長軸径0.05〜0.25μmお
よび軸比〔長軸径/短軸径〕4〜12を有する紡錘状含
水酸化鉄である前記(9)記載の金属磁性粉末の製造方
法、(11) 酸化物または水酸化物の被膜中に、含水
酸化鉄のFe100重量部に対して、Co0.1〜45
重量部、希土類元素1〜15重量部、ならびにAlおよ
び/またはSi1〜8重量部が含有されてなる前記
(9)または(10)記載の金属磁性粉末の製造方法、
(12) 含水酸化鉄として含水酸化鉄スラリーを用
い、該含水酸化鉄スラリーとコバルト化合物とを混合
し、得られた混合液とアルカリとを混合し、該含水酸化
鉄の表面にコバルト化合物の被膜を形成させる前記
(9)〜(11)記載の金属磁性粉末の製造方法、(1
3) アルカリが水酸化カリウムまたは炭酸カリウムで
ある前記(12)記載の金属磁性粉末の製造方法、(1
4) 酸化物または水酸化物の被膜が形成された含水酸
化鉄におけるナトリウムおよびカリウムの含有量が0.
1重量%以下、イオウおよび塩素の含有量が200pp
m以下となるまで水洗を行なう前記(9)〜(13)い
ずれか記載の金属磁性粉末の製造方法、(15) 炭素
化合物の被膜に含まれる炭素量が、含水酸化鉄のFe1
00重量部に対して0.5〜8重量部である前記(9)
〜(14)いずれか記載の金属磁性粉末の製造方法、
(16) 前記(9)〜(15)いずれか記載の製造方
法によって得られた金属磁性粉末、(17) 前記(1
6)記載の金属磁性粉末および樹脂結合剤を基体に塗布
してなる磁気記録媒体に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の含水酸化鉄の製造方法に
よれば、第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水溶液とを混
合し、得られた第一鉄含有沈殿物のアルカリ性懸濁液中
に酸素含有ガスを通気したのち、得られた含水酸化鉄ス
ラリーのpHを6以下に調整し、分散させることによ
り、含水酸化鉄が得られる。
【0013】前記第一鉄塩水溶液に用いられる第一鉄塩
としては、例えば、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一
鉄、酢酸第一鉄などがあげられる。これらの第一鉄塩
は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いるこ
とができる。
【0014】前記第一鉄塩水溶液における第一鉄塩の濃
度は、通常、含水酸化鉄を効率よく得る観点から、0.
1mol/リットル以上、好ましくは0.2mol/リ
ットル以上であることが望ましく、粒度分布が均質な含
水酸化鉄を得る観点から、1.0mol/リットル以
下、好ましくは0.6mol/リットル以下であること
が望ましい。
【0015】なお、本発明においては、前記第一鉄水溶
液には、水可溶性コバルト塩が溶解されていることが好
ましい。前記水可溶性コバルト塩が第一鉄水溶液に溶解
されている場合には、得られる含水酸化鉄の耐酸化性を
向上させることができるという利点がある。
【0016】前記水可溶性コバルト塩としては、例え
ば、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸
コバルトなどがあげられる。これらの水可溶性コバルト
塩は、単独でまたは2種以上を混合して用いることがで
きる。
【0017】前記第一鉄水溶液に溶解される水可溶性コ
バルト塩の量は、得られる含水酸化鉄の耐酸化性を向上
させる観点から、第一鉄塩のFe100重量部に対し
て、水可溶性コバルト塩のCoが0.1重量部以上、好
ましくは5重量部以上となるように調整することが望ま
しく、また得られる含水酸化鉄粒子の凝集が生じないよ
うにする観点から、第一鉄塩のFe100重量部に対し
て、水可溶性コバルト塩のCoが45重量部以下、好ま
しくは40重量部以下となるように調整することが望ま
しい。
【0018】前記炭酸アルカリ水溶液に用いられる炭酸
アルカリには、特に限定がない。
【0019】前記炭酸アルカリとしては、例えば、炭酸
ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸
水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどがあげられ
る。これらの炭酸アルカリは、単独でまたは2種以上を
混合して用いることができる。これらの炭酸アルカリの
なかでは、金属被膜の形成の容易さおよび粒子同士の凝
集を防止する観点から、カリウムを原料とするものが好
ましく、なかでも炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウム
が特に好ましい。
【0020】前記炭酸アルカリ水溶液における炭酸アル
カリの濃度は、得られる含水酸化鉄の粒子形状の均質性
を保持するために、0.6N以上、好ましくは0.8N
以上であることが望ましく、また1.4N以下、好まし
くは1.2N以下であることが望ましい。
【0021】なお、本発明においては、得られる含水酸
化鉄の軸比を高くするために、前記炭酸アルカリ水溶液
には、水酸化アルカリが含有されていることが好まし
い。
【0022】前記水酸化アルカリとしては、例えば、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム
などがあげられる。これらの水酸化アルカリは、単独で
または2種以上を混合して用いることができる。これら
の水酸化アルカリのなかでは、金属被膜の形成の容易さ
および粒子同士の凝集を防止する観点から、水酸化カリ
ウムが特に好ましい。
【0023】前記炭酸アルカリと水酸化アルカリとの比
率は、樹枝状粒子の混在を防ぎ、粒度分布が均質な含水
酸化鉄粒子を得る観点から、アルカリ混合比(〔O
- 〕/2〔CO3 2-〕:当量比)が0.5以下となる
ように調整することが好ましく、また得られる含水酸化
鉄の粒子形態の均質性を保持する観点から、0.1以上
となるように調整することが好ましい。
【0024】前記炭酸アルカリおよび水酸化アルカリの
合計使用量は、均質な粒度分布を有する含水酸化鉄を得
る観点から、第一鉄塩1当量に対して1当量以上、好ま
しくは1.2当量以上であることが望ましく、また経済
性の観点から、第一鉄塩1当量に対して4当量以下、好
ましくは3当量以下であることが望ましい。
【0025】前記第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水溶
液とを混合することによって第一鉄含有沈殿物のアルカ
リ性懸濁液が得られる。
【0026】前記第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水溶
液とを混合する方法には、特に限定がない。本発明にお
いては、例えば、外部循環分散機が配設された気泡攪拌
槽内に、前記第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水溶液と
を添加し、攪拌することにより、混合する方法などを採
用することができる。
【0027】混合する際の温度は、粒度分布が均質であ
り、かつ粒子形態が均質な所望の形状を有する含水酸価
鉄を得るために、通常、20〜60℃程度であることが
好ましい。
【0028】なお、第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水
溶液とを混合する際には、混合時の第一鉄化合物の酸化
を防止するために、例えば、窒素ガス、アルゴンガスな
どの不活性ガスを通気することにより、あらかじめ溶存
酸素を除去しておくことが好ましい。
【0029】また、得られた第一鉄含有沈殿物のアルカ
リ性懸濁液中に酸素含有ガスを通気する前には、あらか
じめ熟成を行なうことが、粒径の制御を安定して行なう
ことができるので好ましい。
【0030】前記熟成を行なう場合、熟成温度は、通
常、20〜60℃程度であり、後述する酸化反応温度と
同一の温度であることが、操作上好ましい。熟成時間
は、熟成の効果を充分に発現させる観点から、30分間
以上、好ましくは60分間以上であることが望ましく、
また必要以上に長く熟成させてもそれ以上の熟成の向上
効果が望めず、かえって生産効率の低下を招くので、4
00分間以下であることが好ましい。
【0031】次に、得られた第一鉄含有沈澱物のアルカ
リ性懸濁液中に酸素含有ガスを通気するが、前記アルカ
リ性懸濁液中に酸素含有ガスを通気するに先だって、前
記アルカリ性懸濁液のpHは、所望の均質な形態を有す
る含水酸化鉄を得るために、7〜11に調整しておくこ
とが好ましい。
【0032】前記アルカリ性懸濁液のpHは、例えば、
前記炭酸アルカリや水酸化アルカリの量を調整すること
によって容易に調節することができる。
【0033】前記第一鉄含有沈澱物のアルカリ性懸濁液
中に通気する酸素含有ガスには、特に限定がない。かか
る酸素含有ガスとしては、例えば、空気、酸素ガス、空
気と酸素ガスとの混合ガス、空気と窒素ガスとの混合ガ
ス、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスなどがあげられ
る。
【0034】前記酸素含有ガスの流量は、特に限定がな
いが、通常、前記アルカリ性懸濁液1リットルあたり、
0.001〜10リットル/分程度であればよい。
【0035】なお、アルカリ性懸濁液中に酸素含有ガス
を通気する際の該アルカリ性懸濁液の液温は、前記熟成
を行なう場合と同様に、通常、20〜60℃程度であれ
ばよい。
【0036】前記アルカリ性懸濁液に酸素含有ガスを通
気する際に用いる反応器としては、例えば、通常の気泡
塔反応器、攪拌気泡塔反応器などの気液接触型反応器、
外部循環分散機が配設された反応器、分散機を経由する
外部循環分散機が設置された反応器などがあげられる。
これらの反応器のなかでは、分散機を経由する外部循環
分散機が設置された反応器は、得られる含水酸化鉄粒子
の均質性および分散性を高める観点から、好適に使用し
うるものである。
【0037】したがって、本発明においては、例えば、
前記外部循環分散機などを用いて前記アルカリ性懸濁液
を外部循環させながら、前記アルカリ性懸濁液に酸素含
有ガスを通気することが、得られる含水酸化鉄粒子の均
質性および分散性を高める観点から好ましい。
【0038】また、反応器内のアルカリ性懸濁液を充分
に分散させるために、分散機を用いることが好ましい。
前記分散機としては、分散性を高める観点から、例え
ば、10000/s以上の高剪断力を有するものが好ま
しい。ここで、高剪断力とは、生成した含水酸化鉄の粒
子の核が、一次粒子に成長する段階において、少なくと
も一次粒子同士が凝集しないようにするために必要とさ
れる剪断力をいう。
【0039】かくして前記アルカリ性懸濁液中に酸素含
有ガスを通気することにより、含水酸化鉄スラリーを得
ることができる。
【0040】なお、本発明においては、得られた含水酸
化鉄スラリーを、必要により、イオン交換水などで洗浄
し、濾過することにより、含水酸化鉄を回収してもよ
い。このように含水酸化鉄を回収した場合には、該含水
酸化鉄と水とを混合することにより、含水酸化鉄スラリ
ーを得ることができる。
【0041】次に、前記含水酸化鉄スラリーのpHを6
以下、好ましくは5.5以下に調整する。
【0042】本発明においては、このように前記含水酸
化鉄スラリーのpHを調整する点に、1つの大きな特徴
があり、かかる操作が採られていることにより、含水酸
化鉄が非常に均一に分散され、しかもかかる含水酸化鉄
を用いて金属磁性粉を製造した時には、分散性およびS
FD〔Switching field distribution〕に優れた金属磁
性粉を得ることができる。
【0043】前記含水酸化鉄スラリーのpHを調整する
方法としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸
の酸溶液を前記含水酸化鉄スラリーに添加する方法など
があげられる。
【0044】なお、pHを調整する際には、例えば、分
散機が配設された循環ラインが設けられた攪拌槽を用い
ることができる。かかる攪拌槽を用いて前記含水酸化鉄
スラリーを外部循環させて分散させながら、前記含水酸
化鉄スラリーに酸溶液を添加し、前記含水酸化鉄スラリ
ーのpHを調整した場合には、含水酸化鉄が速やかに、
かつ均一に分散するという利点がある。
【0045】前記pHの下限値は、特に限定がないが、
経済性の観点から、通常、3以上、好ましくは4以上で
あることが望ましい。
【0046】前記含水酸化鉄スラリーのpHを調整する
ことにより、酸処理が施された含水酸化鉄スラリーを速
やかに、かつ均一に分散させるために、含水酸化鉄がフ
ロックなどの形成による凝集を起こさず、含水酸化鉄が
沈降しなくなるまで、例えば、ラインホモミキサー、マ
イルダーなどを用いて分散させることが好ましい。
【0047】また、アルカリ性懸濁液を充分に分散させ
るために、分散機を用いることが好ましい。前記分散機
としては、分散性を高める観点から、例えば、1000
0/s以上、好ましくは20000/s以上の高剪断力
を有するものが望ましい。
【0048】かくして、均質でかつ高分散性を有する紡
錘状含水酸化鉄スラリーを得ることができる。
【0049】得られた含水酸化鉄スラリーを、必要によ
り、イオン交換水などで洗浄し、濾過することにより、
紡錘状含水酸化鉄を回収することができる。
【0050】前記紡錘状含水酸化鉄の形状は、例えば、
透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察した場合、長軸
径0.05〜0.25μmおよび軸比〔長軸径/短軸
径〕4〜12を有する。このように、前記紡錘状含水酸
化鉄は、特定の形状および大きさを有することから、従
来の針状形状を有する含水酸化鉄のようにデンドライト
構造が多数存在することがないので、均質な磁気特性を
有する。
【0051】前記「紡錘状」とは、一般に使用されてい
る「針状」と対比される用語であり、その長軸方向の中
央部分が大きく、その端部に向かうにしたがって細くな
る形状をいう。具体的には、その粒子の長軸に沿う面上
への投影図形がほぼ楕円形状であることをいう。
【0052】また、前記「針状」とは、短軸の長さが長
軸方向に対してほぼ一定である形状をいう。具体的に
は、その粒子の長軸に沿う面上への投影図形がほぼ長方
形であり、その角が丸められた形状を有するものをい
う。
【0053】なお、金属磁性粉末は、高温で熱処理され
たり、還元条件下で粒子内焼結された場合には、多少変
形し、先端部の形状が丸くなることがあるが、紡錘状お
よび針状の定義は、前記と同様である。
【0054】次に、前記で得られた紡錘状含水酸化鉄ス
ラリー、または必要により前記紡錘状含水酸化鉄を回収
したのち水中に添加して得られた紡錘状含水酸化鉄スラ
リーを用い、該含水酸化鉄の表面に酸化物または水酸化
物の被膜を形成させ、酸化物または水酸化物の被膜が形
成された含水酸化鉄を水洗した後、該酸化物または水酸
化物の被膜が形成された被膜上に炭素化合物の被膜を形
成させ、不活性ガス雰囲気中で加熱脱水させ、還元性ガ
スで還元させ、ついで酸化させることにより、金属磁性
粉末を得ることができる。
【0055】前記酸化物または水酸化物の被膜に用いら
れる原料化合物としては、例えば、Co(コバルト)、
希土類元素、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)な
どの元素を含む化合物があげられる。
【0056】前記コバルトを含む化合物としては、例え
ば、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸
コバルトなどのコバルト化合物があげられる。かかるコ
バルト化合物は、通常、水溶液で用いることができる。
【0057】前記希土類元素としては、例えば、Y、L
a、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dyなどがあげら
れ、これらのなかでは、安価であり、かつ得られる金属
磁性粉末の結晶子サイズを大きくし、磁気特性を良好に
するとともに、該金属磁性粉末を用いて形成された塗膜
の磁気特性も良好にするという優れた性質を有すること
から、Laが特に好ましい。前記希土類元素を含む化合
物の原料としては、例えば、希土類元素酸化物などの希
土類元素化合物があげられる。かかる希土類元素化合物
は、通常、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸などに溶解させて溶
液として用いることができる。
【0058】前記アルミニウムを含む化合物としては、
例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化ア
ルミニウム、酢酸アルミニウムなどの無機酸アルミニウ
ム塩などのアルミニウム化合物があげられる。かかるア
ルミニウム化合物は、通常、水溶液で用いることができ
る。
【0059】前記ケイ素を含む化合物としては、例え
ば、水ガラスなどのケイ素化合物があげられる。かかる
ケイ素化合物は、通常、水性溶液または水溶液で用いる
ことができる。
【0060】前記原料化合物は、それぞれ単独でまたは
2種以上を混合して用いることができる。
【0061】前記含水酸化鉄の表面に酸化物または水酸
化物の被膜を形成させる方法は、前記原料化合物の種類
などによって異なるので、一概には決定することができ
ない。
【0062】例えば、前記原料化合物として、Co(コ
バルト)、希土類元素、Al(アルミニウム)、Si
(ケイ素)などの元素を含む化合物を用いる場合には、
以下の方法によって被膜を形成させることができる。
【0063】前記含水酸化鉄の表面に、コバルト化合物
の被膜を形成させる場合には、含水酸化鉄として含水酸
化鉄スラリーを用い、該含水酸化鉄スラリーとコバルト
化合物とを混合し、得られた混合液とアルカリとを混合
し、該含水酸化鉄の表面にコバルト化合物の被膜を形成
させる方法などを採用することができる。
【0064】前記含水酸化鉄スラリーとコバルト化合物
との混合割合は、所望の保磁力および飽和磁化を得ると
同時に耐酸化性を高めるために、形成されるコバルト化
合物の被膜に含有されるコバルト〔Co〕量が、前記含
水酸化鉄のFe100重量部に対して0.1重量部以
上、好ましくは5重量部以上となるように調整すること
が望ましく、また粒子同士が凝集しがたくし、分散性を
向上させると同時に、保磁力、保磁力分布などの磁気特
性を向上させるために、形成されるコバルト化合物の被
膜に含有されるコバルト〔Co〕量が、前記含水酸化鉄
のFe100重量部に対して45重量部以下、好ましく
は30重量部以下となるように調整することが望まし
い。
【0065】前記アルカリは、コバルト化合物の被膜を
沈着させるために用いられる。
【0066】前記アルカリとしては、例えば、水酸化ナ
トリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリ
ウム、アンモニアなどがあげられる。これらのアルカリ
のなかでは、被膜の形成の容易さ、粒子同士の凝集を防
止する観点から、水酸化カリウム、炭酸カリウムなどの
カリウムを含有するアルカリが特に好ましい。前記アル
カリは、通常、水溶液として用いることができる。
【0067】前記混合液とアルカリとの混合割合は、通
常、定量的にコバルト化合物の被膜を形成させる観点か
ら、前記混合液のpHが9以上となるようにアルカリを
使用することが好ましく、また経済性の点から、前記混
合液のpHが13以下となるようにアルカリを使用する
ことが好ましい。
【0068】前記被膜を沈着させた後には、優れた磁気
特性を有する金属磁性粉末を再現性よく得るために、例
えば、空気などを前記混合液に通気することにより、前
記被膜に含まれているコバルトを酸化させ、酸化コバル
トの被膜を形成させることができる。なお、このように
酸化させる際には、得られる金属磁性粉末の保磁力を調
整するために、例えば、硝酸カルシウム、酢酸カルシウ
ムなどの無機酸カルシウム塩などの水溶液を、前記含水
酸化鉄のFe100重量部に対してカルシウム〔Ca〕
量が0.1〜2重量部程度となるように、添加すること
が好ましい。
【0069】前記含水酸化鉄の表面に、希土類元素、な
らびにアルミニウムおよび/またはSiを含有する被膜
を形成させる場合には、該被膜を形成させる原料化合物
の水溶液を添加し、分散させたのち、得られた混合液を
pH7.5〜10程度のアルカリ性に調整することによ
り、前記含水酸化鉄の表面に、希土類元素、ならびにア
ルミニウムおよび/またはSiを含有する被膜を形成さ
せることができる。
【0070】形成される被膜における希土類元素の量
は、金属磁性粉末の融着および凝集を防止し、形状を保
持させる観点から、前記含水酸化鉄のFe100重量部
に対して1重量部以上、好ましくは2重量部以上である
ことが望ましく、また保磁力、保磁力分布などの磁気特
性を向上させる観点から、前記含水酸化鉄のFe100
重量部に対して15重量部以下、好ましくは13重量部
以下であることが望ましい。
【0071】また、形成される被膜におけるアルミニウ
ムおよび/またはケイ素の量は、金属磁性粉末の融着お
よび凝集を防止し、形状を保持させる観点から、前記含
水酸化鉄のFe100重量部に対して1重量部以上、好
ましくは2重量部以上であることが望ましく、また保磁
力、保磁力分布などの磁気特性、耐酸性および分散性を
向上させる観点から、前記含水酸化鉄のFe100重量
部に対して8重量部以下、好ましくは7重量部以下であ
ることが望ましい。
【0072】次に、かくして酸化物または水酸化物の被
膜が形成された含水酸化鉄をイオン交換水などを用いて
水洗する。
【0073】前記水洗を行なう方法には、特に限定がな
く、例えば、ロータリーフィルタープレス、デカンテー
ションなどにより、イオン交換水などで洗浄する方法な
どがあげられる。
【0074】なお、本発明においては、洗浄の際に生じ
た洗浄水の電気伝導度が100μS/cm以下となるま
で洗浄を行なうことが、得られる金属磁性粉末の粒子形
状の変形や、粒子同士の凝集を防止し、また希土類元素
の被着効果を高める観点から好ましい。
【0075】また、前記洗浄水に含有されるナトリウム
およびカリウムの含有量が0.1重量%以下となるまで
洗浄することが、得られる金属磁性粉末の粒子形状の変
形や、粒子同士の凝集を防止し、また希土類元素の被着
効果を高める観点から好ましく、またイオウおよび塩素
の含有量が200ppm以下となるまで洗浄すること
が、得られる金属磁性粉末の粒子形状の変形や、粒子同
士の凝集を防止し、また希土類元素の被着効果を高める
観点から好ましい。
【0076】なお、ナトリウムおよびカリウムの含有量
は、例えば、原子吸光分析法によって定量することがで
きる。
【0077】また、イオウおよび塩素の含有量は、IC
P〔誘導結合高周波プラズマ分光〕分析により、各原子
の発光強度によって定量することができる。なお、金属
磁性粉末に含有される塩素の含有量は、該金属磁性粉末
を硫酸、塩酸などの無機酸に溶解させた後、得られた溶
液を硝酸銀溶液による電位差滴定法、イオンクロマトグ
ラフィなどによって定量することができる。これらの定
量法のなかでは、検出感度の点から、該塩素の含有量が
200ppm以下である場合には、イオンクロマトグラ
フィが好ましい。
【0078】かくして、表面に酸化物または水酸化物の
被膜が形成された含水酸化鉄を得ることができる。
【0079】次に、本発明においては、酸化物または水
酸化物の被膜が形成された含水酸化鉄の表面には、さら
に炭素化合物の被膜を形成させる。このように、炭素化
合物の被膜を形成させた場合には、得られる金属磁性粉
末の粒子同士の凝集、融着などを防止することができ
る。
【0080】前記炭素化合物としては、含水酸化鉄粒子
に対して吸着力を呈するものであればよい。かかる吸着
力は、含水酸化鉄に対して静電気的引力、化学反応など
による化学的吸着力および物理的吸着力のいずれであっ
てもよい。
【0081】前記炭素化合物としたは、例えば、ポリカ
ルボン酸およびその塩、オクタン酸などの長鎖カルボン
酸およびその塩、ポリエチレンイミン、アルキルアミン
塩などがあげられる。これらの炭素化合物のなかでは、
ポリカルボン酸およびその塩ならびに長鎖カルボン酸お
よびその塩は、含水酸化鉄の表面に対して優れた吸着能
を呈するばかりでなく、優れた分散能を付与し、均一に
被着しやすいので、本発明においては好適に使用しうる
ものである。
【0082】前記炭素化合物の被膜に含まれる炭素量
は、後述の熱処理、還元および安定化の各操作におい
て、含水酸化鉄の粒子が凝集したり、融着することを防
止するために、含水酸化鉄のFe100重量部に対して
0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上であること
が望ましく、また熱処理時および還元時に加熱脱水反応
および還元反応をそれぞれ充分に進行させ、金属磁性粉
末の磁気特性が劣化することを防止する観点から、含水
酸化鉄のFe100重量部に対して8重量部以下、好ま
しくは3重量部以下であることが望ましい。
【0083】前記炭素化合物の被膜を形成させる方法に
は、特に限定がない。例えば、前記炭素化合物が水溶性
のポリカルボン酸塩やポリエチレンイミンである場合に
は、該炭素化合物をあらかじめ水に溶解させ、その水溶
液を含水酸化鉄スラリーに添加し、攪拌した後、濾過す
る方法などがあげられる。また、前記炭素化合物がオレ
イン酸、オクタン酸などの長鎖カルボン酸である場合に
は、該長鎖カルボン酸をアルカリと反応させて水に対し
て可溶化させた後、これを水に溶解させ、得られた水溶
液を含水酸化鉄スラリーに添加し、攪拌した後、濾過す
る方法などがあげられる。
【0084】前記炭素化合物の被膜を形成させたのち、
該含水酸化鉄を不活性ガス雰囲気中で加熱脱水させる。
【0085】前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガ
ス、アルゴンガスなどの不活性ガスがあげられる。
【0086】前記加熱脱水させる際の加熱温度は、脱水
孔が生成するのを防止する観点から、400℃以上であ
ることが好ましく、また粒子同士が融着するのを防止す
る観点から、700℃以下であることが好ましい。ま
た、加熱時間は、加熱温度によって異なるので一概には
決定することができないが、通常、0.5〜4時間程
度、なかんづく1〜2時間程度であることが好ましい。
【0087】前記含水酸化鉄を不活性ガス雰囲気中で加
熱脱水させる際には、例えば、固定床型炉、回転炉型
炉、流動床型炉、移動床型炉などを用いることができ
る。
【0088】かくして、加熱脱水させた後には、前記含
水酸化鉄を還元性ガスで還元させる。
【0089】前記還元性ガスとしては、通常、還元の際
に用いられているものであればよく、その代表例として
は、水素ガス、COガスなどがあげられる。
【0090】前記還元性ガスは、例えば、窒素ガス、ア
ルゴンガスなどの不活性ガスに代表される不活性希釈ガ
スで適宜希釈されたものであってもよい。前記不活性希
釈ガスを用いる場合、例えば、還元性ガスが水素ガスで
あるときには、前記希釈性ガスに含まれる還元性ガスの
濃度が1容量%以上であることが、反応速度、使用温度
範囲などの観点から好ましい。
【0091】前記還元性ガスの圧力は、通常、1〜1.
5気圧程度の常圧であればよい。
【0092】前記還元性ガスのガス線速度は、還元原料
である造粒物1kgあたり、反応速度の観点から、40
cm/秒以上、好ましくは50cm/秒以上とすること
が望ましく、また反応物の飛散を抑制し、経済性を高め
る観点から、150cm/秒以下、好ましくは100c
m/秒以下であることが望ましい。
【0093】前記含水酸化鉄を還元させる際の温度は、
反応を促進させ、粒子内部の金属結晶子を成長させる観
点から、350℃以上であることが好ましく、また、粒
子の融着、凝集防止および形状の保持の観点から、55
0℃以下であることが好ましい。また、加熱時間は、還
元時の加熱温度によって異なるので一概には決定するこ
とができないが、通常、0.25時間以上、好ましくは
0.5〜5時間程度であることが望ましい。
【0094】かくして、還元させた後には、前記含水酸
化鉄の表層を酸素含有ガス雰囲気中で酸化させる。
【0095】前記酸素含有ガスとしては、例えば、酸素
ガス含有窒素ガス、酸素ガス含有ヘリウムガス、酸素ガ
ス含有CO2 ガスなどがあげられる。かかる酸素含有ガ
ス中に含まれる酸素ガス濃度は、得られる金属磁性粉末
が安定に大気中で取り扱うことができる酸化被膜を形成
させる観点から、50ppm以上、なかんづく100p
pm以上であることが好ましく、また必要以上に厚い酸
化被膜を形成し、磁気特性の低下を引き起こさないよう
にするために、1000ppm以下、なかんづく500
ppm以下であることが好ましい。
【0096】前記含水酸化鉄の炭素化合物被膜を酸素含
有ガスで酸化させる際の温度は、通常、室温〜150℃
程度、なかんづく30〜120℃程度であることが好ま
しい。また、前記酸素含有ガスのガス線速度および通気
時間は、特に限定がない。ガス線速度は5〜15cm/
秒であることが好ましく、また通気時間は、10〜20
時間程度であればよい。
【0097】かくして得られる金属磁性粉末は、表面に
酸化層を有するので、耐酸化性および磁気特性に優れた
ものである。
【0098】前記金属磁性粉末は、例えば、透過型電子
顕微鏡(TEM)などで観察した場合、長軸径が0.0
5〜0.25μmであり、軸比〔長軸径/短軸径〕が4
〜12である紡錘状を有する。また、前記金属磁性粉末
は、粒子内部の結晶子サイズが140〜180Åであ
り、比表面積35〜70m2 /g、保磁力(Hc)15
0kA/m以上、SFD0.7〜1.3および飽和磁化
(σs)0.140〜0.190mWb・m/kgを有
する。
【0099】このように、前記金属磁性粉末は、特定の
形状および大きさを有することから、従来の針状形状を
有する金属磁性粉末と対比してより均質な磁気特性を有
する。
【0100】また、前記金属磁性粉末は、温度60℃、
相対湿度(RH)90%の雰囲気中に7日間放置した後
の飽和磁化の低下が15%以内であるという優れた性質
を有する。
【0101】したがって、前記金属磁性粉末は、磁気記
録媒体に好適に使用しうるものである。
【0102】前記磁気記録媒体は、例えば、前記金属磁
性粉末と樹脂結合剤とを混合し、得られた磁性塗料を基
体上に塗布することにより、形成させることができる。
【0103】前記金属磁性粉末の量は、通常、形成され
る磁気記録媒体用塗膜(磁性層)中に、70〜90重量
%程度含有されるように調整することが好ましい。
【0104】前記樹脂結合剤としては、例えば、ポリ塩
化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、
繊維素系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリウレタン系樹
脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテ
ル系樹脂などがあげられるが、本発明は、かかる例示の
みに限定されるものではない。前記樹脂結合剤の量は、
通常、形成される磁気記録媒体用塗膜(磁性層)中に、
10〜30重量%程度含有されるように調整することが
好ましい。
【0105】前記磁性塗料には、前記金属磁性粉末およ
び樹脂結合剤のほかにも、樹脂結合剤を溶解させること
によって塗膜を形成させるために、有機溶剤を用いるこ
とが好ましい。
【0106】前記有機溶剤としては、例えば、シクロヘ
キサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの
エステル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの
芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルスルホキシドなどのス
ルホキシド系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンな
どのエーテル系溶剤などがあげられる。これらの有機溶
媒は、単独でまたは2種以上を混合して用いることがで
きる。
【0107】また、前記磁性塗料には、必要により、通
常用いられている添加剤、例えば、潤滑剤、研磨剤、帯
電防止剤、着色剤などを適量添加してもよい。
【0108】前記基体としては、例えば、ポリエチレン
テレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミ
ド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリスルホ
ン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンなどの樹脂か
らなるフィルムがあげられるが、本発明はかかる基体の
みに限定されるものではない。
【0109】前記磁性塗料を基体上に塗布する方法とし
ては、例えば、ドクターブレード法、グラビア法、リバ
ース法、ロールコーティング法などの方法があげられ
る。
【0110】前記磁性塗料を塗布したのちには、必要に
より磁場配向させた後、乾燥させればよい。
【0111】かくして形成される磁気記録媒体用塗膜の
厚さ(乾燥後の厚さ)は、かかる塗膜の用途によって異
なるので一概には決定することができないが、通常、
0.1〜3μm程度であることが好ましい。
【0112】塗膜を形成したのちには、かかる塗膜の用
途に応じて、例えば、テープ状、ディスク状などの形状
にカットし、組み上げればよい。
【0113】以上説明したように、本発明の含水酸化鉄
が用いられた金属磁性粉末は、粒子径が非常に小さく、
高保持力、高飽和磁化および狭磁性反転磁界分布(狭保
持力分布)を有し、耐酸化性に優れ、粒子同士の凝集や
融着がみられず、分散性が良好で、しかも高充填が可能
であるので、磁気記録媒体に好適に使用しうるものであ
る。
【0114】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定される
ものではない。
【0115】実施例1 〔含水酸化鉄の製造〕炭酸カリウム368gおよび水酸
化カリウム127gをイオン交換水3090mlに溶解
させたアルカリ水溶液3090mlに、硫酸第一鉄7水
和物556gおよび硫酸コバルト7水和物160g〔C
o/Fe(重量比):0.3〕を溶解させた水溶液19
10mlを添加し、混合液を得た。
【0116】次に、得られた混合液を外部循環分散機
((株)荏原製作所製、商品名:荏原マイルダー)を配
設した気泡攪拌槽内に添加し、攪拌羽の回転速度を25
0rpmに、また前記混合液の温度40℃に調整し、流
量5リットル/分で窒素ガスを前記混合液中に300分
間通気し、第一鉄塩およびコバルト塩を含むアルカリ性
懸濁液を得た。
【0117】次に、第一鉄塩およびコバルト塩を含む温
度40℃のアルカリ性懸濁液(pH:10.1)を外部
循環させながら、該アルカリ性懸濁液中に、流量5リッ
トル/分で空気を470分間通気し、紡錘状コバルト含
有含水酸化鉄スラリーを得た。
【0118】その後、得られた紡錘状コバルト含有含水
酸化鉄スラリーをイオン交換水で水洗し、濾過し、紡錘
状コバルト含有含水酸化鉄を得た。
【0119】得られた紡錘状コバルト含有含水酸化鉄を
透過型電子顕微鏡(TEM、20000倍)で観察した
ところ、該紡錘状コバルト含有含水酸化鉄は、長軸径
0.12μmおよび軸比5.0の紡錘状を有することが
確認された。
【0120】次に、外部にパイプライン型分散機マイル
ダー((株)荏原製作所製、商品名:MDN303V)
を設置した循環ラインが設けられた反応槽内に、イオン
交換水10リットルを添加し、ついで前記で得られた紡
錘状コバルト含有含水酸化鉄200gを添加し、約2時
間分散させて紡錘状コバルト含有含水酸化鉄スラリーを
得た。
【0121】次に、得られた紡錘状コバルト含有含水酸
化鉄スラリーに、15%硝酸水溶液を添加し、前記スラ
リーのpHを5.0に調整した後、1時間マイルダー
(回転数:15000rpm)による分散を続け、酸処
理が施された紡錘状コバルト含有含水酸化鉄スラリーを
得た。
【0122】得られたスラリーをイオン交換水で水洗
し、濾過することにより、酸処理が施された紡錘状コバ
ルト含有含水酸化鉄を得た。
【0123】〔金属磁性粉末の製造〕前記で得られた酸
化処理が施された紡錘状コバルト含有含水酸化鉄スラリ
ーを用い、該スラリー10リットルに、硝酸コバルト6
水和物62.2g〔Co/Fe(重量比):0.1〕を
イオン交換水1000mlに溶解させた水溶液を添加
し、15分間分散させた後、8%水酸化カリウム水溶液
を滴下してスラリーのpHを10に調整し、含水酸化鉄
の表面に水酸化コバルトを主成分とする被膜を形成させ
た。
【0124】次に、8%水酸化カリウム水溶液700g
を前記スラリーに添加してpHを12.5に調整し、つ
いで酢酸カルシウム1水和物4.4g〔Ca/Fe(重
量比):0.005〕をイオン交換水20gに溶解させ
た水溶液を前記スラリーに添加した後、得られた混合液
中に空気を流量1リットル/分で5時間吹き込んだ。
【0125】その後、酸化ランタン14.7g〔La/
Fe(重量比):0.1〕を硝酸に溶解させた11%硝
酸ランタン水溶液134gを前記混合液中に滴下し、さ
らに硝酸アルミニウム9水和物35g〔Al/Fe(重
量比):0.02〕をイオン交換水300gに溶解させ
た硝酸アルミニウム水溶液を滴下した後、15%硝酸水
溶液を滴下し、得られたスラリーのpHを9.0に調整
し、ランタンおよびアルミニウムの水酸化物を主成分と
する被膜を、前記水酸化コバルトを主成分とする被膜上
に形成させた。
【0126】その後、前記スラリーをイオン交換水で洗
浄し、得られた洗浄液の電気電導度が100μS/cm
以下、ナトリウムおよびカリウムの含有量が0.1重量
%以下、イオウおよび塩素の含有量が200ppm以下
となるまで洗浄した。
【0127】洗浄終了後、スラリーの上澄み液を取り除
いてスラリーの総量を15リットル程度にしてさらに分
散を行ない、8%アンモニア水溶液12gを添加し、つ
いでオクタン酸(花王(株)製、商品名:ルナック8−
98)8g(含水酸化鉄100重量部あたり4重量部)
を添加し、分散を10分間程度続けた後、スラリーを濾
過し、乾燥させた。
【0128】かくして得られた粉体を篩目の目開きが
5.0mmのメッシュを透過するが、篩目の目開きが
2.0mmのメッシュを透過しない大きさに整粒し、内
径62mmの固定床型炉内でガス線速度10cm/秒の
窒素ガス気流中で500℃で1時間加熱処理を行なっ
た。
【0129】次に、引き続いて、ガス線速度80cm/
秒の水素ガス気流(1気圧)中で前記粉体を500℃で
1時間還元させた。
【0130】還元終了後、窒素ガス気流中で40℃にま
で冷却し、ガス線速度10cm/秒で酸素ガス濃度が1
00ppmの窒素ガスを12時間通気し、表面を酸化さ
せて金属磁性粉末を得た。
【0131】次に、得られた金属磁性粉末の静磁気特性
として、Hc(保磁力)、σs(飽和磁化)、σr/σ
s(角型比)、SFD(Switching field distributio
n) 、CS(Fe結晶子サイズ)、Δσs〔飽和磁化の
減衰率:(60℃/90%RH〔相対湿度、以下同様〕
の雰囲気中に7日間放置後のσs)/σs〕、および粒
子形状を調べた。なお、Hc(保磁力)等の測定方法
は、以下のとおりである。結果を表2に示す。
【0132】(A)Hc(保磁力)、σs(飽和磁化)
の測定法 試料振動型磁力計(VSM)により、最大印加磁場10
kOeで測定する。なお、金属磁性粉末は、試料ホルダ
ーに入れて測定する。
【0133】(B)CS(Fe結晶子サイズ)の測定法 X線回折により、α−Feの(110)ピークの半値幅
より、Scherrer式(Scherrer定数:0.9)を用いるこ
とにより求める。
【0134】(C)Δσsの測定法 金属磁性粉末を温度60℃、相対湿度90%の環境下で
7日間放置した後の飽和磁性σs’を前記飽和磁化の測
定法にしたがって測定し、放置前の前記金属磁性粉末の
飽和磁化σs(初期値)との値から、 減衰率(Δσs)=(1−σs’/σs)×100 を求める。
【0135】(D)粒子形状 得られた金属磁性粉末を透過型電子顕微鏡で撮影した写
真の中から任意に300個の粒子を抽出し、それぞれの
長軸径および軸比を測定し、それらの平均値をそれぞれ
長軸径および軸比とする。
【0136】〔磁気記録媒体の製造〕金属磁性粉末10
0重量部、レシチン2重量部、カーボンブラック3重量
部、γ−アルミナ5重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル−
ポリビニルアルコール共重合体(ユニオンカーバイド社
製、商品名:VAGH)15重量部、ポリウレタン(日
本ポリウレタン工業(株)製、商品名:ニッポラン23
04)10重量部、メチルエチルケトン150重量部、
トルエン50重量部およびシクロヘキサノン75重量部
を混合して配合物を調製した。
【0137】得られた配合物をバッチ式サンドミルで6
時間混合した後、得られた混合物に硬化剤としてポリウ
レタン塗料用イソシアナート(日本ポリウレタン工業
(株)製、商品名:コロネートL)2.5重量部を添加
し、さらに15分間混合した後、濾過してガラスビーズ
を分離し、磁性塗料を得た。
【0138】得られた磁性塗料を10μm厚のポリエチ
レンテレフタレート(以下、PETという)フィルム上
に乾燥後の膜厚が3μmとなるように塗布し、磁場配向
処理後、乾燥してPETフィルム上に磁性層を形成させ
た。
【0139】次に、磁性層が形成されたPETフィルム
にカレンダー処理を施し、ついで鏡面加工を施して塗膜
を得た。
【0140】得られた塗膜の静磁気特性として、Hc
(保持力)およびSFDを前記金属磁性粉と同様にして
測定し、またBs(飽和磁束密度)、Br/Bs(角型
比)およびΔBs(60℃/90%RH放置30日間後
のBs’/Bs)を以下の方法に従って調べた。その結
果を表3に示す。
【0141】(E)Bs(飽和磁束密度)、Br/Bs
(角型比) 試料振動型磁力計(VSM)により、最大印加磁場10
kOeで測定する。なお、塗膜は、6mm角に切ったも
のを使用する。
【0142】(F)ΔBs(60℃/90%RH放置3
0日間後のBs’/Bs) 塗膜を温度60℃、相対湿度90%の環境下で30日間
放置した後の飽和磁性Bs’を前記飽和磁化の測定法に
したがって測定し、放置前の前記金属磁性粉末の飽和磁
化Bs(初期値)との値から、 減衰率(ΔBs)=(1−Bs’/Bs)×100 を求める。
【0143】実施例2 実施例1において、紡錘状コバルト含有含水酸化鉄を調
製する際に用いた炭酸カリウム368gを炭酸ナトリウ
ム282gに変更した他は、実施例1と同様にして金属
磁性粉末および磁気記録媒体を得た。
【0144】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0145】実施例3 実施例1において、紡錘状コバルト含有含水酸化鉄を調
製する際に用いたアルカリ源である水酸化カリウム12
7gおよび炭酸カリウム368gを水酸化ナトリウム8
0gおよび炭酸ナトリウム282gに変更した他は、実
施例1と同様にして金属磁性粉末および磁気記録媒体を
得た。
【0146】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0147】実施例4〜13 実施例1において、紡錘状コバルト含有含水酸化鉄を製
造する際に用いた硫酸コバルトのCoと硫酸第一鉄のF
eとの重量比およびアルカリの使用量、ならびに金属磁
性粉末を製造する際の硝酸コバルトのCoと含水酸化鉄
のFeとの重量比、希土類と含水酸化鉄のFeとの重量
比、Alと含水酸化鉄のFeとの重量比、Siと含水酸
化鉄のFeとの重量比を表1に示すように変更した以外
は、実施例1と同様にして金属磁性粉末および磁気記録
媒体を得た。
【0148】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0149】実施例14 実施例1において、含水酸化鉄を製造する際に用いたア
ルカリを表1に示すように変更し、また金属磁性粉末を
製造する際に使用した8%水酸化カリウム水溶液700
gおよび炭酸カリウムの代わりに、8%水酸化ナトリウ
ム水溶液700gおよび炭酸ナトリウム282gを用い
た以外は、実施例1と同様にして金属磁性粉末および磁
気記録媒体を得た。
【0150】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0151】実施例15 実施例1において、紡錘状コバルト含有含水酸化鉄を製
造する際および金属磁性粉末を製造する際に用いた分散
機を経由する外部循環ラインを取り除いた以外は、実施
例1と同様にして金属磁性粉末および磁気記録媒体を得
た。
【0152】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0153】比較例1 実施例1で得られた紡錘状コバルト含有含水酸化鉄スラ
リーのpHを5.0に調整する操作を省略した以外は、
実施例1と同様にして金属磁性粉末および磁気記録媒体
を得た。
【0154】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0155】比較例2 実施例1で得られた紡錘状コバルト含有含水酸化鉄スラ
リーを酸処理する際のpHを6.5に調整した以外は、
実施例1と同様にして金属磁性粉末および磁気記録媒体
を得た。
【0156】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0157】比較例3 実施例1において、含水酸化鉄を製造する際に用いたア
ルカリを表1に示すように変更し、また酸処理を施さ
ず、金属磁性粉末を製造する際の希土類/Fe(重量
比)を表1に示すように変更したほかは、実施例1と同
様にして金属磁性粉末および磁気記録媒体を得た。
【0158】得られた金属磁性粉末および磁気記録媒体
の静磁気特性を実施例1と同様にして調べた。その結果
をそれぞれ表2および表3に示す。
【0159】比較例4 実施例1において、ゲーサイト表面にコバルト、ランタ
ン、アルミニウム等を主とする化合物を形成した後、イ
オン交換水にてスラリーを洗浄し、洗浄液の電気伝導度
が1000μS/cm程度にて洗浄を終了すること以外
は実施例1と同様にして金属磁性粉体、さらに磁気記録
媒体を得た。この時のSの含有量は、370ppmであ
った。
【0160】比較例5 実施例1において使用した硝酸コバルト6水和物を塩化
コバルト6水和物とし、硝酸ランタン水溶液を塩化ラン
タン水溶液とし、硝酸アルミニウム9水和物を塩化アル
ミニウム6水和物とし、中和酸を硝酸から塩酸に変え、
かつ含水酸化鉄表面にコバルト、ランタン、アルミニウ
ム等を主とする化合物を形成した後、イオン交換水にて
スラリーを洗浄し、洗浄液の電気伝導度が1000μS
/cm程度にて洗浄を終了すること以外は実施例1と同
様にして金属磁性粉末、さらに磁気記録媒体を得た。こ
の時のClの含有量は、400ppmであった。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
【表3】
【0164】表2〜3に示された結果から、実施例1〜
15で得られた金属磁性粉末および塗膜は、いずれも各
種静磁気特性に優れたものであることがわかる。
【0165】
【発明の効果】本発明の含水酸化鉄粉末の製造方法によ
って得られた含水酸化鉄粉末は、従来の金属磁性粉末と
比べ、均質でかつ高分散性を示す紡錘状含水酸化鉄が、
粒子同士の凝集および融着を発生させずに孤立性の高い
粒子状で得られ、高保磁力かつ、保磁力分布(SFD)
の狭いという優れた性質を有するものである。
【0166】また、本発明の金属磁性粉末を用いた場合
には、高出力、低ノイズの高保磁力、高角型比かつ狭S
FDを有する磁気記録媒体を得ることができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G11B 5/842 G11B 5/842 Z H01F 1/14 H01F 1/14 Z (72)発明者 藤井 滋夫 和歌山市湊1334番地 花王株式会社研究所 内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第一鉄塩水溶液と、炭酸アルカリ水溶液
    とを混合し、得られた第一鉄含有沈殿物のアルカリ性懸
    濁液中に酸素含有ガスを通気したのち、得られた含水酸
    化鉄スラリーのpHを6以下に調整し、分散させること
    を特徴とする含水酸化鉄の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭酸アルカリが、炭酸カリウムまたは炭
    酸水素カリウムである請求項1記載の含水酸化鉄の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 炭酸アルカリ水溶液が水酸化アルカリを
    含有するものである請求項1記載の含水酸化鉄の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 水酸化アルカリが、水酸化カリウムであ
    る請求項3記載の含水酸化鉄の製造方法。
  5. 【請求項5】 第一鉄塩水溶液が、第一鉄塩のFe10
    0重量部に対して水可溶性コバルト塩のCo0.1〜4
    5重量部の割合で、水可溶性コバルト塩を溶解させたも
    のである請求項1〜4いずれか記載の含水酸化鉄の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 アルカリ性懸濁液を外部循環させなが
    ら、該アルカリ性懸濁液に酸素含有ガスを通気する請求
    項1〜5いずれか記載の含水酸化鉄の製造方法。
  7. 【請求項7】 含水酸化鉄スラリーを外部循環させて分
    散させながら、該含水酸化鉄スラリーのpHを6以下に
    調整する請求項1〜6いずれか記載の含水酸化鉄の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7いずれか記載の含水酸化鉄
    の製造方法によって製造されてなる含水酸化鉄。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の含水酸化鉄の表面に酸化
    物または水酸化物の被膜を形成させ、該酸化物または水
    酸化物の被膜が形成された含水酸化鉄を水洗した後、該
    酸化物または水酸化物の被膜上に炭素化合物の被膜を形
    成させ、不活性ガス雰囲気中で加熱脱水させ、還元性ガ
    スで還元させ、ついで酸素含有ガスで酸化させることを
    特徴とする金属磁性粉末の製造方法。
  10. 【請求項10】 含水酸化鉄が、長軸径0.05〜0.
    25μmおよび軸比〔長軸径/短軸径〕4〜12を有す
    る紡錘状含水酸化鉄である請求項9記載の金属磁性粉末
    の製造方法。
  11. 【請求項11】 酸化物または水酸化物の被膜中に、含
    水酸化鉄のFe100重量部に対して、Co0.1〜4
    5重量部、希土類元素1〜15重量部、ならびにAlお
    よび/またはSi1〜8重量部が含有されてなる請求項
    9または10記載の金属磁性粉末の製造方法。
  12. 【請求項12】 含水酸化鉄として含水酸化鉄スラリー
    を用い、該含水酸化鉄スラリーとコバルト化合物とを混
    合し、得られた混合液とアルカリとを混合し、該含水酸
    化鉄の表面にコバルト化合物の被膜を形成させる請求項
    9〜11記載の金属磁性粉末の製造方法。
  13. 【請求項13】 アルカリが水酸化カリウムまたは炭酸
    カリウムである請求項12記載の金属磁性粉末の製造方
    法。
  14. 【請求項14】 酸化物または水酸化物の被膜が形成さ
    れた含水酸化鉄におけるナトリウムおよびカリウムの含
    有量が0.1重量%以下、イオウおよび塩素の含有量が
    200ppm以下となるまで水洗を行なう請求項9〜1
    3いずれか記載の金属磁性粉末の製造方法。
  15. 【請求項15】 炭素化合物の被膜に含まれる炭素量
    が、含水酸化鉄のFe100重量部に対して0.5〜8
    重量部である請求項9〜14いずれか記載の金属磁性粉
    末の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項9〜15いずれか記載の製造方
    法によって得られた金属磁性粉末。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の金属磁性粉末および
    樹脂結合剤を基体に塗布してなる磁気記録媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005277094A (ja) * 2004-03-24 2005-10-06 Dowa Mining Co Ltd 高密度化に対応した塗布型磁気記録媒体用磁性粉末およびその製造方法
CN109622946A (zh) * 2018-11-15 2019-04-16 北京科技大学 用于制备烧结金属-石墨复合材料的通用悬浮造粒方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005277094A (ja) * 2004-03-24 2005-10-06 Dowa Mining Co Ltd 高密度化に対応した塗布型磁気記録媒体用磁性粉末およびその製造方法
JP4534085B2 (ja) * 2004-03-24 2010-09-01 Dowaエレクトロニクス株式会社 高密度化に対応した塗布型磁気記録媒体用磁性粉末およびその製造方法
CN109622946A (zh) * 2018-11-15 2019-04-16 北京科技大学 用于制备烧结金属-石墨复合材料的通用悬浮造粒方法

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