JPH09171913A - 金属磁性粉末およびその製造方法並びに磁気記録媒体用塗膜 - Google Patents

金属磁性粉末およびその製造方法並びに磁気記録媒体用塗膜

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JPH09171913A
JPH09171913A JP7348734A JP34873495A JPH09171913A JP H09171913 A JPH09171913 A JP H09171913A JP 7348734 A JP7348734 A JP 7348734A JP 34873495 A JP34873495 A JP 34873495A JP H09171913 A JPH09171913 A JP H09171913A
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metal
magnetic
magnetic powder
weight
compound
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JP7348734A
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English (en)
Inventor
Michihito Igaki
通人 井垣
Shigeo Fujii
滋夫 藤井
Hirotsugu Ichikawa
裕嗣 市川
Kenji Kawabuchi
健二 河渕
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】Feを50重量%以上含有し、希土類元素
をFeに対して0.1〜5重量%含有し、SとClの含
有量が共に200ppm以下に低減された針状又は紡錘
形状を示す金属磁性粉末、該金属磁性粉末を含有する磁
性層を有してなる磁気記録媒体用塗膜、該金属磁性粉末
の製造方法、並びに該製造方法より得られた金属磁性粉
末を含有する磁性層を有してなる磁気記録媒体用塗膜。 【効果】本発明の金属磁性粉末は、高保磁力、高飽和磁
化、狭SFDの静磁気特性を満足し、かつ分散性、高充
填性が良好であり、耐酸化性においても優れるものであ
る。かかる金属磁性粉末は本発明の製造方法により好適
に製造することができる。また、当該金属磁性粉末を用
いた磁気記録媒体も高保磁力、高飽和磁化、狭SFDの
静磁気特性を満足するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高密度磁気記録媒体
の中でも、特に短波長領域で高出力を必要とする磁気記
録媒体に用いられる金属磁性粉末およびその製造方法、
並びに該方法により得られる金属磁性粉末を含有する磁
気記録媒体用塗膜に関する。さらに詳しくは、微粒子で
あるにもかかわらず、高保磁力、狭保磁力分布、高分散
性であり、さらに耐酸化性の優れた金属磁性粉末および
その製造方法に関するものであり、またそのような金属
磁性粉末を用いた耐酸化性に優れ、かつ磁気特性に優れ
た磁気記録媒体用塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、各種の記録方式の発展は著しいも
のがあるが、中でも磁気記録再生装置の小型軽量化の進
歩は顕著である。これにつれて磁気テープ・磁気ディス
ク等の磁気記録媒体に対する高性能化の要求が大きくな
ってきている。
【0003】磁気記録に対するこのような要求を満足す
るためには高い保磁力と高い飽和磁化を有する磁性粉末
が必要である。従来、磁気記録用の磁性粉末として一般
には針状のマグネタイトやマグヘマイト、又はこれらの
磁性酸化鉄粉末をコバルトで変性した、所謂コバルト含
有酸化鉄が用いられているが、より高出力の媒体を得る
ためにはより高い保磁力・飽和磁化を持つ強磁性の金属
磁性粉末、所謂メタル磁性粉が用いられ始めている。
【0004】このような金属磁性粉末は、オーディオ用
メタルテープ、8mmVTR用メタルテープ、DAT、
及び業務用磁気記録テープとして広く使用されている。
最近では、磁気記録装置の小型軽量化、長時間記録、高
画質化を目指した装置の開発が盛んに行われており、こ
れらの装置に対応する磁気テープも、より高性能化、高
密度記録化が要求されている。すなわち、高出力化およ
び低ノイズ化が求められており、特に短波長領域での高
出力化が求められている。これらの要件を満たす磁気記
録媒体に用いられる金属磁性粉末は、微細であり、高保
磁力、高飽和磁化、狭磁化反転磁界分布(あるいは、狭
保磁力分布)の静磁気特性を示し、耐酸化性に優れ、個
々の粒子に凝集及び融着が見られない良好な分散性を示
し、高充填可能なものでなければならない。
【0005】しかしながら、従来技術により製造される
金属磁性粉末は、高密度記録に適するような微細な粒子
では、今後さらに要望されるような高保磁力、高飽和磁
化、狭SFDの静磁気特性を満足し、かつ分散性、高充
填性が良好であり、耐酸化性においても優れるものは、
未だ得られていない。
【0006】一般に磁気記録媒体の高出力化を行うため
には、使用する金属磁性粉末の保磁力、飽和磁化が高い
必要がある。金属磁性粉末の高保磁力化を行うために
は、粒子サイズを低下させるとともに軸比(長軸/短
軸)を大きくして形状異方性を高くし、さらに粒子内部
の結晶子サイズを短軸径に近づけるように大きく成長さ
せる必要がある。また、飽和磁化を高くするためには、
粒子内部になるべく非磁性な成分を含有させないことと
共に粒子の酸化を防止させる必要があり、粒子表層の酸
化皮膜の緻密さ、厚さ等に工夫が必要である。
【0007】一方、磁気記録媒体の低ノイズ化には、金
属磁性粉末の粒子径を微細化することが有効である。す
なわち、磁気記録媒体の単位体積当たりの粒子数を多く
することによりノイズの低減が行えることが一般的に知
られている。また、粒子の分散性は、テープの表面性に
大きく影響するため、凝集並びに融着のない単分散粒子
は、媒体の低ノイズ化の為には必要不可欠である。さら
に、粒子の磁気特性として、狭保磁力分布であることが
重要であり、磁気特性の均質な金属磁性粉末が今後の磁
気記録媒体の高出力、低ノイズ化には必要である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
のような従来技術で製造される金属磁性粉末の問題点を
解決すべく、高保磁力、高飽和磁化、狭SFDの静磁気
特性を満足し、かつ分散性、高充填性が良好であり、耐
酸化性においても優れる金属磁性粉末及びその製造方
法、並びに当該金属磁性粉末を用いた磁気記録媒体を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決するために針状又は紡錘形状の含水酸化鉄粒子
から、金属磁性粉末を得る過程について検討を行った。
その結果、針状又は紡錘形状の含水酸化鉄粒子表面上に
希土類元素をFeに対して0.1〜5重量%を被着さ
せ、その後、イオン交換水にて表面処理済みゲーサイト
を十分に水洗することにより、上記の性能を達成できる
ことを見出し、さらにCoをFeに対して1〜10重量
%含有し、かつAl及び/又はSiをFeに対して1〜
8重量%含有させることにより、より性能が向上するこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明の要旨は、(1) Feを5
0重量%以上含有し、希土類元素をFeに対して0.1
〜5重量%含有し、SとClの含有量が共に200pp
m以下に低減された針状又は紡錘形状を示す金属磁性粉
末、(2) 希土類元素がLaである前記(1)記載の
金属磁性粉末、(3) Al及び/又はSiをFeに対
して1〜8重量%含有する前記(1)又は(2)記載の
金属磁性粉末、(4) さらにCoをFeに対して0.
8重量%以上10重量%未満含有した前記(1)記載の
金属磁性粉末、(5) 長軸径0.12〜0.35μ
m、軸比4〜15、粒子内部の結晶子サイズが140〜
250A、比表面積が30〜60m2 /gであり、かつ
保磁力(Hc)が1400Oe以上、SFDが0.6〜
1.7、飽和磁化(σs)が110〜150emu/g
で、且つ温度60℃相対湿度90%の雰囲気に7日間放
置した後の飽和磁化の低下が15%以下であることを特
徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載の金属磁性粉
末、(6) 前記(1)〜(5)いずれか記載の金属磁
性粉末を含有する磁性層を有してなる磁気記録媒体用塗
膜、(7) 長軸径が0.12〜0.35μm、軸比4
〜15である針状又は紡錘形状を示す含水酸化鉄に、C
o、Al、Si、及びCaの化合物よりなる群から選ば
れる1種以上の化合物と希土類金属化合物を被着させ、
これをイオン交換水にて水洗してSとClの含有量を共
に200ppm以下に低減した後、その最外層に炭素化
合物を当該粒子に対し0.5〜8重量%のCに相当する
量だけ被着させた後、不活性ガス雰囲気にて加熱脱水
し、次いで還元性ガスで還元することを特徴とする前記
(1)〜(5)いずれか記載の金属磁性粉末の製造方
法、(8) 含水酸化鉄にCo化合物及び希土類金属化
合物を独立に又は混合して被着させる工程を少なくとも
有し、該Co化合物及び希土類金属化合物を被着させる
原料として酢酸塩を使用すると共に、中和用の酸として
酢酸を使用する前記(7)記載の金属磁性粉末の製造方
法、並びに(9) 前記(7)又は(8)記載の製造方
法より得られた金属磁性粉末を含有する磁性層を有して
なる磁気記録媒体用塗膜、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の金属磁性粉末は、Feを
50重量%以上含有し、希土類元素をFeに対して0.
1〜5重量%含有し、SとClの含有量が共に200p
pm以下に低減された針状又は紡錘形状を示すものであ
る。
【0012】本発明の金属磁性粉末は、全組成中にFe
を50重量%以上含有し、好ましくはFeを60重量%
以上含有し、より好ましくはFeを70〜90重量%含
有している。Feが50重量%未満では金属磁性粉末に
付与される静磁気特性、特に保磁力、飽和磁化が低下
し、目的とする特性を得ることが困難となる。
【0013】Feの原料である含水酸化鉄としては、α
−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH等を含
み、含水酸化鉄中にCoを含有したものも含んでいる。
長軸径、短軸径、軸比は一般的に金属磁性粉末の原料と
して通常用いられる大きさ(長軸径が0.12〜0.3
5μm)、針状又は紡錘形状(軸比4〜15)であれば
良く、特に制限されるものではない。
【0014】また、ここで言う「紡錘形状」とは、一般
に用いられる「針状」と比較される用語であり、含水酸
化鉄粉末の場合、その一次粒子の長軸方向の中央部が大
きく(太く)、その端部に向かうと細くなる形状と定義
される(図1参照)。これに対し、「針状」とは、短軸
の長さ(太さ)が長軸方向の場所によらずほぼ一定の形
状を言う(図2参照)。さらに具体的には、「紡錘形
状」は長軸に沿う面上への投影図形が、ほぼ楕円形状を
呈し、「針状」は長軸に沿う面上への投影図形が、ほぼ
長方体の角および先端部を丸めた形状を基本形状とす
る。なお、金属磁性粉末の場合、高温での熱処理あるい
は還元条件により粒子内焼結を受けて多少変形し、先端
部の形状が丸くなってしまうことがあるが、紡錘形状、
針状の定義は前記と同様である。このような形状特性は
通常の場合、透過型電子顕微鏡等により観察することが
可能である。
【0015】本発明の金属磁性粉末は、希土類元素をF
eに対して0.1〜5重量%含有し、好ましくは希土類
元素をFeに対して1〜3重量%含有する。希土類元素
の含有量が、Feに対して0.1重量%未満では、その
効果が顕著に見られなく、5重量%を越える場合では、
保磁力、飽和磁化等の磁気特性の低下がみられ、分散性
が不良となる。
【0016】希土類元素としては、Y、La、Ce、P
r、Nd、Sm、Gd、Dy等が挙げられる。なかでも
Laは他の希土類元素に比べて安価であり、かつLaを
用いると得られる金属磁性粉末の結晶子サイズが大き
く、磁気特性が良好であり、その塗膜の磁気特性も特に
良好である。
【0017】これらの被着後、特にイオン交換水にて表
面処理済みゲーサイトを水洗することにより、さらに
S、及びClの含有量を低減することが重要である。本
発明の金属磁性粉末では、SとClの含有量が共に20
0ppm以下に低減されており、好ましくはSとClの
含有量が共に100ppm以下に低減される。SとCl
の含有量を共に200ppm以下に除去することは、熱
処理、還元の工程において、金属磁性粉末の形状の崩
れ、粒子同士の融着/凝集を防止することになり、特に
重要である。
【0018】本発明では、上記の金属磁性粉末が、さら
にCoをFeに対して0.8重量%以上10重量%未満
含有し、又Al及び/又はSiをFeに対して1〜8重
量%(併用の場合は合計量を示す)含有するものが好ま
しく、CoをFeに対して1〜5重量%含有し、かつA
l及び/又はSiをFeに対して3〜5重量%含有する
ものがより好ましい。
【0019】Co含有量については、Feに対して0.
8重量%未満では、所望とする保磁力および飽和磁化が
得られにくく、耐酸化性も不良となる傾向がある。10
重量%以上の場合には、粒子同士の凝集が顕著であり、
分散性が不良となり、さらに経済的にも高価なCoを必
要以上に用いることは適切ではない。
【0020】熱処理/還元の融着防止及び形状保持剤と
して用いられるAl及び/又はSiの被着量について
は、Feに対して1重量%未満では、その効果が顕著に
見られにくく、8重量%を越える場合では、保磁力、飽
和磁化等の磁気特性の低下がみられ、分散性が不良とな
り、特に非磁性成分の増加による飽和磁化の低下は顕著
であり、耐酸化性も顕著に劣化する。本発明の金属磁性
粉末は、以上の成分以外に保磁力制御の為、CaをFe
に対して0.1〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5
重量%を含有してもよい。
【0021】本発明の金属磁性粉末は、長軸径0.12
〜0.35μm、軸比4〜15、粒子内部の結晶子サイ
ズが140〜250A、比表面積が30〜60m2 /g
であり、かつ保磁力(Hc)が1400Oe以上、SF
Dが0.6〜1.7、飽和磁化(σs)が110〜15
0emu/gで、且つ温度60℃相対湿度90%の雰囲
気に7日間放置した後の飽和磁化の低下が15%以下で
あることが好ましい。さらに好ましくは、長軸径0.1
2〜0.20μm、軸比5〜10、粒子内部の結晶子サ
イズが150〜210A、比表面積が35〜50m2
gであり、かつ保磁力(Hc)が1500Oe以上、S
FDが0.6〜1.4、飽和磁化(σs)が110〜1
30emu/gで、且つ温度60℃相対湿度90%の雰
囲気に7日間放置した後の飽和磁化の低下が10%以下
である。
【0022】このような物性等の値は、次のようにして
測定される。結晶子サイズは、X線回折により、α−F
eの(110)ピークの半値幅より、Scherrerの式(シ
ェラー定数:0.9)を用いることにより求めることが
できる。比表面積は、BET(N2 /He混合ガス吸
着)法による流動式比表面積自動測定装置にて求めるこ
とができる。保磁力(Hc)、SFD、飽和磁化(σ
s)、および残留磁化(σr)等は、VSM(最大印加
磁場10KOe)より求められる磁化曲線(M−Hルー
プ)より求め、SFDは保磁力の求められるM−Hカー
ブの微分波形の半値幅(Ha)を保磁力(Hc)で規格
化した値を示す。
【0023】以上のような本発明の金属磁性粉末は、本
発明の製造方法により好適に製造される。以下、本発明
の製造方法について説明する。本発明の金属磁性粉末の
製造方法は、長軸径が0.12〜0.35μm、軸比4
〜15である針状又は紡錘形状を示す含水酸化鉄に、C
o、Al、Si、及びCaの化合物よりなる群から選ば
れる1種以上の化合物と希土類金属化合物を被着させ、
これをイオン交換水にて水洗してSとClの含有量を共
に200ppm以下に低減した後、その最外層に炭素化
合物を当該粒子に対し0.5〜8重量%のCに相当する
量だけ被着させた後、不活性ガス雰囲気にて加熱脱水
し、次いで還元性ガスで還元することを特徴とするもの
である。
【0024】本発明で用いる含水酸化鉄は前記のよう
に、長軸径が0.12〜0.35μm、軸比4〜15で
ある針状又は紡錘形状を示すものであるが、長軸径が
0.12〜0.20μm、軸比5〜10であるものがよ
り好ましい。また、既にCoを含有しているものであっ
てもよい。
【0025】本発明では、当該含水酸化鉄にCo、A
l、Si、及びCaの化合物よりなる群から選ばれる1
種以上の化合物と希土類金属化合物を被着させるが、こ
のとき、希土類元素、あるいはCo、Al等の硫酸塩、
硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩等を用いて、被着を行うことが
可能である。
【0026】また、中和酸についても硫酸、硝酸、塩
酸、酢酸等が用いられ、中でも希土類元素およびCoの
原料が酢酸塩であり、中和酸に酢酸を用いると得られる
金属磁性粉末の磁気特性が特に良好である。アルカリと
しては、NaOH、KOH、アンモニア等が用いられ、
このため被着後の含水酸化鉄の脱塩を目的とする水洗が
必要となる。
【0027】具体的な操作を述べると例えば以下のよう
になる。まず、含水酸化鉄をイオン交換水中に分散さ
せ、Feに対して1〜10重量%のCo量を被着させる
ため、相当量のコバルト水溶液(例えば、硫酸コバル
ト、硝酸コバルト、塩化コバルト等)を添加する。その
後、粒子表面に水酸化コバルトとして沈着させるため、
NaOH等のアルカリにて中和する。
【0028】その後、さらに過剰のアルカリを添加し、
Feに対して0.1〜2.0重量%のCaを含む酢酸C
a水溶液を添加した後、0.5時間程度分散後、希土類
元素をFeに対して0.1〜5重量%を被着させるた
め、希土類酸化物を硫酸、硝酸等の酸に溶解したものを
添加し、その後さらにFeに対して1〜8重量%のAl
及び/又はSiを水酸化物、及び酸化物として粒子表面
に形成させる。
【0029】Al水酸化物、及び酸化物についてはAl
を含有する硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等のA
l塩をイオン交換水にて溶解した水溶液を添加し、pH
を9程度に調整することにより、水酸化アルミニウムを
被着させる。また、Siについては、水ガラス等をイオ
ン交換水にて溶解し、pHを6.5程度に調整するとに
より被着させる。また、保磁力制御の目的として、Co
化合物の被着後、過剰のアルカリを添加し、Feに対し
て0.1〜2.0重量%のCaを含む酢酸Ca水溶液を
添加した後、空気バブリングを5〜10時間程度行うこ
とも、必要に応じて行う。
【0030】本発明では含水酸化鉄にCo、Al、S
i、及びCaの化合物よりなる群から選ばれる1種以上
の化合物と希土類金属化合物を被着させることができれ
ば、その具体的操作は特に限定されず、上記のような操
作の他、被着の順序を変えた方法や、被着成分を変更し
た方法など、通常公知の被着方法を適宜使用することが
できる。
【0031】これらの元素の被着後、特にイオン交換水
にて表面処理済み含水酸化鉄を水洗することにより、さ
らにSとClの含有量を共に200ppm以下に低減さ
せる。水洗方法としては、特に制限はなく、デカンテー
ション、ロータリーフィルタープレス等によりイオン交
換水を用いて洗浄し、洗浄水の電気伝導度が100μS
/cm以下、好ましくは50μS/cm以下になるまで
洗浄を行う。これらの元素が所定量よりも多く粒子に含
有されると希土類元素を被着したにも関わらず、熱処理
/還元時において、粒子の形状劣化、粒子同士の凝集/
融着を発生し、特に上述した希土類元素の被着効果が損
なわれてしまうため、注意を要する。
【0032】また、Sの粒子中の含有量の分析について
はICP分析によりFeを含めた各原子の発光強度によ
り行うことができる。また、金属磁性粉末に含有される
Clは、硫酸、硝酸等により該粒子を溶解後、その水溶
液を硝酸銀溶液による電位差滴定あるいはイオンクロマ
ト分析により定量できる。特に、検出感度の点から、2
00ppm以下の含有では、イオンクロマト法が好まし
い。
【0033】以上の粒子表面の被着処理及び脱塩操作が
完了した後に、粒子の最外層に炭素化合物の被着処理を
行う。この処理は、(1)還元原料の嵩密度を低下さ
せ、熱処理、還元、安定化において、粒子の凝集、融着
等を防止すること、並びに(2)不活性ガス雰囲気下に
おける熱処理時に、当該炭素化合物が燃焼し、系内の雰
囲気を緩やかな還元雰囲気とし、還元時の粒子の切断、
形状の崩れの原因となる粒子内部の脱水孔を除去するこ
とを目的とするものである。なお、炭素化合物は熱処理
時の燃焼により消失するため、本発明の金属磁性粉末に
は実質的に含有されない。
【0034】炭素化合物としては、含水酸化鉄粒子に対
して吸着能を有するものであり、当該含水酸化鉄表面に
静電気的引力、あるいは化学反応等の物理的および化学
的吸着力を有するものであれば、特に限定されない。例
えばポリカルボン酸およびその塩、長鎖カルボン酸およ
びその塩、ポリエチレンイミン、アルキルアミン塩等が
挙げられ、好ましくは、オレイン酸およびその塩、オク
タン酸およびその塩である。
【0035】また、炭素化合物の添加量は、水洗後の粒
子に対して、通常Cが0.5〜8.0重量%に相当する
量であり、好ましくは1.0〜3.0重量%である。
8.0重量%越えると、熱処理、還元時に加熱脱水反
応、及び還元反応が阻害され、金属磁性粉末の磁気特性
が劣化し、好ましくない。一方、0.5重量%より少な
いと添加する効果が得られない。
【0036】具体的には、例えば水に易溶性のポリカル
ボン酸塩、ポリエチレンイミン等を用いる場合は、これ
らの炭素化合物をあらかじめ水に溶解し、これを該針状
含水酸化鉄スラリーに添加し、攪拌後、濾過する方法が
挙げられる。例えば、長鎖カルボン酸(例えば、オレイ
ン酸、オクタン酸等)を用いる場合は、アルカリと反応
させ水に可溶にした後、この水溶液を該針状含水酸化鉄
スラリーに添加し、攪拌後、濾過する方法が挙げられ
る。中でも特に、ポリカルボン酸およびその塩は、該針
状含水酸化鉄表面に対し、吸着能を有するばかりでな
く、分散能をも有するため、該針状含水酸化鉄表面に均
一被着しやすいと考えられ有利である。以上の表面処理
操作が完了したのち、乾燥し、不活性ガス雰囲気にて加
熱脱水し、次いで還元性ガスで還元し、必要に応じて安
定化を行う。
【0037】本発明の方法において、このような実質的
に脱水孔の存在しないフェライトを形成させるには、以
上の処理が施された含水酸化鉄粒子を不活性ガス気流中
で高温加熱処理することにより容易になし得る。この場
合、不活性ガスとしては特に制限されることはなく、通
常窒素ガス、アルゴンガス等が用いられるが、安価であ
る点から、好ましくは窒素ガス気流中で行うのが良い。
【0038】高温加熱処理の温度範囲は、通常450〜
700℃である。400℃より低いとヘマタイトのまま
であるため、不活性ガス気流中の処理であっても脱水孔
が生じやすくなり、700℃より高いと粒子が融着を起
こしやすくなるので、好ましくない。加熱時間は、加熱
温度にもよるが通常0.5〜4時間、好ましくは1〜2
時間である。このような、高温加熱処理を特開昭63−
61413号公報に記載されているように空気中で行う
とフェライトは形成されず、脱水孔の残ったヘマタイト
を形成するに留まり、水素気流中での還元時に切断が生
じてしまい針状性を保持しなくなり、目的とする性能を
もつ金属磁性粉末を得ることができなくなる恐れがある
ので注意を要する。
【0039】その後の加熱還元は、特に限定されること
なく、水素気流中で通常350〜600℃に、通常2時
間以上保ち、この直後、通常室温〜150℃、好ましく
は50〜120℃程度にて、希薄酸素(例えば、酸素/
窒素の混合ガス)を系内に通気することにより粒子表面
に酸化層を形成させることによって当該金属磁性粉末を
製造することができる。
【0040】上述のようにして得られる耐酸化性、磁気
特性に優れた金属磁性粉末を含有する磁性層を有してな
る本発明の磁気記録媒体用塗膜は、常法に準じて製造す
ることができる。例えば、この金属磁性粉末を、結合剤
樹脂、有機溶剤およびその他の必要成分とともに分散混
合して磁性塗料を調製し、この磁性塗料をポリエステル
フィルム等の基体上に、ドクターブレード法、グラビ
ア、リバース法、ロール塗り等の任意の手段で塗布し、
必要により磁場配向後、乾燥する等の方法で行う。
【0041】ここで、結合剤樹脂としては、ポリ塩化ビ
ニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、繊維
素系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポ
リエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテル系樹
脂、イソシアネート化合物等、従来から汎用されている
結合剤樹脂がいずれも用いられる。
【0042】また、有機溶剤としては、シクロヘキサノ
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の
ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系
溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水
素系溶剤、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶
剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶
剤等、使用する結合剤樹脂を溶解するのに適した溶剤
が、特に制限されることなく単独または2種以上混合し
て使用される。
【0043】なお、磁性塗料中には通常使用されている
各種添加剤、例えば、潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を
適宜に添加してもよい。このようにして形成された磁気
記録媒体用塗膜は、用途に応じてテープ状、あるいはデ
ィスク状にカットし、組み上げることにより、信頼性の
高い高性能磁気記録媒体として使用し得るものである。
【0044】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によ
りなんら限定されるものではない。なお、表中に記載し
た組成、物性値等は、前述の方法により測定されたもの
である。
【0045】実施例1 反応槽の外部にパイプライン型分散機マイルダー(荏原
製作所製)を設置した循環ラインを設けた装置を用い、
ゲーサイト(長軸径;0.202μm、軸比;10.
4)500gを、イオン交換水14リットルに添加し約
2時間分散した。マイルダーによる分散を続けながら、
3号ケイソー8.6g(Si/Fe=0.5重量%)を
スラリーに添加し、希硝酸を滴下してスラリーのpHを
6.5に調製し、粒子表面にSiO2 化合物を形成させ
た。さらに15分間分散した後、8重量%NaOHを1
740g添加し、次に酢酸カルシウム1水和物4.4g
(Ca/Fe=0.2重量%)を22gのイオン交換水
に溶解した水溶液を添加した。その後、0.5時間分散
した後、酸化ランタン11g(La/Fe=3重量%)
を硝酸に溶解した11重量%硝酸ランタン水溶液99g
を滴下し、さらに硝酸アルミニウム9水和物132g
(Al/Fe=3重量%)をイオン交換水656g溶解
した硝酸アルミニウム水溶液を滴下した後、15重量%
HNO3 を滴下し、スラリーのpHを9.0に調整し、
ランタン及びアルミニウムの水酸化物を主とする化合物
を形成した。
【0046】その後、イオン交換水にてスラリーを洗浄
し、洗浄液の電気伝導度が100μS/cm以下になる
まで洗浄した(洗浄終了時の洗浄液の電気伝導度は35
μS/cmとなった)。洗浄完了後、スラリーの上澄み
液を取り除き、スラリーの総量を15リットル程度にし
たものを、さらに分散を行い、8重量%アンモニア溶液
を29g添加し後、オクタン酸(ルナック8−98、花
王(株)製)20g(対粉4重量%)を添加し、分散を
30min程度続け、その後、スラリーを濾過、乾燥し
た。
【0047】以上のようにして得たメタル前駆体を48
〜64メッシュに整粒し、内径62mmの流動層炉でガ
ス線速度7cm/秒の窒素気流中500℃で1時間高温
加熱処理を行った。次いで水素気流中500℃で1時間
還元した。還元終了後、窒素気流中で冷却し70℃とし
た後、ガス線速度7cm/秒で酸素濃度400ppmの
2 ガスを通気して表面を酸化して金属磁性粉末1を得
た。
【0048】次いで、下記塗料配合の配合物をバッチ式
サンドミルで6時間混合後、混合物にコロネートL(日
本ポリウレタン工業(株)製)2.5重量部を添加し、
さらに15分間混合を行った後、濾過してガラスビーズ
を分離し、磁性塗料を調製した。この塗料を10μm厚
のPETフィルム上に乾燥膜厚が3μmになるように塗
布し、磁場配向処理後乾燥してPETフィルム上に磁性
層を形成した。次いで、カレンダー処理により鏡面加工
して塗膜1を得た。
【0049】金属磁性粉末1および塗膜1の静磁気特性
としてHc(保磁力)、σs(飽和磁化)、σs'(60
℃/90%RH保存1週間後のσs)、σr/σs、S
FD、Bs(飽和磁束密度)、Br/Bs(角型比)、
Bs'(60℃/90%RH保存30日後のBs)を前述
のような方法(常法)により求めた。その結果を表1お
よび表2に示す。
【0050】塗料配合 金属磁性粉末 100重量部 レシチン 2重量部 カーボンブラック 3重量部 γ−アルミナ 5重量部 VAGH*1 15重量部 ニッポラン2304*2 10重量部 メチルエチルケトン 150重量部 トルエン 50重量部 シクロヘキサノン 75重量部 注)*1:ユニオンカーバイド社製、塩化ビニル/酢酸
ビニル/ポリビニルアルコール共重合体 *2:日本ポリウレタン工業(株)製、ポリウレタン樹
【0051】実施例2 反応槽の外部にパイプライン型分散機マイルダー(荏原
製作所製)を設置した循環ラインを設けた装置を用い、
ゲーサイト(長軸径;0.202μm、軸比;10.
4)500gを、イオン交換水14リットルに添加し約
2時間分散した。マイルダーによる分散を続けながら、
硝酸コバルト6水和塩15.6g(Co/Fe=1重量
%)を75mlのイオン交換水に溶解した水溶液を添加
し、15分間分散した後、8重量%NaOH水溶液を滴
下し、スラリーのpHを10に調整し、表面に水酸化コ
バルトを主とする化合物を形成した。その後、さらに8
重量%NaOHを1740g添加し、次に酢酸カルシウ
ム1水和物4.4g(Ca/Fe=0.2重量%)を2
2gのイオン交換水に溶解した水溶液を添加した。その
後、0.5時間分散した後、酸化ランタン7.3g(L
a/Fe=2重量%)を硝酸に溶解した11重量%硝酸
ランタン水溶液66gを滴下し、さらに硝酸アルミニウ
ム9水和物176g(Al/Fe=4重量%)をイオン
交換水875g溶解した硝酸アルミニウム水溶液を滴下
した後、15重量%HNO3 を滴下し、スラリーのpH
を9.0に調整し、ランタン及びアルミニウムの水酸化
物を主とする化合物を形成した。
【0052】以下の操作は、実施例1と同様にして金属
磁性粉末2、さらに塗膜2を得た。尚、洗浄終了時の洗
浄液の電気伝導度は50μS/cmであった(以下の実
施例においては10〜90μS/cmであった)。金属
磁性粉末2および塗膜2の静磁気特性について実施例1
と同様に測定を行い、その結果を表1および表2に示
す。
【0053】実施例3 実施例2において、ゲーサイト(長軸径;0.202μ
m、軸比;10.4)500gを、イオン交換水14リ
ットルに添加し約2時間分散した。3号ケイソー8.6
g(Si/Fe=0.5重量%)をスラリーに添加し、
希硝酸を滴下してスラリーのpHを6.5に調整し、粒
子表面にSiO2 化合物を形成させること以外は、実施
例2と同様にして金属磁性粉末3、さらに塗膜3を得
た。金属磁性粉末3、及び塗膜3の静磁気特性について
実施例2と同様に測定を行い、その結果を表1および表
2に示す。
【0054】実施例4 実施例2において使用した硝酸コバルト6水和物を酢酸
コバルト4水和物とし、硝酸ランタン水溶液を酢酸ラン
タン水溶液とし、中和酸を硝酸から酢酸に変えること以
外は実施例2と同様にして金属磁性粉末4、さらに塗膜
4を得た。金属磁性粉末4、及び塗膜4の静磁気特性に
ついて実施例2と同様に測定を行い、その結果を表1お
よび表2に示す。
【0055】実施例5 実施例2において使用した硝酸コバルト6水和物を塩化
コバルト6水和物とし、硝酸ランタン水溶液を塩化ラン
タン水溶液とし、硝酸アルミニウム9水和物を塩化アル
ミニウム6水和物とし、中和酸を硝酸から塩酸に変える
こと以外は実施例2と同様にして金属磁性粉末5、さら
に塗膜5を得た。金属磁性粉末5、及び塗膜5の静磁気
特性について実施例2と同様に測定を行い、その結果を
表1および表2に示す。
【0056】実施例6 実施例2において使用した硝酸コバルト6水和物を硫酸
コバルト6水和物とし、硝酸ランタン水溶液を硫酸ラン
タン水溶液とし、硝酸アルミニウム9水和物を硫酸アル
ミニウム16水和物とし、中和酸を硝酸から硫酸に変え
ること以外は実施例2と同様にして金属磁性粉末6、さ
らに塗膜6を得た。金属磁性粉末6、及び塗膜6の静磁
気特性について実施例2と同様に測定を行い、その結果
を表1および表2に示す。
【0057】実施例7〜10 実施例1において使用した希土類元素であるLaをY、
Ce、Nd、Gdに変えること以外は、実施例1と同様
にして金属磁性粉末7〜10、さらに塗膜7〜10を得
た。金属磁性粉末7〜10、及び塗膜7〜10の静磁気
特性について実施例1と同様に測定を行い、その結果を
表3および表4に示す。
【0058】比較例1 反応槽の外部にパイプライン型分散機マイルダー(荏原
製作所製)を設置した循環ラインを設けた装置を用い、
ゲーサイト(長軸径;0.202μm、軸比;10.
4)500gを、イオン交換水14リットルに添加し約
2時間分散した。マイルダーによる分散を続けながら、
3号ケイソー8.6g(Si/Fe=0.5重量%)を
スラリーに添加し、希硝酸を滴下してスラリーのpHを
6.5に調整し、粒子表面にSiO2 化合物を形成させ
た。さらに15分間分散した後、8重量%NaOHを1
740g添加し、次に酢酸カルシウム1水和物4.4g
(Ca/Fe=0.2重量%)を22gのイオン交換水
に溶解した水溶液を添加した。その後、0.5時間分散
した後、硝酸アルミニウム9水和物132g(Al/F
e=3重量%)をイオン交換水656g溶解した硝酸ア
ルミニウム水溶液を滴下した後、15重量%HNO3
滴下し、スラリーのpHを9.0に調整し、アルミニウ
ムの水酸化物を主とする化合物を形成した。
【0059】以下の操作は、実施例1と同様にして金属
磁性粉末11、さらに塗膜11を得た。金属磁性粉末1
1、及び塗膜11の静磁気特性について実施例1と同様
に測定を行い、その結果を表1および表2に示す。
【0060】比較例2 実施例3において、La添加を省略すること以外は実施
例3と同様にして金属磁性粉末12、さらに塗膜12を
得た。金属磁性粉末12、及び塗膜12の静磁気特性に
ついて実施例3と同様に測定を行い、その結果を表1お
よび表2に示す。
【0061】比較例3 実施例6において、ゲーサイト表面にコバルト、ランタ
ン、アルミニウム等を主とする化合物を形成した後、イ
オン交換水にてスラリーを洗浄し、洗浄液の電気伝導度
が1000μS/cm程度にて洗浄を終了すること以外
は、実施例6と同様にして金属磁性粉末13、さらに塗
膜13を得た。この時のSの含有量は、400ppmで
あった。金属磁性粉末13、及び塗膜13の静磁気特性
について実施例6と同様に測定を行い、その結果を表1
および表2に示す。
【0062】比較例4〜6 実施例1において使用した希土類元素であるLaをN
i、Sr、Zrに変えること以外は、実施例1と同様に
して金属磁性粉末14〜16、さらに塗膜14〜16を
得た。金属磁性粉末14〜16、及び塗膜14〜16の
静磁気特性について実施例1と同様に測定を行い、その
結果を表3および表4に示す。
【0063】比較例7 実施例6において、アルカリ源をNaOHからKOHに
変更し、且つゲーサイト表面にコバルト、ランタン、ア
ルミニウム等を主とする化合物を形成した後、イオン交
換水にてスラリーを洗浄し、洗浄液の電気伝導度が10
00μS/cm程度にて洗浄を終了すること以外は実施
例6と同様にして金属磁性粉末17、さらに塗膜17を
得た。この時のSの含有量は、350ppmであった。
金属磁性粉末17および塗膜17の静磁気特性について
実施例6と同様に行い、その結果を表1および表2に示
す。
【0064】比較例8 実施例2において使用した硝酸コバルト6水和物を塩化
コバルト6水和物とし、硝酸ランタン水溶液を塩化ラン
タン水溶液とし、硝酸アルミニウム9水和物を塩化アル
ミニウム6水和物とし、中和酸を硝酸から塩酸に変え、
且つゲーサイト表面にコバルト、ランタン、アルミニウ
ム等を主とする化合物を形成した後、イオン交換水にて
スラリーを洗浄し、洗浄液の電気伝導度が1000μS
/cm程度にて洗浄を終了すること以外は実施例2と同
様にして金属磁性粉末18、さらに塗膜18を得た。こ
の時のClの含有量は、400ppmであった。金属磁
性粉末18および塗膜18の静磁気特性について実施例
2と同様に行い、その結果を表1および表2に示す。ま
た、以上で得られた金属磁性粉末の組成を表5に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】以上の結果から、表1、2において、実施
例1〜6においては、金属磁性粉末の結晶子サイズが大
きく、金属磁性粉末及びその塗膜ともに高保磁力、高飽
和磁化、狭保磁力分布を顕著に示しており、耐酸化性も
優れていることが明らかである。比較例1、2には、希
土類金属を添加しない例を示したが、金属磁性粉末及び
塗膜ともに磁気特性及び耐酸化性が劣化しており、ま
た、比較例3、7、8には、希土類金属を添加していて
も脱塩操作を簡略化すると、S又はClの含有量は35
0〜400ppmであり、得られた金属磁性粉末および
塗膜の磁気特性、並びに耐酸化性は顕著に低下してい
る。この結果より、希土類元素の使用とともにS、Cl
を除去することが重要であることが明白である。
【0071】また、表3、4には、種々の希土類元素の
被着例を実施例7〜10に示し、一方、希土類元素以外
の金属を被着した例を比較例4〜6に示した。その結
果、得られた金属磁性粉末、及びその塗膜の静磁気特性
は、実施例7〜10においては、実施例1よりやや劣る
ものの目標とするレベルの結果を得ることができたのに
対し、比較例4〜6では、得られた金属磁性粉末、及び
その塗膜ともに静磁気特性および耐酸化性は低く、満足
できるものではなかった。
【0072】
【発明の効果】本発明の金属磁性粉末は、高保磁力、高
飽和磁化、狭SFDの静磁気特性を満足し、かつ分散
性、高充填性が良好であり、耐酸化性においても優れる
ものである。かかる金属磁性粉末は本発明の製造方法に
より好適に製造することができる。また、当該金属磁性
粉末を用いた磁気記録媒体も高保磁力、高飽和磁化、狭
SFDの静磁気特性を満足するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、「紡錘形状」の形状を模式的に示した
図である。
【図2】図2は、「針状」の形状を模式的に示した図で
ある。
フロントページの続き (72)発明者 河渕 健二 和歌山市湊1334番地 花王株式会社研究所 内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feを50重量%以上含有し、希土類元
    素をFeに対して0.1〜5重量%含有し、SとClの
    含有量が共に200ppm以下に低減された針状又は紡
    錘形状を示す金属磁性粉末。
  2. 【請求項2】 希土類元素がLaである請求項1記載の
    金属磁性粉末。
  3. 【請求項3】 Al及び/又はSiをFeに対して1〜
    8重量%含有する請求項1又は2記載の金属磁性粉末。
  4. 【請求項4】 さらにCoをFeに対して0.8重量%
    以上10重量%未満含有した請求項1記載の金属磁性粉
    末。
  5. 【請求項5】 長軸径0.12〜0.35μm、軸比4
    〜15、粒子内部の結晶子サイズが140〜250A、
    比表面積が30〜60m2 /gであり、かつ保磁力(H
    c)が1400Oe以上、SFDが0.6〜1.7、飽
    和磁化(σs)が110〜150emu/gで、且つ温
    度60℃相対湿度90%の雰囲気に7日間放置した後の
    飽和磁化の低下が15%以下であることを特徴とする請
    求項1〜4いずれか記載の金属磁性粉末。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5いずれか記載の金属磁性粉
    末を含有する磁性層を有してなる磁気記録媒体用塗膜。
  7. 【請求項7】 長軸径が0.12〜0.35μm、軸比
    4〜15である針状又は紡錘形状を示す含水酸化鉄に、
    Co、Al、Si、及びCaの化合物よりなる群から選
    ばれる1種以上の化合物と希土類金属化合物を被着さ
    せ、これをイオン交換水にて水洗してSとClの含有量
    を共に200ppm以下に低減した後、その最外層に炭
    素化合物を当該粒子に対し0.5〜8重量%のCに相当
    する量だけ被着させた後、不活性ガス雰囲気にて加熱脱
    水し、次いで還元性ガスで還元することを特徴とする請
    求項1〜5いずれか記載の金属磁性粉末の製造方法。
  8. 【請求項8】 含水酸化鉄にCo化合物及び希土類金属
    化合物を独立に又は混合して被着させる工程を少なくと
    も有し、該Co化合物及び希土類金属化合物を被着させ
    る原料として酢酸塩を使用すると共に、中和用の酸とし
    て酢酸を使用する請求項7記載の金属磁性粉末の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 請求項7又は8記載の製造方法より得ら
    れた金属磁性粉末を含有する磁性層を有してなる磁気記
    録媒体用塗膜。
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