JPH11105179A - 防曇膜及びその製造方法 - Google Patents

防曇膜及びその製造方法

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JPH11105179A
JPH11105179A JP9268942A JP26894297A JPH11105179A JP H11105179 A JPH11105179 A JP H11105179A JP 9268942 A JP9268942 A JP 9268942A JP 26894297 A JP26894297 A JP 26894297A JP H11105179 A JPH11105179 A JP H11105179A
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JP
Japan
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layer
segment
film
isocyanate group
hydrophilic compound
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Pending
Application number
JP9268942A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Omura
博 大村
Yoshiki Higuchi
慶樹 樋口
Masami Okuo
雅巳 奥尾
Eiji Harada
英治 原田
Shuji Suyama
修治 須山
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NOF Corp
Original Assignee
NOF Corp
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Publication date
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  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期間にわたって防曇性能を維持でき、透明
性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、かつ防曇性
を付与しようとする基材との密着性が良好である防曇膜
及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 基材上には、疎水性単量体から形成さ
れ、イソシアネート基を有する疎水性重合体セグメント
(I)の層が形成される。その疎水性重合体セグメント
(I)の層上には、水酸基を有する親水性化合物から形
成される親水性化合物セグメント(II)の層が、イソシ
アネート基と水酸基に基づくウレタン結合を介して結合
されている。疎水性重合体セグメント(I)はグラフト
共重合体の主鎖となり、親水性化合物セグメント(II)
はグラフト共重合体の側鎖となる。前記親水性化合物セ
グメント(II)の層は、スルフォン酸基を有する化合物
より形成されるものであることが望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ガラスや合成樹
脂成形材料、フィルムの様な透明な材料よりなるレン
ズ、鏡等の基材表面の結露による曇りや水滴の付着を防
止する防曇膜及びその製造方法に関するものである。さ
らに詳細には、基材に対して効果的に防曇性能を付与で
き、かつその性能を長期間にわたって持続できる防曇膜
及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、透明な基材は、露点以下の温度
になると表面に結露を生じて透明度が低下する。このよ
うな基材の曇りを防止する方法として、従来から幾つか
の提案がなされている。
【0003】例えば、界面活性剤、親水性重合体等の親
水性物質を基材表面に塗布する方法、界面活性剤を含有
する塗膜を基材表面に形成する方法、親水性フィルムを
基材にラミネートする方法(特開昭62−18253号
公報)、親水性の硬化性樹脂を基材に塗布して硬化させ
る方法(特開昭63−251401号公報)等が挙げら
れる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、防曇性が付
与された各種基材は、防曇膜に水が接触するような条件
下で使用される場合が多いことから、界面活性剤や親水
性重合体を基材表面に塗布する方法では防曇膜が水に溶
解して基材表面から流れ落ち、防曇持続性に欠けるとい
う問題があった。
【0005】また、親水性樹脂の硬化物や親水性フィル
ムを防曇膜として使用する方法では、吸湿により塗膜の
硬度が低下して傷が付いたり、塗膜が剥離したりして耐
久性に劣るという問題があった。しかも、防曇膜が吸湿
することにより白化するという問題があった。加えて、
親水性重合体を基材に反応させる機構は、基材から水素
を引き抜いて反応させるという機構であることから、使
用可能な基材に制限を受ける場合があった。
【0006】この発明は、上記のような従来技術に存在
する問題に着目してなされたものである。その目的とす
るところは、長期間にわたって防曇性能を維持でき、透
明性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、かつ防曇
性を付与しようとする基材との密着性が良好である防曇
膜及びその製造方法を提供することにある。その他の目
的とするところは、使用可能な基材に制限を受けるおそ
れを防止できるとともに、容易に製造できる防曇膜及び
その製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成
するために、本発明者らは鋭意研究した結果、この発明
を完成した。
【0008】すなわち、第1の発明の防曇膜は、基材上
に形成される防曇膜であって、疎水性単量体から形成さ
れ、イソシアネート基を有する疎水性重合体セグメント
(I)の層が基材側に位置し、水酸基を有する親水性化
合物から形成される親水性化合物セグメント(II)の層
が前記疎水性重合体セグメント(I)の層上でイソシア
ネート基と水酸基に基づくウレタン結合を介して疎水性
重合体セグメント(I)の層に結合している重合体より
構成されているものである。
【0009】第2の発明の防曇膜は、第1の発明におい
て、前記親水性化合物セグメント(II)の層が、スルフ
ォン酸基を有する化合物より形成されるものである。第
3の発明の防曇膜の製造方法は、基材上に形成されたイ
ソシアネート基を有する疎水性重合体セグメント(I)
の層上に、水酸基を有する親水性化合物を前記疎水性重
合体セグメント(I)のイソシアネート基とウレタン結
合を形成するように反応をさせて親水性化合物セグメン
ト(II)の層を形成するものである。
【0010】第4の発明の防曇膜の製造方法は、第3の
発明において、前記イソシアネート基を有する疎水性重
合体セグメント(I)の層が、下記に示されるイソシア
ネート基を有する単量体の群から選ばれる少なくとも1
種を有する単量体より形成されるものである。
【0011】一般式(1)
【0012】
【化3】 (式中、R1 は水素又はメチル基であり、そしてAは2
〜14個の炭素原子を有するアルキレン基である。) 一般式(2)
【0013】
【化4】 (式中、R2 は水素又はメチル基である。)ものであ
る。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。防曇膜は、その構造に特徴を有し、
基材上に形成されたイソシアネート基を有する疎水性重
合体セグメント(I)の層と、その上に形成された水酸
基を有する親水性化合物セグメント(II)の層が、イソ
シアネート基と水酸基とに基づくウレタン結合を介して
化学的に結合されて構成されている。さらに具体的に
は、防曇膜は疎水性重合体セグメント(I)と親水性化
合物セグメント(II)からなるグラフト共重合体により
構成され、親水性化合物セグメント(II)は基材上の疎
水性重合体セグメント(I)(主鎖)にウレタン結合を
介して結合しているグラフト共重合体のグラフト重合鎖
(側鎖)である。
【0015】なお、疎水性重合体と親水性化合物は、そ
れぞれ疎水性重合体セグメント(I)又は親水性化合物
セグメント(II)として互いに結合しない単独重合体又
は単独化合物等を含有していてもよい。すなわち、グラ
フト率が低い場合であっても所期の目的を達成できれば
よい。ちなみに、疎水性重合体はその膜厚が薄いほどグ
ラフト率が高く、親水性化合物は未反応化合物を除去す
ることによりグラフト率が高くなる。
【0016】疎水性重合体セグメント(I)とは、イソ
シアネート基を有する単量体を重合して得られる重合体
であって、このイソシアネート基が反応した構造を有す
る重合体である。ここで、イソシアネート基を有する単
量体とは、1分子中にイソシアネート基と重合性不飽和
二重結合とをそれぞれ1個以上有するものをいう。
【0017】このイソシアネート基を有する単量体とし
ては、下記の一般式(1)又は(2)で表されるものが
例示される。 一般式(1)
【0018】
【化5】 (式中、R1 は水素又はメチル基であり、そしてAは2
〜14個の炭素原子を有するアルキレン基である。) 一般式(2)
【0019】
【化6】 (式中、R2 は水素又はメチル基である。) 一般式(1)中のR1 、A及び一般式(2)中のR
2 は、防曇膜の防曇性能や基材に対する密着性等の観点
より定められている。
【0020】これらのイソシアネート基を有する単量体
としては、具体的には一般式(1)で表される単量体と
して2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、
一般式(2)で表される単量体としてイソシアネート
(メタ)アクリレート等が、水酸基を有する親水性化合
物との反応性や基材との密着性等の点より好適に使用さ
れる。
【0021】疎水性重合体セグメント(I)には、イソ
シアネート基を有する単量体の他に、イソシアネート基
を有しない単量体の1種又は2種以上を併用して形成さ
れたものであっても良い。そのようなイソシアネート基
を有しない単量体は水酸基及びアミノ基を有する単量体
以外であれば特に限定されず、具体的には、メチル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のア
ルキル(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチル(メ
タ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、フ
マル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリレート、
マレイン酸エステル類、イタコン酸エステル類、(メ
タ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、酢酸ビニ
ル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、フッ
素含有単量体、ケイ素含有単量体、リン含有単量体等が
挙げられる。
【0022】このイソシアネート基を有しない単量体の
配合量は、イソシアネート基を有する単量体と水酸基を
有する親水性化合物とが反応して形成されるウレタン結
合を確保するため、95重量%以下であることが好まし
い。
【0023】前記ウレタン結合とは、前述した疎水性重
合体セグメント(I)に結合しているイソシアネート基
が親水性化合物の水酸基とイオン反応することにより生
じ、親水性化合物セグメント(II)に結合している基を
いう。
【0024】次に、前記親水性化合物からなるセグメン
ト(II)における水酸基を有する親水性化合物として
は、下記(1)〜(9)の化合物が挙げられる。これら
の化合物は、適宜その1種が単独で又は2種以上が混合
して使用される。 (1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール系
化合物。 (2)グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の
グリセリン系化合物。 (3)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキ
シエチレン二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレ
ンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステ
ロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、
アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘
導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロッ
ク共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
アルキルエーテル等のポリオキシエチレン系化合物。 (4)ポリ酢酸ビニルの部分又は完全ケン化物等のポリ
ビニルアルコール系化合物。 (5)ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエー
テルエステル系化合物。 (6)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビ
タン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エス
テル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル系化合物。 (7)下記に示す一般式(3)又は(4)で例示される
多価アルコール脂肪酸部分エステル。
【0025】一般式(3)
【0026】
【化7】 (但し、R3 は炭素数1〜17のアルキル基である。) 一般式(4)
【0027】
【化8】 (但し、R4 は炭素数1〜17のアルキル基である。) (8)下記に示す一般式(5)の脂肪酸アルカノールア
ミド 一般式(5)
【0028】
【化9】 (但し、R5 は炭素数1〜17のアルキル基、n、n’
はそれぞれ1〜20である。) (9)下記に示す一般式(6)〜(8)のスルフォン酸
及びその塩 一般式(6)
【0029】
【化10】 (但し、R6 、R7 は水素又はメチル基、nは1〜11
である。) 一般式(7)
【0030】
【化11】 一般式(8)
【0031】
【化12】 (10)下記に示す一般式(9)〜(11)のスルフォ
ニル化合物 一般式(9)
【0032】
【化13】 一般式(10)
【0033】
【化14】 一般式(11)
【0034】
【化15】 これらの中では、防曇膜の性能及びその持続性が特に良
好である点でスルフォン酸基を有する化合物が好まし
く、具体的には、2−[(ヒドロキシアセチル)アミ
ノ]−エタンスルフォン酸、2−[(12−ヒドロキシ
−1−オキソドデシル)メチルアミノ]−エタンスルフ
ォン酸、2−[(6−ヒドロキシ−1−オキソヘキシ
ル)アミノ]−エタンスルフォン酸及びそれらの塩等が
挙げられる。
【0035】次に、防曇膜の製造方法について説明す
る。防曇膜の製造方法は、基材上に形成されたイソシア
ネート基を有する疎水性重合体からなる層上に、水酸基
を有する親水性化合物を接触させる条件下で反応させる
ことにより、基材表面にグラフト反応を起こさせて防曇
膜を得るものである。
【0036】疎水性重合体に結合したイソシアネート基
が親水性化合物の水酸基とイオン反応し、ここで生じた
ウレタン結合により親水性化合物が疎水性重合体にグラ
フト反応し、親水性化合物セグメント(II)の層が形成
される。従って、得られる防曇膜は、主鎖となる疎水性
重合体セグメント(I)の層上に、ウレタン結合を介し
て結合した親水性化合物のグラフト鎖からなる親水性化
合物セグメント(II)の層が形成された2層構造を有す
ることになる。
【0037】前記疎水性重合体セグメント(I)に結合
しているイソシアネート基が親水性化合物の水酸基とイ
オン反応する条件は、室温から150℃以上の高温まで
と広いが、室温付近で反応させようとすれば反応を促進
させるために、各種触媒を用いることが好ましい。ま
た、高温でも短時間で反応を完結させようとする場合も
同様に各種触媒を用いることが望ましい。
【0038】このような触媒としては、ジ−n−ブチル
錫ジラウレート、錫オクトエート、ジメチル二塩化錫、
トリメチル錫ヒドロキシド等の金属系化合物、テトラメ
チルブタンジアミン、トリエチルアミン等のアミン系化
合物、1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタ
ン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]ウンデセ
ン−7等が挙げられる。これらの触媒は、1種又は2種
以上が適宜選択して用いられる。
【0039】図1は、このような防曇膜の製造方法を概
念的に示したものである。図1において、実線はイソシ
アネート基を有する重合体の主鎖、−NCOはイソシア
ネート基、−NHCOO−はイソシアネート基が親水性
化合物の水酸基とイオン反応して生成したウレタン結
合、及び点線は親水性化合物のグラフト鎖を表す。
【0040】次に、防曇膜の具体的な製造方法について
説明する。まず、イソシアネート基を有する疎水性重合
体からなる層の形成について説明する。この重合体から
なる層は、下記の各方法で得ることができる。 (i) イソシアネート基を有する単量体の単独重合体若
しくは共重合体の単独又は双方を含有する組成物を基材
上に塗布して層を形成する方法。 (ii) イソシアネート基を有する単量体を含有する組成
物を基材上に塗布後、加熱により重合することによって
形成する方法。 (iii) イソシアネート基を有さず、かつ官能基を有す
る重合体の表面に、化学反応によってイソシアネート基
を導入して形成する方法。
【0041】このなかでは、(i) の方法が簡便であるた
め好ましい。塗布する際には、必要に応じて組成物を溶
剤で希釈して用いてもよい。イソシアネート基を有する
単量体は、前述したものであり、それらの中では、反応
効率の点から2−イソシアネートエチルメタクリレート
が好ましい。
【0042】このイソシアネート基を有する重合体は、
通常のラジカル重合開始剤を用いて重合することによっ
て得られる。この場合の重合体は、イソシアネート基を
有する単量体の1種又は2種以上を重合して、又は前述
したイソシアネート基を有しない他の単量体の1種又は
2種以上と共重合して得られる。
【0043】イソシアネート基を有する重合体中のイソ
シアネート基を有する単量体成分の量は5〜100重量
%が好ましく、5重量%未満では水酸基を有する親水性
化合物との反応の効率が悪くなる。
【0044】イソシアネート基を有する重合体からなる
層中には、イソシアネート基を有する重合体の他に、未
反応のイソシアネート基を有する単量体、及び通常の塗
膜を形成する際に用いられる添加剤を含有していてもよ
い。そのような添加剤としては、例えば、他の単官能又
は多官能単量体及びそれらの重合体、ラジカル重合開始
剤、硬化剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性
剤、及びコロイダルシリカ等の無機フィラー等が挙げら
れる。
【0045】また、基材との密着性を向上させるため
に、通常用いられるシランカップリング剤、チタネート
カップリング剤等を添加してもよい。さらに、塗膜を硬
化させるために、水酸基又はアミノ基を2個以上有する
化合物や、錫化合物等の硬化剤を添加してもよい。
【0046】次に、水酸基を有する親水性化合物より形
成される親水性化合物セグメント(II)の層の形成につ
いて説明する。この親水性化合物セグメント(II)の層
を形成するための水酸基を有する親水性化合物は、親水
性化合物単独又は他の溶剤や添加剤を含有するものであ
る。この親水性化合物を含有する組成物中の親水性化合
物の濃度は、100%でもよいが、親水性化合物が溶解
し、かつイソシアネート基を有する重合体の層が溶解し
ないような溶媒で希釈して用いてもよい。そのような溶
媒としては特に限定されないが、水、メタノール、アセ
トン、メチルエチルケトン等の極性溶媒が好ましい。ま
た、水酸基を有する親水性化合物中には、界面活性剤、
増粘剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0047】水酸基を有する親水性化合物をイソシアネ
ート基を有する重合体セグメント(I)に反応させる際
に、イソシアネート基を有する重合体セグメント(I)
の層が、親水性化合物に溶解してしまうと、弊害が生じ
るおそれがある。すなわち、得られる防曇膜の外観が白
化等により悪くなったり、表面層が親水性化合物の均一
な層にならないため、防曇性能が悪くなったりするおそ
れがある。このため、親水性化合物としては、イソシア
ネート基を有する重合体を溶解しないものが好ましい。
【0048】水酸基を有する親水性化合物をイソシアネ
ート基を有する重合体セグメント(I)に反応させる方
法としては、イソシアネート基を有する重合体セグメン
ト(I)からなる層の上に親水性化合物を塗布してもよ
く、またイソシアネート基を有する重合体セグメント
(I)の層を表面に有する基材を親水性化合物中に浸漬
してもよい。
【0049】この水酸基を有する親水性化合物は、具体
的には、前述した親水性化合物が挙げられ、これらの化
合物の中から適宜その1種を単独で又は2種以上を混合
して使用される。
【0050】防曇膜の製造方法において、未反応の親水
性化合物が残存する場合は、必要に応じて水等により洗
浄することが好ましい。基材としては、ガラスや合成樹
脂成形材料、フィルムの様な透明な材料が好適に用いら
れるが、不透明な材料であってもよい。そして、表面に
防曇膜が形成された基材は、レンズ、鏡、プリズム等の
光学部品あるいは車輌、船舶、家屋等の窓ガラス、スキ
ーゴーグル、水中メガネ、ヘルメットシールド、計器カ
バー、農園芸用フィルム等の用途に好適に用いられる。
【0051】以上のように、この実施形態によれば、次
のような効果が発揮される。 ・ 実施形態の防曇膜によれば、防曇膜の表面には親水
性化合物セグメント(II)よりなる親水性膜が配向され
ている。このため、表面の親水性膜により、多量の水滴
が基材表面に付着しても基材表面の曇りを効果的に防止
することができる。
【0052】・ 実施形態の防曇膜によれば、親水性化
合物セグメント(II)の層はウレタン結合を介して疎水
性重合体セグメント(I)の層に化学的に結合されてい
るとともに、その疎水性重合体セグメント(I)の層は
基材に強固に結合されている。
【0053】このため、多量の水滴が基材表面に付着し
ても親水性膜が脱落するおそれがなく、防曇性能を長期
間にわたって維持することができる。 ・ 実施形態の防曇膜によれば、親水性化合物セグメン
ト(II)により形成される膜は均一性が良いことから、
薄い膜で充分に性能を発現でき、透明性に優れている。
【0054】・ 実施形態の防曇膜によれば、薄い膜で
性能を発現でき、防曇膜の吸水量を少なくすることがで
きる。このため、吸水による性能の低下が抑制され、防
曇膜の膨潤によってその硬度が低下して防曇膜が傷つい
たり、剥離したりするおそれを抑制することができ、実
用的な塗膜強度を発揮することができる。
【0055】・ 実施形態の防曇膜によれば、基材側に
は疎水性重合体セグメント(I)の層が配向しており、
疎水性重合体セグメント(I)の層と基材との結合力が
良いため、防曇性を付与しようとする基材との密着性が
良好である。
【0056】・ 実施形態の防曇膜によれば、親水性化
合物を基材上に形成させる機構は、基材から水素を引き
抜いて反応させるという機構ではないことから、使用可
能な基材に制限を受けるおそれを抑制することができ
る。
【0057】・ 実施形態の防曇膜によれば、ガラスや
合成樹脂のような透明材料よりなる光学部品や成形品の
表面に防曇膜を好適に適用することができる。 ・ 実施形態の防曇膜の製造方法によれば、基材表面に
疎水性重合体セグメント(I)の層を形成し、その上に
水酸基を有する親水性化合物を塗布し、反応させること
により、親水性化合物セグメント(II)の層を形成し、
基材表面に防曇膜を容易に形成することができる。
【0058】
【実施例】次に、実施例、比較例及び参考例により、前
記実施形態をさらに具体的に説明するが、この発明はこ
れらにより限定されるものではない。なお、本文及び表
中の%は重量%を表す。また、分子量はゲルパーミエー
ションクロマトグラフ(GPC)により、テトラヒドロ
フランを展開溶剤として使用して測定した値である。
【0059】本文及び表中の略号は以下の通りである。 IM1:2−イソシアネートエチルメタクリレート IM2:2−イソシアネートメタクリレート IM3:2−イソシアネートエチルアクリレート IM4:イソシアネートアクリレート MMA:メチルメタクリレート BMA:ブチルメタクリレート LMA:ラウリルメタクリレート ST:スチレン DBF:ジブチルフマレート GMA:グリシジルメタクリレート MAA:メタクリル酸 HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート KBM403:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシ
シラン(信越化学工業社製の商品名「KBM−40
3」) KBM503:3−トリメトキシシリルプロピルメタク
リレート(信越化学工業社製の商品名「KBM−50
3」) HMG:ヘキサメチレングリコール PE350:ポリエチレングリコールモノメタクリレー
ト(日本油脂社製の商品名「ブレンマーPE−35
0」) MEK:メチルエチルケトン HC1:2−[(ヒドロキシアセチル)アミノ]−エタ
ンスルフォン酸 HC2:2−[(12−ヒドロキシ−1−オキソドデシ
ル)メチルアミノ]−エタンスルフォン酸 HC3:2−[(6−ヒドロキシ−1−オキソヘキシ
ル)アミノ]−エタンスルフォン酸 HC4:2−[(8−ヒドロキシ−1−オキソオクチ
ル)メチルアミノ]−エタンスルフォン酸 HC5:3,5−ジヒドロキシ−2−ピペリジンスルフ
ォン酸 HC6:3,4−ジヒドロキシ−5−メチル−2−ピロ
リジンスルフォン酸 HC7:2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチル−2
−メタンスルフォン酸ブチルアミド HC8:3−[(2−ヒドロキシエチル)スルフォン]
−N−(ヒドロキシメチル)−N−メチルプロパンアミ
ド HC9:N−(6−ヒドロキシ−1,3−ジオキセパン
−5−イル)−トランス−メタンスルフォンアミド HC10:ポリオキシエチレンソルビタンオクチル酸エ
ステル HC11:N,N−ポリオキシエチレンオクチル酸アミ
ド PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル THF:テトラヒドロフラン PVA:ケン化ポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業社製
の商品名「ゴーセノールKH−17」) OP80:ノニオン系界面活性剤(日本油脂社製の商品
名「ノニオンOP−80」) TTA:トリエチレンテトラミン(味の素社製の商品名
「アミキュア」) ACS:コロイダルシリカ(日産化学社製の商品名「ス
ノーテックスO」)をγ−グリシドキシプロピルトリメ
トキシシラン(信越化学工業社製の商品名「KBM−4
03」)で処理したアクリル変性コロイダルシリカの2
0%MEK溶液 LPO:ラウロイルペルオキシド(日本油脂社製の商品
名「パーロイルL」) (参考例1、イソシアネート基含有重合体の製造)撹拌
機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備
えた1リットルの反応容器に、MEKを50g仕込み、
窒素ガス通気下、80℃に加熱した。その後、撹拌しな
がら、メチルメタクリレートを90g、IM1を10
g、MEKを50g、及びLPOを5gの混合物を2時
間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間撹拌を
続け、重合を完結した。得られた溶液を石油エーテル中
に注入して重合体を析出させた後、乾燥してイソシアネ
ート基含有重合体aを得た。
【0060】その重合体aの重量平均分子量(Mw)は
18000であった。また、赤外線(IR)吸収スペク
トルから、仕込み量と同量のイソシアネート基が重合体
中に導入されていることを確認した。 (参考例2〜12)単量体を表1及び表2の種類及び量
に変える以外は参考例1と同様に重合を行い、イソシア
ネート基含有重合体b〜lを得た。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】 (実施例1、塗膜の製造)塗布液(イ)として参考例1
で得た重合体aの20%MEK溶液を用い、10cm×
10cm、厚さ2mmのアクリル樹脂板に、乾燥膜厚が
5μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、60
℃で10分間乾燥した。得られた塗膜上に水酸基含有親
水性化合物溶液(ロ)として、20%の2−[(ヒドロ
キシアセチル)アミノ]−エタンスルフォン酸(HC
1)水溶液を塗布した後、アクリル樹脂板を80℃の熱
風循環式乾燥機に入れて30分保った。加熱後、水洗、
乾燥することにより、無色透明な防曇膜を得た。
【0063】次に、得られた防曇膜について下記に示す
評価方法により物性を評価した。 (1) グラフト膜厚 グラフト重合前後の厚さをデジタル膜厚計(Sheen
Instruments社製)で測定し、増加量をグ
ラフト膜厚(μm)として表した。 (2) 塗膜硬度 JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行
い、塗膜硬度を鉛筆の硬さで表した。 (3) 密着性 JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて、塗膜
をカッターナイフで縦横方向に切断して基材に達するよ
うな100個のクロスカット(切断片)を作った。その
上にセロハン粘着テープ[ニチバン(株)製]を貼り付
け、接着面と垂直方向に剥離し、剥がれずに残ったクロ
スカットの数を次のような記号で表した。
【0064】○:100/100、△:80/100以
上、×:80/100未満 (4) 防曇性 (a)呼気試験 20℃、相対湿度50%の恒温室内で塗膜に息を吹きか
け、曇りの状態を目視によって次の基準にて判定した。
【0065】○:全く曇らない、△:やや曇りが見られ
る、×:全面が曇る (b)蒸気試験 60℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に試験板を
固定し、10分後の曇りの状態を目視によって次の基準
にて判定した。
【0066】◎:水滴が全くない、○:直径5mm以下
の水滴がない、△:直径5mm以下の水滴が部分的にあ
る、×:全面に5mm以下の水滴がある (5) 持続性 試験板を水中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の呼
気試験、蒸気試験及び下記の塗膜外観試験を行った。
【0067】塗膜外観試験(ヘイズ値) 直読式ヘイズメータ(東洋精機製作所製)にてヘイズ値
を測定した。なお、この値は一般的には1.0以下が良
く、1.0を越えると外観不良と判定される。その結果
を表4に示した。 (実施例2〜10)塗布液(イ)として表3に記載した
ものを用いる以外は、実施例1に記載した方法で防曇膜
を作り、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結
果を表5に示した。 (実施例11〜20)水酸基含有親水性化合物溶液
(ロ)として表4に記載したものを用いる以外は、実施
例1に記載した方法で防曇膜を作り、実施例1と同様に
物性を評価した。その評価結果を表6に示した。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】 (実施例21)重合体kを20g、TTAを5g、PG
Mを30gの混合物を、ポリカーボネート板に乾燥膜厚
が5μmになるように塗布し、120℃で1時間加熱し
た。次いで、20%の2−[(ヒドロキシアセチル)ア
ミノ]−エタンスルフォン酸(HC1)ナトリウム塩水
溶液を塗布後、実施例1と同様に80℃で30分加熱し
た。その後、水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評
価した。その評価結果を表7に示した。 (実施例22)重合体をl20g、MEKを20gの混
合物を、ガラス板に乾燥膜厚が2μmになるように塗布
し、80℃で30分加熱した。次いで、20%2[(6
−ヒドロキシ−1−オキソヘキシル)アミノ]−エタン
スルフォン酸(HC3)ナトリウム塩水溶液を塗布後、
実施例1と同様に80℃で30分加熱し、水洗、乾燥
し、実施例1と同様に物性を評価した。評価結果を表7
に示した。 (実施例23)重合体aを20g、MEKを20gの混
合物を、PETフィルム(帝人社製の商品名「テトロン
HP7」、膜厚100μm)に乾燥膜厚が2μmになる
ように塗布し、80℃で30分加熱した。次いで、20
%3,5−ジヒドロキシ−2−ピペリジンスルフォン酸
(HC5)ナトリウム塩水溶液を塗布後、実施例1と同
様に加熱した。その後、水洗、乾燥し、実施例1と同様
に物性を評価した。その評価結果を表7に示した。 (実施例24)重合体aを10g、HMGを5g、ジ−
n−ブチル錫ラウレートを0.5g、MEKを25gの
混合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように
塗布し、60℃で10分乾燥した。次いで、20%3,
4−ジヒドロキシ−5−メチル−2−ピロリジンスルフ
ォン酸(HC6)ナトリウム塩水溶液を塗布後、実施例
1と同様に加熱した。その後、水洗、乾燥し、実施例1
と同様に物性を評価した。その評価結果を表7に示し
た。 (実施例25)重合体bを20g、MEKを20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。これを、ジブチル錫ジ
ラウレート1%を含む20%2,4−ジヒドロキシ−
3,3−ジメチル−2−メタンスルフォン酸ブチルアミ
ド(HC7)水溶液中に入れ、30℃の室温で7日間放
置した。放置後、水溶液中よりアクリル板を取り出し、
水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評価した。その
評価結果を表7に示した。 (実施例26)重合体aを20g、MEKを20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。次いで、ジn−ブチル
錫ジラウレート1%を含む20%2−[(ヒドロキシア
セチル)アミノ]−エタンスルフォン酸(HC1)ナト
リウム塩水溶液を塗布し、30℃の室温で7日間放置し
た。放置後、水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評
価した。その評価結果を表7に示した。 (実施例27)重合体aを20g、KBM403を5
g、MEKを75gの混合物を、ガラス板に乾燥膜厚が
0.5μmになるように塗布し、100℃で30分乾燥
した。次いで、ジ−n−ブチル錫ジラウレート1%を含
む20%PVA水溶液を塗布し、90℃の熱風循環式乾
燥器に入れ60分保った。加熱後、水洗、乾燥し、実施
例1と同様に物性を評価した。評価結果を表7に示し
た。
【0072】
【表7】 (比較例1)アクリル板に水酸基含有親水性化合物HC
1を直接塗布し、実施例1と同様に物性を評価した。そ
の評価結果を表8に示した。 (比較例2)MMA/PE350(重量比80/20)
共重合体を20g、HC2を5g、HC3を5g、HM
DI(バイエル社製)を1g、MEKを30gの混合物
をアクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、
熱風循環式乾燥機で80℃で30分保った。これについ
て、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表8
に示した。 (比較例3)MMA/HEMA(重量比65/35)共
重合体を300g、HC1を100g、HC2を5g、
界面活性剤(花王社製の商品名「エマルゲン106」)
を5g、メチルセルソルブを300gの混合物をポリカ
ーボネート板に塗布し、熱風循環式乾燥機で130℃で
15分保った。これを、実施例1と同様に物性を評価し
た。その結果を表8に示した。 (比較例4)アセチルセルロースフィルムを水酸化ナト
リウムでケン化した後、アクリル板に貼った。これにつ
いて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表
8に示した。
【0073】
【表8】 表5〜8に示したように、各実施例及び比較例の結果か
ら次のことがわかる。すなわち、比較例1の界面活性剤
を塗布したもの及び比較例3の界面活性剤を含有する硬
化物は、初期の性能は良いが、耐水性がなく、容易に性
能が低下してしまう。比較例2の親水性成分を含有する
共重合体を塗布、硬化したものは初期性能が不十分であ
り、さらに長期間にわたって水に接触すると白化してし
まう。比較例4のセルロースフィルムは耐水性はある
が、防曇性能が不十分である。
【0074】これに対して、実施例1〜27の防曇膜
は、初期の防曇性能に優れ、かつその性能は水中に浸漬
した後も持続しており、公知の防曇膜に比べて防曇性
能、持続性共に優れていることは明かである。 (実施例28)塗布液(イ)として重合体aの20%M
EK溶液、水酸基含有親水性化合物溶液(ロ)として2
0%2−[(ヒドロキシアセチル)アミノ]−エタンス
ルフォン酸水溶液を用いる以外は、実施例1に記載した
方法で防曇膜を得た。得られた防曇膜の表面から約10
μmを削り取った化合物0.1gをTHFに溶解後、水
とTHFを用いて分別沈澱法〔例えば、「高分子溶液」
(高分子学会高分子実験学編集委員会編、共立出版)〕
により分離したところ、水/THF=2〜5(重量比)
で沈澱した成分0.06gが得られた。
【0075】核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)及び
赤外線吸収スペクトル分析(IR)により、重合体aの
MMA成分と水酸基含有親水性化合物HC1中の2−
[(ヒドロキシアセチル)アミノ]−エタンスルフォン
酸成分とが確認され、重合体aとHC1の反応物である
ことを確認した。
【0076】この反応物は、さらに、IR吸収スペクト
ルを測定したところ、イソシアネート基の2240〜2
270cm-1の吸収が減少し、新たに1650cm-1
3300cm-1にウレタン結合に基づく吸収が現れた。
これらのことから、得られた反応物は、イソシアネート
基が水酸基と反応し、ウレタン結合を生成し、この結合
を介して重合体aと親水性化合物HC1が反応している
ものであることがわかった。 (実施例29)実施例1で得た防曇膜をXPS[X線光
電子分光分析装置ESCA−850型(島津製作所
製)]で分析した。Nの吸収が8.9%(理論値9.1
%)、Sの吸収が8.8%(理論値9.1%)であっ
た。このことから、防曇膜の表面は2−[(ヒドロキシ
アセチル)アミノ]−エタンスルフォン酸のセグメント
鎖であることがわかった。
【0077】前記実施例28及び実施例29の結果よ
り、各実施例の防曇膜はウレタン結合を介して結合した
親水性化合物セグメント鎖が表面を覆っていることがわ
かる。このため、防曇膜は防曇性能が優れ、かつ水に長
期間接触しても親水性が低下することなく、性能を持続
することができた。
【0078】なお、前記実施例の形態より把握される技
術的思想について以下に記載する。 ・ 前記重合体は、疎水性重合体セグメント(I)を主
鎖とし、親水性化合物セグメント(II)を側鎖とするグ
ラフト共重合体である請求項1又は請求項2に記載の防
曇膜。
【0079】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性、防曇膜の防曇性能、その持続性、透明
性、被膜強度等の性能を確実に発揮させることができ
る。 ・ 前記疎水性重合体セグメント(I)は、イソシアネ
ート基を有する単量体とイソシアネート基を有しない単
量体とから形成されたものである請求項1又は請求項2
に記載の防曇膜。
【0080】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性や防曇膜のその他の性能を調整して、各性
能をバランス良く発揮させることができる。 ・ イソシアネート基を有する重合体を基材表面に塗布
し、次いでその表面に水酸基含有親水性化合物の溶液を
塗布するか、又は水酸基含有親水性化合物の溶液中に基
材を浸漬する請求項3又は請求項4に記載の防曇膜の製
造方法。
【0081】このように構成すれば、簡易な操作により
防曇膜を容易に製造することができる。
【0082】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような優れた効果を奏する。第1の発明の防曇
膜は、表面側が親水性化合物セグメント(II)よりなる
親水性膜で構成されており、かつこれが基材側の疎水性
重合体セグメント(I)に化学的に結合されている。従
って、表面の親水性膜により、水滴の付着による基材表
面の曇りを防止することができるとともに、多量の水滴
が基材表面に付着しても親水性膜が脱落するおそれがな
く、長期間にわたって防曇性能を維持することができ
る。
【0083】しかも、防曇膜の表面は親水性化合物セグ
メント(II)の均一性の良い膜であるため、透明性に優
れている。さらに、薄い膜で充分に性能を発現させるこ
とができ、防曇膜の膨潤によってその硬度が低下して防
曇膜が傷ついたり、剥離したりするおそれを抑制するこ
とができ、実用的な塗膜強度を発揮することができる。
その上、疎水性重合体セグメント(I)の層は、基材
に対する結合力に優れていることから、基材との密着性
も良好である。
【0084】加えて、親水性化合物セグメント(II)の
層を基材上に形成する機構が、基材から水素を引き抜い
て重合を開始させるという機構ではないため、適用でき
る基材に制限を受けるおそれを抑制することができる。
【0085】従って、この発明の防曇膜は、ガラスや合
成樹脂のような透明材料よりなる光学部品や成形品の表
面に好適に適用でき、産業上有用である。第2の発明の
防曇膜によれば、防曇性、その持続性、透明性、被膜強
度等の防曇膜の性能に優れるとともに、第1の発明の効
果をより高めることができる。
【0086】第3の発明の防曇膜の製造方法によれば、
第1の発明の優れた性能を有する防曇膜を容易に製造す
ることができる。第4の発明の防曇膜の製造方法によれ
ば、より性能の優れた防曇膜を容易に製造することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基材上に形成される防曇膜の製造法を概念的
に示した説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 須山 修治 愛知県知多郡武豊町字楠4丁目132番地

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に形成される防曇膜であって、疎
    水性単量体から形成され、イソシアネート基を有する疎
    水性重合体セグメント(I)の層が基材側に位置し、水
    酸基を有する親水性化合物から形成される親水性化合物
    セグメント(II)の層が前記疎水性重合体セグメント
    (I)の層上でイソシアネート基と水酸基に基づくウレ
    タン結合を介して疎水性重合体セグメント(I)の層に
    結合している重合体より構成されている防曇膜。
  2. 【請求項2】 前記親水性化合物セグメント(II)の層
    が、スルフォン酸基を有する化合物より形成されるもの
    である請求項1に記載の防曇膜。
  3. 【請求項3】 基材上に形成されたイソシアネート基を
    有する疎水性重合体セグメント(I)の層上に、水酸基
    を有する親水性化合物を前記疎水性重合体セグメント
    (I)のイソシアネート基とウレタン結合を形成するよ
    うに反応をさせて親水性化合物セグメント(II)の層を
    形成する請求項1に記載の防曇膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記イソシアネート基を有する疎水性重
    合体セグメント(I)の層が、下記に示されるイソシア
    ネート基を有する単量体の群から選ばれる少なくとも1
    種を有する単量体より形成されるものである請求項3に
    記載の防曇膜の製造方法。 一般式(1) 【化1】 (式中、R1 は水素又はメチル基であり、そしてAは2
    〜14個の炭素原子を有するアルキレン基である。) 一般式(2) 【化2】 (式中、R2 は水素又はメチル基である。)
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