JPH1110360A - 活性金属のクラッド材の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 Ｔｉなどの活性金属材同士、Ｔｉなどの活性
金属材とステンレス鋼などの他の金属を冷間圧延するこ
とによってクラッド材を製造する方法において、活性金
属のロールへの焼き付きがなく、また接合強度が低下す
ることがなく、更にコストが低い活性金属のクラッド材
の製造方法を提供すること。 【解決手段】 活性金属材同士、活性金属材と他の金属
材などを冷間圧延によりクラッド材にする方法におい
て、接合すべき面の二つの面のうちの少なくともクラッ
ドされる活性金属材あるいは他の金属材の面をブラッシ
ングして酸化層を除去した後、クラッドする活性金属材
と同じ活性金属の細線を用いたワイヤーブラシによりブ
ラッシングを施して活性金属材層を凝着させ、このブラ
ッシングした面が接合面になるように２枚の金属板を合
わせて冷間圧延を行うこと。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも一方の
側が活性金属材であるクラッド材の製造方法、詳細には
Ｔｉなどの活性金属材同士、Ｔｉなどの活性金属材と他
の金属材あるいはこれらの金属材の間に活性金属材及び
他の金属材のうちの１種または２種以上を入れて冷間圧
延をするクラッド材の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】Ｔｉなどの活性金属材同士あるいはこれ
らの活性金属材とステンレス鋼などの他の金属材を冷間
圧延によりクラッドする場合、圧延開始後すぐに活性金
属が圧延ロールに焼き付くために工業的な生産が難しか
った。そこで、従来は活性金属がロールへの焼き付きを
防止するため、クラッド材である活性金属材側のロール
などに潤滑剤を塗布して冷間圧延することによってクラ
ッド材を製造していた。この方法は、冷間圧延時に活性
金属が圧延ロールに焼き付くのを防止する方法として有
効であり、工業的な生産を可能にするものであるが、し
ばしば潤滑油が金属接合面に進入して接合強度を低下さ
せるという品質上の問題を生じることがあった。

【０００３】また、本発明者らは、活性金属材のロール
への焼き付きがなく、また接合強度が低下するという品
質上の問題を生じることがないクラッド材の製造方法と
して、前もって活性金属材の接合面と反対側の面にＣｕ
などの潤滑性に優れた金属を被覆しておいて冷間圧延す
る方法を発明して特願平８─３５１８３５号として特許
出願した。この方法は、活性金属材がロールに焼き付く
ことがなく、また接合強度を低下するような問題もない
が、Ｃｕなどの潤滑性に優れた金属をめっきなどで被覆
しておく必要があり、コストが高くなるという問題があ
った。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、Ｔｉなどの
活性金属材同士、活性金属材と他の金属あるいはこれら
の金属材の間に活性金属材及び他の金属材のうちの１種
または２種以上を入れて冷間圧延をすることによってク
ラッド材を製造する方法において、活性金属材がロール
に焼き付くことがなく、また接合強度が低下するという
品質上の問題を生じることがなく、さらにコスト的にも
有利なクラッド材の製造方法を提供することを目的とし
ている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者は活性金属材がロールに焼き付く現象につ
いて調査したところ、冷間圧延圧接の方法では、一般的
に１パス当たりの加工率を５０％程度にする必要がある
が、加工率を５０％程度にすると活性金属材がロールへ
焼き付くこと、この加工率を下げることができれば焼き
付きの発生を抑えることができること、及び前もってク
ラッドする活性金属材をクラッドされる金属材の表面に
薄く被覆しておくと冷間圧延の加工率を下げてもクラッ
ド材の接合強度が低下しないとの知見を得て本発明をな
したものである。

【０００６】すなわち、本発明の活性金属材同士あるい
は活性金属材とＦｅ系合金などの他の金属材とを冷間圧
延することによってクラッド材を製造する方法において
は、接合すべき二つの面のうちの少なくともクラッドさ
れる活性金属材あるいはＦｅ系合金などの他の金属材材
の面、すなわち、接合面の両方の面あるいはクラッドさ
れる活性金属材あるいは他の金属材材の面のみをステン
レス鋼製などのワイヤーブラシでブラッシングして酸化
層を除去した後、更にクラッドする活性金属材と同じ活
性金属の細線を用いたワイヤーブラシによるブラッシン
グを施してこの活性金属を薄く凝着させた後、このブラ
ッシングした面が接合面になるように２枚の金属板を合
わせて冷間圧延を行うことである。

【０００７】また、本発明の活性金属材同士あるいは活
性金属材とＦｅ系合金などの他の金属材との間に活性金
属材及びＦｅ系合金などの他の金属材のうちの１種また
は２種以上を入れて冷間圧延することによってクラッド
材を製造する方法においては、それぞれの接合すべき面
のうちの少なくとも一方、すなわち、それぞれの接合面
の両方の面あるいはクラッドされる活性金属材あるいは
他の金属材材の面のみにステンレス鋼などのワイヤーブ
ラシによるブラッシングを施して酸化層を除去した後、
更にクラッドする活性金属材と同じ活性金属の細線を用
いたワイヤブラシによるブラッシングを施してこの活性
金属を薄く凝着した後、このブラッシングした面が接合
面になるように金属板を合わせて冷間圧延を行うことで
ある。なお、本発明でいうクラッドされる活性金属材あ
るいは他の金属材とは、クラッドされる側の金属材のこ
とで、活性金属材同士でクラッドする場合には何れか一
方がクラッドされる活性金属材のことであり、また活性
金属材と他の金属材でクラッドする場合には他の金属材
のことである。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明は、活性金属材同士、活性
金属材と他の金属材あるいはこれらの金属材の間に活性
金属材及び他の金属材のうちの１種または２種以上を入
れて冷間圧延によりクラッド材を製造方法であるが、こ
の製造方法に適用する活性金属材は、Ｔｉ、Ｔａ、Ｚ
ｒ、Ｎｂ及びＭｏであり、これらの活性金属とクラッド
する他の金属材は、炭素鋼、ステンレス鋼などのＦｅ系
合金、モネルなどのＮｉ系合金、銅合金などである。本
発明のクラッド材の製造方法によって製造されるクラッ
ド材は、活性金属材同士、活性金属材と他の金属材、活
性金属材と他の金属材と同一あるいは他の活性金属材、
活性金属材と他の活性金属材と他の金属材、活性金属材
と他の活性金属材と他の金属材と同一あるいは他の活性
金属材などの組み合わせからなるものである。

【０００９】本発明の活性金属のクラッド材の製造方法
においては、クラッドする活性金属材と同じ活性金属の
細線を用いたワイヤブラシによるブラッシングを施して
活性金属材を凝着させているが、この層は、可能であれ
ば厚くてもてもよいが、０．１μｍ程度の非常に薄いも
のでもよい。また、本発明の活性金属のクラッド材の製
造方法において、クラッドされる活性金属材あるいは他
の金属材の面の表面の酸化物の層を除去するために行う
ブラッシングは、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼など
のワイヤーブラシを使用して行うことができる。

【００１０】

【作用】本発明は、接合すべき二つの面のうちの少なく
ともクラッドされる活性金属材あるいは他の金属材材の
面をブラッシングして酸化層を除去した後、クラッドす
る活性金属材の細線を用いたワイヤーブラシによるブラ
ッシングを施して薄い活性金属材層を凝着させ、このブ
ラッシングした面を接合面として２枚の金属板を合わせ
て冷間圧延しているので、１パス当たりの冷間圧延の加
工率を活性金属材がロールへ焼き付く加工率より低くし
てもクラッド材に必要な接合強度を得ることができる。

【００１１】

【実施例】次に、本発明の実施例を説明する。板厚０．
５ｍｍのＳＵＳ３０４板の表面の酸化層をステンレス鋼
の０．５ｍｍφの細線を用いたワイヤーブラシを用いて
除去した後、Ｔｉの０．５ｍｍφの細線を用いたワイヤ
ーブラシを用いてブラッシングを施して約０．１μｍの
Ｔｉ層を凝着し、このＴｉ層が凝着した面に板厚０．１
ｍｍのＴｉを重ねて冷間圧延してクラッド材を製造した
場合の加工率と接合強度の関係を求めた。その結果を図
２のＴｉブラッシング有りの線（●─●─●）で表し
た。また、比較例としてＴｉの細線を用いたワイヤーブ
ラシでブラッシングしなかったこと以外は上記実施例と
同じ条件でクラッド材を製造した場合の加工率と接合強
度の関係を求めた。その結果を図２のＴｉブラッシング
無しの線（○─○─○）で表した。この結果からクラッ
ド材として必要とする接合強度の２０Ｋｇ／ｍｍ² 以上
にするためには、Ｔｉブラッシング有りの場合には加工
率を２０％以上にすればよいが、Ｔｉブラッシング無し
の場合には加工率を５０％以上にする必要があることが
分かった。

【００１２】そこで、図１に示した装置及び上記板厚の
材料を用いて加工率２０％で冷間圧延してクラッドした
板の長さとロールへの焼き付き面積率との関係を求め
た。その結果を図３のＴｉブラッシング有りの線（●─
●─●）で表した。また、比較例として図１に示した装
置のＴｉワイヤーブラシを取り外した装置及び上記板厚
の材料を用いて加工率５０％で冷間圧延してクラッドし
た板の長さとロールへの焼き付き面積率との関係を求め
た。その結果を図３のＴｉブラッシング無しの線（○─
○─○）で表した。この結果から、本発明の実施例の場
合のロールへの焼き付き面積率は非常に小さく、クラッ
ド材長さが７００ｍのときに５％に過ぎなかった。これ
に対して、比較例の場合にはロールへの焼き付き面積率
は非常に高く、クラッド材長さが３００ｍのときに３１
％になり、これ以上冷間圧延することができなかった。
これらの結果から、本発明の製造方法、すなわち活性金
属であるＴｉの細線を用いたワイヤーブラシを用いてブ
ラッシングし、Ｔｉ層を凝着してからクラッドすると、
冷間圧延の加工率を低くしても高い接合強度のクラッド
材を製造することができ、また活性金属がロールに焼き
付くことが殆どなく製造できることが分かった。

【００１３】上記実施例では、クラッドする活性金属と
してＴｉを、またクラッドされる他の金属としてＳＵＳ
３０４を用いたものであるが、クラッドする活性金属と
してＴａなどの他の金属、クラッドされる他の金属とし
て他のステンレス鋼などのＦｅ系合金、Ｎｉ系合金、銅
系合金などを使用しても同様な効果が得られる。

【００１４】また、上記実施例では、クラッドする活性
金属としてＴｉを、またクラッドされる他の金属として
ＳＵＳ３０４を用いたクラッド材の製造方法であるが、
Ｔｉなどのクラッドする活性金属材とＴｉなどのクラッ
ドする活性金属材との間にクラッドされるＦｅ合金系な
どの他の金属を挟んだクラッド材などを製造する方法に
おいても同様な効果が得られる。この場合において、Ｔ
ｉなどの活性金属材が両表面になる場合にはクラッドさ
れるＦｅ合金系などの他の金属の両面をブラッシングし
て酸化層を除去した後、クラッドするＴｉなどの活性金
属材と同じ活性金属の細線を用いたワイヤーブラシによ
るブラッシングを施してＴｉ層を凝着させる必要があ
る。

【００１５】

【発明の効果】本発明のクラッド材の製造方法は、比較
的簡単な方法で活性金属のロールへの焼き付きがなく、
また接合強度が高いクラッド材を製造することができる
という優れた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に使用した装置の概念図であ
る。

【図２】本発明の実施例及び比較例によってクラッド材
を製造した場合の加工率と接合強度の関係を示すグラフ
である。

【図３】本発明の実施例及び比較例によってクラッド材
を製造した場合のクラッド板の長さとロールへの焼き付
き面積率との関係を示すグラフである。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 活性金属材同士あるいは活性金属材と他
   の金属材とを冷間圧延することによってクラッド材を製
   造する方法において、接合する二つの面のうちの少なく
   ともクラッドされる活性金属材あるいは他の金属材の面
   をブラッシングして酸化層を除去した後、クラッドする
   活性金属材と同じ活性金属の細線を用いたワイヤーブラ
   シによりブラッシングを施して活性金属を凝着させ、こ
   のブラッシングした面が接合面になるように２枚の金属
   板を合わせて冷間圧延を行うことを特徴とするクラッド
   材の製造方法。
2. 【請求項２】 活性金属材同士あるいは活性金属材と他
   の金属材との間に活性金属材及び他の金属材のうちの１
   種または２種以上を入れ、これを冷間圧延することによ
   ってクラッド材を製造する方法において、それぞれの接
   合する面の二つの面のうちの少なくともクラッドされる
   活性金属材あるいは他の金属材材の面をブラッシングし
   て酸化層を除去した後、クラッドする活性金属材と同じ
   活性金属の細線を用いたワイヤーブラシによりブラッシ
   ングを施して活性金属を凝着させ、このブラッシングし
   た面が接合面になるように２枚の金属板を合わせて冷間
   圧延を行うことを特徴とするクラッド材の製造方法。