JPH11102025A - 平面型レンズ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 透過型スクリーン等に適用した際に、どの方
向から見ても明るくて広い視野角を持ち、しかも画像の
輝度を低下させることなく、コントラストを向上させる
ことのできる平面型レンズを提供する。 【解決手段】 透明基材１と、この透明基材１の光入射
側の面に形成されたホットメルト接着剤層２と、ホット
メルト接着剤層２に固着された単層からなる多数の透明
ビーズ３によって平面型レンズＬを構成するとともに、
ホットメルト接着材２を、透明基材１側から順に透明層
２Ａと着色層２Ｂが積層された２層構造とし、その透明
層２Ａの溶融粘度を着色層２Ｂの溶融粘度よりも高くす
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、背面投射型表示装
置の透過型スクリーン、あるいは液晶表示装置、プラズ
マ表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置等の視
野角拡大板、あるいは液晶用バックライト、照明光源等
の光を拡散する光拡散板等に用いる平面型レンズに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】近年、偏光特性を有する光束を出射す
る、例えば液晶パネル等のライトバルブを用いた投射型
表示装置が開発されている。液晶を用いた投射型表示装
置では、液晶パネルで空間変調された画像光を投射レン
ズによりスクリーンに拡大して投射するようになってい
る。

【０００３】この投射型表示装置には前面投射型あるい
は背面投射型の装置がある。それら二つの表示装置のう
ち、背面投射型表示装置の構成例を図１に示す。

【０００４】この背面投射型表示装置は、光を出射する
ための投射光学系１００と、透過型スクリーン１０１
と、投射光学系１００から出射された光ａを反射して、
透過型スクリーン１０１に導くためのミラー１０２によ
って構成されている。その透過型スクリーン１０１は、
通常図２に示すように、フレネルレンズ１１１とレンチ
キュラレンズ１１２からなり、投射光学系１００から投
射された光ａをフレネルレンズ１１１によってほぼ平行
光とした後、レンチキュラレンズ１１２によって左右に
拡散するように構成されている。

【０００５】このように、背面投射型表示装置では、投
射光学系１００から出射された画像光ａが透過型スクリ
ーン１０１に拡大投射されるようになっており、観視者
は投射光学系１００の反対側から透過型スクリーン１０
１の透過光として投射画像の観察を行うことができる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、レンチキュ
ラレンズ１１２は直線的な形状のレンズが上下方向に規
則的に配列されているので、画像にモアレ干渉縞が発生
し、画像品位を低下させるという問題がある。さらに、
レンチキュラレンズ１１２には精密なレンズ形状が全面
にわたって形成されており、一部に僅かな欠陥が生じた
場合でも使用不可能となることから、その取り扱いに神
経を使わなければならない上、画像サイズが大型化する
昨今では、その大型化に伴うコスト上昇も避けられない
といった問題がある。

【０００７】また、レンチキュラレンズ１１２は、上記
したように画像光を主として左右（水平）方向に広く拡
散させるので、斜めから見た場合でも画像を認識するこ
とができるものの、これと直交する上下（垂直）方向に
はほとんど拡散させることができないために、視点を上
下させた場合、鮮明な画像を認識できる範囲が極めて狭
くなるという欠点がある。

【０００８】これらの問題点を解決する手段の一つとし
て、例えば背面投射型ディスプレイ等に用いる透過型ス
クリーンとして、特開平２−７７７３６号公報には、球
状レンズを樹脂等で固定した平面型レンズが提案されて
いる。この技術によれば大面積でつなぎ目の無いスクリ
ーンを得ることができるが、球状レンズに接する拡散パ
ネルによって広い視野角を得ようとしているため、画像
光は拡散パネルを通過する際に、その一部が後方散乱に
よって投射光学系方向に戻され、透過率が低くなるとい
う欠点がある。さらには、外乱光がスクリーンの光出射
面側から容易に進入できるので、画像のコントラストが
低下するという欠点もある。

【０００９】本発明はこのような実情に鑑みてなされた
もので、透過型スクリーン等に適用した際に、どの方向
から見ても明るくて広い視野角を持ち、しかも画像の輝
度を低下させることなく、コントラストを向上させるこ
とのできる平面型レンズの提供を目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の平面型レンズは、図３に例示するように、
透明基材１と、この透明基材１の光入射側の面に形成さ
れたホットメルト接着剤層２と、このホットメルト接着
剤層２に固着された単層からなる多数の透明ビーズ３・・
３によって構成されているとともに、ホットメルト接着
剤層２が、透明基材１側から順に透明層２Ａと着色層２
Ｂが積層された２層構造となっており、さらに透明層２
Ａの溶融粘度ｎ1 と着色層２Ｂの溶融粘度ｎ2 がｎ1 ＞
ｎ2 の関係にあることによって特徴づけられる。

【００１１】次に、本発明の平面型レンズの作用を述べ
る。まず、本発明の平面型レンズは、図２の透過型スク
リーンのレンチキュラレンズ１１２に替えて用いられ、
図４に示すように、その平面型レンズＬにはフレネルレ
ンズ１１１によってほぼ平行となった画像光ａが入射す
る。

【００１２】その入射光ａは、平面型レンズＬの光入射
面側に固着された透明ビーズ３に入射し、この透明ビー
ズ３のレンズ作用により収束された後、透明基材１との
界面で拡散して出射する。

【００１３】一方、平面型レンズＬに入射しても透明ビ
ーズ３に入射しなかった光ａ′つまり各透明ビーズ３に
よるレンズ作用を受けることがない光は、着色層２Ｂに
よって吸収される。また、外乱光ｂは、平面型レンズＬ
に対して透明基材１側から入射し、ホットメルト接着剤
層２へと達するが、その大半が着色層２Ｂで吸収される
ので、透明ビーズ３を通って投射型表示装置の内部まで
透過して迷光となる可能性が少ない。

【００１４】以上のことから、本発明の平面型レンズを
透過型スクリーンに適用することにより、観視者はどの
角度から見ても明るく、コントラストの高い映像を見る
ことができる。

【００１５】しかも、本発明の平面型レンズでは、ホッ
トメルト接着剤層２の透明層２Ａとの溶融粘度ｎ1 と、
着色層２Ｂの溶融粘度ｎ2 の関係がｎ1 ＞ｎ2 となって
いるので、熱プレスなどにより透明ビーズ３・・３を埋設
するときに、溶融粘度の低い着色層２Ｂの変形が溶融粘
度の高い透明層２Ａよりも先に起こる。その結果とし
て、埋設された透明ビーズ３・・３の光出射部分が透明層
２Ａ中に確実に露出し、着色層２Ｂによる光の吸収を低
減することができる。

【００１６】ここで、本発明の平面型レンズにおいて、
透明基材の光出射側の面に反射防止処理またはアンチグ
レア処理を施して反射防止膜を形成しておいてもよい。

【００１７】また、ホットメルト接着剤層の着色層は、
黒色または灰色の顔料あるいは染料により着色された樹
脂からなることが好ましいが、その着色は、赤、緑、青
あるいはそれらの混色としてもよい。

【００１８】なお、本発明で言う透明とは、目的とする
光すなわちレンズを透過させるべき光に対してこれを透
過し得るものであることを指し、いわゆる半透明も含め
た範囲までのことを指す。

【００１９】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、以下、図
面に基づいて説明する。

【００２０】図３は本発明の平面型レンズの実施の形態
の模式的断面図である。図３に示す平面型レンズＬは、
透明基材１と、透明基材１の光入射側の面に形成された
ホットメルト接着剤層２と、このホットメルト接着剤層
２に固着された単層からなる多数の透明ビーズ３・・３に
よって構成され、そのホットメルト接着剤層２が、透明
基材１側から順に積層された透明層２Ａと着色層２Ｂか
らなる２層構造となっており、さらに透明層２Ａの溶融
粘度ｎ1 を着色層２Ｂの溶融粘度ｎ2 よりも高く（ｎ1
＞ｎ2 ）して、入射光の透過効率を高めたところに特徴
がある。

【００２１】図５は本発明の平面型レンズの他の実施の
形態の模式的断面図である。この実施の形態は、図３の
構成に加えて、透明基材１の光出射側の面に反射防止膜
４を形成したところに特徴がある。

【００２２】その反射防止膜４は、反射防止処理または
アンチグレア処理によって形成されており、このような
反射防止膜４を形成しておくことで、外乱光ｂ（図４参
照）の光出射面における正反射を抑制することができる
結果、画像のコントラスト低下を回避することができ
る。

【００２３】ここで、以上の実施の形態に用いる透明基
材１の材質としては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボ
ネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、
ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の透明性を
有する樹脂が挙げられる。

【００２４】また、透明ビーズ３の材質としては、例え
ばガラス、あるいはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ
スチレン系樹脂等の透明性を有する樹脂などが挙げられ
る。

【００２５】さらに、透明基材１の光出射面に施される
反射防止処理あるいはアンチグレア処理の方法について
は、特に限定するものではないが、これらの例として
は、反射防止処理においては、透明基材１の光出射面の
上にシリカ、アルミナ等の公知の反射防止層をコーティ
ングあるいは真空蒸着等によって所定の厚みに形成する
方法が挙げられる。また、アンチグレア処理において
は、樹脂にシリカ、プラスチックビーズ等を混入してコ
ーティングする方法や、サンドブラス処理あるいはエン
ボス賦形処理等によって凹凸を形成する方法がある。

【００２６】本発明の各実施の形態に用いる透明層２Ａ
は、透明ビーズ３及び透明基材１に対して十分な接着力
をもつものが好ましく、その材質としては、アクリル樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポ
リスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビ
ニル・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂等からなる
透明なホットメルト接着剤が挙げられる。また、着色層
２Ｂは、それらの接着剤の中から溶融粘度の低い接着剤
を選び、これをベース樹脂とし、そこへ顔料を分散する
か、あるいは染料により染色することにより形成するこ
とができる。

【００２７】これら透明層２Ａと着色層２Ｂの形成に
は、例えばナイフコート、ロールコート、グラビアコー
ト、キスコート、スプレーコート、ブレードコート、ロ
ッドコート等の公知のコーティング法を採用する。

【００２８】そして、透明層２Ａと着色層２Ｂからなる
２層構造のホットメルト接着剤層２は、透明の接着剤層
を上述した各コーティング法により塗布し、次いで着色
した接着剤層を同様の方法によってコーティングすると
いった処理法により形成することができる。

【００２９】

【実施例】本発明の平面型レンズの具体的な実施例を以
下に説明する。 ［実施例１］図３に示す平面型レンズを次のように作製
した。

【００３０】まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂か
らなる平坦な透明基材１（厚さ０．２５ｍｍ）の一方の
表面に、ポリエステル系樹脂（東洋紡績株式会社製、商
品名バイロン２００：溶融粘度２９００poise ［２００
℃］）からなる透明層２Ａを、乾燥後の厚みが６μｍに
なるようにナイフコーターにより塗布した。さらにその
上にポリエステル系樹脂（東洋紡績株式会社製、商品名
バイロン６３０：溶融粘度７００poise ［２００℃］）
１００重量部に対し、黒色カーボンを３重量部配合した
着色層２Ｂを、乾燥後の厚みが５μｍになるようにナイ
フコーターにより塗布した。

【００３１】次いで、着色層２Ｂの上に、屈折率１．９
の透明ビーズ３・・３（ガラスビーズを使用、平均直径約
５０μｍ）を密に配設し、熱プレスにより、温度１２０
℃、圧力３ｋｇ／ｃｍ² で１０分間保持した後、常温ま
で冷却することにより、透明ビーズ３・・３を埋設して、
図３に示す構造の平面型レンズＬを得た。 ［実施例２］図５に示す構造の平面型レンズを次のよう
に作製した。

【００３２】実施例１と同様にして得られた平面型レン
ズの光出射側の面に、真空蒸着法を用いてＳｉＯ₂ から
なる反射防止膜４を膜厚１００ｎｍの厚みに成膜して、
図５に示す構造の平面型レンズＬａを得た。 ［比較例１］本発明の効果つまり透明層２Ａの溶融粘度
を着色層２Ｂよりも高くしたことによる効果を確認する
ために、図６に示す比較例を以下のようにして作製し
た。

【００３３】実施例１と同じ透明基材１１の一方の表面
に、実施例１と同じ透明層１２Ａ（東洋紡績株式会社
製、商品名バイロン２００：溶融粘度２９００poise
［２００℃］）を形成し、さらにその上に、実施例１で
透明層として用いたポリエステル系樹脂（東洋紡績株式
会社製、商品名バイロン２００：溶融粘度２９００pois
e［２００℃］）１００重量部に対し、黒色カーボンを
３重量部配合した着色層１２Ｂを、乾燥後の厚みが５μ
ｍになるようにナイフコーターにより塗布し、次いで実
施例１と同じ透明ビーズ１３・・１３を密に配設した後、
それら透明ビーズ１３・・１３を埋設して、図６に示す平
面型レンズＬｂを得た。

【００３４】そして、図１に示す背面投射型表示装置に
用いられている透過型スクリーン１０１のレンチキュラ
レンズ１１２（図２）に替えて、実施例１，２による各
平面型レンズと、比較例１による平面型レンズを装着し
て、それぞれの投射画像を観察したところ、いずれの平
面型レンズも、従来のレンチキュラレンズ１１２を用い
たスクリーンに比較してコントラストが高く、解像度も
良好でモアレ干渉縞のない、品位の高い画像が観察でき
た。さらに従来のレンチキュラレンズと比較して、視野
角が、少なくとも水平方向で１．１倍以上、垂直方向で
３．５倍以上であった。

【００３５】また、実施例１と比較例１を比較すると、
実施例１では、着色層２Ｂの溶融粘度が透明層２Ａより
も小さいので、透明ビーズ３が着色層２Ｂに沈み込んだ
後に透明層２Ａに沈み込んで、透明ビーズ３の光出射部
が透明層２Ａ中に露出した状態となっている。これに対
し、比較例１では、着色層１２Ｂと透明層１２Ａの溶融
粘度が同じであるので、透明ビーズ１３が着色層１２Ｂ
に沈み込んだ後、透明層１２Ａに沈み込む際に、着色層
１２Ｂが引きずられるようにして透明層１２Ａ中に入り
込んでしまい（図６参照）、透明ビーズ１３を透過する
光を遮るような状態となっている。従って、比較例１の
平面型レンズＬｂは、実施例１の平面型レンズＬに対し
て光透過率が低くなり、画面の明るさが実施例１の平面
型レンズＬに比べて劣ったものになる。

【００３６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の平面型レ
ンズは、透明基材と、この透明基材の光入射側の面に形
成されたホットメルト接着剤層と、このホットメルト接
着剤層に固着された単層からなる多数の透明ビーズから
なり、ホットメルト接着剤層を透明層と着色層からなる
２層構造とし、その透明層の溶融粘度を着色層の溶融粘
度よりも高くしているので、透過型スクリーンなどに適
用した場合、どの方向から見ても広い視野を持ち、また
画像の輝度を低下させることなく、コントラストを向上
させることができるという効果を達成できる。

【００３７】なお、本発明の平面型レンズにおいて、光
出射側の面に反射防止処理またはアンチグレア処理を施
しておけば、外乱光の鏡面反射を抑制でき、映像のコン
トラスト低下を防ぐことができる結果、さらに品位の高
い画像を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】背面投射型表示装置の一般的な構成例を示す図

【図２】その背面投射型表示装置に用いられる透過型ス
クリーンの構造を示す模式的断面図

【図３】本発明の平面型レンズの実施の形態の模式的断
面図

【図４】本発明の平面型レンズの作用説明図

【図５】本発明の平面型レンズの他の実施の形態の模式
的断面図

【図６】本発明の平面型レンズの比較例を示す模式的断
面図

【符号の説明】

Ｌ 平面型レンズ １ 透明基材 ２ ホットメルト接着剤層 ２Ａ 透明層 ２Ｂ 着色層 ３ 透明ビーズ ４ 反射防止膜

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 透明基材と、この透明基材の光入射側の
   面に形成されたホットメルト接着剤層と、このホットメ
   ルト接着剤層に固着された単層からなる多数の透明ビー
   ズによって構成されているとともに、上記ホットメルト
   接着剤層が、透明基材側から順に透明層と着色層が積層
   された２層構造となっており、かつ、その透明層の溶融
   粘度ｎ1 と着色層の溶融粘度ｎ2 がｎ1 ＞ｎ2 の関係に
   あることを特徴とする平面型レンズ。
2. 【請求項２】 上記透明基材の光出射側の面に反射防止
   処理またはアンチグレア処理が施されていることを特徴
   とする、請求項１に記載の平面型レンズ。