JPH11100391A - 有機リン化合物の製造方法 - Google Patents

有機リン化合物の製造方法

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JPH11100391A
JPH11100391A JP26869497A JP26869497A JPH11100391A JP H11100391 A JPH11100391 A JP H11100391A JP 26869497 A JP26869497 A JP 26869497A JP 26869497 A JP26869497 A JP 26869497A JP H11100391 A JPH11100391 A JP H11100391A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 三価の有機リン化合物を加水分解させること
なく、過酸化水素水溶液で酸化して、対応する五価の有
機リン化合物を得ることを課題とする。 【解決手段】 三価の有機リン化合物を、無機又は有機
の塩基の存在下、0〜50℃の温度で過酸化水素水溶液
で酸化することにより上記課題を解決する。 【効果】 三価の有機リン化合物の加水分解を抑制し
て、酸化反応をスムーズにすすめることができる。ま
た、酸化剤としての過酸化水素水溶液は、工業的に安価
で入手しやすく、また反応プロセスや廃水処理が容易で
あるので、本発明の方法は工業上有利である。更に、本
発明の方法によれば80〜95%の高収率で五価の有機
リン化合物を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機リン化合物の
製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、三価の有
機リン化合物を加水分解させることなく、過酸化水素水
溶液で酸化して、対応する五価の有機リン化合物を得る
方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ハロア
ルキルホスフェート/ポリホスフォネートやトリアルキ
ルホスフェート、トリアリールホスフェート、トリアル
キルホスフォネート、トリアリールホスフォネート、ト
リアルキルホスフィナート等に代表される五価の有機リ
ン化合物は、主に合成樹脂の可塑剤、難燃剤及び安定
剤、若しくは潤滑剤、金属抽出剤等として使用されてい
る。これらの五価の有機リン化合物は、主に対応する三
価の有機リン化合物を酸化することにより得られる(Qu
at.Rev.,16,208-239,1962 参照)。
【0003】例えば、(n+1)モルの三塩化リンと
(2n+3)モルのアルキレンオキシドとの反応物に、
更にnモルの脂肪族アルデヒド又はケトンを反応させる
と、次ような反応が起こる。
【0004】
【化3】
【0005】(式中、R及びZは同一又は異なって水素
原子又は低級アルキル基、nは0〜10の整数) 得られる式(I)の化合物は、(三価)ホスファイト/
(五価)ポリホスフォネートであり、種々の酸化剤で酸
化することにより式(IV) :
【0006】
【化4】
【0007】(式中、R、Z及びnは式(I)と同義)
で示される(五価)ホスフェート/(五価)ポリホスフ
ォネートとされる。
【0008】この式(I)で示される化合物は、三価の
ホスファイト構造部分Aと五価のポリホスフォネート構
造部分Bとからなる。構造部分BはP−C(リン−炭
素)結合であり、加水分解し難く、耐熱性に優れてい
る。一方、構造部分Aは三価のリンを含有し、加水分解
され易く、耐熱性に劣る。そこで式(I)で示される化
合物自体は、合成樹脂やポリウレタンフォームの難燃剤
や改良剤としては使用され難く、加水分解性や耐熱性を
改善するために、三価のリンを五価のリンに酸化するこ
とが必要となる。
【0009】また、式(III): (R1 O)3-a P−R2 a (III) (式中、R1 及びR2 は同一又は異なって炭素数1〜1
8のアルキル基又はハロアルキル基、若しくは炭素数6
〜10のアリール基、aは0〜2の整数)で示される三
価の有機リン化合物は、例えばa=1の場合、次式のよ
うに構造部分Cと構造部分Dからなる。
【0010】
【化5】
【0011】(式中、R1 及びR2 は式(III)と同義) この構造部分Dが占める>P−R2 の部分は>P−C
(リン−炭素)結合であり、加水分解し難い。一方、構
造部分Cが占める(R1 O)2 P−の部分は加水分解さ
れ易い。そこで式(III)で示される化合物についても酸
化による安定化が必要となる。
【0012】しかしながら、前記三価の有機リン化合物
は、単に酸化剤としての過酸化水素水溶液を用いるだけ
では、加水分解される問題があった。また、三価の有機
リン化合物の酸化方法については、米国特許第 3,027,3
95号(酸化剤:プロピレントリマーハイドロパーオキシ
ド)、米国特許第 3,042,698号(酸化剤:硫黄)、米国
特許第 3,042,700号(酸化剤:酸素/オゾン)及び特開
昭51- 6250号公報(酸化剤:塩素)等に記載されてい
る。しかし、酸化剤に過酸化水素水溶液を用いた酸化方
法については開示されていない。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を
解決すべく鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに
至った。
【0014】かくして、本発明によれば、三価の有機リ
ン化合物を、無機又は有機の塩基の存在下、0〜50℃
の温度で過酸化水素水溶液で酸化して、対応する五価の
有機リン化合物を得ることを特徴とする有機リン化合物
の製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる三価の有機リ
ン化合物は、化合物中の少なくとも1つのリン原子に3
つの有機基が結合された三価のリン原子を有する化合物
である。具体的には、本発明に用いられる三価の有機リ
ン化合物としては、式(I):
【0016】
【化6】
【0017】(式中、R及びZは同一又は異なって水素
原子又は低級アルキル基、nは0〜10の整数)、式
(II):
【0018】
【化7】
【0019】(式中、R及びZは式(I)と同義、mは
0又は1)及び式(III): (R1 O)3-a P−R2 a (III) (式中、R1 及びR2 は同一又は異なって炭素数1〜1
8のアルキル基又はハロアルキル基、若しくは炭素数6
〜10のアリール基、aは0〜2の整数)、から選択さ
れる化合物が好ましい。
【0020】前式(I)及び(II)における置換基R及
びZの「低級アルキル基」とは、炭素数1〜4の直鎖又
は分枝状のアルキル基であって、メチル、エチル、n-プ
ロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブ
チル等が挙げられ、置換基Rとしては、水素原子又はメ
チル基が好ましく、置換基Zとしては、水素原子、メチ
ル基又はエチル基が好ましい。
【0021】前式(III)における置換基R1 及びR2
「炭素数1〜18のアルキル基」とは、直鎖状又は分枝
鎖状の鎖状アルキル基あるいは環状アルキル基であっ
て、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プ
ロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチ
ル、iso-ペンチル、ヘキシル等の炭素数1〜6の低級ア
ルキル基、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウン
デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタ
デシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル;
メチルヘキシル、メチルヘプチル、メチルオクチル、メ
チルノニル、メチルデシル、メチルウンデシル、メチル
ドデシル、メチルトリデシル、メチルテトラデシル、メ
チルペンタデシル、メチルヘキサデシル、メチルヘプタ
デシル;ジメチルヘキシル、ジメチルヘプチル、ジメチ
ルオクチル、ジメチルノニル、ジメチルデシル、ジメチ
ルウンデシル、ジメチルドデシル、ジメチルトリデシ
ル、ジメチルテトラデシル、ジメチルペンタデシル、ジ
メチルヘキサデシル;2−エチルヘキシル、エチルヘプ
チル、エチルオクチル、エチルノニル、エチルデシル、
エチルウンデシル、エチルドデシル、エチルトリデシ
ル、エチルテトラデシル、エチルペンタデシル、エチル
ヘキサデシル等の炭素数7〜18の高級アルキル基など
の鎖状アルキル基、シクロブチル、シクロヘキシル等の
環状アルキル基が挙げられ、中でもn-ブチル、2−エチ
ルヘキシル、シクロヘキシルが好ましい。
【0022】また、「炭素数1〜18のハロアルキル
基」とは、直鎖又は分枝状のハロアルキル基であって、
前記アルキル基の任意の水素原子をハロゲン原子で置換
したものが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ
素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、中でも塩素が好
ましい。具体的には、クロロエチル、クロロプロピル等
が挙げられる。
【0023】更に、「炭素数6〜10のアリール基」と
しては、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、メシ
チル、ナフチル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニ
ル等が挙げられ、中でもフェニル、トリルが好ましい。
【0024】式(III)で示される三価の有機リン化合物
は、具体的には、a=0の場合、トリエチルホスファイ
ト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイ
ト、トリデシルホスファイト、トリシクロヘキシルホス
ファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニル
ホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(2,
6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリ(2,4,
6−トリメチルフェニル)ホスファイト、トリ(ノニル
フェニル)ホスファイト、トリス(クロロエチル)ホス
ファイト、トリス(クロロプロピル)ホスファイト、ト
リス(ジクロロプロピル)ホスファイト等が挙げられ
る。また、a=1の場合は有機ホスフォナイト、a=2
の場合は有機ホスフィナイトである。
【0025】また、本発明に用いられる三価の有機リン
化合物としては、三塩化リンとアルキレンオキシドとの
反応物に、更に脂肪族アルデヒド又はケトンを反応させ
た反応生成物を用いることができる。この反応生成物
は、特に精製することなく、反応副生物が混在したもの
であってもよい。
【0026】本発明に用いられる無機の塩基としては、
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等
のアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウムに代表され
るアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムに代表さ
れるアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア等が挙げら
れ、水溶液の形態で使用することができる。中でも水酸
化ナトリウム水溶液が好ましく、その濃度は特に限定さ
れないが、10〜40%(好ましくは20〜30%)で
ある。
【0027】また、本発明に用いられる有機の塩基とし
ては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルア
ミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族
アミン;ジメチルアニリンに代表される芳香族アミン、
ピリジン、ピコリン等の芳香族複素環塩基が挙げられ、
中でもトリエチルアミン、ピリジンが好ましい。なお、
上記無機及び有機の塩基は混合形態で用いてもよい。
【0028】本発明に用いられる無機及び有機の塩基の
使用量は、過酸化水素水溶液による酸化反応時の反応混
合物をアルカリ性にしうる量であるのが好ましい。具体
的には、前記反応混合物がpH8〜12に調整される量
であることが好ましい。驚くべきことに、このような条
件のもとでは三価の有機リン化合物の加水分解を抑制
し、過酸化水素の分解を促進し、酸化反応を完結させる
ことができる。前記塩基は、予め酸化反応開始前に加え
ても、過酸化水素水溶液と同時に添加してもよい。
【0029】本発明の酸化反応に用いられる過酸化水素
水溶液は、市販のものを用いることができる。その濃度
は特に限定されないが、3〜50%(好ましくは20〜
35%)である。濃度が3%より低い場合、反応の容量
効率が悪いので好ましくなく、50%より高い場合、工
業的に入手し難いので好ましくない。
【0030】本発明の酸化反応は、溶媒の存在下で行う
ことができる。溶媒としては、水又は反応に不活性な有
機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、ヘキサン、シ
クロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン
等の芳香族炭化水素、クロロホルム、ジクロロエタン等
の有機ハロゲン化合物等が挙げられ、中でもベンゼン、
ジクロロエタンが好ましい。有機溶媒は、三価の有機リ
ン化合物の製造時に用いられたものであってもよい。換
言すれば、三価の有機リン化合物の製造の際の反応液そ
のままでもよい。
【0031】反応温度は、約50℃以下が好ましく、例
えば0〜50℃、より好ましくは10〜30℃である。
本発明の反応は、激しい発熱を伴うため、必要に応じて
上記の温度になるように反応系を冷却する。反応時間
は、主に過酸化水素水溶液の濃度によって異なるが、通
常3〜7時間である。
【0032】酸化反応完結後、反応液は、有機リン化合
物の通常の後処理に付し、目的とする五価の有機リン化
合物を分離することができる。具体的には、水洗(又は
湯洗)−中和−水洗(又は湯洗)−ハロゲン化アルキル
等の副生物の回収−減圧下の脱水に付すことにより行
う。以上により所望の五価の有機リン化合物は、収率8
0〜95%で得られる。
【0033】また、本発明の酸化方法はホスファイト、
ホスフォナイト、ホスフィナイトのオリゴマー、ポリマ
ー等の酸化にも同様に適用できる。更に、本発明の酸化
方法は農薬、医薬等の中間体に用いられる三価の有機リ
ン化合物の酸化にも適用できる。
【0034】
【実施例】次に実施例により本発明を詳細に説明する
が、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものでは
ない。本実施例により得られた中間反応液及び最終生成
物である五価の有機リン化合物を、以下の方法により評
価した。
【0035】[活性塩素濃度]三価の有機リン化合物製
造の第1段反応の反応液について、活性塩素濃度(%)
を「分析化学実験法」(株式会社化学同人)の「硝酸銀
標準液による塩素イオンの定量法」に準じて測定し、第
1段反応の反応完結を確認した。
【0036】[酸価]三価の有機リン化合物製造の第2
段反応完結時の反応液、及び最終生成物について、酸価
(KOH mg/g)を「JIS K0070−1966」(指示
薬:BTB)に準じて測定した。
【0037】[ホスファイト部分のリン濃度(以下、P
Iと略す)]製造した三価の有機リン化合物について、
PI(%)をホスファイトにより消費されるヨウ素をチ
オ硫酸ナトリウムにより滴定する方法で求めた。
【0038】[収率]最終生成物の五価の有機リン化合
物の収率は、出発原料となる三塩化リンとアルキレンオ
キシドとが定量的に反応するものと仮定した場合の理論
収量をもとに算出した。
【0039】[外観・比重・粘度]最終生成物の五価の
有機リン化合物の外観を目視により観察し、比重(20
℃)及び粘度(cp、25℃)を、それぞれ「JIS
K0061」、「JISK2283」に準じて測定し
た。
【0040】[組成]最終生成物の五価の有機リン化合
物の組成を、GPC(ゲルパメーションクロマトグラフ
ィー:東ソー株式会社製、HLC−8020)を用いて
測定した。
【0041】[リン含有量]最終生成物の五価の有機リ
ン化合物のリン含有量(P%)を、生成物に硝酸及び過
塩素酸を加えて加熱分解し、蒸留水で希釈後、一定量の
硝酸、バナジン酸アンモニウム溶液及びモリブデン酸ア
ンモニウム溶液を加えて発色させた後、分光光度計を用
いて吸光度を測定し、生成物及びリン標準液の吸光度か
ら求めた。
【0042】[塩素含有量]最終生成物の五価の有機リ
ン化合物の塩素含有量(Cl%)を、生成物中のクロロ
アルキルの塩素をn−ブタノール/金属ナトリウムで過
熱分解した後、該塩素を硝酸銀水溶液で電位差滴定する
ことにより求めた。
【0043】実施例1 まず、三価の有機リン化合物を以下の第1及び第2段反
応により合成した。 第1段反応 攪拌棒、温度計、アルキレンオキシド吹き込み管、コン
デンサー付き500mlフラスコに、三塩化リン13
7.5g(1.0モル)、ジクロロエタン50.0g及
びトリエチルアミン0.28g(0.20%/PC
3 )を仕込み、氷水の入ったバスで10℃に冷やし
た。次いで、エチレンオキシド106.0g(2.4モ
ル)をボンベより流量計を通してガス状で吹き込んだ。
反応温度は10〜30℃、反応時間は4時間であった。
反応混合物の活性塩素濃度は8.2%(理論値8.6
%)であった。
【0044】第2段反応 第1段反応の反応混合物に滴下ロートよりアセトン3
9.3g(0.68モル)を30〜50℃、30分で添
加した。その後、徐々に反応温度を上げ、80〜90℃
で4時間反応させた。反応混合物の酸価は2、PIは
4.38%(計算値4.57%)であった。
【0045】得られた三価の有機リン化合物を下記の第
3段反応により酸化させ、五価の有機リン化合物を得
た。 第3段反応(酸化反応) 第2段反応の反応混合物に10〜20℃で、滴下ロート
より30%水酸化ナトリウム水溶液7gを20分で添加
した。反応混合物のpHは10.5であった。次いで、
35%過酸化水素水溶液43.8g(0.45モル)を
10〜30℃、4時間で添加した。一方、過酸化水素水
溶液を添加している間、反応混合物のpHが8.5〜1
0.5になるよう、適宜30%水酸化ナトリウム水溶液
を添加した。30%水酸化ナトリウム水溶液の全使用量
は14.1gであった。過酸化水素水溶液添加終了後、
30〜40℃、2時間反応を継続した。
【0046】後処理工程 第3段反応の反応混合物に30%水酸化ナトリウム水溶
液4.3gを添加し、50℃で1時間攪拌した。次い
で、分液ロートに静置し、水層と有機層に分離した。得
られた有機層を、温水(40〜50℃)100mlで2
回洗浄し、30〜80mmHgの減圧下、120℃で蒸
留した。残留する油状物は201g(収率89.0
%)、酸価は0.40、PIは0%であった。生成物の
組成及び品質を表1に示す。
【0047】比較例1 第3段反応で水酸化ナトリウム水溶液を用いない以外
は、実施例1と同様にして反応を行った。第3段反応
で、加水分解が激しく起こり、過酸化水素水溶液添加後
の反応混合物の酸価は14であった。また、生成物の加
水分解が激しいためその後の後処理工程は行わなかっ
た。
【0048】実施例2 下記の原料を用い、実施例1に準じて反応を行った。 原料 第1段反応 三塩化リン 137.5 g (1.0 モル) トリエチルアミン 0.3 g (0.2 %/PCl3) エチレンオキシド 98.1 g (2.23モル) 第2段反応 アセトアルデヒド 39.0 g (0.89モル) 第3段反応 35%過酸化水素水溶液 24.6 g (0.25モル) 25%水酸化ナトリウム水溶液 14.1 g 第1段反応後の活性塩素濃度は11.3%(理論値1
1.6%)、第2段反応後の酸価は1.8、PIは2.
60%であった。また、得られた生成物は収量167g
(収率84.8%)、酸価は0.35、PIは0%であ
った。生成物の組成及び品質を表1に示す。
【0049】実施例3 下記の原料を用い、実施例1に準じて反応を行った。 原料 第1段反応 三塩化リン 137.5 g (1.0 モル) トリエチルアミン 0.3 g プロピレンオキシド 145.0 g (2.5 モル) 第2段反応 アセトアルデヒド 25.3 g (0.58モル) 第3段反応 35%過酸化水素水溶液 53.4 g (0.55モル) 25%水酸化ナトリウム水溶液 18.5 g 第1段反応後の活性塩素濃度は5.9%(理論値6.2
7%)、第2段反応後の酸価は2.2、PIは5.0%
であった。また、得られた生成物は収量214g(収率
83.5%)、酸価は0.50、PIは0%であった。
生成物の組成及び品質を表1に示す。
【0050】 実施例4 原料 第1段反応(1) 三塩化リン 137.5 g (1.0 モル) ベンゼン 90.0 g トリエチルアミン 0.3 g エチレンオキシド 141.3 g (3.2 モル) (2) 三塩化リン 68.4 g (0.5 モル) エチレンオキシド 23.0 g (0.977 モル) 第2段反応 アセトン 62.0 g (1.069 モル) 第3段反応 35%過酸化水素水溶液 69.9 g (0.719 モル) トリエチルアミン 10.3 g ( 5%/PCl3) 上記原料を用い、下記の操作以外は、実施例1に準じて
反応を行った。
【0051】第1段反応(1) では、実施例1の反応条件
に準じ反応し、次いで90〜100℃、100mmHg
以下の減圧下でベンゼンを回収し、トリス(クロロエチ
ル)ホスファイト1モルを含む反応混合物を得た。第1
段反応(2) では、第1段反応(1) の反応混合物に三塩化
リンを添加し、次いで、エチレンオキシドを反応させて
ビス(クロロエチル)ホスフォロクロリデート0.5モ
ルを合成した。反応混合物の活性塩素濃度は8.3%
(理論値8.58%)であった。
【0052】第2段反応では、第1段反応(1) 、(2) の
トリス(クロロエチル)ホスファイト1モルとビス(ク
ロロエチル)ホスフォロクロリデート0.5モルとの反
応混合物にアセトンを添加し、80〜100℃で5時間
反応させた。反応後の酸価は2.4、PIは4.5%で
あった。
【0053】第3段反応では、第2段反応の反応混合物
を10℃まで冷却した後、トリエチルアミンを添加し
た。35%過酸化水素水溶液を10〜30℃、2時間で
添加した。35%過酸化水素水溶液の添加開始直後の反
応混合物のpHは10.8、添加終了後のpHは8.5
であった。30〜35℃で2時間反応を継続した。反応
混合物を水200mlで2回洗浄し、10〜50mmH
gの減圧下、ジクロロエタン、水分等を留去した。得ら
れた生成物は収量294g(収率90.0%)、酸価は
0.73、PIは0%であった。生成物の組成及び品質
を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】表1において組成物のn、R、Zは式
(I)に対応し、GPCチャートより求めた。図1に実
施例4で得られた生成物のGPCチャートを示す。図1
のチャートから、生成物の構造式n=5以上は分割され
ず、ショルダーピークを示していることがわかる。
【0056】実施例5 市販品のトリフェニルホスファイト(TPI、城北化学
社製、JP360)を本発明の方法で酸化した。実施例
1のアルキレンオキシドの吹き込み管を滴下ロートに代
えた以外は同様の装置のフラスコに、TPI310g
(1モル)、溶剤としてのベンゼン100g、トリエチ
ルアミン16g(5%/TPI)を仕込み、10℃に冷
却してから35%過酸化水素水溶液107g(1.10
モル)を10〜15℃で1時間かけて添加した。35%
過酸化水素水溶液の添加時の反応混合物のpHは8〜1
0であった。次いで、10〜15℃で2時間反応した
後、反応混合物を等量の温水(40〜50℃)で洗浄し
た。洗浄後の反応混合物をアルカリで中和し、更に等量
の温水(40〜50℃)で洗浄し、3mmHgの減圧下
で蒸留した。210〜220℃/3mmHgで蒸留され
た主留分は、264g(収率81.0%)であった。ま
た、この生成物は、白色粉末、融点48.4℃、酸価
0.1、Pは10.6%であった。
【0057】比較例2 下記の原料を用い、トリエチルアミンを使用しない以外
は、実施例5と同様にして反応を行った。反応時のpH
は1〜4であった。反応混合物の酸価は10.8であっ
た。また、加水分解が起こり、酸価が高いため後処理工
程は行わなかった。 原料 TPI(試薬品) 310g(1モル) 溶剤 ベンゼン 100g 35%過酸化水素水溶液 57g(理論量の10%過剰)
【0058】実施例6 トリブチルホスフェートの合成 攪拌棒、温度計、滴下ロート、コンデンサー付き1リッ
トルの四つ口フラスコに、ブタノール122g(1.6
5モル)、塩素捕捉剤ピリジン130g(1.65モ
ル)、溶剤ベンゼン200gを仕込み、5℃以下、40
分で三塩化リン69g(0.5モル)を追加し、更に5
℃以下で2時間反応した。次いで反応物を冷却し、析出
したピリジンの塩酸塩を濾別し、該塩酸塩をベンゼン5
0gで洗浄し、濾液365gを得た。ガスクロマトグラ
フィーによる分析で、該濾液中にトリブチルホスファイ
トが生成していることを確認した。得られた濾液を前記
と同様のフラスコに仕込み、ピリジン5gを添加した。
次いで、35%過酸化水素水溶液54g(0.55モ
ル)を滴下ロートより5℃以下、40分で追加した。過
酸化水素水溶液の追加中は発熱反応であった。更に1時
間反応を行った後、反応混合物を分液ロートに移し、水
洗−5%水酸化ナトリウム水溶液による中和−ベンゼン
回収等の後処理を行い、更に減圧蒸留を行った。得られ
た主成分は、収量111g(収率83.0%)であっ
た。また、この生成物は、透明液体、比重0.978
(20/20℃)、沸点145〜150℃/3mmHg であ
った。ガスクロマトグラフィーによる分析にて該主成分
はトリブチルホスフェートであった。
【0059】
【発明の効果】本発明は、三価の有機リン化合物を、無
機又は有機の塩基の存在下、0〜50℃の温度で過酸化
水素水溶液で酸化して、対応する五価の有機リン化合物
を得るので、三価の有機リン化合物の加水分解を抑制し
て、酸化反応をスムーズにすすめることができる。ま
た、酸化剤としての過酸化水素は、工業的に安価で入手
しやすく、また反応プロセスや廃水処理が容易であるの
で、本発明の方法は工業上有利である。更に、本発明の
方法によれば80〜95%の高収率で五価の有機リン化
合物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例4で得られた五価の有機リン化
合物のGPCチャ−トである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 三価の有機リン化合物を、無機又は有機
    の塩基の存在下、0〜50℃の温度で過酸化水素水溶液
    で酸化して、対応する五価の有機リン化合物を得ること
    を特徴とする有機リン化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリ
    ウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナト
    リウム及びアンモニアの無機の塩基並びにジメチルアミ
    ン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルア
    ミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン
    及びピコリンの有機の塩基から1種以上選択される化合
    物である請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 三価の有機リン化合物が、三塩化リンと
    アルキレンオキシドとの反応物に、更に脂肪族アルデヒ
    ド又はケトンを反応させた反応生成物である請求項1又
    は2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 三価の有機リン化合物が、式(I): 【化1】 (式中、R及びZは同一又は異なって水素原子又は低級
    アルキル基、nは0〜10の整数)、式(II): 【化2】 (式中、R及びZは式(I)と同義、mは0又は1)及
    び式(III): (R1 O)3-a P−R2 a (III) (式中、R1 及びR2 は同一又は異なって炭素数1〜1
    8のアルキル基又はハロアルキル基、若しくは炭素数6
    〜10のアリール基、aは0〜2の整数)から選択され
    る化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法。
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