JPH1089442A - 3次元歯面修整はすば/やまば歯車 - Google Patents

3次元歯面修整はすば/やまば歯車

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JPH1089442A
JPH1089442A JP24610596A JP24610596A JPH1089442A JP H1089442 A JPH1089442 A JP H1089442A JP 24610596 A JP24610596 A JP 24610596A JP 24610596 A JP24610596 A JP 24610596A JP H1089442 A JPH1089442 A JP H1089442A
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善正 酒井
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昌文 杉本
Mitsugi Yamashita
貢 山下
Mitsuru Obana
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 歯幅の長いはすば/やまば歯車においては、
同時接触線総長さが噛合いの進行に伴い周期的に変動す
るので、噛み合っている各歯のたわみ量も進行に伴って
変動し、振動や騒音を発生してしまう。 【解決手段】 インボリュート曲線を歯形とする基準歯
面を有して高負荷を伝達する歯幅の長いはすば/やまば
歯車において、前記歯形の歯面に歯幅方向接触線ピッチ
Psの整数倍の幅の完全接触線領域Fを残し、この領域
F以外の歯面を、噛合い始め部2から完全接触線領域F
までを連続する曲面で形成し、この完全接触線領域Fか
ら噛合い終り部3までを連続する曲面で形成し、これら
両曲面を歯筋方向位置により歯形形状が異なる3次元的
なバイアス歯面修整を施して歯面修整領域Es,Eeに
形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この出願に係る発明は、はすば歯
車及びやまば歯車において噛合い時に生じる振動及び騒
音を低減させることができる3次元歯面修整はすば/や
まば歯車に関し、更に詳しくは、高負荷を伝達する歯幅
の長いはすば/やまば歯車において歯の噛合い時の同時
接触線総長さが概念上変化しないようにして振動及び騒
音を低減させた3次元歯面修整はすば/やまば歯車に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、一般的な歯車の振動発生原因
としては、歯車の噛合い進行に伴って噛合う歯群のばね
剛さが変動すること、及び歯面に加工誤差が存在するこ
とに起因することが知られている。
【0003】この歯群のばね剛さの変動は、図5の説明
図に示すように、駆動歯車G1 から被動歯車G2 の歯面
に荷重Wがかかると歯が弾性変形し、その撓みδ分だけ
歯車の回転角が想像線のように遅れることになり、これ
は図6の説明図に示すように、駆動歯車G1 全体が荷重
Wの方向と平行に撓みδ分だけ想像線のように被動歯車
2 側に移動したと言える。
【0004】この荷重Wをはすば歯車において考える
と、図7の説明図に示すように、その荷重分布Uは噛合
い始めから徐々に増加して中央部で最大となった後、徐
々に減少するように作用することとなる。
【0005】一方、ここで入力荷重が一定でかつ歯面に
加工誤差がないと仮定したとしても、歯車は歯幅方向の
両端部は一方が解放しているために弱く中央部は強いた
め、荷重のかかる歯の噛合い位置によって歯の局部剛性
が異なり、この異なりによって局部剛性の差を生じてい
る。また、歯先側が弱くて歯元側が強いという剛性の違
いによっても同様のことが言える。そのため、歯元側か
ら噛合い始めて歯先側で噛合い終る駆動側や歯先側から
噛合い始めて歯元側で噛合い終る被動側のはすば/やま
ば歯車においては、上記荷重分布では歯幅方向両端にお
いて同様の荷重であったとしても噛合い始めと噛合い終
りにおいて剛性変化を生じてしまう。
【0006】このような剛性変化をバネに仮定して説明
すると、上記図6に示すように、駆動歯車G1 と被動歯
車G2 との間の動力をバネkによって伝達していると仮
定し、上記噛合い位置による局部剛性の異なりは、図7
のバネkの太さで示すように、噛合いの進行時には両端
部が弱く、中央部が強いバネ定数の異なったバネkによ
って支持しながら動力を伝達していると言える。しか
も、図示しないが噛合い始めの方が噛合い終りよりも強
いバネ定数のバネkによって動力を伝達していると言え
る。従って、噛合いの進行と共に伝達するバネ定数が変
化するために振動や騒音を発生させることとなる。
【0007】また、図8の斜視図に示すように、噛合い
の進行に伴って同時接触線長さの和(以下、「同時接触
線総長さ」という。)も変化している。すなわち、斜め
の接触線Lは、噛合い進行方向Vに沿って噛合い始めか
ら徐々に接触線Lが長くなって中央部で完全接触線Lo
となり、噛合い終りにかけて徐々に接触線Lが短くなっ
て噛合いを終わるため、各接触線Lの長さ変化によって
分担荷重自体が噛合い進行に伴って変化し、しかも同時
に接触している接触線Lの総長さも増減しながら噛合う
こととなる。
【0008】このような同時接触線総長さの変化をバネ
に仮定して説明すると、図示しないが、噛合いの進行に
伴ってバネkの本数が常に変動(増減)しながら動力を
伝達していると言える。
【0009】よって、被動歯車G2 は動力伝達時にこれ
らの影響を受けて複雑な不等速回転や荷重変化を受ける
こととなり、振動や騒音を発生させることとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図9に示す
歯の側面図に示すように、はすば/やまば歯車における
噛合いの進行に伴う同時接触線総長さの時間的変化は、
歯筋方向SのピッチPsを整数n倍にし、歯たけ方向R
のピッチPrを整数k倍にするように、1以下の端数
x,yを無くし、正面噛合い率と重なり噛合い率とを掛
け合わせた積噛合い率を整数とすることによって概念上
無にできることが一般的に知られている。しかし、様々
な使用条件のはすば/やまば歯車において全てこのよう
な整数ピッチに設計・製作することは不可能である。
【0011】ここで、従来の2次元的な歯面修整(歯形
修整やエンド・リリーフ等の歯筋修整あるいはそれらの
組合せ)により実際の歯当たりにおける積噛合い率が整
数となるようにすることが考えられるが、この場合で
も、同時接触線総長さを変化しないようにはできるが、
上述したように噛合い位置による歯の局部剛性は歯面上
の位置によって異なり、しかも、図10のはすば歯車を
示す正面図のように、歯幅端部における歯11の形状不
完全部11aにおける局部剛性の弱さは解決できないた
め、上述したように噛合いの進行に伴い接触線上の荷重
分布が周期的に変動する。従って、噛合っている各歯1
1のたわみ量δ(図5)は噛合いの進行に伴って変動
し、駆動歯車に対する被動歯車G2 の遅れも変動して振
動や騒音が発生してしまう。
【0012】よって、積噛合い率を整数とすることだけ
を念頭に置いた歯面修整では十分な振動及び騒音の低減
を図ることができず、歯の局所剛性が接触線上の荷重分
布に及ぼす影響をも考慮した歯面修整を行うことが必要
となる。しかも、ヘルツ応力等の歯面強度にも配慮が必
要である。
【0013】一方、歯面には常に加工誤差が存在し、理
論的に正しいインボリュート歯面形状から噛合い点がず
れることにより、その分だけ被動歯車が不等速回転をし
て振動が生じる。また、歯面強度や噛合い始めの衝撃緩
和等を考慮して決定する設計指示としての歯面修整形状
(加工目標形状)によっても、歯当たり範囲(歯面上の
接触範囲)及び接触線上の荷重分布が変化し、そのため
に駆動・被動歯車一対としての全ばね剛さが変化して振
動が発生する。
【0014】ここで、上記加工誤差が歯車振動に及ぼす
影響については精度向上により対応するものとしても、
実際の歯車の低振動設計において問題となるのは、歯形
修整や歯筋修整等の歯面修整によって決まる歯面修整形
状の決定において一般解としての最適設計手法が確立さ
れていないことにある。すなわち、モジュール,歯数,
歯幅等の基本諸元や歯面修整の形状,範囲,絶対値はそ
れぞれが独立にではなく、互いに複雑に関連しながら上
述の同時接触線総長さ及び接触線上の荷重分布の時間変
化に影響を与えているため、基本諸元における各々の要
因が歯車振動に及ぼす影響については定性的に解明され
てはいるが、この基本諸元を決定した後の歯面修整設計
では歯面全体の修整形状,範囲,絶対値を定量的に決定
することによる低振動化に対する最適設計手法が確立さ
れていないのである。
【0015】従って、従来は、それらを歯面強度等を考
慮しながら経験的に決めるか、あるいは歯車起振力の指
標値を求めるためのシュミレーション・プログラムでの
図11(a) の歯形修整,(b) の歯筋修整,(c) の歯形修
整と歯筋修整との組合せによる2次元的な歯面修整等、
歯面修整仕様の仮定を変更しながらの繰り返し計算を基
本諸元及び歯車運転条件ごとに行う繁雑なトライ&エラ
ーで決定する必要があった。
【0016】このように、歯面修整仕様をまず仮定して
シュミレーション・プログラムにより歯車起振力の指標
値を求め、その結果を見て歯面修整仕様を変更し再計算
を行うという、トライ&エラーの繁雑な検討を行う作業
は非常に時間と労力を要する作業となる。
【0017】しかも、採用した歯面修整仕様が本質的な
最適設計であるとは限らない場合もある。これは、有限
の歯幅を持つはすば/やまば歯車の歯幅端部における歯
の形状の不完全部を主とする局所剛性変化及び同じく同
時接触線の不完全長さ部の接触線長さ変化が駆動・被動
歯車一対としての全ばね剛さの変動に必ず参画してくる
ことが要因となっており、このために当該部における歯
形修整,歯筋修整という二元解析が要求されるという複
雑さが低振動設計を困難なものにしているのである。
【0018】従って、振動や騒音を極力減少させる必要
がある、例えば、潜水調査船や海洋観測船、あるいは低
騒音機器等における高負荷を伝達する歯幅の長いはすば
/やまば歯車においては、振動及び騒音を効果的に低減
させることが切望されている。
【0019】なお、歯幅の短い小型はすば歯車において
は、例えば、特開昭63−180766号公報記載の発
明のように、互いに噛合う一対の歯車の歯当たり部が噛
合い進行方向に沿って長く延びるよう、歯筋方向位置に
よって圧力角を漸次変化させるという歯面修整による低
振動・低騒音歯車が発明されているが、この発明は、上
述の2次元歯面修整設計における問題点のうち、どのよ
うな修整範囲,絶対値が与えられた基本諸元において最
適であるかという問題を根本的に解決できるものではな
い。
【0020】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
するために、この出願に係る発明は、高負荷を伝達する
歯幅の長いはすば/やまば歯車の歯面に歯幅方向接触線
ピッチの整数倍の幅の完全接触線領域を残し、この完全
接触線領域以外の歯面で噛合い時に接触が起こらない3
次元的なバイアス歯面修整を施している。これにより同
時接触線総長さを噛合いの進行に対して概念上不変と
し、かつ接触線上の荷重分布も噛合いの進行に対してほ
ぼ不変として、噛合い時の振動や騒音を低減させてい
る。
【0021】
【発明の実施の形態】この出願に係る発明は、インボリ
ュート曲線を歯形とする基準歯面を有して高負荷を伝達
する歯幅の長いはすば/やまば歯車の歯面に歯幅方向接
触線ピッチの整数倍の幅の完全接触線領域を残し、この
完全接触線領域以外の歯面で噛合い時に接触が起こらな
い3次元的なバイアス歯面修整を施している。このよう
に、歯幅方向接触線ピッチの整数倍の幅の完全接触線領
域を残し、これ以外の歯面を噛合い時に接触が起こらな
い3次元的なバイアス歯面修整を施したので、概念上、
常に完全接触線領域のみの一定した同時接触線総長さに
よって動力を伝達することができる。
【0022】また、歯面修整領域の噛合い始め部から完
全接触線領域までを連続する曲面で形成し、この完全接
触線領域から歯面修整領域の噛合い終り部までを連続す
る曲面で形成し、この両曲面を歯筋方向位置により歯形
形状が異なる3次元的なバイアス歯面修整によって形成
すれば、噛合い始めと噛合い終りに大きな衝撃を生じる
ことなくスムーズに噛合って動力を伝達をすることがで
きる。
【0023】さらに、バイアス歯面修整を施した歯面法
線方向における最大修整量を、少なくとも歯車噛合い時
の撓み量とほぼ同一に設定すれば、噛合い時の歯の撓み
によっても衝撃を生じることはない。
【0024】また、バイアス歯面修整を施した歯面法線
方向における修整を、互いに噛合う一対の駆動・被動歯
車の間の相対的な修整量として作用面上で表したとき、
その等高線が接触線の傾きとほぼ平行となる歯面修整形
状で施せば、噛合いの進行に伴って接触線はその等高線
とほぼ平行な直角方向に移動して衝撃を緩和することが
できる。
【0025】さらに、完全接触線領域の噛合い始め接触
線の歯端側開始点と噛合い終り接触線の歯端側終了点と
を、歯幅方向の両端から内側に形成すれば、歯幅方向端
部における局所剛性の影響をほぼ無くすことができる。
【0026】また、実重なり噛合い率を少なくとも2以
上の整数にすれば、歯幅の長いはすば/やまば歯車にお
いて同時接触線総長さの変化なしに複数の歯で確実に動
力を伝達できる。
【0027】しかも、正面噛合い率を少なくとも2以上
にすれば、更に確実に動力を伝達できる。
【0028】
【実施例】以下、この出願に係る発明の一実施例を、は
すば歯車を例にした図面に基づいて説明する。図1(a)
はこの出願の第1実施例に係るはすば歯車の歯を示す斜
視図であり、(b) は(a) のA−A断面図である。図2は
図1の歯面を平面展開して作用面の完全接触線領域を残
した3次元歯面修整領域を示す説明図であり、図3は同
様に他の3次元歯面修整領域を示す説明図である。これ
らの図面では駆動側の歯車を例にしているため、歯元側
から噛合い始めて歯先側で噛合い終る場合を例示してい
る。なお、被動側の歯車の場合、歯先側から噛合い始め
て歯元側で噛合い終る。
【0029】図示するように、この実施例ではインボリ
ュート曲線を歯形とする基準歯面を有したはすば歯車の
歯1を、歯筋方向Sの接触線ピッチPsが整数倍(この
例では3倍)となる幅の完全接触線領域Fを残して、こ
の完全接触線領域Fの噛合い始め接触線Lsから仮想上
の噛合い始め部2まで連続した曲面で歯筋方向Sの位置
により歯形形状が異なって噛合いの接触が起こらない修
整量Tの3次元的なバイアス歯面修整を施すとともに、
この完全接触線領域Fの噛合い終り接触線Leから仮想
上の噛合い終り部3までにも連続した曲面で歯筋方向S
の位置により歯形形状が異なって噛合いの接触が起こら
ない修整量Tの3次元的なバイアス歯面修整を施してい
る。よって、歯面は噛合い始め側の歯面修整領域Esと
完全接触線領域Fと噛合い終り側の歯面修整領域Esと
に形成されている。この実施例では、完全接触線L0
4本の整数となる実重なり噛合い率3を例示している。
【0030】従って、仮想上の噛合い始め部2の歯面修
整領域Esから噛合い始め接触線Lsまでの曲面では歯
の噛合い接触が起こらずに噛合い始め接触線Lsにおい
て始めて噛合いが始まることとなり、また、完全接触線
領域Fの噛合い終り接触線Leにおいて噛合いが終り、
仮想上の噛合い終り部3への歯面修整領域Eeにおいて
も歯の噛合い接触が起こらずに仮想上の噛合い終り部3
まで達することとなる。
【0031】このバイアス修整の仮想上の噛合い始め部
2および仮想上の噛合い終り部3における歯面法線方向
における修整量Tは、この実施例では、(b) にも示すよ
うに、少なくとも歯車噛合い時の撓み量(上述したδで
あり、例えば10μm程度)となるように設定されてお
り、この噛合い始め部2からインボリュート曲面に連な
るような曲面でバイアス修整が施されている。この修整
量Tは、歯車噛合い時の撓み量以上であれば、噛合い始
めの衝撃回避が可能である。
【0032】なお、この実施例では、一例として噛合い
始め部の修整量Tと噛合い終りの修整量Tとを同一にし
ているが、上述したように、噛合い始めと噛合い終りと
では撓み量が異なるので、噛合い始めの修整量Tを噛合
い終りの修整量Tよりも多少大きくしておけば、歯の噛
合い進行における歯幅方向の撓み量をほぼ同一条件とす
ることができる。
【0033】このように完全接触線領域Fと歯面修整領
域Es,Eeとを曲面によって接続することにより、完
全接触線領域Fの噛合い始めと噛合い終りとを滑らかに
進行させることができ、多少の製作誤差を生じても振動
や騒音を生じさせることなく噛合わせることができる。
【0034】このような3次元歯面修整を図2の平面展
開した作用面で説明すると、接触線の傾きαによって平
行四辺形状となる完全接触線領域Fから、仮想上の噛合
い始め部2と仮想上の噛合い終り部3とに向けて3次元
歯面修整領域Es,Eeが形成されており、仮想上の噛
合い始め部2と仮想上の噛合い終り部3とにおいて同一
の修整量Tを削り取るように修整されている。
【0035】以上のように構成された第1実施例におけ
るはすば歯車によれば、仮想上の噛合い始め部2から完
全接触線領域Fまでの3次元歯面修整領域Esと、完全
接触線領域Fから仮想上の噛合い終り部3までの3次元
歯面修整領域Eeとに施した3次元的なバイアス修整に
より、噛合い時に駆動歯車G1 と被動歯車G2 とがこれ
らの3次元歯面修整領域Es,Eeでは接触せずに完全
接触線領域Fのみで接触して動力を伝達するため、同時
接触線総長さを噛合いの進行に対してほぼ不変とし、か
つ、歯幅端部における歯の形状不完全部の影響を受けず
に接触線上の荷重分布も噛合いの進行に対してほぼ不変
となる。従って、互いに噛合う時に歯に作用する荷重の
変化が殆ど無くなって、動力を伝達する噛合う歯1は常
に完全接触線領域Fのみによって連続的に噛合うととも
に、完全接触船領域F内でのいずれの位置においても常
に一定の負荷を受けながら動力を伝達し、歯1の弾性変
形や同時接触線総長さの変化に起因する振動や騒音を低
減させて、はすば歯車の低振動・低騒音を実現すること
ができる。
【0036】また、上記第1実施例では3次元歯面修整
領域Es,Eeと完全接触線領域Fとを滑らな曲線で連
続するように構成しているが、図3の第2実施例に示す
他の平面展開した作用面の説明図のように、3次元歯面
修整領域Es,Eeを完全接触線領域Fの噛合い始め接
触線Lsと噛合い終り接触線Leにおいて段差を設けて
完全に削り取ったとしても、完全接触線領域Fにおいて
のみ噛合うように構成することができるため、この場合
でも常に完全接触線領域Fのみによって一定の動力伝達
を行うことができるので、歯1の弾性変形や同時接触線
総長さの変化に起因するはすば歯車の振動や騒音を低減
させることができる。ただし、この例では、アライメン
ト誤差等がある場合には接触線Lsから始まる噛合いに
衝撃を伴う可能性がある。なお、この第2実施例では、
3次元歯面修整領域Es,Ee共に同一の修整量Tによ
って削り取った例を示している。この例でも、上述した
第1実施例と同様に仮想上の噛合い始めの修整量Tを多
少大きくしてもよい。
【0037】ところで、上記第1実施例におけるバイア
ス修整の歯面修整形状(バイアス・リリーフ)として、
図4の基準歯面を展開した作用面を示す説明図のよう
に、互いに噛合う一対の駆動・被動歯車の間の相対的な
歯面法線方向の修整量として作用面H上で表したとき、
その等高線mが接触線L(図8)の傾きαとほぼ平行と
なるように形成すれば、歯の噛合いによる接触線Lの移
動に伴ってスムーズに噛合いを進行させることができ、
このようにすれば、高負荷時やアライメント・エラーに
よる噛合い始めの衝撃緩和のためのソフト・ランディン
グをも考慮した3次元歯面修整はすば/やまば歯車を構
成することができる。なお、図4では噛合い終りの歯面
修整領域Eeにも同様の処理を施しているが、噛合い始
め側の歯面修整領域Esのみにこのような処理を施した
としても、噛合い始めでは有効に作用する。
【0038】また、このように歯車の噛合い状態の進行
に伴って接触線を作用面上の歯面法線方向修正量の等高
線とほぼ平行で直角方向に移動して正規の噛合いへとス
ムーズに移るようにしておけば、噛合い始めあるいは終
りの位置が多少ずれたとしても噛合い時の振動や騒音を
極力減少させることができる。
【0039】一方、上記第1,第2実施例では、完全接
触線領域Fの噛合い始め接触線Lsの歯先側開始点Fs
(歯端側開始点)と噛合い終り接触線Leの歯元側終了
点Fe(歯端側終了点)とを、歯1の両端から適宜内側
に形成している。従って、荷重が大きい場合には歯幅方
向の端部における局所剛性変化の影響を受ける場合があ
る。
【0040】そこで、このような場合、上記歯先側開始
点Fsと歯元側終了点Feとを、歯幅方向の両端から歯
たけrの3倍以上内側に形成すれば、歯端における局所
剛性変化を受けることなく歯の撓み変化をほぼ一定にで
きるので、歯端における局所剛性変化の影響を受けずに
動力を伝達することができる。
【0041】なお、この出願に係る発明では、3次元歯
面修整を施した場合の低振動設計点における実際の歯当
たりでは、当たりの歯筋方向幅が整数の重なり噛合い率
に相当することが重要であり、その実重なり噛合い率が
少なくとも2以上の整数となることが望ましい。この場
合、正面噛合い率については必ずしも整数である必要は
ないが、2以上あることが望ましい。
【0042】しかも、この出願に係るはすば/やまば歯
車は、3次元歯面修整加工法を用いて従来の設計段階に
おける二元解析による複雑さを一元解析化することによ
り、低振動設計の最適設計を容易ならしめ、かつ、その
実現に対し解析誤差の影響を極小化せしめ、より高精度
で実際の振動レベルを低減することを可能とすることが
できる。
【0043】以上のように、この出願に係る発明は、は
すば/やまば歯車における同時接触線総長さを噛合いの
進行に対して概念上不変とし、かつ接触線上の荷重分布
も噛合いの進行に対してほぼ不変として駆動・被動歯車
一対としての全ばね剛さの時間変動分を極小化するよう
に、歯形形状が歯筋方向位置により異なる3次元的な歯
面修整を施したはすば/やまば歯車を提供し、はすば/
やまば歯車の低振動設計における一つの解決策を提供す
ることができる。
【0044】なお、この出願に係る発明が対象とするイ
ンボリュート曲線を歯形とする基準歯面で高負荷を伝達
する歯幅の長いはすば/やまば歯車としては、例えば、
重なり噛合い率が少なくとも2以上のはすば/やまば歯
車であり、このようなはすば/やまば歯車として、例え
ば、舶用や産業機械等の大型・大容量の増減速装置で、
特に、低振動・低騒音が要求されるはすば/やまば歯車
においてこの出願に係る発明は効果的である。
【0045】また、上記実施例では、はすば歯車を例に
説明したが、やまば歯車においても同様の作用効果を奏
することができ、この出願に係る発明は歯面に対して接
触線が傾いた歯車において同様の作用効果を奏すること
ができる。
【0046】
【発明の効果】この出願に係る発明は、以上説明したよ
うに構成しているので、以下に記載するような効果を奏
する。
【0047】請求項1〜7に係る3次元歯面修整はすば
/やまば歯車によれば、同時接触線総長さが噛合いの進
行に対して概念上不変となり、かつ接触線上の荷重分布
も噛合いの進行に対してほぼ不変となるような3次元的
なバイアス歯面修整が施されているため、駆動・被動歯
車一対としての全ばね剛さの時間変動が低減されてはす
ば/やまば歯車の振動・騒音を大幅に低減せることが可
能となる。
【0048】また、3次元歯面修整領域が明解であるた
め、従来のトライ&エラーによる繁雑な歯面修整検討作
業から解放され、さらには、一元解析による設計技術を
可能として高精度で実際の振動レベルを低減させること
が可能となり、作業時間や労力の大幅な低減が可能とな
る。
【0049】特に、請求項2によれば、3次元的なバイ
アス歯面修整を施した歯面修整領域から完全接触線領域
のインボリュート曲面へとスムーズな噛合いの進行が行
われるので、噛合い始めと噛合い終りに振動や騒音を生
じることなくスムーズな動力の伝達が可能となる。
【0050】特に、請求項3によれば、少なくとも歯車
噛合い時の撓み量とほぼ同一に設定した修整量により、
歯の撓みによっても衝撃による振動や騒音を生じること
がないはすば/やまば歯車を構成することが可能とな
る。
【0051】特に、請求項4によれば、3次元歯面修整
の等高線が接触線の傾きとほぼ平行となる歯面修整形状
であるため、完全接触線領域における噛合い始めと終り
によりスムーズに噛合うことができ、振動・騒音の低減
をより確実に可能とする。
【0052】特に、請求項5によれば、歯幅方向の両端
から歯たけの3倍以上内側に完全接触線領域の噛合い始
め接触線の歯先側と噛合い終り接触線の歯元側とを形成
したので、歯端における局所剛性の影響をほぼ無くして
常に安定した動力の伝達ができるはすば/やまば歯車を
構成することが可能となる。
【0053】特に、請求項6によれば、実重なり噛合い
率を少なくとも2以上の整数とした歯幅の長いはすば/
やまば歯車において、複数の歯で確実に動力を伝達する
ことが可能となる。
【0054】特に、請求項7によれば、上記請求項6の
効果に加え正面噛合い率も少なくとも2以上としたの
で、更に確実に複数の歯で動力を伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願に係る発明の第1実施例を示すはすば
歯車の歯の図面であり、(a) は斜視図で、(b) は(a) の
A−A断面図である。
【図2】図1の歯面を平面展開して作用面の完全接触線
領域を残した3次元歯面修整領域を示す説明図である。
【図3】図1の歯面を平面展開して作用面の完全接触線
領域を残した他の3次元歯面修整領域を示す説明図であ
る。
【図4】図1の歯の基準歯面を展開した作用面を示す説
明図である。
【図5】従来の歯車の噛合い状態を示す説明図である。
【図6】図5の歯車の噛合い状態の作用を示す説明図で
ある。
【図7】従来のはすば歯車における局所剛性を示す説明
図である。
【図8】従来のはすば/やまば歯車における接触線を示
す斜視図である。
【図9】従来のはすば歯車における歯の側面図である。
【図10】従来のはすば歯車を示す側面図である。
【図11】従来の歯面修整を示す図面であり、(a) が歯
形修整,(b) が歯筋修整,(c) が歯形修整と歯筋修整と
の組合せを示す斜視図である。
【符号の説明】
1…歯 2…噛合い始め部 3…噛合い終り部 T…修整量 r…歯たけ S…歯筋方向 L…接触線 Ls…噛合い始め接触線 Le…噛合い終り接触線 F…完全接触線領域 Fs…歯先側開始点(歯端側開始点) Fe…歯元側終了点(歯端側終了点) Es…歯面修整領域 Ee…歯面修整領域 V…噛合い進行方向 S…歯たけ方向 H…作用面 m…等高線 Ps…歯筋方向ピッチ Pr…歯たけ方向ピッチ α…接触線の傾き δ…撓み量
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山下 貢 兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1 号 川崎重工業株式会社神戸工場内 (72)発明者 尾花 充 兵庫県神戸市中央区東川崎町3丁目1番1 号 川崎重工業株式会社神戸工場内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インボリュート曲線を歯形とする基準歯
    面を有して高負荷を伝達する歯幅の長いはすば/やまば
    歯車において、 前記歯車の歯面に歯幅方向接触線ピッチの整数倍の幅の
    完全接触線領域を残し、該完全接触線領域以外の歯面で
    噛合い時に接触が起こらない3次元的なバイアス歯面修
    整を施したことを特徴とする3次元歯面修整はすば/や
    まば歯車。
  2. 【請求項2】 歯面修整領域の噛合い始め部から完全接
    触線領域までを連続する曲面で形成し、該完全接触線領
    域から歯面修整領域の噛合い終り部までを連続する曲面
    で形成し、該両曲面を歯筋方向位置により歯形形状が異
    なる3次元的なバイアス歯面修整によって形成したこと
    を特徴とする請求項1記載の3次元歯面修整はすば/や
    まば歯車。
  3. 【請求項3】 バイアス歯面修整を施した歯面法線方向
    における最大修整量を、少なくとも歯車噛合い時の撓み
    量とほぼ同一に設定したことを特徴とする請求項1又は
    請求項2記載の3次元歯面修整はすば/やまば歯車。
  4. 【請求項4】 バイアス歯面修整を施した歯面法線方向
    における修整を、互いに噛合う一対の駆動・被動歯車の
    間の相対的な修整量として作用面上で表したとき、その
    等高線が接触線の傾きとほぼ平行となる歯面修整形状で
    施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の3次元歯面修整はすば/やまば歯車。
  5. 【請求項5】 完全接触線領域の噛合い始め接触線の歯
    端側開始点と噛合い終り接触線の歯端側終了点とを、歯
    幅方向の両端から内側に形成したことを特徴とする請求
    項1〜4のいずれか1項に記載の3次元歯面修整はすば
    /やまば歯車。
  6. 【請求項6】 実重なり噛合い率を少なくとも2以上の
    整数にしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1
    項に記載の3次元歯面修整はすば/やまば歯車。
  7. 【請求項7】 正面噛合い率を少なくとも2以上にした
    ことを特徴とする請求項6記載の3次元歯面修整はすば
    /やまば歯車。
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