JPH08197332A - 歯車の歯面修整方法 - Google Patents
歯車の歯面修整方法Info
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- JPH08197332A JPH08197332A JP615995A JP615995A JPH08197332A JP H08197332 A JPH08197332 A JP H08197332A JP 615995 A JP615995 A JP 615995A JP 615995 A JP615995 A JP 615995A JP H08197332 A JPH08197332 A JP H08197332A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 歯車を配設する際のミスアライメントに拘ら
ず噛合い伝達誤差を小さく維持する。 【構成】 歯車を配設する際のミスアライメント、すな
わち平行度誤差および食い違い誤差を歯面の圧力角誤差
およびねじれ角誤差に換算し、そのような誤差を有する
歯面でも片当たりを生じることがない範囲で最小のクラ
ウニング量および歯形丸み量(A0)を求める。製造公
差(斜線域)を考慮して修整する場合は、実際の修整量
を測定して、公差下限(A1)での修整と同程度の噛合
い伝達誤差となるようにバイアス修整を加える。また、
ミスアライメンが小さい場合に接触する歯面の中央部に
ついては、修整量を小さくする。
ず噛合い伝達誤差を小さく維持する。 【構成】 歯車を配設する際のミスアライメント、すな
わち平行度誤差および食い違い誤差を歯面の圧力角誤差
およびねじれ角誤差に換算し、そのような誤差を有する
歯面でも片当たりを生じることがない範囲で最小のクラ
ウニング量および歯形丸み量(A0)を求める。製造公
差(斜線域)を考慮して修整する場合は、実際の修整量
を測定して、公差下限(A1)での修整と同程度の噛合
い伝達誤差となるようにバイアス修整を加える。また、
ミスアライメンが小さい場合に接触する歯面の中央部に
ついては、修整量を小さくする。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は歯車の歯面修整方法に係
り、特に、歯車を配設する際の歯車軸のミスアライメン
トを考慮して歯面を修整する技術に関するものである。
り、特に、歯車を配設する際の歯車軸のミスアライメン
トを考慮して歯面を修整する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯車の歯面はインボリュート歯形を成し
ているのが理想であるが、熱処理などで誤差を有するの
が普通である。このような歯面の誤差によって噛合い伝
達誤差が生じ、ギヤノイズの原因となるため、噛合い伝
達誤差ができるだけ小さくなるように歯面を修整するこ
とが、例えば特開平5−116026号公報などで提案
されている。なお、噛合い伝達誤差は、互いに噛み合う
一対の歯車の回転誤差で、例えば駆動側歯車を一定速度
で回転させた場合の従動側歯車の進み遅れ量で表され
る。
ているのが理想であるが、熱処理などで誤差を有するの
が普通である。このような歯面の誤差によって噛合い伝
達誤差が生じ、ギヤノイズの原因となるため、噛合い伝
達誤差ができるだけ小さくなるように歯面を修整するこ
とが、例えば特開平5−116026号公報などで提案
されている。なお、噛合い伝達誤差は、互いに噛み合う
一対の歯車の回転誤差で、例えば駆動側歯車を一定速度
で回転させた場合の従動側歯車の進み遅れ量で表され
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに歯面を修整しても、歯車を配設する際の歯車軸にミ
スアライメントが存在すると、一方の歯車の歯の端縁が
他方の歯車の歯面に当接する片当たりなどにより比較的
大きな噛合い伝達誤差を生じることがあった。歯車軸の
ミスアライメントは、歯車箱の製造誤差や組付け誤差な
どに起因するもので、図18に示すように歯車軸の軸線
が傾斜する平行度誤差と、歯車軸がねじれの関係となる
食い違い誤差とがある。
うに歯面を修整しても、歯車を配設する際の歯車軸にミ
スアライメントが存在すると、一方の歯車の歯の端縁が
他方の歯車の歯面に当接する片当たりなどにより比較的
大きな噛合い伝達誤差を生じることがあった。歯車軸の
ミスアライメントは、歯車箱の製造誤差や組付け誤差な
どに起因するもので、図18に示すように歯車軸の軸線
が傾斜する平行度誤差と、歯車軸がねじれの関係となる
食い違い誤差とがある。
【0004】また、製造公差によって歯面の修整量、更
には噛合い伝達誤差にばらつきが生じ、略一定の噛合い
伝達誤差の歯車装置を提供することができなかった。
には噛合い伝達誤差にばらつきが生じ、略一定の噛合い
伝達誤差の歯車装置を提供することができなかった。
【0005】本発明は以上の事情を背景として為された
もので、その目的とするところは、歯車を配設する際の
歯車軸のミスアライメントに拘らず噛合い伝達誤差を小
さく維持できるようにすることにある。また、別の目的
は、製造公差に拘らず噛合い伝達誤差を略一定に維持で
きるようにすることにある。
もので、その目的とするところは、歯車を配設する際の
歯車軸のミスアライメントに拘らず噛合い伝達誤差を小
さく維持できるようにすることにある。また、別の目的
は、製造公差に拘らず噛合い伝達誤差を略一定に維持で
きるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための第1の手段】第1発明は、歯車
を配設する際の歯車軸のミスアライメントに基づいて、
少なくとも片当たりを生じることがないように歯面を修
整することを特徴とする。
を配設する際の歯車軸のミスアライメントに基づいて、
少なくとも片当たりを生じることがないように歯面を修
整することを特徴とする。
【0007】
【作用および第1発明の効果】このようにすれば、少な
くとも片当たりを生じることがないようにミスアライメ
ントに基づいて歯面が修整されるため、ミスアライメン
トに拘らず噛合い伝達誤差を小さく維持できる。
くとも片当たりを生じることがないようにミスアライメ
ントに基づいて歯面が修整されるため、ミスアライメン
トに拘らず噛合い伝達誤差を小さく維持できる。
【0008】
【課題を解決するための第2の手段】第2発明は、上記
第1発明の歯車の歯面修整方法において、(a)前記ミ
スアライメントを圧力角誤差およびねじれ角誤差に換算
する工程と、(b)接触点の軌跡の方向のミスアライメ
ントが最大となるように前記圧力角誤差および前記ねじ
れ角誤差を与えて誤差歯面を求める工程と、(c)前記
誤差歯面において片当たりを回避できるクラウニング量
および歯形丸み量を求める工程とを有することを特徴と
する。
第1発明の歯車の歯面修整方法において、(a)前記ミ
スアライメントを圧力角誤差およびねじれ角誤差に換算
する工程と、(b)接触点の軌跡の方向のミスアライメ
ントが最大となるように前記圧力角誤差および前記ねじ
れ角誤差を与えて誤差歯面を求める工程と、(c)前記
誤差歯面において片当たりを回避できるクラウニング量
および歯形丸み量を求める工程とを有することを特徴と
する。
【0009】
【作用および第2発明の効果】この発明では、ミスアラ
イメントを圧力角誤差およびねじれ角誤差に換算し、接
触点の軌跡の方向のミスアライメントが最大となるよう
にその圧力角誤差およびねじれ角誤差を与えて誤差歯面
を求め、その誤差歯面において片当たりを回避できるク
ラウニング量および歯形丸み量を求めるようにしている
ため、ミスアライメントの態様に拘らず確実に片当たり
を防止できるとともに、そのようなクラウニング量およ
び歯形丸み量を容易に求めることができる。すなわち、
接触点の軌跡の方向のミスアライメントが最大の場合に
片当たりが最も生じ易くなって噛合い伝達誤差が最大と
なるため、その場合に片当たりを回避できるクラウニン
グ量および歯形丸み量を求めるようにすれば、確実に片
当たりを防止できるのである。
イメントを圧力角誤差およびねじれ角誤差に換算し、接
触点の軌跡の方向のミスアライメントが最大となるよう
にその圧力角誤差およびねじれ角誤差を与えて誤差歯面
を求め、その誤差歯面において片当たりを回避できるク
ラウニング量および歯形丸み量を求めるようにしている
ため、ミスアライメントの態様に拘らず確実に片当たり
を防止できるとともに、そのようなクラウニング量およ
び歯形丸み量を容易に求めることができる。すなわち、
接触点の軌跡の方向のミスアライメントが最大の場合に
片当たりが最も生じ易くなって噛合い伝達誤差が最大と
なるため、その場合に片当たりを回避できるクラウニン
グ量および歯形丸み量を求めるようにすれば、確実に片
当たりを防止できるのである。
【0010】
【課題を解決するための第3の手段】第3発明は、上記
第2発明の歯車の歯面修整方法において、前記クラウニ
ング量および歯形丸み量は製造公差に基づいて片当たり
を生じることがないように求められ、製造後の実際のク
ラウニング量および歯形丸み量に基づいて、製造公差内
の最小クラウニング量および最小歯形丸み量の場合と噛
合い伝達誤差が略等しくなるバイアス量を求めてバイア
ス修整を追加して行うことを特徴とする。
第2発明の歯車の歯面修整方法において、前記クラウニ
ング量および歯形丸み量は製造公差に基づいて片当たり
を生じることがないように求められ、製造後の実際のク
ラウニング量および歯形丸み量に基づいて、製造公差内
の最小クラウニング量および最小歯形丸み量の場合と噛
合い伝達誤差が略等しくなるバイアス量を求めてバイア
ス修整を追加して行うことを特徴とする。
【0011】
【作用および第3発明の効果】この場合には、片当たり
を生じることがないように製造公差に基づいてクラウニ
ング量および歯形丸み量を求めるようにしているため、
製造公差に拘らず確実に片当たりが防止され、噛合い伝
達誤差を小さく維持できる。しかも、製造後の実際のク
ラウニング量および歯形丸み量に基づいて、製造公差内
の最小クラウニング量および最小歯形丸み量の場合と噛
合い伝達誤差が略等しくなるバイアス量を求めてバイア
ス修整するようにしているため、製造公差に起因する噛
合い伝達誤差のばらつきが低減されるとともに、噛合い
伝達誤差自体も製造公差内の最小クラウニング量および
最小歯形丸み量の場合と同程度の小さな値となる。
を生じることがないように製造公差に基づいてクラウニ
ング量および歯形丸み量を求めるようにしているため、
製造公差に拘らず確実に片当たりが防止され、噛合い伝
達誤差を小さく維持できる。しかも、製造後の実際のク
ラウニング量および歯形丸み量に基づいて、製造公差内
の最小クラウニング量および最小歯形丸み量の場合と噛
合い伝達誤差が略等しくなるバイアス量を求めてバイア
ス修整するようにしているため、製造公差に起因する噛
合い伝達誤差のばらつきが低減されるとともに、噛合い
伝達誤差自体も製造公差内の最小クラウニング量および
最小歯形丸み量の場合と同程度の小さな値となる。
【0012】
【課題を解決するための第4の手段】第4発明は、上記
第2発明または第3発明の歯車の歯面修整方法におい
て、歯車の歯面の周縁部については、ミスアライメント
が公差上限でも片当たりを回避できるように前記クラウ
ニング量および歯形丸み量を求める一方、歯車の歯面の
中央部については、ミスアライメントが公差上限より小
さい所定値の場合を前提として片当たりを回避できるよ
うに前記クラウニング量および歯形丸み量を求めること
を特徴とする。
第2発明または第3発明の歯車の歯面修整方法におい
て、歯車の歯面の周縁部については、ミスアライメント
が公差上限でも片当たりを回避できるように前記クラウ
ニング量および歯形丸み量を求める一方、歯車の歯面の
中央部については、ミスアライメントが公差上限より小
さい所定値の場合を前提として片当たりを回避できるよ
うに前記クラウニング量および歯形丸み量を求めること
を特徴とする。
【0013】
【作用および第4発明の効果】このようにすれば、歯面
中央部のクラウニング量および歯形丸み量が小さいた
め、その中央部のみで接触する比較的小さなミスアライ
メントの場合の噛合い伝達誤差が小さくなる一方、ミス
アライメントが公差上限の場合でも片当たりによる噛合
い伝達誤差の極端な悪化が回避される。
中央部のクラウニング量および歯形丸み量が小さいた
め、その中央部のみで接触する比較的小さなミスアライ
メントの場合の噛合い伝達誤差が小さくなる一方、ミス
アライメントが公差上限の場合でも片当たりによる噛合
い伝達誤差の極端な悪化が回避される。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。 《解析モデル》先ず、歯車の回転角と歯形の位相角を使
った接線極座標を用いて歯面を3次元的に表現する。次
に、これを基本モデルとして、歯形測定で得られた歯面
形状から実際の接触位置を求める基本式を示す。
に説明する。 《解析モデル》先ず、歯車の回転角と歯形の位相角を使
った接線極座標を用いて歯面を3次元的に表現する。次
に、これを基本モデルとして、歯形測定で得られた歯面
形状から実際の接触位置を求める基本式を示す。
【0015】〔歯面の3次元接線極座標表示〕ヘリカル
ギヤの歯形は、歯すじ位置ごとに一定の割合で回転させ
て位相差を持たせたものと考えられるので、歯すじ位置
を位相角で表すことにより、歯幅を考慮した3次元の接
線極座標を構成することができる。位相角φはリードと
歯幅の比によって決り、任意歯すじ位置wとリードLを
使って次式(1)のように表せる。図1は、歯面をころ
がり角θとφを変数とする3次元の接線極座標で表した
ものである。歯面は、歯形上の点から基礎円に引いた接
線の長さqと基礎円半径rb を使って、歯車に固定した
座標系{q(θ,φ),rb (θ,φ)}で表せる。こ
のときqとrb は次式(2)の関係にある。ここで、q
0 はピッチ点からの接線長さを表す。θの基準は歯幅中
央の歯形のピッチ点とする。歯面に誤差のない場合、基
礎円半径rb は一定かつ公称値rb0となるから、歯面の
表示は次式(3)となりインボリュート歯形を表す。こ
のときθは歯車の回転角と等価である。歯幅中央の歯形
上の接触点が{q(θ,0),rb (θ,0)}で表せ
るとき、各歯すじ位置の歯形上の同時に接触する点は
{q(θ,φ),rb (θ,φ)}で表せる。歯面はこ
れらの接触点を結んだ接触線の集合として表される。
ギヤの歯形は、歯すじ位置ごとに一定の割合で回転させ
て位相差を持たせたものと考えられるので、歯すじ位置
を位相角で表すことにより、歯幅を考慮した3次元の接
線極座標を構成することができる。位相角φはリードと
歯幅の比によって決り、任意歯すじ位置wとリードLを
使って次式(1)のように表せる。図1は、歯面をころ
がり角θとφを変数とする3次元の接線極座標で表した
ものである。歯面は、歯形上の点から基礎円に引いた接
線の長さqと基礎円半径rb を使って、歯車に固定した
座標系{q(θ,φ),rb (θ,φ)}で表せる。こ
のときqとrb は次式(2)の関係にある。ここで、q
0 はピッチ点からの接線長さを表す。θの基準は歯幅中
央の歯形のピッチ点とする。歯面に誤差のない場合、基
礎円半径rb は一定かつ公称値rb0となるから、歯面の
表示は次式(3)となりインボリュート歯形を表す。こ
のときθは歯車の回転角と等価である。歯幅中央の歯形
上の接触点が{q(θ,0),rb (θ,0)}で表せ
るとき、各歯すじ位置の歯形上の同時に接触する点は
{q(θ,φ),rb (θ,φ)}で表せる。歯面はこ
れらの接触点を結んだ接触線の集合として表される。
【数1】
【0016】〔修整歯面の表示〕誤差のない歯面を基準
とした修整量を接線長さに加えると、修整歯面を歯面精
度測定法と対応付けて表せる。接線極座標表示では、次
式(4)の如く接線長さqに修整量Sを加えてqS とす
る。修整歯面と測定子の接触点は、誤差のない歯面の法
線方向にあるとは限らないため、厳密には修整量をその
まま接線長さに加えることはできないが、測定子の先端
が一般に小球であるため、式(4)とすることによる誤
差は十分に小さい。 qS (θ,φ)=q(θ,φ)+S(θ,φ) ・・・(4)
とした修整量を接線長さに加えると、修整歯面を歯面精
度測定法と対応付けて表せる。接線極座標表示では、次
式(4)の如く接線長さqに修整量Sを加えてqS とす
る。修整歯面と測定子の接触点は、誤差のない歯面の法
線方向にあるとは限らないため、厳密には修整量をその
まま接線長さに加えることはできないが、測定子の先端
が一般に小球であるため、式(4)とすることによる誤
差は十分に小さい。 qS (θ,φ)=q(θ,φ)+S(θ,φ) ・・・(4)
【0017】〔修整歯形の接触点と噛合い伝達誤差〕式
(4)で定義される歯面修整を施された歯車の実際の接
触点を求める方法を示す。従動側歯車のみ修整歯形と
し、任意歯すじ位置の軸直角断面歯形上の接触点を求め
る。図2の太い実線で示す修整歯形の接触点Cは、厳密
には理論上の位置からΔθのずれを持つ作用線上にあ
る。Δθは、歯形修整による従動側歯車の基礎円の変化
量ΔrbSを作用線長さで除すことで求められ、ΔrbSは
式(2),(3),(4)から求められる瞬間基礎円と
公称値の差となる。これは、歯形修整による圧力角の変
化分を求めているのと等価である。両歯車が修整歯形を
持つ場合、作用線方向の変化量は圧力角変化量の和とし
て求められ、従動側歯車のみ修整歯形を持つ場合に置き
換えられる。実際の接触点Cでの歯形修整量が噛合い伝
達誤差となり、その量は歯車を等価的にΔθだけ回転さ
せた位置(図2の点線で示す)の歯形修整量S′として
求められる。このとき接触点Cは公称値から決まる作用
線上にある(図中の点C′)。
(4)で定義される歯面修整を施された歯車の実際の接
触点を求める方法を示す。従動側歯車のみ修整歯形と
し、任意歯すじ位置の軸直角断面歯形上の接触点を求め
る。図2の太い実線で示す修整歯形の接触点Cは、厳密
には理論上の位置からΔθのずれを持つ作用線上にあ
る。Δθは、歯形修整による従動側歯車の基礎円の変化
量ΔrbSを作用線長さで除すことで求められ、ΔrbSは
式(2),(3),(4)から求められる瞬間基礎円と
公称値の差となる。これは、歯形修整による圧力角の変
化分を求めているのと等価である。両歯車が修整歯形を
持つ場合、作用線方向の変化量は圧力角変化量の和とし
て求められ、従動側歯車のみ修整歯形を持つ場合に置き
換えられる。実際の接触点Cでの歯形修整量が噛合い伝
達誤差となり、その量は歯車を等価的にΔθだけ回転さ
せた位置(図2の点線で示す)の歯形修整量S′として
求められる。このとき接触点Cは公称値から決まる作用
線上にある(図中の点C′)。
【0018】以上の手順に従ってΔθと噛合い伝達誤差
の基本式を導出する。まず、歯面修整のない場合のころ
がり角をθ0 として基礎円変化量を表すと式(2),
(3),および(4)より次式(5)となる。次に歯車
の中心距離aと圧力角αを使ってa・ sinαと表せる作
用線長さで式(5)を除して次式(6)の如くΔθが求
められる。接触点での修整量は、Δθを考慮した位置θ
=θ0 +Δθで、修整量S(θ0 +Δθ,φ)から求め
られる。図3は、歯幅中央断面において、歯形修整のな
い場合の接触点P,修整歯形の接触点のインボリュート
歯形への投影点P′,およびΔθの関係を示し、歯面上
の接触線の変化のようすを示すものである。
の基本式を導出する。まず、歯面修整のない場合のころ
がり角をθ0 として基礎円変化量を表すと式(2),
(3),および(4)より次式(5)となる。次に歯車
の中心距離aと圧力角αを使ってa・ sinαと表せる作
用線長さで式(5)を除して次式(6)の如くΔθが求
められる。接触点での修整量は、Δθを考慮した位置θ
=θ0 +Δθで、修整量S(θ0 +Δθ,φ)から求め
られる。図3は、歯幅中央断面において、歯形修整のな
い場合の接触点P,修整歯形の接触点のインボリュート
歯形への投影点P′,およびΔθの関係を示し、歯面上
の接触線の変化のようすを示すものである。
【数2】
【0019】〔修整歯面の接触点と噛合い伝達誤差〕各
歯形の修整量が相手歯面との距離そのものであるから、
歯面全体では、S(θ0 +Δθ,φ)が最小となるφ断
面の歯形上の接触点が実際の接触点となり、その位置の
歯面修整量が噛合い伝達誤差量となる。
歯形の修整量が相手歯面との距離そのものであるから、
歯面全体では、S(θ0 +Δθ,φ)が最小となるφ断
面の歯形上の接触点が実際の接触点となり、その位置の
歯面修整量が噛合い伝達誤差量となる。
【0020】《接触点の座標と噛合い伝達誤差の理論
式》歯面修整形状を定義し、基本式から接触点の座標と
噛合い伝達誤差の式を導出する。
式》歯面修整形状を定義し、基本式から接触点の座標と
噛合い伝達誤差の式を導出する。
【0021】〔修整歯面の定義式〕歯面の修整形状は、
誤差のない歯面を基準として歯面精度測定法と同じ方法
で定義する。歯面の修整方法として一般的な、歯形丸み
(または歯形凸量),クラウニング,バイアス,さら
に、圧力角修整,ねじれ角修整を考慮する。歯面の修整
法を議論する上では、上記以外の定義方法が必要になる
ことも十分に考えられるし、加工法によってはこれらの
定義は適切でないことも考えられるが、理論式の求め方
は変わらない。 a.歯形丸みの定義式:各歯すじ位置の歯形のピッチ点
を基準とした放物線で次式(7)の如く定義する。 b.クラウニングの定義式:歯幅中央を基準とし、歯形
丸みと同様に放物線で次式(8)の如く定義する。 c.バイアスの定義式:圧力角を歯幅一端から他端にか
けて連続的に変化させ、歯面にねじれを持たせる修整を
バイアス修整と定義し、歯幅両端歯形での圧力角の差を
歯先の出代に置き換えて、歯幅中央を基準として次式
(9)の如く定義する。 d.圧力角修整,ねじれ角修整の定義式:歯面形状その
ものの修整とは別に、歯面の姿勢を決定する修整として
圧力角修整,ねじれ角修整を次式(10)の如く定義す
る。歯面誤差の測定法と同様に、圧力角修整は歯先が厚
くなる方向、ねじれ角修整はねじれ角が大きくなる方向
を正とする。図17は、以上の各修整量を示す図で、何
れもその大きさを長さによって定量的に表すことができ
る。また、以上の歯面修整法は各々独立と考えられるの
で、すべての修整を同時に施された歯面はそれらの重ね
合わせで次式(11)のように表現できる。ここで、d
0 ,c0 ,b0 ,a1 ,a2 は歯面修整の指示値より求
められる係数である。 D(θ,φ)=−d0 ・(θ+φ)2 ・・・(7) C(φ)=−c0 ・φ2 ・・・(8) B(θ,φ)=−b0 ・φ・(θ+φ) ・・・(9) A(θ,φ)=a1 ・(θ+φ)+a2 ・φ ・・・(10) S(θ,φ)=D(θ,φ)+C(φ)+B(θ,φ)+A(θ,φ) ・・・(11)
誤差のない歯面を基準として歯面精度測定法と同じ方法
で定義する。歯面の修整方法として一般的な、歯形丸み
(または歯形凸量),クラウニング,バイアス,さら
に、圧力角修整,ねじれ角修整を考慮する。歯面の修整
法を議論する上では、上記以外の定義方法が必要になる
ことも十分に考えられるし、加工法によってはこれらの
定義は適切でないことも考えられるが、理論式の求め方
は変わらない。 a.歯形丸みの定義式:各歯すじ位置の歯形のピッチ点
を基準とした放物線で次式(7)の如く定義する。 b.クラウニングの定義式:歯幅中央を基準とし、歯形
丸みと同様に放物線で次式(8)の如く定義する。 c.バイアスの定義式:圧力角を歯幅一端から他端にか
けて連続的に変化させ、歯面にねじれを持たせる修整を
バイアス修整と定義し、歯幅両端歯形での圧力角の差を
歯先の出代に置き換えて、歯幅中央を基準として次式
(9)の如く定義する。 d.圧力角修整,ねじれ角修整の定義式:歯面形状その
ものの修整とは別に、歯面の姿勢を決定する修整として
圧力角修整,ねじれ角修整を次式(10)の如く定義す
る。歯面誤差の測定法と同様に、圧力角修整は歯先が厚
くなる方向、ねじれ角修整はねじれ角が大きくなる方向
を正とする。図17は、以上の各修整量を示す図で、何
れもその大きさを長さによって定量的に表すことができ
る。また、以上の歯面修整法は各々独立と考えられるの
で、すべての修整を同時に施された歯面はそれらの重ね
合わせで次式(11)のように表現できる。ここで、d
0 ,c0 ,b0 ,a1 ,a2 は歯面修整の指示値より求
められる係数である。 D(θ,φ)=−d0 ・(θ+φ)2 ・・・(7) C(φ)=−c0 ・φ2 ・・・(8) B(θ,φ)=−b0 ・φ・(θ+φ) ・・・(9) A(θ,φ)=a1 ・(θ+φ)+a2 ・φ ・・・(10) S(θ,φ)=D(θ,φ)+C(φ)+B(θ,φ)+A(θ,φ) ・・・(11)
【0022】〔接触点の座標〕S(θ0 +Δθ,φ)が
極値を取る座標を求めると接触点の座標が得られる。図
4は、歯面修整量Sをθ−φ平面上で示し、点線で示す
接触線と接触線の最高点を結ぶ接触点の軌跡(実線)の
関係を示す。修整量Sが0の平面はインボリュート歯面
に相当する。図1とは歯元と歯先の位置が逆に表される
が、歯面修整量と接触点の軌跡の関係を把握しやすいと
考えるため以後この表現を採用する。基礎円変動量rb
は、基本式(5)に式(3),(4),(11)を代入
して次式(12)となる。作用線の方向変化量Δθは、
式(6)より次式(13)となる。接触点での歯面修整
量は、式(11)においてθ=θ0 +Δθとすることに
よりθ0 とφの式として得られる。これをφに関して微
分して極値をとる座標φMを求めると次式(14)とな
る。結局、接触点の座標はθ0 を変数とした次式(1
5)となる。なお、基礎円変動、作用線方向変化を考慮
しない場合はATH=1,AFI=1,AST=0となる。
極値を取る座標を求めると接触点の座標が得られる。図
4は、歯面修整量Sをθ−φ平面上で示し、点線で示す
接触線と接触線の最高点を結ぶ接触点の軌跡(実線)の
関係を示す。修整量Sが0の平面はインボリュート歯面
に相当する。図1とは歯元と歯先の位置が逆に表される
が、歯面修整量と接触点の軌跡の関係を把握しやすいと
考えるため以後この表現を採用する。基礎円変動量rb
は、基本式(5)に式(3),(4),(11)を代入
して次式(12)となる。作用線の方向変化量Δθは、
式(6)より次式(13)となる。接触点での歯面修整
量は、式(11)においてθ=θ0 +Δθとすることに
よりθ0 とφの式として得られる。これをφに関して微
分して極値をとる座標φMを求めると次式(14)とな
る。結局、接触点の座標はθ0 を変数とした次式(1
5)となる。なお、基礎円変動、作用線方向変化を考慮
しない場合はATH=1,AFI=1,AST=0となる。
【0023】
【数3】
【0024】〔噛合い伝達誤差の式〕式(15)中のS
(θ0 +Δθ,φM )が一対の歯の噛合い伝達誤差量を
表す。歯面修整のない場合のころがり角θ0 は歯車の回
転角と等価であるからあらためてθと置き、噛合い伝達
誤差をΔPとして整理すると次式(16)となる。
(θ0 +Δθ,φM )が一対の歯の噛合い伝達誤差量を
表す。歯面修整のない場合のころがり角θ0 は歯車の回
転角と等価であるからあらためてθと置き、噛合い伝達
誤差をΔPとして整理すると次式(16)となる。
【数4】
【0025】以上の検討により、修整歯面から一対の歯
の噛合い伝達誤差の理論式を導き出せた。式の適用範囲
は、接触点が歯面上に存在する場合となる。接触点が歯
面の縁にある場合の式は省略する。
の噛合い伝達誤差の理論式を導き出せた。式の適用範囲
は、接触点が歯面上に存在する場合となる。接触点が歯
面の縁にある場合の式は省略する。
【0026】〔噛合い伝達誤差p−p値の式〕噛合い伝
達誤差のp−p値は、隣りあう歯の噛合い伝達誤差曲線
の交点の座標θcross と最大値となる座標θpeakから求
められる。角ピッチをθp として交点での噛合い伝達誤
差量を求めると次式(17)となる。一対の歯の噛合い
伝達誤差は単純中凸形状となるから、その極値としての
最大値は次式(18)となる。噛合い伝達誤差量のp−
p値をT.E.とすると、式(17),式(18)よ
り、次式(19)となる。
達誤差のp−p値は、隣りあう歯の噛合い伝達誤差曲線
の交点の座標θcross と最大値となる座標θpeakから求
められる。角ピッチをθp として交点での噛合い伝達誤
差量を求めると次式(17)となる。一対の歯の噛合い
伝達誤差は単純中凸形状となるから、その極値としての
最大値は次式(18)となる。噛合い伝達誤差量のp−
p値をT.E.とすると、式(17),式(18)よ
り、次式(19)となる。
【数5】
【0027】《ミスアライメントと噛合い伝達誤差》歯
車箱の製造誤差、組付け誤差に起因するミスアライメン
トを考慮して噛合い伝達誤差の悪化要因を明らかにし、
対応方法を検討する。ミスアライメントには、図18に
示すように歯車軸が傾斜する平行度誤差と、歯車軸がね
じれの関係となる食い違い誤差とがあるが、これ等は圧
力角誤差およびねじれ角誤差として等価的に歯面の誤差
量に置き換えることができる。平行度誤差,食い違い誤
差から圧力角誤差,ねじれ角誤差への換算は、演算式な
どに従って容易に行うことができる。また、圧力角誤差
およびねじれ角誤差は、前記圧力角修整,ねじれ角修整
と実質的に同じであり、図17に示されているようにそ
の大きさは長さによって定量的に表される。そして、表
1の歯車諸元に対してねじれ角のみ10゜とした場合の
噛合い伝達誤差について検討する。
車箱の製造誤差、組付け誤差に起因するミスアライメン
トを考慮して噛合い伝達誤差の悪化要因を明らかにし、
対応方法を検討する。ミスアライメントには、図18に
示すように歯車軸が傾斜する平行度誤差と、歯車軸がね
じれの関係となる食い違い誤差とがあるが、これ等は圧
力角誤差およびねじれ角誤差として等価的に歯面の誤差
量に置き換えることができる。平行度誤差,食い違い誤
差から圧力角誤差,ねじれ角誤差への換算は、演算式な
どに従って容易に行うことができる。また、圧力角誤差
およびねじれ角誤差は、前記圧力角修整,ねじれ角修整
と実質的に同じであり、図17に示されているようにそ
の大きさは長さによって定量的に表される。そして、表
1の歯車諸元に対してねじれ角のみ10゜とした場合の
噛合い伝達誤差について検討する。
【表1】
【0028】図5〜図8には、θ−φ平面上に表した修
整歯面上の接触点の軌跡の計算例を示す。図5〜図8
は、何れもクラウニング量および歯形丸み量がそれぞれ
5μmの歯面修整を行った場合で、図5はミスアライメ
ントがない場合、図6は圧力角誤差10μm、ねじれ角
誤差−10μmのミスアライメントがある場合、図7は
圧力角誤差24μmのミスアライメントがある場合、図
8はねじれ角誤差20μmのミスアライメントがある場
合である。図中、細かい格子で示す凸曲面が歯面で、太
い実線が接触点の軌跡であり、点p1とp2は、接触点
の軌跡が歯面の縁から歯面上に現れる点と再び歯面の縁
へぬける点を示し、p3とp4は隣接歯を考慮した噛合
い範囲の始めと終わりを示す。図9の(a)〜(d)
は、それぞれ図5〜図8に対応して噛合い伝達誤差曲線
を示す図で、p1からp4の対応する位置を同じ記号で
示す。これらの結果から、以下の特徴が明らかになる。
整歯面上の接触点の軌跡の計算例を示す。図5〜図8
は、何れもクラウニング量および歯形丸み量がそれぞれ
5μmの歯面修整を行った場合で、図5はミスアライメ
ントがない場合、図6は圧力角誤差10μm、ねじれ角
誤差−10μmのミスアライメントがある場合、図7は
圧力角誤差24μmのミスアライメントがある場合、図
8はねじれ角誤差20μmのミスアライメントがある場
合である。図中、細かい格子で示す凸曲面が歯面で、太
い実線が接触点の軌跡であり、点p1とp2は、接触点
の軌跡が歯面の縁から歯面上に現れる点と再び歯面の縁
へぬける点を示し、p3とp4は隣接歯を考慮した噛合
い範囲の始めと終わりを示す。図9の(a)〜(d)
は、それぞれ図5〜図8に対応して噛合い伝達誤差曲線
を示す図で、p1からp4の対応する位置を同じ記号で
示す。これらの結果から、以下の特徴が明らかになる。
【0029】接触点の軌跡が歯面の縁へぬける点p1,
p2で噛合い伝達誤差は折れ点を持ち、その傾向はミス
アライメントのある場合に顕著になる。しかし、図6の
ようにp1,p2がp3,p4で示す噛合い範囲の外に
ある場合には、T.E.値への影響は殆どない。ミスア
ライメントが大きくなっていわゆる片当たりになると、
p1またはp2が噛合い範囲p3,p4間に現れてT.
E.値は悪化する。ミスアライメントが過大な量になる
と噛合い伝達誤差曲線は不連続になる(図9(c)参
照)。これに対してねじれ角誤差のみを伴うミスアライ
メントを持つ場合には片当たりの影響は不明確となり、
T.E.値の極端な悪化もない(図9の(d)参照)。
以上より、T.E.値の悪化はミスアライメントにより
主に歯先が片当たりとなることに起因すると言える。歯
面修整量を大きくすると片当たりによる噛合い伝達誤差
の悪化を防止できるが、歯面の凸量が大きくなった結果
として噛合い伝達誤差量は全体的に大きくなるため最適
値を求める方法が必要になる。
p2で噛合い伝達誤差は折れ点を持ち、その傾向はミス
アライメントのある場合に顕著になる。しかし、図6の
ようにp1,p2がp3,p4で示す噛合い範囲の外に
ある場合には、T.E.値への影響は殆どない。ミスア
ライメントが大きくなっていわゆる片当たりになると、
p1またはp2が噛合い範囲p3,p4間に現れてT.
E.値は悪化する。ミスアライメントが過大な量になる
と噛合い伝達誤差曲線は不連続になる(図9(c)参
照)。これに対してねじれ角誤差のみを伴うミスアライ
メントを持つ場合には片当たりの影響は不明確となり、
T.E.値の極端な悪化もない(図9の(d)参照)。
以上より、T.E.値の悪化はミスアライメントにより
主に歯先が片当たりとなることに起因すると言える。歯
面修整量を大きくすると片当たりによる噛合い伝達誤差
の悪化を防止できるが、歯面の凸量が大きくなった結果
として噛合い伝達誤差量は全体的に大きくなるため最適
値を求める方法が必要になる。
【0030】ミスアライメントと片当たりの関係を調べ
るため、圧力角誤差とねじれ角誤差を極端に大きな幅
(±24μm)で変化させてT.E.値を計算した。ね
じれ角10゜の場合と27゜の場合を図10(a),
(b)に等高線表示と共に示す。この場合も、歯形丸み
量およびクラウニング量は共に5μmである。その結
果、特に接触点の軌跡の方向、すなわち噛合い開始側の
角部と噛合い終了側の角部とを結ぶ対角線方向のミスア
ライメントが最大となる場合、具体的には圧力角誤差が
+24μmでねじれ角誤差が−24μm、または圧力角
誤差が−24μmでねじれ角誤差が+24μmの場合
に、噛合い伝達誤差が最も大きくなることがわかった。
また、ねじれ角が大きい場合は、全体的にT.E.値が
下がる一方、この傾向がより顕著になる(図10(b)
参照)。また、噛合い伝達誤差は圧力角誤差に対してよ
り敏感な傾向を示し、ねじれ角誤差の影響は小さい(図
10(a)参照)。なお、上記接触点の軌跡の方向は、
歯車の歯のねじれ方向によって相違する。
るため、圧力角誤差とねじれ角誤差を極端に大きな幅
(±24μm)で変化させてT.E.値を計算した。ね
じれ角10゜の場合と27゜の場合を図10(a),
(b)に等高線表示と共に示す。この場合も、歯形丸み
量およびクラウニング量は共に5μmである。その結
果、特に接触点の軌跡の方向、すなわち噛合い開始側の
角部と噛合い終了側の角部とを結ぶ対角線方向のミスア
ライメントが最大となる場合、具体的には圧力角誤差が
+24μmでねじれ角誤差が−24μm、または圧力角
誤差が−24μmでねじれ角誤差が+24μmの場合
に、噛合い伝達誤差が最も大きくなることがわかった。
また、ねじれ角が大きい場合は、全体的にT.E.値が
下がる一方、この傾向がより顕著になる(図10(b)
参照)。また、噛合い伝達誤差は圧力角誤差に対してよ
り敏感な傾向を示し、ねじれ角誤差の影響は小さい(図
10(a)参照)。なお、上記接触点の軌跡の方向は、
歯車の歯のねじれ方向によって相違する。
【0031】以上の検討により、噛合い伝達誤差を低減
するには、その悪化要因である歯先の片当たりを防止す
ることが重要であり、そのためには特に接触点の軌跡の
方向のミスアライメントに注目することが重要であるこ
とを確認した。なお、ねじれ角誤差による片当たりの噛
合い伝達誤差に対する影響は小さいが、強度面からは避
けるべき状態であるので、以下の検討では、歯先と歯幅
の両方向で片当たりがないことを条件として歯面修整法
の検討を進める。
するには、その悪化要因である歯先の片当たりを防止す
ることが重要であり、そのためには特に接触点の軌跡の
方向のミスアライメントに注目することが重要であるこ
とを確認した。なお、ねじれ角誤差による片当たりの噛
合い伝達誤差に対する影響は小さいが、強度面からは避
けるべき状態であるので、以下の検討では、歯先と歯幅
の両方向で片当たりがないことを条件として歯面修整法
の検討を進める。
【0032】《噛合い伝達誤差を最小にする歯面》歯面
修整値を決定する際には、歯車箱の精度によって決まる
ミスアライメントの公差全域で片当たりが起こらないこ
とを前提にする必要がある。また、噛合い伝達誤差は歯
面の修整量が少ないほど小さいので、歯面修整は必要最
小限とするのがよい。図11は、表1の歯車諸元を使っ
て歯面修整量とT.E.値(格子で示す面)の関係を計
算で調べたもので、歯形丸み量とクラウニング量が少な
いほどT.E.値は小さくなることがわかる。従って、
公差上限のミスアライメント量においても片当たりのな
い歯形丸み量とクラウニング量のうち最小の量を設定す
ることがねらいとなる。なお、図11はミスアライメン
トがない場合である。
修整値を決定する際には、歯車箱の精度によって決まる
ミスアライメントの公差全域で片当たりが起こらないこ
とを前提にする必要がある。また、噛合い伝達誤差は歯
面の修整量が少ないほど小さいので、歯面修整は必要最
小限とするのがよい。図11は、表1の歯車諸元を使っ
て歯面修整量とT.E.値(格子で示す面)の関係を計
算で調べたもので、歯形丸み量とクラウニング量が少な
いほどT.E.値は小さくなることがわかる。従って、
公差上限のミスアライメント量においても片当たりのな
い歯形丸み量とクラウニング量のうち最小の量を設定す
ることがねらいとなる。なお、図11はミスアライメン
トがない場合である。
【0033】片当たりに対して最も厳しくなる接触点の
軌跡方向に公差上限の圧力角誤差とねじれ角誤差を与え
て誤差歯面を求め、前記(15)式を用いて接触点が歯
面上に存在する条件で片当たり限界を求める。条件を満
たす歯形丸みとクラウニングの範囲のうち最小のものが
最適歯面となる。表1の歯車諸元で、ミスアライメント
の公差幅を圧力角誤差とねじれ角誤差でそれぞれ±20
μmとし、最適な歯形丸み量とクラウニング量の組合せ
を求めると図12のA0の位置となる。A0は実線で示
す歯たけ方向と歯すじ方向の片当たり限界線の交点とし
て求められ、この検討例では歯形丸み量,クラウニング
量ともに約7.5μmとなる。これはミスアライメント
として与えた圧力角誤差量,ねじれ角誤差量の半分より
もやや小さい量である。この量に修整量を設定した場合
T.E.値はミスアライメント変化の影響をほとんど受
けず、略一定となる(図13)。以上の手順で歯面修整
値を決定することにより、ミスアライメントの公差全域
で噛合い伝達誤差の悪化のない歯面が得られる。なお、
図12は、圧力角誤差が−20μmでねじれ角誤差が+
20μmの場合で、圧力角誤差が+20μmでねじれ角
誤差が−20μmの場合も略同様の結果が得られるが、
厳密には両方を検討してより厳しい方で修整値を決定す
ることが望ましい。また、このような修整歯面を有する
歯車の製造方法は、鍛造や切削,研削などよく知られた
種々の製造法を採用することが可能で、修整歯面を有す
る歯車を直接製造したり、基本形状の歯車を製造したの
ち切削や研削などで所定の修整加工を施したりするよう
にすれば良い。
軌跡方向に公差上限の圧力角誤差とねじれ角誤差を与え
て誤差歯面を求め、前記(15)式を用いて接触点が歯
面上に存在する条件で片当たり限界を求める。条件を満
たす歯形丸みとクラウニングの範囲のうち最小のものが
最適歯面となる。表1の歯車諸元で、ミスアライメント
の公差幅を圧力角誤差とねじれ角誤差でそれぞれ±20
μmとし、最適な歯形丸み量とクラウニング量の組合せ
を求めると図12のA0の位置となる。A0は実線で示
す歯たけ方向と歯すじ方向の片当たり限界線の交点とし
て求められ、この検討例では歯形丸み量,クラウニング
量ともに約7.5μmとなる。これはミスアライメント
として与えた圧力角誤差量,ねじれ角誤差量の半分より
もやや小さい量である。この量に修整量を設定した場合
T.E.値はミスアライメント変化の影響をほとんど受
けず、略一定となる(図13)。以上の手順で歯面修整
値を決定することにより、ミスアライメントの公差全域
で噛合い伝達誤差の悪化のない歯面が得られる。なお、
図12は、圧力角誤差が−20μmでねじれ角誤差が+
20μmの場合で、圧力角誤差が+20μmでねじれ角
誤差が−20μmの場合も略同様の結果が得られるが、
厳密には両方を検討してより厳しい方で修整値を決定す
ることが望ましい。また、このような修整歯面を有する
歯車の製造方法は、鍛造や切削,研削などよく知られた
種々の製造法を採用することが可能で、修整歯面を有す
る歯車を直接製造したり、基本形状の歯車を製造したの
ち切削や研削などで所定の修整加工を施したりするよう
にすれば良い。
【0034】このように、片当たりを生じることがない
ようにミスアライメントに基づいて(考慮して)歯面を
修整すれば、ミスアライメントに拘らず噛合い伝達誤差
を小さく維持できる。また、ミスアライメントを圧力角
誤差およびねじれ角誤差に換算し、接触点の軌跡の方向
のミスアライメントが最大となるようにその圧力角誤差
およびねじれ角誤差を与えて誤差歯面を求め、その誤差
歯面において片当たりを回避できるクラウニング量およ
び歯形丸み量を求めるようにしているため、ミスアライ
メントの態様に拘らず確実に片当たりを防止できるとと
もに、そのようなクラウニング量および歯形丸み量を容
易に求めることができる。特に、片当たりを生じない範
囲で最小の歯形丸み量およびクラウニング量(図12の
A0)を修整量としているため、噛合い伝達誤差が最小
になる。これは請求項1および請求項2に記載の発明の
一実施例に相当する。
ようにミスアライメントに基づいて(考慮して)歯面を
修整すれば、ミスアライメントに拘らず噛合い伝達誤差
を小さく維持できる。また、ミスアライメントを圧力角
誤差およびねじれ角誤差に換算し、接触点の軌跡の方向
のミスアライメントが最大となるようにその圧力角誤差
およびねじれ角誤差を与えて誤差歯面を求め、その誤差
歯面において片当たりを回避できるクラウニング量およ
び歯形丸み量を求めるようにしているため、ミスアライ
メントの態様に拘らず確実に片当たりを防止できるとと
もに、そのようなクラウニング量および歯形丸み量を容
易に求めることができる。特に、片当たりを生じない範
囲で最小の歯形丸み量およびクラウニング量(図12の
A0)を修整量としているため、噛合い伝達誤差が最小
になる。これは請求項1および請求項2に記載の発明の
一実施例に相当する。
【0035】ここで、本実施例では歯面修整量と噛合い
伝達誤差との関係を、基礎円および作用線の方向変化を
考慮して定式化し、歯幅を歯形の位相角として導入した
3次元接線極座標を使用した。このため、歯面修整によ
って基礎円および作用線方向が変化することを考慮して
厳密に接触点を求めることができ、相互に依存しあう歯
車諸元と歯面修整を同時に扱うことができ、諸元と歯面
の最適組み合わせを効率よく検討でき、接触線上の歯面
誤差から数値解析によって噛合い伝達誤差を求める場合
に比較して計算時間を大幅に短縮できる。また、以下の
ことが確認できた。 (1)計算結果は、片歯面噛合い誤差試験機の測定値と
対応がよく、作用線の方向変化を考慮することにより計
算精度が向上した。 (2)噛合い伝達誤差の悪化は、ミスアライメントによ
り主に歯先が片当たりとなることに起因する。したがっ
て、ミスアライメントを考慮した歯面修整では、特に歯
形丸み量の適正化に配慮すべきである。 (3)接触点の軌跡の方向にミスアライメントがあると
片当たりし易く、ねじれ角が大きいとこの傾向が顕著と
なる。 (4)公差上限のミスアライメント量で片当たりしない
条件から、必要最小の歯面修整量が求められる。必要最
小の歯形丸み量とクラウニング量は、それぞれミスアラ
イメントに伴う圧力角誤差とねじれ角誤差の公差上限量
の約半分が目安となる。この歯面は、ミスアライメント
の大きさによらず略一定かつ最小の噛合い伝達誤差を持
つ最適歯面である。
伝達誤差との関係を、基礎円および作用線の方向変化を
考慮して定式化し、歯幅を歯形の位相角として導入した
3次元接線極座標を使用した。このため、歯面修整によ
って基礎円および作用線方向が変化することを考慮して
厳密に接触点を求めることができ、相互に依存しあう歯
車諸元と歯面修整を同時に扱うことができ、諸元と歯面
の最適組み合わせを効率よく検討でき、接触線上の歯面
誤差から数値解析によって噛合い伝達誤差を求める場合
に比較して計算時間を大幅に短縮できる。また、以下の
ことが確認できた。 (1)計算結果は、片歯面噛合い誤差試験機の測定値と
対応がよく、作用線の方向変化を考慮することにより計
算精度が向上した。 (2)噛合い伝達誤差の悪化は、ミスアライメントによ
り主に歯先が片当たりとなることに起因する。したがっ
て、ミスアライメントを考慮した歯面修整では、特に歯
形丸み量の適正化に配慮すべきである。 (3)接触点の軌跡の方向にミスアライメントがあると
片当たりし易く、ねじれ角が大きいとこの傾向が顕著と
なる。 (4)公差上限のミスアライメント量で片当たりしない
条件から、必要最小の歯面修整量が求められる。必要最
小の歯形丸み量とクラウニング量は、それぞれミスアラ
イメントに伴う圧力角誤差とねじれ角誤差の公差上限量
の約半分が目安となる。この歯面は、ミスアライメント
の大きさによらず略一定かつ最小の噛合い伝達誤差を持
つ最適歯面である。
【0036】《製造公差考慮の歯面修整法》歯形丸みと
クラウニングも製造公差を持つので、片当たりを防止す
るには図12で求めた最適値A0を公差下限とする必要
がある。従って、公差上限では修整量が過大になり噛合
い伝達誤差は悪化する。そこで、過大な歯形丸みとクラ
ウニングを持つ歯面に対してバイアス修整を追加し、噛
合い伝達誤差の悪化を防ぐ方法を提案する。従来、バイ
アス修整は歯当たりを長くして実質の噛合い率を高める
方法として考えられ、その量は経験的に決められてきた
が、ここでは歯面形状の製造公差を補う方法としてのバ
イアス量の設定法を以下に示す。
クラウニングも製造公差を持つので、片当たりを防止す
るには図12で求めた最適値A0を公差下限とする必要
がある。従って、公差上限では修整量が過大になり噛合
い伝達誤差は悪化する。そこで、過大な歯形丸みとクラ
ウニングを持つ歯面に対してバイアス修整を追加し、噛
合い伝達誤差の悪化を防ぐ方法を提案する。従来、バイ
アス修整は歯当たりを長くして実質の噛合い率を高める
方法として考えられ、その量は経験的に決められてきた
が、ここでは歯面形状の製造公差を補う方法としてのバ
イアス量の設定法を以下に示す。
【0037】歯形丸み,クラウニングの製造公差幅を共
に10μmとし、図12に公差範囲を斜線で示す。公差
範囲で片当たりのない修整量を求めると最小歯形丸み量
が約8μm,最小クラウニング量が約10μmとなる
(図12のA1)。これを公差下限とすると公差上限の
歯形丸み量とクラウニング量はそれぞれ約18μm,約
20μmとなり(図12のA2)、修整量が過大になっ
て噛合い伝達誤差は悪化する。図14は公差上限(A
2)の歯面にバイアスを加え、その量を変化させてT.
E.値を計算したものである。バイアス修整により噛合
い伝達誤差量は減少し、約50μmで公差下限(A1)
の修整歯面と同等量となる。バイアスの向きは、接触点
の軌跡がなだらかになる方向である。
に10μmとし、図12に公差範囲を斜線で示す。公差
範囲で片当たりのない修整量を求めると最小歯形丸み量
が約8μm,最小クラウニング量が約10μmとなる
(図12のA1)。これを公差下限とすると公差上限の
歯形丸み量とクラウニング量はそれぞれ約18μm,約
20μmとなり(図12のA2)、修整量が過大になっ
て噛合い伝達誤差は悪化する。図14は公差上限(A
2)の歯面にバイアスを加え、その量を変化させてT.
E.値を計算したものである。バイアス修整により噛合
い伝達誤差量は減少し、約50μmで公差下限(A1)
の修整歯面と同等量となる。バイアスの向きは、接触点
の軌跡がなだらかになる方向である。
【0038】図15の(a)は公差下限の歯面(図12
のA1)のミスアライメントとT.E.値(格子面)の
関係を示す図で、図15の(b)は公差上限の歯面(図
12のA2)に最適バイアス量(約50μm)のバイア
ス修整を加えた場合のミスアライメントとT.E.値
(格子面)の関係を示す図で、共にT.E.値はミスア
ライメントの影響を受けず、その量もほとんど同じであ
る。このように、最適量のバイアス修整を施すことで、
製造公差によらず噛合い伝達誤差量を最小とし、かつミ
スアライメントの影響を受けない歯面を得ることができ
る。図16は、これ等2つの修整歯面を比較して示す図
で、A1面が公差下限の歯面でそのクラウニング量c
min ,歯形丸み量dmin は図12のA1位置(公差下
限)における修整量である。また、(A2+最適バイア
ス)歯面は公差上限の歯面に最適バイアスを加えた歯面
で、そのクラウニング量cmax ,歯形丸み量dmax は図
12のA2位置(公差上限)における修整量であり、
+が図14に従って求めた最適バイアス量である。そ
して、それ等の両歯面における接触点の軌跡(点線)は
略一致し、噛合い伝達誤差が略等しくなる。公差下限の
修整歯面と公差上限で最適バイアスを施した歯面の2面
間にある中凸歯面は、いずれの組合せの歯形丸み,クラ
ウニング,バイアス量においても接触点の軌跡が変化し
ないため、製造公差による噛合い伝達誤差の悪化がな
く、ミスアライメントの影響も受けない歯面となる。言
い換えれば、公差下限と公差上限の間の中間の製造公差
の場合、その最適バイアス量も中間の値となるのであ
る。
のA1)のミスアライメントとT.E.値(格子面)の
関係を示す図で、図15の(b)は公差上限の歯面(図
12のA2)に最適バイアス量(約50μm)のバイア
ス修整を加えた場合のミスアライメントとT.E.値
(格子面)の関係を示す図で、共にT.E.値はミスア
ライメントの影響を受けず、その量もほとんど同じであ
る。このように、最適量のバイアス修整を施すことで、
製造公差によらず噛合い伝達誤差量を最小とし、かつミ
スアライメントの影響を受けない歯面を得ることができ
る。図16は、これ等2つの修整歯面を比較して示す図
で、A1面が公差下限の歯面でそのクラウニング量c
min ,歯形丸み量dmin は図12のA1位置(公差下
限)における修整量である。また、(A2+最適バイア
ス)歯面は公差上限の歯面に最適バイアスを加えた歯面
で、そのクラウニング量cmax ,歯形丸み量dmax は図
12のA2位置(公差上限)における修整量であり、
+が図14に従って求めた最適バイアス量である。そ
して、それ等の両歯面における接触点の軌跡(点線)は
略一致し、噛合い伝達誤差が略等しくなる。公差下限の
修整歯面と公差上限で最適バイアスを施した歯面の2面
間にある中凸歯面は、いずれの組合せの歯形丸み,クラ
ウニング,バイアス量においても接触点の軌跡が変化し
ないため、製造公差による噛合い伝達誤差の悪化がな
く、ミスアライメントの影響も受けない歯面となる。言
い換えれば、公差下限と公差上限の間の中間の製造公差
の場合、その最適バイアス量も中間の値となるのであ
る。
【0039】このように、製造公差に基づいて(考慮し
て)片当たりを生じることがないクラウニング量および
歯形丸み量を設定した場合でも、適切なバイアスを施す
ことにより製造公差内の最小クラウニング量および最小
歯形丸み量の場合と同等の噛合い伝達誤差とすることが
できる。例えば、焼入れ後などに歯車の実際の歯形丸み
量およびクラウニング量を所定の生産単位毎に測定し
て、その中央値や平均値などを統計学的に求め、その歯
形丸み量およびクラウニング量から公差下限の歯面(図
12のA1)と同等の噛合い伝達誤差となる最適バイア
ス量を図14と同様にして算出し、研磨などの方法で歯
面を修整すれば良い。この場合のバイアス修整は部分的
な除去で高品質が得られるため、工具費や工数が少なく
て済む。
て)片当たりを生じることがないクラウニング量および
歯形丸み量を設定した場合でも、適切なバイアスを施す
ことにより製造公差内の最小クラウニング量および最小
歯形丸み量の場合と同等の噛合い伝達誤差とすることが
できる。例えば、焼入れ後などに歯車の実際の歯形丸み
量およびクラウニング量を所定の生産単位毎に測定し
て、その中央値や平均値などを統計学的に求め、その歯
形丸み量およびクラウニング量から公差下限の歯面(図
12のA1)と同等の噛合い伝達誤差となる最適バイア
ス量を図14と同様にして算出し、研磨などの方法で歯
面を修整すれば良い。この場合のバイアス修整は部分的
な除去で高品質が得られるため、工具費や工数が少なく
て済む。
【0040】ここで、この場合には片当たりを生じるこ
とがないように製造公差に基づいてクラウニング量およ
び歯形丸み量を求めるようにしているため、製造公差に
拘らず確実に片当たりが防止され、噛合い伝達誤差を小
さく維持できる。しかも、製造後の実際のクラウニング
量および歯形丸み量に基づいて、製造公差内の最小クラ
ウニング量および最小歯形丸み量(図12のA1)の場
合と噛合い伝達誤差が略等しくなる最適バイアス量を求
めてバイアス修整するようにしているため、製造公差に
起因する噛合い伝達誤差のばらつきが低減されるととも
に、噛合い伝達誤差自体も製造公差内の最小クラウニン
グ量および最小歯形丸み量の場合と同程度の小さな値と
なる。これは請求項3に記載の発明の一実施例に相当す
る。
とがないように製造公差に基づいてクラウニング量およ
び歯形丸み量を求めるようにしているため、製造公差に
拘らず確実に片当たりが防止され、噛合い伝達誤差を小
さく維持できる。しかも、製造後の実際のクラウニング
量および歯形丸み量に基づいて、製造公差内の最小クラ
ウニング量および最小歯形丸み量(図12のA1)の場
合と噛合い伝達誤差が略等しくなる最適バイアス量を求
めてバイアス修整するようにしているため、製造公差に
起因する噛合い伝達誤差のばらつきが低減されるととも
に、噛合い伝達誤差自体も製造公差内の最小クラウニン
グ量および最小歯形丸み量の場合と同程度の小さな値と
なる。これは請求項3に記載の発明の一実施例に相当す
る。
【0041】《中央部と周縁部とを分けた歯面修整法》
以上は、ミスアライメントが公差上限でも片当たりを生
じることがないクラウニング量および歯形丸み量を求
め、その修整量で歯面全体を修整する場合で、ミスアラ
イメントが公差上限でも片当たりせず、噛合い伝達誤差
の極端な悪化はないが、歯面全体が大きな丸みを持つた
めミスアライメントが小さい場合でも噛合い伝達誤差の
レベルは殆ど変わらない。このため、生産量の大部分
(±2σで95.5%)の歯車に対しては、過大な歯面
修整量となり、生産量全体としては噛合い伝達誤差のレ
ベルが悪い状態となる。
以上は、ミスアライメントが公差上限でも片当たりを生
じることがないクラウニング量および歯形丸み量を求
め、その修整量で歯面全体を修整する場合で、ミスアラ
イメントが公差上限でも片当たりせず、噛合い伝達誤差
の極端な悪化はないが、歯面全体が大きな丸みを持つた
めミスアライメントが小さい場合でも噛合い伝達誤差の
レベルは殆ど変わらない。このため、生産量の大部分
(±2σで95.5%)の歯車に対しては、過大な歯面
修整量となり、生産量全体としては噛合い伝達誤差のレ
ベルが悪い状態となる。
【0042】そこで、図19および図20に示すよう
に、ミスアライメントが大きい場合にだけ接触する歯面
の周縁部については、上記と同様にミスアライメントが
公差上限でも片当たりを生じることがない最小の歯形丸
み量d2 ,クラウニング量c2(図12のA0に相当)
で修整し、歯面の中央部については、小さなミスアライ
メント(例えば±2σ値)を前提として片当たりを生じ
ることがない最小の歯形丸み量d1 ,クラウニング量c
1 で修整する。これ等の歯形丸み量d1 ,クラウニング
量c1 についても、ミスアライメントを圧力角誤差およ
びねじれ角誤差に換算して、図12と同様にして求める
ことができる。この場合の歯面修整は、例えば歯形丸み
量d2 ,クラウニング量c2 で基本形状を形成した後、
シェービングや研磨などで中央部を除去するようにすれ
ば良い。なお、修整量が小さい中央部の範囲は適宜設定
すれば良く、中央部と周縁部との境界部分には滑らかな
丸み付けを行うことが望ましい。
に、ミスアライメントが大きい場合にだけ接触する歯面
の周縁部については、上記と同様にミスアライメントが
公差上限でも片当たりを生じることがない最小の歯形丸
み量d2 ,クラウニング量c2(図12のA0に相当)
で修整し、歯面の中央部については、小さなミスアライ
メント(例えば±2σ値)を前提として片当たりを生じ
ることがない最小の歯形丸み量d1 ,クラウニング量c
1 で修整する。これ等の歯形丸み量d1 ,クラウニング
量c1 についても、ミスアライメントを圧力角誤差およ
びねじれ角誤差に換算して、図12と同様にして求める
ことができる。この場合の歯面修整は、例えば歯形丸み
量d2 ,クラウニング量c2 で基本形状を形成した後、
シェービングや研磨などで中央部を除去するようにすれ
ば良い。なお、修整量が小さい中央部の範囲は適宜設定
すれば良く、中央部と周縁部との境界部分には滑らかな
丸み付けを行うことが望ましい。
【0043】このようにすれば、歯面中央部の修整量が
小さいため、その中央部のみで接触する比較的小さなミ
スアライメントの場合(生産量の95.5%)の噛合い
伝達誤差が小さくなる一方、ミスアライメントが公差上
限の場合でも片当たりによる噛合い伝達誤差の極端な悪
化が回避される。これは請求項4に記載の発明の一実施
例であるが、この場合にも製造公差を考慮して修整量を
設定するとともに、実際の修整量に応じてバイアス修整
を追加して行うようにすることが可能である。
小さいため、その中央部のみで接触する比較的小さなミ
スアライメントの場合(生産量の95.5%)の噛合い
伝達誤差が小さくなる一方、ミスアライメントが公差上
限の場合でも片当たりによる噛合い伝達誤差の極端な悪
化が回避される。これは請求項4に記載の発明の一実施
例であるが、この場合にも製造公差を考慮して修整量を
設定するとともに、実際の修整量に応じてバイアス修整
を追加して行うようにすることが可能である。
【0044】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳
細に説明したが、本発明は他の態様で実施することもで
きる。
細に説明したが、本発明は他の態様で実施することもで
きる。
【0045】例えば、前記実施例では歯面を3次元接線
極座標で数式化して片当たりを生じないクラウニング量
や歯形丸み量を求めるようになっているが、それ等のク
ラウニング量や歯形丸み量の求め方は、歯面を数式化す
る手法なども含めて適宜変更され得る。また、クラウニ
ングおよび歯形丸みは放物線で定義されていたが、単純
な円弧であっても良いなど、歯面修整の態様も適宜変更
できる。
極座標で数式化して片当たりを生じないクラウニング量
や歯形丸み量を求めるようになっているが、それ等のク
ラウニング量や歯形丸み量の求め方は、歯面を数式化す
る手法なども含めて適宜変更され得る。また、クラウニ
ングおよび歯形丸みは放物線で定義されていたが、単純
な円弧であっても良いなど、歯面修整の態様も適宜変更
できる。
【0046】また、前記実施例では、製造公差を考慮し
ない場合、片当たりを生じない範囲で最小のクラウニン
グ量および歯形丸み量(図12のA0)を設定するよう
になっていたが、片当たりを生じなければ噛合い伝達誤
差の極端な悪化はないため、片当たりを生じない範囲で
クラウニング量および歯形丸み量を設定すれば良く、必
ずしも最小値である必要はない。
ない場合、片当たりを生じない範囲で最小のクラウニン
グ量および歯形丸み量(図12のA0)を設定するよう
になっていたが、片当たりを生じなければ噛合い伝達誤
差の極端な悪化はないため、片当たりを生じない範囲で
クラウニング量および歯形丸み量を設定すれば良く、必
ずしも最小値である必要はない。
【0047】また、前記図19および図20の実施例で
は修整量が2段で変化していたが、3段以上で変化させ
るようにしても良い。また、これ等の図では元の歯たけ
や歯幅を基準として歯形丸み量d1 ,クラウニング量c
1 が設定されているが、歯形丸み量d1 ,クラウニング
量c1 で修整する中央部の範囲に基づいて、片当たりし
ない歯形丸み量d1 ,クラウニング量c1 を設定するよ
うにしても良い。
は修整量が2段で変化していたが、3段以上で変化させ
るようにしても良い。また、これ等の図では元の歯たけ
や歯幅を基準として歯形丸み量d1 ,クラウニング量c
1 が設定されているが、歯形丸み量d1 ,クラウニング
量c1 で修整する中央部の範囲に基づいて、片当たりし
ない歯形丸み量d1 ,クラウニング量c1 を設定するよ
うにしても良い。
【0048】また、前記実施例ではヘリカルギヤについ
て説明したが、歯が歯車軸と平行な歯車にも本発明は同
様に適用できる。
て説明したが、歯が歯車軸と平行な歯車にも本発明は同
様に適用できる。
【0049】また、前記実施例ではミスアライメントを
圧力角誤差およびねじれ角誤差に換算して誤差歯面を求
め、その誤差歯面に基づいて歯面の修整量を求めるよう
にしていたが、例えばCAD装置,CAM装置などを利
用して噛合い伝達誤差が最大となる態様でミスアライメ
ントを一対の噛合い歯車に与え、クラウニング量および
歯形丸み量を順次変更しながら試行錯誤で片当たりを回
避できる修整量を求めるなど、他の手法で修整量を求め
ることも可能である。
圧力角誤差およびねじれ角誤差に換算して誤差歯面を求
め、その誤差歯面に基づいて歯面の修整量を求めるよう
にしていたが、例えばCAD装置,CAM装置などを利
用して噛合い伝達誤差が最大となる態様でミスアライメ
ントを一対の噛合い歯車に与え、クラウニング量および
歯形丸み量を順次変更しながら試行錯誤で片当たりを回
避できる修整量を求めるなど、他の手法で修整量を求め
ることも可能である。
【0050】また、前記実施例ではミスアライメントの
みを考慮して歯面を修整する場合について説明したが、
焼入れなどによる変形など他の噛合い伝達誤差要因を考
慮して片当たりを回避できる修整量を総合的に求めるよ
うにすることもできる。
みを考慮して歯面を修整する場合について説明したが、
焼入れなどによる変形など他の噛合い伝達誤差要因を考
慮して片当たりを回避できる修整量を総合的に求めるよ
うにすることもできる。
【0051】その他一々例示はしないが、本発明は当業
者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実
施することができる。
者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実
施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する際に歯面を表現するのに
好適な3次元接線極座標を説明する図である。
好適な3次元接線極座標を説明する図である。
【図2】図1の3次元接線極座標における修整歯形の実
際の接触位置や作用線などを説明する図である。
際の接触位置や作用線などを説明する図である。
【図3】図1の3次元接線極座標において歯面修整に伴
う接触位置の変化を説明する図である。
う接触位置の変化を説明する図である。
【図4】修整歯面上における接触点の軌跡を模型的に示
す図である。
す図である。
【図5】ミスアライメントがない場合の接触点の軌跡を
模型的に示す図である。
模型的に示す図である。
【図6】圧力角誤差が10μm,ねじれ角誤差が−10
μmの場合の接触点の軌跡を模型的に示す図である。
μmの場合の接触点の軌跡を模型的に示す図である。
【図7】圧力角誤差が24μmの場合の接触点の軌跡を
模型的に示す図である。
模型的に示す図である。
【図8】ねじれ角誤差が20μmの場合の接触点の軌跡
を模型的に示す図である。
を模型的に示す図である。
【図9】図5〜図8の場合の噛合い伝達誤差をそれぞれ
示す図である。
示す図である。
【図10】ミスアライメントの態様と噛合い伝達誤差と
の関係を示す図で、(a)はねじれ角が10°の場合で
(b)はねじれ角が27°の場合である。
の関係を示す図で、(a)はねじれ角が10°の場合で
(b)はねじれ角が27°の場合である。
【図11】歯面修整量と噛合い伝達誤差との関係を示す
図である。
図である。
【図12】歯形丸みおよびクラウニングの片当たり限界
量を示す図である。
量を示す図である。
【図13】図12におけるA0位置の歯面修整を行った
場合の噛合い伝達誤差を示す図である。
場合の噛合い伝達誤差を示す図である。
【図14】図12におけるA2位置の歯面修整を行った
場合に、A1位置の歯面修整と同等の噛合い伝達誤差と
なるバイアス修整量を求めるための図である。
場合に、A1位置の歯面修整と同等の噛合い伝達誤差と
なるバイアス修整量を求めるための図である。
【図15】図12におけるA1位置の歯面修整を行った
場合の噛合い伝達誤差と、A2位置の歯面修整に加えて
最適バイアス修整を行った場合の噛合い伝達誤差とを比
較して示す図である。
場合の噛合い伝達誤差と、A2位置の歯面修整に加えて
最適バイアス修整を行った場合の噛合い伝達誤差とを比
較して示す図である。
【図16】図12におけるA1位置の修整歯面と、A2
位置の修整に加えて最適バイアス修整を行った修整歯面
とを比較して示す図である。
位置の修整に加えて最適バイアス修整を行った修整歯面
とを比較して示す図である。
【図17】歯面修整の幾つかの態様を示す図である。
【図18】ミスアライメントの2つの態様を示す図であ
る。
る。
【図19】中央部と周縁部とで歯形丸み量が異なる場合
を説明する図である。
を説明する図である。
【図20】中央部と周縁部とでクラウニング量が異なる
場合を説明する図である。
場合を説明する図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 歯車を配設する際の歯車軸のミスアライ
メントに基づいて、少なくとも片当たりを生じることが
ないように歯面を修整することを特徴とする歯車の歯面
修整方法。 - 【請求項2】 前記ミスアライメントを圧力角誤差およ
びねじれ角誤差に換算する工程と、 接触点の軌跡の方向のミスアライメントが最大となるよ
うに前記圧力角誤差および前記ねじれ角誤差を与えて誤
差歯面を求める工程と、 前記誤差歯面において片当たりを回避できるクラウニン
グ量および歯形丸み量を求める工程とを有することを特
徴とする請求項1に記載の歯車の歯面修整方法。 - 【請求項3】 前記クラウニング量および歯形丸み量は
製造公差に基づいて片当たりを生じることがないように
求められ、製造後の実際のクラウニング量および歯形丸
み量に基づいて、製造公差内の最小クラウニング量およ
び最小歯形丸み量の場合と噛合い伝達誤差が略等しくな
るバイアス量を求めてバイアス修整を追加して行うこと
を特徴とする請求項2に記載の歯車の歯面修整方法。 - 【請求項4】 歯車の歯面の周縁部については、ミスア
ライメントが公差上限でも片当たりを回避できるように
前記クラウニング量および歯形丸み量を求める一方、歯
車の歯面の中央部については、ミスアライメントが公差
上限より小さい所定値の場合を前提として片当たりを回
避できるように前記クラウニング量および歯形丸み量を
求めることを特徴とする請求項2または請求項3に記載
の歯車の歯面修整方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00615995A JP3786982B2 (ja) | 1995-01-19 | 1995-01-19 | 歯車の歯面修整方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00615995A JP3786982B2 (ja) | 1995-01-19 | 1995-01-19 | 歯車の歯面修整方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08197332A true JPH08197332A (ja) | 1996-08-06 |
JP3786982B2 JP3786982B2 (ja) | 2006-06-21 |
Family
ID=11630754
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP00615995A Expired - Fee Related JP3786982B2 (ja) | 1995-01-19 | 1995-01-19 | 歯車の歯面修整方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3786982B2 (ja) |
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-
1995
- 1995-01-19 JP JP00615995A patent/JP3786982B2/ja not_active Expired - Fee Related
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