JPH1086865A - ウォールクリーナ用吸着ユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】吸着部を有するウォールクリーナにおいて、壁
面に長いクラックがある時や段差や突起があるときに吸
着能力を失うという欠点を解消する。 【解決手段】壁面吸着面はクローラベルトからなり、吸
盤取付け用突起に着脱自在に係止する個々の吸盤を備
え、吸着室があらゆる方向に複数配置されているように
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、ビル外壁
などの高所における垂直壁面又は傾斜面などの洗浄・清
掃など、ビル清掃業の技術分野に使用する装置の一部に
使用するウォールクリーナ用吸着ユニットに関する。こ
のようなクリーナは、原子力施設の原子炉ウエルなどの
垂直なＳＵＳ（ステンレス鋼）壁面などの除染装置とし
ても使用することができるものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、ビル外壁などの高所における垂
直壁面又は急傾斜壁面などの清掃は、従前はゴンドラ等
による人手作業で行われていたが、近年ビル屋上から吊
り下げた自動清掃装置により行う方法に変りつつある。
自動清掃装置の一つに、壁面に吸着することにより、壁
面に対する押付圧を生じさせ、装置自体の位置を定着さ
せると共に、ブラシなどによる洗浄力の反力を効果的に
支持し、スキージによる掻取り除去を行うウォールクリ
ーナがある。また、原子力発電所の原子炉ウエルなどの
ＳＵＳ（ステンレス鋼）の垂直壁に付着する放射性物質
の洗浄除去にも、同様の吸着式のブラシ洗浄装置（ウォ
ールクリーナ）が使用されている。

【０００３】これらのウォールクリーナの吸着機能は、
吸着対象面に密着して大気から遮断された吸着室内を負
圧とし、負圧によって吸着力を生じさせることにより壁
面に対し押付力を生じさせるものである（特開昭６１−
４６７７８号公報など）。その吸着力によりウォールク
リーナを垂直壁面に保持し、洗浄ブラシなどの作業ツー
ルによる仕事を行うことができる。しかし、吸着対象面
に吸着室の差し渡し寸法より長い連続したクラックや突
起物があると、吸着室（吸盤）は吸着することができな
くなる。窓の桟などはその例である。

【０００４】従来の壁面吸着自走装置（特開昭６１−４
６７７８号公報）の例を図１７〜図１９に示した。図１
７は従来例に係る装置の断面図であり、図１８はこの壁
面吸着装置の吸着部の平面図である。左右の吸着クロー
ラベルト５２は連結部材５１によって連結され、駆動装
置５３により走行する。図１９はその吸着機構６０の詳
細図である。吸着クローラベルト５２は壁面に吸着する
ために、走行面６３に形成した凹部である多数の真空室
６２を備え、真空室６２内の減圧は、透口６１より固定
支持台６４に設けた真空室６５との間でなされ、クロー
ラベルトが移動しても常に吸引を連続して行うことによ
り吸着が保たれる。なお、固定支持台６４の減圧は、真
空室６５内の透口６６を介して、図示省略したエジェク
タ等による吸引により生じる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このようなウォールク
リーナの従来技術は、次のような課題がある。 （１）吸着対象壁などに図１８に示すｙ−ｙ’に沿うク
ラックがあると、このクラックに沿う部分の吸着室は真
空が破壊され、吸着能力を失う。この場合、吸着能力を
失う吸着室は１個であるから問題はないが、若し図１８
に示すｘ−ｘ’に沿うクラックがあると、吸着クローラ
ベルトの全ての吸着室の吸着が破壊されてクローラベル
トが吸着能力を失ってしまう。

【０００６】（２）同様に吸着対象壁面に段差等がある
ときも同様に吸着能力を失うし、吸着クローラの当たる
部分の壁面に突起がある場合には、その前後の吸着室の
真空が破壊される恐れがあり、十分な吸着が得られなく
なる。 （３）多数の吸着室を連続的に一体型に形成したクロー
ラベルトでは、部分的な損傷に対しても、一体のクロー
ラベルト全体を取り替える必要があり、コスト高とな
り、取り替え手間がかかる。

【０００７】（４）吸着室を一体型に形成したクローラ
ベルトは、吸着面に対する吸着を十分に確保するために
吸着部を厚くし柔軟性をもたせることが好ましい。この
場合、走行伝達を行うスプロケットに巻きかけている部
分において、巻きかけ部のクローラベルトの内外周差が
大きくなるため、外面側に大きな引っ張りの負担が掛か
りこの部分が欠損する恐れがある。この引張り負担を回
避するために、巻きかけ部の直径を大きくすることも考
えられるが、吸着機構が大型化する問題があり限度があ
るので、満足な結果が得られない。

【０００８】本発明は、以上の課題を解決した長尺クラ
ックに対応したウォールクリーナ用吸着ユニットを提供
することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するものであって、その技術手段は次のとおりであ
る。すなわち、本発明は、壁面に吸着して壁面のメンテ
ナンスを遠隔で行うウォールクリーナに取りつけられ、
壁面吸着面内で別個の吸着室があらゆる方向に複数配置
されていることを特徴とするウォールクリーナ用吸着ユ
ニットである。

【００１０】この吸着ユニットにおいて、前記壁面吸着
面はクローラベルトからなり、前記吸着室はそれぞれク
ローラベルトの吸盤取付け用突起に着脱自在に係止する
個々の吸盤を備えたこととすると連続的に吸着しながら
自由に移動することができ遠隔操作も容易で好適であ
る。前記個々の吸盤は、クローラベルトのスプロケット
に当たるリンク毎にそれぞれ独立な取付部を備えると、
クローラベルトのスプロケットに当たる部分の内外周の
長さの違いによる変形を生じない。このようにそれぞれ
の吸盤が独立した取付けとすることによって、吸着部を
厚くし柔軟性をもたせることができるようになる。

【００１１】そして、前記吸着室の吸盤は吸着対象に応
じた厚さと弾力性を有する素材から構成することができ
る。さらに、吸着対象面の形状に応じて吸着機構を対象
面に倣わせる交換可能な支持機構を備えることによっ
て、吸着対象面の形状に合わせて平面や曲面用に交換し
て使用することにより、対象面への追従性をより良好に
することができ、適用対象面の条件に容易に適応するこ
とができる。また、前記ウォールクリーナが吸着機構と
別体のメンテナンス機構とを連結部材を介して連結し
た、いわゆる、セパレート型ウォールメンテナンスユニ
ットの吸着ユニットとしても使用することができ、汎用
性のある吸着機構である。

【００１２】本発明によれば、 （ａ）吸着クローラ部は、図１８のｙ−ｙ’方向に多重
の吸着室を有することにより、同図のｘ−ｘ’方向にク
ラックがあったとしても、吸着が破壊されることがなく
なる。 （ｂ）吸着室を図１８のｘ−ｘ’方向に分割した各吸盤
をクローラベルトに差し込んで装着することにより、装
着、交換を容易に行うことができる。また、走行駆動用
スプロケットの部分におけるクローラベルトの内外周差
があっても吸盤が分離独立しているので、吸盤は引張り
を受けず損傷することがなくなる。なお、吸盤を形成す
る素材、厚さなども対象面の仕様に合わせて任意に選定
することができ、より確実な吸着が可能となる。 （ｃ）吸着機構を対象面に倣わせる支持機構を吸着対象
面の形状に合わせ形成することによって追随性が向上す
る。 （ｄ）この吸着機構は吸着式のウォールクリーナの吸着
機構として汎用的に使用することが可能となる。 など従来の課題を効果的に解決することができる。

【００１３】

【発明の実施の形態】図１は、本発明の一実施例を示す
平面図、図２はその正面図、図３は側面図である。吸着
ユニット１は、多数の吸盤１３を備えた並列のクローラ
ベルト２をアーム８で連結したもので、吸盤１３は吸着
室があらゆる方向に複数個が存在するようになってい
る。この例では、クローラベルト２に並列２列に吸着室
が設けられている。したがって、図１８に示すｘ−ｘ’
方向に長いクラックなどの吸着を破壊する因子があって
も、確実にウォールクリーナとしての吸着機能を満足さ
せることが可能となった。また、クローラベルト２のス
プロケットに当たる部分が独立した吸盤１３となってい
ることにより、スプロケットに当たる位置でクローラベ
ルト２の外周部が引っ張られて損傷することもなくなっ
た。図４〜図６にクローラベルト２の吸着部の構造を示
した。各吸着室はそれぞれ各々独立しており、少なくと
も、クローラベルトの１リンク毎に別体となっている。

【００１４】本発明の実施例の詳細は、次の通りであ
る。図５、６の吸着機構を有する吸着ユニットは、図２
に示すとおり、ウォールクリーナとして組み立てられて
使用され、吸着機構取付板７を介して取付けられる。ま
た、吸着機構は、壁面（対象面４）の障害物を回避する
ため、吸着幅調整機構８にて幅を調整できる。走行モー
タ９の回転を減速ギャー１０とタイミングベルト１１を
介して駆動軸１２に伝達して、クローラベルト２により
吸着走行する機構が設けられている。本発明の最も特徴
とする部分は、図１、２の吸盤１３を多重構造とし、か
つ、独立した吸盤として容易に交換可能とした点にあ
る。

【００１５】吸盤１３の構造は、図４〜６に示すとおり
である。固定支持台１４の多重の真空室１５、１５ａを
各々の透口１６、１６ａにより減圧する。両端に歯１７
の付いたクローラベルト２の吸盤１３を取りつけるため
のプロフィール１８に透口１９、１９ａがある。この透
口１９、１９ａを通じて、吸盤１３にある多重の真空室
２０、２０ａ内の圧力を透口２１、２１ａにより減圧
し、対象面４に吸着する。ここで、吸盤１３は、対象面
４の凹凸に柔軟に追従できる素材、例えばスポンジなど
で構成され、従来のクローラベルトの代わりとなるもの
は、両端に歯１７が付いたクローラベルト２で、合わせ
てクローラベルト２とする。また、透口１９、１９ａと
透口２１、２１ａは各々導通するように組み合わされ、
真空室１５、１５ａと真空室２０、２０ａは、透口１
９、１９ａと透口２１、２１ａにより各々Ｘ−Ｙ方向に
独立した真空室が形成できるところに特徴がある。

【００１６】なお、図４に示す通り、吸盤１３の真空室
２０、２０ａと固定支持台１４の真空室１５、１５ａは
１対２程度の対応で組み合わされている。これは、真空
を発生させるエジェクターを真空室１５、１５ａに連動
させていることによって、使用するエジェクターの数を
少なくしても十分な吸着力を得るための工夫で、装置全
体の小型化、軽量化につながる。

【００１７】この吸着クローラベルトの組み込みは、図
７に示す歯１７付きベルト３のプロフィール１８に真空
室２０、２０ａを有する吸盤１３の嵌合スペーサ２２を
装入し、固定ネジ部２３で木ネジなどで固定し、図８に
示すとおり、一連のクローラベルト２を形成し、スプロ
ケット部分の曲がり部は、吸着盤が個々に独立して追随
するので、内外の周長差により外周が伸びるのを回避す
る。図９は、クローラベルト２の全体図である。

【００１８】クローラベルト２を旋回させる固定支持台
１４は、図１０に示す外観であり、図の両端のスプロケ
ット２４、２４ａに図９のクローラベルト２をかけて装
着する。なお、駆動モータからスプロケット２４、２４
ａの駆動軸１２、１２ａに動力を伝えて、クローラベル
ト２を旋回して吸着走行する。固定支持台１４は軸間プ
レート２５で図３に示すとおり、吸着機構取付板７に固
定され、スプロケット２４、２４ａも、軸間プレート２
５に取付けられている。従って、吸着機構として一体化
し、クローラベルト２のみを駆動させて、移動できるも
のである。なお、図１１に図１０の正面を、図１２に図
１０の断面を示した。吸着に寄与する部分は、図１２に
示す真空室１５、１５ａに当たる部分であり、固定支持
台１４の段差あるガイド２６、２６ａが両端に歯１７が
付いたクローラベルト２の歯１７の部分の倣いとなり、
固定支持台１４がクローラベルト２より出っ張っている
ことにより、横ずれを防ぐ役割をなしている。

【００１９】また、クローラベルト２に取り付けて吸着
に寄与する部分の構成は、図１３に示すとおりで、真空
室２０、２１ａを有する吸盤１３と嵌合スペーサ２２に
接続するプレートを接着して一体化して形成している。
したがって、図１４にある透口２１、２１ａに当たる部
分には透口２１ｃ、２１ｄ及び、固定ネジ部２３ｂを導
通する透口とを導通する部分を有している。

【００２０】本発明のクローラベルト２は図７〜図９に
示すとおり、簡易に組み立てが可能であり、図１０の固
定支持台１４に取り付けて一体化した吸着クローラユニ
ットを、図１に示す通り平行するクローラユニットとし
て使用される。なお、吸着盤は、図１３、１４に示すと
おりに分解でき、図１３部分は、消耗品として交換でき
るものである。吸着部分の断面は、図１５、図１６に示
すとおりに、（ａ）〜（ｄ）順に重ねられた組み合せで
ある。図１５は側面図、図１６はその正面図である。以
上の構造により、図１８のｘ−ｘ’のクラックなどに影
響されることなく確実な吸着力を確保し、仮に吸盤の一
部が損傷しても、その部分は図１３、１４と分解し、図
１３の部分の交換だけで済み、かつその交換作業も容易
にできるようになった。

【００２１】以上の吸着クローラベルト、固定支持台の
組み合わせ断面は、図１５、図１６に示すとおり、
（ａ）〜（ｄ）の順で、（ｄ）の下面が対象面に接する
こととなる。なお、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）の間は接続
しているが、（ａ）と（ｂ）の部分は接続していない。
本発明は、前記実施例では壁面などの洗浄・清掃の場合
について、及び原子炉ウエルのウォールクリーナの吸着
部について説明したが、本発明は、これに限るものでは
なく、固定時に支持台の形状を対象面の形状に合わせて
湾曲化したりすることによって、様々な対象物に対して
対応できる汎用性を持っている。

【００２２】

【発明の効果】本発明は、ウォールクリーナの吸着機構
を、図１８に示すｘ−ｘ’軸方向にあるクラック等の吸
着を破壊する可能性のある因子に対して影響を受けない
ものとする効果があり、上述のクラック等に対応する機
能が加わったことにより、より高い吸着性能を確保でき
るようになった。また、吸着盤を独立した上に、クロー
ラベルトに取りつけたプロフィルに挿入するだけで装着
できるようにしたことから、クローラの駆動用スプロケ
ット部分の内外周差による外周部分の伸びがなくなった
ため、吸着盤の損傷の回避と交換の容易さにも役立っ
た。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例の平面図である。

【図２】図１の正面図である。

【図３】図１の側面図である。

【図４】実施例の真空吸着クローラシステムの吸着機構
の詳細構造図である。

【図５】図４の一部切欠正面図である。

【図６】図４の一部切欠側面図である。

【図７】吸着クローラベルトの組み立て方法を示す図で
ある。

【図８】組立てられた吸着クローラベルトの曲り部での
状態を示す図である。

【図９】吸着クローラベルトの組み立てられた全体状態
を示す図である。

【図１０】固定支持台の斜視図である。

【図１１】固定支持台の正面図である。

【図１２】固定支持台の断面図である。

【図１３】吸盤の詳細図である。

【図１４】吸盤取付部の詳細図である。

【図１５】吸着クローラベルトの組み合わせ順を示す説
明図である。

【図１６】吸着クローラベルトの組み合わせ順を示す説
明図である。

【図１７】従来の壁面吸着自走装置の断面図である。

【図１８】図１７の平面である。

【図１９】従来の真空吸着クローラシステムの吸着機構
の構造図である。

【符号の説明】

１ ウォールクリーナ ２ クローラベルト ４ 壁面（対象面） ７ 吸着機構取付板 ８ 吸着幅調整機構（アーム） ９ 走行モータ １０ 減速ギャー １１ タイミングベルト １２ 駆動軸 １３ 吸盤 １４ 固定支持台 １５、１５ａ 真空室（固定支持台用） １６、１６ａ 透口（固定支持台用） １７ （クローラ駆動用）歯 １８ プロフィール １９、１９ａ 透口（プロフィール部） ２０、２０ａ 真空室（吸着盤用） ２１、２１ａ 透口（吸着盤用） ２２ 嵌合スペーサ ２３、２３ｂ 固定ネジ ２４、２４ａ スプロケット（駆動軸側） ２５ 軸間プレート ２６ ガイド

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 壁面に吸着して壁面のメンテナンスを遠
   隔で行うウォールクリーナに取りつけられ、壁面吸着面
   内で別個の吸着室があらゆる方向に複数配置されている
   ことを特徴とするウォールクリーナ用吸着ユニット。
2. 【請求項２】 前記壁面吸着面はクローラベルトからな
   り、前記吸着室はそれぞれクローラベルトの吸盤取付け
   用突起に着脱自在に係止する個々の吸盤を備えたことを
   特徴とする請求項１記載のウォールクリーナ用吸着ユニ
   ット。
3. 【請求項３】 前記個々の吸盤は、クローラベルトのス
   プロケットに当たるリンク毎にそれぞれ独立な取付部を
   備えたことを特徴とする請求項２記載のウォールクリー
   ナ用吸着ユニット。
4. 【請求項４】 前記吸着室は吸着対象に応じた厚さと弾
   力性を有する素材からなることを特徴とする請求項１記
   載のウォールクリーナ用吸着ユニット。
5. 【請求項５】 さらに、吸着対象面の形状に応じて吸着
   機構を対象面に倣わせる交換可能な支持機構を備えたこ
   とを特徴とする請求項１記載のウォールクリーナ用吸着
   ユニット。
6. 【請求項６】 前記ウォールクリーナが吸着機構と別体
   のメンテナンス機構とを連結部材を介して連結した装置
   であることを特徴とする請求項１記載のウォールクリー
   ナ用吸着ユニット。