JPH1084985A - リン酸結合オリゴ糖の製造方法 - Google Patents

リン酸結合オリゴ糖の製造方法

Info

Publication number
JPH1084985A
JPH1084985A JP24082796A JP24082796A JPH1084985A JP H1084985 A JPH1084985 A JP H1084985A JP 24082796 A JP24082796 A JP 24082796A JP 24082796 A JP24082796 A JP 24082796A JP H1084985 A JPH1084985 A JP H1084985A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
phosphate
exchange resin
pos
solution
anion exchange
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP24082796A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3861337B2 (ja
Inventor
Reiichiro Sakamoto
禮一郎 阪本
Toshiyuki Kimura
敏幸 木村
Noriko Kuwatani
紀子 桑谷
Yoichi Kawashima
陽一 川島
Naoto Arai
直人 新井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oji Corn Starch Co Ltd
Original Assignee
Oji Corn Starch Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oji Corn Starch Co Ltd filed Critical Oji Corn Starch Co Ltd
Priority to JP24082796A priority Critical patent/JP3861337B2/ja
Publication of JPH1084985A publication Critical patent/JPH1084985A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3861337B2 publication Critical patent/JP3861337B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 リン酸結合澱粉を酵素により分解してリ
ン酸結合オリゴ糖を製造する方法において、前記澱粉を
20〜40重量%含有するスラリーに耐熱性の液化型α−ア
ミラーゼを添加し、加圧下で 101℃以上に加熱すること
を含んでなる前記澱粉の液化工程を含むことを特徴とす
る、リン酸結合オリゴ糖の製造方法。 【効果】 POSを大量に、効率よくしかも経済的に製
造することができる。したがって、本発明のPOS製造
法によれば、POSの工業的生産が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン酸カルシウム
の沈澱形成を阻害する作用(以下Ca可溶化作用と称す
る)を有するリン酸結合オリゴ糖(Phosphorylated Oli
gosaccharides 、以下POSという)の工業的な製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】日本人のカルシウム所要量は成人一日当
たり 600mgとされている。しかし、平成6年の国民栄養
調査によれば、カルシウム摂取量は一人一日当たり平均
545mgで、所要量の91%であり、日本人の食生活で唯一
摂取量が不足している栄養素である。カルシウムの摂取
不足は骨組織内の骨量減少につながり、ひいては骨の萎
縮や変形が起り、腰痛などの痛みを伴うこととなる。さ
らに摂取不足が長期にわたると、骨は軽く脆くなり、骨
粗鬆症の原因ともなる。特に、70才代の女性の半数、80
才代の女性の 2/3が骨粗鬆症に罹患しており、我が国全
体で 450万人もの罹患者がいるといわれている。
【0003】一方、食品に含まれるカルシウムの生体内
での吸収率は低いということが知られている。これは、
カルシウムが吸収される小腸は弱アルカリ性であること
から、カルシウム塩が不溶化したり、沈澱となり、カル
シウムの吸収性が低下するためである。例えば、成人男
子では、牛乳、炭酸カルシウム、小魚、野菜のカルシウ
ム吸収率は、それぞれ53%、42%、34%、18%と言われ
ている。ところで、牛乳や乳製品のカルシウム吸収率が
比較的高い要因として、乳蛋白質のカゼインが消化過程
で分解されて生成するカゼインホスホペプチド(CP
P)のカルシウム吸収促進作用が知られている。CPP
のカルシウム吸収促進作用は溶解性に乏しいCa塩、特
にリン酸カルシウムを可溶性の状態に維持することによ
るとされている(特公平3-58718 号公報、内藤博,化学
と生物,18, 551-558, 1980 等参照)。
【0004】釜阪らは、馬鈴薯澱粉に含まれるリン酸澱
粉に注目し、酵素分解によってPOSを分取し、得られ
たPOSがリン酸カルシウムの沈澱形成を阻害する作用
を有することを見出した(Biosci. Biotech. Biochem.,
59(8), 1412-1416, 1995、特開平8-104696号公報等参
照)。釜阪らの製造したPOSは、2つのグループから
成っている。即ち、グルコースが3〜5個結合したオリ
ゴ糖に1分子のリン酸基が結合しているもの(PO−
1)、及びグルコース4〜8個のオリゴ糖に2分子のリ
ン酸基が結合したもの(PO−2)から成ることが明ら
かにされている。
【0005】釜阪らは、POSのリン酸カルシウムの沈
澱形成を阻害する作用を、リン酸緩衝液(pH7.4 )にP
OSを溶解し、これに塩化カルシウムを加えて1時間振
盪した後、遠心分離して上清のCaイオンを測定するこ
とにより確認している。加えたカルシウムに対する上清
のCaイオンの割合を求めてカルシウム沈澱形成阻害率
が算出されており、PO−1は38%、PO−2は 100%
とされている。また、CPPIII(明治製菓製)の沈澱
形成阻害率も 100%であることから、PO−2とCPP
IIIは同等のCa可溶化活性を示したとしている。釜阪
らはPOSを次のような方法で製造している。まず、馬
鈴薯澱粉をα−アミラーゼで液化した後、グルコアミラ
ーゼ、プルラナーゼ及びα−アミラーゼで分解して澱粉
反応の消失した時点で反応を停止し、次いで得られた糖
液をアミノ基を持つキトパールBCW−2501に通液
し、酢酸緩衝液で洗浄して中性糖を溶出した後、食塩を
含む酢酸緩衝液でPOSを溶出して、エタノールで沈澱
精製を繰り返し、POSを分離することによりPOSを
製造している。
【0006】また、馬鈴薯澱粉に結合リンが含まれてい
ることは古くから知られている。檜作らは結合リンの構
造を知るため、リン酸結合オリゴ糖を次のようにして製
造している:馬鈴薯澱粉をα−アミラーゼで分解して得
たリミットデキストリンをOH型アニオン交換樹脂に吸
着させて水洗後、食塩を含む塩酸溶液で溶出し、溶出液
を中和後、メタノール沈澱を繰り返してホスホデキスト
リン(Phosphodextrin)を調製する;得られたホスホデ
キストリンをグルコアミラーゼでさらに分解してから、
DEAE-Sephadex A-25 のカラムに吸着させる;次いでカ
ラムを水で洗浄してぶどう糖を除去した後、食塩溶液で
溶出する。得られたリン酸の結合したオリゴ糖をリン酸
オリゴ糖(Phosphooligosaccharide)と称している(Di
e Starke,22,338-343, 1970)。上記のように、POS
が馬鈴薯澱粉をα−アミラーゼ、グルコアミラーゼなど
の澱粉分解酵素で分解することにより得られることは公
知の事実である。しかしながら、上記のような従来のP
OSの生産は実験室レベルの調製法であり、大量に効率
よくPOSを製造することのできる工業的製法は全く確
立されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】カルシウムの吸収促進
効果を持つPOSの工業的な製造方法が確立されれば、
カルシウム不足に悩む多くの骨粗鬆症の患者に役立つだ
けでなく、広く国民の健康維持に貢献するものと期待さ
れる。したがって、本発明の目的は、POSを大量に効
率よく製造することができる方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこのような
観点から鋭意研究を重ねた結果、POSの安価で大量生
産可能な製造方法を開発することに成功した。本発明
は、リン酸結合澱粉を酵素により分解してPOSを製造
する方法において、前記澱粉を20〜40重量%含有するス
ラリーに耐熱性の液化型α−アミラーゼを添加し、加圧
下で 101℃以上に加熱することを含んでなる前記澱粉の
液化工程を含むことを特徴とする、POSの製造方法で
ある。また、本発明は、液化工程で得られた液化液に、
さらに澱粉分解酵素を加えて作用させる工程を含む、上
記POSの製造方法である。
【0009】さらに、本発明は、上記のようにリン酸結
合澱粉を各種酵素処理して得たPOS溶液を、(1) 強酸
性カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂の順に通液さ
せ、次いで前記アニオン交換樹脂に吸着したPOSを水
酸化ナトリウム溶液、食塩溶液、又は食塩を含む水酸化
ナトリウム溶液で溶出して、pHが8以下の溶出液画分を
回収する吸着分離工程;又は(2) 強酸性カチオン交換樹
脂、弱塩基性アニオン交換樹脂、強酸性カチオン交換樹
脂、強塩基性アニオン交換樹脂の順に通液させ、次いで
両アニオン交換樹脂に吸着したPOSを水酸化ナトリウ
ム溶液、食塩溶液、又は食塩を含む水酸化ナトリウム溶
液で溶出して、pHが8以下の溶出液画分を回収する吸着
分離工程をさらに含む、上記POSの製造方法である。
【0010】さらに、本発明は、POSを含む溶出液画
分を食塩阻止率30〜60%の膜を用いて膜処理することに
より脱塩濃縮する工程をさらに含む、上記POSの製造
方法である。さらに、本発明は、上記方法により得られ
たPOSの脱塩濃縮液に消石灰を加えて中和することを
特徴とする、POSのカルシウム塩の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
原料となる澱粉はリン酸が結合した澱粉であり、リン酸
が結合した天然の澱粉はいずれのものも原料として使用
することができる。例えば、馬鈴薯などの根茎類の澱粉
が挙げられる。また、リン酸基を化学的に結合させたリ
ン酸エステル澱粉やリン酸架橋澱粉も原料として用いる
ことができる。その場合、どのような起源の澱粉でも利
用できる。
【0012】リン酸結合澱粉の液化工程は、該澱粉を水
と混合して澱粉濃度20〜40重量%のスラリーを調製し、
これに耐熱性の液化型α−アミラーゼを添加し、加圧下
で 101℃以上の温度に加熱する工程を含んでなる。リン
酸結合澱粉を耐熱性の液化型α−アミラーゼを用いて 1
01℃以上の温度で加熱して液化するには、該α−アミラ
ーゼは50ppm 以上のカルシウムイオンを必要とする。そ
のため、スラリーに、該スラリーのpHが通常6〜6.3 に
なる量の水酸化カルシウムを添加する。また、必要量の
カルシウムを添加する他に、水酸化ナトリウム等を添加
することによりpHを調節することができる。
【0013】リン酸結合澱粉の液化工程で用いられる酵
素は、耐熱性の液化型α−アミラーゼであれば、いずれ
の起源のものでも使用でき、通常、80〜110 ℃で作用す
るものを使用する。細菌起源の高耐熱性α−アミラーゼ
としては、Bacillus属等に属する微生物由来のものが挙
げられ、具体的にはターマミル120L(ノボノルディ
スク バイオインダストリー社製、Bacillus lichenifo
rmis由来)等の市販品を用いることができる。この耐熱
性の液化型α−アミラーゼの添加量は、原料澱粉 100重
量部に対して、通常0.01〜1.0 重量部である。
【0014】液化工程において原料のリン酸結合澱粉を
含有するスラリーを加圧下、101 ℃以上、好ましくは 1
03〜110 ℃の温度でクッキングすることが重要である。
このような条件でクッキングすることにより、20〜40重
量%という高濃度の澱粉スラリーを短時間で均一に液化
することができるので、生産性が向上する。また、加圧
下、 101℃以上の温度でクッキングすることにより、澱
粉の分散性が良くなり、膨潤が進めば酵素の作用が高め
られて加水分解が促進される。更に、 101℃以上の温度
でクッキングすると、コーンスターチ等のようにタンパ
ク質が少量含まれる澱粉の場合、そのタンパク質が変性
して凝集するため、液化工程又は液化工程及びその後の
酵素分解工程終了後の糖液の濾過が容易となり、POS
の純度を高めることができる。
【0015】液化工程は、通常、ジェットクッカー等の
クッキング装置を用いて、スラリーに加圧蒸気を加えて
101〜110 ℃とし、クッカーの出口圧をゲージ圧で 0.5
〜1.5kg /cm2 に維持して、高温滞留塔内に導いて2〜
15分間保持する。続いて、2〜5槽から成る熟成槽に連
続的に導いて通常90〜100 ℃の温度で、30〜240 分間熟
成して液化反応を終了させることができる。上記液化工
程により得られた液化液はPOSを含んでおり、そのま
ま製品として利用することができる。しかしながら、液
化酵素による分解だけではリン酸基の結合していないグ
ルコース鎖が多く残る。また、液化酵素のみによる作用
で生産されたPOSはグルコース鎖長が長く、分子量が
大きいこともあり、粘度が高くなる。よって、上記液化
工程後、液化液に澱粉分解酵素を添加して作用させ、グ
ルコース鎖を減少させるほうが好ましい場合がある。
【0016】澱粉分解酵素としては、澱粉をランダムに
分解する液化型α−アミラーゼ;糖化型α−アミラー
ゼ;シクロデキストリンを作るCGTase(Cyclomal
todextrin glucanotransferase);グルコアミラーゼ、
β−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ等の澱粉からグル
コースを放出する酵素;プルラナーゼ、イソアミラーゼ
等の澱粉のα−1,6結合を切断する枝切り酵素など、
澱粉のα−1,4結合及びα−1,6結合を切断できる
酵素は全て使用することができる。これらの中でも、α
−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α
−グルコシダーゼ、プルラナーゼ及びイソアミラーゼが
好ましい。これらの酵素は、1種単独で、又は2種以上
を組み合わせて用いることができる。また、グルコース
鎖の少ない低分子POSを製造するには、枝切り酵素と
グルコアミラーゼとを組み合わせて用いるのが好まし
い。酵素としては、具体的には、デキストロザイム(グ
ルコアミラーゼとプルラナーゼの混合酵素剤、ノボノル
ディスク バイオインダストリー社製)等の市販品を使
用することができる。
【0017】澱粉分解酵素を作用させる際の条件は、酵
素の種類により大きく異なるが、通常用いられている条
件で行うことができる。デキストロザイムを用いる場合
を一例として説明すると、通常、液化液にシュウ酸や塩
酸などの酸を加えてpHを4〜5に調節してから酵素を加
え、50〜60℃の温度で5〜50時間程度保持することによ
り反応を行う。また、酵素の添加量は、酵素の種類によ
り異なるが、デキストロザイムの場合、原料澱粉 100重
量部に対して通常0.01〜1.0 重量部である。
【0018】澱粉分解酵素を作用させる工程により、通
常、グルコースが3〜8個結合し、リン酸基が1〜2個
結合したPOSを含む糖液が得られる。この糖液は、そ
のままで製品となる。原料のリン酸結合澱粉が食品であ
れば、得られるPOSも食品である。食品添加物として
認められるリン酸結合澱粉からPOSを得れば、そのP
OSは食品添加物となる。
【0019】また、上記糖液には、タンパク質等の不溶
性物質が含まれるため、通常、濾過等により清澄液とす
る。さらに、清澄液に含まれる着色物質を除くため、通
常、活性炭による脱色処理を行う。活性炭による糖液の
脱色処理には特に制限はなく、いかなる活性炭を使用し
てもよく、どのような処理条件で行ってもよい。一般的
には、糖液を粒状炭を充填した脱色塔に通過させる方法
と、粉末炭を糖液に加えて一定時間滞留させた後、濾過
して活性炭を除く方法がある。糖液を脱色塔により処理
する場合、通常、SV(空間速度)= 0.1〜1.0 の流速
で通過させることができる。
【0020】液化工程で得られた液化液、又は液化後さ
らに澱粉分解酵素を作用させて得られた糖液にはPOS
の他にリン酸基を持たないグルコースやオリゴ糖が含ま
れている。以下、このような混合糖液をPOS溶液とい
う。純度の高いPOSを得るには、POS以外の糖やイ
オン性物質を除く必要がある。POSはリン酸基が結合
している構造からアニオンとしての性質を持ち、アニオ
ン交換樹脂に吸着されるのに対して、グルコースやオリ
ゴ糖はアニオン交換樹脂に吸着されない。したがって、
POSとPOS以外の糖とを効果的に分離するにはアニ
オン交換樹脂による方法が有効である。
【0021】しかしながら、POS溶液には塩類が含ま
れているため、POS溶液を直接アニオン交換樹脂に通
液すると、糖液がアルカリ性となり、POSの分解や糖
の異性化が起こるので、イオン交換樹脂による吸着分離
の工程ではPOS溶液を常に中性から酸性の状態に維持
することが重要な技術となる。ぶどう糖や水飴などの澱
粉糖製造においては、糖液の脱塩工程は糖の異性化を防
ぐため、糖液が常に中性から酸性状態に維持されるよう
に配慮してイオン交換樹脂の組み合わせが決められてい
る。即ち、強酸性カチオン交換樹脂、弱塩基性アニオン
交換樹脂、強酸性カチオン交換樹脂、強塩基性アニオン
交換樹脂の2ベッドを2つ組み合わせる方式と、強酸性
カチオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂の2ベッ
ドに、強酸性カチオン交換樹脂、強塩基性アニオン交換
樹脂の混合樹脂塔の組み合わせ方式が採用されている。
【0022】2つの方式ともに、最初に強酸性カチオン
交換樹脂に糖液が通液されてカチオンが除去され、糖液
のpHは 1.5〜2.5 の酸性液となる。次に、アニオン交換
樹脂に通液されても、弱塩基性アニオン交換樹脂であれ
ば、糖液のpHは中性付近に維持される。次いで、さらに
強酸性カチオン交換樹脂に通液されて糖液のpHは酸性と
なり、次に強塩基性アニオン交換樹脂に通液しても糖液
は中性付近に維持される。混合樹脂塔の場合も同様に糖
液は中性付近に維持されている。
【0023】なお、POSはアニオン交換樹脂であれ
ば、弱塩基性でも、強塩基性でも吸着されるが、大量生
産する場合には、品質及び経済性の面から2ベッド2塔
の直列4塔方式が好ましい。混合樹脂塔からPOSを回
収することは操作が複雑であるため困難である。1段目
の弱塩基性アニオン交換樹脂に大部分のPOSが吸着さ
れるものの、2段目の強塩基性アニオン交換樹脂にも少
量のPOSが吸着していることが観察されていることか
ら、2ベッド2塔の直列4塔方式が好ましい。
【0024】本発明においては、POS溶液からのPO
Sの吸着分離工程は、(1) 強酸性カチオン交換樹脂、ア
ニオン交換樹脂の順に通液させ、次いで前記アニオン交
換樹脂に吸着したPOSを水酸化ナトリウム溶液、食塩
溶液、又は食塩を含む水酸化ナトリウム溶液で溶出し
て、pHが8以下の溶出液画分を回収する、又は(2) 強酸
性カチオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂、強酸
性カチオン交換樹脂、強塩基性アニオン交換樹脂の順に
通液させ、次いで両アニオン交換樹脂に吸着したPOS
を水酸化ナトリウム溶液、食塩溶液、又は食塩を含む水
酸化ナトリウム溶液で溶出して、pHが8以下の溶出液画
分を回収することにより行う。
【0025】強酸性カチオン交換樹脂としては、例え
ば、DIAION SK シリーズ、IR-120B 、IR-200C 、レバチ
ットS-100WS 、レバチットSP-112WS等を使用することが
できる。弱塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、
DIAION WA シリーズ、IRA-93、レバチットMP-64WS 等を
使用することができる。また、強塩基性アニオン交換樹
脂としては、例えば、DIAION SA シリーズ、IRA-411 、
レバチットMP-600WS等を使用することができる。上記吸
着分離工程(1) において用いるアニオン交換樹脂として
は、強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換
樹脂のいずれも使用することができる。
【0026】POSの溶出には、実験室法として、塩酸
や酢酸などの酸、食塩などの塩類、又は酸と塩の混合液
が使用されており、アルカリ性溶液を使用する溶出法は
行われていない。そこで、酸性溶液によるアニオン交換
樹脂からのPOSの溶出を試みたが、POSと無機リン
酸との分離が困難であった。即ち、POSと無機リン酸
を効果的に分離するには、酸や食塩などの塩の濃度を徐
々に変化させて注意深く溶出する必要がある。その場合
でも、一部のPOSと無機リン酸は混合状態で同時に溶
出する。回収率を高くするには繰り返してアニオン交換
樹脂に吸着させて溶出する操作が必要となる。いずれに
しても、酸や塩類でPOSを溶出すると、溶出液に含ま
れるPOSの濃度は数%にまで希釈されることになる。
しかも、POSの純度を高めるには溶出に用いた酸や塩
類を除去することが必要となる。
【0027】一方、本発明者らはアニオン交換樹脂の再
生に用いる水酸化ナトリウム溶液でPOSの溶出を試み
たところ、溶出の初期にpHが7以下の酸性液が溶出する
が、pH8を超えると着色物質が大量に溶出すること、そ
して着色物質の溶出が始まるpH8以下の溶出液中にPO
Sの大部分が存在することを見出した。しかも、溶出液
に含まれるPOSの濃度は酸性溶液で溶出する場合に比
べて、高濃度であった。実際に、上記吸着分離工程で溶
出したpH8以下の溶出液画分の最大POS濃度は10重量
%を超える場合もあった。
【0028】例えば、上記吸着分離工程(2) の直列4塔
方式2塔目の弱塩基性アニオン交換樹脂を4%水酸化ナ
トリウム溶液で溶出すると、溶出の初期は溶出液のpHが
低く、大部分のPOSは溶出液のpHが7に達するまでに
溶出した。一方、4塔目の強塩基性アニオン交換樹脂を
同じ4%水酸化ナトリウム溶液で溶出すると、溶出液は
直ちにpHが上昇し、POSを含む溶出液のpHは11〜14の
アルカリ性となった。したがって、強塩基性アニオン交
換樹脂からの溶出液がアルカリ性となる時には強塩基性
アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂の順に水
酸化ナトリウム溶液を通液することにより、POSを含
んだ酸性の溶出液を得ることができる。
【0029】上記吸着分離工程(1) 又は(2) において、
原料のリン酸結合澱粉の性状により水酸化ナトリウム溶
液のみによる溶出ではpH8以下の溶出液が得られない場
合がある。その場合、食塩溶液又は食塩を含有する水酸
化ナトリウム溶液を通液させるのが好ましい。これによ
り、溶出液のpHを8以下に維持することができる。特
に、上記吸着分離工程(1) においてアニオン交換樹脂と
して強塩基性アニオン交換樹脂を用いる場合、POS溶
液が局部的にアルカリ性となってオリゴ糖の一部が異性
化を起こす場合があり、好ましい方法とはいえない。ま
た、水酸化ナトリウム溶液でPOSを直接溶出すると、
溶出液のpHがアルカリ性となってもPOSの溶出が続い
たり、着色物質がPOSと同時に溶出したりする場合が
ある。そのため、強塩基性アニオン交換樹脂を用いる場
合には、食塩溶液又は食塩を含む水酸化ナトリウム溶液
を通液させて溶出するのが好ましい場合がある。また、
食塩の濃度及び通液量は少ないほうがその後の精製工程
の負担を軽減することになる。したがって、食塩の濃度
は、通常2〜8重量%であり、通液量は、最大で、アニ
オン交換樹脂の容量と同じ量であるのが好ましい。
【0030】本発明においては、pHが8以下の溶出液画
分を回収することがきわめて重要である。POSがアル
カリ性で分解されることや、糖が異性化を起こすことに
鑑みれば、POSの吸着分離工程はpH8以下の中性付近
から酸性領域で実施する必要がある。さらに、pHは8よ
り高い溶出液画分には、着色成分や無機リン酸を含む酸
性物質が大量に含まれているという問題もある。pHが8
より高い溶出液画分にもPOSが少量含まれるものの、
純度が低く、アルカリ分解を受けるなどの問題があるた
めこれを回収利用することは得策ではない。さらに、着
色成分や無機リン酸の含有量をより少なくするために、
pH7以下の酸性溶出液画分を回収するのが好ましい。
【0031】POSのイオン交換樹脂による吸着分離の
一例として、2ベッド2塔の直列4塔方式によるPOS
吸着分離法(2) (溶出液として水酸化ナトリウム溶液を
使用する場合)の操作条件を説明する。イオン交換樹脂
の再生は糖液の品質及び経済性の面から樹脂再生率80〜
100 %の最適な条件が選ばれており、再生方法には特に
制限はない。強酸性カチオン交換樹脂の再生は、例え
ば、樹脂1L当たり 0.5〜1.5 Lの液量の6%塩酸をS
V=1〜3の流速で通液することにより行う。また、弱
塩基性及び強塩基性アニオン交換樹脂も80〜100 %の再
生率で再生されており、再生条件には特に制限はなく、
例えば、樹脂1L当たり1〜3Lの液量の4%水酸化ナ
トリウム溶液をSV=1〜4の流速で通液することによ
り行う。
【0032】POS溶液は、カチオン交換樹脂塔に導か
れて、通常、SV=2〜4の流速で通液される。強酸性
カチオン交換樹脂を通過したPOS溶液のpHは、通常、
1.5〜2.5 の酸性液である。次いで、弱塩基性アニオン
交換樹脂塔に導かれて、通常、SV=2〜4の流速で通
液される。続いて、POS溶液は2回目の強酸性カチオ
ン交換樹脂塔、強塩基性アニオン交換樹脂塔に通液され
て、通常、電導度10μS/cm以下にまで脱塩される。PO
S溶液の通液量は、通常、糖液の電導度やpHの上昇で管
理され、電導度の上昇により通液は停止される。イオン
交換樹脂は純水で洗浄して糖液を押出した後、カチオン
交換樹脂とアニオン交換樹脂は前述の処理条件で再生さ
れる。
【0033】目的のPOSは両アニオン交換樹脂に吸着
されており、水酸化ナトリウム溶液で溶出される。ここ
でPOS溶出の条件は特に制限されないが、糖液の純度
などの品質及び経済性の観点から、POSの溶出条件が
決められる。例えば、糖液の通液終了後、純水による洗
浄操作を経てから、4%水酸化ナトリウム溶液でPOS
の溶出操作を開始する。
【0034】水酸化ナトリウム溶液は強塩基性アニオン
交換樹脂に通液され、続いて弱塩基性アニオン交換樹脂
に通液される。この時、強塩基性アニオン交換樹脂の溶
出液はアルカリ性であるが、この溶出液を続いて弱塩基
性アニオン交換樹脂に通液すると、溶出液は始めpH3前
後の酸性溶液として溶出する。すなわち、水酸化ナトリ
ウム溶液による溶出を強塩基性アニオン交換樹脂に続い
て弱塩基性アニオン交換樹脂と連続処理することによ
り、大部分のPOSを酸性溶液で回収することができ
る。
【0035】アニオン交換樹脂から水酸化ナトリウム溶
液で溶出したPOSを含む液には、無機リン酸塩などの
塩類が含まれてはいるものの、POSの純度は高い。し
たがって、POS溶液をイオン交換樹脂で吸着分離して
得た着色度の低い、pH5〜8の溶出液はそのまま製品と
して利用できる。上記吸着分離工程で得られた製品のP
OSの純度をさらに高めるには無機リン酸の除去が必要
となる。イオン交換樹脂法などにより無機リン酸の除去
を種々試みたが、前述のように、無機リン酸とPOSを
効果的に分離するには、酸性あるいはアルカリ性溶液や
塩類溶液を多量に要するためPOSの溶出液が希釈され
たり、塩類を含むことになるので望ましくない。
【0036】最近の膜処理技術の向上に伴い、糖液の分
離、濃縮に膜処理が利用されるようになり、オリゴ糖の
分離、濃縮には一般にナノフィルトレーション膜が使用
されている。そこで、上記吸着分離工程で得られた、ア
ニオン交換樹脂から溶出したPOS溶液を各種膜で処理
して無機リン酸の分離効果を調べたところ、オリゴ糖の
分離に使用されているナノフィルトレーション膜(低食
塩阻止逆浸透膜)が有効であることがわかった。使用さ
れる膜は特には制限はないが、POSの通過が少なく、
且つ無機リン酸の通過が多いものが選択され、食塩阻止
率が30〜60%のものが使用される。例えば、日東電工製
のNTR−7450(食塩阻止率50%)、NTR−74
30(食塩阻止率30%)、東レ製のSU−610(食塩
阻止率55%)などの膜が使用される。
【0037】POSは上記膜処理により濃縮側に残り、
無機リン酸等の無機塩類は透過液と共に除去される。し
たがって、膜処理により精製脱塩効果が得られるだけで
なく、POS溶液の固形分濃度が数%から20〜30%まで
濃縮される利点がある。POS溶出液中の無機リン酸の
膜分離にはpHの低い方が効果的である。pH6程度のPO
S溶出液を膜処理すると、無機リン酸の透過性が低下
し、脱塩効果が低くなる場合がある。一方、POS溶出
液のpHを4以下にすると、無機リン酸の透過率が高くな
り、脱塩効果が高められるのでpH4以下が好ましい。こ
のように、膜処理の際のPOS溶出液のpHは低いほど無
機リン酸の除去に有効であるが、pHが低いと膜の寿命が
短くなることや、装置の腐食、酸を多く必要とするなど
別な問題を生じることとなる。したがって、POS溶出
液のpHは 1.5〜3がより好ましい。pH調節に用いる酸と
しては、例えば、塩酸等の鉱酸が挙げられる。
【0038】膜処理により脱塩精製されたPOSの濃縮
液はそのまま減圧濃縮して液状製品とすることができ
る。さらに、着色成分を除くために活性炭を用いて常法
どおりの脱色処理をすることができる。脱色に用いる活
性炭は粉末状又は粒状のものを用いることができる。ま
た、処理条件は特に制限されないが、POSの脱色条件
を種々検討した結果、同じ活性炭粉末の添加量でも、P
OSの濃縮液のpHが7より低い酸性条件で高い脱色率の
得られることがわかった。粉末活性炭による脱色効果を
調べると、pH4以下で着色度の減少が大きく、pH2で最
も高い脱色率を示した。膜処理もpHの低い方が無機リン
酸の除去に有効であり、脱色処理もpHの低い方が着色度
の減少に有効であるので、2つの処理工程でpHの変更な
しで連続処理が可能となる。即ち、上記膜処理により得
られたPOSの濃縮液はpH4以下の酸性溶液であること
から、そのまま活性炭処理に用いることができる。一例
として粉末炭を使用する場合を示すと、pH7以下、好ま
しくはpH2〜4のPOS溶液を50〜60℃に維持し、活性
炭粉末を1〜30%(対固形分)添加し、15分〜4時間処
理した後、濾過により活性炭を除いて清澄液を得ること
ができる。
【0039】尚、上記脱色処理の温度は80℃前後の高い
温度で行われている例も多い。しかし、POS溶液の場
合、80℃前後の処理温度では脱色と同時に着色反応が起
り、高い温度で処理しても脱色効果が実質的に得られな
いので、処理温度は60℃以下が好ましい。POSはリン
酸化合物であり、塩の形態でないフリーのPOSは強い
酸性を呈するため、そのまま食品として使用することは
不適切である。そこで、上記膜処理や脱色処理により得
られたPOS溶液は必要に応じてアルカリで中和して製
品化される。例えば、NaOHや、消石灰(Ca(OH)2 )を加
えて塩の形態にするのが通常である。また、Ca(OH)2
使用すれば、POSのカルシウム塩が得られる。POS
の重要な機能がカルシウム可溶化作用であり、カルシウ
ム強化食品に添加して使用されることから、POSの塩
としてもナトリウム塩とするよりカルシウム塩にすれ
ば、カルシウムの添加量を増すことができ、食品への利
用範囲が広がるものと期待される。
【0040】脱色処理したPOS溶液にCa(OH)2 を加え
てpH5〜7の中和液を調製すると、少量の沈澱が生じる
ため、POSを液状として製品化するには清澄濾過が必
要となる場合がある。また、Ca(OH)2 によるPOSの中
和処理を検討したところ、上記の脱色処理において活性
炭と15分〜4時間反応した後、濾過前にCa(OH)2 を加え
てから清澄濾過してもPOS溶液の脱色率が濾過してか
ら中和処理する場合と同等であることをも見出した。一
方、POSのカルシウム塩はアニオン交換樹脂からのP
OS溶出液に塩化カルシウムを加えてから、pHを 1.5〜
4に調節して膜処理することによっても製造することが
できる。
【0041】中和処理したPOS溶液は必要に応じて除
菌濾過され、常法どおり減圧下で濃縮され得る。POS
溶液を75重量%程度の濃度まで濃縮すると、粘度は同じ
濃度の水飴よりやや高い程度である。濃度75重量%のP
OS溶液は流動性が水飴と同程度であって、カルシウム
塩であっても透明性の高い液状製品が得られる。POS
は液状品だけでなく、粉末製品としても得られる。例え
ば、常法どおりスプレードライヤーで粉末化するには、
POS溶液を20〜70重量%の濃度まで濃縮して、必要に
応じて加温しながら、噴霧乾燥すると、水分5%以下、
粒径10〜50μmのPOS粉末が得られる。
【0042】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定され
るものではない。 〔実施例1〕馬鈴薯澱粉を水と混合して澱粉濃度30重量
%のスラリーを調製した。このスラリーに、Ca(OH)2
溶液を添加してpH6.3 に調整した。次いで、これに高耐
熱性液化型α−アミラーゼ(商品名ターマミル120
L、ノボノルディスク バイオインダストリー社製)を
対澱粉0.05重量%添加して、クッカーに導入した。クッ
キングの温度を 105℃、圧力を1kg/cm2 (ゲージ圧)
に保持してから高温滞留槽に導き、加圧下、 105℃で5
分間保持した後、熟成槽に移して95℃にて2時間保持す
ることにより液化を行った。得られた液化液を減圧下で
60℃に冷却した後、シュウ酸を添加してpH4.5 に調節し
た。続いて、澱粉分解酵素としてグルコアミラーゼとプ
ルラナーゼの混合製剤(商品名デキストロザイム、ノボ
ノルディスク バイオインダストリー社製)を対澱粉
0.1重量%添加して40時間保持して、追加酵素分解処理
した。
【0043】得られたPOS溶液をドラムフィルターで
真空濾過し、清澄液を粒状活性炭を充填した脱色塔に通
液して脱色した。得られた脱色POS溶液を、強酸性カ
チオン交換樹脂(レバチットS-100WS )、弱塩基性アニ
オン交換樹脂(レバチットMP-64WS )、強酸性カチオン
交換樹脂(レバチットSP-112WS)、強塩基性アニオン交
換樹脂(レバチットMP-600WS)に順次通液した。通液終
了後、樹脂に純水を通液して糖液を押し出した。次い
で、強塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換
樹脂の順に水酸化ナトリウム溶液を通液してPOSを溶
出した。溶出は、50℃に加温した4重量%濃度の水酸化
ナトリウム溶液を、強塩基性アニオン交換樹脂にはSV
=3の通液速度で、弱塩基性アニオン交換樹脂にはSV
=2の通液速度で通液することにより行った。
【0044】図1は、各溶出液画分の性状を示すグラフ
である。即ち、図1は、アニオン交換樹脂容量に対する
溶出液量の割合((溶出液量/樹脂容量)×100 )を横
軸とし、溶出液画分のpHを縦軸としてプロットしたグラ
フ;同じく溶出液画分の着色度を縦軸としてプロットし
たグラフ;同じく溶出液画分の糖濃度(重量%)を縦軸
としてプロットしたグラフ;同じく溶出液画分の結合リ
ン濃度(重量%)を縦軸としてプロットしたグラフ;及
び同じく溶出液画分の無機リン濃度(重量%)を縦軸と
してプロットしたグラフを示す。
【0045】ここで、着色度の分析は各分画試料をpH5.
5 に調整し、 420nmと 720nmの吸光度を測定して(420n
m の吸光度−720nm の吸光度)の値を求めて行い、30重
量%濃度当たりに換算して表示した。また、糖及びリン
濃度は、澱粉関連糖質実験法(学会出版センター、中村
道徳ら)に準じて測定した。糖濃度はフェノール硫酸法
で測定し、グルコースを標準として換算した。無機リン
濃度は試料のpHを2に調整してそのまま測定し、全リン
濃度は湿式灰化後、pH2に調整して同様に測定した。結
合リン濃度は(全リン濃度−無機リン濃度)で算出し
た。
【0046】図1からわかるように、溶出液のpHは最初
3以下であり、溶出液量がイオン交換樹脂容量の80%と
なる頃から糖の溶出が始まり、同時に溶出液画分中の結
合リン濃度も増加した。溶出液量が樹脂容量の 1.3倍量
前後になると、溶出液画分中の糖濃度は10%を越える濃
度となり、糖濃度及び結合リン濃度がほぼ同時に最大と
なった。この間の溶出液画分のpHは6前後であった。溶
出液量が樹脂容量の 1.6倍になると、溶出液画分中の糖
濃度及び結合リン濃度は急激に減少し始め、無機リン濃
度が増加した。溶出液量が樹脂容量の 1.7倍になると溶
出液画分中の無機リン濃度が最大となり、その後減少し
た。溶出液量が樹脂容量の 1.9倍を越えると、溶出液画
分の糖濃度、結合リン濃度及び無機リン濃度は全て減少
し、また、その溶出液画分のpHは7を越えた。その後の
溶出液画分は急激にアルカリ性となってpHは13以上とな
った。
【0047】溶出液画分中の糖濃度が最大となる頃か
ら、液の着色度が増加し始め、無機リン濃度が増加する
頃には黄色味を帯びた液となった。POSの溶出量を調
べると、無機リン濃度が最大となる、溶出液量が樹脂容
量の 1.7倍以後に溶出されるPOSの量は全体のPOS
溶出量の10%未満であった。POSの回収は糖濃度が1
%を越える溶出液画分、すなわち溶出液量が樹脂容量の
80%となった時の溶出液画分から回収を開始して、無機
リン濃度が高く、着色度の高くなる溶出液画分、すなわ
ち、溶出液量が樹脂容量の 1.7倍となるまでの溶出液画
分を回収した。回収液量は樹脂容量の90%であった。こ
のようにして、馬鈴薯澱粉80トンから得られた糖液を原
料として、塩基性アニオン交換樹脂から回収された溶出
液にはPOS 750kgが含まれていた。
【0048】〔実施例2〕実施例1と同様にして、馬鈴
薯澱粉からPOS溶液を得、これを濾過して清澄液と
し、脱色塔に通液して脱色POS溶液を得た。得られた
脱色POS溶液を強酸性カチオン交換樹脂(レバチット
S-100WS )、弱塩基性アニオン交換樹脂(レバチットMP
-64WS)に順次通液した。通液終了後、上記弱塩基性アニ
オン交換樹脂を純水を通液して糖液を押し出した。次い
で、弱塩基性アニオン交換樹脂に、50℃に加温した4%
水酸化ナトリウム溶液をSV=2の速度で通液してPO
Sを溶出した。
【0049】POSの回収は糖濃度が1%を越える溶出
液画分、すなわち溶出液量が樹脂容量の80%となった時
の溶出液画分から回収を開始して、無機リン濃度が高
く、着色度の高くなる溶出液、すなわち、溶出液量が樹
脂容量の 1.7倍となるまでの溶出液画分を回収した。回
収液量は樹脂容量の90%であった。このようにして、馬
鈴薯澱粉80トンから得られたPOS溶液を原料として、
塩基性アニオン交換樹脂から回収された溶出液にはPO
S 650kgが含まれていた。
【0050】〔実施例3〕実施例1で回収したPOS溶
液の一部 210L(POS 20kg を含む)を原料として、
下記のようにして脱塩濃縮、脱色、中和及び減圧濃縮処
理を行って、透明性の高いPOSの濃厚塩溶液を調製し
た。 (1) 脱塩濃縮 POS溶液 210L(pH6.5)に塩酸を加えてpH3に調節
し、日東電工製NTR−7450(食塩阻止率50%)の
スパイラル膜を装着した濾過装置で膜処理することによ
り、POS溶液の濃縮を行った。まず、pH3のPOS溶
液を40℃に加温して20kg/cm2の圧力で濃縮を開始した。
150kgの透過液を得た時点で1回目の濃縮を停止し、濃
縮液に純水60kgを加えて希釈した。これを同じく40℃に
加温して、20kg/cm2の圧力で2回目の濃縮を行って、60
kgの透過液が得られた時点で2回目の濃縮を停止し、濃
縮液に純水60kgを加えて希釈した。これを同じく40℃に
加温して、20kg/cm2の圧力で3回目の濃縮を行い、60kg
の透過液が得られた時点で3回目の濃縮を停止した。
【0051】(2) 脱色、中和、減圧濃縮処理 得られた濃縮液60kgに粉末活性炭(三井製薬製、PM−
KIとPM−SXの等量混合物)を対固形分15%の添加
率で加えて、50℃で、1時間保持した。これに10%水酸
化ナトリウム溶液を加えて pH5.5に調節してから、濾過
器で清澄濾過した。得られたPOSを含む液はポアサイ
ズ 0.2μmのセラミックフィルター(セラフロー、ミリ
ポア社製)で濾過して除菌処理し、透過液を回収した。
除菌処理して得た清澄なPOS溶液を減圧下で濃縮し、
濃度74重量%の清澄な濃縮POS溶液23kgを得た。この
POS製品はPOSのナトリウム塩であり、固形分中に
82%の糖を含み、結合リンは同じく 3.8%であっ
た。
【0052】〔実施例4〕実施例2で回収したPOS溶
液の一部 240L(POS 20kg を含む)を原料として、
下記のようにして脱塩濃縮、脱色、中和及び減圧濃縮処
理を行って、POSのカルシウム塩溶液を製造した。 (1) 脱塩濃縮 POS溶液 240L(pH6.5)に塩酸を加えてpH2に調節
し、日東電工製NTR−7430(食塩阻止率30%)の
スパイラル膜を装着した濾過装置で膜処理することによ
り、POS溶液の濃縮を行った。まず、pH2のPOS溶
液を40℃に加温して20kg/cm2の圧力で濃縮を開始した。
180kgの透過液を得た時点で1回目の濃縮を停止し、濃
縮液に純水60kgを加えて希釈した。これを同じく40℃に
加温して、20kg/cm2の圧力で2回目の濃縮を行って、60
kgの透過液が得られた時点で2回目の濃縮を停止し、濃
縮液に純水60kgを加えて希釈した。これを同じく40℃に
加温して、20kg/cm2の圧力で3回目の濃縮を行い、60kg
の透過液が得られた時点で3回目の濃縮を停止した。
【0053】(2) 脱色、中和、減圧濃縮処理 得られた濃縮液60kgに粉末活性炭(三井製薬製、PM−
KIとPM−SXの等量混合物)を対固形分5%の添加
率で加えて、50℃で、1時間保持した。これに10%消石
灰スラリーを加えて pH5.5に調節してから、濾過器で清
澄濾過した。得られたPOSを含む液はポアサイズ 0.2
μmのセラミックフィルター(セラフロー、ミリポア社
製)で濾過して除菌処理し、透過液を回収した。除菌処
理して得た清澄なPOS溶液を減圧下で濃縮し、濃度75
重量%の清澄な濃縮POS溶液22kgを得た。このPOS
製品はPOSのナトリウム塩とカルシウム塩の混合塩で
あり、固形分中に80%の糖を含み、結合リンは同じく
3.8%であった。
【0054】〔実施例5〕実施例4で除菌処理して得た
POS塩溶液を減圧濃縮し、濃度33重量%の濃縮液10kg
を得た。このPOS溶液をコンパクト型スプレードライ
ヤー(松阪貿易製)で粉末化処理した。処理条件は供給
液量14kg/時間、入口温度 180℃、出口温度90℃とし
た。水分 4.4%の粉末を 2.9kg回収した。POS塩の粉
末品の平均粒径は26μmであった。
【0055】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、POSを大
量に、効率よくしかも経済的に製造することができる。
したがって、本発明のPOS製造法によれば、POSの
工業的生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アニオン交換樹脂から水酸化ナトリウム溶液で
POSを溶出した場合における各溶出液画分の性状を示
すグラフを表した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川島 陽一 北海道砂川市豊沼町1 王子コーンスター チ株式会社北海道工場内 (72)発明者 新井 直人 千葉県市原市八幡海岸通9番地 王子コー ンスターチ株式会社開発研究所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン酸結合澱粉を酵素により分解してリ
    ン酸結合オリゴ糖を製造する方法において、前記澱粉を
    20〜40重量%含有するスラリーに耐熱性の液化型α−ア
    ミラーゼを添加し、加圧下で 101℃以上に加熱すること
    を含んでなる前記澱粉の液化工程を含むことを特徴とす
    る、リン酸結合オリゴ糖の製造方法。
  2. 【請求項2】 液化工程で得られた液化液に、さらに澱
    粉分解酵素を加えて作用させる工程を含む、請求項1に
    記載のリン酸結合オリゴ糖の製造方法。
  3. 【請求項3】 澱粉分解酵素が、α−アミラーゼ、β−
    アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、
    プルラナーゼ及びイソアミラーゼからなる群から選ばれ
    る少なくとも1種である、請求項2に記載のリン酸結合
    オリゴ糖の製造方法。
  4. 【請求項4】 リン酸結合澱粉に酵素を作用させて得ら
    れたリン酸結合オリゴ糖溶液を、強酸性カチオン交換樹
    脂、アニオン交換樹脂の順に通液させ、次いで前記アニ
    オン交換樹脂に吸着したリン酸結合オリゴ糖を水酸化ナ
    トリウム溶液、食塩溶液、又は食塩を含む水酸化ナトリ
    ウム溶液で溶出して、pHが8以下の溶出液画分を回収す
    る吸着分離工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか
    1項に記載のリン酸結合オリゴ糖の製造方法。
  5. 【請求項5】 リン酸結合澱粉に酵素を作用させて得ら
    れたリン酸結合オリゴ糖溶液を、強酸性カチオン交換樹
    脂、弱塩基性アニオン交換樹脂、強酸性カチオン交換樹
    脂、強塩基性アニオン交換樹脂の順に通液させ、次いで
    両アニオン交換樹脂に吸着したリン酸結合オリゴ糖を水
    酸化ナトリウム溶液、食塩溶液、又は食塩を含む水酸化
    ナトリウム溶液で溶出して、pHが8以下の溶出液画分を
    回収する吸着分離工程をさらに含む、請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載のリン酸結合オリゴ糖の製造方法。
  6. 【請求項6】 リン酸結合オリゴ糖を含む溶出液画分を
    食塩阻止率30〜60%の膜を用いて膜処理することにより
    リン酸結合オリゴ糖を脱塩濃縮する工程をさらに含む、
    請求項4又は5に記載のリン酸結合オリゴ糖の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の方法により得られたリ
    ン酸結合オリゴ糖の濃縮液に消石灰を加えて中和するこ
    とを特徴とする、リン酸結合オリゴ糖のカルシウム塩の
    製造方法。
JP24082796A 1996-09-11 1996-09-11 リン酸結合オリゴ糖の製造方法 Expired - Fee Related JP3861337B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24082796A JP3861337B2 (ja) 1996-09-11 1996-09-11 リン酸結合オリゴ糖の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24082796A JP3861337B2 (ja) 1996-09-11 1996-09-11 リン酸結合オリゴ糖の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1084985A true JPH1084985A (ja) 1998-04-07
JP3861337B2 JP3861337B2 (ja) 2006-12-20

Family

ID=17065292

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24082796A Expired - Fee Related JP3861337B2 (ja) 1996-09-11 1996-09-11 リン酸結合オリゴ糖の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3861337B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001226401A (ja) * 2000-02-16 2001-08-21 Snow Brand Milk Prod Co Ltd カルシウム・リン酸化澱粉複合体及びその製造方法
JP2002145893A (ja) * 2000-11-06 2002-05-22 Oji Cornstarch Co Ltd リン酸オリゴ糖及びリン酸デキストリンの多価金属塩類組成物並びにそれらの製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001226401A (ja) * 2000-02-16 2001-08-21 Snow Brand Milk Prod Co Ltd カルシウム・リン酸化澱粉複合体及びその製造方法
JP2002145893A (ja) * 2000-11-06 2002-05-22 Oji Cornstarch Co Ltd リン酸オリゴ糖及びリン酸デキストリンの多価金属塩類組成物並びにそれらの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3861337B2 (ja) 2006-12-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5968365A (en) Preparation of inulin products
WO2006112380A1 (ja) 高純度キシロオリゴ糖組成物
MXPA97000916A (en) Preparation of inul products
JPH03503238A (ja) 糖代用物質の製造に有用なオリゴデキストランの酵素による合成方法および新規なオリゴデキストラン
US11326194B2 (en) Method for producing dietary fiber
CN107325205B (zh) 一种菊粉和低聚果糖糖浆联产方法
JPH0347832B2 (ja)
JP2008056599A (ja) キシロース重合体及びその還元物の製造方法
KR101628769B1 (ko) 프락토올리고당이 포함된 혼합 당 조성물의 제조 방법
JP2001226409A (ja) キシロオリゴ糖組成物
JP4073661B2 (ja) 酸性キシロオリゴ糖組成物の製造方法
CA2604328C (en) Purification method and production method for cellobiose
KR100370929B1 (ko) 수용성 키토산의 제조 방법
JP3861337B2 (ja) リン酸結合オリゴ糖の製造方法
JP2003048901A (ja) 長鎖キシロオリゴ糖組成物およびその製造方法
JP4755333B2 (ja) リン酸オリゴ糖及びリン酸デキストリンの多価金属塩類組成物並びにそれらの製造方法
JP2007020567A (ja) リン酸化糖組成物及びその製造方法
CN114262387A (zh) 一种抗性糊精的制备方法
JPH0331294A (ja) 新規なオリゴ糖及びその製造方法
Puchkova et al. PRODUCTION OF OLIGOFRUCTOSE SYRUP BY ENZYMATIC HYDROLYSIS FROM INULIN-CONTAINING CHICORY SYRUP
CA2129261C (en) Processes of producing amylase inhibitors
JP4566096B2 (ja) リン酸化糖及び/又はそれらの塩を用いたpH調整剤
CN118184715A (zh) 一种利用葡萄糖副产物母液制备低聚异麦芽糖的方法
WO2013011566A1 (ja) イヌリンの製造方法
JPH04335872A (ja) 特定保健用食品

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20040615

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20040514

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060905

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060918

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091006

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101006

Year of fee payment: 4

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101006

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111006

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121006

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131006

Year of fee payment: 7

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees