JPH1078438A - カンチレバー - Google Patents
カンチレバーInfo
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- JPH1078438A JPH1078438A JP23307496A JP23307496A JPH1078438A JP H1078438 A JPH1078438 A JP H1078438A JP 23307496 A JP23307496 A JP 23307496A JP 23307496 A JP23307496 A JP 23307496A JP H1078438 A JPH1078438 A JP H1078438A
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- Japan
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- thin film
- probe
- metal thin
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Abstract
(57)【要約】
【課題】少なくとも探針表面に成膜する金属薄膜の耐磨
耗性及び密着性を向上させたカンチレバーを提供する。 【解決手段】パイレックスガラス製の支持部2と、この
支持部から延出した窒化シリコン製のレバー部4と、こ
のレバー部の自由端に形成された窒化シリコン製の探針
部6とから成るカンチレバー元部材18′を備えてお
り、このカンチレバー元部材の両面に導電性の金属薄膜
8a,8bを形成した後、探針部側からイオン注入処理
を施すことによって、少なくとも探針部の表面に形成さ
れた金属薄膜8aの物性を変化させている。
耗性及び密着性を向上させたカンチレバーを提供する。 【解決手段】パイレックスガラス製の支持部2と、この
支持部から延出した窒化シリコン製のレバー部4と、こ
のレバー部の自由端に形成された窒化シリコン製の探針
部6とから成るカンチレバー元部材18′を備えてお
り、このカンチレバー元部材の両面に導電性の金属薄膜
8a,8bを形成した後、探針部側からイオン注入処理
を施すことによって、少なくとも探針部の表面に形成さ
れた金属薄膜8aの物性を変化させている。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば走査型トン
ネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)等の
走査型プローブ顕微鏡(SPM)に用いられるカンチレ
バーに関する。
ネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)等の
走査型プローブ顕微鏡(SPM)に用いられるカンチレ
バーに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、試料を原子オーダーの分解能で観
察するための装置として、走査型プローブ顕微鏡(SPM;S
canning Probe Microscope) が知られている。このよう
なSPMの一例として、ビニッヒ(Binnig)やローラー
(Rohrer)等によって、走査型トンネル顕微鏡(STM;Sc
anning Tunneling Microscope)が発明された。しかし、
このSTMでは、観察できる試料は導電性の試料に限ら
れている。そこで、サーボ技術を始めとするSTMの要
素技術を利用し、絶縁性の試料を原子オーダーの分解能
で観察できる装置として原子間力顕微鏡(AFM;AtomicFo
rce Microscope)が提案された(特開昭62−1303
02号公報参照)。
察するための装置として、走査型プローブ顕微鏡(SPM;S
canning Probe Microscope) が知られている。このよう
なSPMの一例として、ビニッヒ(Binnig)やローラー
(Rohrer)等によって、走査型トンネル顕微鏡(STM;Sc
anning Tunneling Microscope)が発明された。しかし、
このSTMでは、観察できる試料は導電性の試料に限ら
れている。そこで、サーボ技術を始めとするSTMの要
素技術を利用し、絶縁性の試料を原子オーダーの分解能
で観察できる装置として原子間力顕微鏡(AFM;AtomicFo
rce Microscope)が提案された(特開昭62−1303
02号公報参照)。
【0003】AFM構造は、STMに類似しており、走
査型プローブ顕微鏡の一つとして位置付けられており、
自由端に尖鋭化した探針を持つカンチレバーを備えてい
る。このような構成において、探針を試料に近づける
と、探針先端の原子と試料表面の原子との間に働く相互
作用力(原子間力)によって、カンチレバーの自由端が
変位する。そして、この自由端に生じる振動振幅の変化
を電気的あるいは光学的に測定しながら、探針を試料表
面に沿ってXY方向に走査することによって、試料の凹
凸情報等を三次元的にとらえている。
査型プローブ顕微鏡の一つとして位置付けられており、
自由端に尖鋭化した探針を持つカンチレバーを備えてい
る。このような構成において、探針を試料に近づける
と、探針先端の原子と試料表面の原子との間に働く相互
作用力(原子間力)によって、カンチレバーの自由端が
変位する。そして、この自由端に生じる振動振幅の変化
を電気的あるいは光学的に測定しながら、探針を試料表
面に沿ってXY方向に走査することによって、試料の凹
凸情報等を三次元的にとらえている。
【0004】SPM用カンチレバーは、アルブレヒト
(T.R.Albrecht)等が半導体ICプロセスを応用して作
製した二酸化シリコンカンチレバーを提案して以来( T
homasR.Albrecht Calvin F.Quate:“Atomic resolution
Imaging of a nonconductorby Atomic force Microsco
py ”,J.Appl.Phys,62(1987)2599 参照)、マイクロメ
ータ(μm)の精度で非常に再現性の良いものを作製で
きるようになった。しかも、バッチプロセスを用いるこ
とにより大量に作製することができるため、作製コスト
を低減させることが可能となった。従って、現在、半導
体ICプロセスを応用して作製するカンチレバーチップ
が主流となっている。
(T.R.Albrecht)等が半導体ICプロセスを応用して作
製した二酸化シリコンカンチレバーを提案して以来( T
homasR.Albrecht Calvin F.Quate:“Atomic resolution
Imaging of a nonconductorby Atomic force Microsco
py ”,J.Appl.Phys,62(1987)2599 参照)、マイクロメ
ータ(μm)の精度で非常に再現性の良いものを作製で
きるようになった。しかも、バッチプロセスを用いるこ
とにより大量に作製することができるため、作製コスト
を低減させることが可能となった。従って、現在、半導
体ICプロセスを応用して作製するカンチレバーチップ
が主流となっている。
【0005】なお、例えば、「J.Vac.Sci.Technol.A8
(4)3386 1990:T.Albrecht,S.Akamine,T.E.Caver and C.
F.Quate 」に示されているように、二酸化シリコン膜の
代わりに窒化シリコン膜を使用したカンチレバーも知ら
れているが、このカンチレバーの寸法は、長さ約50〜
200μm、厚さ約0.5〜1μmであり、その形状
は、中抜き三角形や長方形である。
(4)3386 1990:T.Albrecht,S.Akamine,T.E.Caver and C.
F.Quate 」に示されているように、二酸化シリコン膜の
代わりに窒化シリコン膜を使用したカンチレバーも知ら
れているが、このカンチレバーの寸法は、長さ約50〜
200μm、厚さ約0.5〜1μmであり、その形状
は、中抜き三角形や長方形である。
【0006】上述したようなカンチレバーには、使用態
様や使用目的に合わせて、種々の処理が施される場合が
ある。例えば、AFMの光変位センサのセンサー光を効
率良く反射させるためにカンチレバーの背面に金属薄膜
をコーティングする場合や、更に加えてカンチレバーの
探針表面(探針が形成された面)も金属薄膜をコーティ
ングする場合がある。このようなカンチレバーによれ
ば、探針表面に金属薄膜をコーティングすることによっ
て導電性を持たせてあるため、例えば、AFM/STM
の同時測定や、AFM/SCaM (走査型容量顕微鏡(S
canning Capacitance Microscope))の同時測定が可能と
なる。
様や使用目的に合わせて、種々の処理が施される場合が
ある。例えば、AFMの光変位センサのセンサー光を効
率良く反射させるためにカンチレバーの背面に金属薄膜
をコーティングする場合や、更に加えてカンチレバーの
探針表面(探針が形成された面)も金属薄膜をコーティ
ングする場合がある。このようなカンチレバーによれ
ば、探針表面に金属薄膜をコーティングすることによっ
て導電性を持たせてあるため、例えば、AFM/STM
の同時測定や、AFM/SCaM (走査型容量顕微鏡(S
canning Capacitance Microscope))の同時測定が可能と
なる。
【0007】また、探針と試料とが同一材料である場合
には、走査中における探針先端と試料表面との間の吸着
力が大きくなって安定した測定を行うことが困難になる
場合があるが、探針表面に金属薄膜をコーティングする
ことによって、このような不安定性が回避することが可
能となる。例えば、窒化シリコン製探針によって窒化シ
リコン製試料をAFM測定すると、AFM測定像には、
引きずられたような痕が沢山観察されるようになるが、
探針に金属薄膜をコーティングすることによって、この
ような現象を少なくすることが可能となる。
には、走査中における探針先端と試料表面との間の吸着
力が大きくなって安定した測定を行うことが困難になる
場合があるが、探針表面に金属薄膜をコーティングする
ことによって、このような不安定性が回避することが可
能となる。例えば、窒化シリコン製探針によって窒化シ
リコン製試料をAFM測定すると、AFM測定像には、
引きずられたような痕が沢山観察されるようになるが、
探針に金属薄膜をコーティングすることによって、この
ような現象を少なくすることが可能となる。
【0008】なお、金属薄膜は、例えば、真空蒸着法、
プラズマCVD法、イオンビームスパッタ法、イオンビ
ーム蒸着法、プラズマスパッタ法等によって通常0.0
1〜1μm程度の厚さにコーティングされる。また、成
膜する金属としては、例えば、金やニッケル等が良く用
いられている。
プラズマCVD法、イオンビームスパッタ法、イオンビ
ーム蒸着法、プラズマスパッタ法等によって通常0.0
1〜1μm程度の厚さにコーティングされる。また、成
膜する金属としては、例えば、金やニッケル等が良く用
いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、実際のAF
M測定では、通常、カンチレバー先端の探針と試料とを
互いに接触させてAFM走査する場合が殆どである。こ
のため、例えば大気中のAFM測定では、試料表面に形
成された吸着層によって探針先端にはメニスカスフォー
スと呼ばれる吸着力が作用し、この力によって、探針荷
重値が実質的に決定されることになる。従って、このよ
うな吸着力が作用した探針荷重値でAFM走査を行う
と、探針先端の耐磨耗性が低下してしまうといった問題
が発生する場合がある。
M測定では、通常、カンチレバー先端の探針と試料とを
互いに接触させてAFM走査する場合が殆どである。こ
のため、例えば大気中のAFM測定では、試料表面に形
成された吸着層によって探針先端にはメニスカスフォー
スと呼ばれる吸着力が作用し、この力によって、探針荷
重値が実質的に決定されることになる。従って、このよ
うな吸着力が作用した探針荷重値でAFM走査を行う
と、探針先端の耐磨耗性が低下してしまうといった問題
が発生する場合がある。
【0010】具体的な例として、探針に導電性機能を付
加してAFM/STM同時測定を行うために、窒化シリ
コン製の探針側表面に金属薄膜をコーティングしたカン
チレバーによって試料を走査する場合を考察する。
加してAFM/STM同時測定を行うために、窒化シリ
コン製の探針側表面に金属薄膜をコーティングしたカン
チレバーによって試料を走査する場合を考察する。
【0011】この場合、金属薄膜の材料自体が柔らかい
ため、測定時間や測定回数が増すに従って、金属薄膜が
磨耗して探針先端の尖鋭度が悪くなってしまうことがあ
る。そうなると、走査感度や分解能が低下するだけでな
く、金属薄膜の厚さの減少によって導電性が低下してし
まうため、測定が不安定となってしまう。そして、探針
にコーティングされた金属薄膜が完全に磨耗して無くな
ってしまったときには、トンネル電流が全く得られ無く
なり、STM測定ができなくなってしまう場合がある。
ため、測定時間や測定回数が増すに従って、金属薄膜が
磨耗して探針先端の尖鋭度が悪くなってしまうことがあ
る。そうなると、走査感度や分解能が低下するだけでな
く、金属薄膜の厚さの減少によって導電性が低下してし
まうため、測定が不安定となってしまう。そして、探針
にコーティングされた金属薄膜が完全に磨耗して無くな
ってしまったときには、トンネル電流が全く得られ無く
なり、STM測定ができなくなってしまう場合がある。
【0012】このような問題は、金属薄膜が窒化シリコ
ン等のガラス材料と比べて柔らかいために顕著に現われ
る問題であり、少なくとも探針に対して金属薄膜をコー
ティングしたカンチレバーにおいて共通の問題である。
ン等のガラス材料と比べて柔らかいために顕著に現われ
る問題であり、少なくとも探針に対して金属薄膜をコー
ティングしたカンチレバーにおいて共通の問題である。
【0013】また、AFM測定の開始前にフォースカー
ブ測定と呼ばれる探針圧設定作業が行われるが、AFM
測定中において、探針は、設定圧以上の圧力で試料に押
し付けられることになる。この場合、柔らかい材料から
成る金属薄膜が押し潰されて探針先端の尖鋭度が悪くな
り、走査感度や分解能が低下してしまう場合がある。更
に、探針にコーティングする金属薄膜は、カンチレバー
元部材を構成する窒化シリコン等のシリコン系化合物に
対する密着性が悪いため、上記フォースカーブ測定の際
に既に剥がれてしまう場合もある。
ブ測定と呼ばれる探針圧設定作業が行われるが、AFM
測定中において、探針は、設定圧以上の圧力で試料に押
し付けられることになる。この場合、柔らかい材料から
成る金属薄膜が押し潰されて探針先端の尖鋭度が悪くな
り、走査感度や分解能が低下してしまう場合がある。更
に、探針にコーティングする金属薄膜は、カンチレバー
元部材を構成する窒化シリコン等のシリコン系化合物に
対する密着性が悪いため、上記フォースカーブ測定の際
に既に剥がれてしまう場合もある。
【0014】このため、シリコン系化合物から成るカン
チレバー元部材に対する金属薄膜の密着性を向上させる
ために、カンチレバー元部材と金属薄膜との間に、例え
ばチタンやクロム等の中間層を形成する方法が従来から
採られている。
チレバー元部材に対する金属薄膜の密着性を向上させる
ために、カンチレバー元部材と金属薄膜との間に、例え
ばチタンやクロム等の中間層を形成する方法が従来から
採られている。
【0015】ところで、このような中間層を構成する材
料は、膜応力が大きいものが多い。このため、1N/m
前後のばね定数を有するカンチレバーが、中間層を形成
したことによって反り返ることが無いように、中間層の
膜厚は、例えば鏡等を作製する場合に比べて遥かに薄く
する必要がある。ただし、膜応力を考慮した膜厚制御は
困難であるため、歩留まりが上がらない一因となってい
る。
料は、膜応力が大きいものが多い。このため、1N/m
前後のばね定数を有するカンチレバーが、中間層を形成
したことによって反り返ることが無いように、中間層の
膜厚は、例えば鏡等を作製する場合に比べて遥かに薄く
する必要がある。ただし、膜応力を考慮した膜厚制御は
困難であるため、歩留まりが上がらない一因となってい
る。
【0016】このように、上述したような種々の制約条
件によって、導電性、硬度及び耐久性等に優れたカンチ
レバーは、実現するに至っていない。本発明は、上述し
たような課題等を解決するために成されており、その目
的は、少なくとも探針表面に成膜する金属薄膜の耐磨耗
性及び密着性を向上させたカンチレバーを提供すること
にある。
件によって、導電性、硬度及び耐久性等に優れたカンチ
レバーは、実現するに至っていない。本発明は、上述し
たような課題等を解決するために成されており、その目
的は、少なくとも探針表面に成膜する金属薄膜の耐磨耗
性及び密着性を向上させたカンチレバーを提供すること
にある。
【0017】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明のカンチレバーは、支持部と、この支
持部から延出したレバー部と、このレバー部の自由端に
形成された探針部とを備えており、少なくとも前記探針
部側の面には、所定のイオンを注入することによって所
定の物性を有する表面層が形成されている。
るために、本発明のカンチレバーは、支持部と、この支
持部から延出したレバー部と、このレバー部の自由端に
形成された探針部とを備えており、少なくとも前記探針
部側の面には、所定のイオンを注入することによって所
定の物性を有する表面層が形成されている。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施の形態
に係るカンチレバーについて、図1〜図3を参照して説
明する。図1(d)に示すように、本実施の形態のカン
チレバーは、例えばパイレックスガラス製の支持部2
と、窒化シリコン製のレバー部4と、レバー部4の自由
端に形成された窒化シリコン製の探針部6とから成るカ
ンチレバー元部材18′を備えており、このカンチレバ
ー元部材18′の両面に導電性の金属薄膜8a,8bを
形成した後、探針部6側からイオン注入処理を施すこと
によって、少なくとも探針部6の表面に形成された金属
薄膜8aの物性を変化させて耐磨耗性及び密着性を向上
させたことを特徴としている。
に係るカンチレバーについて、図1〜図3を参照して説
明する。図1(d)に示すように、本実施の形態のカン
チレバーは、例えばパイレックスガラス製の支持部2
と、窒化シリコン製のレバー部4と、レバー部4の自由
端に形成された窒化シリコン製の探針部6とから成るカ
ンチレバー元部材18′を備えており、このカンチレバ
ー元部材18′の両面に導電性の金属薄膜8a,8bを
形成した後、探針部6側からイオン注入処理を施すこと
によって、少なくとも探針部6の表面に形成された金属
薄膜8aの物性を変化させて耐磨耗性及び密着性を向上
させたことを特徴としている。
【0019】ここで、“物性を変化させて”とは、金属
薄膜8aが、アモルファス化、多結晶化、格子欠陥の形
成、化合物の形成等によって、元々の結晶構造を変化さ
せることを示している。
薄膜8aが、アモルファス化、多結晶化、格子欠陥の形
成、化合物の形成等によって、元々の結晶構造を変化さ
せることを示している。
【0020】次に、本実施の形態のカンチレバーの作製
プロセスについて、図1(a)〜(d)を参照して説明
する。まず、図1(a)に示すように、シリコンウェハ
10に対して湿式異方性エッチングを施すことによっ
て、探針部6を形成するための穴12を形成する(プロ
セス1)。
プロセスについて、図1(a)〜(d)を参照して説明
する。まず、図1(a)に示すように、シリコンウェハ
10に対して湿式異方性エッチングを施すことによっ
て、探針部6を形成するための穴12を形成する(プロ
セス1)。
【0021】次に、図1(b)に示すように、穴12が
形成されたシリコンウェハ10の面上に窒化シリコン膜
14(膜厚0.4〜1μm)をCVD法によって形成し
た後、フォトリソグラフィとドライエッチングを施すこ
とによって、窒化シリコン膜14をレバー部4の形状に
パターニングする(プロセス2)。
形成されたシリコンウェハ10の面上に窒化シリコン膜
14(膜厚0.4〜1μm)をCVD法によって形成し
た後、フォトリソグラフィとドライエッチングを施すこ
とによって、窒化シリコン膜14をレバー部4の形状に
パターニングする(プロセス2)。
【0022】この後、図1(c)に示すように、支持部
2の形状にパターニングされたパイレックスガラス16
を窒化シリコン膜14に陽極接合する(プロセス3)。
なお、このプロセス3が終了した時点で、シリコンウェ
ハ10の面上には、パイレックスガラス16及び窒化シ
リコン膜14から成るカンチレバー元部材18′が形成
されることになる。
2の形状にパターニングされたパイレックスガラス16
を窒化シリコン膜14に陽極接合する(プロセス3)。
なお、このプロセス3が終了した時点で、シリコンウェ
ハ10の面上には、パイレックスガラス16及び窒化シ
リコン膜14から成るカンチレバー元部材18′が形成
されることになる。
【0023】続いて、40%KOH水溶液中でシリコン
ウェハ10をエッチングした後、フッ酸によってカンチ
レバー元部材18′に付着しているゴミや酸化シリコン
膜等を除去する(プロセス4)。
ウェハ10をエッチングした後、フッ酸によってカンチ
レバー元部材18′に付着しているゴミや酸化シリコン
膜等を除去する(プロセス4)。
【0024】次に、図1(d)に示すように、真空蒸着
法によって、カンチレバー元部材18′の両面に金属薄
膜8a,8bを成膜する(プロセス5)。なお、このプ
ロセス5において、金属薄膜8a,8bの材料として
は、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等の
導電性と耐酸化性とを兼ね備えた金属材料を用いること
が好ましい。また、金属薄膜8a,8bの膜厚は、10
〜100nmに設定することが好ましい。
法によって、カンチレバー元部材18′の両面に金属薄
膜8a,8bを成膜する(プロセス5)。なお、このプ
ロセス5において、金属薄膜8a,8bの材料として
は、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等の
導電性と耐酸化性とを兼ね備えた金属材料を用いること
が好ましい。また、金属薄膜8a,8bの膜厚は、10
〜100nmに設定することが好ましい。
【0025】そして、探針部6側に成膜された金属薄膜
8aに対して、後述するイオン注入装置によって所定の
イオンを注入する(プロセス6)。この結果、本実施の
形態のカンチレバーが形成されることになる。なお、後
述するミキシング効果を向上させるために、イオン注入
中又はイオン注入後、カンチレバーに熱処理を施すこと
が好ましい。
8aに対して、後述するイオン注入装置によって所定の
イオンを注入する(プロセス6)。この結果、本実施の
形態のカンチレバーが形成されることになる。なお、後
述するミキシング効果を向上させるために、イオン注入
中又はイオン注入後、カンチレバーに熱処理を施すこと
が好ましい。
【0026】図2(a)には、上記プロセス6のイオン
注入処理を行うためのイオン注入装置の構成が示されて
いる。図2(a)に示すように、イオン注入装置は、所
定の元素をイオン化して真空チャンバ20内に放出する
イオン放出器22と、真空チャンバ20内に設けられ且
つ上記プロセス1〜5を介して作製されたカンチレバー
18(イオン注入処理が成されていないカンチレバー
(以下、未注入カンチレバーと称する))をセット可能
なホルダ24と、このホルダ24を回転させる回転駆動
系26とを備えている。
注入処理を行うためのイオン注入装置の構成が示されて
いる。図2(a)に示すように、イオン注入装置は、所
定の元素をイオン化して真空チャンバ20内に放出する
イオン放出器22と、真空チャンバ20内に設けられ且
つ上記プロセス1〜5を介して作製されたカンチレバー
18(イオン注入処理が成されていないカンチレバー
(以下、未注入カンチレバーと称する))をセット可能
なホルダ24と、このホルダ24を回転させる回転駆動
系26とを備えている。
【0027】イオン放出器22は、所定の元素を取込可
能な取込口28と、この取込口28から取り込まれた元
素をプラズマ化した後、所定の電圧を印加するプラズマ
室30と、印加電圧によって加速されたイオンをプラズ
マ室30から放出させるタイミング(イオン注入タイミ
ング)を制御するシャッタ32とを備えている。
能な取込口28と、この取込口28から取り込まれた元
素をプラズマ化した後、所定の電圧を印加するプラズマ
室30と、印加電圧によって加速されたイオンをプラズ
マ室30から放出させるタイミング(イオン注入タイミ
ング)を制御するシャッタ32とを備えている。
【0028】この場合、ホルダ24には、探針部6が形
成された面をイオン放出器22に対向させて未注入カン
チレバー18がセットされる。なお、図面では、説明の
都合上、1つの未注入カンチレバー18のみをホルダ2
4にセットしているが、実際は、複数個の未注入カンチ
レバー18が形成された1枚のウェハ(図示しない)が
ホルダ24にセットされることになる。
成された面をイオン放出器22に対向させて未注入カン
チレバー18がセットされる。なお、図面では、説明の
都合上、1つの未注入カンチレバー18のみをホルダ2
4にセットしているが、実際は、複数個の未注入カンチ
レバー18が形成された1枚のウェハ(図示しない)が
ホルダ24にセットされることになる。
【0029】また、イオン放出器22によってイオン化
させる元素としては、例えば、不活性元素や、未注入カ
ンチレバー18に与える応力の少ないヘリウム、窒素、
炭素、ボロン、アルゴン等のガス体が好ましい。この場
合、特に、比較的原子量が小さいヘリウムや窒素等のガ
ス体は、比較的低エネルギーで注入することができるた
め、装置の製造コストを低減することができると共に、
真空チャンバ20内に大量に放出しても排気口34から
外部に簡単に放出することができるため、未注入カンチ
レバー18に与える応力を押さえることができる点で望
ましい。
させる元素としては、例えば、不活性元素や、未注入カ
ンチレバー18に与える応力の少ないヘリウム、窒素、
炭素、ボロン、アルゴン等のガス体が好ましい。この場
合、特に、比較的原子量が小さいヘリウムや窒素等のガ
ス体は、比較的低エネルギーで注入することができるた
め、装置の製造コストを低減することができると共に、
真空チャンバ20内に大量に放出しても排気口34から
外部に簡単に放出することができるため、未注入カンチ
レバー18に与える応力を押さえることができる点で望
ましい。
【0030】以下、例えば膜厚50nmの金属薄膜8
a,8bが形成された未注入カンチレバー18に対して
所定の注入量及び注入エネルギで所定のイオンを注入す
る動作について説明する。なお、この注入動作におい
て、探針部6側の金属薄膜8aに注入するイオンの注入
量は、1×1015〜6×1017ions/cm2 の範囲
が好ましく、金属薄膜8aに注入するイオンの注入エネ
ルギは、5〜60KeVの範囲が好ましい。
a,8bが形成された未注入カンチレバー18に対して
所定の注入量及び注入エネルギで所定のイオンを注入す
る動作について説明する。なお、この注入動作におい
て、探針部6側の金属薄膜8aに注入するイオンの注入
量は、1×1015〜6×1017ions/cm2 の範囲
が好ましく、金属薄膜8aに注入するイオンの注入エネ
ルギは、5〜60KeVの範囲が好ましい。
【0031】このような条件の下、未注入カンチレバー
18をホルダ24にセットした後、排気口34から排気
して真空チャンバ20内を10-6Torrの真空状態にす
る。そして、取込口28からプラズマ室30に取り込ま
れた所定元素をプラズマ化した後、所定の電圧を印加す
る。このとき、所定の注入タイミングでシャッタ32を
開けると、印加電圧によって加速されたイオンは、回転
駆動系26によって回転しているホルダ24上の未注入
カンチレバー18方向(図中矢印D参照)へ放出され
る。そして、シャッタ32が開いている間、探針部6側
の金属薄膜8aに対するイオン注入処理が行われること
になる。
18をホルダ24にセットした後、排気口34から排気
して真空チャンバ20内を10-6Torrの真空状態にす
る。そして、取込口28からプラズマ室30に取り込ま
れた所定元素をプラズマ化した後、所定の電圧を印加す
る。このとき、所定の注入タイミングでシャッタ32を
開けると、印加電圧によって加速されたイオンは、回転
駆動系26によって回転しているホルダ24上の未注入
カンチレバー18方向(図中矢印D参照)へ放出され
る。そして、シャッタ32が開いている間、探針部6側
の金属薄膜8aに対するイオン注入処理が行われること
になる。
【0032】従来から、探針部6側の金属薄膜8aに対
して、AFM測定時の耐磨耗性を考慮したイオン注入処
理は行われていない。しかし、本実施の形態のように、
金属薄膜8a,8bを成膜した後、探針部6側の金属薄
膜8aにイオン注入処理を施すと、イオンが金属薄膜8
aの内部に拡散すると同時に、注入エネルギによって金
属薄膜8aの結晶構造が崩れる。この結果、金属薄膜8
aの密度が増加して硬度が高められるため、例えばAF
M/STM同時測定においてAFM測定時の耐磨耗性と
同時にSTM測定時の導電性を共に向上させることが可
能となる。
して、AFM測定時の耐磨耗性を考慮したイオン注入処
理は行われていない。しかし、本実施の形態のように、
金属薄膜8a,8bを成膜した後、探針部6側の金属薄
膜8aにイオン注入処理を施すと、イオンが金属薄膜8
aの内部に拡散すると同時に、注入エネルギによって金
属薄膜8aの結晶構造が崩れる。この結果、金属薄膜8
aの密度が増加して硬度が高められるため、例えばAF
M/STM同時測定においてAFM測定時の耐磨耗性と
同時にSTM測定時の導電性を共に向上させることが可
能となる。
【0033】また、イオン注入処理を施して探針部6側
の金属薄膜8aの硬度を高める際に、イオンの注入エネ
ルギを5〜60KeVの範囲で増減制御すれば、注入さ
れたイオンが、金属薄膜8aとカンチレバー元部材の窒
化シリコン膜14(図1参照)との界面に到達し、イオ
ンの持つ注入エネルギによって界面付近の原子が混合
(ミキシング)されることになる。このようにミキシン
グされると、金属薄膜8aと窒化シリコン膜14(即
ち、カンチレバー元部材)との境界が不明瞭になるた
め、窒化シリコン膜14(カンチレバー元部材)に対す
る金属薄膜8aの密着性を向上させることが可能とな
る。
の金属薄膜8aの硬度を高める際に、イオンの注入エネ
ルギを5〜60KeVの範囲で増減制御すれば、注入さ
れたイオンが、金属薄膜8aとカンチレバー元部材の窒
化シリコン膜14(図1参照)との界面に到達し、イオ
ンの持つ注入エネルギによって界面付近の原子が混合
(ミキシング)されることになる。このようにミキシン
グされると、金属薄膜8aと窒化シリコン膜14(即
ち、カンチレバー元部材)との境界が不明瞭になるた
め、窒化シリコン膜14(カンチレバー元部材)に対す
る金属薄膜8aの密着性を向上させることが可能とな
る。
【0034】更に、通常カンチレバーを作製する際に
は、応力に基づくカンチレバーの変形に充分注意を払う
必要がある。これは、カンチレバーのばね定数が非常に
小さいため、応力の僅かな増加によってカンチレバーが
反り返ってしまうからである。この点、本実施の形態に
適用したイオン注入法では、原子レベルのオーダーでイ
オンを金属薄膜8aに注入させることができるため、カ
ンチレバーに大きな応力を与えることがない。このた
め、大きな応力を与えること無く(即ち、カンチレバー
を大きく反り返らせること無く)、金属薄膜8aを硬度
化させることが可能となる。
は、応力に基づくカンチレバーの変形に充分注意を払う
必要がある。これは、カンチレバーのばね定数が非常に
小さいため、応力の僅かな増加によってカンチレバーが
反り返ってしまうからである。この点、本実施の形態に
適用したイオン注入法では、原子レベルのオーダーでイ
オンを金属薄膜8aに注入させることができるため、カ
ンチレバーに大きな応力を与えることがない。このた
め、大きな応力を与えること無く(即ち、カンチレバー
を大きく反り返らせること無く)、金属薄膜8aを硬度
化させることが可能となる。
【0035】以下、このような効果を実証するための種
々の比較試験について、試験データを参考にして説明す
る。なお、後述する比較試験は、その一例として次のよ
うな設定条件の下で行った。
々の比較試験について、試験データを参考にして説明す
る。なお、後述する比較試験は、その一例として次のよ
うな設定条件の下で行った。
【0036】即ち、金属薄膜8a,8bの材料として、
金(以下、金薄膜と称する)を用いると共に、この金薄
膜8a,8bの膜厚を50nmに設定した。また、イオ
ン化させる元素として窒素を用いることとし、一定の注
入エネルギ20KeVの下、未注入カンチレバー18に
対して、注入量1×1017ions/cm2 でイオン注
入処理を施したカンチレバー(以下、注入済カンチレバ
ーと称する)と、注入量5×1017ions/cm2 で
イオン注入処理を施した注入済カンチレバーを夫々用意
した。そして、これら注入済カンチレバーと未注入カン
チレバー18との間で以下のような比較試験を行った。
金(以下、金薄膜と称する)を用いると共に、この金薄
膜8a,8bの膜厚を50nmに設定した。また、イオ
ン化させる元素として窒素を用いることとし、一定の注
入エネルギ20KeVの下、未注入カンチレバー18に
対して、注入量1×1017ions/cm2 でイオン注
入処理を施したカンチレバー(以下、注入済カンチレバ
ーと称する)と、注入量5×1017ions/cm2 で
イオン注入処理を施した注入済カンチレバーを夫々用意
した。そして、これら注入済カンチレバーと未注入カン
チレバー18との間で以下のような比較試験を行った。
【0037】まず、注入量1×1017ions/cm2
でイオン注入処理を施した注入済カンチレバーと、未注
入カンチレバー18とを用いて、AFM/STMの同時
測定を行って、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐
圧測定試験を行った。なお、測定試料として、面方位
(100)のn形シリコン基板(Si)を酸化処理した
シリコン酸化膜試料を用いた。
でイオン注入処理を施した注入済カンチレバーと、未注
入カンチレバー18とを用いて、AFM/STMの同時
測定を行って、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐
圧測定試験を行った。なお、測定試料として、面方位
(100)のn形シリコン基板(Si)を酸化処理した
シリコン酸化膜試料を用いた。
【0038】この条件の下、探針荷重1nNで測定試料
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未注入カンチレバー18
は、9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、S
TM電流像が得られなくなった。一方、注入済カンチレ
バーは、20回以上の走査を行っても、安定したAFM
測定像及びSTM電流像を検出することができた。
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未注入カンチレバー18
は、9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、S
TM電流像が得られなくなった。一方、注入済カンチレ
バーは、20回以上の走査を行っても、安定したAFM
測定像及びSTM電流像を検出することができた。
【0039】この結果、金薄膜8aにイオン注入処理を
施すことによって、耐磨耗性と導電性の双方を向上させ
ることができることが確認された。なお、未注入カンチ
レバー18を用いた場合、AFM測定像及びSTM電流
像が得られなくなるのは、測定中に探針部6側の金薄膜
8aが早期に磨り減ってしまったためである。この結果
については、探針部6をSEM観察したところ、探針部
6の先端部分の剥離量が、注入済カンチレバーに比べて
未注入カンチレバー18の方が大きいことが確認され
た。
施すことによって、耐磨耗性と導電性の双方を向上させ
ることができることが確認された。なお、未注入カンチ
レバー18を用いた場合、AFM測定像及びSTM電流
像が得られなくなるのは、測定中に探針部6側の金薄膜
8aが早期に磨り減ってしまったためである。この結果
については、探針部6をSEM観察したところ、探針部
6の先端部分の剥離量が、注入済カンチレバーに比べて
未注入カンチレバー18の方が大きいことが確認され
た。
【0040】次に、LBWT(Lunch Box Wear Test) と
呼ばれる引っかき試験法(T.Miyamoto,T.Miyake,R.Kanek
o:“Wear resistance of C+ -implanted siliconinvest
igated by scanning probe microscopy”,Wear,vol.162
-164,pt.B,pp.733-738,1993.)を用いて、イオン注入処
理を施した金薄膜8aとイオン注入処理を施していない
金薄膜8aの耐磨耗性の評価試験を行った。
呼ばれる引っかき試験法(T.Miyamoto,T.Miyake,R.Kanek
o:“Wear resistance of C+ -implanted siliconinvest
igated by scanning probe microscopy”,Wear,vol.162
-164,pt.B,pp.733-738,1993.)を用いて、イオン注入処
理を施した金薄膜8aとイオン注入処理を施していない
金薄膜8aの耐磨耗性の評価試験を行った。
【0041】LBWT法は、ダイヤモンド触針を一定荷
重で評価試料に押し付けた状態でラスター走査した際、
評価試料に形成される磨耗痕の磨耗量を低探針荷重でA
FM測定する方法である。なお、この方法に用いるダイ
ヤモンド触針は、その曲率半径が60nm、磨耗痕形成
時の荷重が0.5μN前後に設定されている。
重で評価試料に押し付けた状態でラスター走査した際、
評価試料に形成される磨耗痕の磨耗量を低探針荷重でA
FM測定する方法である。なお、この方法に用いるダイ
ヤモンド触針は、その曲率半径が60nm、磨耗痕形成
時の荷重が0.5μN前後に設定されている。
【0042】この場合、探針部6と同一の積層構造(図
1(d)参照)を有しており、且つ、イオン注入処理を
施していない金薄膜8aを有する評価試料、窒素イオン
(イオン注入量;1×1017ions/cm2 )によっ
てイオン注入処理を施した金薄膜8aを有する評価試
料、窒素イオン(イオン注入量;5×1017ions/
cm2 )によってイオン注入処理を施した金薄膜8aを
有する評価試料の3種類の評価試料を用意して試験を行
った(下記の表1参照)。
1(d)参照)を有しており、且つ、イオン注入処理を
施していない金薄膜8aを有する評価試料、窒素イオン
(イオン注入量;1×1017ions/cm2 )によっ
てイオン注入処理を施した金薄膜8aを有する評価試
料、窒素イオン(イオン注入量;5×1017ions/
cm2 )によってイオン注入処理を施した金薄膜8aを
有する評価試料の3種類の評価試料を用意して試験を行
った(下記の表1参照)。
【0043】
【表1】
【0044】表1に示された評価データから明らかなよ
うに、イオン注入処理を施していない金薄膜8aの磨耗
量(磨耗深さ)に対して、窒素イオン(イオン注入量;
1×1017ions/cm2 )を注入した金薄膜8aの
磨耗量(磨耗深さ)は、約30%減少した。更に、イオ
ン注入処理を施していない金薄膜8aの磨耗量(磨耗深
さ)に対して、窒素イオン(イオン注入量;5×1017
ions/cm2 )を注入した金薄膜8aの磨耗量(磨
耗深さ)は、約50分の1程度減少した。
うに、イオン注入処理を施していない金薄膜8aの磨耗
量(磨耗深さ)に対して、窒素イオン(イオン注入量;
1×1017ions/cm2 )を注入した金薄膜8aの
磨耗量(磨耗深さ)は、約30%減少した。更に、イオ
ン注入処理を施していない金薄膜8aの磨耗量(磨耗深
さ)に対して、窒素イオン(イオン注入量;5×1017
ions/cm2 )を注入した金薄膜8aの磨耗量(磨
耗深さ)は、約50分の1程度減少した。
【0045】この結果、金薄膜8aにイオン注入処理を
施すことによって、金薄膜8aの耐磨耗性を向上させる
ことができることが確認された。最後に、探針部6と同
一の積層構造(図1(d)参照)を有するサンプル(1
0mm×10mm)に対するXPS分析を行った。具体
的には、イオン注入処理を施していないサンプル(未注
入サンプル)とイオン注入処理を施したサンプル(注入
済サンプル)とに対してXPS分析を行った。なお、こ
のXPS分析では、金薄膜8aのエッチングレートを1
50nm/min、窒化シリコン膜14(図1(d)参
照)のエッチングレートを15nm/minに設定し
た。
施すことによって、金薄膜8aの耐磨耗性を向上させる
ことができることが確認された。最後に、探針部6と同
一の積層構造(図1(d)参照)を有するサンプル(1
0mm×10mm)に対するXPS分析を行った。具体
的には、イオン注入処理を施していないサンプル(未注
入サンプル)とイオン注入処理を施したサンプル(注入
済サンプル)とに対してXPS分析を行った。なお、こ
のXPS分析では、金薄膜8aのエッチングレートを1
50nm/min、窒化シリコン膜14(図1(d)参
照)のエッチングレートを15nm/minに設定し
た。
【0046】図2(b),(c)には、このXPS分析
の分析結果データが示されており、同図(b)は、未注
入サンプルの分析結果データ、同図(c)は、窒素イオ
ン(イオン注入量;1×1017ions/cm2 、又
は、5×1017ions/cm2 )を注入した注入済サ
ンプルの分析結果データである。
の分析結果データが示されており、同図(b)は、未注
入サンプルの分析結果データ、同図(c)は、窒素イオ
ン(イオン注入量;1×1017ions/cm2 、又
は、5×1017ions/cm2 )を注入した注入済サ
ンプルの分析結果データである。
【0047】同図(b)から明らかなように、未注入サ
ンプルでは、窒化シリコン膜14(カンチレバー元部材
18′)上に、ほぼ膜厚(50nm)設定通りに金薄膜
8aが分布していることが分かる。即ち、金薄膜8aと
窒化シリコン膜14との境界は、明瞭に区別されてい
る。
ンプルでは、窒化シリコン膜14(カンチレバー元部材
18′)上に、ほぼ膜厚(50nm)設定通りに金薄膜
8aが分布していることが分かる。即ち、金薄膜8aと
窒化シリコン膜14との境界は、明瞭に区別されてい
る。
【0048】これに対して、同図(c)から明らかなよ
うに、注入済サンプルでは、金薄膜8aを構成する金の
分布が深さ方向に沿って穏やかに傾斜しており、金薄膜
8aと窒化シリコン膜14との境界が傾斜的に分布(境
界部分の膜相互の材料が相互に混じり合って分布)して
不明瞭になっていることが分かる。
うに、注入済サンプルでは、金薄膜8aを構成する金の
分布が深さ方向に沿って穏やかに傾斜しており、金薄膜
8aと窒化シリコン膜14との境界が傾斜的に分布(境
界部分の膜相互の材料が相互に混じり合って分布)して
不明瞭になっていることが分かる。
【0049】これは、イオン注入処理によって金薄膜8
aと窒化シリコン膜14の境界部分がミキシングされた
ことを示している。なお、イオン注入処理後において、
サンプル表面付近に窒素が殆ど検出されずに硬度が増加
していることも確認されたが、これは、サンプル内に金
の窒化物が形成されたからではなく、イオン注入処理に
よって金薄膜8aの結晶構造が変化して硬度が増加した
からである。
aと窒化シリコン膜14の境界部分がミキシングされた
ことを示している。なお、イオン注入処理後において、
サンプル表面付近に窒素が殆ど検出されずに硬度が増加
していることも確認されたが、これは、サンプル内に金
の窒化物が形成されたからではなく、イオン注入処理に
よって金薄膜8aの結晶構造が変化して硬度が増加した
からである。
【0050】このXPS分析によれば、金薄膜8aにイ
オン注入処理を施すことによって、カンチレバー元部材
18′(窒化シリコン膜14)に対する金薄膜8aの密
着性を向上させることができることが確認された。
オン注入処理を施すことによって、カンチレバー元部材
18′(窒化シリコン膜14)に対する金薄膜8aの密
着性を向上させることができることが確認された。
【0051】なお、本発明は、上述した第1の実施の形
態に限定されることは無く、新規事項を追加しない範囲
で種々変更することが可能である。例えば、第1の変形
例として、上記第1の実施の形態の設定条件の下、作製
プロセス4(図1(c)参照)において、ダイナミック
イオンミキシング法によって、カンチレバー元部材1
8′の探針部6側の面に直接金属薄膜8aを成膜しても
良い。
態に限定されることは無く、新規事項を追加しない範囲
で種々変更することが可能である。例えば、第1の変形
例として、上記第1の実施の形態の設定条件の下、作製
プロセス4(図1(c)参照)において、ダイナミック
イオンミキシング法によって、カンチレバー元部材1
8′の探針部6側の面に直接金属薄膜8aを成膜しても
良い。
【0052】ダイナミックイオンミキシング法とは、カ
ンチレバー元部材18′に金属をコーティングしながら
同時にイオン注入を行う方法であって、比較的低いエネ
ルギでイオン注入処理を行うことができると共に、イオ
ンミキシング層を厚くすることができるという利点を有
している。
ンチレバー元部材18′に金属をコーティングしながら
同時にイオン注入を行う方法であって、比較的低いエネ
ルギでイオン注入処理を行うことができると共に、イオ
ンミキシング層を厚くすることができるという利点を有
している。
【0053】図3(a)には、ダイナミックイオンミキ
シング処理を行うためのイオン注入装置の構成が示され
ている。図3(a)に示すように、イオン注入装置は、
真空チャンバ36内にカンチレバー元部材18′をセッ
ト可能な試料ホルダ38と、所定の元素をイオン化して
真空チャンバ36内に放出するイオン源40と、このイ
オン源40からイオンが放出されている間に、少なくと
もカンチレバー元部材18′の探針部6側の面に所定の
金属を蒸着させる蒸発源42とを備えている。
シング処理を行うためのイオン注入装置の構成が示され
ている。図3(a)に示すように、イオン注入装置は、
真空チャンバ36内にカンチレバー元部材18′をセッ
ト可能な試料ホルダ38と、所定の元素をイオン化して
真空チャンバ36内に放出するイオン源40と、このイ
オン源40からイオンが放出されている間に、少なくと
もカンチレバー元部材18′の探針部6側の面に所定の
金属を蒸着させる蒸発源42とを備えている。
【0054】この場合、試料ホルダ38には、探針部6
が形成された面をイオン源40及び蒸発源42に対抗さ
せてカンチレバー元部材18′がセットされる。なお、
図面では、説明の都合上、1つのカンチレバー元部材1
8′のみを試料ホルダ38にセットしているが、実際
は、複数個のカンチレバー元部材18′が形成された1
枚のウェハ(図示しない)が試料ホルダ38にセットさ
れることになる。
が形成された面をイオン源40及び蒸発源42に対抗さ
せてカンチレバー元部材18′がセットされる。なお、
図面では、説明の都合上、1つのカンチレバー元部材1
8′のみを試料ホルダ38にセットしているが、実際
は、複数個のカンチレバー元部材18′が形成された1
枚のウェハ(図示しない)が試料ホルダ38にセットさ
れることになる。
【0055】このような装置では、まず、イオン源40
からイオンをカンチレバー元部材18′の探針部6側の
面に注入した状態において、所定時間経過後に、蒸発源
42から金属を蒸発させてカンチレバー元部材18′の
探針部6側の面に金属を蒸着(成膜)させる。この後、
金属蒸着状態を一定に維持しながらイオン放出量を減少
させて行く。そして、イオン放出を停止させた後、探針
部6側の金属薄膜8a(図1(d)参照)の膜厚が50
nmになるまで蒸発源42から金属を蒸発させる。な
お、この後、膜厚50nmの金属薄膜8aの硬度を更に
向上させるために、金属薄膜8aにイオンを注入するこ
とも好ましい。
からイオンをカンチレバー元部材18′の探針部6側の
面に注入した状態において、所定時間経過後に、蒸発源
42から金属を蒸発させてカンチレバー元部材18′の
探針部6側の面に金属を蒸着(成膜)させる。この後、
金属蒸着状態を一定に維持しながらイオン放出量を減少
させて行く。そして、イオン放出を停止させた後、探針
部6側の金属薄膜8a(図1(d)参照)の膜厚が50
nmになるまで蒸発源42から金属を蒸発させる。な
お、この後、膜厚50nmの金属薄膜8aの硬度を更に
向上させるために、金属薄膜8aにイオンを注入するこ
とも好ましい。
【0056】この第1の変形例によれば、ダイナミック
イオンミキシング処理によって、カンチレバー元部材1
8′の探針部6側の面に成膜とイオン注入とを同時に行
うことができる。このため、上記第1の実施の形態とは
異なり、膜厚の増加に伴ってイオンの注入エネルギを大
きくする必要がないため、比較的低い注入エネルギでも
膜厚を厚くすることが可能となる。また、低い注入エネ
ルギで足りるため、導電性膜として機能する探針部6側
の金属薄膜8aに与えるダメージを低減することが可能
となる。
イオンミキシング処理によって、カンチレバー元部材1
8′の探針部6側の面に成膜とイオン注入とを同時に行
うことができる。このため、上記第1の実施の形態とは
異なり、膜厚の増加に伴ってイオンの注入エネルギを大
きくする必要がないため、比較的低い注入エネルギでも
膜厚を厚くすることが可能となる。また、低い注入エネ
ルギで足りるため、導電性膜として機能する探針部6側
の金属薄膜8aに与えるダメージを低減することが可能
となる。
【0057】また、ダイナミックイオンミキシング処理
中、イオン注入だけを停止すると、その後の処理は通常
の成膜プロセスとなるため、ミキシング層の形成を何時
でも止めることができる。つまり、成膜後にイオン注入
する手法に比べてミキシング層の制御が容易になるた
め、必要に応じてミキシング層を厚くして密着性をより
強固にすることが可能となる。なお、密着性を向上させ
るために例えばチタンやクロム等の中間層を設ける手法
が従来から採られているが、本変形例では、中間層を設
けること無く、充分な密着性を維持確保することができ
る。
中、イオン注入だけを停止すると、その後の処理は通常
の成膜プロセスとなるため、ミキシング層の形成を何時
でも止めることができる。つまり、成膜後にイオン注入
する手法に比べてミキシング層の制御が容易になるた
め、必要に応じてミキシング層を厚くして密着性をより
強固にすることが可能となる。なお、密着性を向上させ
るために例えばチタンやクロム等の中間層を設ける手法
が従来から採られているが、本変形例では、中間層を設
けること無く、充分な密着性を維持確保することができ
る。
【0058】更に、本変形例によれば、カンチレバー元
部材18′を形成した後、仕上げまでを1つのプロセス
で行うことができる。この場合、探針部6側の面への金
属成膜とイオン注入とを別々に行っていた手法に比べ
て、作製プロセスを削減することができるため、カンチ
レバー作製コストを低減することが可能となる。
部材18′を形成した後、仕上げまでを1つのプロセス
で行うことができる。この場合、探針部6側の面への金
属成膜とイオン注入とを別々に行っていた手法に比べ
て、作製プロセスを削減することができるため、カンチ
レバー作製コストを低減することが可能となる。
【0059】以下、第1の変形例の効果を実証するため
の種々の比較試験について、例示的にとった試験データ
を参考にして簡単に説明する。なお、後述する種々の比
較試験は、第1の実施の形態と同一の設定条件の下で行
った。例えば、金属薄膜8a,8bの材料として、金を
用いると共に、この金薄膜8a,8bの膜厚を50nm
に設定した。そして、第1の実施の形態と同一の注入エ
ネルギ及び注入量で例えば窒素イオンを注入した。
の種々の比較試験について、例示的にとった試験データ
を参考にして簡単に説明する。なお、後述する種々の比
較試験は、第1の実施の形態と同一の設定条件の下で行
った。例えば、金属薄膜8a,8bの材料として、金を
用いると共に、この金薄膜8a,8bの膜厚を50nm
に設定した。そして、第1の実施の形態と同一の注入エ
ネルギ及び注入量で例えば窒素イオンを注入した。
【0060】まず、ダイナミックイオンミキシング処理
を施した処理済カンチレバーと、処理を施していない未
処理カンチレバーとを用いて、AFM/STMの同時測
定を行って、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐圧
測定試験を行った。なお、測定試料として、面方位(1
00)のn形シリコン基板(Si)を酸化処理したシリ
コン酸化膜試料を用いた。
を施した処理済カンチレバーと、処理を施していない未
処理カンチレバーとを用いて、AFM/STMの同時測
定を行って、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐圧
測定試験を行った。なお、測定試料として、面方位(1
00)のn形シリコン基板(Si)を酸化処理したシリ
コン酸化膜試料を用いた。
【0061】この条件の下、探針荷重1nNで測定試料
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未処理カンチレバーは、
9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、STM
電流像が得られなくなった。一方、処理済カンチレバー
は、20回以上の走査を行っても、安定したAFM測定
像及びSTM電流像を検出することができた。
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未処理カンチレバーは、
9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、STM
電流像が得られなくなった。一方、処理済カンチレバー
は、20回以上の走査を行っても、安定したAFM測定
像及びSTM電流像を検出することができた。
【0062】この結果、未処理カンチレバーに比べて処
理済カンチレバーの方が導電性及び耐磨耗性が高くなっ
ていることが確認された。次に、ダイナミックイオンミ
キシング処理を施した探針部6と同一の積層構造を有す
るサンプル(10mm×10mm)に対するXPS分析
を行った。なお、このXPS分析では、金薄膜8aのエ
ッチングレートを150nm/min、窒化シリコン膜
14(図1(d)参照)のエッチングレートを15nm
/minに設定した。
理済カンチレバーの方が導電性及び耐磨耗性が高くなっ
ていることが確認された。次に、ダイナミックイオンミ
キシング処理を施した探針部6と同一の積層構造を有す
るサンプル(10mm×10mm)に対するXPS分析
を行った。なお、このXPS分析では、金薄膜8aのエ
ッチングレートを150nm/min、窒化シリコン膜
14(図1(d)参照)のエッチングレートを15nm
/minに設定した。
【0063】図3(b)には、このXPS分析の分析結
果データが示されている。このデータから明らかなよう
に、探針部6側の窒化シリコン膜14上に、ほぼ膜厚
(50nm)設定通りに金薄膜8aが分布した状態にお
いて、ミキシング層が30nm程度あり、図2(b)の
データ(イオン注入処理を施していないサンプルのデー
タ)と比較して境界が不明瞭になっていることが分か
る。
果データが示されている。このデータから明らかなよう
に、探針部6側の窒化シリコン膜14上に、ほぼ膜厚
(50nm)設定通りに金薄膜8aが分布した状態にお
いて、ミキシング層が30nm程度あり、図2(b)の
データ(イオン注入処理を施していないサンプルのデー
タ)と比較して境界が不明瞭になっていることが分か
る。
【0064】このようにダイナミックイオンミキシング
法を適用したことによって、成膜しながら同時にイオン
注入処理を施して境界をミキシングすることができるた
め、カンチレバー元部材18′(窒化シリコン膜14)
に対する金薄膜8aの密着性を向上させることができる
ことが確認された。
法を適用したことによって、成膜しながら同時にイオン
注入処理を施して境界をミキシングすることができるた
め、カンチレバー元部材18′(窒化シリコン膜14)
に対する金薄膜8aの密着性を向上させることができる
ことが確認された。
【0065】また、例えば、第2の変形例として、上記
第1の実施の形態の設定条件の下、パイレックスガラス
16及び窒化シリコン膜14から成るカンチレバー元部
材18′の探針部6側の面に金属イオンを注入した後、
その金属と同一元素の金属を成膜しても良い。
第1の実施の形態の設定条件の下、パイレックスガラス
16及び窒化シリコン膜14から成るカンチレバー元部
材18′の探針部6側の面に金属イオンを注入した後、
その金属と同一元素の金属を成膜しても良い。
【0066】この第2の変形例によれば、成膜前にイオ
ン注入処理を施しているため、比較的低い注入エネルギ
で短時間に密着性が高く且つ表面が平滑な金属薄膜を形
成することが可能となる。また、最表面に成膜された金
属薄膜が磨耗しても、窒化シリコン膜14(カンチレバ
ー元部材18′)に注入された金属元素の効果によって
導電性を一定に維持することが可能となる。
ン注入処理を施しているため、比較的低い注入エネルギ
で短時間に密着性が高く且つ表面が平滑な金属薄膜を形
成することが可能となる。また、最表面に成膜された金
属薄膜が磨耗しても、窒化シリコン膜14(カンチレバ
ー元部材18′)に注入された金属元素の効果によって
導電性を一定に維持することが可能となる。
【0067】また、本変形例に適用する金属イオンとし
ては、導電性を有する金属元素のイオン、或いは、イオ
ン注入後に成膜する導電性膜(金属薄膜)と同一元素の
イオンが好ましい。これは、金属イオンを注入すること
によって、窒化シリコン膜14(カンチレバー元部材1
8′)と金属薄膜との間の境界が傾斜的に分布して不明
瞭となり、膜相互の密着性を向上させることができるか
らである。従って、注入イオンの種類としては、導電性
が保持され且つ酸化し難い元素(例えば、金、銀、白
金、パラジウム、ニッケル)から成る金属イオンを用い
れば、酸化による導電性の低下を防止することができ
る。
ては、導電性を有する金属元素のイオン、或いは、イオ
ン注入後に成膜する導電性膜(金属薄膜)と同一元素の
イオンが好ましい。これは、金属イオンを注入すること
によって、窒化シリコン膜14(カンチレバー元部材1
8′)と金属薄膜との間の境界が傾斜的に分布して不明
瞭となり、膜相互の密着性を向上させることができるか
らである。従って、注入イオンの種類としては、導電性
が保持され且つ酸化し難い元素(例えば、金、銀、白
金、パラジウム、ニッケル)から成る金属イオンを用い
れば、酸化による導電性の低下を防止することができ
る。
【0068】以下、第2の変形例の効果を実証するため
の種々の比較試験について、例示的にとった試験データ
を参考にして簡単に説明する。後述する種々の比較試験
は、基本的に第1の実施の形態と同一の設定条件の下で
行ったが、金属イオンとして例えば金元素から成る金イ
オンを用いると共に、金属薄膜8a,8b(図1(d)
参照)の材料として同一の金元素を用い、この金薄膜8
a,8bの膜厚を50nmに設定した。
の種々の比較試験について、例示的にとった試験データ
を参考にして簡単に説明する。後述する種々の比較試験
は、基本的に第1の実施の形態と同一の設定条件の下で
行ったが、金属イオンとして例えば金元素から成る金イ
オンを用いると共に、金属薄膜8a,8b(図1(d)
参照)の材料として同一の金元素を用い、この金薄膜8
a,8bの膜厚を50nmに設定した。
【0069】また、例えば、一定の注入エネルギ50K
eVの下、注入量1×1017ions/cm2 の条件で
探針部6側の面に金イオンを注入した後、この面上に金
薄膜を50nm成膜した注入済カンチレバーを用意し
た。そして、この注入済カンチレバーと、探針部6側の
面に金イオンを注入すること無く金薄膜8aのみを成膜
した未注入カンチレバーとの間で以下のような比較試験
を行った。
eVの下、注入量1×1017ions/cm2 の条件で
探針部6側の面に金イオンを注入した後、この面上に金
薄膜を50nm成膜した注入済カンチレバーを用意し
た。そして、この注入済カンチレバーと、探針部6側の
面に金イオンを注入すること無く金薄膜8aのみを成膜
した未注入カンチレバーとの間で以下のような比較試験
を行った。
【0070】まず、注入済カンチレバーと、未注入カン
チレバーとを用いて、AFM/STMの同時測定を行っ
て、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐圧測定試験
を行った。なお、測定試料として、面方位(100)の
n形シリコン基板(Si)を酸化処理したシリコン酸化
膜試料を用いた。
チレバーとを用いて、AFM/STMの同時測定を行っ
て、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐圧測定試験
を行った。なお、測定試料として、面方位(100)の
n形シリコン基板(Si)を酸化処理したシリコン酸化
膜試料を用いた。
【0071】この条件の下、探針荷重1nNで測定試料
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未注入カンチレバーは、
9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、STM
電流像が得られなくなった。一方、注入済カンチレバー
は、20回以上の走査を行っても、安定したAFM測定
像及びSTM電流像を検出することができた。
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未注入カンチレバーは、
9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、STM
電流像が得られなくなった。一方、注入済カンチレバー
は、20回以上の走査を行っても、安定したAFM測定
像及びSTM電流像を検出することができた。
【0072】この結果、未注入カンチレバーに比べて注
入済カンチレバーの方が導電性及び耐磨耗性が高くなっ
ていることが確認された。これは、金薄膜の成膜前に、
探針部6側の面(窒化シリコン膜14)に金イオンを注
入したことによって、金薄膜の金元素が、先に注入され
た金元素と馴染みながら成膜されるためである。従っ
て、最表面に成膜された金薄膜が磨耗した場合でも、窒
化シリコン膜14(カンチレバー元部材18′)に注入
された金元素の効果によって導電性を一定に維持するこ
とが可能となる。
入済カンチレバーの方が導電性及び耐磨耗性が高くなっ
ていることが確認された。これは、金薄膜の成膜前に、
探針部6側の面(窒化シリコン膜14)に金イオンを注
入したことによって、金薄膜の金元素が、先に注入され
た金元素と馴染みながら成膜されるためである。従っ
て、最表面に成膜された金薄膜が磨耗した場合でも、窒
化シリコン膜14(カンチレバー元部材18′)に注入
された金元素の効果によって導電性を一定に維持するこ
とが可能となる。
【0073】次に、注入済カンチレバーの探針部6と同
一の積層構造を有するサンプル(10mm×10mm)
に対するXPS分析を行った。なお、このXPS分析で
は、金薄膜8aのエッチングレートを150nm/mi
n、窒化シリコン膜14(図1(d)参照)のエッチン
グレートを15nm/minに設定した。
一の積層構造を有するサンプル(10mm×10mm)
に対するXPS分析を行った。なお、このXPS分析で
は、金薄膜8aのエッチングレートを150nm/mi
n、窒化シリコン膜14(図1(d)参照)のエッチン
グレートを15nm/minに設定した。
【0074】図3(c)には、このXPS分析の分析結
果データが示されている。このデータから明らかなよう
に、探針部6側の窒化シリコン膜14上に、ほぼ膜厚
(50nm)設定通りに金薄膜8aが分布した状態にお
いて、図2(b)のデータ(イオン注入処理を施してい
ないサンプルのデータ)と比較して境界が不明瞭になっ
ていることが分かる。
果データが示されている。このデータから明らかなよう
に、探針部6側の窒化シリコン膜14上に、ほぼ膜厚
(50nm)設定通りに金薄膜8aが分布した状態にお
いて、図2(b)のデータ(イオン注入処理を施してい
ないサンプルのデータ)と比較して境界が不明瞭になっ
ていることが分かる。
【0075】この結果、本変形例のイオン注入処理を適
用することによって、カンチレバー元部材18′(窒化
シリコン膜14)に対する金薄膜8aの密着性を向上さ
せることができることが確認された。
用することによって、カンチレバー元部材18′(窒化
シリコン膜14)に対する金薄膜8aの密着性を向上さ
せることができることが確認された。
【0076】次に、本発明の第2の実施の形態に係るカ
ンチレバーについて、図4及び図5を参照して説明す
る。なお、本実施の形態の説明に際し、第1の実施の形
態と同一の構成には、同一符号を付して、その説明を省
略する。
ンチレバーについて、図4及び図5を参照して説明す
る。なお、本実施の形態の説明に際し、第1の実施の形
態と同一の構成には、同一符号を付して、その説明を省
略する。
【0077】図4に示すように、本実施の形態のカンチ
レバーは、上記第1の実施の形態と同様の作製プロセス
1〜4(図4(a)〜(c)参照)によって形成したカ
ンチレバー元部材18′の両面に中間層44a,44b
を介して金属薄膜8a,8bを成膜した後(図4(d)
参照)、探針部6側からイオン注入処理を施すことによ
って、少なくとも探針部6に積層された中間層44a及
び金属薄膜8aの物性を変化させて耐磨耗性及び密着性
を向上させたことを特徴としている。
レバーは、上記第1の実施の形態と同様の作製プロセス
1〜4(図4(a)〜(c)参照)によって形成したカ
ンチレバー元部材18′の両面に中間層44a,44b
を介して金属薄膜8a,8bを成膜した後(図4(d)
参照)、探針部6側からイオン注入処理を施すことによ
って、少なくとも探針部6に積層された中間層44a及
び金属薄膜8aの物性を変化させて耐磨耗性及び密着性
を向上させたことを特徴としている。
【0078】ここで、“物性を変化させて”とは、金属
薄膜8aが、アモルファス化、多結晶化、格子欠陥の形
成、化合物の形成等によって、元々の結晶構造を変化さ
せることを示している。
薄膜8aが、アモルファス化、多結晶化、格子欠陥の形
成、化合物の形成等によって、元々の結晶構造を変化さ
せることを示している。
【0079】金属薄膜8a,8bの材料としては、第1
の実施の形態と同様に、例えば、金、銀、白金、パラジ
ウム、ニッケル等の導電性と耐酸化性とを兼ね備えた金
属材料を用いることが好ましく、その膜厚は、10〜1
00nmに設定することが好ましい。
の実施の形態と同様に、例えば、金、銀、白金、パラジ
ウム、ニッケル等の導電性と耐酸化性とを兼ね備えた金
属材料を用いることが好ましく、その膜厚は、10〜1
00nmに設定することが好ましい。
【0080】また、中間層44a,44bの材料として
は、例えば、クロム、チタン、タングステン、タンタル
等を適用することが可能である。このような中間層44
a,44bは、金属薄膜8a,8bの密着性を向上させ
るのに充分な膜厚が必要であるが、その膜応力によって
カンチレバーが大きく反り返ることが無いように、その
膜厚は、約1.5nm程度に設定することが好ましい。
は、例えば、クロム、チタン、タングステン、タンタル
等を適用することが可能である。このような中間層44
a,44bは、金属薄膜8a,8bの密着性を向上させ
るのに充分な膜厚が必要であるが、その膜応力によって
カンチレバーが大きく反り返ることが無いように、その
膜厚は、約1.5nm程度に設定することが好ましい。
【0081】一方、イオン注入処理に際しイオン化させ
る元素としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、
不活性元素や、未注入カンチレバー18(図4(d)参
照)に与える応力の少ないヘリウム、窒素、炭素、ボロ
ン、アルゴン等のガス体が好ましい。
る元素としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、
不活性元素や、未注入カンチレバー18(図4(d)参
照)に与える応力の少ないヘリウム、窒素、炭素、ボロ
ン、アルゴン等のガス体が好ましい。
【0082】なお、イオン注入量及び注入エネルギにつ
いても、第1の実施の形態と同様に、探針部6側の面に
注入するイオン注入量は、1×1015〜6×1017io
ns/cm2 の範囲が好ましく、また、イオンの注入エ
ネルギは、5〜60KeVの範囲が好ましい。
いても、第1の実施の形態と同様に、探針部6側の面に
注入するイオン注入量は、1×1015〜6×1017io
ns/cm2 の範囲が好ましく、また、イオンの注入エ
ネルギは、5〜60KeVの範囲が好ましい。
【0083】ところで、従来技術において説明したよう
に、カンチレバー元部材18′に対する金属薄膜8a,
8bの密着性を向上させるために、金属薄膜8a,8b
とカンチレバー元部材18′との間に、ある程度密着性
の良い中間層44a,44bを設ける手法が一般的に採
られている。
に、カンチレバー元部材18′に対する金属薄膜8a,
8bの密着性を向上させるために、金属薄膜8a,8b
とカンチレバー元部材18′との間に、ある程度密着性
の良い中間層44a,44bを設ける手法が一般的に採
られている。
【0084】しかし、特にSPM用のカンチレバーは、
その厚さが数μm以下と非常に薄く且つ繊細であるた
め、カンチレバー元部材18′上に成膜した中間層44
a,44bの膜厚が大きくなると、膜応力が増加するこ
とによって、カンチレバーが大きく反り返ってしまう場
合がある。
その厚さが数μm以下と非常に薄く且つ繊細であるた
め、カンチレバー元部材18′上に成膜した中間層44
a,44bの膜厚が大きくなると、膜応力が増加するこ
とによって、カンチレバーが大きく反り返ってしまう場
合がある。
【0085】このため、中間層44a,44bは、その
機能を失わない範囲で可能な限り薄く成膜することが好
ましいが、この中間層44a,44bを薄くし過ぎると
金属薄膜8a,8bの密着性を向上させる効果が不十分
となるだけでなく、経時的に剥離等の問題が生じる。
機能を失わない範囲で可能な限り薄く成膜することが好
ましいが、この中間層44a,44bを薄くし過ぎると
金属薄膜8a,8bの密着性を向上させる効果が不十分
となるだけでなく、経時的に剥離等の問題が生じる。
【0086】そこで、本実施の形態では、中間層44
a,44bの機能を発揮させるのに充分な膜厚として約
1.5nm程度に設定すると共に、特に探針部6側の金
属薄膜8aと中間層44aとの境界の密着性及び中間層
44aとカンチレバー元部材18′との境界の密着性を
向上させるために、探針部6側からイオン注入処理を施
している。この場合、第1の実施の形態と同様に、イオ
ン注入エネルギを5〜60KeVの範囲で増減制御すれ
ば、注入されたイオンが、上記各境界に到達し、イオン
の持つ注入エネルギによって境界付近の原子が混合(ミ
キシング)されることになる。
a,44bの機能を発揮させるのに充分な膜厚として約
1.5nm程度に設定すると共に、特に探針部6側の金
属薄膜8aと中間層44aとの境界の密着性及び中間層
44aとカンチレバー元部材18′との境界の密着性を
向上させるために、探針部6側からイオン注入処理を施
している。この場合、第1の実施の形態と同様に、イオ
ン注入エネルギを5〜60KeVの範囲で増減制御すれ
ば、注入されたイオンが、上記各境界に到達し、イオン
の持つ注入エネルギによって境界付近の原子が混合(ミ
キシング)されることになる。
【0087】このようなミキシングが成されると、上記
各境界が不明瞭になるため、境界相互の密着性を向上さ
せることができ、耐磨耗性を著しく向上させることが可
能となる。この結果、膜応力の増加に伴うカンチレバー
の反りの問題や経時的な剥離等の問題が解消され、経時
的に常に安定した測定を行うことが可能なカンチレバー
を提供することが可能となる。
各境界が不明瞭になるため、境界相互の密着性を向上さ
せることができ、耐磨耗性を著しく向上させることが可
能となる。この結果、膜応力の増加に伴うカンチレバー
の反りの問題や経時的な剥離等の問題が解消され、経時
的に常に安定した測定を行うことが可能なカンチレバー
を提供することが可能となる。
【0088】なお、例えばAFM測定やLFM測定時に
おいて、カンチレバーの探針部6先端と試料表面(図示
しない)との間の吸着力を低減させることを目的とする
場合には、導電性は問題では無く耐磨耗性を向上させる
ことが重要となる。この場合には、探針部6の表面に酸
化層が形成されるように、イオン注入量を適宜調節すれ
ば良い。これに対して、AFM/STMの同時測定を行
う場合には、導電性の低下は可能な限り少ない方が良
く、表面に酸化層が形成されないように、イオン注入量
を適宜調節することが好ましい。また、AFM/SCa
Mの同時測定を行う場合には、AFM/STM同時測定
とは多少異なり、表面だけが酸化して導電性が低下して
いる状態であれば、充分に測定可能である。
おいて、カンチレバーの探針部6先端と試料表面(図示
しない)との間の吸着力を低減させることを目的とする
場合には、導電性は問題では無く耐磨耗性を向上させる
ことが重要となる。この場合には、探針部6の表面に酸
化層が形成されるように、イオン注入量を適宜調節すれ
ば良い。これに対して、AFM/STMの同時測定を行
う場合には、導電性の低下は可能な限り少ない方が良
く、表面に酸化層が形成されないように、イオン注入量
を適宜調節することが好ましい。また、AFM/SCa
Mの同時測定を行う場合には、AFM/STM同時測定
とは多少異なり、表面だけが酸化して導電性が低下して
いる状態であれば、充分に測定可能である。
【0089】以下、このような効果を実証するための種
々の比較試験について、例示的にとった試験データを参
考にして説明する。なお、後述する種々の比較試験は、
その一例として次のような設定条件の下で行った。
々の比較試験について、例示的にとった試験データを参
考にして説明する。なお、後述する種々の比較試験は、
その一例として次のような設定条件の下で行った。
【0090】即ち、金属薄膜8a,8bの材料として、
金(以下、金薄膜と称する)を用いると共に、この金薄
膜8a,8bの膜厚を50nmに設定し、中間層44
a,44b(膜厚;約1.5nm程度)の材料として、
クロム(以下、クロム層と称する)を用いた。また、イ
オン化させる元素として窒素を用いることとし、一定の
注入エネルギ20KeVの下、未注入カンチレバー18
(図4(d)参照)に対して、注入量2×1017ion
s/cm2 でイオン注入処理を施したカンチレバー(以
下、注入済カンチレバーと称する)を用意した。そし
て、この注入済カンチレバーと未注入カンチレバー18
との間で以下のような比較試験を行った。
金(以下、金薄膜と称する)を用いると共に、この金薄
膜8a,8bの膜厚を50nmに設定し、中間層44
a,44b(膜厚;約1.5nm程度)の材料として、
クロム(以下、クロム層と称する)を用いた。また、イ
オン化させる元素として窒素を用いることとし、一定の
注入エネルギ20KeVの下、未注入カンチレバー18
(図4(d)参照)に対して、注入量2×1017ion
s/cm2 でイオン注入処理を施したカンチレバー(以
下、注入済カンチレバーと称する)を用意した。そし
て、この注入済カンチレバーと未注入カンチレバー18
との間で以下のような比較試験を行った。
【0091】まず、注入済カンチレバーと、未注入カン
チレバー18とを用いて、AFM/STMの同時測定を
行って、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐圧測定
試験を行った。なお、測定試料として、面方位(10
0)のn形シリコン基板(Si)を酸化処理したシリコ
ン酸化膜試料を用いた。
チレバー18とを用いて、AFM/STMの同時測定を
行って、測定試料(図示しない)に対する絶縁耐圧測定
試験を行った。なお、測定試料として、面方位(10
0)のn形シリコン基板(Si)を酸化処理したシリコ
ン酸化膜試料を用いた。
【0092】この条件の下、探針荷重1nNで測定試料
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未注入カンチレバー18
は、9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、S
TM電流像が得られなくなった。一方、注入済カンチレ
バーは、20回以上の走査を行っても、安定したAFM
測定像及びSTM電流像を検出することができた。
を1μm×1μm走査し、トンネル電流が流れなくなる
まで数回の比較試験を行って夫々の試験データをとっ
た。この試験データによれば、未注入カンチレバー18
は、9回目の走査時にAFM測定像が不安定になり、S
TM電流像が得られなくなった。一方、注入済カンチレ
バーは、20回以上の走査を行っても、安定したAFM
測定像及びSTM電流像を検出することができた。
【0093】この結果、未注入カンチレバー18に比べ
て注入済カンチレバーの方が導電性及び耐磨耗性が高く
なっていることが確認された。次に、探針部6と同一の
積層構造(図4(d)参照)を有するサンプル(10m
m×10mm)に対するXPS分析を行った。具体的に
は、イオン注入処理を施していないサンプル(未注入サ
ンプル)とイオン注入処理を施したサンプル(注入済サ
ンプル)とに対してXPS分析を行った。なお、このX
PS分析では、金薄膜8aのエッチングレートを150
nm/min、窒化シリコン膜14及びクロム層44a
(図1(d)参照)のエッチングレートを15nm/m
inに設定した。
て注入済カンチレバーの方が導電性及び耐磨耗性が高く
なっていることが確認された。次に、探針部6と同一の
積層構造(図4(d)参照)を有するサンプル(10m
m×10mm)に対するXPS分析を行った。具体的に
は、イオン注入処理を施していないサンプル(未注入サ
ンプル)とイオン注入処理を施したサンプル(注入済サ
ンプル)とに対してXPS分析を行った。なお、このX
PS分析では、金薄膜8aのエッチングレートを150
nm/min、窒化シリコン膜14及びクロム層44a
(図1(d)参照)のエッチングレートを15nm/m
inに設定した。
【0094】図5(a),(b)には、このXPS分析
の分析結果データが示されており、同図(a)は、未注
入サンプルの分析結果データ、同図(b)は、窒素イオ
ン(イオン注入量;2×1017ions/cm2 )を注
入した注入済サンプルの分析結果データである。
の分析結果データが示されており、同図(a)は、未注
入サンプルの分析結果データ、同図(b)は、窒素イオ
ン(イオン注入量;2×1017ions/cm2 )を注
入した注入済サンプルの分析結果データである。
【0095】同図(a)から明らかなように、イオン注
入処理を施していないサンプルでは、窒化シリコン膜1
4(カンチレバー元部材18′)上に、ほぼ膜厚設定通
りに金薄膜8a及びクロム層44aが分布していること
が分かる。即ち、金薄膜8aとクロム層44aとの境界
は、明瞭に区別されている。
入処理を施していないサンプルでは、窒化シリコン膜1
4(カンチレバー元部材18′)上に、ほぼ膜厚設定通
りに金薄膜8a及びクロム層44aが分布していること
が分かる。即ち、金薄膜8aとクロム層44aとの境界
は、明瞭に区別されている。
【0096】これに対して、同図(b)から明らかなよ
うに、注入済サンプルでは、金薄膜8aとクロム層44
aとの間の境界及びクロム層44aと窒化シリコン膜1
4との間の境界が傾斜的に分布(境界部分の膜相互の材
料が相互に混じり合って分布)して不明瞭になっている
ことが分かる。
うに、注入済サンプルでは、金薄膜8aとクロム層44
aとの間の境界及びクロム層44aと窒化シリコン膜1
4との間の境界が傾斜的に分布(境界部分の膜相互の材
料が相互に混じり合って分布)して不明瞭になっている
ことが分かる。
【0097】このXPS分析によれば、イオン注入処理
によって境界部分がミキシングされて密着性が向上した
ことが確認された。なお、本実施の形態では、第1の実
施の形態で行ったLBWT法による耐磨耗性の評価は行
わなかったが、図5(b)から明らかなように、表面の
金薄膜8aは、イオン注入処理によって耐磨耗性が向上
している層であると考察される。
によって境界部分がミキシングされて密着性が向上した
ことが確認された。なお、本実施の形態では、第1の実
施の形態で行ったLBWT法による耐磨耗性の評価は行
わなかったが、図5(b)から明らかなように、表面の
金薄膜8aは、イオン注入処理によって耐磨耗性が向上
している層であると考察される。
【0098】また、本実施の形態のように、イオン注入
処理を施した場合には、クロム層44a上に、このクロ
ム層44aよりも硬化した窒化クロムが形成され、その
上に成膜されている金薄膜8aも硬くなる。この結果、
耐磨耗性を向上させることが可能となる。
処理を施した場合には、クロム層44a上に、このクロ
ム層44aよりも硬化した窒化クロムが形成され、その
上に成膜されている金薄膜8aも硬くなる。この結果、
耐磨耗性を向上させることが可能となる。
【0099】
【発明の効果】本発明によれば、探針部側の面にイオン
を注入して、この面に成膜された金属薄膜と探針部側の
面との間の境界部分の材料を相互に交じり合わせて分布
させることによって、少なくとも探針部側の金属薄膜の
耐磨耗性及び密着性を向上させたカンチレバーを提供す
ることが可能となる。
を注入して、この面に成膜された金属薄膜と探針部側の
面との間の境界部分の材料を相互に交じり合わせて分布
させることによって、少なくとも探針部側の金属薄膜の
耐磨耗性及び密着性を向上させたカンチレバーを提供す
ることが可能となる。
【図1】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施の形態
に係るカンチレバーを作製するプロセスを示す図。
に係るカンチレバーを作製するプロセスを示す図。
【図2】(a)は、図1(d)を介して作製されたカン
チレバーの探針部側にイオン注入処理を行うためのイオ
ン注入装置の構成を示す図、(b)は、未注入サンプル
のXPS分析結果データを示す図、(c)は、注入済サ
ンプルのXPS分析結果データを示す図。
チレバーの探針部側にイオン注入処理を行うためのイオ
ン注入装置の構成を示す図、(b)は、未注入サンプル
のXPS分析結果データを示す図、(c)は、注入済サ
ンプルのXPS分析結果データを示す図。
【図3】(a)は、本発明の第1の変形例に係り、ダイ
ナミックイオンミキシング処理を行うためのイオン注入
装置の構成を示す図、(b)は、第1の変形例に係るX
PS分析の分析結果データを示す図、(c)は、第2の
変形例に係るXPS分析の分析結果データを示す図。
ナミックイオンミキシング処理を行うためのイオン注入
装置の構成を示す図、(b)は、第1の変形例に係るX
PS分析の分析結果データを示す図、(c)は、第2の
変形例に係るXPS分析の分析結果データを示す図。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施の形態
に係るカンチレバーを作製するプロセスを示す図。
に係るカンチレバーを作製するプロセスを示す図。
【図5】(a)は、未注入サンプルの分析結果データを
示す図、(b)は、注入済サンプルの分析結果データを
示す図。
示す図、(b)は、注入済サンプルの分析結果データを
示す図。
【符号の説明】 2 支持部 4 レバー部 6 探針部 8a,8b 金属薄膜 18′ カンチレバー元部材
フロントページの続き (72)発明者 ▲ひじ▼野 雅道 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内
Claims (2)
- 【請求項1】 支持部と、 この支持部から延出したレバー部と、 このレバー部の自由端に形成された探針部とを備えてお
り、 少なくとも前記探針部側の面には、所定のイオンを注入
することによって所定の物性を有する表面層が形成され
ていることを特徴とするカンチレバー。 - 【請求項2】 前記表面層は、所定の金属材料から成る
金属薄膜であって、この金属薄膜と前記探針部側の面と
の間の境界部分の材料が、相互に混じり合って分布して
いることを特徴とする請求項1に記載のカンチレバー。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23307496A JPH1078438A (ja) | 1996-09-03 | 1996-09-03 | カンチレバー |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23307496A JPH1078438A (ja) | 1996-09-03 | 1996-09-03 | カンチレバー |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1078438A true JPH1078438A (ja) | 1998-03-24 |
Family
ID=16949403
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23307496A Withdrawn JPH1078438A (ja) | 1996-09-03 | 1996-09-03 | カンチレバー |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1078438A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2002042741A1 (en) * | 2000-11-26 | 2002-05-30 | Daiken Chemical Co., Ltd. | Conductive probe for scanning microscope and machining method using the same |
JP2006267113A (ja) * | 2006-04-10 | 2006-10-05 | Yoshikazu Nakayama | 先端被覆ナノチューブ、走査型顕微鏡用先端被覆プローブ、これを用いた加工装置及び加工方法 |
JP2006284343A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-10-19 | National Institute For Materials Science | 高分子膜の体積膨張に伴うストレス変化を利用した湿度センサー |
-
1996
- 1996-09-03 JP JP23307496A patent/JPH1078438A/ja not_active Withdrawn
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2002042741A1 (en) * | 2000-11-26 | 2002-05-30 | Daiken Chemical Co., Ltd. | Conductive probe for scanning microscope and machining method using the same |
US6787769B2 (en) | 2000-11-26 | 2004-09-07 | Yoshikazu Nakayama | Conductive probe for scanning microscope and machining method using the same |
JP2006284343A (ja) * | 2005-03-31 | 2006-10-19 | National Institute For Materials Science | 高分子膜の体積膨張に伴うストレス変化を利用した湿度センサー |
JP4665144B2 (ja) * | 2005-03-31 | 2011-04-06 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 高分子膜の体積膨張に伴うストレス変化を利用した湿度センサー |
JP2006267113A (ja) * | 2006-04-10 | 2006-10-05 | Yoshikazu Nakayama | 先端被覆ナノチューブ、走査型顕微鏡用先端被覆プローブ、これを用いた加工装置及び加工方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20031104 |