JPH1072775A - フッ素樹脂系糸及び織物 - Google Patents

フッ素樹脂系糸及び織物

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JPH1072775A
JPH1072775A JP8228975A JP22897596A JPH1072775A JP H1072775 A JPH1072775 A JP H1072775A JP 8228975 A JP8228975 A JP 8228975A JP 22897596 A JP22897596 A JP 22897596A JP H1072775 A JPH1072775 A JP H1072775A
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JP
Japan
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fluororesin
woven fabric
ion exchange
yarn
resin
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JP8228975A
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Fumihiro Sasaki
文博 佐々木
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Japan Gore Tex Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フッ素樹脂系糸の摩擦抵抗を高めることを基
本目的とする。これによりフッ素樹脂系を用いてフッ素
樹脂系織物としたときの目ズレや緯糸の引抜けを可及的
に抑制することができる。またイオン交換膜とフッ素樹
脂系織物を積層一体化構造とした時の両者の密着度を高
めて両者の剥離を可及的に抑制することができる。 【解決手段】 フッ素樹脂を主体とする糸の表面を、イ
オン交換能を有する樹脂によって被覆する。このイオン
交換能を有する樹脂としては、フッ素樹脂系のイオン交
換体であることが望まれる。こうして本発明の上記糸は
樹脂によって被覆された状態となるので摩擦係数が高め
られ、織物とした時の糸同士の滑りが抑制されて目ズレ
や緯糸の引抜けが大きく抑制される。従ってこの糸を用
いて製織されたものは織組織欠陥を生じることが少な
い。尚このイオン交換能を有する樹脂としてフッ素樹脂
系のイオン交換体を用いて被覆したときは、フッ素樹脂
系糸との親和性が優れたものとなるので安定した被覆構
造が得られることになる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はイオン交換膜の支持
材料として有用なフッ素樹脂系織物及び当該織物の製織
材料として有用なフッ素樹脂系糸に関し、詳細には該織
物をイオン交換膜の支持材料として使用するときの糸間
の摩擦抵抗を高めて該織物における目ズレや緯糸引抜け
等の織組織不安定を生じない様に改良されたフッ素樹脂
系糸及び該糸を用いて製織された織物に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】カルボン酸基、スルホン酸基、りん酸基
等の酸基を有する含フッ素樹脂は優れたイオン交換膜素
材として賞用されているが、この様なイオン交換膜は使
用環境下における機械的強度を保持するための支持材料
と組合わせて使用するのが一般的である。その際支持材
料としては、イオン交換膜の素材であるフッ素樹脂膜と
の親和性という観点から、同系統のフッ素樹脂系糸を用
いた織物(以下フッ素樹脂系織物と言う)を使用するこ
とが検討されている。
【0003】例えば特公平4−58822には、重合原
料である含フッ素系モノマー混合液中にフッ素樹脂系織
物を含浸させた状態で上記重合原料を反応させ、その結
果として、フッ素樹脂系織物で補強されたフッ素樹脂膜
を得、次いでこのフッ素樹脂膜にイオン交換基を導入し
てフッ素樹脂系イオン交換膜を製造する方法が示されて
いる。
【0004】また特公昭63−31862には、重合原
料である含フッ素系モノマー混合液を用いて初期重合を
行い、未反応モノマーを含む粘稠な部分重合体を得た
後、この中にフッ素樹脂系織物を含浸させて更に重合を
完了させ、更にこの重合体にイオン交換基を導入して上
記と同様にフッ素樹脂系イオン交換膜を製造する方法が
示されている。
【0005】また特開昭62−131038には、多孔
質フッ素系樹脂フィルムとフッ素系樹脂織物を積層させ
た支持体を、重合原料である含フッ素系モノマー混合液
中に含浸させて重合反応を行わせ、更にイオン交換基を
導入するという同様の技術が開示されている。
【0006】あるいは更に特開平6−145370に
は、含フッ素樹脂系イオン交換液中にPTFE布帛を浸
漬してフッ素樹脂系イオン交換膜を製造する方法が示さ
れている。
【0007】しかしながら本発明者らの知見によれば、
上記従来技術において用いられるフッ素樹脂系織物自体
には次の様な問題があることがわかった。即ち上記織物
に用いられているフッ素樹脂系糸はそれ自身極めて摩擦
抵抗の低いものである為、製織後の取扱工程で糸同士が
滑り易く、わずかな外力によって目ズレなどの外観不
良を生じる、緯糸の引抜けによって織組織欠陥を生じ
る、といった問題があった。
【0008】そしてこれらの問題は、近年注目されてい
る多孔質フッ素樹脂[最も代表的にはポリテトラフルオ
ロエチレン(以下PTFEと言う)を高速延伸して製造
される多孔質PTFE:以下ePTFEと言う]系の糸
を用いた織物においても同様に認識することができる。
【0009】イオン交換膜を支持する筈の織物にこの様
な目ズレや緯糸の引抜け等が生じると、折角の複合膜に
強度的な欠陥部が含まれることとなり、イオン交換膜に
局部的な変形や薄膜化、更に進んではピンホールや破れ
などの欠損を生じ、イオン交換機能の不安定化やイオン
交換装置全体としての故障原因となり、極めて不具合で
ある。
【0010】またイオン交換膜にフッ素樹脂系織物を積
層して一体化構造を得るに際して、フッ素樹脂系糸の摩
擦係数が低いことに起因して両者間の密着度が不足気味
となり易く、繰返し曲げ応力によって密着不良部分から
剥離を生じるという問題もあった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたものであって、フッ素樹脂系織物
としたときの目ズレや緯糸の引抜けを可及的に抑制する
ことのできるフッ素樹脂系糸及び当該糸を用いて得られ
る織物の提供を目的とするものである。またイオン交換
膜とフッ素樹脂系織物を積層一体化構造とした時の両者
の密着度を高めて両者の剥離を可及的に抑制することが
できる様なフッ素樹脂系糸及び当該糸を用いて得られる
織物の提供を目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成すること
のできた本発明のフッ素樹脂系糸は、フッ素樹脂を主体
とする糸の表面が、イオン交換能を有する樹脂によって
被覆されたものであることを要旨とするものである。尚
このイオン交換能を有する樹脂としては、フッ素樹脂系
のイオン交換体であることが望まれるが、フッ素樹脂系
糸の摩擦係数を高めるという観点からすれば、各種樹脂
系のイオン交換体全般を採用することが可能である。こ
うして本発明の上記糸は樹脂によって被覆された状態と
なるので摩擦係数が高められ、織物とした時の糸同士の
滑りが抑制されて目ズレや緯糸の引抜けが大きく抑制さ
れる。従ってこの糸を用いて製織されたものは織組織欠
陥を生じることが少ない。結局本発明のフッ素樹脂系織
物は、これを構成するフッ素樹脂を主体とする糸の表面
が、イオン交換能を有する樹脂によって被覆されたもの
であることを要旨とする。尚このイオン交換能を有する
樹脂としてフッ素樹脂系のイオン交換体を用いて被覆し
たときは、フッ素樹脂系糸との親和性が優れたものとな
るので安定した被覆構造が得られることになる。
【0013】またこの織物をヒートプレス処理したもの
は、各糸の接合点で被覆樹脂同士の熱圧着構造が得ら
れ、織組織は一層安定したものとなる。あるいはこの織
物における糸を例えば有機溶媒によって膨潤状態とした
ものは、各糸の接合点で被覆樹脂同士の表面融着構造が
得られ、織組織は一層安定したものとなる。ヒートプレ
ス処理と膨潤化処理を組み合わせることも可能で、これ
により糸同士の結合一体性が一層高いものとなる。
【0014】上記各構成によって、イオン交換膜を支持
する織物は織組織の安定したものとなるから、イオン交
換膜にフッ素樹脂系織物を積層一体化構造としたものは
強度的な欠陥部のない複合膜となり、局部的な変形や薄
膜化を生じないだけでなく、ピンホールや破れなどの欠
損を生じない良好なイオン交換材料が提供されることと
なる。
【0015】またフッ素樹脂系織物における糸がプライ
マー処理されたことにもなるので、イオン交換膜とフッ
素樹脂系織物の密着度が改善され、繰返し曲げ応力が加
えられても、簡単に剥離を生じるということがない。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明において用いられるフッ素
樹脂系糸におけるフッ素樹脂としては、糸素材となり得
るフッ素樹脂の全てが包含される。この様なフッ素樹脂
としては、前記PTFEの他、ポリクロロトリフルオロ
エチレン(PCTFE),ポリビニリデンフルオライド
(PVDF),ポリビニルフルオライド(PVF),テ
トラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重
合体(PFEP),テトラフルオロエチレン−パーフル
オロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),テト
ラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)
等が非限定的に例示される。これらのうち最も有効に用
いられるのはPTFEである。
【0017】次にPTFEを用いて得られる糸(以下P
TFE糸状物と言う)について説明する。PTFE糸状
物を得る主な方法としては、従来、3つの方法が知られ
ている。第1の方法は、PTFEディスパージョン、ま
たはPTFEディスパージョンとアルギン酸やビスコー
ス等のマトリクス重合体との複合液を硫酸水溶液のよう
な凝固浴中に吐出させて糸状物とするエマルジョン紡糸
法(例えば、特開昭63−126911、特開昭64−
34407など)であり、第2の方法は、PTFEファ
インパウダーのペースト押出物を、押出助剤除去後に延
伸して得られる多孔質延伸PTFE(前記ePTFE)
のスリットテープを再延伸して糸状化させるスリットヤ
ーン法(例えば、特開平2−127509)であり、そ
して第3の方法は、PTFEのパーフルオロ炭素化合物
溶剤による溶液を、口金から不活性気体や不活性液体中
に押出して紡糸する紡糸法または溶液紡糸法(例えば、
特開平1−192812)である。
【0018】本発明は、これらPTFE糸状物の製法を
限定するものではないが、特に好ましいのは第2のスリ
ットヤーン法により得られたものである。そこでこの第
2の方法についていま少し詳しく説明すると、まずPT
FE粉末は押出助剤としての潤滑液(ミネラルスピリッ
トなど)と混合されてPTFEペーストにされる。そし
てこのペーストを押出成形した後、加熱乾燥により潤滑
液を除去し、得られた乾燥物をPTFEの融点以下の温
度で延伸し、フィブリルとノードからなる繊維質の連続
多孔質構造とする(例えば、特公昭51−18991な
ど)。次いで糸状化のために、この延伸多孔質化ePT
FEテープをカッター等で長手方向に細くスリットし、
必要に応じて捻糸等を行い、糸状物とする。
【0019】前記した特開平2−127509に記載の
方法は、前記した第2の方法で得られた比較的繊維度
(デニール数)の大きい糸状物を、さらにPTFE融点
以上の温度、例えば350〜420℃ので再度2〜6倍
(元の押出物からすると1.5〜10倍)の高倍率に再
延伸することにより、見かけ比重2.15〜2.30、
配向度0.9以上、結晶化度95%以上、引張強度4〜
8g/dのPTFE糸状物を得るものである。あるいは
上記第2段目以降の再延伸時の延伸温度を融点直下の一
定範囲に特定することにより、一層優れた引張強度及び
破断伸度を有するものとすることができる(特開平7−
102413)。
【0020】この様なスリットヤーン法により得られた
糸状物は、前述の様に連続多孔質構造であるから、この
糸状物の表面にイオン交換能を有する樹脂を被覆する
と、この樹脂の一部が連続多孔質構造の内部に浸透して
アンカー効果を発揮するので、両者の一体性が著しく高
いものとなるし、またこの糸状物を用いて製織した織物
を支持体としてこれにイオン交換樹脂を積層した時の支
持体とイオン交換樹脂の密着一体性が向上する。なお本
発明における上記糸状物は、フッ素樹脂系繊維のみから
なるものを基本とするが、フッ素樹脂系繊維の特性発揮
に悪影響を及ぼさない範囲で他の合成繊維や天然繊維を
組合わせて合糸あるいは紡績糸としたものを排除する意
図はなく、また糸自体の構成として、収束糸、紡績糸、
撚糸、交絡糸、芯鞘構造糸、異型断面糸等が自由に採用
され得る。
【0021】次に本発明に用いるイオン交換能を有する
樹脂について説明する。この様な樹脂の種類についても
前述のごとく本発明は特に限定するものではないが、カ
ルボン酸基、スルホン酸基、りん酸基等の酸基を有する
含フッ素樹脂(以下含フッ素イオン交換体と言うことが
ある)であることが最も推奨される。含フッ素樹脂とし
てはホモポリマー,コポリマーの如何を問わないが、好
ましいものとしては、次の様なものが例示される。
【0022】
【化1】
【0023】上記式中、X,X’はフッ素,塩素,水素
またはトリフルオロメチルを示し、Aはカルボン酸基,
スルホン酸基,りん酸基,それらの塩,または加水分解
によってそれらに導き得る基、Yは以下の基を示す。
【0024】
【化2】
【0025】(式中、Z,Z’は、フッ素または炭素数
1〜10のパーフルオロアルキル基、m,nは1〜10
の整数を示す)
【0026】上記好適な含フッ素樹脂を構成する(A)
/(B)のモル比は、適切なイオン交換量(例えば0.
5〜2.0meq/g )となる様に調節することが望まし
い。上記好適な含フッ素樹脂における更に好ましいもの
としては、パーフルオロ重合体が示され、その具体例と
しては、テトラフルオロエチレンに対して次の様なモノ
マーを共重合させたものが挙げられる。 CF2 =CFOCF2 CF(CF3 )OCF2 CF2
2 F CF2 =CFO(CF22-5 SO2 F CF2 =CFO(CF21-5 COOCF3 CF2 =CFOCF2 CF(CF3 )O(CF22-3
COOCF3 また更に、上記共重合体に、主として結晶性を調整する
目的で、パーフルオロビニルエーテルやパーフルオロア
ルケン類を第3成分として共重合に組込んでも良い。
【0027】また上記の様なパーフルオロ共重合体から
なるイオン交換体は、1000当量以下のパーフルオロ
スルホン酸のポリマーまたは1000当量以下のパーフ
ルオロカルボン酸のポリマーであることが特に好まし
い。具体的には、デュポン社の「ナフィオン」や旭硝子
社の「フレミオン」等が例示される。
【0028】イオン交換体層は、イオン交換基の種類及
び/又は交換容量の大きさを変えた二種以上の含フッ素
樹脂の積層又はブレンド層から形成してもよい。即ち、
カルボン酸基をもつ含フッ素樹脂とスルホン酸基をもつ
含フッ素樹脂との二種以上の組合せ、或は同じ種類のイ
オン交換基で容量を変えた二種以上の含フッ素樹脂の組
み合わせを使用し、夫々の含フッ素樹脂をブレンドして
イオン交換体層を形成してもよいし、或は夫々の含フッ
素樹脂を予めフィルム状とし、両フィルムを好ましくは
加熱圧着により積層してイオン交換体層を形成すること
もできる。またイオン交換体層は、含フッ素樹脂フィル
ムの片面側又は両面側のイオン交換基、例えばスルホン
酸基をカルボン酸基に転化して形成することもできる。
【0029】二種以上の含フッ素樹脂からイオン交換体
層を形成する場合において、本発明の隔膜を塩化アルカ
リ水溶液の加水分解に使用するときは、陰極側に面する
含フッ素樹脂層は、高濃度の水酸化アルカリ溶液を高電
流効率で製造するという主旨から、電解下において小さ
い含水率を与えることのできるカルボン酸基を有する含
フッ素樹脂から形成するのが好ましい。しかし場合によ
っては、スルホン酸基又はリン酸基をもつ含フッ素樹脂
からこれを形成することもできる。
【0030】次に上記した様なフッ素樹脂系糸を上記し
た様な含フッ素イオン交換体によって被覆する方法につ
いて述べる。但し被覆方法自体は本発明を限定するもの
ではなく、以下の説明は単に代表的な方法を示すものに
過ぎない。
【0031】最も一般的な被覆方法は、含フッ素イオン
交換体を、良溶媒、例えばエタノール等のアルコール系
溶媒に5〜15%程度の濃度になる様に溶解し、この溶
液をフッ素樹脂系糸に塗布したり、あるいはこの溶液に
フッ素樹脂系糸を浸漬する等して、フッ素樹脂系糸の表
面に含フッ素イオン交換体を付着させる。この際含フッ
素イオン交換体の一部はフッ素樹脂系糸の内部に浸透す
るが、特に前記したePTFE糸を用いた時は、その連
続多孔質空間内に多くの含フッ素イオン交換体が侵入
し、そのアンカー効果によって強固な付着状態が得られ
る。
【0032】上記付着状態が得られた後、使用溶媒の沸
点を考慮しつつ50〜150℃程度の温度で乾燥するこ
とにより、含フッ素イオン交換体によって被覆されたフ
ッ素樹脂系糸を得る。被覆層の厚みは特に限定されず、
わずかでも被覆層が形成されておればそれに対応した摩
擦係数の増大を招来するが、0.01μm未満である
と、裸のフッ素樹脂系糸における低摩擦係数の改善度合
いが僅かであり、好ましくは、0.01μm以上の被覆
が望まれる。他方上限については10μmを超える辺り
から糸としてのしなやかさが失われ始め、また被覆層の
脱落も起こり易くなるので、10μm以下に抑えておく
ことが望ましい。
【0033】上記の説明によって本発明に係るイオン交
換能を有する樹脂によって被覆された含フッ素樹脂系糸
が得られ、この糸は、その用途に応じたデニールで提供
されるが、イオン交換膜の支持体用として特に好ましい
のは5〜400デニールのモノフィラメントまたはマル
チフィラメントである。
【0034】この糸は次いで製織されて織物とされる
が、糸使いとしては、織り密度が1〜100本/インチ
程度となることが推奨され、またその織組織としては、
絡み織り、平織り、綾織、朱子織り等が自由に選択され
る。なお本発明の織物は、上記本発明の糸のみからなる
ものの他、本発明の目的にとって悪影響を示さないもの
である限り、上記本発明の糸に他の合成繊維あるいは天
然繊維からなる糸を組み合わせたものであっても良い。
【0035】尚上記においては、あらかじめ含フッ素樹
脂系糸にイオン交換能を有する樹脂を被覆し、ここに得
た糸を用いて製織するという本発明の基本的手順につい
て説明したが、希望であれば、含フッ素樹脂系糸を用い
て先に製織し、しかる後上記で得た布帛にイオン交換能
を有する樹脂を被覆するという手順を実施することも可
能である。この場合も、従来技術の項で説明した様な方
法によって得られるものに比較して良好な結果を享受す
ることができる。しかしながらこの手順を採用した時
は、径糸と緯糸の交点近傍でイオン交換能を有する樹脂
が幕を張り、均一でムラのない被覆物を得ることが困難
になること、目ズレ防止の効果がやや劣ること、被覆対
象の織物の大きさに対応した大きな塗布装置や乾燥装置
が必要になり設備が全般的に大掛かりになること、とい
った問題もあり、品質の安定、生産性、装置コスト等に
おいて見劣りする。
【0036】ともかくも、こうして得られた織物は、摩
擦係数の高められた前記本発明の糸を用いているもので
あるから、織物としての目ズレや緯糸の引抜けといった
不具合を生じないから、取扱プロセスにおいて安定した
織組織を維持するものであるが、より一層の安定を望む
場合には、この織物をヒートプレス処理に付して各糸の
接触点において糸同士を熱圧着させるか、あるいは被覆
層として用いたイオン交換樹脂に対する良溶媒を適用し
て該樹脂を膨潤させ糸同士の融着体を得る等の処理を、
単独あるいは組合わせて付加することも可能である。組
合わせて付加する場合のそれらの処理の実施順序は特に
限定されないが、膨潤処理による融着一体化を行った
後、ヒートプレス処理に付して熱圧着を行う手順を採用
することが特に推奨される。
【0037】次にこの織物の用途について説明する。そ
の用途は特に制限しないが、最も代表的なものは、各種
溶液の電気分解用隔膜として有用なイオン交換樹脂の支
持体としての利用である。この場合、上記本発明の織物
をイオン交換樹脂と複合化する手段としては、上記従来
技術の項において説明した様に、該織物を重合反応系に
浸漬させたり、イオン交換樹脂の溶媒溶液や溶融液中に
浸漬させる方法でも良いが、本発明織物の特性、即ち使
用糸の表面にイオン交換樹脂が被覆されているという構
成に基づく効果を最大限有効に発揮させる手段として
は、本発明織物にイオン交換樹脂膜を積層した後、イオ
ン交換樹脂膜の軟化点または融点以上の温度をかけて熱
圧着する方法が推奨される。この方法であれば、織物に
用いた糸表面に被覆されていたイオン交換樹脂も同時に
軟化または溶融するので、イオン交換樹脂膜と良好な親
和状態で一体化し、使用時に受ける外力等によって簡単
に剥離する様なことはない。尚この効果は、本発明の糸
状物に被覆されるイオン交換樹脂を、積層されるイオン
交換樹脂膜と同一または類似材質とした時に最も顕著に
発揮される。
【0038】こうして提供されるイオン交換体は、これ
を例えば電気分解における隔膜として使用すると、含フ
ッ素樹脂系糸、特に多孔質化されたフッ素樹脂系糸の連
続多孔質空間内にイオン交換樹脂の一部が含浸されてい
るので、隔膜としての電気抵抗が減少し、電気分解にお
ける電流効率の向上に寄与することができる。
【0039】
【実施例】
実施例1 PTFE延伸糸(50デニール)を、旭硝子社製のフレ
ミオンFSS−1(商標:パーフルオロイオン交換ポリ
マー)の9%エタノール溶液に含浸させ、次いで150
℃,10秒間の乾燥を行うことにより、イオン交換ポリ
マー被覆ePTFE糸を得た。
【0040】実施例2 上記で得たイオン交換ポリマー被覆ePTFE糸を用
い、目開き80メッシュの平織物とした。
【0041】実施例3 上記で得た目開き80メッシュの平織物を、ヒートプレ
スロールを用いて、170℃,2.5kg/cm2 の条
件でヒートセットすることにより、糸同士の結節点を熱
圧着した。
【0042】実施例4 実施例2で得た目開き80メッシュの平織物を、100
%エタノールに室温で30〜60秒浸漬させて糸を膨潤
させた。次いでこれを150℃,3分の条件で熱風乾燥
することにより、糸同士の結節点を融着した。
【0043】実施例5 実施例4で得た糸同士の結節点が融着された平織物を、
更にヒートプレスロールを用いて、170℃,2.5k
g/cm2 の条件でヒートセットすることにより、糸同
士の結節点を熱圧着した。これにより、糸同士の結節点
を一層強固に一体化せることができた。
【0044】実施例2〜5で得た各織物、及び比較の
為、イオン交換膜ポリマーで被覆していないePTFE
糸を用いて得た目開き80メッシュの平織物(比較例)
について、目ズレの起こし易さ、並びに緯糸の引抜き強
度を調べた。結果は表1に示す通りである。尚目ズレの
起こし易さは、織物同士をこすり合わせた時の目ズレの
状態で評価した。また緯糸の引抜き強度は、幅(経糸方
向)10mm,長さ(緯糸方向)100mmに切り取っ
たサンプル布を用い、これから緯糸1本の端部をを若干
引出して把持し、これを50mm/minで引抜き出し
た時の引張強度で評価した。
【0045】
【表1】
【0046】表に示された結果から明らかな様に、本発
明のイオン交換膜ポリマー被覆糸を用いた織物では、目
ズレが極めて少なくなり、特にヒートセット処理した
り、膨潤処理を起こしたもの、更には膨潤処理とヒート
セット処理を組み合わせて一層強固に一体化させたもの
では、目ズレを起こすことが全くなくなり、また緯糸の
引抜き強度も本発明の処理により顕著に改善されたこと
が分かる。
【0047】
【発明の効果】本発明は上記の様に構成されているの
で、ここに得られたフッ素樹脂系糸は、摩擦係数が高め
られた。その結果、これを用いて製織したフッ素樹脂系
織物は、目ズレや緯糸の引抜けを可及的に抑制すること
ができ、織組織の安定した織物が提供されることとなっ
た。その為イオン交換膜の支持材料として用いた時に
は、強度的な欠陥部のない複合イオン交換体となり、局
部的な変形や薄膜化を生じないだけでなく、ピンホール
や破れなどの欠損を生じない良好なイオン交換材料が提
供されることとなる。また該フッ素樹脂系織物は、その
糸がイオン交換樹脂によってプライマー処理された様な
効果を発揮するので、イオン交換膜とフッ素樹脂系織物
を積層一体化構造とした時の両者の密着度を高めて両者
の剥離を可及的に抑制することができる様になった。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フッ素樹脂を主体とする糸の表面が、イ
    オン交換能を有する樹脂によって被覆されたものである
    ことを特徴とするフッ素樹脂系糸。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の糸を用いて製織された
    ものであるフッ素樹脂系織物。
  3. 【請求項3】 フッ素樹脂系織物を構成するフッ素樹脂
    を主体とする糸の表面が、イオン交換能を有する樹脂に
    よって被覆されたものであることを特徴とするフッ素樹
    脂系織物。
  4. 【請求項4】 請求項2または3に記載の織物がヒート
    プレス処理されたものであるフッ素樹脂系織物。
  5. 【請求項5】 請求項2または3に記載の織物における
    被覆層が膨潤状態を示すものであるフッ素樹脂系織物。
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