JP3108644B2 - フッ素樹脂繊維シートの製造方法 - Google Patents

フッ素樹脂繊維シートの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気絶縁材料に用い
ることができるフッ素樹脂繊維シートの製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】フッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、耐候
性、不燃性、電気絶縁性、非粘着性等、多くの優れた特
性を有しており、産業分野に広く利用されている。中で
も電気絶縁性、耐熱性の点からフッ素樹脂を溶融成型、
延伸処理したフィルムが多く利用されている。現在使わ
れているフィルムは良好な機械的強度を有し、均一で安
定した良質のものが得られている。
【0003】フッ素樹脂成型品にはフィルムの他に多孔
性を有する繊維成型品、フィルムを延伸処理して多孔性
を持たせたメンブレンフィルム等がある。メンブレンフ
ィルムは孔径数μmの微細孔を多数有し、且つ厚さ数十
μmの薄葉シートで多くの産業分野に利用されている
が、薄葉であるため強度が弱い。その他多孔性を有する
繊維焼結成型品として、特開平03−130496号で
は湿式抄造法によって成形された未延伸ポリテトラフル
オロエチレン系重合体繊維シートを加熱焼結し、しかる
後少なくとも縦方向もしくは横方向に延伸処理すること
により得られるフッ素樹脂繊維薄葉シートについて示さ
れている。この方法により作製されたシートは不規則方
向に繊維が配向し均一な孔径分布を有するシートで、且
つ延伸処理することにより厚さが0.1mm以下の薄葉
シートを作成することができる。
【0004】しかし、この方法だけでは0.1mm以下
の厚さで、同時に加工上或いは使用上の諸条件に十分に
対応し得るだけの寸法安定性、機械的強度を付与するに
は技術上未完成であった。その後、鋭意検討を重ねた結
果、前記特許に開示した技術的思想を進めて、さらに未
延伸焼結シートを薄葉化のために十分に延伸処理を施し
た後に、この焼結後延伸シートの伸びを低減するため、
延伸処理後にアニールを施し、その際、延伸方向に自然
に発生する収縮応力に対して若干の張力をかけながら十
分に応力緩和を施すことによって加工時の寸法安定性を
改善することができた。
【0005】しかし該シートを電気絶縁材料として使用
する場合、シートが持つ多孔性から従来のフィルム材に
比べて誘電特性が向上するとの期待はあるが、その他の
特性として例えば電線被覆用シートではシート幅を十数
mm又は数mmに加工してこれを導線に被覆するとき、
被覆加工工程では寸法安定性が保持できる適当な伸び
と、被覆時の機械的な引張加工で切れることのないよう
な引張強度を有していなければならない等の一定の物理
的特性が求められ、また電線としての使用時には電気絶
縁性の他に高温に耐えうる寸法安定性等が求められる。
該シートは未延伸フッ素樹脂繊維シートを常温で延伸す
る工程で得られるため、熱が加わると収縮して元の延伸
前のシートに復元してしまう等の問題があり、電気絶縁
性シートとしては物理的特性を十分満足するまでには至
っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如き諸
問題を解決し、フィルム材と同等もしくはそれ以上の物
理的強度を有し、通常のフッ素樹脂系フィルム材よりも
誘電特性の優れたフッ素樹脂繊維多孔質シートの製造方
法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の概要は、繊維径
1〜50μmの任意の未延伸フッ素樹脂繊維を用い、こ
れを網目状、格子状、又は不規則方向に配向してシート
を作成し、繊維の交絡点を加熱融着した後、該シートが
有する伸びに対する延伸率25〜95%まで少くとも縦
軸方向に延伸処理し、更にアニールすることを特徴とす
るフッ素樹脂繊維シートの製造方法である。
【0008】従来の技術によればフッ素樹脂をフィルム
成形後延伸処理することにより製品化されるが、本発明
ではフッ素樹脂のみで構成された繊維が互いに熱融着し
てシート化されており、シート内には微細で均一な空孔
を有し、さらに低密度であることから電気絶縁性に優れ
ており、その後延伸処理することで引張強度をフィルム
状シートと同等又はそれ以上に付与することを特徴とす
る。
【0009】本発明に用いるフッ素樹脂繊維は熱可塑性
フッ素樹脂から作成されるもので、その主成分としては
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフル
オロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共
重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・パーフル
オロアルコキシエチレン共重合体(PFE)、テトラフ
ルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体
(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロ
プロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重
合体(EPE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共
重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(P
VDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTF
E)、ポリビニルフルオライド(PVF)、クロロトリ
フルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等
が挙げられるが、フッ素樹脂から作られたものであれば
これに限定されず、且つこれらフッ素樹脂の2種類以上
を適当に組み合わせて使用してもよい。またこれらフッ
素樹脂の単量体をエチレン、プロピレン、イソブチレ
ン、スチレン、アクリロニトリルなどと共重合させたも
のであってもよいが、特にテトラフルオロエチレン成分
を90モル%以上、好ましくは95%以上含有する重合
体は汎用のポリテトラフルオロエチレン系重合体として
挙げられ、電気絶縁性及び価格面からも好適に使用され
ている。
【0010】また本発明で用いられるフッ素樹脂繊維の
繊維径は1〜50μmで好ましくは5〜35μmである
ことが必要で、細い繊維径の繊維を用いてシート化した
場合、より均一なシートが得られるが、極細繊維の紡糸
は技術的に難しく高価なものとなってしまい、逆に繊維
径が太い繊維を使用した場合、シートに含まれる繊維本
数が少なくなるため繊維間の交絡点が少なくなることか
ら、延伸処理を行うとシートが切れやすくなり、繊維の
毛羽立ち、地合むら等を生じて均一なシートが得られな
くなる。本発明ではフッ素樹脂繊維の繊維径を1〜50
μmで好ましくは5〜35μmと限定することで、特開
平03−130496号では得られなかった良好な物理
的特性を有するフッ素樹脂繊維シートを作製することに
より、電気絶縁材料として使用することを可能にした。
そのために求められる電気絶縁特性及び延伸条件等より
繊維径を選択して使用する。
【0011】フッ素樹脂繊維の製造方法は、まず紡糸原
液としてビスコースとPTFE系重合体含有ディスパー
ジョンとの混合液を用い、これを凝固浴中に吐き出し凝
固させた後、乾燥することで得られる未延伸繊維が用い
られる。繊維は未延伸繊維でなければならないが、作製
された繊維の繊維長は長繊維状、短繊維状又はそれらの
混合物等何れのものでも良いが、後のシート化の方法に
より繊維長を選択して使用する。
【0012】フッ素樹脂繊維のシート化は、乾式法、湿
式法及び織布の何れの方法でもよい。乾式法は前述の紡
糸した繊維をそのまま成形加工、焼結するもので、繊維
の繊維長は長繊維状、短繊維状又はそれらの混合物等何
れのものでも良い。織布は平織り、綾織り等何れの方法
でもよいが、径の細い繊維を使用し緻密に織り上げたも
のが最も地合がよく、その後の延伸加工時地合むらが発
生しにくい。しかしシートの地合、厚さ、シート特性の
ばらつき、その後の延伸加工性等を考慮に入れた場合、
シート化には後述する湿式法が好ましい。その湿式法は
水中にフッ素樹脂繊維を分散しそれを抄紙するものであ
るが、水を媒体とするものであるのでフッ素樹脂繊維の
分散や混合は容易に行うことができ、界面活性剤や粘着
剤等の添加剤により繊維の分散性をコントロールするこ
とが可能であり、均一な地合のシートを得るには大変有
効な手段である。また湿式抄造法には長網式と円網式等
があり何れも適用可能であるが、円網式は長網式に比べ
て繊維が縦方向に並びやすく、後の延伸工程で1軸方向
に地合を崩すことなく延伸することができる。湿式法で
用いられる繊維の繊維長は、20mm以下、好ましくは
10mm以下の短繊維状であることが望ましく、繊維長
が長くなると水中での繊維の分散性が悪くなり地合の良
いシートが得られない。また脱水乾燥してシート化する
のであるが、未延伸の柔軟性と表面性、密着性あるいは
該未延伸糸中に含まれる紡糸用助剤の接着性機能によ
り、ハンドリング可能な強度を持つシートとなるため、
自己融着性機能を有する物質を混合して使用する必要が
ない。
【0013】前記シートを同フッ素樹脂の融点以上の温
度で加熱処理して繊維間を熱融着させる。このときシー
トに含まれるビスコース等のフッ素樹脂繊維以外の助剤
が炭化するため、シートが褐色もしくは黒色に変色す
る。さらに同フッ素樹脂の融点以下の温度で20時間以
上加熱処理することにより、フッ素樹脂以外の樹脂残渣
を空気酸化して除去し、フッ素樹脂100%のシートと
する。
【0014】延伸方法としては色々な方法があり特に指
定するものではないが、一般的に簡易な方法として例え
ば縦軸方向の延伸には近接ローラー延伸、横軸方向の延
伸には波形溝付ローラー延伸等があり、所望のフッ素樹
脂繊維シートが得られる。
【0015】縦軸延伸においては元のフッ素樹脂繊維シ
ートが均一な地合を有するものであっても、繊維が網目
状、格子状、又は不規則方向に配向したものであるた
め、シートには部分的に若干の厚薄が認められるところ
もあるので、ローラー間でテンションをかけて延伸する
とき実際に延伸される位置は延伸応力がかかる場所をロ
ール間の狭い範囲に限定する方が望ましい。なぜならば
狭い範囲の近接延伸が広範囲延伸より地合むらによる延
伸率のばらつきを減少することができるからである。
【0016】横軸方向の延伸は上下1対のニップロール
で、ロールの径が軸方向に山と谷になっている波形溝付
ローラーを用い、丸山型(丸みを有する山の部分)、丸
谷型(丸みを有する谷の部分)の溝がかみ合い、その間
にシートを通過させることにより横軸方向に延伸したシ
ートが得られる。延伸処理は加熱しながら行い、加熱方
法はヒーター、蒸気雰囲気、温水浸漬等何れの方法でも
良い。また常温で延伸してもよい。ただ低い温度で延伸
処理を行うと大きい力が必要であり、しかもこの力が均
一に行き渡らず応力集中を起こし局部的に組織を破壊し
たり、地合むら、耳部の弛み等が起こりやすくなり、幅
方向に長いシートを延伸するとその影響は大きく横に波
打ったようなシートになる。延伸速度は低速度延伸がよ
く、急激な延伸は延伸後若干収縮を来すが、低延伸では
収縮も小さいので延伸倍率、延伸加工速度、延伸処理回
数をコントロールすることにより所定のフッ素樹脂繊維
シートが得られる。
【0017】本発明でいう延伸処理は、フッ素樹脂繊維
シートが有する伸びに対する延伸率25〜95%が必要
であり、より好ましくは35〜90%がよく、本発明に
よる実施例1のフッ素樹脂繊維シートをこれに当てはめ
た場合、延伸率は37.5%,50%,75%に相当す
る。なお、ここで本発明で定義する「フッ素樹脂繊維シ
ートが有する伸びに対する延伸率」について説明する。
表1および表2に示したとおり、該延伸率は延伸処理の
大きさを表す尺度で、実施例1の37.5%の場合は、
フッ素樹脂繊維シートが有する伸び(未延伸時の伸び)
すなわち800%に対してその37.5%(延伸率)を
延伸したことを意味する。従って、表1および表2にお
ける倍率は、8×0.375=3により未延伸シートの
縦軸方向に3倍延伸したことを意味する。そして表1の
「伸び(%)」の欄において、延伸率37.5%に延伸
処理した本発明のシートの伸びが120%であることに
なっている。因みに、実施例2および3における「フッ
素樹脂繊維シートが有する伸び」は各々、680%,3
20%に相当する。
【0018】本発明においては、延伸率が高いほど引張
強度が大きく、伸びが抑えられるため加工性に富むシー
トが得られる。シートの延伸倍率はそのシートの坪量、
繊維の繊維径、繊維長さ、密度、繊維間が熱融着して結
着している交絡点の数等、シート強度に関係する要因に
よりそれぞれ異なり、その後の加工工程で変形しない程
度の寸法安定性を有するまで延伸処理を行う必要があ
る。25%未満では延伸構造が不均一となり十分な引張
り強度が得られない。一方、95%を超えるとシートを
構成する均一な地合いが崩壊し、引張り強度、裂断長等
の物理強度の低下をきたす。
【0019】アニール処理では加熱による寸法安定性及
び延伸によるシートの歪みの修正を行うが、フッ素樹脂
を電気絶縁用として用いる場合高温域での使用が主な目
的であるため、高温域での寸法安定性を保持する必要が
ある。そのためには延伸処理後の熱処理温度すなわちア
ニール温度をフッ素樹脂の融点(230〜300℃)以
下の温度範囲でできるだけ融点に近い温度にすることが
好ましく、温度がシート全体にかかるよう加工速度を保
つ必要がある。またアニール処理を行うと延伸したシー
トが収縮する方向に力が働き、応力がある一部にかかり
やすく地合むら、ひずみ、断紙等の原因となるため、ア
ニール槽の前後ロールに若干の速度差をつけ後部ロール
を前部ロールの1〜25%好ましくは1〜15%程度遅
い速度に設定し、シートの断紙、ひずみを抑制し、延伸
処理で一旦伸ばしたシートを若干収縮させることにより
シートの均一性を復元させる。
【0020】このようにして得られたフッ素樹脂繊維シ
ートは密度が1.0g/cm3 以下、裂断長が1.0k
m以上、250℃、60分加熱したときの寸法変化が5
%以下の物理特性を有し、耐熱性、電気絶縁性(特に誘
電特性)に優れた特徴を有する。
【0021】
【発明の実施の形態】
実施例1 ポリテトラフルオロエチレン樹脂87重量部とビスコー
ス13重量部からなる未延伸短繊維状(繊維径15μ
m、繊維長6mm)PTFE繊維(東レファインケミカ
ル社製、商品名トヨフロン)を水で分散し、これを円網
抄紙機に供給し、抄紙、乾燥して湿式法によるシートを
作製した。該シートを400℃で4分間加熱処理して焼
結させ、さらに325℃で24時間加熱処理して炭化物
を空気酸化して除去し、坪量が105g/m2 、厚さが
135μmの焼結シートを作製した。次に該焼結シート
を縦軸方向に37.5%,50%,75%に延伸した
後、さらにアニールの際延伸方向に自然に発生する収縮
張力を掛けながら300℃で10秒間熱処理し、本発明
の電気絶縁性フッ樹脂素繊維シートを作製した。得られ
たフッ素樹脂繊維シート及び延伸前の焼結シートの諸特
性を表1に示す。
【0022】実施例2 実施例1と同様の要領で、坪量が240g/m2 、厚さ
が300μmの焼結シートを作製した。その後該焼結シ
ートを縦軸方向に44%および59%延伸し、さらに実
施例1と同様300℃、10秒の熱処理を行い、本発明
の電気絶縁性フッ素樹脂繊維シートを作製した。得られ
たフッ素樹脂繊維シート及び延伸前の該焼結シートの諸
特性を表1に示す。
【0023】実施例3 実施例1と同様の要領で、繊維径35μm繊維長6mm
の未延伸短繊維状PTFE繊維を使用してシート化し、
坪量が125g/m2 、厚さが180μmの焼結シート
を作製した。その後該焼結シートを縦軸方向に62.5
%延伸し、さらに延伸方向に張力を掛けながら300℃
で10秒間熱処理し、本発明のフッ素樹脂繊維シートを
作製した。得られた電気絶縁性フッ素樹脂繊維シート及
び延伸前の焼結シートの諸特性を表1に示す。
【0024】比較例1 実施例1と同様の要領で、繊維径55μm,繊維長6m
mの未延伸短繊維を使用してシート化し、坪量が125
g/m2 、厚さが185μmの焼結シートを作製した。
その後該焼結シートを48.5%まで延伸し、シートを
作製した。一方これと同じ繊維径55μm,繊維長6m
mの未延伸短繊維を使用してシート化し、その後該シー
トを焼結後のシートの坪量が83g/m2 、厚さが12
4μm、焼結後更に延伸処理を66.5%まで行ったシ
ートを作製した。これら2種類のシートをさらに延伸方
向に張力を掛けながら300℃で熱処理し、比較例とな
る2種類の電気絶縁性フッ素樹脂繊維シートを作製し
た。得られたフッ素樹脂繊維シート及び延伸前の焼結シ
ートの諸特性を表1に示す。
【0025】比較例2 実施例1で作製した焼結シートを、75%延伸したのみ
で、さらに延伸方向に張力を掛けながら熱処理すること
なく、そのままの状態に止めて比較用のフッ素樹脂繊維
シートを作製した。得られたフッ素樹脂繊維シートの諸
特性を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】比較例3 実施例1で作製した焼結シートを、延伸処理20%で行
なった以外は実施例1と同様に延伸方向に張力を掛けな
がら熱処理を施して比較用のフッ素樹脂繊維シートを作
製した。
【0028】比較例4 実施例1で作製した焼結シートを、延伸処理98%で行
った以外は実施例1と同様に延伸方向に張力を掛けなが
ら熱処理を施して比較用のシートを作製した。これらの
結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】表1、表2に示した特性値は以下の規準で
測定した。 ・裂断長 :JIS P8113に準拠 ・引張強さ:試験片15mm幅における強さ。JIS
P8113に準拠 ・伸び :JIS P8132に準拠 ・加熱寸法変化率:シートを250℃、60分加熱した
時の加熱寸法変化率。(%) {(加熱後のシート長さ)÷(加熱前のシート長さ)−
1}×100
【0031】
【表3】
【0032】また、表3に実施例1の未延伸と延伸率7
5%のシートと、比較用のFEPフィルム、PFEフィ
ルムの誘電率と、坪量、厚さ、密度および裂断長のデー
タを示した。なお、誘電率の測定条件は下記のとおりで
ある。 ・測定装置──誘電体損測定装置(安藤電気社製) ・測定条件──温度20℃ 測定面積38mmφ ・計算式 ──ε=CX/CA, 但しεは誘電率、CXは試料の静電容量、 CA=〔S(測定面積)×0.0885〕/T(厚さ)
【0033】表1から明らかな通り、実施例1,2及び
3における延伸前の焼結シートでは、裂断長は0.5k
m以下で、且つ伸びが大きいため加工時にシートが切れ
やすくまたシートが伸びて変形しやすく、十分な加工強
度を有していないのに対して、これを延伸処理すること
により不規則方向に配向した繊維が延伸方向に配向し、
延伸方向の裂断長が1.0km以上で未延伸シートの数
倍の引張強度を得、それに伴い伸びも低下することが判
る。比較例1では55μmの繊維径を有するフッ素樹脂
繊維を使用して得たシートであるが、引張り強さは低下
した。これは太い径の繊維を使用すると繊維の交絡点が
少なくなるため延伸処理を行うと交絡点に掛かる力が大
きくなり、交絡点から繊維が切れやすくなるためシート
が切れやすく、低延伸で処理を行ってもシートの地合、
シート特性等を乱すことになるためである。比較例2で
は180℃でアニール処理を行ったが、フッ素樹脂は耐
熱性があることから電気絶縁用として用いる場合、高温
での使用が主な目的となるため、寸法安定性は重要であ
り、このシートはこれを満たしていない。
【0034】表2から明らかなとおり、実施例1で作製
した焼結シートを、比較例3の20%延伸した場合(2
5%未満),延伸むらが生じやすく、物理的特性では裂
断長が1.0Kmより低く、更に伸びが非常に大きいこ
とから、加工する際シートが切れやすく、寸法安定性に
乏しい。また、比較例4の98%延伸した場合(95%
超越)延伸倍率が非常に大きいため、繊維間が熱融着し
て結着している交絡点から繊維が切れ易くなる。そのた
め、物理的強度が低下するのに加え、均一なシート地合
がくずれるので、坪量、厚さ、密度、空孔の大きさ、強
度が不均一になり、さらに延伸時に穴、繊維の毛羽立
ち、断紙等が起こり易くなる。また、加熱寸法変化も高
めになるため、延伸倍率が大きくなり過ぎるので、安定
したシートが得られない。
【0035】また、表3から明らかなとおり、実施例1
の延伸率75%の本発明のシートは、未延伸および従来
のフッ素樹脂フィルム(FEP,PFE)に比較して優
れた低誘電率を示し、かつ裂断長も大きな強度を示し
た。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、繊維径1〜50μmの
未延伸繊維が互いに融着してなるフッ素樹脂繊維シート
を、該シートが有する伸びの25〜95%縦軸方向に処
理したことにより物理的強度を有し、さらに低密度でシ
ート内には微細であり均一な空孔を有することからフィ
ルム材と同等以上の誘電特性の優れたフッ素樹脂シート
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の未延伸のシートの電子顕微鏡写真
(200倍)
【図2】実施例1の75%延伸のシートの電子顕微鏡写
真(200倍)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維径1〜50μmの任意の未延伸フッ
    素樹脂繊維を用い、これを網目状、格子状、又は不規則
    方向に配向してシートを作成し、繊維の交絡点を加熱融
    着した後、該シートが有する伸びに対する延伸率25〜
    95%まで少くとも縦軸方向に延伸処理し、更にアニー
    ルすることを特徴とするフッ素樹脂繊維シートの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 延伸処理後のアニール温度がフッ素樹脂
    の融点(230〜300℃)以下の温度であることを特
    徴とする請求項記載のフッ素樹脂繊維シートの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 未延伸フッ素樹脂繊維シートの製造方法
    が湿式抄造法によることを特徴とする請求項記載のフ
    ッ素樹脂繊維シートの製造方法。
  4. 【請求項4】 延伸後のシートの密度が1.0g/cm
    以下、裂断長が1.0km以上、250℃,60分の
    加熱後の寸法変化率が縦、横共に5%以下であることを
    特徴とする請求項記載のフッ素樹脂繊維シートの製造
    方法
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