JPH1054391A - 遠心羽根車 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 遠心応力、伝達トルク、温度上昇等に対して
強く、安定して作動する遠心羽根車を提供すること 【解決手段】 羽根車の材質より高い強度、弾性率を持
つ材質で作った円盤状部材、又は羽根車駆動円板を羽根
車の背面に配設、固着し、この羽根車背面と円盤状部材
等の当接面には空間を設けて遠心羽根車を構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、排気ガスタービン
過給機等に適用される空気を圧縮する遠心圧縮機の羽根
車に関する。

【０００２】

【従来の技術】図３及び図４に基づいて、従来のものを
説明する。図３は従来の空気を圧縮する遠心羽根車の上
半分の断面を、また図４は同羽根車の組立構造を示すも
のである。

【０００３】この種遠心羽根車１は、コスト、強度等の
点からアルミ合金が使用され、精密鋳造または削りだし
等の手段により一体のものとして製作されている。

【０００４】なお、圧力比が高い羽根車の場合は、材料
にかかる応力、及び温度が高くなるので、チタン、鋼な
どの強度が高い材料により羽根車は製作されている。

【０００５】そしてこの羽根車１は、図４に示すように
羽根車１の背面側で、まず、ライナ６、次いでスプライ
ン７の加工を施したスリーブ８の順で駆動軸１２へ嵌
め、そして羽根車１自身を駆動軸１２へ通し、その後で
同羽根車１の正面側から座金９，ナット１０，１１を嵌
めて羽根車１を駆動軸１２に堅固に組み込んでいる。

【０００６】なお、駆動軸12から羽根車１へのトルクの
伝達は、羽根車１とスリーブ８に施こされた爪５の噛み
合いによって行なわれるようになっている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】羽根車の遠心応力は、
羽根車の背面で最大となる。特に単段で高い圧力比を得
る圧縮機の羽根車は、回転数が高く、かつ圧縮した空気
の温度も高くなる。そして羽根車の背面は圧縮した空気
の一部が入り、高い温度になるため、アルミ等の材料で
は遠心応力と熱による強度の低下が著しく、信頼性の高
い形状を設計することが困難であった。

【０００８】このため、このような羽根車ではチタン、
鋼等の高強度材料から羽根車全体を製作する必要が生じ
るが、他方、これらの材料は高価であり、製品のコスト
が大きくなると共に、羽根車の重量が増大し、取り扱い
が難しくなるという問題があった。

【０００９】また、羽根車に駆動軸トルクを伝達する部
分については、ここに高い局部応力が生じるので、アル
ミ材を採用したものでは、噛み合う爪５の強度確保のた
め、高い工作精度と十分な大きさが必要となるという問
題があった。

【００１０】本発明は従来のものにおけるこれらの問題
点を解消し、羽根車本体にかかる応力を低減し、羽根車
に対するトルクの伝達を安全かつ確実なものとし、更に
羽根車背面側での温度上昇を抑制したものを提供するこ
とを課題とするものである。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は前記した課題を
解決するべくなされたもので、羽根車の材質より高い強
度と弾性率を持つ材質よりなり羽根車の外周側からボス
部近傍までのびる円盤状部材を羽根車背面に配設し、同
円盤状部材と羽根車背面とを固着してなる遠心羽根車を
提供し、高い遠心応力が作用する羽根車背面に同羽根車
より高い強度、弾性率の部材を配設し、これを羽根車に
固着することにより羽根車の遠心応力の大部分をこの部
材で受け持つようにしたものである。

【００１２】また、本発明は、羽根車の材質より高い強
度と弾性率を持つ材質よりなり羽根車の外周側からボス
部近傍までのびる円盤状部とその中心寄りに駆動力伝達
部を有する羽根車駆動円板を羽根車背面に配設し、同羽
根車駆動円板と羽根車背面とを固着してなる遠心羽根車
を提供し、羽根車背面に固着した羽根車駆動円板は円盤
状部とこれに続く駆動伝達部で構成し、羽根車の遠心応
力を円盤状部で受け持ち、また、羽根車へのトルク伝達
を駆動力伝達部で受け持つようにしたものである。

【００１３】また、本発明は、前記円盤状部材または羽
根車駆動円板と羽根車背面との当接面に空間を形成した
遠心羽根車を提供し、羽根車背面とこれに当接する円盤
状部材、または羽根車駆動円板との間に形成した空間に
よって、円盤状部材等から羽根車に直接的な熱伝導を小
さくし、羽根車の温度上昇を緩和して高い回転数、高い
圧力比下で羽根車材料の応力、温度が上昇した場合にお
ける羽根車の信頼性を高めるようにしたものである。

【００１４】

【発明の実施の形態】本発明の第１の実施の形態を図１
に基づいて説明する。なお、前記した従来のものと同一
の部位については、図中同一の符号を付して示し、重複
する説明は省略する。

【００１５】１は羽根車で、アルミ製で出来ており、そ
の背面に環状の凹部２１を設けている。

【００１６】２は円盤状部材で、前記羽根車１の外周側
からボス部近傍まで延び、かつ同羽根車１の材質より２
〜３倍高い強度、弾性率のチタン合金（ステンレス鋼で
あってもよい）で出来ており、前記凹部２１に嵌め込ま
れている。

【００１７】３はボルトで、前記円盤状部材２の外周側
に複数個配設され、前記環状の凹部２１で羽根車１に同
心状に位置決めされてこれに嵌め込まれた円盤状部材２
を羽根車１に対して一体的に固着している。

【００１８】ｓは前記羽根車１と円盤状部材２の当接面
位置に形成された空間で、ここでは前記凹部２１と同様
に羽根車１と同心状に設けられているが、円周方向に複
数個に分割する等、その形状は適宜変更しうるものであ
る。

【００１９】本実施の形態は前記したように構成されて
いるので、稼動時に遠心応力が高くなる羽根車１の背面
は、同羽根車１より２〜３倍も高い強度、弾性率を有す
る円盤状部材２で補強され、前記遠心応力をこの円盤状
部材２が受け持つことになる。

【００２０】また、この羽根車１の背面に集まる熱は前
記空間ｓにより遮ぎられ、羽根車１へ直接伝導されない
ので、羽根車１の温度は緩和されることになる。

【００２１】従って本実施の形態では、羽根車１は応力
的にも温度的にも安定しており、高い回転数、高い圧力
比下で羽根車１の応力、温度が上昇する環境下において
もその信頼性は高まるものである。

【００２２】次に本発明の第２の実施の形態について図
２に基づいて説明する。なお、前記した従来の技術、及
び第１の実施の形態と同一のものについては図中同一の
符号を付して示し、重複する説明は省略する。

【００２３】本実施の形態では、前記した第１の実施の
形態において羽根車１の背面に配設していた円盤状部材
２に替えて、この第１の実施の形態の円盤状部材２に相
当する円盤状部２０ａの中心寄りに、これに続いて駆動
力伝達部２０ｂを一体的に形成した羽根車駆動円板２０
を設けたものである。

【００２４】そして、この羽根車駆動円板２０は、円盤
状部２０ａの外周側に配置された複数個のボルト３と、
内周側に配置された複数個のボルト４によって羽根車１
に固着締結されている。

【００２５】また、同円盤状部２０ａの中心寄りでこれ
と一体的に形成された駆動力伝達部２０ｂは、羽根車１
の背面側に突出し、それ自身により、図示省略の軸との
嵌合部となるボス１３を形成し、かつ、その先端に軸ト
ルクを伝達する爪５を形成している。

【００２６】なお、その余の構成は前記した第１の実施
の形態と同一である。

【００２７】従って本実施の形態によれば、羽根車１に
かかる遠心応力は、羽根車駆動円盤２０の円盤状部２０
ａで受け持って十分な強度のものとし、駆動トルクにつ
いては、同羽根車駆動円盤２０の駆動力伝達部２０ｂで
受け持って大きなトルク伝達が発生しても爪５の損傷の
心配もなく、かつ遠心力による軸嵌合部の芯ずれも生ず
ることなく良好な芯保持を行い、また、羽根車１の背面
の高熱に対しては空間ｓにより羽根車１への直接伝導を
防止するものである。

【００２８】この結果、遠心応力、駆動トルク伝達、及
び高熱に対し安定し、信頼性の高い装置を得ることがで
きるものである。

【００２９】以上、本発明を図示の実施の形態について
説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されず、
本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えて
よいことはいうまでもない。

【００３０】

【発明の効果】以上、本発明によれば、羽根車背面の遠
心応力は強度の高い円盤状部材によって受け持たれるの
で、羽根車自体の応力は低減され、高回転時においても
強度の余裕が増大し、安価な材料で羽根車を製作できる
のでコスト低減への効果も大きいものである。

【００３１】しかも、前記したように遠心応力による羽
根車の弾性変形を抑えることは、羽根車上の翼とケーシ
ングとの隙間を常に最適な値に保持できることとなり操
業時の安定性の向上は勿論のこと、設計、製作、保守等
も容易となるものである。

【００３２】また、請求項２の発明によれば、前記した
羽根車の背面の補強による効果に加えて、羽根車のトル
ク伝達部分に強度の高い部材を使用することにより、羽
根車の圧力比が高く、大きなトルクが伝達される場合の
信頼性が向上する。

【００３３】また、羽根車駆動円板の駆動力伝達部は内
側で軸に接するように配列することにより羽根車の中心
を決めることとなり、材質上この部位の弾性係数が小さ
いことは、遠心力によるこの部分の変形で芯のずれが生
じにくく、良好な芯保持を得ることができるものであ
る。

【００３４】更にまた、請求項３の発明によれば、羽根
車の背面と円盤状部材又は羽根車駆動円板との間に形成
した空間によって、円盤状部材等から羽根車への直接的
な熱伝導が防止されるので、羽根車本体背面側の温度上
昇も抑えられ、羽根車の高回転時の強度の余裕はより一
層増大し、前記した種々の効果をより確かなものとする
ものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施の形態に係る遠心羽根車の
上半分断面図。

【図２】本発明の第２の実施の形態に係る遠心羽根車の
上半分断面図。

【図３】従来の遠心羽根車の上半分断面図。

【図４】図３の羽根車の取り付け構造の説明図。

【符号の説明】

１ 羽根車本体 ２ 円盤状部材 ３ ボルト ４ ボルト ５ トルク伝達用爪部 ｓ 空間 ６ ライナ ７ スプライン ８ スリーブ ９ 座金 １０ ナット １１ ナット １２ 駆動軸 １３ ボス ２０ 羽根車駆動円板 ２０ａ 円盤状部 ２０ｂ 駆動力伝達部 ２１ 凹部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 羽根車の材質より高い強度と弾性率を持
   つ材質よりなり羽根車の外周側からボス部近傍までのび
   る円盤状部材を羽根車背面に配設し、同円盤状部材と羽
   根車背面とを固着してなることを特徴とする遠心羽根
   車。
2. 【請求項２】 羽根車の材質より高い強度と弾性率を持
   つ材質よりなり羽根車の外周側からボス部近傍までのび
   る円盤状部とその中心寄りに駆動力伝達部を有する羽根
   車駆動円板を羽根車背面に配設し、同羽根車駆動円板と
   羽根車背面とを固着してなることを特徴とする遠心羽根
   車。
3. 【請求項３】 前記円盤状部材または羽根車駆動円板と
   羽根車背面との当接面に空間を形成したことを特徴とす
   る請求項１または２に記載の遠心羽根車。