【発明の詳細な説明】
18,19-ジノル- ビタミン D 化合物発明の背景
天然ホルモン、1α,25-ジヒドロキシビタミン D3 およびエルゴステロール系
類似物、すなわち1α,25-ジヒドロキシビタミン D2 は、動物およびヒトにおけ
るカルシウムホメオスタシスの非常に強力な調節剤であることが知られており、
さらに最近では細胞分化におけるこれらの活性がヴィ.オストレムら(V.Ostrem
et al.)Proc .Natl.Acad.Sci.USA,84,2610(1987)により確立された。1
α- ヒドロキシビタミンD3、1α- ヒドロキシビタミンD2、様々な側鎖の同類ビ
タミンおよびフッ素化類似物を含むこれらの代謝産物の多くの構造的類似物が作
られそして試験された。これらの化合物の幾つかは細胞分化およびカルシウム調
節において興味ある活性の差異を示す。この活性における差は、様々な疾患たと
えば腎性骨形成異常、ビタミンD 抵抗性くる病、骨粗しょう症、乾癖、および特
定の悪性疾患の治療に有用である。
最近、ビタミンD 類似物の新規群、すなわちいわゆる19- ノル- ビタミンD 化
合物が発見され、これはビタミンD 系の特色である環A エキソ環式メチレン基(
炭素19)が水素原子で置換されていることが特徴である。このような19- ノル-
類似物( たとえば、1α,25-ジヒドロキシ- 19- ノル- ビタミンD3)の生物学的
試験は、細胞分化を起こす高い能力と、非常に低いカルシウム移動活性との選択
的活性プロフィールを示す。すなわち、これらの化合物は、悪性疾患の治療また
は様々な皮膚疾患の治療のための治療剤として非常に有用である。このような19
- ノル- ビタミンD 類似物の二つの異なった合成方法が記載されている(パール
マンら(Perlmanetal.) Tetrahedron Letters 31,1823(1990);パールマンら
Tetrahedron Letters 32,7663(1991);およびデルカら(DeLuca et al.)米
国特許第 5,086,191号)。
生理学的に重要なビタミンD 化合物の19- ノル群を調査するための継続した努
力において、C-18核間メチル基が欠けたこれらの類似物、すなわち18,19-ジノル
- ビタミンD 化合物がここにおいて合成されそして試験された。発明の開示
これまでに知られていない1α -ヒドロキシル化ビタミンD 化合物の一群は、1
8,19-ジノル- 類似物、すなわち通常はCD環の炭素13と結合しているC-18核間メ
チル置換基(炭素18)および通常は全てのビタミンD 系の特徴であるA 環の炭素
10と結合しているC-19エキソ環式メチレン基(炭素19)が除去されそして水素原
子により置換された化合物である。構造的にはこれらの新規類似物は以下に示す
一般式が特徴的である:
(式中、X1およびX2は、同一または異なって、各々水素およびヒドロキシ保護基
から選択され、そして基R はビタミンD 型化合物について知られている代表的側
鎖のいずれかを表す。)
さらに特異的には、R は炭素原子1-35の飽和または不飽和炭化水素基であって
直鎖、枝分かれ鎖または環式鎖であり、一つ以上の別の置換基、たとえばヒドロ
キシ-または保護されたヒドロキシ基、フルオロ、カルボニル、エステル、エポ
キシ、アミノまたは他の異原子基を含んでもよい。
この種の好ましい側鎖は以下の構造式により表される。
(式中、立体化学中心(ステロイドの位置番号においてC-20に相当)はR または
S 立体配置( すなわち、炭素20に近い天然の立体配置または20- エピ立体配置
のいずれか)を有し、Z はY,-OY,-CH2OY,-C≡CY および -CH=CHYから選択さ
れ、ここで二重結合はシスまたはトランス幾何異性を有してもよく、Y は水素、
メチル、-CR5O および式:
(式中、m およびn は独立して0-5 の整数を表し、R1は水素、ジュウテリウム、
ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、フルオロ、トリフルオロメチルおよびC1-C
5 - アルキルであって直鎖または枝分かれ鎖でもよく場合によりヒドロキシまた
は保護されたヒドロキシ置換基を有する基から選択され、そしてR2、 R3 および
R4各々は独立してジュウテリウム、ジュウテロアルキル、水素、フルオロ、トリ
フルオロメチルおよびC1-C5 - アルキルであって直鎖または枝分かれ鎖でもよく
場合によりヒドロキシまたは保護されたヒドロキシ置換基を有する基から選択さ
れ、そしてR1およびR2は一緒になってオキソ基、またはアルキリデン基、即ち=C
R2 R3、または基 -(CH2) p - であってその際p は2-5 の整数である基を表し、R3
およびR4は一緒になって、オキソ基、または基 -(CH2) q - であってその際qは
2-5 の整数である基を表し、R5は水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシまた
はC1-5 -アルキルである)で表される基から選択され、側鎖における20、22、お
よび23位のCH基はいずれも窒素原子により置換されてもよく、または20、22、お
よび23位の基 -CH(CH3)-,-CH( R3) - または -CH(R2)- はいずれもそれぞれ酸
素またはイオウ原子により置換されてもよい)。
側鎖の特に重要な例は、以下に示す式 (a)、(b)、(c)、(d) および(e) により
表される構造であり、すなわち25- ヒドロキシビタミンD3 (a);ビタミンD3(b)
;25- ヒドロキシビタミンD2(c);ビタミンD2(d);および25- ヒドロキシビタミ
ンD2のC-24エピマー(e) において見られる側鎖である。
前記の新規化合物は所望のそして非常に有利な、生物学的活性のパターンを示
す。これらの化合物は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3のものと比べて顕著な
腸管カルシウム輸送活性が特徴であるが、一方骨組織からカルシウムを移動する
能力では1α,25-ジヒドロキシビタミンD3のものと比べて、より低い活性を示す
。それ故、これらの化合物はこれらのカルセミック( calcemic) 活性において非
常に特異的である。腸管カルシウム輸送におけるこれらの優性な活性および骨組
織における低下したカルシウム移動活性により、骨組織の損失が主な関心事であ
る代謝性骨疾患の治療に対しこれらの化合物のインビボ投与が可能になる。その
優性なカルセミック活性のために、これらの化合物は骨の形成が望まれる疾患、
たとえば骨粗しょう症、骨軟化症および腎性骨形成異常症の治療のための好まし
い治療剤である。治療は経皮、経口または腸管外投与することができる。化合物
は、組成物の約 0.1μg / gm〜約 50 μg /gm の量で組成物中に存在するのが好
ましく、約 0.1μg/日〜約 50 g/日の投与量で投与されうる。
前記化合物はまた、高い細胞分化活性が特徴的である。すなわち、これらの化
合物は乾癖の治療のための治療剤を提供する。化合物は、組成物の約 0.01 μg/
gm〜約 100μg / gmの量で乾癖を治療するために組成物に存在してもよく、そし
て約0.01μg / 日〜約100 μg / 日の投与量で局所、経口または腸管外投与され
うる。
本発明はまた最終生成物の合成の間に形成される新規の中間体化合物を提供す
るものである。図面の簡単な説明
図1 は、18,19-ジノル- 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3、19-ノル- 1α,25-
ジヒドロキシビタミンD3および1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の濃度の関数と
してのHL-60 細胞分化のパーセントを示すグラフである。
図2 は、18- ノル- 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3、19- ノル- 1α,25-ジヒ
ドロキシビタミンD3、18,19-ジノル- 1α,25-ジヒドロキシビタミンD3および1α
,25-ジヒドロキシビタミンD3の1,25- ジヒドロキシビタミンD 豚腸管核レセプタ
ーに対する結合における相対的活性を説明するグラフである。本発明の詳細な説明
この明細書および請求の範囲において使用されるように、用語“ヒドロキシ保
護基”とは、ヒドロキシ官能基の一時的保護のために通常使用されるいずれかの
基、たとえばアルコキシカルボニル、アシル、アルキルシリルまたはアルキルア
リールシリル基(以後、簡単に“シリル”基という)、およびアルコキシアルキ
ル基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、たとえばメトキシカルボニル
、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブ
トキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert- ブトキシカルボニル、ベン
ジルオキシカルボニルまたはアリルオキシカルボニルのような群である。用語“
アシル”とは、炭素原子1-6 のアルカノイル基、その異性体形の全て、または炭
素原子1-6 のカルボキシアルカノイル基、たとえばオキザリル、マロニル、スク
シニル、グルタリル基、または芳香族アシル基たとえばベンゾイル、またはハロ
ゲン、ニトロまたはアルキル置換ベンゾイル基である。この説明および請求の範
囲で使用される語句“アルキル”は、炭素原子1-10の直鎖または枝分かれ鎖アル
キル基をその異性体形の全てを含めて意味する。アルコキシアルキル保護基は、
メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチルまたはテトラヒドロ
フラニルおよびテトラヒドロピラニルのような群である。好ましいシリル保護基
は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、ジブチル
メチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル
- t-ブチルシリルおよび類似のアルキル化シリル基である。
“保護されたヒドロキシ ”基は、ヒドロキシ官能基の一時的または継続的保
護
に通常使用されるいずれかの基、たとえば前記で定義したようなシリル、アルコ
キシアルキル、アシルまたはアルコキシカルボニル基により保護されたヒドロキ
シ基である。用語“ヒドロキシアルキル”、“ジュウテロアルキル”および“フ
ルオロアルキル”、それぞれ一つ以上のヒドロキシ、ジュウテリウムまたはフル
オロ基により置換されたアルキル基に関する。
基本的構造I を有する1α- ヒドロキシ- 18,19-ジノル- ビタミンD 化合物の
調製は、通常の一般方法、すなわち環A シントン(synthon)II を二環式ウィンダ
ウス- グランドマン(Windaus−Grundmann)型ケトンIIIと縮合させることにより
行われる:
構造式IIおよびIIIにおいて、基 X1 、X2びR は前記定義の基を表し:X1およ
びX2は好ましくはヒドロキシ保護基であり;縮合反応に感受性があるかまたはこ
れを妨害するR おけるいずれの官能基も、当該技術でよく知られているように好
適に保護されることも理解されるであろう。式中 Yが -POPh2,PO(アルキル)2、
または-SO2Arまたは-Si(アルキル)3である一般式IIIの化合物は、記載されて
いる方法により調製されうる( デルカら、Eur.Pat.Appl.EP 0 516410 A2)。
X1およびX2としてのtert- ブチルジメチルシリル基を有する構造式IIのホスフィ
ンオキシドは公知化合物であり[パールマンら、Tetrahedron Letters 32 ,7663
(1991)]、これは前記縮合に都合よく使用されうる。前記で示した方法は収束合
成概念の応用を表し、これはビタミンD 化合物の調製に対し効果的に適用されて
きた[ たとえば、リトゲーら( Lythgoe et al.) 、J .Chem.Soc.Perkin Trans .
I,590(1978);リトゲー、Chem .Soc.Rev. 9, 449 (1983)
;トゥら( Toh et al.) 、J .Org.Chem. 48,1414(1983);バギオリニら(Bag
giolini et al.)、J.Org.Chem.51, 3098(1986);サルジナら(Sardinaet al
.)、J .Org.Chem.51,1264(1986);J .Org.Chem.51,1269(1986)]。
一般構造式III で表される18- ノル CD ケトンの調製のために、新規合成経
路が、出発物質として一般構造式IVで表されるウィンダウス- グランドマン型ケ
トンに基づいて開発された。必要とされるCD- 環ケトンIVは公知であるか、また
は公知方法で調製されうる。このような公知の二環式ケトンの特定の重要な例は
、前記の側鎖 (a)、(b)、(c) および(d) を有する構造、すなわち25- ヒドロキ
シグランドマンケトン(e) [バギオリニら、J .Org.Chem.51,3098 (1986)];グ
ランドマンケトン(f) [インホッフエンら(Inhoffen et al.)、Chem .Ber.90,6
64 (1957)];25- ヒドロキシウィンダウスケトン (g)[ バギオリニら、J.Org . Chem
.51,3098 (1986)]およびウィンダウスケトン (h)[ ウィンダウスら、Ann. 524
,297 (1936)]である:
出発物質である二環式ケトンIVを、一般的形の18- ノル類似物III へ転換する
全体の方法を、以下の反応式によりまとめる:
この反応式に示すように、合成の第一の段階は、IVにおける8-ケト基を還元し
てアキシアルの8β- ヒドロキシ CD-フラグメントV(X3 =H) とすることである
。このような立体選択的還元方法はよく知られており、たとえばLiA1H4またはNa
BH4 を用いて容易に行うことができる。ケトンIVの側鎖R におけるヒドロキシ基
は、もし存在するならば、還元方法の前に適当に保護され、選択される保護基は
次の化学的転換に適合しそして所望によりまた除去可能である。好適なものは、
たとえば、アルキルシリル- およびアリールシリル基またはアルコキシアルキル
基である。
V (X3 = H)におけるC-8 ヒドロキシ基のアキシアル配向は、トランス- ヒドロ
インダン系において立体的に固定され、C-13における核間メチル基にきわめて近
く、18- 官能化化合物に導く連続的分子内フリーラジカル反応に非常に重要であ
る。ステロイドにおいて核間メチル基から水素原子を除去する効率は、核間メチ
ル基の水素原子からのオキシ基の距離に強く依存する。水素原子除去速度は、2.
5-2.7 Åの酸素とメチル炭素の間の核内距離で最大に達し、3Å以上の距離で迅
速に低下する。我々の分子モデル研究によれば、8β- アルコール V (X3 =H)の
場合に、C(18)-O は3 Åより小さく(通常、約2.96Å)、それゆえこれらの化合
物はC-18における官能化の成功に必要なものの全てを満たしている。核間メチル
基官能化の方法として、亜硝酸エステルの光分解( バートン反応(Barton reacti
on))を選択した。すなわち、一般式V のアルコール( X3 =H)を、ピリジンにお
いて塩化ニトロシルで処理しそして亜硝酸tert- ブチルまたは亜硝酸イソペンチ
ルでトランス- エステル化することを含む現存の方法の一つにより、相当する亜
硝酸エステル V(X3 =NO)へ転化する。前の方法がより一般的に適用可能である
がしかし高価なガス状塩化ニトロシルの使用を必要とする。後の、ニトロシル交
換方法は、その簡便性のために推奨されうる。合成の次の工程は、V (X3 =NO)を
光分解してその結果C-18と結合する水素原子と亜硝酸残基のNOとが分子内交換す
ることからなる。このように形成されたC-ニトロソ化合物 VI は、自然にまたは
溶媒たとえば2-プロパノール中で加熱するかのいずれかにより、ヒドロキシオキ
シムVII(X4=H)へ再配列する。亜硝酸エステル V(X3 =NO)の光分解は、パイレ
ックスフィルターを備えた水銀ランプを挿入した水冷中心スリーブを有する照射
装置において、一般的には酸素不含有雰囲気下、そして十分に冷却して0 ℃〜10
℃の照射溶液の温度を維持することにより実施することができる。分子内水素除
去反応と競合する(出発アルコールを再生産する)ための、収率の低下は、簡単
に除去可能な水素原子を含まない溶媒、たとえばベンゼンを用いることにより抑
えることができる。一般式VIで表される18- ニトロソ化合物は通常は迅速に異性
化して18- オキシムVII(X4=H) となるが、沸騰中の2-プロパノールにおいて粗照
射生成物を短時間処理することにより再配列を完了させることが望ましい。
方法の次の段階は、8β- ヒドロキシオキシムVII (X4=H)の8β- ヒドロキシ
ニトリルVIII(X5=H)への転換からなる。この転化は、アセチル誘導体VII (X4=
Ac)から酢酸の要素を熱的に除去し次いで得られたアセトキシニトリルVIII (X5
=Ac)中で8β- アセトキシ基を加水分解することにより容易に達成されうる。ヒ
ドロキシオキシムVII (X4=H)のVIII (X5=Ac)への転換は、2工程で行われうる:
標準的条件(ピリジン中の酢酸無水物)下にVII (X4=H)をアセチル化してジアセ
テートVII (X4= Ac)とし、次いで後者を熱的反応(ピロリシス)させるとアセト
キシイミノ基から酢酸分子が除去されニトリルVIII(X5=Ac)が形成する。これに
代わり、VII (X4=H)をVIII (X5=Ac)へ転換することは、酢酸無水物中でオキシム
を加熱する(時には酢酸ナトリウムまたはカリウムの添加が役に立つ)ことによ
りより簡単に行われうる。
ニトリルVIII (X5=Ac)における8β- アセトキシ基を加水分解して相当するア
ルコールVIII(X5=H)を作ることは、標準的塩基性条件下に行われうる。この方
法は、次に行う化学的転換、すなわちC-13シアノ基の還元除去の点で望ましい。
このようなシアノ基除去に必要な他の条件では、8-アセトキシ基を相当するアル
カン(8- 非置換誘導体) へ還元するおそれがあるからである。VIII(X5=H)にお
ける8β- ヒドロキシ基は、所望により、シアノ基除去方法の間にアルキルシリ
ル- 、アリールシリルまたはアルコキシアルキルエーテルとして保護されうる。
しかしながら、このような保護基は、(もし、R における他の保護されたヒドロ
キシ基が存在する場合には)合成の次の段階で選択的に脱保護化されなければな
らないことは理解されるであろう。VIII(X5=H)の還元的シアノ基除去のための
幾つかの方法が利用可能であるが、最も重要なことは溶解金属還元法である。す
なわち、たとえばVIII(X5=H)を、ヘキサメチルリン酸トリアミドおよびtert- ブ
タノール中において金属カリウムと反応させるかまたは金属カリウム/ ジシクロ
ヘキサノ- 18- クラウン- 6 / トルエン系を用いて反応させることにより、18-
ノル誘導体IXへ転換させることができる。
次の合成工程は、18- ノル-8β- アルコールIXを所望の8-ケト化合物IIIへ酸
化することからなる。幾つかの酸化方法が使用されうるが但しこれらは形成する
生成物においてC-14でエピマー化を起こしてはならない。8-ケト基の次のキラル
中心を保存するこれらの能力に推奨される方法は、CrO3- ピリジン、SO3-Me2SO
およびPDC 試薬で酸化することを含む。ケト化合物III は次のウィティッヒ- ホ
ルナー(Wittig-Horner) 反応に直接使用され、これにより18,19-ノル- ビタミン
D 誘導体I または、カップリング工程の前に、異なった側鎖R を有する他の化合
物へ転換されうる。R が飽和側鎖たとえばコレスタン側鎖(b)(18- ノルグランド
マンズケトン)である場合、非立体障害化第三級炭素原子(コレスタン側鎖の場合
におけるC-25)の選択的ヒドロキシル化を、ルテニウムテトロキシド[キーゲルら
(Kiegiel et al.)、Tetrahedron Letters 32,6057( 1991)]またはジオキシラ
ン[ボビセリら( Bovicelli et al.)、J.Org.Chem.57,5052( 1992)]酸化方
法を用いて行う可能性がある。この反応条件下ではC-8 における第二のヒドロキ
シ基の迅速な酸化が起こるために、所望により、8β- アルコールIXに側鎖ヒド
ロキシル化方法を行うことができる。
縮合反応は、一般式IIのA 環ユニットを処理し、強塩基(たとえば、アルカリ
金属水素化物、アルキル- またはアリールリチウム、またはリチウムアルキルア
ミド試薬)とともに有機溶媒に溶解し、これにより陰イオンIIを生じ、次いでこ
の陰イオンを18- ノル- ケトンIII と反応させ、直接または中間体(たとえば、
Y=SO2Ar である式IIとの縮合の場合)を介して、公知方法に従ってI へ転化可能
な18,19-ジノル- ビタミンD 類似物Iへの縮合を達成させることにより有利に行
われる。次いで、いずれかのヒドロキシ保護基(すなわち、保護基X1およびX2お
よび / または側鎖R に存在するかもしれないヒドロキシ保護基)を当該技術で
公知の好適な加水分解または還元方法により除去してX1およびX2が水素である遊
離ヒドロキシ- ビタミン類似物である、構造式I が得られる。
1α,25-ジヒドロキシ-18,19-ジノルービタミン D3 の合成
実施例1
デス- A,B-コレスタン- 8β- イル 亜硝酸エステル(4) の調製(反応式1)
0℃で無水エーテル(90mL)にグランドマンケトン2[(2.70g,10.2ミリモル;市
販のビタミンD3(1) のオゾン分解により得られる]が溶解している液を、無水エ
ーテル(270mL) 中のLiA1H4(3.89g,102.5ミリモル)のスラリーへ添加した。
反応混合物を0 ℃で1 時間攪拌し、そして酢酸エチル(27mL) 続いて冷10%H2SO4
(100mL)を使用して未反応LiAlH4を破壊しそして加水分解を完了した。得られた
混合物をエーテルで抽出し、集めた抽出物を水およびブラインで洗浄し、乾燥(N
a2SO4)し、そして蒸発した。生成物をシリカのフラッシュクロマトグラフィーに
より精製した。10% 酢酸エチル- ヘキサンで溶離すると、公知の8β- アルコー
ル3 が無色油状物(2.42g,89%)として得られた:1H NMR(CDCl3,500 MHz),δ 0.
865( 6H,br d,J-6Hz,21-および27-H3),0.891(3H,d,J=6.4 Hz,21-H3),0.
929(3H,s,18-H3),4.07(1H,m,w/2 = 10Hz,8α-H);MSm /z(相対強度)26
6(M+,9),251(3),207(12),164(19),111(61),91(100)。
クロロホルム(10mL)にアルコール3(533mg,2ミリモル)が溶解している液を
亜硝酸tert- ブチル(2.2mL) で処理し、室温で暗所にて40分間攪拌した。ベンゼ
ン(20mL)を添加し、溶媒を減圧下に迅速に蒸発した(水浴40℃の温度)。溶媒を
蒸発しさらに高減圧乾燥する間に、亜硝酸エステルを光から保護した。油状生成
物は僅かな量の出発物質アルコール3を含むがしかし次の反応に好適であった。
亜硝酸エステル4 は次のスペクトル特性を有する: IR(CHCl3) 1632(亜硝酸エ
ステル)cm -1;1H NMR(CDC13, 500 MHz),δ 0.767( 3H,s,18-H3),0.862( 6H
,brd,J= 6.2 Hz,26- および27-H3),0.901(3H,d,J= 7.0 Hz,21-H3),5
.76(1H,狭いm,8α- H)。
実施例2
18-(ヒドロキシイミノ)- デス- A,B-コレスタン-8β- オール(6) の合成
8β-アルコール3 の2 ミリモルから得られる粗亜硝酸エステル4(実施例1参照
)を無水ベンゼン(140 mL)に溶かし、パイレックス容器および水冷ビコール浸漬
凹部からなる装置内において、パイレックスフィルターを備えたハノービア(Han
ovia)高圧水銀アークランプで照射した。アルゴンの緩い流れを容器へ通過させ
、溶液の温度を10℃に保った。1時間40分照射した後、TLC は僅かの未反応亜硝
酸エステルを示しただけであった。反応混合物を室温で一晩放置し(中間体19-
ニトロソ化合物5 のオキシムへの異性化を行うため)、ベンゼンを減圧下に蒸発
し、油状残渣にフラッシュクロマトグラフィーを行った。30% 酢酸エチル-ヘキ
サンで溶出すると、純粋なオキシム6(270mg,8β- アルコール3 から46%)が
無色油状物として得られた:IR(CHCl3)3590,3240,3140(OH)cm 1;1H NMR(
CDCl3),δ 0.865( 6H,d,J = 6.1 Hz,26-および27-H3),0.994( 3H,d,J= 6.
7 Hz,21-H3),4.04(1H,m,w/2 = 9Hz,8α- H),6.29(1H,br s,OH),7.36(
1H,s,18-H),10.38(1H,br s,OH);MS m/z(相対強度)295(M+ ,16),278
(87),260 (68),245 (33),183(100);C18H33O2Nについての正確な質量計算
値:295.2511,実測値 295.2514.
実施例3
オキシム6 の8β- アセトキシ- デス- A,B-コレスタン-18-ニトリル(8) への転
化
(a)酢酸無水物(5mL) 中にオキシム6(120mg,0.41 ミリモル) が溶解してい
る液を、1.5時間還流した。反応混合物を冷却し、氷へ注意深く注入し、そして
ベンゼンで抽出した。抽出物を集め、水、NaHCO3およびブラインで洗浄し、乾燥
(Na2SO4)し、そして蒸発した。10% 酢酸エチル- ヘキサンを用いて油状残渣にフ
ラッシュクロマトグラフィーを行うことにより精製した。純粋なアセトキシニト
リル8(112 mg,86%)が無色油状物として得られた:IR(CHCl3)2220(ニトリル)
,1720および1240(アセテート)cm -1; 1H NMR(CDCl3),δ 0.864( 6H,d,J= 6.
2 Hz,26-および27-H3),1.032( 3H,d,J = 6.5 Hz,21-H3),2.13 (3H,s,OAc),
5.20(1H,m ,w/2 = 8Hz,8α- H);MS m/z(相対強度)319 (M+ ,56),304 (18
),277 (89),259 (100),244 (64);C20H33O2Nについての正確な質量計算値:3
19.2511,実測値 319.2506.
(b)ヒドロキシオキシム6(120mg,0.41 ミリモル)を、酢酸無水物(0.3mL)
およびピリジン(0.5mL)と共に60℃で36時間加熱した。反応混合物を冷却し、氷
へ注入し、ベンゼンで抽出した。抽出物を集め、水、NaHCO3およびブラインで洗
浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして蒸発した。油状残渣に10% 酢酸エチル- ヘキサン
を用いてフラッシュクロマトグラフィーを行うことにより精製した。純粋なアセ
トキシニトリル8(109 mg,84%)が無色油状物として得られた。
TLC で反応混合物をモニターすると、ジアセテート7 に相当するスポットの存
在を示した。
実施例4
アセトキシニトリル8 の8β- ヒドロキシ- デス- A,B-コレスタン-18-ニトリル(
9) への加水分解
アセトキシニトリル 8(210 mg,0.66ミリモル)を、50℃で1.5 時間10% メタ
ノール性KOH (10mL)で処理した。減圧下に濃縮後、反応混合物を水へ注入し、ベ
ンゼンおよびエーテルで抽出した。有機抽出物を集め、ブラインで洗浄し、乾燥
(Na2SO4)し、そして蒸発した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(7:3) に再度溶解し
、溶液をシリカゲルセプ- パック(Sep-Pak)カートリッジに通した。溶媒を蒸
発すると、純粋なヒドロキシニトリル9 (175mg,96%)が油状物として得られた:
IR(CHCl3)3600(OH ),2220(ニトリル)cm -1;1H NMR( CDCl3),δ 0.868 (6H,
d,J = 6.0 Hz,26- および27-H3),1.032 (3H,d,J = 7.1 Hz,21-H3),4.10(1
H,m,w/2 = 10Hz,8α- H);MS m/z(相対強度)277 (M+ ,37),262 (28),244
(18),234 (26),220 (32),206 (87),121 (100);C18H31ONについての正
確な質量計算値:277.2406,実測値 277.2406.
実施例5
ヒドロキシニトリル 9のデス- A,B-18- ノルコレスタン- 8β- オール(10)へ
の還元脱シアン化
(a) ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA,170 μl)およびエーテル(42
0 μl)中にカリウム(55mg,1.4ミリモル)が攪拌している混合物へ、tert- ブ
タノール(50 μl)およびエーテル(200μl)中にヒドロキシニトリル9(55mg,0.
2ミリモル)が溶解している液をアルゴン下に0℃にて滴下した。冷却浴を除き、
そして黄褐色溶液を室温でアルゴン下に5 時間攪拌した。未反応カリウムを除き
、混合物をベンゼンで希釈し、2-プロパノールおよび水の数滴を添加した。有機
層を水洗し、乾燥(Na2SO4)し、そして蒸発した。残渣をフラッシュクロマトグラ
フィーにより精製した。10% 酢酸エチル- ヘキサンで溶出すると、純粋なアルコ
ール10 (38mg,76%)が無色油状物として得られた: IR(CHCl3)3630および3470(
OH )cm -1; 1H NMR(CDCl3),δ 0.863および0.868(3H および3H,各々d,J = 6.3
Hz,26-および27-H3),0.881(3H,d,J = 6.5 Hz,21-H3),4.05(1H,m ,w/2 =
8Hz,8α-H);1HNMR(C6D6),δ0.901および0.907( 3H および3H,各々 d,J = 6.2
Hz,26- および27-H3),0.945( 3H,d,J = 6.5 Hz,21-H3),3.80(1H,m,w/2 =
8Hz,8α-H);13C NMR(CDCl3) δ 18.1 (q),20.3(t),22.5(q),22.7( q)
,24.8(t),25.4(t),25.6(t),27.9(d),31.7(t),33.5(t+t),35.1 (d),39
.3 (t),39.6 (d),49.8 (d),50.7 (d),67.9 (d); MS m/z(相対強度)252 (M+
,1),234 (3),219 (2),121(100);C17H32Oについての正確な質量計算値:25
2.2453,実測値252.2470.
(b)カリウム金属塊( 約1/4cm3)を、無水トルエン(8 mL)中にヒドロキシニト
リル9(55mg,0.2ミリモル)およびジシクロヘキサノ-18-クラウン-6(111mg,0
.3ミリモル)が溶解している液へ添加した。混合物を室温にてアルゴン下に10時
間攪拌し、未反応カリウムを除去し、2-プロパノール数滴および水を添加した。
有機層を水洗し、乾燥(Na2SO4)し、そして蒸発した。残渣をフラッシュクロマト
グラフィーにかけた。10%酢酸エチル-ヘキサンで溶出するとアルコール10(30m
g)が得られ、次にこれをヘキサン/酢酸エチル(9:1)溶媒系を用いてHP
LC(10mm x 25 cm Zorbax-Sil カラム、4mL/分)により精製した。純粋な化合物
10(25mg,50%)が無色油状物としてR v 44mLで溶出した。
実施例6
アルコール10のデス- A,B-18-ノルコレスタン-8-オン(11)および25-ヒドロキ
シ-デス-A,B-18-ノルコレスタン-8-オン(12)への酸化
(a)ピリジニウムp-トルエンスルホネート(PPTS)の触媒量を含むCH2Cl2(2mL)
にアルコール10(5mg,20μモル)が溶解した溶液へ、攪拌しながら0℃でピリジ
ニウムジクロメート(PDC,25mg,66μモル)を添加した。10分後に冷却浴を除き
、混合物を室温で5 時間攪拌した。褐色混合物をエーテルで希釈し、シリカSep-
Pakで濾過し、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)で洗浄した。溶媒を蒸発すると、粗ケ
トン11が得られ、これを、ヘキサン/酢酸エチル(9:1)溶媒系を用いて、HPLC(10
mm x 25cmのゾルバックス-シル(Zorbax-Sil)カラム、,4mL/分) により精製した
。分析的に純粋な化合物11(4mg,80%)がR v 29mLで溶出した(グランドマンケト
ン2は同じ系でRv 31mLで溶出した):[α]22 D+16.2°(c 0.31,CHCl3);
CD Δε(λmax): -0.76 (311),-1.32 (301),-1.34 (294),-0.92(282),-1.
33 (190) ;1H NMR( CDCl3),δ 0.866(6H,d,J = 6.9Hz,26-および27-H3),
0.889(3H,d,J = 6.9Hz,21-H3);13C NMR (CDCl3) δ 18.0(q),21.5 (t)
,22.5 (q),22.7( q),25.4( t+t),27.8 (t),27.9 (d),30.6 (t),33.2(t)
,34.8(d),39.3(t),41.5 (t),50.8 (d),50.9 (d),58.3(d),212.0(s);MS
m/z(相対強度)250 (M+,80),207 (44),137 (100);C17H30Oについての正確な
質量計算値 250.2297,実測値250.2289.
(b)塩化ルテニウム(III) 水和物(11.5mg,0.06 ミリモル) およびNaIO4(263
mg,1.23 ミリモル) が水(1.0mL) に溶解している液へ、アルコール10(85 mg,0
.34 mミリモル) がCCl4-CH3CN(1:1,1.5mL) に溶解している液を添加した。混合
物を室温で72時間激しく攪拌した。2-プロパノール数滴を添加し、混合物を水へ
注入し、CCl4-CHCl3溶媒系で抽出した。集めた有機抽出物を水洗し、乾燥(Na2SO4
)し、そして蒸発すると、油状残渣が得られ、これをフラッシュクロマトグラフ
ィーにかけた。20% 酢酸エチル- ヘキサンで溶出すると、8-ケトン11 (16mg,19%
)が得られた。次いで40% 酢酸エチル-ヘキサンで溶出すると、不純な25-ヒ
ドロキシケトン12(20mg)が得られ、これにヘキサン/ 酢酸エチル(6:4) 溶媒系
を用いて、HPLC(10 mm x 25cm ゾルバックス- シルカラム、,4mL/分) を行っ
た。分析的に純粋な化合物12(12.7mg,14%)が油状物としてR v 51mLで溶出し
(25- ヒドロキシグランドマンケトンは同じ系でR v 50mLで溶出した)、これは
冷凍庫で放置すると結晶化する: 1H NMR(CDCl3)δ 0.908(3H,d,J = 6.5
Hz,21-H3),1.216(6H,s,26-および27-H3);l3C NMR(CDCl3)δ 18.0 (q),
21.5 (t),22.3 (t),25.4( t),27.8( t),29.3( q+q),30.6 (t),33.5(t),3
4.8 (d),41.5(t),44.2( t),50.8 (d),50.9 (d),58.3 (d),71.0 (s),211.9
(s);MS m/z(相対強度)266 (M+,〈1),251 (6),248 (60),233 (16),137(10
0);C17H30O2についての正確な質量計算値:266.2246,実測値 266.2257.
実施例7
ヒドロキシケトン12の25-[(トリエチルシリル)オキシ]-デス-A,B-18-ノルコレ
スタン-8-オン(13)へのシリル化
無水DMF(150μl)中にケトン12(5mg,19μモル)およびイミダゾール(15m
g,220μモル)が溶解している液を、トリエチルシリルクロリド(15μl,90μ
モル)で処理した。混合物をアルゴン下に室温で4 時間攪拌した。酢酸エチルお
よび水を添加すると、有機層が分離した。酢酸エチル層を水およびブラインで洗
浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発した。残渣を10%酢酸エチル/ヘキサン/ 酢
酸エチルにおけるシリカSep-Pak に通し、蒸発後HPLC(9.4 mm x 25 cmゾルバッ
クス-シルカラム、,4mL/分)によりヘキサン/酢酸エチル(9:1) 溶媒系を用いて
精製した。純粋な保護されたケトン13(3.6 mg,50%) が、無色油状物としてR v
25mLで溶出した:1H NMR(CDCl3)δ 0.559(6H,q,J = 7.9Hz,3 x SiCH2),0
.896(3H,d,J=7.6Hz,21-H3),0.939(9H,t,J=7.9Hz,3 x SiCH2CH3 ),1
.183(6H,s,26-および27-H3)。
実施例8
1α,25-ジヒドロキシ-18,19-ジノル-ビタミンD3(16)の調製(反応式II) [2-[(
3R,5R)-3,5-ビス[(tert-ブチルジメチルシリル) オキシ]-シクロヘキシリデン]
エチル] ジフェニルホスフィンオキシド(14)(12mg,21μモル)を、無
水THF(200μl)に溶かし、-78℃まで冷却し、そして攪拌しながらアルゴン下
にn-BuLi(1.4Mヘキサン中,15μL,21μモル) を添加した。溶液は暗橙色に変わ
った。-78℃で5分間攪拌後、保護されたケトン13(3.0mg,7.9μモル) を無水THF
(200 μL+100μL)中に添加した。混合物を、-78℃で1 時間そして0℃で16時
間攪拌した。酢酸エチルを添加して、有機層を飽和NH4Cl,10% NaHCO3およびブ
ラインで洗浄し、乾燥(MgSO4) し、蒸発した。残渣を10%酢酸エチル-ヘキサン
に溶解してシリカSep-Pak に通し、蒸発後ヘキサン- 酢酸エチル(9:1) 溶媒系を
用いてHPLC(9.4 mm x 25cm ゾルバックス-シルカラム、,4mL/分)により精製
した。純粋な保護されたビタミン15(1.7mg,29%)が無色油状物として溶出した
:1H NMR(CDCl3)δ 0.045および0.054(6H および 6H, 各々 s,4 x SiCH3)
,0.557(6H,q,J=7.9 Hz,3 x SiCH2),0.86-0.87(21H,21-H3および2 x Si
-t-Bu),0.939(9H,t,J=7.9 Hz,3 x SiCH2CH3 ),1.178(6H,brs,26- およ
び27-H3),2.84(1H,br d,J=13.5 Hz,9β-H),4.07(2H,brm,1 βおよび3 α
-H),5.90および6.14(1Hおよび1H,各々d,J= 11.1 Hz,7- および6-H)。
前記の保護されたビタミン15(850μg,1.2μモル)をベンゼン(40 μL )に溶
かし、メタノール(200μL ) 中の陽イオン交換樹脂(AG 50W-X4,17mg;メタノ
ールで予備洗浄)を添加した。混合物を18時間アルゴン下に室温で攪拌し、シリ
カSep-Pakに通して濾過し、2-プロパノールで洗浄した。溶媒を蒸発し、粗ビタ
ミン16をヘキサン/ 2-プロパノール(7:3) 溶媒系を用いてHPLC(10 mm x 25 cm
ゾルバックス-シルカラム、,4mL/分)により精製した。分析的に純粋な化合
物16(366μg,81%)が白色固体としてR v 37mLで溶出した(1α,25-ジヒドロキ
シ-19-ノル- ビタミンD3は同じ系でR v 36mLで溶出した):UV(EtOH中)λmax
243,251.5,261nm;1H NMR(CDCl3)δ 0.879(3H,d,J = 6.5 Hz,21-H3),1
.208(6H,s,26- および27-H3),4.07および4.11(1Hおよび1H,各々 m,1 β
- および3 α-H),5.94および6.30(1Hおよび1H,各々 d,J=11.2Hz,7-および
6-H);MS m/z(相対強度)v;C25H42O3についての正確な質量計算値 390.313
4,実測値 390.3139
v 390(M+,39),372(62),354(23),259(42),231(84),175(25),149(25),133
(53),121(64),69(100)
骨の疾患の治療のために、式I で定義される本発明新規化合物が当該技術で公
知の通常の方法に従って、無害な溶媒中の溶液として、好適な溶媒または担体中
のエマルジョン、懸濁液または分散液として、または固体担体とともにピル、錠
剤またはカプセル剤として、薬剤用途のために処方される。このような配合剤の
いずれも、他の薬剤上許容されうるそして非毒性の賦形剤、たとえば安定剤、抗
- 酸化剤、結合剤、着色剤または乳化もしくは香味調節剤を含んでよい。
化合物は、経口、腸管外投与、または経皮投与されうる。化合物は好適な滅菌
溶液の注射によりまたは静脈内灌注により、または消化管を介した液体または固
体投与形で、または経皮投与に適するクリーム、軟膏、パッチまたは同様なビヒ
クルの形で、投与されるのが有利である。1日当たり化合物0.1 μg-50 μgの投
与量が治療目的に好適であり、このような投与量は、当該技術でよく理解されて
いるように、治療すべき疾患、その程度および患者の反応に従って調節される。
新規化合物は作用の特異性を示すので、各々は単独で投与されるか、または骨無
機質の移動およびカルシウム輸送の刺激の異なった程度が有利であることがわか
っている場合には、他の活性ビタミンD 化合物、たとえば1α- ヒドロキシビタ
ミンD2もしくはD3または1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の段階的に変化する量
と共に投与されてもよい。
乾癖および他の悪性疾患の前記した治療に使用される組成物は、有効成分とし
て前記式I により定義される18,19-ジノル- ビタミンD 化合物一つ以上の有効量
と、好適な担体とからなる。本発明にしたがって使用されるこのような化合物の
効果的量は、組成物1g当たり約0.01μg から約100 μgであり、約0.01μg / 日
から約100μg / 日の投与量で局所、経口または腸管外投与されうる。
化合物はクリーム、ローション、軟膏、局所パッチ、ピル、カプセルもしくは
錠剤、または調剤上無害で許容可能な溶媒または油剤中の溶液、乳剤、分散剤ま
たは懸濁剤のような液体形で処方され、このような製剤はさらに他の調剤上無害
なまたは都合のよい成分たとえば安定剤、抗酸化剤、乳化剤、着色剤、結合剤ま
たは香味調節剤を含むことができる。
化合物は局所投与、経口投与、または好適な滅菌溶液の注射または灌注により
投与されうる。化合物は、前骨髄球を正常なマクロファージヘ分化させるのに効
果のある量で投与されるのが有利である。前記した投与量が好適であり、与えら
れた量は疾患の程度、および患者の症状および反応に従って当該技術でよく理解
されているように調節されうることは理解されるであろう。
18,19-ジノル-ビタミンD 化合物の生物学的活性
本発明の18,19-ジノル化合物は、悪性細胞の分化の促進における高い能力、比
較的高い腸管内カルシウム輸送活性および骨からカルシウムを移動させる比較的
低い能力を有する生物学的活性のパターンを示す。これは、図1 および2 ならび
に表1 にそれぞれ示す1α,25-ジヒドロキシ- 18,19-ジノル- ビタミンD3につい
て得られる生物学的分析結果により示される。図1 は、培養中のヒト白血病細胞
(HL-60細胞)から単球への分化を誘発する能力について、公知の活性代謝産物
、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3および19- ノル- 類似物1α,25-ジヒドロキシ
-19- ノル- ビタミンD3および請求の範囲の18,19-ジノル-1α,25-ジヒドロキシ-
ビタミンD3の活性を比較したものである。分化活性は、標準的な分化分析法(NB
T 還元(ニトロブルーテトラゾリウム還元)として図1 に略記した方法)により
評価した。たとえばデルカらの米国特許第4,717,721号およびオストレムら(Ostr
em et al.),J.Biol.Chem.262,14164,1987により与えられた公知手段にした
がって分析を行った。分析について、試験化合物の分化活性は、試験化合物の与
えられた濃度に対応して正常細胞に分化するHL-60 細胞の割合として表される。
図1 に示す結果により、類似物、1α,25-ジヒドロキシ-18,19-ジノル- ビタミ
ンD3が白血病細胞の分化を促進することにおいて1α,25-ジヒドロキシビタミンD3
と同じくらい強力であることが明らかである。すなわちNBT 分析において細胞
の90% 近くは1 x 10-7M の濃度で1α,25-ジヒドロキシビタミンD3により分化が
誘発され、そして同程度の分化が1 x 10-7M で18,19-ジノル類似物により達成さ
れる。
図2 は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD ブタ腸管核レセプターと結合するこ
とにおける18- ノル-1α,25-ジヒドロキシ- ビタミンD3、19- ノル-1α,25-ジヒ
ドロキシ- ビタミンD3、18,19-ジノル-1α,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3および
1α,25-ジヒドロキシビタミンD 3 の相対的活性を示す。図 2により、18,19-ジ
ノル-1α,25-ジヒドロキシ-ビタミンD3は、ブタ腸管核からの1α,25-ジヒドロキ
シ- ビタミンD3レセプターとの結合において非常に活性であることがわかる。
表1 は、公知の活性代謝産物、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3および19- ノ
ル- 類似物1α,25-ジヒドロキシ- 19- ノル- ビタミンD3および現在請求の範囲
にある18,19-ジノル-1α,25-ジヒドロキシ- ビタミンD3のカルセミック活性の比
較を示す。
オスの、離乳後のラット(スプラグ- ダウリー(Sprague-Dawley))に低カルシ
ウムビタミンD 欠乏食を3 週間与え、次いで腹腔内に95% プロピレングリコール
/5% エタノールに溶かした示した投与量を入れた。24時間後、血清を得、そして
原子吸収分光分析計を用いて、0.1%ランタニウムクロリドの存在下にカルシウ
ムを測定した。対照動物へはビヒクル単独を投与した。値は、平均値±平均の標
準誤差である。一群あたり少なくとも6 匹の動物であった。
表1 は、骨からカルシウムを移動するいくらかの可能性はあるものの、18,19-
ジノル-1α,25-ジヒドロキシ- ビタミンD3が1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と
はこの点で活性が低いことを示している。また表1 は、18,19-ジノル-1α,25-ジ
ヒドロキシ- ビタミンD3が腸管カルシウム輸送活性において1α,25-ジヒドロキ
シビタミンD3とほとんど同じ位活性であることを示す。
すなわち、18,19-ジノル類似物は、悪性細胞の分化、比較的高い腸管カルシウ
ム輸送活性と比較的低い骨移動活性を起こす高い可能性を組み合わせた選択的活
性プロフィールを示す。この新規の構造群の化合物は、したがって、乾癬および
他の悪性疾患の治療のため、および骨の損失が重要な問題である代謝性骨疾患た
とえば骨粗しょう症、骨軟化症、腎性骨形成異常症の治療の治療剤として有用で
ある。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 31/59 ADU A61K 31/59 ADU
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES
,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,
KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
TJ,TM,TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 シシンスキ,ラファル・アール
ポーランド共和国ピーエル−02−093 ワ
ルシャワ,パスチュラ 1,ディパートメ
ント・オブ・ケミストリー,ユニバーシテ
ィ・オブ・ワルシャワ
(72)発明者 パルマン,カトー・エル
アメリカ合衆国ウィスコンシン州53711,
マジソン,チッペワ 1