【発明の詳細な説明】
1α- ヒドロキシビタミンD の合成
発明が属する技術分野
本発明は、一般にビタミンD 化合物及びそれらのヒドロキシ誘導体に関する。
更に詳細に述べると、本発明は、1α- ヒドロキシビタミンD の新規合成に関す
る。
発明の背景
ビタミンD は、ステロイド誘導体である化合物群であり、かつ動物及びヒトに
おけるカルシウム及びリン代謝の調節、並びに骨形成の調節において重要である
ことが公知である。ハリソン内科学(第11冊、“骨疾患及び骨塩代謝、第35章”
E.Braunwald らの編集、マグローヒル社、ニューヨーク(1987)、頁1860-1865)
を参照。
動物及びヒトにおけるビタミンD の天然形は、ビタミンD3である。ビタミンD3
は、動物及びヒトの皮膚において、内因的に合成される。ビタミンD の生物学的
機能は、生物学的活性剤であるヒドロキシル化された代謝産物への代謝を必要と
する。ヒトを含む動物においては、ビタミンD3は、肝においてC25位のヒドロキ
シル化により活性化され、その後腎において1α- ヒドロキシル化を受け、ホル
モン1α,25-ジヒドロキシビタミンD3を生じる。DeLucaらによって開示された米
国特許第3,880,894 号参照。
この1α,25-ジヒドロキシビタミンD3化合物は、全身に分布した特異的細胞質
レセプタータンパク質と結合することによって、カルシウム及びリンの代謝、骨
形成、並びにその後のビタミンD3の活性化を調節する。この結合には、1α- ヒ
ドロキシル基の存在が必要である。ホルモン活性を有する腸管内のレセプターと
結合したビタミンD3は、腸管腔から体循環へのカルシウム及びリンの移行を刺激
する。副甲状腺、腎、骨芽細胞、及び他の標的組織のレセプター類と結合した活
性化されたビタミンD3は、血中のカルシウム及びリンの濃度を相乗的に安定化し
、骨形成及び骨喪失を制御し、かつ更なる1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の生
成を調節するような細胞反応を誘発する。更にビタミンD3は、細胞の増殖及び分
化
において役割を果たすことが報告されている。DeLucaらによって開示された米国
特許第4,800,198 号参照。これらの化合物は、白血病、骨髄線維症及び乾癖のよ
うな、異常な細胞増殖及び/又は細胞分化を特徴とする疾患の治療において有用
であることが示されている。
ビタミンD2は、植物におけるビタミンD の主要な天然形である。ビタミンD2は
、C24にメチル基を、並びにC22及びC23の間に二重結合を有する点で、ビタミンD3
と構造的に異なる。しかし、様々なビタミンD2類似体が、動物及びヒトにおい
て強力な生理的反応を誘発し、かつこれらはビタミンD3化合物の重要な置換体で
ある。
様々なヒドロキシル化及びジヒドロキシル化されたビタミンD 誘導体の発見及
び合成に、かなりの関心が集まっている。一般に理解されかつ本願明細書におい
て使用される用語“ビタミンD”は、ビタミンD3、D2及びD4を含むことを意図し
ている。天然に生じる及び/又は合成されることがわかっている、ビタミンD3及
びD2のヒドロキシル化及びジヒドロキシル化された代謝産物の例は、25- ヒドロ
キシビタミンD2、24,25-ジヒドロキシビタミンD3、25,26-ジヒドロキシビタミン
D3、1α- ヒドロキシビタミンD2、23,25-ジヒドロキシビタミンD3であり、これ
らはいずれもin vivo において、ビタミンD 様の生体活性を示すことがわかって
いる。
残念ながら、これらの活性ビタミンD 代謝産物の多くが、治療薬としての見込
みがあるにもかかわらず、周知のこれらの化合物のカルシウム代謝への強力な作
用に起因する、これらの薬剤の著しい毒性である高用量での高カルシウム血症の
誘発のために、この見込みは十分には理解されてはいない。例えば、1α- ヒド
ロキシビタミンD3の日用量2μg/日(いくつかの研究において、これが骨量減少
を妨げる効果があることが示されている。)は、患者の約67%において毒性を示
すことが報告されている。しかし最近になって、1α- ヒドロキシビタミンD2が
、予想外の高い生体効力(biopotency)及び低い毒性を持つことが示された。DeLu
caらの開示した米国特許第5,104,864 号参照。この発見により、ヒドロキシル化
、特に1α- ヒドロキシル化されたビタミンD 化合物の能率的な合成への関心及
び直接的必要性が増大している。
数多くの1α- ヒドロキシル化の方法が報告されている。これらの方法のいく
つかは、最初にヒドロキシル化され、その後対応するビタミンD 化合物へと転換
されるステロイド出発材料を使用している。例えば、Hesse の開示した米国特許
第4,670,190 号;Takeshita の開示した米国特許第4,022,891 号;Mazur の開示
した米国特許第3,966,77号;DeLucaらの開示した米国特許第3,907,843 号を参照
。別の方法は、ビタミンD 化合物の直接のヒドロキシル化である。例えば、DeLu
caらの開示した米国特許第4,338,250号;DeLucaらの開示した米国特許第4,202,8
29号;Hesse らの開示した米国特許第4,263,215 号;Hesse の開示した米国特許
第4,772,433 号;Hesse の開示した米国特許第4,554,105 号を参照。一部は、シ
クロビタミンを経由して進行する。例えば、DeLucaらの開示した米国特許第4,55
5,364 号;DeLucaらの開示した米国特許第4,260,549 号;DeLucaらの開示した米
国特許第4,195,027 号を参照。更に別の方法は、単一の前駆体からの所望のビタ
ミンD 化合物の全体的合成を提供している。例えば、Baggioliniらの論文、J.Am
.Chem.Soc.、104:2945-2948(1982)を参照。ほとんどの方法は、所望の生成物
の収量が悪い。新規合成法は、各々、それ以前の方法よりも簡略であることを主
張している。しかしより簡略で能率的な方法であることを主張している方法であ
っても、その合成において、クロマトグラフィーのような相当の分離工程を、依
然として必要としている。
ヒドロキシル化されたビタミンD 化合物の合成の簡単で直接的な方法の必要性
が認められるにもかかわらず、当該技術分野は、1α- ヒドロキシビタミンD の
合成法に、未だ応えていない。
発明の要約
本発明は、先行技術による従来の不適当な必要性に、特に1α- ヒドロキシル
化されたビタミンD 化合物の調製に関する従来の合成法に特有の不適切さに応え
ている。本発明の方法は、先行技術の方法では特徴的であるいくつかの分離工程
を省き、簡略化することによって特徴づけられる。
本発明は、1α- ヒドロキシビタミンD の生産法を提供し、これは下記の工程
を含む:(a)ビタミンD から3-(保護されたヒドロキシ)ビタミンD を生成する
工程;(b)前記3-(保護されたヒドロキシ)ビタミンDのC6及びC19での、ディ
ールス−アルダー付加物を生成する工程;(c)前記ディールス−アルダー付加物
を、アリル位置酸化しかつ分解し、トランス1α- ヒドロキシ-3-(保護された
ヒドロキシ)ビタミンD を生成する工程;(d)前記トランス1α- ヒドロキシ-3-
(保護されたヒドロキシ)ビタミンD に照射処理し、シス1α- ヒドロキシ-3-
(保護されたヒドロキシ)ビタミンD を生成する工程;及び(e)前記シス1α-
ヒドロキシ-3-(保護されたヒドロキシ)ビタミンD を脱保護し、1α- ヒドロ
キシビタミンD を生成する工程である。工程(a)及び(b)では、各工程において得
られる生成物の精製を行わない。保護工程(a)は、トリヒドロカルビルシリルオ
キシ試薬を用いることが好ましい。ディールス−アルダー反応体は、N-スルフィ
ニル-p- トルエンスルホンアミド又はジ-(p-トルエンスルホンアミド)セレン
であることが好ましい一方で、アリル位置酸化工程(c)は、二酸化セレニウムジ
オキシド及びN-メチルモルホリンN-オキシドによって達成されることが好ましい
。脱保護工程(e)は、第4級フッ化アンモニウムを使用することが好ましい。
本発明の方法は、1α- ヒドロキシル化が所望であるような、あらゆるビタミ
ンD 誘導体にも適用可能であり、従って、選択された出発材料及び生成物の点で
柔軟性がある。特に本方法は、いずれか公知のビタミンD 代謝産物の、1α- ヒ
ドロキシ体への転換のために、有利に使用することができる。本発明の方法は、
シクロビタミン中間体を使用する公知の合成法と比較して、より良い収量をもた
らし、かつ該方法よりも工程が少ない。本方法は、シス及びトランス1α- ヒド
ロキシビタミンD の無水マレイン酸の公知の分離が無い。
本発明の具体的な適応、組成物の変更、並びに物理的及び化学的特性について
のその他の利点及びより良い理解が、添付図面及び添付されたクレームと共に、
下記に詳細に説明された本発明を考察することによって得られるであろう。
図面の簡単な説明
本発明は、以後、添付図面と共に説明し、図面においては、同じ名称は、全体
を通して同じ要素を意味する:
図1は、ビタミンD から出発する、1α- ヒドロキシ- ビタミンD の合成の一般
図を示す;及び
図2は、ビタミンD2から出発する、1α- ヒドロキシビタミンD2合成の調製工程
を示す。
詳細な説明
本発明は、1α- ヒドロキシビタミンD、すなわち下記一般式(I)を有する化合
物の合成経路を提供する:
(式中、R は最終生成物において望まれる、いずれかの置換基を示す。)。主な
考察の対象は、少なくとも7個の炭素原子を有し、かつ分枝した又は分枝してい
ない、飽和又は不飽和の、ヘテロ置換された−又はヘテロ置換されていない−、
環状又は非環状であるステロイド側鎖類であり、かつこれらは、ビタミンD 分野
の生化学者が用いる標準的方法で測定された、ビタミンD 欠損症ラットの血清カ
ルシウム濃度を、上昇する。側鎖の例は、R が、コレステロール又はエルゴステ
ロールの側鎖、もしくは修飾されたコレステロール又は修飾されたエルゴステロ
ールの側鎖を表すものである。
本発明の1α- ヒドロキシビタミンD 化合物の中で好ましいものは、R が下記
式を有する化合物てある:
(式中、B 及びC は、水素、又はC22及びC23の間に二重結合を形成している炭
素−炭素結合のいずれかであり;R1、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素、
ヒドロキシ、低級アルキル、O-低級アルキル、O-低級アシル、O-芳香族アシル、
又はフッ素のいずれかであり;かつR2は、水素又は低級アルキルである。)。式
(I)を有する化合物の中で最も好ましいのは、1α- ヒドロキシビタミンD3、1
α- ヒドロキシビタミンD2、及び1α- ヒドロキシビタミンD4である。
本出願及びクレームに示された式において、置換基への波線、例えばR1への波
線は、この置換基が立体異性的な別の形で存在することができることを示す。本
願明細書において使用されたアルキル基又はアシル基を修飾する用語“低級”と
は、あらゆる異性体において、例えば、メチル、エチル、ブチル、ホルミルのよ
うな炭化水素基であることを意図する。本願明細書において使用される用語“保
護されたヒドロキシ”とは、水素が、炭化水素基又は類似の基によって置換され
ているようなヒドロキシル基、すなわち、ヒドロキシル基が誘導された形状で存
在することを意味する。保護されたヒドロキシル基は、例えばO-アルキル、O-ア
シル、O-ベンジルオキシカルボニル、及びO-アルキルシリルを含み、好ましくは
トリメチルシリルオキシ、n-ブチルジメチルシリルオキシのようなトリヒドロカ
ルボニルシリルオキシ基であり、最も好ましくはt-ブチルジメチルシリルオキシ
である。
1α- ヒドロキシビタミンD(すなわち式(I)の化合物)の合成は、図1に示さ
れた反応図に従って達成される。この合成は、出発材料として、ビタミンD 化合
物、すなわち式(II)の化合物を使用する。ビタミンD は、まずC3位に保護された
ヒドロキシル基を結合することによって、保護工程を行い、式(III)の化合物を
得る。この保護されたヒドロキシル基は、好ましくは、トリヒドロカルビルシリ
ルオキシ基で、最も好ましくは、t-ブチルジメチルシリルオキシである。次に、
前記3-(保護されたヒドロキシル基)ビタミンD(III)に、ディールス−アルダー
反応を施し、式(IV)のC6及びC19付加物を形成する。このディールス−アルダー
反応の試薬は、トシルアミドのN-スルフィニル又はN-セレン誘導体が好ましい。
その後、このディールス−アルダー付加物(IV)を、C1位でヒドロキシル化し、式
(V)のトランス1α- ヒドロキシ-3-(保護されたヒドロキシ)ビタミンD 化合物
を生じる。次にこのトランス化合物に光異性化を行い、式(VI)のシス1α- ヒド
ロキシ-3-(保護されたヒドロキシ)化合物を得る。その後このシス保護された
ヒドロキシ化合物(VI)を、脱保護し、式(I)の1α- ヒドロキシビタミンD を得
る。中間工程としてディールス−アルダー付加物生成を用いる類似の1α- ヒド
ロキシル化法と異なり(Hesse の米国特許第4,554,105 号及び第4,772,433 号参
照)、前述の保護工程及びディールス−アルダー付加物生成工程の生成物が、精
製を必要とせず、かつこの方法の次工程に直接使用することができることがわか
っている。従って、本発明の方法は、ヒドロキシル化工程が完了するまで、クロ
マトグラフィーもしくは他の分離法を必要としない。
図2について説明すると、これは、1α- ヒドロキシビタミンD2(すなわち式
(6)の化合物)の合成を、具体的に説明している。ビタミンD2を、塩化t-ブチル
ジメチルシリルオキシと反応し、C3位を保護し、3-t-ブチルジメチルシリルオキ
シビタミンD2を生じる。その後、未精製の粗生成物を、ディールス−アルダー試
薬としてN-スルフィニル-p- トルエンスルホンアミド(N- スルフィニルトシルア
ミド;TsN=S=O)又はジ-(p-トルエンスルホンアミド)セレン(TsN=Se=NTs)のいず
れかと反応させ、C6及びC19付加物を生成する。次にこの未精製の付加物を、例
えば二酸化セレン及び共酸化剤(co-oxidant)N-メチルモルホリンN-オキシドによ
る、C1位のアリル位置酸化によって、ヒドロキシル化し、該付加物の分解の間に
、トランス1α- ヒドロキシ-3-t- ブチルジメチルシリルオキシ- ビタミンD2を
生成する。その後このトランス化合物に照射処理し、シス化合物を生成し、これ
を次にテトラ-n- ブチルフッ化アンモニウムのような4級フッ化アンモニウムで
脱保護し、ヒドロキシ基に戻し、1α- ヒドロキシビタミンD2を得る。
この1α- ヒドロキシル化されたビタミンD 化合物及び類似体は、カルシウム
不均衡、ビタミンD 欠乏症及び骨量減少に関連しているさまざまなヒト及び動物
の疾患の治療及び予防のための医薬として医学的に有用である。
下記の実施例は、詳細な説明のためのみに構成されたもので、いかなる場合で
あってもこの内容の注記を限定するものではない。下記の実施例において、温度
は全て摂氏に関するものであり;特に言及しない限りは、生成物の収量は全て重
量百分率で示した。核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、アスペクト(Aspect)3000
コンピューターを装備したブルーカー(Bruker)AM-400(400MHz)で、内部標準
としてCHCl3を用い、CDCl3溶液において測定した。化学シフトは、ppmで記録し
た。赤外(IR)スペクトルは、IBM システム9000 FT-赤外分光光度計で、臭化カリ
ウム(KBr)ペレットとした試料を用いて、記録した。質量分析(MS)は、20eV/Clで
、フィンニガン(Finnigan)MAT-90質量分析計によって記録した。薄層クロマトグ
ラフィー(TLC)は、シリカゲル上で、各実施例に示された溶媒を用いて行った。
融点(mp)は、フーバートーマス(Hoover-Thomas)(キャピラリー)ユニメルト又
はフィッシャージョンズ(カバースリップ型)の融点測定装置を用いて決定した
。
実施例1:1α- ヒドロキシビタミンD2の合成3-t- ブチルジメチルシリルオキシビタミンD2(2):
ビタミンD2(1)(7.95g,20.0mmol)、塩化t-ブチルジメチルシリルオキシル(TBD
MS)(4.56g,30.4mmol)及びイミダゾール(5.2g,76.5mmol)を含有するジクロロメ
タン(100ml)溶液を、室温で2時間攪拌した(ヘキサンを溶媒とする10%酢酸エ
チルにより、TLCでモニタリングした。)。攪拌終了時に、この反応混合物を、
ジクロロメタン500mlで希釈し、かつ水(200ml)、10%塩酸(200ml)、飽和NaCl(20
0ml)、及び水(200ml)で洗浄した。このジクロロメタン溶液を、無水MgSO4上で乾
燥し、減圧下で蒸発乾固した。TLC(ヘキサンを溶媒とする5%酢酸エチル)は
、3-TBDMS ビタミンD2に、ほとんど定量的に転換したことを示した。この粗生成
物3-TBDMS ビタミンD2(2)(-11g)は、更に精製することなく、ディールス−アル
ダー反応(工程2)に使用した。
TLC(ヘキサンを溶媒とする5%酢酸エチル):Rf=0.70
IR(KBr):-2959cm-1に強力なCH伸縮
MS(Cl):511(M+1)(100%)、379(65)1
H NMR(400MHz):δ 6.18(1H,d,6-H)、6.02(1H,d,7-H)、5.21(2H,m,22,23-H)、5
.01(1H,s,19-H)、3.85(1H,m,3-H)、1.03(3H,d,28-H)、0.93(3H,d,21-H)、0.90(9
H,s,t-Bu)、0.85(6H,t,26,27-H)、0.58(3H,s,18-H)、0.08(3H,s,Si-Me)、0.07(3
H,s,Si-Me)。3-t- ブチルジメチルシリルオキシビタミンD2(3a)のディールス−アルダー付加物
無水酢酸エチル100ml を溶媒とする、工程(1)の3-TBDMS ビタミンD2(2)(5.0g
,9.8mmol)の攪拌している溶液に、N-スルフィニル-p- トルエンスルホンアミド
(TsN=S=O)(2.56g,10.3mmol)を添加した。この反応液を、室温、N2下で、1時間
攪拌し、かつTLC(ヘキサンを溶媒とする20%酢酸エチル)で、出発材料(2)が完
全に消費されたことをモニタリングした。その後この溶媒(酢酸エチル)を、減
圧除去し、付加物の粗生成物(3a)を得た。この粗生成物は精製せずに、ヒドロキ
シル化に用いた。
TLC(ヘキサンを溶媒とする20%酢酸エチル):Rf=0.28
IR(KBr):-2959cm-1に強力なCH伸縮、1498、1302cm-1にSO2の伸縮1
H NMR(400MHz):δ 7.80(2H,d,芳香)、7.42(2H,d,芳香)、5.21(2H,m,22,23-H)
、4.80(1H,m)、3.95(1H,m,3-H)、3.65(1H,m)、3.28(1H,m)、2.45(3H,s,Me)、1.0
3(3H,d,28-H)、0.93(3H,d,21-H)、0.90(9H,s,t-Bu)、0.85(6H,t,26,27-H)、0.58
(3H,s,18-H)、0.08(3H,s,Si-Me)、0.07(3H,s,Si-Me)。3-t- ブチルジメチルシリルオキシビタミンD2(3b)のディールスアルダー付加物
無水ジクロロメタン100ml を溶媒とする、3-TBDMS ビタミンD2(2)(5.0g,9.8m
mol)の攪拌している溶液に、TsN=Se=NTs(2.56g,10.3mmol)を添加した。この反
応液を、室温、N2下で、12時間攪拌し、かつTLC(ヘキサンを溶媒とする20%酢
酸エチル)で、出発材料(2)が消費されたことをモニタリングした。その後この
溶媒(ジクロロメタン)を、減圧除去し、付加物の粗生成物(3b)を得た。この粗
生成物は精製せずに、ヒドロキシル化に用いた。
TLC(ヘキサンを溶媒とする20%酢酸エチル):Rf=0.54
IR(KBr):-2959cm-1に強力なCH伸縮、1487、1285cm-1にSO2の伸縮1
H NMR(400MHz):δ 7.80(2H,d,芳香)、7.42(2H,d,芳香)、5.21(2H,m,22,23-H)
、4.80(1H,m)、3.95(2H,m)、3.85(1H,m)、3.28(1H,m)、2.45(3H,s,Me)、1.03(3H
,d,28-H)、0.93(3H,d,21-H)、0.90(9H,s,t-Bu)、0.85(6H,t,26,27-H)、0.58(3H,
s,18-H)、0.08(3H,s,Si-Me)、0.07(3H,s,Si-Me)。トランス1α- ヒドロキシ-3-t- ブチルジメチルシリルオキシビタミンD2(4)
無水エチルアルコール200mlを溶媒とする二酸化セレン(1.30g,11.6mmol)溶液
に、N-メチルモルホリンオキシド(13.0g,111.1mmol)及び炭酸水素ナトリウム(1
0.0g,119.0mmol)を添加した。その後、この反応液を、55〜60℃に温めた。次に
、乾燥ジクロロメタン50mlに溶解した前述のディールス−アルダー付加物(3a
又は3b)(7.5g)を、この溶液に加えた。この反応液を、55〜60℃で1時間、N2下
で攪拌した(ヘキサンを溶媒とする20%酢酸エチルを用いTCLでモニタリング)
。その後エチルアルコールを、ほとんど減圧除去した。この反応混合物を、エー
テル1600mlに希釈した。このエーテル溶液を、水(500ml)で洗浄した。この水相
を、エーテル(500ml)で抽出した。一緒にしたエーテル溶液を、順に10%HCl(2
×500ml)、NaCl(飽和)(2×500ml)、及び水(500ml)で洗浄し、かつその後MgSO4
で乾燥した。この粗生成物を、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(
200メッシュ;ヘキサンを溶媒とする10%酢酸エチル)で精製し、固形のトラン
ス1α- ヒドロキシ-3-TBDMSビタミンD2(4)2.4gを得た。
TLC(ヘキサンを溶媒とする5%酢酸エチル):Rf=0.10
IR(KBr):-3413cm-1に強力なOH伸縮、-2959cm-1に強力なCH伸縮
MS(Cl):527(M+1)(69%)、395(100)1
H NMR(400MHz):δ 6.53(1H,d,6-H)、5.88(1H,d,7-H)、5.20(2H,m,22,23-H)、
5.09(1H,s,19-H)、4.52(1H,m,3-H)、4.20(1H,m,3-H)、1.04(3H,d,28-H)、0.91(3
H,d,21-H)、0.85(9H,s,t-Bu)、0.80(6H,t,26,27-H)、0.58(3H,s,18-H)、0.10(6H
,s,Si-Me)。1α- ヒドロキシ-3-t- ブチルジメチルシリルオキシビタミンD2(5)
:
トリエチルアミン(1ml)及びアントラセン(0.50g,2.81mmol)を含有するベンゼ
ン(500ml)を溶媒とする、工程(3)のトランス1α- ヒドロキシ-3-TBDMSビタミン
D2(2.3g,437mmol)溶液を、完全に脱気した。ハノビア(Hanovia)UV ランプ(λma
x 360nm)を、反応槽から15cmの水冷ジャケットの外側に配置した。前述の溶液に
、2時間照射した。その後溶媒を減圧除去した。この粗生成物を、カラムクロマ
トグラフィー(ヘキサンを溶媒とする5%酢酸エチル)で精製し、シス1α- ヒ
ドロキシ-3-TBDMSビタミンD2(5)1.3gを得た。
TLC(ヘキサンを溶媒とする5%酢酸エチル):Rf=0.20
IR(KBr):-3400cm-1に強力なOH伸縮、-2959cm-1に強力なCH伸縮
MS(Cl):413(M+1)(24%)、395(M=1-H2)(100)、377(M+1-2H2O)(27%)1
H NMR(400Hz):δ 6.53(1H,d,6-H)、6.05(1H,d,7-H)、5.28(2H,m,22,23-H)、5
.20(1H,s,19-H)、4.99(1H,s,19-H)、4.44(1H,m,1-H)、4.20(1H,m,3-H)、1.05
(3H,d,28-H)、0.96(3H,d,21-H)、0.90(9H,s,t-Bu)、0.86(6H,t,26,27-H)、0.58(
3H,s,18-H)、0.09(3H,s,Si-Me)、0.04(3H,s,Si-Me)。シス1α- ヒドロキシ- ビタミンD2(6)
:
テトラヒドロフラン(THF)50mlを溶媒とする工程(4)のシス3-TBDMS-1α- ヒド
ロキシ- ビタミンD2(5)(0.9g,171mmol)の攪拌している溶液に、n-ブチルフッ
化アンモニウム(THFを溶媒とする1M溶液を、5ml、5.00mmol)を添加した。得ら
れる溶液を、室温で、13時間攪拌した(ヘキサンを溶媒とする40%酢酸エチルを
用いるTCLでモニタリング)。その後ほとんどのTHFを減圧除去した。その残渣を
酢酸エチル300mlで希釈した。この酢酸エチル溶液を、水(2×100ml)で洗浄し、
無水MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。この粗生成物を、シリカゲルを用いるカラ
ムクロマトグラフィー(ヘキサンを溶媒とする40%酢酸エチル)で精製し、シス
1α- ヒドロキシビタミンD2(6)0.51gを得た。
融点:153〜155℃(ギ酸メチルから)、(文献値:138〜140℃)
IR(KBr):-3420cm-1に強力なOH伸縮、-2959cm-1に強力なCH伸縮
MS(Cl):413(M+1)(24%)、395(M+1-H2)(100)、377(M+1-2H2O)(27%)1
H NMR(400MHz):δ 6.38(1H,d,6-H)、6.02(1H,d,7-H)、5.33(1H,s,19-H)、502
1(2H,m,22,23-H)、5.00(1H,s,19-H)、4.42(1H,m,1-H)、4.23(1H,m,3-H)、1.02(3
H,d,28-H)、0.92(3H,d,21-H)、0.83(6H,t,26,27-H)、0.56(3H,s,18-H)。
前述の融点が153〜155℃の物質は、公知の方法で調製された参照試料と、すべ
ての点で一致した。ビタミンD225gから出発するこの方法を用いて、シス1-α-
ヒドロキシビタミンD2が5g得られた。
前述の方法に類似した方法を用い、出発材料として他のビタミンD 化合物、例
えばビタミンD3、ビタミンD4、25- ヒドロキシビタミンD3、24,25-ジヒドロキシ
ビタミンD3、25,26-ジヒドロキシビタミンD3を用いて、それらの1α- ヒドロキ
シル誘導体を得る。本発明の1α- ヒドロキシル化された化合物は、1α- ヒド
ロキシル基の存在が、該ビタミンの活性及び有効性を増強するので、例えばカル
シウム及びミネラルの不均衡状態、及びビタミンD 反応性の骨疾患の治療のよう
な、ヒト及び動物の医療における有効な治療薬の用途において特に利点がある。
本発明をここでいくつか具体的に記載しかつ例示しているが、記載された範囲
内で行われる、変更、追加及び省略を含む各種の修飾について、当業者は理解す
るであろう。従ってこれらの修飾も、本発明によって包含され、かつ本発明の範
囲が、単に添付されたクレームに法律的に従う最も幅のある解釈によってのみ限
定されることを意図する。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 グオ リーアン
アメリカ合衆国 イリノイ州 60440 ボ
ーリングブルック グリーン マウンテン
ドライヴ 221
(72)発明者 ペンマスター ラージュ エイ
アメリカ合衆国 イリノイ州 60440 ボ
ーリングブルック ダーナム レーン
811