JPH1046300A - 靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼 - Google Patents
靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼Info
- Publication number
- JPH1046300A JPH1046300A JP22170296A JP22170296A JPH1046300A JP H1046300 A JPH1046300 A JP H1046300A JP 22170296 A JP22170296 A JP 22170296A JP 22170296 A JP22170296 A JP 22170296A JP H1046300 A JPH1046300 A JP H1046300A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tool steel
- toughness
- speed tool
- wear resistance
- raw material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
鋼を得る。 【解決手段】 重量%で、C:0.7〜1.3%、S
i:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:3.0
〜4.6%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W
+2Mo)で3.5〜12.0%、V:2.0〜4.0
%を含有し、残部が実質的にFeと不可避的不純物から
なり、マルテンサイト基地中の未固溶炭化物の総量が面
積%にて1〜10%である粉末高速度工具鋼であって、
望ましくは、焼き戻し後のミクロ組織中に点在する原料
粉末の痕跡が長径/短径の比で1〜15である。
Description
加工用金型や切削工具その他各種の工具に用いられる粉
末冶金法による高速度工具鋼において、優れた靭性と耐
摩耗性を同時に兼ね備えた粉末高速度工具鋼に関する。
は、その使用環境における強度に加えて、靭性と耐摩耗
性が要求され、さらに、近年においては、より過酷な環
境での使用が求められており、それに伴う高速度工具鋼
の上記特性の向上が課題となっている。
法による高速度工具鋼が多く用いられてきたが、溶製法
によって製造された高速度工具鋼は組織中の炭化物が均
一に分散しておらず、またサイズも均一でないため、素
材の採取位置によって靭性値がばらつくことが避けられ
ない。このため、例えば素材を金型として使用した場
合、部分的な靭性のばらつきの程度によっては、使用中
に割れが発生する場合があり、より過酷な環境での使用
においては、金型が一瞬にして割れてしまう場合もあっ
た。
手段として、粉末冶金法によって製造する粉末高速度工
具鋼の使用が有効である。粉末高速度工具鋼は、ガスア
トマイズ法により製造した原料粉末を熱間静水圧プレス
(HIP)によって高温加圧成形した後、熱間鍛造、熱
間圧延のような熱間加工を施すことにより製造される。
固相接合されることで成形されるが、原料粉末の表面は
酸化などによって少なからず変質している場合があり、
その結果、成形後の素材中には原料粉末間が十分に接合
されない結合度の低い境界があった。この接合が不十分
な境界は、焼入れ、焼戻しを経た後にも解消されず、粉
末高速度工具鋼の靭性を劣化させる原因となる。
下率の熱間加工を施し、原料粒を展伸することによって
該境界に存在する変質層を砕き、新生面の出現による原
料粉末間の接合度を高めることが必要であった。なお、
ここで言う圧下率とは、熱間加工の方向に垂直な断面に
おいて、加工前と後での断面積の比であり、鍛造比、圧
延比に代表されるものである。
られた粉末高速度工具鋼は、原料粉末間の接合性に優
れ、また、結晶粒が微細であり、焼入れ後においてマル
テンサイト基地中に固溶せずに存在する炭化物、すなわ
ち未固溶炭化物が均一に分布しており、この未固溶炭化
物は焼戻し後においても変化しないため、靭性および耐
摩耗性に優れている。さらに、上述の粉末高速度工具鋼
は、組織自体が均一であるため、強度や靭性の異方性に
起因する使用中の工具の破損防止にも効果がある。
て、さらに靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具
鋼が提案されている。例えば、不純物であるPを限定す
ることで靭性を改善するものとして特開平7−1139
8が、炭化物の量を制限することで靭性を改善するもの
として特表平6−509610があり、また、炭化物の
サイズを限定することで靭性を改善するものとして特開
平1−152242が提案されているが、これらの提案
も高圧下率の熱間加工を施して得られる粉末高速度工具
を前提としたものである。
具鋼は、靭性および耐摩耗性に優れるものとして有効な
ものである。しかし、近年のより過酷な使用条件下に加
えて、高速度工具はさらにそれ自体の大型化が進んでお
り、従来の粉末高速度工具鋼では、靭性を得るために高
鍛造比の熱間加工が必要であり、その結果として、加工
方向に垂直な断面積が小さいものとなるため大型の工具
としての適用が困難である。
大型の素材を得るために単に鍛造比を減じれば、靭性に
ばらつきが出ることは必至であり、靭性を上げるために
炭化物の量を制限すれば、耐摩耗性の低下を招いてしま
う。
工における鍛造比が低くても十分な靭性が得られ、その
結果、大型の工具にも適用できる靭性および耐摩耗性に
優れた粉末高速度工具鋼を提供することを目的とする。
比で加工した粉末高速度工具鋼は、原料粉末間の境界面
が新生面によって結合されているため接合性に優れ、高
靭性を備えたものとなる。よって、構成元素の成分は耐
摩耗性の向上に重点を置いて設定することで、良好な耐
摩耗性と靭性を兼備した粉末高速度工具鋼を得ることが
できる。
の接合度の低下によって靭性に劣る粉末高速度工具鋼と
なってしまい、もはや耐摩耗性の向上に重点を置いた成
分では靭性の不足を補うことはできない。そこで、本発
明者らは、粉末高速度工具鋼の成分および組織を見直
し、高鍛造比の適用はもちろん低鍛造比の適用によって
も十分な靭性と耐摩耗性を兼備する粉末高速度工具鋼を
達成するため、耐摩耗性および靭性に対する未固溶炭化
物の影響と、靭性に対する熱間加工での鍛造比の影響と
の関連性について、詳細な検討を行った。
マルテンサイト基地中のMC、M6C型に代表される未
固溶炭化物を適確に制御すれば、工具鋼に要求される耐
摩耗性と靭性をバランスよく維持できることを突きと
め、さらに、この効果を達成できる未固溶炭化物と鍛造
比の範囲の組み合わせを見いだした。さらに、本発明者
らは、上記の効果を達成するにあたって、焼入れ後の組
織中により最適な量および種類の未固溶炭化物が存在す
るような構成元素と組成を併せて明確化し、本発明に至
った。
重量%で、C:0.7〜1.3%、Si:2.0%以
下、Mn:2.0%以下、Cr:3.0〜4.6%、W
またはMoの1種または2種をW当量(W+2Mo)で
3.5〜12.0%、V:2.0〜4.0%を含有し、
残部が実質的にFeと不可避的不純物からなり、マルテ
ンサイト基地中の未固溶炭化物の総量が面積%にて1〜
10%に設定することで、靭性を得るために必要となる
最低の鍛造比を低く設定することができ、その結果、大
型の工具にも対応できる靭性および耐摩耗性に優れた粉
末高速度工具鋼を提供できる。
末高速度工具鋼の任意断面積に占める未固溶炭化物の総
断面積の割合である。図2は焼戻し後の組織中に存在す
る未固溶炭化物の一例を示すものであり、表面を研磨
後、光学顕微鏡にて1000倍で観察したものである。
この場合、未固溶炭化物の面積%は7%である。
入れ後の粉末高速度工具鋼の組織中に残る原料粉末の痕
跡には相関関係があることを突きとめ、小さな鍛造比で
も十分な靭性が確保できる組織条件として、ミクロ組織
中に残る原料粉末の痕跡の状態を定義づけた。なお、こ
こで言う焼入れ後の組織中に残る原料粉末の痕跡とは、
ミクロ組織中において個々の原料粉末が確認できる状態
であり、この痕跡は焼戻し後の組織においても確認が可
能である。図1は、焼戻し後の組織中に残る原料粉末の
痕跡の一例を示すものであり、確認を容易とするため
に、ナイタールでエッチング処理を施し、偏光顕微鏡に
て35倍で観察したものである。
た粉末高速度工具鋼は、原料粉末が展伸されるため原料
粉末間の境界が不明確になり、焼入れ後のミクロ組織中
に原料粉末の痕跡を確認することは困難である。しか
し、鍛造比を下げていくにつれ、原料粉末間の境界が確
認しやすくなり、さらに鍛造比が小さくなると原料粉末
の痕跡がガスアトマイズ粉の形状に近い状態で確認され
やすくなる。
末の痕跡を確認できないものは、高鍛造比で熱間加工し
た粉末高速度工具鋼に対応するのである。そして、本発
明の特徴の一つである低い鍛造比で熱間加工すると、鍛
造比を減じていくにつれて形状が確認できる原料粉末が
現れだし、その形状は鍛造比に応じて展伸されるため、
原料粉末の展伸度によって鍛造比を定義することができ
るのである。
た粉末高速度工具鋼は、焼入れ後のミクロ組織中に原料
粉末の痕跡が点在する粉末高速度工具鋼で特定でき、好
ましくは、点在する原料粉末の痕跡が長径/短径の比で
1〜15である粉末高速度工具鋼であれば、低鍛造比を
適用したものでも良好な靭性と耐摩耗性を達成できる。
量%で、炭素当量をCeq=0.06Cr+0.063
Mo+0.06W+0.2Vとするとき、Cが−0.3
5≦C−Ceq≦−0.10の条件をみたすことで焼入
れ後のマルテンサイト基地中の未固溶炭化物を最適に調
整することができ、本発明の効果を最大限に引き出すこ
とができる。
使用用途に応じて、Feの一部を重量%で、10%以下
のCoまたはNiで、あるいはVの一部を重量%で、2
%以下のNbで置換することでも、同一の効果を備える
靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼を得るこ
とができる。
における鍛造比を減じても、良好な靭性と耐摩耗性をバ
ランスよく維持できる未固溶炭化物と鍛造比の範囲の関
係を見いだしたことにある。従来の粉末高速度工具鋼
は、その製造工程において、靭性を得るために上述した
ような高鍛造比の熱間加工を施こすことが当然であった
ため、熱間加工後の素材は加工方向に対する断面積が小
さいものとなる。
い鍛造比を適用しても十分な耐摩耗性と靭性を兼ね備え
ているので、大型の工具の適用に必要な大きさを十分に
確保することができる。すなわち、熱間加工において、
低鍛造比で熱間加工した粉末高速度工具鋼は本発明が初
めてであり、本発明によって初めて十分な耐摩耗性と靭
性を兼備し、かつ大型の工具への適用も可能となる粉末
高速度工具鋼が供給できるのである。
な靭性と耐摩耗性を兼ね備える粉末高速度工具鋼を得る
ためには、製造工程において高鍛造比で熱間加工するこ
とが望ましいが、大型の工具に適用できる大きさの粉末
高速度工具鋼を得るためには、鍛造比を減じる必要があ
り、よって靭性の劣化が生じる。すなわち、本発明は鍛
造比を下げることによる靭性の劣化を靭性に影響を及ぼ
す未固溶炭化物を最適に調整することで補い、十分な靭
性と耐摩耗性を同時に達成するものである。
化物が多すぎると、もはや鍛造比を上げても靭性の劣化
を防ぐことが困難となるため、未固溶炭化物の上限を面
積%で10%とした。また、未固溶炭化物が少な過ぎる
と、良好な耐摩耗性の確保ができないため、未固溶炭化
物の下限を面積%で1%とした。
る炭化物の量および種類は、構成元素の種類および組成
によるところが大きく、上記の効果を達成するために、
焼入れ後のマルテンサイト基地中により最適な量および
種類の未固溶炭化物が存在するような組成を以下のよう
に定めた。
の量と、その作用について述べる。Cは、同時に添加す
るCr、W、MoおよびVと結合して固い炭化物を形成
し、未固溶炭化物として耐摩耗性の向上に効果があると
ともに、焼入れ時のオーステナイト化温度まで加熱した
際にマトリクス中に固溶して、焼戻しの際に再び炭化物
として析出する、いわゆる二次効果の作用を持つ。工具
鋼に必要とされる耐摩耗性を得るためには、少なくとも
0.7%以上の添加が必要であるが、1.3%を超える
と炭化物が粗大化し靭性が劣化するので、Cの添加量
は、0.7〜1.3%とした。
と同時に、硬さおよび耐熱性を向上させる元素であり、
添加することが好ましい。添加する場合には、2%を超
えると靭性が劣化するので上限を2%とした。Mnは、
精錬過程における脱酸元素であると同時に、MnSとし
て析出することで不純物として含有するSの有害性を抑
える効果があり、添加することが望ましい。添加する場
合には、2%を超えると靭性が劣化するので上限を2%
とした。
ってM23C6型炭化物として析出し二次硬化に効果を示
す元素である。上述の二次硬化性を得るには、少なくと
も3.0%以上の添加が必要であるが、4.6%を超え
て添加すると炭化物の量が増え、さらに焼戻しの際に炭
化物の凝集を促進するためマトリックスの靭性が低下す
るため、Crの添加量は、3.0〜4.6%とした。
物を形成し、未固溶炭化物として耐摩耗性の向上に効果
があるとともに、焼戻しによる二次効果の作用を持つ元
素である。この効果はMoの方が大きく、重量%で、W
の2倍の影響力を持つため、本発明においては両元素の
添加量をW当量(W+2Mo)として規定した。これら
の元素は、W当量で12%を超えて添加すると、未固溶
炭化物および二次硬化炭化物を多量に増やすため靭性を
劣化させてしまい、3.5%未満では、二次硬化の効果
が軽微になる。よって、 WまたはMoの添加量は、W
またはMoの1種または2種をW当量(W+2Mo)で
3.5〜12.0%とした。
り、MC型未固溶炭化物を形成することで耐摩耗性の向
上に効果がある。耐摩耗性向上の目的からは多量に添加
することが望ましいが、VC炭化物はマトリックスとの
密着性が悪いために多量に存在すると靭性の劣化が生じ
る。そのため、本発明の効果を達成するにあたって、添
加量を2〜4%とした。
あれば、マルテンサイト基地中の未固溶炭化物の総量を
面積%にて1〜8%に制御することが可能である。
末高速度工具鋼を得るにあたって、さまざまな鍛造比に
よる熱間加工を行った場合、その鍛造比と得られる靭性
値の関係をシャルピー衝撃値で表したものが図3であ
る。なお、図3において、本発明鋼は表1の試料1の組
成を、比較鋼は試料26の組成を有するものである。本
発明の粉末高速度工具鋼は、低鍛造比を適用した場合で
も、従来の高鍛造比による粉末高速度工具鋼のシャルピ
ー衝撃値に匹敵することがわかる。
鍛造比の下限を1としても良好な靭性と耐摩耗性を達成
することができ、この結果、大型の工具に適用できる大
きさの粉末高速度工具鋼を得ることができるのである。
るための鍛造比の上限としては、15に設定した。図3
に示すように、鍛造比が15以下の領域は、靭性に対す
る鍛造比の影響が従来の粉末高速度工具鋼に比べて非常
に大きく、靭性自体も従来の粉末高速度工具鋼より優れ
た値を示す。つまり、低鍛造比の熱間加工であっても優
れた靭性を得ることができるという本発明の効果を顕著
に示す鍛造比の上限は15であり、鍛造比が15を超え
ると、もはや靭性値の大きな向上は見うけられないこと
から、本発明の鍛造比の上限を15とした。もちろん、
本発明の粉末高速度工具鋼は、鍛造比が15を超えた場
合でも、十分な靭性と耐摩耗性を得られるものである。
おける鍛造比と焼入れ後の粉末高速度工具鋼の組織中に
残る原料粉末の痕跡には相関関係があることを突きと
め、鍛造比を組織中に残る原料粉末の痕跡の状態で定義
づけた。
て、本発明の鍛造比および加工方向に応じて展伸された
原料粉末の痕跡は、高い鍛造比の場合は確認が困難であ
るが、鍛造比を下げていくことで確認が可能となる領域
がある。つまり、焼入れ後のミクロ組織中に原料粉末の
痕跡を確認できないものは高鍛造比を適用した粉末高速
度工具鋼に対応し、低鍛造比を適用した粉末高速度工具
鋼は原料粉末の痕跡の展伸度によって鍛造比を定義する
ことができるのである。
に確認できる原料粉末の痕跡の状態との関係を説明す
る。ガスアトマイズ法による原料粉末は実質的に球体で
あるため、熱間静水圧プレスのように等方的に加圧成形
して得られた素材中においても該原料粉末は実質的に球
体を保つ。
造を施した場合、素材中の原料粉末における展伸方向と
垂直な断面の形状は円を保ち、展伸方向と平行な断面の
形状は楕円となる。例えば、原料粉末の球径を4とする
素材に鍛造比4の熱間加工をすれば、鍛造後の原料粉末
の垂直断面である円の最大直径は2となる一方で、平行
断面である楕円の最大長径は8となり、よって鍛造後の
原料粉末の痕跡の長径/短径の比は4となる。
熱間加工をした素材の展伸方向と平行な断面における原
料粉末の痕跡の長径/短径の比は4であり、よって、熱
間加工における鍛造比を組織中に残る原料粉末の痕跡の
状態で特定することができるのである。よって、図1の
原料粉末の痕跡は、長径/短径の比が2であることか
ら、鍛造比2で熱間加工したものとして特定することが
できる。
る本発明の粉末高速度工具鋼を確保するための鍛造比は
1〜15であり、焼入れ後のミクロ組織中に確認できる
原料粉末の痕跡の状態で特定すると長径/短径の比で1
〜15となる。
中の未固溶炭化物の総量が面積%にて1〜10%である
粉末高速度工具鋼に対しては、低鍛造比を適用した結
果、ミクロ組織中に原料粉末の痕跡が点在していても靭
性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼を得ること
ができ、具体的には、原料粉末の痕跡が長径/短径の比
で1〜15であることが望ましい。
て、マルテンサイト基地中により最適な量および種類の
未固溶炭化物が存在するためには、炭化物を形成するC
とCr、Mo、WおよびVのそれぞれの添加量を相互に
調整することが望まれる。
で規定でき、本発明では、重量%で、炭素当量をCeq
=0.06Cr+0.063Mo+0.06W+0.2
Vとするとき、−0.35≦C−Ceq≦−0.10の
条件をみたすことで本発明の効果を最大に引き出すマル
テンサイト基地中の未固溶炭化物をさらに最適に調整す
ることができる。C−Ceq<−0.35だと、形成さ
れる炭化物が少なく耐摩耗性および二次硬化性に劣り−
0.10<C−Ceqだと、マトリックスの靭性が劣化
するので−0.35≦C−Ceq≦−0.10とした。
使用用途に応じて、Feの一部を重量%で、10%以下
のCoまたはNiで、あるいはVの一部を重量%で、2
%以下のNbで置換することでも、同一の効果を備える
靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼を得るこ
とができる。
が、マトリックスの靭性を低下させてしまう。本発明の
用途において、摩耗の進行が発熱に起因するような使用
環境では、ある程度の靭性を犠牲にしてでも、耐熱性の
向上が優先され、 Feとの置換によるCoの添加が必
要である。しかし、6%を超えて置換、添加すると、靭
性の低下により本発明の効果を達成できないため、上限
を6%とした。
特に靭性の要求される場合にはFeとの置換によるNi
の添加が効果的であるが、2%を超えるとA1点の低下
による耐熱性の劣化および焼戻し硬さの上昇による難加
工性をきたすため、Feとの置換は上限を2%とした。
化物を形成し、Vと同時に耐摩耗性の向上に効果があ
る。特に耐摩耗性の要求される場合には、Vとの置換に
よるNbの添加が効果的であるが、2%を超えると靭性
が著しく低下するため、Vとの置換は上限を2%とし
た。
速度工具鋼において、マルテンサイト基地中の未固溶炭
化物の総量が面積%にて1〜10%であり、さらにミク
ロ組織中の原料粉末の痕跡が長径/短径の比で1〜15
である粉末高速度工具鋼は本発明が初めてであり、工具
鋼に要求される耐摩耗性と靭性をバランスよく兼ね備え
たものであって、これによって初めて大型の工具にも適
用することができるのである。
する。まず、本発明および比較例として、窒素ガスアト
マイズ法による原料粉末を熱間静水圧プレスで加圧成形
することによって得られた試料を用意した。その組成を
表1に示す。なお、WeqはW当量(W+2Mo)を、
Ceqは炭素当量0.06Cr+0.063Mo+0.
06W+0.2Vを、ΔCは(C−Ceq)をそれぞれ
表すものである。
鍛造比による熱間加工を施し、続いて共晶温度よりも8
0℃低い温度での焼入れ、560℃×1hr.×2回の
焼戻しを経て、本発明の効果を評価する試料とした。な
お、上述した鍛造比および試料の評価結果を表1に併せ
て記載する。
固溶炭化物の面積%、ロックウェル硬さ、シャルピー衝
撃値そして、比摩耗量を採用した。靭性の評価基準であ
るシャルピー衝撃値は、10mm角×長さ60mmの評
価試料に10Rのノッチを設けたものを試験試料とし
た。耐摩耗性の評価基準である比摩耗量は、大越式迅速
摩耗試験法により、相手材をSCM415とし、摩擦距
離400m、荷重6.8kgf、摩擦速度3.5m/s
の条件で試験をして求めた。
9について述べる。試料15〜29は、いずれも本発明
の組成を有しない試料であり、本発明である低鍛造比1
0によって熱間圧延されたものであるが、試料15、1
6、19、20、22、26は、本発明の未固溶炭化物
量を満足しないものである。
すが、本発明の未固溶炭化物の形成に重要なVが低いた
め、耐摩耗性に劣っている。試料15、16に対して、
Weqを高めた試料19、20および24、25であっ
ても、Vが低いため、やはり耐摩耗性に劣る。
工具などに多く使用されているものであり、本発明のV
を満たすものであるが、CrおよびWeqが高いため靭
性に劣る。試料27は、本発明の未固溶炭化物量を満た
すものであるが、 Weqが高いため、やはり靭性に劣
る。残りの比較例については、本発明のWeqに近いま
たは、満たすものであるが、Vが高いため、十分な靭性
を確保できない。
る。表1において、本発明の組成を満たしかつ、本発明
の低鍛造比の熱間加工をした試料1〜14は、焼戻し後
のマルテンサイト組織中のMC、M6C型未固溶炭化物
が本発明を満たしている。
さ、衝撃値および比摩耗性について、優れた値を示し、
優れた靭性と耐摩耗性をバランスよく備えた粉末高速度
工具鋼であることがわかる。しかも、試料5〜9は、従
来の粉末高速度工具鋼にはない低鍛造比8によって熱間
加工された試料であるが、これにおいても十分な靭性と
耐摩耗性をバランスよく備えていることがわかる。
バランスを綿密に制御し、本発明の未固溶炭化物量を満
たすことで、低鍛造比であっても、優れた靭性と耐摩耗
性をバランスよく備えた粉末高速度工具鋼を達成するこ
とができるのである。
度工具鋼において、熱間加工での鍛造比と組織中の未固
溶炭化物とを制御することによって、鍛造比を低く抑え
ても十分な靭性が得られ、大型の工具にも適用できる靭
性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼を提供する
ことが可能となる。したがって本発明の粉末高速度工具
鋼は、大型の高速度工具にも対応が可能であり、工業上
の効果は極めて大きい。
の痕跡の一例を示す金属ミクロ組織写真である。
化物の一例を示す金属ミクロ組織写真である。
衝撃値の関係を示す図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.7〜1.3%、S
i:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:3.0
〜4.6%、WまたはMoの1種または2種をW当量(W
+2Mo)で3.5〜12.0%、V:2.0〜4.0
%を含有し、残部が実質的にFeと不可避的不純物から
なる粉末高速度工具鋼であって、マルテンサイト基地中
の未固溶炭化物の総量が面積%にて1〜10%であるこ
とを特徴とする靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度
工具鋼。 - 【請求項2】 焼き戻し後のミクロ組織中に原料粉末の
痕跡が点在していることを特徴とする請求項1に記載の
靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼。 - 【請求項3】 点在する原料粉末の痕跡が長径/短径の
比で1〜15であることを特徴とする請求項2に記載の
靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼。 - 【請求項4】 重量%で、炭素当量をCeq=0.06
Cr+0.063Mo+0.06W+0.2Vとすると
き、Cが−0.35≦C−Ceq≦−0.10の条件を
みたすことを特徴とする請求項1ないし3に記載の靭性
および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼。 - 【請求項5】 Feの一部を重量%で、10%以下のC
oで置換することを特徴とする請求項1ないし4に記載
の靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼。 - 【請求項6】 Feの一部を重量%で、2%以下のNi
で置換することを特徴とする請求項1ないし5に記載の
靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼。 - 【請求項7】 Vの一部を重量%で、2%以下のNbで
置換することを特徴とする請求項1ないし6に記載の靭
性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22170296A JP3748131B2 (ja) | 1996-08-05 | 1996-08-05 | 靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22170296A JP3748131B2 (ja) | 1996-08-05 | 1996-08-05 | 靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1046300A true JPH1046300A (ja) | 1998-02-17 |
JP3748131B2 JP3748131B2 (ja) | 2006-02-22 |
Family
ID=16770944
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22170296A Expired - Fee Related JP3748131B2 (ja) | 1996-08-05 | 1996-08-05 | 靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3748131B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008248307A (ja) * | 2007-03-30 | 2008-10-16 | Kubota Corp | 高靱性高速度鋼系焼結合金 |
-
1996
- 1996-08-05 JP JP22170296A patent/JP3748131B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008248307A (ja) * | 2007-03-30 | 2008-10-16 | Kubota Corp | 高靱性高速度鋼系焼結合金 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP3748131B2 (ja) | 2006-02-22 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3273404B2 (ja) | 厚手高硬度高靱性耐摩耗鋼の製造方法 | |
US5252119A (en) | High speed tool steel produced by sintering powder and method of producing same | |
EP0875588B1 (en) | Wear resistant, powder metallurgy cold work tool steel articles having high impact toughness and a method for producing the same | |
US5648044A (en) | Graphite steel for machine structural use exhibiting excellent free cutting characteristic, cold forging characteristic and post-hardening/tempering fatigue resistance | |
JPH0441616A (ja) | 低硬度で且つ耐摩耗性および曲げ加工性に優れた耐摩耗鋼の製造方法 | |
US20200190638A1 (en) | Powder-Metallurgically Produced Steel Material Containing Hard Material Particles, Method for Producing a Component from Such a Steel Material, and Component Produced from the Steel Material | |
JP6569845B1 (ja) | 高炭素熱延鋼板およびその製造方法 | |
JP2725333B2 (ja) | 粉末高速度工具鋼 | |
JPH07109545A (ja) | 引張強度、疲労強度および被削性に優れる熱間鍛造用非調質鋼 | |
CN113692456A (zh) | 剪切加工性优异的超高强度钢板及其制造方法 | |
JPH0260748B2 (ja) | ||
EP1669468B1 (en) | Steel product for induction hardening, induction-hardened member using the same, and methods for producing them | |
JPS58734B2 (ja) | 精密打抜き加工用低合金鋼板(帯)の製造法 | |
JPH0978199A (ja) | 高硬度、高靭性冷間工具鋼 | |
JPH02182867A (ja) | 粒末工具鋼 | |
JPH1046300A (ja) | 靭性および耐摩耗性に優れた粉末高速度工具鋼 | |
JP3300511B2 (ja) | 強靭性、耐久比、降伏比および被削性に優れる亜熱間鍛造用鋼の製造方法 | |
JP3236883B2 (ja) | 肌焼鋼及びそれを用いた鋼管の製造方法 | |
CN113832415A (zh) | 一种x80级耐高温管线钢及其制造方法 | |
JPH05171373A (ja) | 粉末高速度工具鋼 | |
JPH07116550B2 (ja) | 低合金高速度工具鋼およびその製造方法 | |
JPH0881734A (ja) | 窒化処理用鋼およびその製造方法 | |
JPH1112685A (ja) | 窒化用鋼および機械構造部品の製造方法 | |
JPH06145884A (ja) | 耐塑性流動性に優れる熱間加工用金型 | |
JP3320958B2 (ja) | 被削性および耐焼割れ性に優れた機械構造用鋼材およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20041108 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20041203 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050128 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050916 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20051111 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20051018 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20051124 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091209 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101209 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101209 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111209 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121209 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121209 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131209 Year of fee payment: 8 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |