JPH1044388A - 和紙への着色方法及び着色装置並びに該着色がなされた和紙を利用した加工品 - Google Patents

和紙への着色方法及び着色装置並びに該着色がなされた和紙を利用した加工品

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JPH1044388A
JPH1044388A JP8219120A JP21912096A JPH1044388A JP H1044388 A JPH1044388 A JP H1044388A JP 8219120 A JP8219120 A JP 8219120A JP 21912096 A JP21912096 A JP 21912096A JP H1044388 A JPH1044388 A JP H1044388A
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japanese paper
paper
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JP8219120A
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Nobuyuki Kuwabara
伸行 桑原
Yuriko Oumi
由里子 近江
Kenichi Miyata
憲一 宮田
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Original Assignee
Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便な処理の付加によって一般的な和紙への
単色或いは多色の高画質画像の形成を可能とし、更に、
着色され画像が形成されている和紙を用いて表具や貼り
絵等の加工品とした際にも、加工処理によって画質に何
ら支障を生じることがない和紙への着色方法及び着色装
置並びに該着色がなされた和紙を利用した加工品等を提
供すること。 【解決手段】 水溶性染料を含有する着色液を用いて着
色を行う和紙への着色方法であって、(1)水溶性染料
と反応する着色液反応剤を付与する前工程、(2)着色
液を付与する着色工程、及び(3)水溶性染料と反応す
る発色安定剤を付与する後工程の3工程を少なくとも有
することを特徴とする和紙への着色方法及び着色装置並
びに該着色がなされた和紙を利用した加工品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、日本独特の和紙に
対して着色を行う方法及び装置に関するものであって、
特に多色や細線からなる画像を簡便に、しかも高品質に
表現することを可能とし、更に和紙に着色した後に、書
写、障子・襖等の表具、包装紙、及びちぎり紙・貼り絵
等に加工しても画像劣化や和紙自身の触感を損なうこと
のない和紙への着色方法及び着色装置、並びにこの着色
がなされた和紙を利用した加工品に関する。
【0002】
【従来の技術】和紙は楮、三椏、雁皮を主な原料とする
靱皮繊維で構成された日本で古くから作られている紙で
あり、奈良時代から漉かれていると伝えられている。和
紙は現在の紙の主流である洋紙に比べ、保存性が高いこ
と、機械的強度が高いこと、独特の風合いを持つこと等
の性質を備えており、現在でも書写や表具或いは工芸品
等に広く利用されている。
【0003】このような和紙は、手漉き和紙或いは機械
漉き和紙とに分けられるが、これらはそれぞれ次のよう
な手順によって製造される。手漉き和紙の場合には、先
ず、楮、三椏、雁皮等の原材料中の不純物を取り除く目
的で、これらの原材料を苛性ソーダで煮る煮熟を行い、
次いで水洗を行う。この後、水中で漂白、除塵によって
細かな塵を除く。除塵を終えると離解、解繊によって原
材料の繊維を解きほぐし、繊維を適当な長さと幅に揃え
る。次に、この解繊を終えた繊維を漉き槽に入れて手漉
きによる抄造を行う。この抄造時に、水中での繊維の分
散を助けるために、トロロアオイの根、アオギリの根、
ノリウツギの根、ギンバイソウの根等を原料とする「ね
り」を入れる。抄造した後、圧搾操作で平坦化して、天
日による板干し乾燥或いは蒸気を用いる三角乾燥機によ
る乾燥を行う。このようにしてできた和紙を裁断、及び
包装をして仕上げる。
【0004】一方、機械漉き和紙は、従来、機械では抄
くことができないとされていた楮の繊維を加工できるよ
うになってから可能となったものであり、この場合の製
造方法は洋紙とほぼ同様である。機械漉きにおいて洋紙
と異なる点は主に原料であり、抄紙原理は類似するので
説明は省略する。以上のような方法で作られた和紙は、
洋紙に比べて独特の風合いを持っていることから、現在
でも各種の分野で利用されている。特に手漉き和紙の場
合には、手間や時間がかかり高価ではあるが、根強い人
気がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように独特の風合
いを持つ和紙に対して、高画質な画像を形成することが
できる印刷に対する要望があるが、現在の一般の印刷技
術は洋紙を対象としているものが主流であり、和紙に対
する印刷は特殊な範囲に限られている。しかも一部の場
合を除き、和紙への印刷は単色印刷が殆どであるという
現状にあり、和紙への印刷は一般に難しいと言われてい
る。即ち、和紙に対して現状のオフセット印刷で多色印
刷を行おうとした場合には、吸水性の高い和紙に強い張
力がかかった際に生じる、紙の伸び縮み、紙粉やけば立
ち、又は和紙の風合いや美観の維持等の種々の問題を解
決しなければならず、その改良には多くの時間を必要と
し、コスト高とならざるを得ない。
【0006】これらの印刷の困難性を解決するにあた
り、近年多方面にわたって印刷への応用がなされている
インクジェット方式の利用が考えられる。このインクジ
ェット方式は、複数のノズルよりインクを液滴状にして
噴射し、被記録媒体上に画像形成を行うものであり、比
較的簡単な機構でカラー画像の形成も容易に行えるとい
う利点を持つ。このため、近年、コンピュータ及びその
周辺機器や、ワードプロセッサ等の情報処理機器の高度
化及び低価格化に伴って、各種の証明書、登記書、契約
書、或いは古筆の複写等の用途に用いられるインクジェ
ット専用の和紙も提供されている。このような専用の和
紙には、電子写真複写機や感熱転写プリンタのためのも
のもあるが、インクジェットプリンタに適用した場合に
は、比較的手軽に高精細の多色画像の形成が実現しやす
い。
【0007】しかしながら、これらの専用の和紙は事務
用品としては活用できても、表具や包装用として利用す
るには十分とは言い難い。特に表具として利用するには
高画質な画像が必要であることは当然として、その加工
時において、一般に「水糊」といわれている水を大量に
含む糊を、和紙の裏面全体に刷毛によって塗布し、その
状態でしばらく時間をおいて(一般に10分程度とされ
る)糊を充分和紙になじませてから表具を形成する部材
に貼り付け、その後和紙の表面、即ち、画像が形成され
ている面側から撫でながら形を整えるという手法が多く
用いられるている。従って、このような手法で表具加工
を行った場合には、上記のように裏面から大量の水が付
着されるため、時間の経過に伴ってその水が和紙内部に
浸透する。この結果、画像を形成している色材と水とが
接触することになる。一般に、インクジェットプリンタ
に搭載されているインクの色材としては、水溶性の染料
が多く用いられているため、上述のように色材と水とが
接触すると一度和紙上で定着した染料が水に再溶解し
て、画像の滲み、和紙内の画像とは無関係な部分への染
料の移動等が起こって画像劣化を招いてしまう。これを
防止するには、色材として用いる染料に、和紙の繊維と
の間で結合するような性質をもつ染料を選択して、イン
クが定着した後は水に不溶となるようにさせるか、或い
はもともと水に不溶の顔料が色材として用いられている
インクを使用する等の改善策が考えられる。しかし、こ
れらの改善策を適用するに当たっては、色材の種類とイ
ンクジェット用インクへの使用とを考慮すると、現状で
は、充分に実用性のあるものを見いだすことが困難であ
る。
【0008】従って、本発明の目的は、特殊な色材又は
インクを使用することなく、簡便な処理の付加によって
一般的な和紙への単色或いは多色の高画質画像の形成を
可能とし、更に、着色され画像が形成されている和紙を
用いて表具や貼り絵等の加工品とした際にも、加工処理
によって画質に何ら支障を生じることがない和紙への着
色方法及び着色装置並びに該着色がなされた和紙を利用
した加工品等を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、以下の本
発明によって達成される。即ち、本発明は、水溶性染料
を含有する着色液を用いて着色を行う和紙への着色方法
であって、下記の(1)〜(3)の3工程を少なくとも
有することを特徴とする和紙への着色方法及び該着色方
法を適用した着色装置、並びに該着色方法によって着色
がなされた和紙を利用した加工品等である。 (1)和紙の少なくとも着色させる表面領域に、上記水
溶性染料と反応する着色液反応剤を付与する前工程 (2)該着色液反応剤が付与された和紙に対して、液滴
噴射手段を用いて上記着色液を噴射して着色を行う着色
工程 (3)着色が行われた和紙の少なくとも着色された表面
領域に、上記水溶性染料と反応する発色安定剤を付与す
る後工程 尚、本発明でいう和紙は、先に述べた和紙の製造方法に
よって、即ち、手漉き和紙と機械漉き和紙とで何ら区別
されるものではない。
【0010】本発明者らは、上記したような従来技術の
問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、和紙へ着色液を
付与させて着色を実施する前に、水溶性染料と反応する
着色液反応剤を和紙の着色させる表面領域に付与するこ
とによって、インク中の水溶性染料と接触して結合し得
る部分を予め用意し、更に、着色後の着色領域に水溶性
染料と反応する発色安定剤を付与すれば、着色を行った
時点では、着色液反応剤によるある程度の染料固着機能
が発現され、着色後には、発色安定剤によって染料固着
が完結される結果、画像の耐水性等の堅牢性が向上する
ことを知見して本発明を完成した。更に、この際に、着
色液反応剤として用いるイオン性の高分子物質の分子量
を、発色安定剤に用いるイオン性の高分子物質の分子量
よりも小さくしておけば、着色液反応剤として用いる高
分子物質自身が移動し易くなり、和紙の内部にまでいき
わたり易くすることが出来る為、着色を行った時点でよ
り染料固着機能を発現させることができ、次いで着色を
終えた後に、相対的に分子量の高い高分子物質が発色安
定剤として着色画像に対して付与される為、染料固着が
容易に完結し、高精細の画像が形成されると共に、耐水
性等の堅牢性が向上した優れた画像提供が可能となるこ
とを見いだした。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、好ましい実施の形態を挙げ
て、本発明をより詳細に説明する。先ず、本発明の和紙
への着色方法の作用について説明しながら、使用する着
色液について説明する。本発明において使用する着色液
に用いられる水溶性染料としては、従来よりインクジェ
ット用インク等に最も一般的に用いられている、直接染
料や、その他、酸性染料及び反応染料等が利用される。
これらの水溶性染料は通常はイオン性を有する為、該染
料によって和紙上に形成される着色画像を乱さずに耐水
性を与えるには、これらの水溶性染料と反応し、染料を
固着させることが出来る物質を和紙に付与すればよい
が、本発明では、着色前に水溶性染料と反応する着色液
反応剤を付与し、着色後に水溶性染料と反応する発色安
定剤を付与することによって上記の目的を達成した。
【0012】又、この際に使用する着色液反応剤及び発
色安定剤として、好ましくはイオン性高分子物質を用
い、特に、上記した染料のイオン性とは逆のイオン性を
有する物質を着色液反応剤及び発色安定剤として付与す
ることが好ましい。この様にすれば、水溶性染料と、着
色液反応剤又は発色安定剤との間にイオン結合を起こさ
せ、会合体を形成させて染料分子を水に不溶とさせるこ
とが出来る。ここで、イオン性を呈する染料としては、
アニオン性を呈する染料及びカチオン性を呈する染料の
いずれも存在するが、染料一般ではアニオン性を呈する
ものが多い。従って、この場合に、上記のような作用を
与えようとするには、カチオン性の物質を着色液反応剤
及び発色安定剤として和紙に付与することによって、こ
れらの物質と染料との間でイオン結合を生じさせ、会合
体を形成することが取り扱い上、好ましい。
【0013】従来からインクジェット分野以外、例え
ば、布帛への浸染或いは捺染の分野等でも、上記したと
類似の原理で、色止め剤或いは染料固着剤と称して、カ
チオン性の高分子物質が利用されている。しかしなが
ら、この場合は、布帛を染料で着色した後に未染着の染
料をいったん水洗により除去し、その後、染着されてい
る染料の固定状態を維持させるために色止め剤或いは染
料固着剤といったカチオン性の高分子物質を使用してお
り、本発明におけるカチオン性高分子物質とは使用目的
が異なる。即ち、和紙の場合においては、着色した後に
水洗という工程を設けることはできないため未染着の染
料を除去することは不可能であり、画像に付与されたカ
チオン性高分子物質には、インクジェット方式によって
和紙上に付着されたインク、その中でもアニオン性の染
料全てを和紙上に固定させることが要求される。このこ
とは、インクジェット方式において被記録媒体に和紙を
用いる場合には、従来より布帛への浸染或いは捺染の分
野で行われていた上記のようなカチオン性の高分子物質
を利用する方法を、全く同一の手法で適用するのみでは
充分な特性を発現させることはできないことを意味して
いる。
【0014】上記の問題を解決する方法としては、カチ
オン性高分子物質を和紙内部に対してより多く内在させ
るため、画像が形成されている和紙の画像領域に、カチ
オン性高分子物質に加え、更、浸透性を有する界面活性
剤を添加することも考えられる。即ち、界面活性剤の添
加によって、カチオン性高分子物質を和紙内部に至るま
で極力浸透させ、和紙内部に浸透した水溶性染料にまで
色止めの効果が発揮される様にすれば、画像の耐水性を
向上させることが可能となる。しかしながら、このこと
は前述したような表具の加工時に、裏面に塗布される水
糊をも一層和紙内部へと浸透させる作用を生じさせるこ
とを意味し、その結果、水溶性染料が固定される前に、
糊を溶かしている水が水溶性染料と接触して水溶性染料
の再溶解を起こす可能性がある。又、裏面に塗布される
水糊中の水が、着色されて画像が形成されている和紙表
面にまで到達して、水を多く含んだことによる和紙表面
の機械的強度の低下が生じ、後に和紙表面を刷毛や手で
撫でる場合に、和紙表面を傷つけたり、削ったりするこ
とも生じ得る。
【0015】上記したように、和紙を被記録材とした場
合には、界面活性剤の浸透作用を利用することにより、
染料固着の作用を持つカチオン性高分子物質と染料との
間の結び付きを向上させることは不可能である。そこ
で、本発明においては、予め着色前に水溶性染料と反応
する着色液反応剤を和紙に付与して、着色された場合に
インク中の染料と接触して結合し得る部分を着色前に用
意しておき、着色された場合にある程度の染料固着機能
が発現されるようにし、更に、着色を終えた後に、少な
くとも着色領域に水溶性染料と反応する発色安定剤を付
与することによって着色画像の染料固着を完結させて、
高精細画像の形成と、画像の耐水性向上を達成させる。
この場合に、特に、着色液反応剤と発色安定剤との主成
分を夫々イオン性の高分子物質とし、且つ着色液反応剤
に含有されているイオン性高分子物質を、発色安定剤に
含有されているイオン性高分子物質の重量平均分子量に
対して相対的に低い分子量のものとした場合に、着色画
像の耐水性向上の高い効果が得られる。即ち、先ず、着
色液反応剤として使用しているイオン性高分子物質の分
子量が比較的低い為、この高分子物質自身が移動し易
く、和紙の内部にまでいきわたり易いので、着色を行っ
た時点で染料固着機能が発現され易くなる。更に、着色
を終えた後に、着色画像に対し相対的に分子量の高い高
分子物質を発色安定剤として付与されるので、着色画像
の染料固着が完結して水溶性染料が和紙に安定に固着さ
れる結果、高精細画像の形成と、画像の耐水性向上を達
成される。
【0016】本発明において使用される上記のような作
用を有する着色液反応剤と発色安定剤の主成分であるイ
オン性の高分子物質としては、例えば、次に挙げるよう
なカチオン性の高分子物質の中から適宜選択して用いる
ことができる。例えば、ポリアリルアミン塩、ポリアリ
ルスルホン、ジメチルジアリルアンモニウムクロライ
ド、ポリアミンスルホン塩、ポリビニルアミン塩、キト
酸酢酸塩等の水溶性のカチオン性高分子物質等が好まし
い。更に、通常はノニオン性であっても、その物質の一
部にカチオン性基を付加したものを用いることもでき
る。その具体例としては、ビニルピロリドンとアミノア
ルキルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアミ
ドとアミノメチルアクリルアミド4級塩との共重合体等
が挙げられる。これらの高分子物質は水溶性であれば申
し分ないが、ラテックスやエマルジョンのような分散体
であってもよい。他の水溶性以外の高分子物質であって
も、和紙自身に劣化を引き起こさないようなものであれ
ば、これらに限定されるものではない。又、本発明にお
いて使用するこれらのイオン性高分子物質の濃度として
は、0.05〜10重量%程度のものを使用することが
好ましい。
【0017】又、上記した高分子物質の中から本発明に
用いる高分子物質を選択する場合に、着色液反応剤及び
発色安定剤の夫々が共に同一の物質系であってもよい
が、着色液反応剤と発色安定剤とで異なる物質系を用い
てもよく、任意に選択することができる。しかし、夫々
の高分子物質同士が、互いに無用な作用を引き起こす可
能性を避けるためには、同一の物質系列の高分子物質か
ら夫々選択して使用することが好ましい。水溶性のイオ
ン性高分子物質を用いた場合には、和紙に対して高分子
物質を付与する際、特に、後工程で、水溶性の発色安定
剤を付与する際に、既に和紙内に存在している染料を再
溶解させてしまう懸念がある。しかし、本発明において
は、既に前工程で付与したイオン性高分子物質からなる
着色液反応剤が染料との間でイオン結合を起こし、ある
程度の染料の固定がなされているため実用上支障はな
い。
【0018】又、着色液反応剤及び発色安定剤に用いる
イオン性高分子物質の分子量としては、本発明者等の研
究によれば、前工程で使用する着色液反応剤には700
〜5万のもの、後工程で使用する発色安定剤には7,0
00〜20万の範囲のものを使用することが好ましい。
更に、本発明においては、着色液反応剤の主成分として
含有されているイオン性高分子物質の分子量が、発色安
定剤の主成分として含有されているイオン性高分子物質
の分子量に対して相対的に低いことが好ましい。尚、本
発明において用いる高分子物質の分子量とは、一般によ
く利用される重量平均分子量で定義する。更に、これら
の着色液反応剤及び発色安定剤には、粘性や揮発性等の
調整のために必要に応じて公知の各種バインダー等を添
加してもよい。
【0019】上記した着色液反応剤及び発色安定剤は、
いずれも単独で安定なイオン性高分子物質を主成分とし
ており、更に和紙に対して付与された後は、これらの高
分子物質自身が和紙を構成する繊維と反応したりするも
のではない。従って、着色液反応剤及び発色安定剤の夫
々の付与のタイミングは、特に時間的或いは場所的な制
約を受けるものではない。即ち、着色液反応剤付与のた
めの前工程、又は発色安定剤付与のための後工程のいず
れか或いは両方を着色工程に対して連続した工程とする
必要性もなく、従って、夫々の工程を独立した場所で行
ってもよく、その場合に各工程間で時間が経過していて
も本発明の効果は発現できる。勿論、前工程から後工程
までを連続した一連の工程としてもよいことはいうまで
もない。
【0020】本発明の和紙への着色方法において、上記
した着色液反応剤及び発色安定剤を和紙に付与する方法
としては、塗布や噴霧等を挙げることができるが、具体
的な手法としては、付与量の調節が容易なロールコータ
ー、カーテンコーター、スプレーガン、或いはインクジ
ェットヘッドによる噴射等を利用することが好ましい。
特に、インクジェットヘッドによる噴射は、インクによ
る着色時の画像信号に合わせて、着色される領域のみに
着色液反応剤及び発色安定剤を付与することができるの
で、和紙に対する付与量を必要最小限度に抑えることが
でき、着色液反応剤や発色安定剤の無駄な消費を回避す
ることができる為、好ましい。又、本発明の着色方法に
おいて好適に用いられるインクジェット方式としては、
インク滴を記録信号に応じてオリフィスから吐出させて
被記録材に記録を行うものであれば、熱エネルギーの作
用によるものや圧電素子を使用するピエゾ方式等いかな
る方式でもよい。
【0021】次に、上記した本発明の和紙への着色方法
が適用されていることを特徴とする本発明の和紙への着
色装置について、図を参照しながらより具体的に説明す
る。図1に例示した着色装置では、和紙に着色液反応剤
の付与を行う前工程部3、前工程を終えた和紙に着色を
行うインクジェットプリント部5、プリント(着色)を
終えた和紙に発色安定剤を付与する後工程部6が同一装
置内に設けられており、前工程から、着色工程及び後工
程までを連続して一連で行って和紙への画像形成をする
ことが出来る。図1中、8は、例えば、機械漉きされた
和紙であり、ロール1及び2によってロール状に巻きと
られながら装置に供給される。例えば、和紙8が、半間
用の襖紙に使用されるものである場合には、幅1mの和
紙が繰り出し側のロール1から巻き取り側ロール2に向
かって矢印A方向に、着色(以下、「プリント」と称す
る)の進行と共に流れていく。
【0022】以下、図1に示した着色装置によって和紙
上へプリントされる経過について説明する。先ず、繰り
出し側ロール1より流れてきた和紙8は、着色液反応剤
の噴霧部3の下方にさしかかったところで着色液反応剤
が噴霧され、和紙8への着色液反応剤の付与がなされ
る。図1の装置では、この着色液反応剤噴霧部3は、和
紙の幅全域にわたってスプレーガン31が矢印B方向に
往復移動して、均一に着色液反応剤が噴霧されるように
構成されている。このスプレーガン31は、キャリッジ
32に取り付けられており、そしてこのキャリッジ32
は、33及び34の2本のガイドレールに沿って移動す
るようになっている。キャリッジ32は、その側面に取
り付けられているタイミングベルト35によって移動可
能に構成されている。即ち、タイミングベルト35は、
不図示の駆動モーターによって回転するプーリー36で
駆動モーターの動力を伝達し、その結果、キャリッジ3
2のB方向への往復移動を可能とする。更に、このキャ
リッジ32の往復移動によって、スプレーガン31も同
時にB方向へと往復移動が可能となる。
【0023】上記の様にして噴霧部3で、着色液反応剤
が和紙8の全幅にわたって噴霧された後、着色液反応剤
が付与された領域は更にA方向に進行し、続いて乾燥部
4の下方にさしかかる。ここでは和紙8に対して50℃
の熱風が吹き出されており、この熱風によって、先に和
紙8に噴霧して付与された着色液反応剤中に含有されて
いる溶媒を蒸発させている。これによって和紙8におい
て着色液反応剤が付与されている部分の乾燥がなされた
後、更にA方向に進行し、続いてインクジェットプリン
ト部5の下方にさしかかる。
【0024】このインクジェットプリント部5は、図1
に示した様に、キャリッジ52に、イエロー(Y)、マ
ゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色
のインク滴を別々に噴霧するインクジェットプリントヘ
ッドを一体に備えたインクジェットカートリッジ50
と、これらのヘッドにインクを供給するインクタンク5
1が搭載されている。このインクタンク51の内部は4
つの部屋に仕切られ、夫々、イエロー、マゼンタ、シア
ン、ブラックの各色インクが充填されされており、これ
らのインクは、インクジェットカートリッジ50の中の
個々のインクジェットプリントヘッドに供給されるよう
に構成されている。このインクタンク51は、インクジ
ェットカートリッジ50との間で着脱自在に構成されて
おり、インクが消費された場合に交換可能な構成となっ
ている。
【0025】又、キャリッジ52は、53及び54の2
本のガイドレールに沿って移動するようになっており、
側面に取り付けられているタイミングベルト55によっ
て移動可能に構成されている。即ち、タイミングベルト
55は、不図示の駆動モーターによって回転するプーリ
ー56で駆動モーターの動力を伝達し、その結果、キャ
リッジ52はC方向に往復移動を行う。上記したような
インクジェットプリント部5は、別に接続されているホ
ストコンピュータ(不図示)から送出される画像信号に
基づき、キャリッジ52の往復移動に伴って、各インク
ジェットプリントヘッドから該当するインクが夫々所定
のタイミングで噴射されるように制御されている。この
インクの噴射が順次なされるに従い、和紙8上にフルカ
ラー画像が形成されていく。
【0026】上記のようにして画像が形成された部分
は、更にA方向に移動して発色安定剤の噴霧部6の下方
にさしかかり、続いて、該噴霧部6で先に画像が形成さ
れた領域にスプレーガン61より発色安定剤が噴霧され
る。ここでの動作は着色液反応剤の噴霧部3の動作と同
様であるので省略する。この後、和紙8は、乾燥部7を
通過し、巻き取り側ロール2によってプリントされた和
紙が巻きとられる。以上の一連の動作によって、和紙8
に対するフルカラー画像形成が完了する。上記の過程を
経て和紙上に形成された画像は、液滴のドット形状が整
い、且つ画像濃度も高い安定した画像となり、しかも、
形成される画像は、耐水性等の堅牢性が向上したものと
なる。
【0027】次に、本発明の着色装置の別の例を図2を
参照して説明する。上記した図1に示した装置は、着色
液反応剤を付与する前工程から、インク画像を形成する
着色工程、更には発色安定剤を付与する後工程までを連
続して行って和紙へのフルカラー画像形成をすることが
出来るが、図2に例示した本発明の着色装置は、着色液
反応剤の付与を予め抄造時に行われている和紙を使用す
る為、着色液反応剤を付与する着色液反応剤噴霧部3及
び着色液反応剤の乾燥部4が省略されている。即ち、先
に述べた様に、本発明の着色方法では、着色液反応剤及
び発色安定剤の夫々の付与のタイミングは、画像形成の
ためのインクジェットプリントに対して、厳密な時間管
理をする必要性はない。この為、図1に示した装置の様
に、必ずしも一連に、着色液反応剤の付与、インクジェ
ットプリント、発色安定剤の付与が行える様に、同一装
置内にこれらの工程部位を設置させることは必須ではな
くなる。図2の装置では、インクジェットプリント部5
と発色安定剤付与部6が同一装置内に設けられている
が、この他、着色液反応剤噴霧部3、インクジェットプ
リント部5及び発色安定剤噴霧部6を夫々独立した異な
る装置として構成させることも可能である。このような
構成をとった場合には、夫々の装置を異なる設置場所と
することができる為、夫々の工程における装置の設置面
積を少なくすることが可能となる。又、工程別に装置を
異ならせることによって、例えば、着色液反応剤の処理
を終了した和紙をプリントの絵柄に関係なく、必要な数
量で予め準備しておくことも可能となる。
【0028】次に、図2に示した装置に用いることの出
来る着色液反応剤の付与がされている和紙の製造方法に
ついて説明する。先に説明した通常の和紙の製造方法に
おいて、抄造時に着色液反応剤を添加し、予め和紙への
着色液反応剤の付与を行う。例えば、手漉きの場合に
は、煮熟、水洗、除塵、離解、及び解繊までの工程を終
えた繊維を漉き槽に入れる際に、その漉き槽中に着色液
反応剤を添加して手漉き抄造を行い、和紙内への着色液
反応剤の漉き込みを完了する。以上のような抄造を終え
た後は、通常の手漉き和紙の製造法に従い、圧搾及び三
角乾燥機による乾燥を行って、用途に応じたサイズの和
紙を作り上げる。上記の様にして得られた和紙を、図2
に示したインクジェットプリント装置に装着して画像形
成を実施する。ここでのインクジェットプリント部5と
発色安定剤付与部6の動作は、前述した図1の場合と同
様の動作であるので説明は省略する。
【0029】図2に示した着色装置では、予め含浸によ
って着色液反応剤を内部に付与されている和紙を用いる
ことによって、前工程による和紙への着色液反応剤の付
与動作を省略することが可能となる。又、事前に和紙内
部に着色液反応剤を付与する工程は、従来からある漉き
槽の中に水溶液の状態で着色液反応剤を添加する手法で
ある為、和紙の抄造時に特別な作業が増えることもな
い。この場合には、着色液反応剤の付与とインクジェッ
トプリントとの間に、充分な時間の経過があるが、和紙
中に着色液反応剤として内在させてある高分子物質の作
用が変化することはないので、本発明の効果としては全
く支障を生ずるものではない。
【0030】次に、本発明の着色装置の別の例について
図3を参照しながら説明する。図3に示した装置では、
図1に示した装置における発色安定剤噴霧部6の下流側
に、更に、表面保護剤噴霧部9及びその乾燥部10が設
けられている。即ち、図3の装置では、和紙に対して、
着色液反応剤の噴霧、インクジェットプリント、及び発
色安定剤の噴霧を行った後、更に、表面保護剤を付与す
る。表面保護剤噴霧部9は、着色液反応剤噴霧部3及び
発色安定剤噴霧部6の噴霧動作と同様であり、スプレー
ガンがE方向に往復移動することによって和紙の幅方向
に順次表面保護剤が噴霧されていく。以上の動作によっ
て画像が形成された和紙は、水溶性染料の耐水化と共
に、着色部で形成された画像の上に保護皮膜が形成され
るため、例えば、表具の加工時に画像表面を強く撫でる
ことがあっても、画像の乱れを生じることが更に少な
く、和紙上に形成された画像の加工性をより向上させる
ことが可能となる。
【0031】上記した図1〜図3の本発明の着色装置に
おいては、和紙への各工程を行うにあたって、いずれも
1工程毎に和紙の全面を処理する手法で述べているが、
本発明はこれに限らず、少なくとも和紙上の着色すべき
領域に対して、上述の工程の順番を経ていればよい。従
って、和紙上の任意の領域をみたときに、前工程、着色
工程、後工程の順で処理されていれば足りる。このこと
から、和紙に対してインクジェット噴射手段を走査させ
て処理するにあたり、上記各工程を順次行う噴射手段を
並列させておいて順次各処理液等を付与させつつ、和紙
全面の着色を完成させるような構成も本発明には含まれ
る。
【0032】又、本発明において好適に用いられる和紙
は、手漉きと機械漉きとで区別する必要性はなく、本発
明の効果を出すにあたっては、いずれの手法で作られた
和紙でも構わない。又、着色に関しても単色のみならず
多色も含み、更に和紙上に形成される画像としても、全
面に行うものから部分的に行うものまでのすべてが含ま
れる。
【0033】更に、上記のような方法によって着色され
た和紙は、書写、包装紙、ちぎり絵・貼り絵、及び障子
・襖等の表具等として好適に用いられ、優れた加工品と
することができる。特に、表具に用いられる和紙の場合
には、和紙に着色した後に、画像が形成されている面と
反対側の面全体に水糊を塗布し、更に、画像が形成され
た面側から刷毛等で撫でる為、画像の耐水性及び和紙の
機械的強度等が要求されるが、このような場合にも高精
細な画像が損なわれたり、上記の加工作業に支障を与え
ることがなく、従来の方法によって着色された和紙の場
合と同様に取り扱うことが可能である。
【0034】
【実施例】次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明するが、本発明は、これに限定されるものではな
い。尚、文中「%」とあるのは、特に断りのない限り重
量基準である。
【0035】実施例1 本実施例においては、前工程から後工程までを連続した
一連の工程で行って画像形成をすることが出来る図1に
示した着色装置を用い、下記組成の着色液反応剤A、発
色安定剤B、及びインクI〜インクIVの4色のインクを
用いて和紙上にフルカラー画像を形成した。本実施例で
は、半間用の襖紙に使用されている幅1mのロール状の
機械漉きの和紙を使用した。
【0036】 (着色液反応剤A) ・塩化ベンザルコニウム 0.2% ・ポリアリルアミン塩酸塩(重量平均分子量7,000) 3% ・水 96.8% (発色安定剤B) ・ポリアリルアミン塩酸塩(重量平均分子量10万) 5% ・水 95% (インクI) ・C.I.ダイレクトイエロー86 2% ・チオジグリコール 10% ・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05% ・水 87.95% (インクII) ・C.I.アシッドレッド289 2.5% ・チオジグリコール 10% ・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05% ・水 87.45% (インクIII) ・C.I.アシッドブルー9 2.5% ・チオジグリコール 10% ・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05% ・水 87.45% (インクIV) ・C.I.フードブラック2 3% ・チオジグリコール 10% ・アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05% ・水 86.95%
【0037】上記のようにしてフルカラー画像が形成さ
れた和紙を観察したところ、画像は液滴のドット形状が
整い、且つ濃度も高い安定した高精細な画像を得ること
ができた。この装置のプリント部において使用している
インク(I)〜(IV)中の染料は、いずれもアニオン性
を呈する染料である為、本実施例で用いた着色液反応剤
A及び発色安定剤Bにおけるカチオン性高分子物質との
間でイオン結合が起こり、この結果、上記の優れた画像
特性に加えて、耐水性等の堅牢性が向上した画像が得ら
れることが、下記に述べる襖の作製で確認された。
【0038】先ず、上記の工程を経て得られた画像が形
成されている和紙8を、1mの幅のままで2mずつの長
さに切断して半間用の襖用紙を作製した。この襖用の和
紙を用いて襖を下記のようにして形成した。襖の作製に
使用した接着用の水糊の成分は下記に示す通りであり、
多量の水が含有されている。 (水糊) ・壁紙施工用接着剤(ヤヨイ化学工業製「アミノール」) 30% ・水 70%
【0039】次に、上記のように切断した和紙の裏面、
即ち、画像が形成されていない面(以下、単に裏面と称
す)を上にして、平坦な面上に広げて静置する。その
後、上記の水糊を刷毛によって和紙の裏面全体に塗布し
て、そのままの状態で約10分間放置する。このように
して水糊を和紙内部にわたって充分になじませる。この
水糊をなじませた和紙をプリント面側から観察したとこ
ろ、水糊中の水分の浸透や、水と染料とが接触すること
による画像の乱れを起こすことはなかった。
【0040】次に、この和紙を、骨に4遍張り仕上げの
下張りを施した襖の下地に、画像形成面を上にして重ね
て全体に貼り合わせた後に、更にその上から乾いた刷毛
を用いて襖の表面全体をならして上張りをした。以上の
ようにして上張りまで終了した襖に、縁や引手を取り付
けることによって襖を完成させた。この仕上げの際に、
刷毛で撫でて襖の全体をならしていっても、和紙の表面
を傷つけたり、又、和紙に形成されている画像が乱され
ることはなく、従来の場合と比較して作業性が損なわれ
るといったこともなかった。
【0041】実施例2 本実施例では、画像を形成する和紙として、下記の組成
を有する着色液反応剤Cが予め和紙に付与されたものを
使用した。即ち、和紙を手漉きによって和紙を製造する
際に、煮熟、水洗、除塵、離解、及び解繊までの工程を
常法に従って行った後、解繊までを終えた繊維を漉き槽
に入れ、この時、漉き槽に下記組成の着色液反応剤Cを
添加して手漉き抄造を行い、抄造を終えた後に、通常の
手漉き和紙の製造方法に従い、圧搾及び三角乾燥機によ
る乾燥を行って、幅1mのインクジェットプリント用の
和紙を作り上げ、これを使用した。 (着色液反応剤C) ・ポリアリルアミン塩酸塩(重量平均分子量7,000) 2% ・水 98%
【0042】上記で得られた和紙を、図2に示した構成
の着色装置に装着して、実施例1で用いたと同様のイン
ク(I)〜(IV)と発色安定剤(B)とを用いて、和紙
上にフルカラー画像を形成した。又、上記で得られた画
像が形成されている和紙を使用して実施例1と同様にし
て襖を形成し、画像への影響及び耐水性等の堅牢性を調
べた。この結果、実施例1と同様に高精細なフルカラー
画像が安定して得られ、且つ得られた画像は、耐水性等
の堅牢性にも優れていた。本実施例で使用した着色装置
は、実施例1で使用した着色装置と比較してコンパクト
であり、装置の設置面積を少なくすることが出来た。
【0043】即ち、本実施例のように、予め含浸によっ
て着色液反応剤を内部に付与してある和紙を用いること
によって、前工程による和紙への処理剤付与動作を省略
することが可能となり、装置を小型化することが出来る
と共に、上記した事前に和紙内部に着色液反応剤を付与
する工程は、従来からある漉き槽中に、着色液反応剤を
水溶液の状態で添加する手法であるため、抄造時に特別
な作業が増えるといったこともない。更に、本実施例で
は着色液反応剤の付与とインクジェットプリントとの間
に充分な時間の経過があるが、和紙に内在している高分
子物質の作用が変化することがなく、本発明の効果とし
ては全く支障を生ずるものではないことが確認された。
【0044】実施例3 本実施例においては、図3に示した着色装置を使用し
て、下記組成の表面保護剤Dを付与した以外は実施例1
と同様にして、和紙上に画像を形成した。即ち、実施例
1で用いたと同様の和紙に、先ず着色液反応剤Aを付
与、乾燥した後、インク(I)〜(IV)を用いてインク
ジェットプリントを行って和紙上に画像を形成し、次
に、形成された画像に発色安定剤Bを付与した後、更に
下記組成の表面保護剤Dを付与して和紙上にフルカラー
画像を形成した。又、実施例1と同様にして襖を形成し
て耐水性等の堅牢性を調べた。 (表面保護剤D) ・ポリウレタン樹脂 10% ・水 90% この画像が形成された和紙を観察したところ、画像は液
滴のドット形状が整い、画像濃度も高い高精細なもので
あり、又、得られた画像は、実施例1の場合よりも更に
優れた耐水性等の堅牢性を有していた。即ち、本実施例
で得られた画像は、表面保護剤が付与されているため、
表具の加工時に画像表面を強く撫でる等の外的な力に対
しても画像の乱れは発生せず、高い堅牢性を示し、加工
作業によっても画像等の損傷のない、より信頼性のある
画像を得ることができた。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
和紙に対して着色を行うにあたり、液滴噴射手段等を用
い、前工程で着色液反応剤を付与し、次いで着色液を付
与し、その後に後工程で発色安定剤を付与することによ
って、鮮明な着色及び高精細な画像形成を達成すること
ができる。しかも、本発明によれば、上記の方法によっ
て画像が形成された和紙の裏面に水糊等を塗布して表具
に加工する場合にも、画像の乱れは発生せず、高い堅牢
性を示す為、作業性に支障を与えることもなく、従来通
りの方式で加工することが可能である。従って、本発明
によれば、従来からの和紙の用途に対して何等制限をつ
けることなく、高画質の画像を容易に得ることが出来る
結果、和紙の利用の更なる発展、更なる応用が可能とな
り、このことは、市場における細かな要求にも対応可能
となることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における和紙の着色装置の構成の一例を
示す図である。
【図2】本発明における和紙の着色装置の構成の別の一
例を示す図である。
【図3】本発明における和紙の着色装置の構成の別の一
例を示す図である。
【符号の説明】
1:繰り出し側のロール 2:巻き取り側ロール 3:着色液反応剤噴霧部 4:乾燥部 5:インクジェットプリント部 6:発色安定剤噴霧部 7:乾燥部 8:和紙 9:表面保護剤噴霧部 10:乾燥部

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性染料を含有する着色液を用いて着
    色を行う和紙への着色方法であって、下記の(1)〜
    (3)の3工程を少なくとも有することを特徴とする和
    紙への着色方法。 (1)和紙の少なくとも着色させる表面領域に、上記水
    溶性染料と反応する着色液反応剤を付与する前工程 (2)該着色液反応剤が付与された和紙に対して、液滴
    噴射手段を用いて上記着色液を噴射して着色を行う着色
    工程 (3)着色が行われた和紙の少なくとも着色された表面
    領域に、上記水溶性染料と反応する発色安定剤を付与す
    る後工程
  2. 【請求項2】 着色液反応剤及び発色安定剤が、主成分
    として夫々イオン性の高分子物質を含有しており、且つ
    着色液反応剤に含有されているイオン性高分子物質の分
    子量が、発色安定剤に含有されているイオン性高分子物
    質の分子量に対して相対的に低い請求項1に記載の和紙
    への着色方法。
  3. 【請求項3】 着色液反応剤及び発色安定剤が、共に水
    溶液よりなる請求項1又は請求項2に記載の和紙への着
    色方法。
  4. 【請求項4】 前工程における着色液反応剤の和紙への
    付与が、和紙を製造する際の漉き槽中の水に着色液反応
    剤を混合することによって抄造と同時になされる請求項
    1〜請求項3のいずれかに記載の和紙への着色方法。
  5. 【請求項5】 発色安定剤を付与する後工程の後に、更
    に、和紙中の少なくとも着色されている表面領域に保護
    被膜を形成するための表面保護剤を付与する工程を有す
    る請求項1〜請求項4のいずれかに記載の和紙への着色
    方法。
  6. 【請求項6】 着色工程における液滴噴射手段が、イン
    クジェット方式による手段である請求項1〜請求項5の
    いずれかに記載の和紙への着色方法。
  7. 【請求項7】 水溶性染料を含有する着色液を用いて着
    色を行う和紙への着色装置であって、請求項1〜請求項
    6のいずれかに記載の和紙への着色方法が適用されてい
    ることを特徴とする和紙への着色装置。
  8. 【請求項8】 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の
    着色方法によって着色された和紙を用いて加工されてい
    ることを特徴とする和紙の加工品。
  9. 【請求項9】 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の
    着色方法によって着色された和紙の着色された面と反対
    の面に水糊を塗布して部材に貼付することにより作られ
    たことを特徴とする表具。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009220926A (ja) * 2008-03-14 2009-10-01 Konica Minolta Business Technologies Inc 用紙着色装置、及び画像形成システム
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