JPH08113881A - 皮革の加色方法及び皮革の加色装置 - Google Patents

皮革の加色方法及び皮革の加色装置

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JPH08113881A JP6246191A JP24619194A JPH08113881A JP H08113881 A JPH08113881 A JP H08113881A JP 6246191 A JP6246191 A JP 6246191A JP 24619194 A JP24619194 A JP 24619194A JP H08113881 A JPH08113881 A JP H08113881A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 皮革に対して多色で高精細な画像の加色を行
う方法を提供する。 【構成】 皮革に加色を行う工程として、色材を含有す
る液状インクを所定情報に応じた液滴にして噴射するこ
とにより上記皮革に加色を行う噴射加色工程と、液滴噴
射される液状インクの色材と反応し且つ皮革に対して浸
透できる色材固着剤を上記皮革に付与して浸透させる浸
透工程を有することを特徴とする皮革の加色方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鞣製後の革及び毛皮か
らなる皮革に対して行われる染色や塗装等の加色方法に
関するものであって、とくに高精度の画像形成を可能と
し、しかも堅牢性や屈曲性、または対摩耗性にも優れた
皮革の加色方法、加色装置及びこの加色処理を終えた後
に加工される皮革又は皮革製品に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に皮革は、動物から剥いだ生皮を脱
毛し、鞣して得られる革、さらには毛をつけたままで鞣
した毛皮の総称として定義されている。この中で原皮か
ら鞣すまでの工程をいう準備工程から鞣製工程は、工業
的には次のような工程を経て行われる。まず動物から剥
いで得られる原皮に対し、水漬け、裏打ち、脱毛・石灰
漬け、分割、垢出し、再石灰漬け、脱灰・酵解、浸酸の
各工程(準備工程)を経た後に、皮に柔軟性や耐熱性を
付加した革とするための鞣しを施す。また脱毛をせずに
鞣しまで行えば毛皮を得る。通常これらの鞣製工程に続
いて染色・加脂・味入れ・ステーキング・塗装などの仕
上げ工程を経た後に、最終製品たる皮革製品となる。
【0003】また皮革製品は、その皮革自身が持つ風合
いを生かし、多種多様の分野で利用されている。例えば
靴などの履物類、衣料、手袋、ベルトなどの服飾類、
鞄、トランク、財布などの旅行用具類、ベルト、ガスケ
ットなどの工業用部品、椅子、自動車用座席シートなど
の家具類、その他、馬具、楽器、剣道用具など広範囲に
わたっており、各分野において、いろいろな動物の原
皮、鞣し方法が適用されている。そしてこれら応用範囲
が広いということは、用途に応じて求められる耐久性や
堅牢性も各種生じてくるものでもある。
【0004】従来このような点については、鞣し・染色
・加脂によって風合いを作り出し、さらにその後に、一
般に仕上げ工程と呼ばれる乾燥・塗装などによって耐久
性や堅牢性などをより上げていく方法がとられている。
ここで塗装工程の基本的な工程は、前処理、下および中
塗り、上塗りがある。ただし皮革の用途や美的効果の種
類により、これらの工程の手法は種々あるので、すべて
がこの順であるとは限らない。
【0005】従来から行われている革に対する加色(主
として染色)には、ドラム染色、ハスペル染色、刷毛染
色、スプレー染色などの方法があるが、一般にはドラム
染色で行われている。更に表面染色か浸透染色かによっ
て、それぞれに応じた染色助剤を添加する方法も一般的
にとられている。これらは、いずれも染めむらを防止す
るために行われている手法である。表面染色の場合に
は、あらかじめカチオン系の染着促進剤で処理してから
染料を添加し、また浸透染色の場合には、この逆に染浴
にアンモニア水を染着促進剤として加えて染色浴のpH
を高くする手法がとられている。すなわち、表面染色で
はカチオン系染着助剤の存在により、革に染色液が接触
した際に、そこで染料を速やかに凝集させて革内部に染
料が進行しないように調整するものであり、逆に浸透染
色では、鞣した後の革が、一般にpHは3から5程度で
低いことを考慮して、多くの染色液が革に引き寄せられ
るようにpHを高くするものである。
【0006】しかしながら、従来の染色工程は、いずれ
も皮革を染浴糟にじゃぶ漬けすることで、皮革が許容で
きる染着量よりも多くの染料をいったん保持させて、そ
の後水洗い工程などで、余分な染料や皮革に確実に保持
されていない染料を洗い流すものである。このため、従
来の染色工程は、染料の無駄や工程の複雑化を免れるも
のではなく、十分な染料固着を達成できるものではな
い。しかも、従来の染色法は、大量の染色液の中に皮革
を漬け、その後、染着し得なかった染料は洗い流してい
るため、染色液の量に対して染着促進剤の量は相対的に
低いものでしかなく、染浴糟中に染着促進剤が混じり、
染色液の染料濃度が低下する問題も発生する場合が見ら
れる。
【0007】
【解決すべき技術課題】そこで本発明者は、従来の皮革
に対する加色技術の問題を解決できる構成としてインク
ジェット加色技術に着目したところ、特公平6−299
1号公報に、毛皮の毛に対するインクの噴射方向を規定
した技術を見いだすことができたものの、詳細な技術内
容について記載した文献等を見いだすことができなかっ
た。また、従来の皮革に対する加色工程を改善すべく、
他分野である布帛への染色分野を見ると、水酸化ナトリ
ウムや炭酸ナトリウム、酢酸カルシウム等によりあらか
じめアルカリ処理を施した布帛に反応性染料を含有する
インクを用いてインクジェット方式で着色し、その後1
00℃付近の蒸気の存在下で、反応性染料の分子と布帛
中のセルロース分子との間で、それぞれの官能基を反応
させ、共有結合を起こすことで染料を固着させ、この結
果、堅牢性を発現させる方法が、通常の方法として知ら
れている。しかし、この技術を皮革に応用すると、皮革
自身が高熱には弱いため、このような処理を行うと風合
いを損なうという致命的な問題を生じることが判明し
た。
【0008】いずれにしても、本発明者は、インクジェ
ット技術を皮革の加色に応用することは、高精細の画像
を作り出すことができ、しかもカラー色を所望の部分に
確実に形成できる利点があることは、皮革産業界、ファ
ッション界にとって皮革の販売を拡張できる大きな市場
拡大に好転できる利点があるものと判断して研究を重ね
たが、任意の画像を各種の皮革上に、鮮明に、しかも高
精度に描き出すことができたものの、以下の課題に直面
した。
【0009】つまり、皮革の表面を保護するとともに、
その美観を高めることを目的とした、皮革の仕上げ工
程、特に塗装における前処理、下および中塗りには、水
系の含浸および皮膜形成をなす材料がよく利用されてお
り、インクジェットによってプリントを行った後には、
加脂を経るとしても、プリント画像に水が直接に接触す
る機会は多い。これに対し、インクジェット用のインク
としては水溶性の染料を利用したものが多く、通常はそ
のプリント画像は水に強いとは言い難い。したがって上
記のような仕上げ工程を実施する場合、インクジェット
プリントが終了したのみでは、仕上げ作業時に画像中の
染料が仕上げ処理剤の中の水に溶け出し、濃度低下や滲
みなどによる画像劣化が発生してしまう。
【0010】従って、本発明は、上記皮革に対するイン
クジェット加色を行う場合の、皮革特有の問題を解決
し、高画質、高精細、高水準耐水性を達成しつつ、加色
剤の無駄や固着剤の無駄をなくした皮革の加色方法及び
装置を得供することを主たる目的とするものである。
【0011】本発明者は、皮革の高水準耐水性を達成で
きる現象を追求したところ、従来には検討されていな
い、色材固着剤に必要な皮革特有の特性を見出したこと
に重要な意義があり、本発明はこれを基本として、更に
好ましい条件を持つ皮革の加色方法及び装置を得供する
ことを他の目的とするものである。
【0012】尚、皮革を作る際に、風合いを出すために
重要である鞣し工程で、現在最も多く行われている方法
としてはクロム鞣しがあるが、このクロム鞣しを行った
皮革は一般に青色がかった色となりやすい。インクジェ
ットで高精細画像のプリントを行う場合には、従来の太
鼓による染色とは異なり、多量の染料で画像形成させる
ということは、滲みなどの画像劣化を引き起こし好まし
くない。したがってプリントする画像の種類によって
は、皮革生地の色の影響を受けやすいという課題も生ず
る。本発明は、この課題をも解決できる皮革の加色方法
及び装置発明を提供するものである。
【0013】さらには、従来の染色方法は、染色後の色
合いが薄い場合には再度染浴に漬けることもできたが、
インクジェットを利用する場合には絵柄が多くなるので
再加色するようなことは、絵柄の位置合わせが困難であ
ってあまり行えない。この点からも噴射して皮革に与え
た色材はすべて固着させる必要が生ずる。従って、本発
明は、従来とは全く異なる点に解決法を見出したもので
あって、公知技術の延長上にはない、新規な皮革の加色
方法及び装置発明を提供するものである。
【0014】
【本発明の概要】本発明は、上記問題点に鑑みてなされ
たものであって、その目的は従来困難とされていた皮革
に対する高精細画像の加色を可能とし、しかもその加色
画像自身に十分な耐久性、特に耐水性を付加すること
で、従来から行われている仕上げ処理に対しても何等制
約を加えることなしに、皮革製品まで作製できることを
達成したものである。これによって、今までにない新し
いデザインの皮革製品を創出し、新たな皮革の応用・展
開の分野をより拡大するものである。
【0015】すなわち本発明の主な特徴としては、鞣製
工程を経た皮革に対し加色を行う工程を有する皮革の加
色方法において、上記加色工程として、色材を含有する
液状インクを所定情報に応じた液滴にして噴射すること
により上記皮革に加色を行う噴射加色工程と液滴噴射さ
れる液状インクの色材と反応し且つ皮革に対して浸透で
きる色材固着剤を上記皮革に付与して浸透させる浸透工
程を有することである。
【0016】そして、本発明は好ましい条件として、上
記液状インクの色材はアニオン性色材を有し、上記浸透
工程の色材固着剤はカチオン性物質を含む液体であるこ
と、または上記液状インクの色材はアニオン性色材で、
上記浸透工程の色材固着剤はカチオン性物質を含む液体
であり、上記浸透工程では該液体に更にカチオン性の高
分子物質を含んでいることを挙げることができる。
【0017】また、本発明の別の好ましい条件として、
上記鞣製工程を経た皮革は、加色工程の前において、液
状インクの浸透を調整するインク受容層が前記皮革の加
色面に設けられているもの、あるいは、上記浸透工程
は、上記噴射加色工程と同時期の工程、または上記噴射
加色工程の後続工程であることを挙げることができる。
【0018】なお、本発明で言う皮革は、主に天然皮革
を指し、一般に定義されている脱毛後に鞣した革、及び
脱毛を伴わない毛皮との総称で示すこととする。また加
色とは、従来から一般的な技術用語として使用されてい
る、単色あるいは複色の、染色、塗装、着色等を含んだ
総称である。したがって、加色の操作の後、色の素とな
る色材は、皮革の内部に浸透した形態、皮革の表層部付
近にのみ付着あるいは一部浸透した形態、皮革の表面上
に積層された形態など、いずれの形態も含むものであ
る。さらに皮革の加色される面は、銀面、肉面のいずれ
かに限定されるものではなく、どちらの面においても本
発明は同様に適用されるものである。なお、本発明でい
う加色工程は、色材を含有する液状インクを所定情報に
応じた液滴にして噴射することにより行うが、これを実
現するには、インクジェット方式を利用すことがもっと
も好ましく、またインクジェット方式により、主に多色
画像を皮革上に表現することをいう。
【0019】そして本発明によれば、画像形成のために
液状インクを所定情報に応じた液滴にして、皮革上に噴
射して行う噴射加色工程と、その液滴で噴射される液状
インクの色材と反応し且つ皮革に対して浸透できる色材
固着剤を、上記皮革に付与して浸透させる浸透工程を有
することにより、次のような効果が得られる。
【0020】すなわちこの液状インクが皮革に接触し、
付着又は浸透していく間、あるいはそれらが完了して染
着した際、またはその後に、この液状インク中に含有さ
れている色材と、皮革中に浸透して存在する色材固着剤
とが接触し、その瞬間に色材を不溶化、すなわち色材の
固着がなされる。このため、その後は、この皮革に水等
が付着して色材を再溶解あるいは移動させ得る事態が生
じても、濃度低下や滲みの変化などによって画像を乱す
ことが起こらないものである。このような作用から、色
材固着剤は、噴射加色すべき皮革中にあらかじめ付与し
て浸透させる場合、噴射加色操作中に皮革へのインク噴
射と同時に付与して浸透させる場合、あるいは噴射加色
が終了した後に付与して浸透させる場合、いずれでも効
果を発現させることが可能である。したがって、上記の
液状インクによる噴射加色工程及び色材固着剤の浸透工
程それぞれの実施順序としては、どちらが先でもかまわ
ないし、同時でもよい。さらにこの2種の工程の間にお
ける時間の差についても、特に限定するものではない。
すべてにおいて同等の効果を発現させることが可能であ
る。
【0021】なお前述したように、噴射加色工程、すな
わち液状インクを液滴噴射する際にはインクジェット方
式で行うことが好ましいが、通常インクジェット方式で
使用し得る色材には、各種の染料や顔料がある。これら
は程度に差はありながらもアニオン性を呈するものが多
いので、上記本発明の浸透工程で用いる色材固着剤に、
この色材とは極性が逆であるもの、すなわちカチオン性
であるものを用いることにより、これら色材と色材固着
剤が電気的な引力で接触し、この両者の間でイオン結合
による反応が起こり、その結果色材をより強固に固着
し、不溶性とすることができる。このアニオン性を有す
る色材としては、酸性染料、直接染料、金属錯塩染料、
反応染料等、または一部の顔料等がある。染料の場合は
水やアルコールに溶けやすいものが多く、使用も容易で
ある。一方、顔料の場合は通常溶剤に不溶で皮革そのも
のには染着性を示さないため、合成樹脂によるエマルジ
ョン形態で分散状態にして通常使用する。また、これら
染料と顔料とを混合して用いることも可能である。
【0022】一方皮革は、その元となる皮状態の際に動
物の内臓を保護していたものであり、またそれ自身呼吸
を行っていたものであることから、非常に水分を多く含
んでいたものであって、吸水性は比較的高いものである
といえる。
【0023】インクジェットプリント方式によって加色
を行う皮革としては、鞣し後に水絞りや乾燥を施したも
のであることが好ましいが、このような工程を経ても、
元来皮の状態でもっていた性質により、少々の水分は革
の状態でももっていると考えられる。したがって色材固
着剤がカチオン性物質を含むとともに、液体の状態で構
成されていれば、上記のいずれの色材固着剤の皮革への
付与形態であっても、その色材固着剤は皮革内に浸透
し、色材固着剤とインク中の色材とを十分に接触させる
ことは可能であり、効果を発現できるものである。
【0024】続いて本発明を実施するにあたり、加色さ
れてできた画像の品位向上や定着促進のために、加色工
程の前に液状インクの浸透を調整することが可能なイン
ク受容層を設けることも有効である。一般に皮革といっ
ても、その動物の種類や鞣し方法の種類によって種々の
ものが存在しており、それに伴い液状インクを噴射して
画像を形成しようとしても、インクが加色面上に到達し
た後に画像定着が行われるまでの間で、そのインクの浸
透の仕方や加色面上でのインクの広がりかたは多種多様
である。従って使用する皮革によってはインク受容層の
存在によって、これらの特性を調整することが有効であ
る。これによって皮革自体への染色とその高濃度化を総
合的に達成できるもので、インク受容層自体をも皮革に
対して定着しやすく、それゆえ、皮革全体として高品質
化が達成できる。さらに加色領域が部分的である場合に
は、高濃度を維持するという観点からもより効果があ
る。
【0025】また皮革、さらにいうならば天然皮革で
は、生皮の状態のときに存在していた表面、とくに銀面
における毛穴や、各種のしわ等により、凹凸や、大きな
くぼみの影響が残っている場合が少なくなく、このまま
加色を行うと、それらの影響でインクが集中して、濃度
むらを生じさせる。あるいは、凹凸や大きなくぼみに対
して加工工程で平滑化処理を施した後に染色を行う場合
でも、完全な平滑化がなされることは難しいため、イン
ク受容層の存在によりこの影響を軽減させる効果もあ
る。さらには、加色操作が終了した後に行う仕上げ工程
の際の、機械的外力に対する画像保持の点でも有効であ
る。
【0026】これらインク受容層を設けるにあたり、具
体的な材料および構成は特殊な技術を必要とするもので
はないが、用いるインク溶媒が水系の場合は、ポリビニ
ルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース等の
水溶性樹脂が好適である。さらには液状インクの滲み状
態をより調整しやすくするために、粒子集合体で構成す
ることも有効であり、エマルジョンを塗布・乾燥させ
て、その分散粒子を残存させたり微粒子を添加したりす
ることもできる。ここで使用できる材料としては、スチ
レン・アクリル共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル
・アクリル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体、酢
酸ビニル・マレート共重合体、酢酸ビニル・エチレン共
重合体、酢酸ビニル・エチレン・塩化ビニル共重合体、
エポキシ樹脂等を乳化させたエマルジョン、または、コ
ロイダルシリカ、アルミナゾル等の無機微粒子類の分散
体などを用いることが可能である。ほかに特性の調整の
ために各種界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸
収剤、分散剤、粘度調整剤、pH調整剤、防かび剤、可
塑剤などの公知の添加剤を加えてもよい。
【0027】以上述べたインク受容層としては、単一の
材料でも2種類以上の材料の混合系でも使用でき、ある
いは1層で設けても2層以上で設けてもよい。またイン
ク受容層を設ける方法としてもバーコーターやロールコ
ーター、ドクターブレード等を用いて塗布する方法やス
クリーン印刷の手法、またはフィルム状に形成した上記
材料を圧着させる方法など、各種の方法が可能である。
これらインク受容層の有無や、使用する材料および層構
成などは、加色を行おうとする皮革の種類、加色面の平
滑状態、湿潤状態、および加色画像等によって適切に選
択・実施すればよい。
【0028】続いて本発明の具体的な、好ましい態様と
しては、鞣製工程を経た皮革に対し加色を行う工程を有
する皮革の加色方法において、上記加色工程として、ア
ニオン性色材を含有する液状インクを所定情報に応じた
液滴にして噴射することにより上記皮革に加色を行う噴
射加色工程及び、分子量2000以上20万以下のカチ
オン性の高分子物質と、液滴噴射される液状インクの色
材と反応でき且つ皮革に対して浸透できる分子量100
0以下のカチオン性の物質との混合物を主成分とする色
材固着剤を上記皮革に付与して浸透させる浸透工程を有
するものである。
【0029】先にも述べたように、本発明ではアニオン
性の色材とカチオン性の色材固着剤との間でイオン結合
による反応を起こさせるものであるが、この反応を効率
よく生じさせるために、分子量2000以上20万以下
のカチオン性の高分子物質と、液滴噴射される液状イン
クの色材と反応でき且つ皮革に対して浸透できる分子量
1000以下のカチオン性の物質との混合物を主成分と
して色材固着剤を構成するとより好ましいことを本発明
者は見いだした。なお以下の説明において、簡易化のた
めに、分子量2000以上20万以下のカチオン性の高
分子物質を『カチオン性高分子物質』、分子量1000
以下のカチオン性の物質を『カチオン性低分子物質』と
呼ぶことにする。なおここで高分子物質の分子量は、一
般によく用いられている重量平均分子量で規定する。
【0030】これらの物質によって起こる具体的な反応
の機構を以下に説明する。
【0031】まず反応の第1段階としては、加色のため
の液状インク中に溶解あるいは分散の状態で含まれてい
るアニオン性色材と色材固着剤中のカチオン性低分子物
質との間でイオン的相互作用により会合を起こし、瞬間
的に溶液相から色材の分離を起こす。続いて反応の第2
段階として、上述した色材とカチオン性低分子物質の会
合体が、色材固着剤のもう一方の成分であるカチオン性
高分子物質に吸着され、会合により生じた色材の凝集体
の大きさがさらに大きくなる。この結果、色材の凝集体
は、液体とは完全に分離した固体状態となりうる。これ
と同時にここで生成した色材の凝集体は、粘性が非常に
大きくなり液媒体の動きとともに移動することがなくな
る。したがって、上記凝集体は本質的に水不溶性と変化
し、形成された画像の色材の固着は完全なものとなる。
【0032】これら色材固着剤の主成分のうちの1つで
あるカチオン性低分子物質は、色材との間でイオン的相
互作用により会合体を形成するべく機能するが、この会
合体の形成反応速度は極めて速い必要がある。このこと
を満たすカチオン性低分子物質の具体例としては、1
級、2級乃至3級アミン塩型の化合物、具体的にはラウ
リルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンア
ミン等の塩酸塩、酢酸塩;第4級アンモニウム塩型の化
合物、具体的にはラウリルトリメチルアンモニウムクロ
ライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロラ
イド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩
化ベンザルコニウム等;ピリジニウム塩型化合物、具体
的にはセチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニ
ウムブロマイド等;イミダゾリン型カチオン性化合物、
具体的には2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミ
ダゾリン等;高級アルキルアミンのエチレンオキサイド
付加物、具体的にはジヒドロキシエチルステアリルアミ
ン等;が好ましい例として挙げられる。
【0033】さらに本発明では、このカチオン性低分子
物質として、あるpH領域においてカチオン性を有する
両性界面活性剤も使用できる。その具体例としては、ア
ミノ酸型両性界面活性剤;R−NH−CH2 −CH2
COOH型の化合物;ベタイン型の化合物、具体的には
ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエ
チルベタイン等のカルボン酸両性界面活性剤;この他、
硫酸エステル型、スルホン酸型、燐酸エステル型等の両
性界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤
を使用する場合には、布帛上で記録液と混合した場合
に、等電点以下のpHになるように調整する必要があ
る。
【0034】以上、分子量1000以下のカチオン性低
分子物質の例を挙げたが、本発明で使用することができ
る物質は必ずしもこれらの例に限定されるものではな
い。なお、本発明では、上記低分子量範囲のカチオン性
物質のうち、分子量が100から700の範囲にあるも
のが界面活性能があり、色材との反応も速い。そしてこ
のような低分子物質(単量体)を溶液中に存在させるた
め、皮革に付与した際には浸透性をもつものである。
【0035】次に色材固着剤の主成分のもう1つの成分
であるカチオン性高分子物質であるが、これは前述した
ように液状インク中の色材とカチオン性低分子物質の会
合体を分子中に吸着せしめ会合で生じた色材の凝集体の
大きさをさらに大きくし、固液分離により色材の不溶化
を促し、耐水性を実現させるよう機能する。このことを
満たすカチオン性高分子物質の具体例としては、ポリア
リルアミン塩、ポリアリルスルホン、ジメチルジアリル
アンモニウムクロライド、ポリアミンスルホン塩、ポリ
ビニルアミン塩、キト酸酢酸塩等の水溶性カチオン性高
分子等が使用可能であるが、これらに限定されるわけで
はない。また通常はノニオン性であっても、その物質の
一部にカチオン性基を付加したものを用いることもでき
る。具体例としては、ビニルピロリドンとアミノアルキ
ルアルキレート4級塩との共重合体、アクリルアミドと
アミノメチルアクリルアミド4級塩との共重合体をあげ
ることができるが、もちろんこれらの例に限定されな
い。更にこれらの物質は水溶性であれば申し分ないが、
ラテックスやエマルジョンのような分散体であってもよ
い。また水溶性以外のものであっても、皮革素材を侵さ
ない溶媒であれば、これらに限定されるものではない。
これらカチオン性高分子物質の分子量は2000以上で
あれば本発明を実施する際にその効果が出てくるが、好
適には2000から20万である。この範囲を越える
と、皮革内での浸透が不均一になることがあり、表面に
部分的な皮膜状部分として残ったり、色材との間で適切
な凝集体を形成しなくなったりする場合がある。とくに
100万程度の分子量になると塗膜状態を形成し、皮革
の風合いを落とすのみならず、色材の凝集体が表層部の
みに密集し、仕上げ工程時に機械的外力ではがれ、色お
ちを引き起こすことにもなりかねない。
【0036】以上述べたように本発明の好ましい態様の
ように、カチオン性高分子物質及びカチオン性低分子物
質を主成分として色材固着剤を構成する場合、これ以外
に必要に応じて界面活性剤等を加えてもよい。例えば、
高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフ
ェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオ
キサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレ
ンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキ
サイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加
物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレン
グリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの
脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステ
ル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、
ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエ
ーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等があげ
られる。
【0037】さらに本発明である皮革の加色方法のより
好ましい特徴としては、この色材固着剤の固形分付与量
が、前記皮革の単位面積当たり0.01g/m2 以上5
g/m2 以下の範囲内の量とすることであり、さらに
は、前記皮革の単位面積当たり0.05g/m2 以上3
g/m2 以下の範囲内の量とすることである。その上、
上記鞣製工程を経た皮革は、コンビネーション鞣しによ
って白色化された皮革であって、このコンビネーション
鞣しは、具体的にはアルミニウム鞣し、ジルコニウム鞣
し、チタン鞣し、又はシリカ鞣しを利用したコンビネー
ション鞣しであることが好ましく、これらに加え、前記
色材固着剤の付与は、インクジェットヘッドを介して行
われることが好ましい。
【0038】上述したもので構成される色材固着剤の皮
革に対する付与量としては、一般的な塗布量の規定方法
で定義すると、皮革の加色面の単位面積(本発明におけ
る単位面積は、表面に微細な凹凸があった場合、その凹
凸部分は含めず、投影面積でいうものである)を1m2
とした際に、固形分で0.01g/m2 以上5g/m2
以下の範囲が合理的な条件として挙げることができる。
より好ましくは0.05g/m2 以上3g/m2 以下の
範囲がよい。付与量が0.01g/m2 よりも少ない場
合には、インクの付与量や皮革の状態によりわずかに異
なるものがあるが、液状インクが皮革に到達してもすべ
ての色材を凝集させるには不十分となることもあり、ま
た付与量が5g/m2 よりも多い場合には皮革内へのイ
ンクの浸透を部分的に疎外する場合がある。逆に0.0
5g/m2 以上3g/m2 以下の範囲内であれば、画質
自体をも一層安定して良質な品質に維持でき、色材の固
着保持も極めて高水準にすることができる。ほかに、こ
の色材固着剤が、皮革の全体に付与されている必要は必
ずしもなく、少なくとも液状インクが噴射・付着される
部分に付与されていれば十分に効果を発現できるもので
ある。これまでにも触れてはいるが、皮革の場合、風合
いという独特の性質が重要視されるため、この色材固着
剤の付与量も最低限の範囲に抑えておくことはより好ま
しいものである。この点からも、上記の付与量、すなわ
ち0.01g/m2 以上5g/m2 以下の範囲内の条件
で行えば、風合いも皮革として好ましい状態にすること
ができる。
【0039】さらに、色材固着剤の皮革への付与状態と
して、本発明では、浸透させることを特徴としている
が、皮革の厚さ方向に対して厳密に均一としなければな
らないわけではなく、相対的に表面近くで密な状態でも
よく、皮革の厚さ方向で、色材固着剤の分布状態に多少
の勾配をもっていても機能上は支障がない。
【0040】このような範囲で色材固着剤の付与を行う
際の方法及び手段あるいは装置としての部分構成には、
公知の塗布方法や噴霧方法を利用することができる。具
体的にはバーコーターやドクターブレード等による塗布
方式、へらや刷毛を使用した塗装方式、スプレーガン等
による噴霧方式、あるいは加色中に専用のインクジェッ
トヘッドより噴射させる方式などが挙げられる。とくに
噴射加色操作中にインクジェットヘッドで噴射させる場
合には、加色画像の存在しない部分には付与させないよ
うにすることが可能であり、色材固着剤の付与を必要最
小限に抑えることができる。
【0041】次に、加色を行う皮革に関してであるが、
これについてはとくに特定するものではなく、原皮の種
類や鞣し方法の種類において、いずれのものにも適用で
きるものである。原皮は食肉用に供された後の副産物と
して利用されるので、一般的に数量が多いものとして
は、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、シカなどの哺乳
類であるが、ほかにもダチョウなどの鳥類、ウミガメ、
オオトカゲ、ニシキヘビ、ワニなどの爬虫類も皮革とし
て利用されており、本発明ではこの中で限定を加えるも
のではない。鞣し方法に関しても従来から行われている
ものには各種の方法があり、皮革製品とする際の形態や
用途に応じてそれぞれ適切な鞣し方法がとられている。
この鞣し方法として現在主流をなすものとしては、クロ
ム鞣しおよびタンニン鞣しがあげられる。しかしこれ以
外にも次に述べるような各種のものがある。
【0042】鞣し方法としては、まずクロム鞣しで代表
される無機系の鉱物鞣剤を利用するもの、タンニン鞣し
で代表される有機系の植物や合成品による鞣剤を利用す
るもの、および油脂系の鞣剤を利用するものに大きく分
けられる。ほかにこれらの鞣し方法を組み合わせて行わ
れるコンビネーション鞣しが現在では多く利用されてい
る。その他に姫路白鞣革や甲州印伝革で代表されるよう
な、古くから伝承されてきた鞣し方法も数多くある。本
発明においてはこれらの鞣し方法は何れも適用可能であ
る。
【0043】上記の鞣し方法の中で、鉱物鞣剤を利用す
る方法としては、クロム鞣し、アルミニウム鞣し、ジル
コニウム鞣し、チタン鞣し、第2鉄塩鞣しなどがある。
また有機系鞣剤を利用する方法としては、植物タンニン
鞣し、アルデヒド鞣しなどがある。さらにナフタレン系
合成鞣剤、フェノール系合成鞣剤、樹脂鞣剤等の合成鞣
剤を利用した鞣し、セーム革に代表される油脂鞣しなど
である。
【0044】本発明でインクジェットプリントによって
皮革への噴射加色を実施する場合、その発色する色は、
生地の影響を受けて変わる可能性があるため、できるだ
け鞣し後の生地の色は白色に近いほうが好ましい。鞣し
後において、その生地の色が白色を呈するものとして
は、アルミニウム鞣し、シリカ鞣し、ジルコニウム鞣し
などによるもの、またはホルムアルデヒド鞣しとアルミ
ニウム鞣し、クロム鞣しとジルコニウム鞣し等の組み合
わせによるコンビネーション鞣し、あるいはクロム鞣し
後にチタン酸化物等の白色塗料による白色化や植物タン
ニン鞣し後に漂白処理を行う白色化が従来から知られて
いる。これらが好適に利用可能である。
【0045】これまで説明してきたように、本発明の皮
革の加色方法を実施することにより、高精細な画像を皮
革上に実現可能になるが、ここで液状インクを噴射する
インクジェットプリント装置について説明する。
【0046】本発明に使用されるインク噴射手段として
のインクジェットプリント装置は、画像を300dpi
や360dpiあるいはこれ以上の600dpi等の密
度に分割されたドットで構成し、それらの個々のドット
を微細なノズルから噴射される着色された液滴で媒体で
ある天然皮革に着弾させることができるため、ドット単
位の着色で鮮明に達成でき、しかも均一な色調が得られ
るので、画像全体としても均一なものとすることが可能
である。また、インクジェット装置は、非接触で行われ
るプリント装置であるため、皮革表面の平滑性および皮
革の背面の支持等において、厳密な均一性を必ずしも保
つ必要性はなく、さらに複数色の液滴を1回の工程で付
着させることが可能で、その後に行われる皮革処理工程
に対しても非常に大きな時間短縮につながるものであ
る。
【0047】また、インクジェットプリント装置におい
ては、インク噴射手段の複数のノズル列をインクの噴射
と共に皮革に対して相対的に移動させて加色を行うこと
で、一層の高密度化や加色領域の鮮明さを向上できる。
このことから、皮革表面の特定部分領域にのみ、インク
噴射による単色或は複合色による画像やマークを特定色
で形成できるので、部分的な特色領域を強調、あるいは
ぼかした領域にすることも可能である。さらに、この逆
に、部分的な特色領域のみに前述のインク受容層及び密
着層の形成をマスク等で異ならせることによって、イン
ク噴射による加色領域を一層強調することができる。ほ
かに、インク噴射による皮革表面の加色の利点を挙げれ
ば、皮革表面上で毛穴やしわ等の非平滑部分が存在して
いても、その部分のみインクの噴射量を調節して、他の
部分(平滑部分や周辺領域)との色むらや色抜けが生じ
ないようにすることもできる。逆に、皮革表面が均一で
も、インク付与量をプログラムやシステムのホスト上で
の画像処理等で調整あるいは変更することで、所望の濃
度分布や階調を得ることが可能で、従来の皮革への加色
方法の欠点を補うことができる。
【0048】インクジェットプリント装置によるインク
の噴射において、従来普通紙を用いて記録を行う場合に
は、解像性の低下、色間の滲み出し、裏抜け及び定着時
間増大などの点でインクの最大打込量は制限されるの
で、通常はインクの最大打ち込み量は水系インクの場合
には16〜28nl/mm2 程度に収める様に設計する
のが一般的である。しかしながら、本発明のように皮革
への加色の場合には、皮革の材質や厚み、さらには皮革
がもつ吸水性等により、さらに多くのインクを与えるこ
とも可能である。具体的には、通常の2倍以上の16〜
50nl/mm2程度でも鮮明な画像とすることができ
る。特に、加色としての記録における周波数に対応する
印字速度よりも小さい印字速度で高密度記録、たとえば
1/2の印字速度で倍密度記録したり、同一の記録領域
を複数回の記録走査で重ね印字したり、インクの吐出量
を増加させるためのインクジェットヘッド駆動制御によ
り各種の画像表現が実現できる。
【0049】インクジェットプリント方式としては、荷
電制御型、ピエゾ素子による噴射装置、発熱素子による
噴射装置等が採用できるが、この中でも発熱素子による
噴射装置は記録ヘッドの高密度化を行いやすいという点
で好適である。
【0050】さらに本発明の別な形態としては、これま
で説明した加色方法及び加色装置に対し、インク噴射加
色がなされた皮革及び皮革製品、さらにはインク噴射加
色がなされた皮革の加色表面に堅牢性を向上させるべ
く、保護層を有する皮革及び皮革製品をも含むものであ
る。以後、実施例により本発明を具体的に説明してい
く。
【0051】
【実施例】
(実施例1)本発明による皮革への具体的な加色方法に
ついて述べる前に、本発明に使用するインクジェット加
色装置に関してまず説明する。
【0052】図2は本発明によるインクジェット加色装
置の加色部分の主要部を示す概略図である。この図にお
いて、1はインクジェット加色装置、2は加色される皮
革を示す。鞣製工程を終えた皮革は元来定形ではないた
め、この図2のように端部は直線性を持たないが、加色
装置の基本的な動作説明を簡略にするため、便宜上、端
部を直線状にしている。またこの加色装置は、ほとんど
の皮革に対して使用可能とするために、大型の装置を構
成している。通常皮革の大きさとして、幅は1m以下で
あるものがほとんどであるため、この加色装置において
も皮革2として幅1mまでを搭載可能としている。
【0053】まずここで加色の最も重要部分であるイン
クジェットヘッド10は、液状インク噴射のための多く
のノズル(不図示)を持っている一つのインクジェット
ユニットを4個ならべたものであり、キャリッジ12に
設けられている。さらにこのインクジェットヘッド10
に、液状インクを供給できるようにしたインク供給装置
11を、キャリッジ13に設けている。そしてこれらは
チューブ14を介して接続することによって、ブラッ
ク、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクを、そ
れぞれインク別に仕切られた部屋に充填して、インク供
給装置11からインクジェットヘッド10へのインク供
給を行っている、また電装系15からインクジェットヘ
ッド10へ送られてくる信号によって、2つのキャリッ
ジはフレーム枠16に取り付けられたガイドレール17
およびガイドレール18に沿って、図2の矢印A方向に
往復移動して走査するとともに、インクジェットヘッド
10から画像信号に応じたインクの噴射を開始し、皮革
2に加色可能としている。そして皮革2は2つのキャリ
ッジの往復移動のたびに、矢印B方向に順次搬送され全
体に加色がなされていく。
【0054】続いてこのインクジェット加色装置1を用
いて加色が行われる皮革2について図1に基づき説明す
る。
【0055】原皮として羊を用い、これに通常の準備工
程を施した後、ホルムアルデヒド鞣しを行う。その後水
絞り・シェービングを行ってアルミニウム鞣剤による再
鞣し、続いてオリーブ油による加脂を行う。このような
コンビネーション鞣しを終了した羊革を乾燥させ、加色
用とする。このようにしてできた革は弾力性が高く、白
色度も高いものであり、インクジェットによる多色の加
色には好適である。続いてこの皮革に対して、以下に示
す色材固着剤(a)をスプレーガンを用いて銀面全体に
噴霧し、約50℃の熱風で2分間乾燥後、加色用の皮革
2とする。なお以下の説明において、特に断らない限り
『部』表記は重量基準とする。
【0056】 〔色材固着剤(a)〕 塩化ベンザルコニウム 2部 ポリアリルアミン塩酸塩(分子量:3万) 5部 水 93部
【0057】このようにしてできた皮革2には、上記色
材固着剤(a)の固形分は内部に浸透されており、また
その付与量は0.1g/m2 であった。しかもこの色材
固着剤(a)による処理前に対し、風合い及び白色度は
全く損なわれていなかった。
【0058】続いてこの色材固着剤(a)の処理を終え
た皮革2に、図2のインクジェット加色装置1を用いて
加色を行う場合の動作を説明すると、以下のとおりであ
る。本実施例に使用している皮革は羊であるため、非常
に柔軟性が高いとともに伸張性があるため、搬送補助部
材に設置した後にインクジェット加色装置1に搭載す
る。図3にこの様子を示す。ここで搬送補助部材3は、
伸び率の低い加硫ゴムでできた平坦なシート31の一方
の面全体に、比較的弱い接着性の接着剤32を塗布して
いるものである。この接着剤32は、皮革2がずれない
ように固定する目的で設けているのみであるので、皮革
2が自重ではがれ落ちない程度の接着性でよく、このこ
とから皮革2を加色が終了した後に取り去る場合にも損
傷を与えるものではない。
【0059】次にこの皮革に対しインクジェット加色を
行うが、ここで使用されるインクとしては、以下のイン
ク(A)からインク(D)の組成をもつ。
【0060】 〔インク(A)〕 C.I.リアクティブブラック5(反応性染料) 13部 チオジグリコール 15部 ジエチレングリコール 15部 塩化カルシウム 0.002部 水 残部
【0061】 〔インク(B)〕 C.I.リアクティブブルー72(反応性染料) 13部 チオジグリコール 25部 トリエチレングリコールモノメチルエーテル 4部 水 残部
【0062】 〔インク(C)〕 C.I.リアクティブレッド24(反応性染料) 10部 チオジグリコール 16部 ジエチレングリコール 10部 テトラエチレングリコールジメチルエーテル 4部 水 残部
【0063】 〔インク(D)〕 C.I.リアクティブイエロー95(反応性染料) 10部 チオジグリコール 26部 ジエチレングリコール 9部 水 残部
【0064】なおそれぞれのインクは、全成分を混合し
てから2時間撹拌した後、フロロポアフィルターFP−
100(商品名、住友電工製)にて加圧濾過して得る。
【0065】図3のように搬送補助部材3に積層した皮
革2を、インクジェット加色装置1に装着するには、ま
ず搬送補助部材3の背面(皮革2が張り合わされていな
い面)の一端をプラテン19に合わせる(装着部は不図
示)。その後、別に用意されている画像信号発生装置か
ら電装系15に供給されてくる画像信号より、インクジ
ェットヘッド10の各ノズルごとのインク噴射タイミン
グ信号を作り出し、加色のためのインクを皮革2に噴射
する。そしてインクジェットヘッドの1回の走査が終了
するたびに、その際に加色を行った幅の分だけ皮革2を
矢印Bの方向に移動させる。以下この動作を繰り返すこ
とによって、皮革2上に順次加色部分21が現れ、最終
的に皮革2の全面にわたって加色を完了する。できあが
った皮革2の加色面は非常に高精細なフルカラー画像で
あり、さらに羊革の場合、それ自身が比較的、水を吸収
しやすい性質があるため、インクの浸透も十分で余計な
にじみのない鮮明なプリントを実現することができた。
【0066】この加色が終了したら、皮革2と搬送補助
部材3の接合体をインクジェット加色装置1から取り外
し、続いて搬送補助部材3より皮革2をひきはがす。こ
の状態で、あらかじめ皮革2に噴霧していた色材固着剤
(a)が噴射されたインク中の染料と反応し、染料を水
に対して不溶化状態に変化させているため、この後は通
常の仕上げ処理に移すことが可能な状態になっている。
【0067】この後に従来から行われている仕上げ工程
に移行する。これには、まず水性ポリウレタンエマルジ
ョンを塗布するが、すでに色材固着剤(a)の作用によ
り染料は水に対して不溶化状態となっているため、全く
画像を乱すことはなかった。次いでナイロン樹脂やカゼ
イン等によってさらに仕上げ剤を塗布、ラッカーの上塗
りを行って終了する。このように完了することで、羊革
の風合いは全く変化せずに、高濃度、多色柄の革につく
りあげることができた。
【0068】(実施例2)皮革として実施例1と同じ羊
革を用い、その皮革自身には何も付与せずに、そのまま
の状態で実施例1と同様にしてインクジェット加色まで
を行う。加色が終了し、搬送補助部材3からとりはずさ
れた羊革は、加色面においては、すでにインクは乾燥、
定着が終了している。続いて以下に示す色材固着剤
(b)を用意する。
【0069】 〔色材固着剤(b)〕 塩化ベンザルコニウム 2部 ポリアリルアミン塩酸塩(分子量:5万) 5部 水 93部
【0070】この色材固着剤(b)を上記羊革の加色面
にスプレーガンによって、一様に噴霧し、全体で色材固
着剤(b)の固形分が0.8g/m2 となるようにし
た。続いて50℃で3分間乾燥させる。このように水溶
液からなる色材固着剤(b)を加色後に付与する場合に
は、液だれを防止する意味で処理液粘度が高いほうが好
ましいので、この例ではカチオン性高分子物質の分子量
を高く設定している。
【0071】そして、ここまでの加色ずみの羊革の上か
ら実施例1と同様にして仕上げ処理を行った。できあが
った羊革は、風合い、画像濃度、画像の色合い、画像滲
みのすべてにおいて加色直後の状態を維持したままで仕
上がった。
【0072】(実施例3)皮革として実施例1と同じ羊
革を用意する。次に下記の色材固着剤(c)を用意す
る。図1で示したインクジェット加色装置中のインクジ
ェットヘッド10にインクジェットヘッドユニットをも
う一つ追加した形態にし、これに伴って、インク供給装
置11にも仕切られた部屋をもう一つ追加した形態とす
る。追加したインク供給装置11の追加した部屋の中に
下記の組成をもつ色材固着剤(c)を充填し、そこから
チューブを介して追加したインクジェットヘッドユニッ
トに接続し、この色材固着剤(c)も4色の液状インク
と同様に噴射可能な構成とする。
【0073】 〔色材固着剤(c)〕 塩化ベンザルコニウム 1部 ポリアリルアミン塩酸塩(分子量:1万) 1部 チオジグリコール 10部 ジエチレングリコール 10部 水 78部
【0074】この場合実施例1及び実施例2とは異な
り、色材固着剤(c)もインクジェットヘッドから噴射
するという点で、溶液粘度をなるべく下げるため、カチ
オン性高分子の分子量は低く設定し、さらに噴射の補助
成分を添加している。
【0075】このような構成のもとに、上述の皮革自身
を、何も付与せず、そのままの状態で実施例1と同様に
してインクジェット加色を行う。この加色動作のための
キャリッジの往復動作の際、上述の追加したインクジェ
ットヘッドユニットからも色材固着剤(c)を同時に噴
射し、加色面に付与する。このような形態の場合には加
色面において、インクと色材固着剤(c)とがほぼ同時
に起こっているものである。したがって、加色が終了
し、搬送補助部材3からとりはずされた羊革は、加色面
においては、すでに染料の不溶化は達成できている。
【0076】以上のようにしてできた加色ずみの羊革の
上から実施例1と同様にして仕上げ処理を行った。でき
あがった羊革は、風合い、画像濃度、画像の色合い、画
像滲みのすべてにおいて問題が生ずるものではなく、非
常に高精細な画像が加色された皮革となった。
【0077】(実施例4)原皮として成牛を用い、これ
に通常の準備工程を施した後、クロム鞣しを行う。その
後水絞り・シェービングを行ってチタン酸化物からなる
白色塗料で白革とし、加脂・乾燥させた後、加色用とす
る。この牛革の場合、風合いとしてはある程度の硬さを
持ち、伸びにくいので、図2のインクジェット加色装置
に対して、そのままで搬送を可能とすることができる。
したがって、図3のような搬送補助部材を使用せず、直
接に図2のインクジェット加色装置に搭載する。この皮
革の搭載に先立ち、以下の色材固着剤(d)を刷毛塗り
により銀面に塗装、50℃で3分間の乾燥後、色材固着
剤(d)の固形分の付与量が1.0g/m2 となるよう
に調製を行った。
【0078】 〔色材固着剤(d)〕 ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド 3部 ポリアミンスルホン(分子量:5万) 6部 水 91部
【0079】このようにしてできあがった牛革2の背面
(肉面)の一端を、図2のプラテン19に合わせて装着
する(装着部は不図示)。その後は実施例1と同様にし
て加色動作を行わせる。
【0080】この加色が終了したら、皮革2をインクジ
ェット加色装置1から取り外す。この状態で、あらかじ
め皮革2に塗装していた色材固着剤(d)が噴射された
インク中の染料と反応し、染料を水に対して不溶化状態
に変化させているため、この後は通常の仕上げ処理に移
すことが可能な状態になっている。
【0081】この後の仕上げ工程では、まず水性のカゼ
インを主成分とした仕上げ剤、続いて合成樹脂からなる
中塗り剤、最後にラッカーの上塗り剤を、それぞれカー
テンコーターにて塗布し、その後アイロンプレスにより
完成させた。できあがった革の画像乱れは全くなく、ま
た加色前に色材固着剤を付与したことによる風合いの変
化も全く感じられなく、鮮明な多色プリント革とするこ
とができた。
【0082】(実施例5)加色用の革として前述の牛革
を用いる。続いてこの牛革に以下に示す処理液を用い、
密着層及び透過層を、銀面側からロールコーターにてそ
れぞれ塗布、50℃、2分間の乾燥で2g/m2 ずつ設
け、インク受容層を形成する。
【0083】 〔密着層形成用処理液〕 水溶性アクリルアミド 2部 水 98部
【0084】 〔透過層形成用処理液〕 スチレン・アクリル共重合体 40%水系エマルジョン 60部 (最低造膜温度 50℃) 水 40部
【0085】この状態より、図2のインクジェット加色
装置に、実施例4と同様にして装着後、加色動作を行
う。この加色が済んだ後に、実施例4で使用した色材固
着剤(d)をスプレーガンで全面に噴霧、その後40℃
で3分間乾燥させる。
【0086】次いで実施例4と同一の仕上げ工程を経て
プリント革を完成させた。できあがった革は、加色前に
あらかじめインク受容層を形成してあったため、細部に
わたって非常に画像の忠実性が高く、また加色後に色材
固着剤を付与したことで、その画像を仕上げ工程におい
て乱すことも全くなかった。さらに風合いに関しても問
題を起こすことはなかった。
【0087】(実施例6)図4は、皮革の加色動作と色
材固着剤の噴射を同一装置内で行い、しかもこれら一連
の操作を連続して行わせるように構成したインクジェッ
ト加色装置を示す。ここで4はインクジェット加色装
置、5は加色される皮革である。このインクジェット加
色装置の動作は、基本的には実施例1で述べたものと同
様である。インクが噴射されるインクジェットヘッド4
0は、複数のノズルを配列してなるインクジェットヘッ
ドユニットを4個ならべて構成されており、さらにこの
インクジェットヘッド40はインクを収納しているイン
クタンク41と直接に結合された一体型カートリッジを
なしている。このインクタンク41内は、ブラック、シ
アン、マゼンタ、イエローの4色のインクをそれぞれ充
填する、インク別に仕切られた部屋があり、チューブを
介さずに、直接にインクジェットヘッド40へ液状イン
クを送り出す機構をとっている。図4の中で、ブラッ
ク、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクを充填
する部屋の部分に、それぞれK、C、M、Yの記号を付
している。このインクジェットヘッド40ならびにイン
クタンク41はキャリッジ42に設けられ、不図示の電
装系よりインクジェットヘッド40に送出されてくる信
号によって、キャリッジ42はガイドレール43および
ガイドレール44に沿って、図の矢印C方向に往復移動
して走査するとともに、インクジェットヘッド40から
画像信号に応じたインクの噴射を開始し、皮革5に加色
可能としている。そして皮革5はこのキャリッジの往復
移動のたびに、矢印E方向に順次搬送され全体に加色が
なされていく。なお、ここで使用されるインクとして
は、以下のインク(E)からインク(H)の組成のもの
である。
【0088】 〔インク(E)〕 C.I.フードブラック2(染料) 3部 チオジグリコール 10部 アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05部 水 残部
【0089】 〔インク(F)〕 C.I.アシッドブルー9(染料) 2.5部 チオジグリコール 10部 アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05部 水 残部
【0090】 〔インク(G)〕 C.I.アシッドレッド289(染料) 2.5部 チオジグリコール 10部 アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05部 水 残部
【0091】 〔インク(H)〕 C.I.ダイレクトイエロー86(染料) 2部 チオジグリコール 10部 アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物 0.05部 水 残部
【0092】なおそれぞれのインクは、全成分を混合し
てから2時間撹拌した後、フロロポアフィルターFP−
100(商品名、住友電工製)にて加圧濾過して得る。
【0093】一方、このキャリッジ42の往復移動と平
行で、皮革5の搬送方向上流側に設けられた、D方向へ
の往復移動を行うキャリッジ47には、1つのインクジ
ェットヘッドユニットから構成されるインクジェットヘ
ッド45と、それに結合されるタンク46が載置されて
いる。このタンク46内には、実施例3で示した色材固
着剤(c)が充填され、インクジェットヘッド45へ供
給されるようにしている。そしてインクジェットヘッド
40による皮革5への加色動作に連動し、適切なタイミ
ングをとりながら、キャリッジ47はガイドレール48
およびガイドレール49に沿って、キャリッジ42と同
じ速度で往復移動する。そしてここでは、皮革5の加色
面に、色材固着剤(c)を、全ノズルより噴射するよう
に構成している。以上のようにこの例では、インク及び
色材固着剤はいずれも鉛直下方向に噴射するようにして
いる。
【0094】また皮革5の搬送は、図4のインクジェッ
ト加色装置4を含め、図5で示す機構をもっている。す
なわち、あらかじめ皮革5は、空気の吸引によって皮革
を非加色面から吸着する吸着装置6を備えており、この
吸着装置6はレール61に沿って図5のE方向に相当す
る方向へ移動する機構をもっている。加色操作を開始す
るために、まず皮革5を吸着装置6に設置し、不図示の
駆動源によって空気の吸引が一定時間始まり、皮革5を
吸引して固定すると共に平坦にならして吸着状態を得
る。ついで吸着装置6を、皮革5の先端がインクジェッ
トヘッド40にさしかかるまで矢印E方向へと送り出
し、加色動作を開始する。その後はキャリッジ42の一
回の往復動作が行われるごとに、インクジェットヘッド
40の加色幅だけ、吸着装置6に設置された皮革5を矢
印E方向へ順次送り出す。インクジェットヘッド49か
らの色材固着剤の噴射は、先に説明したように、この加
色動作に連動して行われ、加色されたインク中の染料が
固着・不溶化されていく。これら一連の加色及び色材固
着剤の噴射が終了すると、吸着装置6に設置された皮革
5は、乾燥炉7へと搬送され、ここで50℃、3分間の
乾燥が行われることにより、色材固着剤の不用な溶媒成
分が蒸発していく。吸着装置6がこの乾燥炉7を出たあ
とは、皮革5の吸引を解除して、動作を完了する。
【0095】このような構成によって、クロム鞣しを終
えた牛革に対して加色を行う。なお加色前の処理として
は、前述の実施例5と同様にしてインク受容層を設けて
おく。加色装置を経た皮革5は、次いで実施例4と同一
の仕上げ工程によってプリント革に完成させた。できあ
がった革は、加色前にあらかじめインク受容層を形成し
てあったため、細部にわたって非常に画像の忠実性が高
く、また加色とともに色材固着剤を付与していたので、
その画像を仕上げ工程において乱すことも全くなかっ
た。さらに風合いに関しても問題を起こすことはなかっ
た。また加色から色材固着剤の付与・乾燥までを一連の
操作で実施できたため、処理時間も短縮することが可能
となった。
【0096】このような装置によって加色を行えば、皮
革の装着も容易であり、また操作も簡便で、確実に処理
を実施することができる。またこれに加え、インク受容
層の塗布や、仕上げ工程の塗装剤なども同一の流れの中
で行うようにシステム化すれば、皮革処理の自動化にも
有効である。
【0097】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、従
来人手と時間を要して、しかも多色による絵柄ができに
くかった皮革への加色を、液状インクの噴射、とくにイ
ンクジェットプリント方式で実現し、さらに仕上げ工程
において懸念となるときがある耐水性をも、有効な色材
固着剤の付与によって解決した。これにより、多色はも
ちろん、高精細の画像が得られ、また全体の処理時間の
短縮も可能である皮革への加色方法および加色装置を実
現した。したがって、従来の皮革の用途に対して、何等
制限をつけることなく、高画質・高品質の皮革製品を得
ることができ、従来にはなかった新しい皮革への展開も
はかることが可能となった。それと共に、少量多品種の
生産も可能であり、市場の細かな要求にも対応可能とな
るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における加色の工程を示す流れ
図である。
【図2】本発明の実施例におけるインクジェット加色装
置の主要構成図である。
【図3】本発明の実施例におけるインクジェット加色装
置で皮革を固定するための部材を示す図である。
【図4】本発明の別の実施例におけるインクジェット加
色装置の主要構成図である。
【図5】図4のインクジェット加色装置の動作を説明す
る説明図である。
【符号の説明】
1、4 インクジェット加色装置 2、5 皮革 3 搬送補助部材 6 吸着装置 7 乾燥炉 10、40、45 インクジェットヘッド

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鞣製工程を経た皮革に対し加色を行う工
    程を有する皮革の加色方法において、上記加色工程とし
    て、色材を含有する液状インクを所定情報に応じた液滴
    にして噴射することにより上記皮革に加色を行う噴射加
    色工程と液滴噴射される液状インクの色材と反応し且つ
    皮革に対して浸透できる色材固着剤を上記皮革に付与し
    て浸透させる浸透工程を有することを特徴とする皮革の
    加色方法。
  2. 【請求項2】 上記液状インクの色材はアニオン性色材
    を有し、上記浸透工程の色材固着剤はカチオン性物質を
    含む液体である請求項1に記載の皮革の加色方法。
  3. 【請求項3】 上記液状インクの色材はアニオン性色材
    で、上記浸透工程の色材固着剤はカチオン性物質を含む
    液体であり、上記浸透工程では該液体に更にカチオン性
    の高分子物質を含んでいる請求項1に記載の皮革の加色
    方法。
  4. 【請求項4】 上記鞣製工程を経た皮革は、上記加色工
    程の前に前記液状インクの浸透を調整するインク受容層
    が前記皮革の加色面に設けられている請求項1乃至請求
    項3いずれかに記載の皮革の加色方法。
  5. 【請求項5】 上記浸透工程は、上記噴射加色工程と同
    時期の工程、または上記噴射加色工程の後続工程である
    請求項1乃至請求項4いずれかに記載の皮革の加色方
    法。
  6. 【請求項6】 前記色材固着剤の固形分付与量は、前記
    皮革の単位面積当たり0.01g/m2 以上5g/m2
    以下の範囲内の量である請求項1乃至請求項5いずれか
    に記載の皮革の加色方法。
  7. 【請求項7】 上記鞣製工程を経た皮革は、コンビネー
    ション鞣しによって白色化された皮革である請求項1乃
    至請求項6いずれかに記載の皮革の加色方法。
  8. 【請求項8】 上記鞣製工程を経た皮革は、アルミニウ
    ム鞣し、ジルコニウム鞣し、チタン鞣し、又はシリカ鞣
    しを利用したコンビネーション鞣しによって得られた白
    革である請求項1乃至請求項6いずれかに記載の皮革の
    加色方法。
  9. 【請求項9】 前記色材固着剤の付与は、インクジェッ
    トヘッドを介して行われる請求項1乃至請求項8いずれ
    かに記載の皮革の加色方法。
  10. 【請求項10】 鞣製工程を経た皮革に対し加色を行う
    工程を有する皮革の加色方法において、上記加色工程と
    して、アニオン性色材を含有する液状インクを所定情報
    に応じた液滴にして噴射することにより上記皮革に加色
    を行う噴射加色工程及び、分子量2000以上20万以
    下のカチオン性の高分子物質と、前記液状インクの色材
    と反応でき且つ皮革に対して浸透できる分子量1000
    以下のカチオン性の物質との混合物を主成分とする色材
    固着剤を上記皮革に付与して浸透させる浸透工程を有す
    ることを特徴とする皮革の加色方法。
  11. 【請求項11】 前記色材固着剤の固形分付与量は、前
    記皮革の単位面積当たり0.01g/m2 以上5g/m
    2 以下の範囲内の量である請求項10に記載の皮革の加
    色方法。
  12. 【請求項12】 前記色材固着剤の固形分付与量が、前
    記皮革の単位面積当たり0.05g/m2 以上3g/m
    2 以下の範囲内の量である請求項10に記載の皮革の加
    色方法。
  13. 【請求項13】 コンビネーション鞣しによって白色化
    された皮革を用いて行う請求項10に記載の皮革の加色
    方法。
  14. 【請求項14】 アルミニウム鞣し、ジルコニウム鞣
    し、チタン鞣し、またはシリカ鞣しを利用したコンビネ
    ーション鞣しによって得られた白革を用いる請求項10
    に記載の皮革の加色方法。
  15. 【請求項15】 前記色材固着剤の付与は、インクジェ
    ットヘッドを介して行われる請求項10に記載の皮革の
    加色方法。
  16. 【請求項16】 請求項1乃至15のいずれかに記載の
    加色方法によってインク噴射加色がなされたことを特徴
    とする皮革又は皮革製品。
  17. 【請求項17】 請求項1乃至15のいずれかに記載の
    加色方法によってインク噴射加色がなされた皮革の加色
    表面に仕上げ工程で保護層を付加した皮革又は皮革製
    品。
  18. 【請求項18】 鞣製工程を経た皮革に対し加色を行う
    工程を実施する皮革の加色装置において、上記加色工程
    として色材を含有する液状インクを所定情報に応じた液
    滴にして噴射することにより上記皮革に加色を行う噴射
    加色工程を実行するためのインクジェット手段と、上記
    加色工程として液滴噴射される液状インクの色材と反応
    し且つ皮革に対して浸透できる色材固着剤を上記皮革に
    付与して浸透させる浸透工程を実行するためのインクジ
    ェット手段とを有することを特徴とする皮革の加色装
    置。
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