JPH1034844A - ポリビニルアルコール系フィルム - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルム

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JPH1034844A
JPH1034844A JP19463596A JP19463596A JPH1034844A JP H1034844 A JPH1034844 A JP H1034844A JP 19463596 A JP19463596 A JP 19463596A JP 19463596 A JP19463596 A JP 19463596A JP H1034844 A JPH1034844 A JP H1034844A
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直樹 藤原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 透明性及び表面光沢性に優れ、かつヒートシ
ール強度、接着強度を損なうことなく、滑り性、耐ブロ
ッキング性などを向上させたポリビニルアルコール系フ
ィルムを提供すること。 【解決手段】 片側又は両側の表面に、末端や側鎖に含
フッ素基をもつビニルアルコール系重合体を有する、好
ましくはこのものを含有する被覆層を有するポリビニル
アルコール系フィルムである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリビニルアルコ
ール系フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、
透明性、表面光沢性に優れ、かつヒートシール強度、接
着強度を損なうことなく、滑り性や耐ブロッキング性を
向上させたポリビニルアルコール系フィルムに関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ポリビニルアルコール(以下、PVAと
略記する)フィルムは、透明性や表面光沢が良く、優れ
た強靱性を示すため、各種包装材料として広く使用され
ている。しかし、滑り性に乏しいためフィルム同士が密
着し、いわゆるブロッキング現象を起こし易く、特に自
動包装機、自動製袋機に供して高速で運転する場合、ロ
ール状に巻き取ったフィルムが解き出され難く、一方で
フィルムが装置に付着したりして著しく作業性を低下
し、場合によってはフィルムが破断することもある。こ
のため従来は、二酸化硅素、二酸化チタン、クレー、ベ
ントナイト、澱粉等の微粉末をフィルム表面に塗布する
ことが行われているが、かかる方法ではフィルムの透明
性が低下して商品価値が損なわれるのを免れない上、該
粉末が脱落しやすく、ブロッキング防止効果が充分に発
揮されないなどの欠点がある。また、一般的に合成樹脂
フィルムの表面に有機高分子物質の有機溶剤溶液を塗布
してブロッキングを防止する方法も知られているが、P
VAフィルムに該方法を適用しても、かかる方法で使用
される有機高分子物質は、通常疎水性の樹脂であって、
PVAフィルムとの接着力に乏しいため、処理フィルム
をヒートシールする場合、たとえ塗布樹脂自体がヒート
シール性の優れたものであっても、塗布層とPVAフィ
ルム層とが剥離しやすく、結果的に接合力の強いヒート
シールを実施することは困難である。更に該方法では、
臭化カルシウム、硝酸マグネシウム等のPVAフィルム
の接着に通常用いられている周知の接着剤によってPV
Aフィルムの接着を行う際に、接着性が著しく低下して
その用途が制限されるのを免れない。したがって、かか
る方法は、PVAフィルムのブロッキング防止方法とし
ては、実用的な方法であるとはいえない。
【0003】そこで、このような欠点を改良するため
に、例えばPVAフィルムに疎水性合成樹脂エマルジョ
ンを点在させる方法(特公昭56−38610号公
報)、あるいはスチレン系樹脂エマルジョンやメタクリ
ル系樹脂エマルジョン、PVA水溶液、シリコーン系撥
水剤および特定の粒子径の微粒子体の水分散物からなる
組成物をコートする方法(特開昭57−92031号公
報)などが提案されている。しかしながら、これらの方
法では、エマルジョン粒子とPVAフィルムの接着性が
悪く、エマルジョン粒子が脱落してブロッキング防止能
が低下したり、あるいはコート液の調製が繁雑であるば
かりでなく、透明性、耐ブロッキング性、耐摩耗性すべ
てを同時に満足することは困難である。また、メタクリ
ル酸メチル、スチレン及び官能基を有するビニルモノマ
ーの共重合体とPVA水溶液を混合した液でPVAフィ
ルムを処理する方法が提案されている(特開平1−26
1801号公報)が、この方法では、低温、低湿時のヒ
ートシール性及び溶断シール温度が低い場合のヒートシ
ール性が低下するなどの問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
状況下で、透明性、表面光沢性に優れ、かつヒートシー
ル強度、接着強度を損なうことなく、滑り性、耐ブロッ
キング性などを向上させたPVA系フィルムを提供する
ことを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の優
れた機能を有するPVA系フィルムを開発すべく鋭意研
究を重ねた結果、少なくとも片側の表面に、含フッ素基
をもつビニルアルコール系重合体(以下、PVA系重合
体と略記する。)を有するPVA系フィルムが、その目
的に適合しうることを見出した。本発明は、かかる知見
に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、
少なくとも片側の表面に、含フッ素基をもつPVA系重
合体を有することを特徴とするPVA系フィルムを提供
するものである。なお、本発明でいうフィルムは、厚み
5mm程度以下のシート状物をも包含するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明のPVA系フィルムは、片
側又は両側の表面に含フッ素基をもつPVA系重合体を
有するものであって、該含フッ素基をもつPVA系重合
体においては、含フッ素基はPVA系重合体の末端にあ
ってもよく、側鎖にあってもよいが、末端にある場合、
得られるPVA系フィルムの耐ブロッキング性が特に優
れるので好ましい。以下、含フッ素基をもつPVA系重
合体について説明する。 (1)末端に含フッ素基をもつPVA系重合体 末端に含フッ素基をもつPVA系重合体における含フッ
素基としては、例えば一般式(I) Rf−(X)m − ・・・(I) (ただし、mは0又は1)で表される基を挙げることが
できる。上記一般式(I)において、Rfは、一般式 A−(CF2)q − (式中、Aは水素原子、フッ素原子、(CF3)2 CH−
又は(CF3)2 CF−を示し、qは2〜20の整数を示
す。)で表されるフッ化アルキル基、あるいは一般式 (CF3)2 CF−O−(CF2)q − (式中、qは2〜20の整数を示す。) 又は一般式
【0007】
【化1】
【0008】(式中、tは1〜10の整数を示す。)で
表されるフッ化アルキルエーテル基を示す。このRfの
例としては、H−(CF2)2 −、H−(CF2)4 −、H
−(CF2) 6 −、H−(CF2)8 −、F(CF2)2 −、
F(CF2)3 −、F−(CF2)4 −、F−(CF2)
5 −、F−(CF2)6 −、F−(CF2)7 −、F−(C
2)8 −、F−(CF2)9 −、F−(CF2)10−、(C
3)2 CF−(CF2)2 −、(CF3)2 CF−(CF2)
4 −、(CF3)2 CF−(CF2)6 −、(CF3)2 CF
−(CF2)8 −、(CF3)2 CF−O−(CF2)2 −、
(CF3)2 CF−O−(CF2)12−、(CF3)2 CF−
O−(CF2)13−、(CF3)2 CH−(CF2)2 −、
(CF3)2 CF−O−〔CF(CF3)−CF2 −O〕3
−CF(CF3)−などが挙げられる。
【0009】Xは、一般式−(CH2)n −(nは1〜5
の整数)で表されるアルキレン基、−(CH2)p −O−
(CH2)n −(p及びnはそれぞれ1〜5の整数)で表
されるアルキレンエーテル基、−CONH−(CH2)n
−(nは1〜5の整数)で表されるアルキレンアミド
基、−(S)r −(CH2)p −Q−(CH2)n −(p及
びnは、それぞれ1〜5の整数、Qは硫黄原子又は酸素
原子、rはQが硫黄原子の場合0又は1、Qが酸素原子
の場合1である。)で表されるアルキレンチオエーテル
基、−(CH2)p −NR1 −(CH2)n −(R1 は炭素
数1〜5のアルキル基、p及びnは、それぞれ1〜5の
整数)で表されるアルキレンイミノ基、−(CH2)p
COO−(CH2)n −若しくは−COO−(CH2)n
(p及びnは、それぞれ1〜5の整数)で表されるアル
キレンエステル基、又は−CH2 −CR2 (OH)−C
HR3 −若しくは−CH2 −CR2 (CHR3 OH)−
(R 2 及びR3 は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜5
のアルキル基)で表されるヒドロキシル基含有アルキレ
ン基を示す。
【0010】このXの例としては、−CH2 O−(CH
2)3 −、−(CH2)2 −、−(CH 2)4 −、−S−(C
2)2 −、−(CH2)2 −S−(CH2)3 −、−S−
(CH 2)2 −O−(CH2)2 −、−S−(CH2)2 −S
−(CH2)2 −、−CONH−(CH2)2 −、−(CH
2)2 −COO−(CH2)3 −、−COO−(CH2)
3 −、−CH2 −CH(OH)−CH2 −、−CH2
CH(CH2 OH)−などが挙げられる。本発明におい
て用いられる末端に含フッ素基をもつPVA系重合体の
製造方法としては特に制限はなく、様々な方法を挙げる
ことができるが、例えば上記一般式(I)で表される
含フッ素基を有するチオール類の存在下に、ビニルエス
テル類を主体とする単量体をラジカル重合し、連鎖移動
反応により末端に含フッ素基を導入したビニルエステル
系重合体を得たのち、これをけん化することにより製造
する方法(連鎖移動反応法)、及び末端にチオエステ
ル基又はチオール基を有するビニルエステル系重合体
と、一般式(II)
【0011】
【化2】
【0012】(式中、R4 及びR5 は、それぞれ水素原
子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rfは上記と
同じである。)で表される含フッ素エポキシ化合物との
付加反応により、末端に含フッ素基を導入したビニルエ
ステル系重合体を得たのち、これをけん化することによ
り製造する方法(末端反応法)が好適である。まず、上
記の連鎖移動反応法について説明する。一般式(I)
で表される含フッ素基を有するチオール類(以下、含フ
ッ素チオール類と称すことがある)としては、mが1の
場合、すなわちRf−X−SH(Rf及びXは前記と同
じである。)で表される化合物の例として、H(CF2)
2CH2 O(CH2)3 SH、H(CF2)4 CH2 O(C
2)3 SH、H(CF2)6CH2 O(CH2)3 SH、H
(CF2)8 CH2 O(CH2)3 SH、F(CF2)3CH
2 O(CH2)3 SH、F(CF2)5 CH2 O(CH2)3
SH、F(CF2)7CH2 O(CH2)3 SH、F(C
2)9 CH2 O(CH2)3 SH、F(CF2)6CH2
2 SH、F(CF2)7 CH2 CH2 SH、F(CF2)
8 CH2 CH2SH、F(CF2)9 CH2 CH2 SH、
F(CF2)10CH2 CH2 SH、F(CF2)8 (CH2)
4 SH、(CF3)2 CF−(CF2)6 CH2 CH2
H、(CF 3)2 CF−O−(CF2)2 CH2 CH2
H、(CF3)2 CF−O−(CF2)12CH2 CH2
H、(CF3)2 CF−O−(CF2)13−CH2 CH2
H、F(CF2)8 CH2 CH2 N(CH3)−(CH2)3
SH、F(CF2)8 SCH2 CH 2 SH、F(CF2)10
SCH2 CH2 SH、F(CF2)8 CH2 CH2 S(C
2)3 SH、F(CF2)8 SCH2 CH2 OCH2 CH
2 SH、F(CF2)8 SCH2 CH2 SCH2 CH2
H、F(CF2)3 CONHCH2 CH2 SH、F(CF
2)7 CONHCH2 CH2 SH、F(CF2)9 CONH
CH2 CH2 SH、(CF3)2 CF−O−(CF(CF
3)−CF2 −O)3−CF(CF3)−CONHCH2 CH
2 SHなどが挙げられる。
【0013】また、mが0の場合、すなわちRf−SH
(Rfは前記と同じである。)で表される化合物の例と
して、C2 5 SH,C4 9 SH,(CF3)2 CHC
2SHなどが挙げられる。さらに、これらのチオール
類の酢酸エステルや安息香酸エステルなどのエステルも
使用することができる。上記含フッ素チオール類の中で
は、特にH(CF2)4 CH2 O(CH2)3 SH、H(C
2)6 CH2 O(CH2)3 SH、H(CF2)8 CH2
(CH2)3 SH、F(CF2)7 CH2 O(CH2)3
H、F(CF2)9 CH2 O(CH2)3 SH、F(CF2)
9 CONHCH2 CH2 SHなどが好ましい。
【0014】一方、ビニルエステル類としては、例えば
ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビ
ニル、イソ酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロ
ン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラ
ウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビ
ニル、オレイン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げ
られるが、これらの中で、経済性の点で特に酢酸ビニル
が好適である。含フッ素チオール類の存在下における酢
酸ビニル等のビニルエステル類を主体とするビニル系単
量体の重合は、ラジカル重合開始剤の存在下、塊状重合
法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等いずれの方
法でも行うことができるが、酢酸ビニルの場合にはメタ
ノールを溶媒とする溶液重合法が工業的には最も有利で
ある。重合中に存在させるチオール類の重合系への添加
量、添加方法には特に制限はなく、目的とするPVA系
重合体の物性値に応じて適宜選定すればよい。重合方式
としては、回分式、半連続式、連続式のいずれの方式も
用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、
α,α′−アゾビスイソブチロニトリル;2,2′−ア
ゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル);過酸化
ベンゾイル;n−プロピルパーオキシカーボネートなど
のアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開
始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はない
が、室温〜150℃の範囲が適当である。所定時間重合
した後、未重合のビニルエステル類を通常の方法で除去
することにより、末端に含フッ素基が導入されたビニル
エステル系重合体が得られる。このようにして、連鎖移
動反応法により得られた末端に含フッ素基が導入された
ビニルエステル系重合体を、後述する公知の方法に従っ
てけん化することにより、所望の末端に含フッ素基をも
つPVA系重合体が得られる。
【0015】次に、上記の末端反応法について説明す
る。この末端反応法において用いられる末端にチオエス
テル基を有するビニルエステル系重合体は、例えばチオ
酢酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸や2−アセチル
チオエタンチオール、2−ベンゾイルチオエタンチオー
ル、10−アセチルチオデカンチオール、10−ベンゾ
イルチオデカンチオール等のジチオールのモノアセテー
ト、モノベンゾエート等を連鎖移動剤として、ビニルエ
ステル類を主体とする単量体をラジカル重合して、片末
端にチオエステル基を導入することにより得られる。ま
た、末端にチオール基を有するビニルエステル系重合体
は、この片末端にチオエステル基を有するビニルエステ
ル系重合体から誘導することができる。一方、上記一般
式(II)で表される含フッ素エポキシ化合物としては、
例えば
【0016】
【化3】
【0017】などが挙げられる。この含フッ素エポキシ
化合物と末端にチオエステル基又はチオール基を有する
ビニルエステル系重合体との反応は、無溶媒、又はエポ
キシ化合物を溶解しかつ末端にチオエステル基又はチオ
ール基を有するビニルエステル系重合体を溶解若しくは
膨潤させる溶剤中で実施される。このような溶剤として
は、メタノール,エタノール,n−プロピルアルコー
ル,n−ブチルアルコール等のアルコール類、ベンゼ
ン,トルエン,キシレン等の芳香族類、テトラヒドロフ
ラン,ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類や
n−ヘキサン等の炭化水素類および水等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用い
てもよい。
【0018】また、反応条件は、使用する含フッ素エポ
キシ化合物やビニルエステル系重合体の構造により異な
るが、通常、溶剤を使用する場合、該ビニルエステル系
重合体濃度は5〜90重量%の範囲が好ましい。また、
含フッ素エポキシ化合物とビニルエステル系重合体との
使用割合は、エポキシ基/チオエステル基又はチオール
基モル比が1.0〜5.0の範囲になるように選ぶのが有利
である。反応温度は0〜250℃程度、反応時間は0.0
1〜20時間程度が適当である。ここで、ビニルエステ
ル系重合体に含まれるチオエステル基又はチオール基を
全量反応させることが重要であり、チオールとの反応で
は3級アミン(例えばトリエチルアミン、ピリジン、ト
リエタノールアミン、ジエタノールアミン、アンモニア
等)、ホスフィン(例えばトリブチルホスフィン、トリ
フェニルホスフィン等)、水酸化ナトリウム、テトラエ
チルアンモニウムヒドロオキサイド、ナトリウムメチラ
ート等の塩基性化合物が、チオエステルとの反応ではト
リブチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウ
ムブロミド等の4級アンモニウム塩がそれぞれ反応触媒
として有効である。また、チオールの酸化を防止するた
めに、反応系を脱気あるいは窒素置換したり、酸化防止
剤等を添加することもできる。
【0019】このようにして、末端反応法により得られ
た末端に含フッ素基が導入されたビニルエステル系重合
体を、後述する公知の方法に従ってけん化することによ
り、所望の末端に含フッ素基をもつPVA系重合体が得
られる。 (2)側鎖に含フッ素基をもつPVA系重合体 側鎖に含フッ素基をもつPVA系重合体の製造方法とし
ては特に制限はなく、様々な方法を挙げることができる
が、例えば含フッ素基を有する単量体を、ビニルエス
テル類を主体とする単量体とラジカル共重合することに
より得た側鎖に含フッ素基を導入したビニルエステル系
重合体をけん化することにより製造する方法(共重合
法)、及びエポキシ基を有するビニルエステル系重合
体に、含フッ素基含有チオール又は含フッ素基含有チオ
エステルを反応させ、けん化することにより製造する方
法(側鎖反応法)が好適である。まず、上記の共重合
法について説明する。この共重合法における側鎖に含フ
ッ素基を導入したビニルエステル系重合体は、分子側鎖
中に含フッ素基を有するビニルエステル系重合体であれ
ば、その構造(含フッ素基および連結基)、含フッ素基
の含有量および分子量については特に制限はないが、通
常、含フッ素基含量が0.01〜30モル%の重合体が好
ましい。
【0020】該重合体は、ビニルエステルを主体とする
単量体と含フッ素基を有する単量体とのラジカル共重合
によって得ることができる。ビニルエステル単量体とし
ては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、
ピバリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等が用いら
れる。一方、含フッ素基を有する単量体としては、例え
ば含フッ素基α−オレフィン類、含フッ素基メタクリレ
ート類、含フッ素基アクリレート類などが挙げられる。
具体的には、F(CF2)4 CH=CH2 、F(CF2)6
CH=CH2 、F(CF2)8 CH=CH2 、F(CF2)
10CH=CH2 等の含フッ素基α−オレフィン類、F
(CF2)2 CH2 OOCC(CH3)=CH2 、F(CF
2)n (CH2)2 OOCC(CH3)=CH2 (n=4,
6,8,10)、(CF3)2 CF(CF2)n(CH2)2
OOCC(CH3)=CH2 (n=2,4,6,8)、
(CF3)2 CF(CF2)n CH2 CH(OH)CH2
OCC(CH3)=CH2 (n=2,4,6,8)、H
(CF2)n CH2 OOCC(CH3)=CH2 (n=2,
4,6,8,10)、(CF3)2 CHOOCC(CH3)
=CH2 、CF3 CHFCF2 CH 2 OOCC(CH3)
=CH2 等の含フッ素メタクリレート類、F(CF2)2
CH 2 OOCCH=CH2 、F(CF2)n (CH2)2
OCCH=CH2 (n=4,6,8,10)、F(CF
2)n CH2 CH(OH)CH2 OOCCH=CH2 (n
=4,6,8,10)、(CF3)2 CF(CF2)n (C
2)2 OOCCH=CH2 (n=2,4,6,8)、
(CF3)2 CF(CF2)n CH2 CH(OH) CH2
OCCH=CH2 (n=2,4,6,8)、H(CF2)
n CH2 OOCCH=CH2 (n=2,4,6,8,1
0)、(CF3)2 CHOOCCH=CH2、CF3 CH
FCF2 CH2 OOCCH=CH2 等の含フッ素アクリ
レート類などを挙げることができるが、これらの中で含
フッ素α−オレフィン類が好適である。
【0021】このようにして、共重合法により得られた
側鎖に含フッ素基が導入されたビニルエステル系重合体
を、後述する公知の方法に従ってけん化することによ
り、所望の側鎖に含フッ素基をもつPVA系重合体が得
られる。次に、上記の側鎖反応法について説明する。
この側鎖反応法において用いるエポキシ基を有するビニ
ルエステル系重合体は、分子鎖中にエポキシ基を有する
ビニルエステル系重合体であれば、その構造(エポキシ
基および連結基)、エポキシ基の含有量および分子量に
ついては、特に制限はないが、通常、エポキシ基含量が
0.01〜30モル%の重合体が好ましい。該重合体は、
例えば、ビニルエステルを主体とする単量体とエポキシ
基を有する単量体とのラジカル共重合によって得ること
ができる。ビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニ
ル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニ
ル、トリフルオロ酢酸ビニル等が用いられる。
【0022】一方、エポキシ基を有するビニル系単量体
としては、例えばアリルグリシジルエーテル;メタリル
グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキサイド;
1,2−エポキシ−5−ヘキセン;1,2−エポキシ−
7−オクテン;1,2−エポキシ−9−デセン;8−ヒ
ドロキシ−6,7−エポキシ−1−オクテン;8−アセ
トキシ−6,7−エポキシ−1−オクテン;N−(2,
3−エポキシ)プロピルアクリルアミド;N−(2,3
−エポキシ)プロピルメタクリルアミド;4−アクリル
アミドフェニルグリシジルエーテル;3−アクリルアミ
ドフェニルグリシジルエーテル;4−メタクリルアミド
フェニルグリシジルエーテル;3−メタクリルアミドフ
ェニルグリシジルエーテル;N−グリシドキシメチルア
クリルアミド;N−グリシドキシメチルメタクリルアミ
ド;N−グリシドキシエチルアクリルアミド;N−グリ
シドキシエチルメタクリルアミド;N−グリシドキシプ
ロピルアクリルアミド;N−グリシドキシプロピルメタ
クリルアミド;N−グリシドキシブチルアクリルアミ
ド;N−グリシドキシブチルメタクリルアミド;N−ア
クリルアミドメチル−2,5−ジメチル−フェニルグリ
シジルエーテル;4−メタクリルアミドメチル−2,5
−ジメチル−フェニルグリシジルエーテル;アクリルア
ミドプロピルジメチル(2,3−エポキシ)プロピルア
ンモニウムクロリド;メタクリルアミドプロピルジメチ
ル(2,3−エポキシ)プロピルアンモニウムクロリ
ド;メタクリル酸グリシジルなどが用いられる。
【0023】一方、含フッ素基含有チオールとしては、
前記の連鎖移動反応法の説明において例示したものと同
じものを挙げることができる。また、含フッ素基含有チ
オエステルとしては、これらのチオールの酢酸エステル
や安息香酸エステルなどを挙げることができる。この側
鎖反応法において、エポキシ基を有するビニルエステル
系重合体と含フッ素基含有チオール又は含フッ素基含有
チオエステルとの反応は、前記の末端反応法と同様の条
件で行うことができる。ただし、チオール基又はチオエ
ステル基/エポキシ基モル比が1.0〜5.0の範囲が好ま
しく、ビニルエステル系重合体に含まれるエポキシ基を
全量反応させることが重要である。このようにして、側
鎖反応法により得られた側鎖に含フッ素基が導入された
ビニルエステル系重合体を、後述する公知の方法に従っ
てけん化することにより、所望の側鎖に含フッ素基をも
つPVA系重合体が得られる。次に、含フッ素基が導入
されたビニルエステル系重合体のけん化について説明す
る。前記の連鎖移動反応法、末端反応法、共重合法およ
び側鎖反応法によって得られたビニルエステル系重合体
は、常法によりけん化されるが、通常、重合体をアルコ
ール、場合によっては含水アルコールに溶解した状態で
けん化される。けん化反応に使用されるアルコールとし
ては、メチルアルコール、エチルアルコールなどの低級
アルコールが好ましく挙げられ、メチルアルコールが特
に好適に使用される。けん化反応に使用されるアルコー
ルには、40重量%以下であれば、アセトン、酢酸メチ
ルエステル、酢酸エチルエステル、ベンゼン等の溶剤を
含有していてもよい。
【0024】このけん化反応においては、触媒を使用す
るのが好ましく、触媒としては、例えば水酸化カリウ
ム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、
ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、あるいは鉱
酸などの酸触媒が用いられる。該触媒の使用量はけん化
度の大小および水分量等により適宜決められるが、ビニ
ルエステル単位に対しモル比で0.001以上、好ましく
は0.002以上用いるのが望ましい。一方該触媒量が多
くなりすぎると残存触媒を重合体中より除去することが
困難となり、重合体が着色する等好ましくなく、モル比
で0.2以下にするのが望ましい。けん化反応の温度につ
いては特に制限はないが、20〜60℃の範囲が適当で
ある。けん化反応の進行に伴って、ゲル状生成物が析出
してくる場合には、その時点で生成物を粉砕し、洗浄
後、乾燥することにより、所望の含フッ素基をもつPV
A系重合体が得られる。このPVA系重合体のけん化度
については特に制限はなく、水溶性の範囲であればよい
が、耐ブロッキング性の点から、50モル%以上が好ま
しく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上
が特に好ましい。また、該PVA系重合体の粘度平均重
合度(以下、「平均重合度」と略記することがある。)
は10〜20000の範囲が好ましい。この平均重合度
が10未満ではPVA系重合体の特性が充分に発揮され
ないおそれがあり、20000を超えると含フッ素基を
もつPVA系重合体の工業的な製造が困難となる。PV
A系重合体の特性及び製造の容易さなどの面から、この
平均重合度は30〜8000の範囲がより好ましく、特
に50〜5000の範囲が好適である。
【0025】この含フッ素基をもつPVA系重合体は、
本発明の効果を損なわない範囲で、共重合可能なエチレ
ン性不飽和単量体を共重合したものでもよい。エチレン
性不飽和単量体としては、例えばエチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アク
リル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、(無
水)マレイン酸、(無水)イタコン酸などの不飽和酸
類、その塩及び炭素数1〜18のモノ又はジアルキルエ
ステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アル
キルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミ
ド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその
塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン、その酸塩
及びその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルア
ミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミ
ド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリ
ルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルア
ミドプロピルジメチルアミン、その酸塩及びその4級塩
などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N
−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどの
N−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニ
トリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアル
キルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテ
ル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエ
ーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニ
ル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビ
ニル類;トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン
類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメ
チルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルア
ミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリ
ド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、
炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基含有のα−オレ
フィン類などが挙げられる。
【0026】本発明のPVA系フィルムは、基材のPV
A系フィルムの片側又は両側の表面に、含フッ素基をも
つPVA系重合体を有するものであり、該基材用フィル
ムに用いられるPVA系重合体については特に制限はな
いが、平均重合度は100〜20000の範囲が好まし
い。この平均重合度が100未満ではフィルムの強度が
不充分となるおそれがあり、また20000を超えると
製膜時に高粘度となり、作業性が低下する傾向がみられ
る。フィルムの強度及び製膜時の作業性などの面から、
特に好ましい平均重合度は1000〜10000の範囲
である。また、けん化度は50モル%以上が好ましい。
このけん化度が50モル%未満ではフィルムの強度が不
充分となるおそれがある。フィルムの強度などの面か
ら、けん化度はより好ましくは70モル%以上であり、
さらに好ましくは95モル%以上である。また、特に耐
水性が要求される用途では、けん化度は高い方が高結晶
性となって耐水性が付与されるので、95モル%以上の
けん化度が望ましい。この基材用フィルムに用いられる
PVA系重合体の製造方法としては特に制限はないが、
従来公知のビニルエステル類、特に好ましくは酢酸ビニ
ルを重合したのち、けん化する方法が好適である。ま
た、このPVA系重合体は、20モル%以下の他の成分
を含んでいても差し支えない。このような成分として
は、例えばクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、
(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等のエチレン
性不飽和カルボン酸及びこれらのアルキルエステル、塩
化ビニリデン、アクリルアミド、アクリロニトリル、ア
ルキルビニルエーテル、さらにはエチレン、プロピレン
等のα−オレフィンなどが挙げられる。これらの成分を
用いる場合は、これらとビニルエステル類とを共重合さ
せたのち、けん化すればよい。
【0027】該基材用のPVA系フィルムには、所望に
より、可塑剤などの添加剤を含有させてもよい。該可塑
剤としては、例えばエチレングリコール、トリメチレン
グリコール、テトラメチレングリコール、ポリエチレン
グリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレング
リコール共重合体、グリセリン、ジグリセリン、ブタン
ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ
ール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタ
エリスリトール、キシロース、アラビノース、リプロー
スおよび上記の3〜6価の多価アルコール1モルに対
し、アルキレンオキサイド1〜4モルを付加した化合物
等が挙げられる。これらの中でグリセリン、ジグリセリ
ンおよびグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビト
ールの多価アルコール1モルに対し、アルキレンオキサ
イド1〜4モルを付加した化合物が可塑化効果、PVA
系重合体との相溶性、沸点の高さなどから好ましい。こ
の可塑剤の添加量は特に制限はないが、PVA系重合体
100重量部に対して、50重量部以下が好ましい。こ
の量が50重量部を超えるとフィルムが柔軟になりすぎ
て製膜性に問題が生じる傾向がみられる。製膜性の面か
ら、この可塑剤の特に好ましい添加量は、PVA系重合
体100重量部に対して、20重量部以下である。
【0028】また本発明で用いられる基材用のPVA系
フィルムは厚み5mm程度以下のシートをも含むもので
あるが、5〜200μmの厚みのものが好適に用いられ
る。本発明で用いられる基材用のPVA系フィルムの製
造法としては、従来よりPVA系フィルムの製造法とし
て慣用されている方法が好適に用いられる。すなわち、
水を溶剤として用い、ドラムまたはベルト上にキャステ
ィングし、乾燥するキャスティング方式、水を含浸させ
たペレットを溶融押し出しする溶融押出方式等が適用で
きる。製膜後のフィルムは、必要に応じて熱処理を行っ
てもよい。また、延伸処理を行ってもなんら差し支えな
い。本発明のPVA系フィルムは、上記基材PVA系フ
ィルムの片側又は両側の表面に含フッ素基をもつPVA
系重合体を有するものであれば、いかなる方法によって
得られたものであってもよいが、前記の含フッ素基をも
つPVA系重合体を用い、このものを含有する被覆層を
形成させたものが好適である。この被覆層は、含フッ素
基をもつPVA系重合体単独からなるものであっても、
充分なブロッキング防止効果を発揮するが、該含フッ素
基をもつPVA系重合体とともに、必要に応じて、他の
PVA系重合体(A)、無機質や有機質の微粒子体
(B)又はエマルジョンやディスパージョンなどの微粒
子(C)、あるいはこれらを適当に組み合わせたものを
含有するものであってもよい。特に、含フッ素基をもつ
PVA系重合体と他のPVA系重合体とを含有する被覆
層が、基材フィルムとの接着性などの点から好適であ
る。
【0029】上記他のPVA系重合体(A)としては、
けん化度80モル%以上の水可溶性のPVA系重合体で
あればよく、特に制限はないが、平均重合度100〜1
0000のものが好ましく、特に500〜4000のも
のが好適である。また、クロトン酸、(無水)イタコン
酸、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、
フマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸及びこれら
のアルキルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ア
クリルアミド、アクリロニトリル、アルキルビニルエー
テル、アルコキシビニルシラン、さらにはエチレン、プ
ロピレン等のα−オレフィンなどの少量を共重合成分と
して含有するポリ酢酸ビニル系共重合体のけん化物のよ
うな変性PVA系重合体も好適に用いることができる。
含フッ素基をもつPVA系重合体とPVA系重合体
(A)との使用割合については特に制限はないが、含フ
ッ素基を被覆層の表面に存在させ、本発明の効果を有効
に発揮させるには、含フッ素基をもつPVA系重合体/
PVA系重合体(A)(固形分重量比)が100/0〜
1/99の範囲にあるのが好ましい。また、無機質や有
機質の微粒子体(B)としては、例えば酸化硅素、炭酸
カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸
マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸
マグネシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、クレ
ー、ベントナイト、コロイダルシリカ等の無機物、球状
ポリエチレンワックス、ポリ4フッ化エチレン、メラミ
ン−グアナミン共重合体等の有機物が挙げられる。一
方、エマルジョンやディスパージョン等の微粒子(C)
としては、例えば酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン
−酢酸ビニル系エマルジョン、塩化ビニル−酢酸ビニル
系エマルジョン、アクリル酸系エマルジョン、スチレン
−アクリル酸系エマルジョン、シリコーン樹脂エマルジ
ョン等の公知のエマルジョンやディスパージョンが挙げ
られる。これらは必要に応じて適宜二種以上混合して用
いてもよい。
【0030】上記無機質や有機質の微粒子体(B)及び
エマルジョンやディスパージョンなどの微粒子(C)
は、粒子径が0.02〜1μmの範囲にあるものが好まし
い。この粒子径が0.02μm未満のものでは、微粒子と
しての効果が充分に発揮されないおそれがあり、また、
1μmを超えるものではフィルムの透明性が低下する傾
向がみられる。本発明のPVA系フィルムにおいては、
含フッ素基をもつPVA系重合体を含有する被覆層は、
基材のPVA系フィルムの片側又は両側の表面に設けら
れるが、その厚みは、該被覆層の厚みを〔D〕、基材の
PVA系フィルムの厚みを〔E〕とした場合、〔D〕/
〔E〕が0.0001〜0.5の範囲にあるように選ぶのが
好ましい。〔D〕/〔E〕が0.0001未満では充分な
ブロッキング性が得られにくく、また0.5を超えるとフ
ィルムの透明性が低下するとともに、ヒートシール性が
不良となるおそれがある。ブロッキング性、透明性及び
ヒートシール性などの面から、この〔D〕/〔E〕は、
特に0.01〜0.2の範囲が好ましい。基材のPVA系フ
ィルムの片側又は両側の表面に含フッ素基をもつPVA
系重合体を含有する被覆層を設けるには、例えば該含フ
ッ素基をもつPVA系重合体及び必要に応じて用いられ
る他のPVA系重合体(A)、無機質や有機質の微粒子
体(B)、エマルジョンやディスパージョンなどの微粒
子(C)を含有する水性媒体溶液又は分散液(以下、塗
工液と称すことがある)を、従来公知の手段により塗工
する方法を用いるのが有利である。なお、ここでいう水
性媒体とは、水を主成分とするものであり、少量であれ
ば水と混合可能な有機溶剤、例えばアルコール類、アセ
トン、エーテル類、ジオキサンなどを含んでいてもよ
い。また、塗工手段としては、例えばハケ塗り、浸漬塗
り、流し塗り、ロールコーター法、エアドクター法、ブ
レードコーター法、スプレー法、ディップ法などを用い
ることができる。該塗工液の濃度については特に制限は
なく、塗工手段及び塗工膜の厚みなどに応じて、適宜選
定されるが、乾燥処理や作業性などを考慮して、通常総
固形分含有量で0.01〜10重量%、好ましくは0.05
〜7重量%の範囲が適当である。塗工後、乾燥処理する
ことにより、本発明のPVA系フィルムが得られるが、
必要に応じて、熱処理や延伸処理などを施してもよい。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定さ
れるものではない。なお、実施例中で「部」および
「%」は、特に断らない限り、それぞれ「重量部」およ
び「重量%」を意味する。なお、フィルムの諸物性は下
記方法に従って測定した。 (1)透明性:重ねたフィルムを通して9ポイント活字
を読み得る枚数で表した。(フィルム厚みは1枚あたり
30μm) (2)耐ブロッキング性:縦10cm,横10cm大の
フィルムを約50枚重ね、その上に80g/m2 の荷重
をかけ、80℃、80%RH雰囲気に24時間放置後、
フィルム相互の密着力を引張試験機によりT剥離強度
(g/10cm)で評価した。 (3)耐摩耗性:外径32mm、幅24mmの円筒の外
表面に黒色の綿ビロードを貼布した1kgの治具をフィ
ルム上の50mmの長さにわたり、ころがさずにすべら
し、ビロード上に付着する微粉量により、次の判定基準
に従って、官能的に評価した。 A:微粉が付かない。 B:微粉が付くが微量である。 C:微粉が多量に付く。 (4)20℃,65%RH(相対湿度)のヒートシール
強度:富士インパルスシーラーFI−600形(富士製
作所(株)製)により、20℃,65%RHに24時間
浸漬したPVAフィルムをヒートシールし、幅15mm
当たりのシール強度を引張試験機により測定した。 (5)5℃,40%RHのヒートシール強度:5℃,4
0%RHに24時間浸漬したPVAフィルムをヒートシ
ールし、幅15mm当たりのシール強度を引張試験機に
より測定した。
【0032】製造例1 末端反応法による末端に含フッ素基をもつPVA系重合
体(PVA−1)の製造 攪拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を備えた
反応器に、酢酸ビニルモノマー880部とメタノール1
80部を仕込み、窒素ガスを15分バブリングして脱気
した。別途、チオ酢酸0.31部をメタノール10部に溶
解したチオールの初期添加液、チオ酢酸3.75部にメタ
ノールを加えて全量を50容量部にしたチオールの連続
添加液およびメタノール30部に2,2′−アゾビスイ
ソブチロニトリル0.5部を溶解した開始剤溶液を調製
し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器
の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、別途
調製したチオ酢酸の初期添加液と開始剤溶液をこの順序
に添加し重合を開始した。直ちにチオ酢酸の連続添加液
の添加を開始し、重合を続けた。チオ酢酸の連続添加
は、重合の進行に伴う反応器内の固形分濃度の増加にあ
わせて第1表に示す値を目標に実施した。なお、固形分
濃度はサンプリングにより重量法でチェックした。
【0033】
【表1】
【0034】チオ酢酸を連続添加しながら5時間重合
し、冷却して重合を停止した。このときの固形分濃度は
55.8%であった。続いて30℃、減圧下にメタノール
を時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去
を行い、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液(濃度53.2
%)を得た。このメタノール溶液の一部をエーテル中に
投入してポリマーを回収し、アセトン−エーテルで2回
再沈精製した後、40℃で減圧乾燥した。この精製ポリ
マーについて、CDCl3 を溶媒にしてプロトンNMR
(日本電子(株)製GSX−270)測定およびアセト
ン中の極限粘度測定(JIS)を実施したところ、粘度
平均重合度300の片末端にアセチルチオ基を有するポ
リ酢酸ビニル重合体であった。撹拌機、還流冷却管、窒
素導入管および温度計を備えた反応器に、上記で得た片
末端にチオエステル基を有する重合体のメタノール溶液
(濃度45.5%)330部と、片末端にエポキシ基を有
する3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−1,
2−エポキシプロパン5.7部をメタノール10部に溶解
したものを混合し、15分窒素ガスをバブリングした
後、水酸化ナトリウム3.1部をメタノール28部に溶解
したものを仕込んだ。撹拌しながら40℃で2時間反応
させた後、同温度にて10%濃度の水酸化ナトリウムの
メタノール溶液を12部添加し、けん化を行った。40
℃で2時間放置した後粉砕し、酢酸3部を加えて中和し
てからソックスレー抽出器を用いてメタノールで48時
間以上洗浄し、60℃で20時間以上乾燥して、末端に
パーフルオロアルキル基を有するPVA系重合体(PV
A−1)を得た。該重合体の赤外線吸収スペクトル(I
R)やプロトン核磁気共鳴スペクトル(プロトンNM
R)(重ジメチルスルホキシド(d6 −DMSO))の
測定を行ったところ、エポキシ基は完全に消失してお
り、イオンクロマト分析から3.0%のフッ素を含有し、
ポリビニルアルコール部のビニルアルコール単位含量が
98.9%のPVA系重合体であった。また、重合体の水
中の極限粘度測定(JIS)を実施したところ、粘度平
均重合度は500であった。
【0035】製造例2及び3 末端反応法による末端に含フッ素基をもつPVA系重合
体(PVA−2、PVA−3)の製造 製造例1と同様にして、重合度の異なる片末端にチオエ
ステル基を有するポリ酢酸ビニルを得たのち、エポキシ
基を有する含フッ素基の化合物を変えて反応させ、次い
でけん化処理して、末端に含フッ素基をもつPVA系重
合体(PVA−2、PVA−3)を得た。PVA−2
は、粘度平均重合度が200、けん化度が89.2モル
%、末端にn−C8 17CH2 CH(OH)CH2 S−
基を有するPVA系重合体であり、PVA−3は、粘度
平均重合度1000、けん化度96.8モル%、末端に
(CF3) 2 CF(CF2)2 CH2 CH(OH)CH2
−基を有するPVA系重合体であった。
【0036】製造例4 連鎖移動反応法による末端に含フッ素基をもつPVA系
重合体(PVA−4)の製造 製造例1において、チオ酢酸をH(CF2)8 CH2
(CH2)3 SHに変更し、該チオール2.0部をメタノー
ル10部に溶解した初期添加液、該チオール24.7部に
メタノールを加えて全量を50容量部にしたチオールの
連続添加液に変えた以外は、製造例1と同様にして片末
端に含フッ素基を有するポリ酢酸ビニルを得た。次い
で、製造例1と同様にしてけん化、精製を行って片末端
に含フッ素基を有するPVA系重合体(PVA−4)を
得た。該重合体のけん化度は99.4%、水中の極限粘度
測定(JIS)から求めた粘度平均重合度は320であ
った。
【0037】製造例5 共重合法による側鎖に含フッ素基をもつPVA系重合体
(PVA−5)の製造 製造例1と同様の装置を用い、酢酸ビニルモノマー84
0部とメタノール180部およびパーフルオロオクチル
エチレン98部を仕込み、窒素ガスを15分バブリング
して脱気した。別途、2−メルカプトエタノール0.06
部をメタノール2部に溶解したチオールの初期添加液、
2−メルカプトエタノール2.02部にメタノールを加え
て全量を50容量部にしたチオールの連続添加液および
メタノール28部に2,2′−アゾビスイソブチロニト
リル10部を溶解した開始剤溶液を調製し、窒素ガスの
バブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始
し、内温が60℃となったところで、別途調製した2−
メルカプトエタノールの初期添加液と開始剤溶液をこの
順序に添加し重合を開始した。直ちに2−メルカプトエ
タノールの連続添加液の添加を開始し、重合を続けた。
2−メルカプトエタノールを連続添加しながら4時間重
合したのち、冷却して重合を停止した。この後、製造例
1と同様にして、未反応の酢酸ビニルモノマーの除去、
けん化、精製を行って側鎖に含フッ素基を有するPVA
系重合体(PVA−5)を得た。該重合体のけん化度は
98.1%、水中の極限粘度測定(JIS)から求めた粘
度平均重合度は280であった。またイオンクロマト分
析から求めたフッ素含量から算出した変性量は0.8モル
%であった。
【0038】製造例6 側鎖反応法による側鎖に含フッ素基をもつPVA系重合
体(PVA−6)の製造 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を備えた
反応器に、酢酸ビニルモノマー405部、アリルグリシ
ジルエーテル11部およびメタノール30部を仕込み、
窒素ガスを15分バブリングして脱気した。別途、メタ
ノール15部に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル
4.5部を溶解した開始剤溶液を調製し、窒素ガスのバブ
リングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内
温が60℃となったところで、別途調製した開始剤溶液
を添加し重合を開始した。60℃で4時間重合したのち
冷却して重合を停止した。このときの固形分濃度は54.
8%であった。続いて30℃、減圧下にメタノールを時
々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行
い、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度4
4.5%)を得た。このメタノール溶液の一部をエーテル
中に投入してポリマーを回収し、アセトン−エーテルで
2回再沈精製した後、40℃で減圧乾燥した。この精製
ポリマーについて、CDCl3を溶媒にしてプロトンN
MR(日本電子(株)製GSX−270)測定およびア
セトン中の極限粘度測定(JIS)を実施し粘度平均重
合度を算出したところ、アリルグリシジルエーテル単位
(エポキシ基)を2.1モル%含有する粘度平均重合度が
930のポリ酢酸ビニル共重合体であった。
【0039】攪拌機、還流冷却管、窒素導入管および温
度計を備えた反応器に、エポキシ基を有する該重合体の
メタノール溶液(濃度44.5%)100部を計り取り1
5分窒素ガスをバブリングした後、2−(パーフルオロ
−2−メチルヘキシル)エタンチオール11.2部と水酸
化ナトリウム0.03部をメタノール48部に溶解した
ものを仕込んだ。撹拌しながら50℃で1時間反応させ
た後、40℃に冷却してから10%濃度の水酸化ナトリ
ウムのメタノール溶液を40部添加し、けん化を行っ
た。40℃で5時間放置した後粉砕し、酢酸8部を加え
て中和してからソックスレー抽出器を用いてメタノール
で48時間以上洗浄し、60℃で20時間以上乾燥し
て、変性PVA系重合体(PVA−6)を得た。該重合
体のIRおよびプロトンNMR(d6 −DMSO)を測
定したところ、エポキシ基は完全に消失しており、2.1
モル%の2−(パーフルオロ−1−メチルヘキシル)エ
チルチオ基の導入が確認でき、ビニルアルコール単位含
量は97.0モル%であった。また該重合体の水中の極限
粘度測定(JIS)から求めた粘度平均重合度は920
であった。
【0040】実施例1 製造例1で得られたPVA−1と通常の未変性PVA
(平均重合度2400、けん化度98.5モル%)とを、
固形分重量比20:80の割合で含有する濃度2%水溶
液からなる塗工液を調製した。次に、これをロールコー
ターで、厚さ30μmのPVA(平均重合度1750、
けん化度99.9モル%)フィルムに被覆層の厚みが0.0
3μmになるように塗布し、80℃、2秒間熱風乾燥し
た。得られたフィルムの諸物性を第3表に示す。透明
性、耐ブロッキング性、耐摩耗性、ヒートシール強度、
糊接着強度のすべての物性を満足するものであった。な
お対照例として上記処理を行わなかった場合についての
PVAフィルムの諸物性を第3表に示す。
【0041】比較例1 実施例1において、PVA−1の代わりに、平均重合度
500、けん化度98.2モル%の未変性PVAを用いた
以外は、実施例1と同様にして、表面に被覆層を有する
PVAフィルムを作製した。このフィルムの諸物性を第
3表に示す。
【0042】実施例2 実施例1において、塗工液として、製造例1で得られた
PVA−1を1%濃度で含有する水溶液を用いた以外
は、実施例1と同様にして表面に被覆層を有するPVA
フィルムを作製した。このフィルムの諸物性を第3表に
示す。
【0043】比較例2 実施例2において、PVA−1の代わりに、平均重合度
500、けん化度98.2モル%の未変性PVAを用いた
以外は、実施例2と同様にして、表面に被覆層を有する
PVAフィルムを作製した。このフィルムの諸物性を第
3表に示す。
【0044】実施例3 製造例1で得られたPVA−1と通常の未変性PVA
(平均重合度2400、けん化度98.5モル%)と平均
粒径0.15μmのメタクリル酸メチル/スチレン重量比
64/36の共重合体エマルジョンとを、固形分重量比
10:85:5の割合で含有する固形分濃度1%の水溶
液からなる塗工液を調製した。次に、この塗工液を用
い、実施例1と同様にして表面に被覆層を有するPVA
フィルムを作製した。このフィルムの諸物性を第3表に
示す。
【0045】比較例3 実施例3において、PVA−1の代わりに、平均重合度
500、けん化度98.2モル%の未変性PVAを用いた
以外は、実施例3と同様にして、表面に被履層を有する
PVAフィルムを作製した。このフィルムの諸物性を第
3表に示す。 実施例4〜9及び比較例4 第2表に示す配合組成の各成分を含有する固形分濃度が
2%の水溶液からなる塗工液を調製し、実施例1と同様
にして、表面に被覆層を有するフィルムを作製した。こ
れらのフィルムの諸物性を第3表に示す。
【0046】
【表2】
【0047】注1)エマルジョン:平均粒径0.15μm
のメタクリル酸メチル/スチレン重量比64/36の共
重合体エマルジョン 2)PVA−7:末端に(CF3)2 CF(CF2)6 CH
2 CH(OH)CH2S−基を有するエチレン−ビニル
アルコール共重合体(エチレン単位含有量8モル%、平
均重合度280、けん化度99.1モル%) 3)PVA−8:未変性PVA(平均重合度500、け
ん化度98.2モル%) 4)PVA−9:1−オクテン−ビニルアルコール共重
合体(1−オクテン単位含有量0.4モル%、平均重合度
500、けん化度98.2モル%)
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、基材のPVA系フィル
ムの表面に、含フッ素基をもつPVA系重合体を、それ
を含有する被覆層を設けるなどして存在させることによ
り、透明性、表面光沢性に優れ、かつヒートシール強
度、接着強度を損なうことなく、滑り性、耐ブロッキン
グ性などを向上させたPVA系フィルムが容易に得られ
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも片側の表面に、含フッ素基を
    もつビニルアルコール系重合体を有することを特徴とす
    るポリビニルアルコール系フィルム。
  2. 【請求項2】 少なくとも片側の表面に、含フッ素基を
    もつビニルアルコール系重合体含有被覆層を有する請求
    項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  3. 【請求項3】 被覆層が、含フッ素基をもつビニルアル
    コール系重合体単独からなる層又は含フッ素基をもつビ
    ニルアルコール系重合体と他のビニルアルコール系重合
    体とを含有する層である請求項2記載のポリビニルアル
    コール系フィルム。
  4. 【請求項4】 含フッ素基をもつビニルアルコール系重
    合体が、含フッ素基を分子末端に有するものである請求
    項1,2又は3記載のポリビニルアルコール系フィル
    ム。
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