JPH10327852A - 焼酎蒸留残液から微生物増殖促進成分を分離濃縮する方法 - Google Patents

焼酎蒸留残液から微生物増殖促進成分を分離濃縮する方法

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JPH10327852A
JPH10327852A JP9138164A JP13816497A JPH10327852A JP H10327852 A JPH10327852 A JP H10327852A JP 9138164 A JP9138164 A JP 9138164A JP 13816497 A JP13816497 A JP 13816497A JP H10327852 A JPH10327852 A JP H10327852A
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JP
Japan
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fraction
lactic acid
acid bacteria
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shochu distillation
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JP9138164A
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English (en)
Inventor
Hisatsugu Wada
久継 和田
Masahiko Shimoda
雅彦 下田
Toshiro Omori
俊郎 大森
Hideharu Takashita
秀春 高下
Yoshifumi Furuta
吉史 古田
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Sanwa Shurui Co Ltd
Original Assignee
Sanwa Shurui Co Ltd
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  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼酎蒸留残液を原料として,乳酸菌等の微生
物の増殖を促進する成分を効率的に製造することを可能
にする乳酸菌等の微生物増殖促進成分の分離濃縮方法の
提供。 【解決の手段】 微生物増殖促進成分を得る目的で,焼
酎蒸留残液から水分を除去し,固液分離後,有機溶剤を
加えて,生じた沈殿をろ過あるいは遠心分離等で分離
し,得られた固形物を再び水で溶解し,それをODS樹
脂で処理後,ゲル濾過し,得られた液を濃縮あるいは噴
霧乾燥して製品とする焼酎蒸留残液から乳酸菌等の微生
物の増殖促進物質の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,焼酎製造で発生す
る焼酎蒸留残液から乳酸菌等微生物の増殖促進成分を分
離濃縮する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】焼酎製造工程で発生する焼酎粕は、一部
は原液そのままあるいは濃縮および乾燥後に家畜用飼料
の一部として利用される以外に有効な手段がなく,大部
分は、これまで海洋投棄、大地還元、焼却処分、生物学
的処理などにより廃棄処分されてきた。しかし、近年世
界的環境対策が必要とされる状況において、焼酎粕の廃
棄処分方法として現在最も依存している海洋投棄は,法
的に近く禁止されることになっており,焼酎業界では焼
酎蒸留残液の処理方法の検討が行われている。現在,検
討されている処理方法としては,該残液を蒸留あるいは
加熱乾固して得られる固形分を肥料や試料として利用す
る方法,メタン発酵等の生物的処理による方法,酵素剤
を用いて該残液を調味液の原料とする方法等がある。
【0003】ところで,腸内細菌としてのビフィズス菌
および乳酸菌の重要性は周知のことである。例えばこれ
までに見いだされたビフィズス菌の増殖促進物質として
は,大麦タンパク質の酵素分解液を原料とする成分(特
開昭61-282070),米糠麹分解液を原料とする成分(特
開平3-19686),プロピオン酸菌が生産する成分(特開
平7-227207),分子内にトレハロース構造とイソマルト
ース構造を併せ持つ非還元性糖質(特開平8-214871)等
が挙げられる。前記プロピオン酸菌が生産する成分はビ
フィズス菌の増殖を促進することから,ビフィズス菌を
増殖させる培地でプロピオン酸菌をスタートアップとし
て用いる方法である。
【0004】一方,乳酸菌は腸内細菌として重要である
のはもちろんのこと,例えばサイレージや乳酸生産など
のように,工業的にも重要である。例えばこれまでに見
いだされた乳酸菌の増殖促進物質としては,ゴム抽出廃
液を原料とする成分(特開平6-233689),カカオ豆およ
び/またはカカオハスクを原料とする成分(特開平8-196
268)等が挙げられる。
【0005】しかしこれらの物質は効果が不十分であっ
たり乳酸菌以外の所望外の細菌類の増殖も促進してしま
う等の問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,焼酎蒸留残
液を原料として,乳酸菌等の微生物の増殖を促進する成
分を効率的に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,前記課題
を解決するべく鋭意研究を重ねた結果,本発明を完成す
るに至った。すなわち,本発明によれば,焼酎蒸留残液
の水分を好ましくは,60〜85重量%,最も好ましく
は60〜70重量%になるように調整し,遠心分離等で
固液分離後,エタノール等の有機溶剤を終濃度5%以
上,好ましくは30%以上になるように加え,生じた沈
殿をろ過あるいは遠心分離等で分離し,得られた固形物
を再び水で溶解し,それをODS樹脂で処理し,ゲル濾
過後,得られた液を濃縮,あるいは噴霧乾燥して製品と
する焼酎蒸留残液から乳酸菌等の微生物の増殖促進物質
を製造方法に係るものである。
【0008】本発明によれば,焼酎残液を原料とした乳
酸菌等の微生物の増殖を促進する物質を効率的に製造す
ることができる。かくして得られる乾燥標品は,乳酸菌
やビフィズス菌等の腸内細菌の増殖を促進することから
食品原料として有効利用ができ,さらに乳酸発酵やサイ
レージ等の乳酸発酵工業においても有効である。以下,
本発明について詳述する。本発明が適用される焼酎は,
特に原料に関わりなく,従来より良く知られた麦,米,
トウモロコシ,いも等の各種穀類乃至他のデンプン質を
原料とするものいずれであってもよい。
【0009】焼酎蒸留残液は通常95重量%の水分を含
むが,好ましくは水分を60〜85重量%,最も好まし
くは60〜70重量%まで濃縮したほうが効率的であ
る。その場合,濃縮方法は加熱あるいは非加熱,常圧あ
るいは減圧,いずれの条件であってもよい。焼酎蒸留粕
を固液分離する方法は,デカンタによる遠心分離,フィ
ルタープレス,その他いずれの方法であってもよい。
【0010】上記で得られた該焼酎蒸留残液あるいは該
焼酎蒸留濃縮液にエタノール等の有機溶媒を所定の濃度
まで添加する。この場合,有機溶媒はエタノールが好適
であるが,特に限定されることはない。有機溶媒濃度は
成分の生産効率に影響し,該有機溶媒の最適終濃度は,
焼酎蒸留残液あるいは焼酎蒸留濃縮液の水分量によって
異なるが,通常,終濃度5%以上,好ましくは,30%
以上になるまで添加する。
【0011】該有機溶剤添加によって得られた沈殿は,
フィルタープレスあるいは遠心分離のいずれの方法でろ
過してもよい。使用するODS樹脂は,市販のSep−
pack等のものでもよい。またゲル濾過に供するカラ
ムはYMC−Pack Diol-60を使用したが、
分画分子量が3000から10000のものであれば良
い。
【0012】かくして,乳酸菌等の微生物の増殖を促進
する成分が焼酎蒸留残液を原料として得ることができ
る。以下に,ここに至るまでの過程を実験結果を交えな
がら詳述するが,本発明は,なんら拘束されるものでは
ない。
【0013】
【実験1】 焼酎蒸留残液の分画 メッシュ1mmでろ過した大麦製の焼酎蒸留残液2Lを
3000rpmで5分間遠心分離し,加熱濃縮により約
1L(水分約80%)まで濃縮し,さらに終濃度90%
になるようにエタノール約9Lを添加した。生じた沈殿
を遠心分離によって固液分離し,沈殿部をEI画分,液
相部をES画分とした。ES画分はさらにエタノールを
除去した後,凍結乾燥した。
【0014】
【実験2】 EI画分,ES画分の乳酸菌およびビフィ
ズス菌に対する影響 菌株には,乳酸菌としてLactococcus lactis subsp
lactis IFO 12007とLactobacillus acidophilus IFO
13951の2株を用い,また,ビフィズス菌としてBifidob
acterium bifidum IFO 14252を用いた。乳酸菌の培地
には,乳酸菌用培地(グルコース1.0wt%,ポリペ
プトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt%,Nacl
0.5wt%)にEI画分を1.0wt%加えたもの,
前記乳酸菌用培地にES画分を1.0wt%加えたも
の,および対照として前記乳酸菌用培地のみを用いた。
ビフィズス菌の培地には,ビフィズス菌用培地(グルコ
ース1.0wt%,酵母エキス0.5wt%,ビーフエキ
ス0.5wt%,カゼイン・トリプシン加水分解物1.0
wt%,L-アスコルビン酸ナトリウム1.0wt%,L
-システイン0.05wt%,リン酸水素二カリウム0.
3wt%,Tween 80 1ml/L)にEI画分
を1.0wt%加えたもの,前記ビフィズス菌用培地に
ES画分を1.0wt%加えたもの,および対照として
前記ビフィズス菌用培地のみを用いた。培養条件は,La
ctococcus lactis subsp lactisIFO 12007について
は,温度30℃,振とう数(100strokes/min)で24時
間振とう培養を行い,Lactobacillus acidophilus IF
O 13951については,温度37℃,振とう数(100strok
es/min)で24時間振とう培養を行い,Bifidobacterium
bifidum IFO 14252については,温度37℃で,48
時間静置培養行った後に菌体量を測定した。表1に,前
記各培地で前記各菌株を前記培養条件で培養後の乾燥菌
体重量を示した。
【0015】
【表1】
【0016】得られた表1の結果から,いずれの菌株に
ついても,ES画分を添加したものについては乾燥菌体
重量は変わらなかったが,EI画分を添加したものにつ
いては乾燥菌体重量が増加することが判った。そこで,
EI画分の影響をさらに詳しく検討するために,前記乳
酸菌Lactococcus lactis subsp lactis IFO 12007
とLactobacillus acidophilus IFO 13951についてはジ
ャー培養を行い,前記ビフィズス菌のBifidobacterium
bifidumIFO 14252についてはフラスコ培養を行った。
【0017】
【実験3-1】 EI画分を添加した乳酸菌のジャー培
養(1) 菌株にLactococcus lactis subsp lactis IFO 1200
7を用い,培地に,乳酸菌用培地(グルコース1.0wt
%,ポリペプトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt
%,Nacl 0.5wt%)にEI画分を1.0wt%
添加したものを用いて,2L容のジャーファーメンター
にて温度30℃,かくはん回転数200rpm,pH
7.0に調整して100時間振とう培養を行い,この
際,乾燥菌体重量,グルコース濃度,乳酸濃度の経時変
化を測定した。対照には前記乳酸菌用培地を用いた。
【0018】図1、図2および図3に,それぞれ乾燥菌
体重量,グルコース濃度,乳酸濃度の経時変化を示し
た。 図1、図2および図3から明らかなように,EI
画分を1.0wt%添加した乳酸菌用培地では,培養1
5時間目あたりから,菌体増殖,グルコース消費および
乳酸の生成が著しく促進され,その結果コントロールが
48時間でグルコースを枯渇して培養を終了したのに対
し,EI画分を1.0wt%添加した乳酸菌用培地で
は,34時間で培養が終了した。このことからEI画分
を添加したものについては菌体量が増加することが明ら
かとなった。
【0019】
【実験3-2】 EI画分を添加した乳酸菌のジャー培
養(2) 菌株にLactobacillus acidophilus IFO 13951を用い,
培地に,乳酸菌用培地(グルコース1.0wt%,ポリ
ペプトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt%,NaC
l 0.5wt%)と前記乳酸菌用培地にEI画分を1.
0wt%添加したものを用いて,それぞれ別々に2L容
のジャーファーメンターにて温度37℃,かくはん回転
数200rpm,pH7.0に調整して100時間振と
う培養を行い,この時の乾燥菌体重量,グルコース濃
度,乳酸濃度の経時変化を測定した。
【0020】図4、図5および図6に,それぞれ菌体
量,グルコース濃度,乳酸濃度の経時変化を示した。図
4、図5および図6から明らかなように,EI画分を
1.0wt%添加した乳酸菌用培地では,培養初期の6
時間目あたりから,菌体増殖,グルコース消費および乳
酸の生成が著しく促進され,培養100時間目の菌体量
はコントロールの約7倍にまで達した。その効果は前記
実験3-1のLactococcuslactis subsp lactis IFO 1
2007に対するものよりも大きかった。
【0021】
【実験3-3】 EI画分を添加したビフィズス菌のフ
ラスコ培養 菌株にBifidobacterium bifidum IFO 14252を用い,
培地に,ビフィズス菌用培地(グルコース1.0wt
%,酵母エキス0.5wt%,ビーフエキス0.5wt
%,カゼイン・トリプシン加水分解物1.0wt%,L-
アスコルビン酸ナトリウム1.0wt%,L-システイン
0.05wt%,リン酸水素二カリウム0.3wt%,T
ween80 1ml/L)と前記ビフィズス菌用培地
にEI画分を1.0wt%添加したものを用いて,それ
ぞれ別々の500ml容の三角フラスコにて,温度37
℃で57時間培養を行い,この時の乾燥菌体重量および
グルコース濃度の経時変化を測定した。
【0022】図7および図8に,それぞれ乾燥菌体重量
およびグルコース濃度の経時変化を示した。図7および
図8から明らかなように,EI画分を1.0wt%添加
したビフィズス菌培養においても,培養12時間目あた
りから,菌体増殖およびグルコース消費が促進され,菌
体量は培養57時間で,コントロールの約1.3倍にま
で達した。
【0023】以上の実験から大麦焼酎蒸留残液中の水溶
性かつエタノール不溶性であるEI画分中に,乳酸菌お
よびビフィズス菌に対する増殖促進物質が存在し,か
つ,その効果の程度は菌種によってかなり大きな違いが
あることが明らかとなった。そこで,EI画分中に存在
する,乳酸菌およびビフィズス菌に対する増殖促進因子
について更なる検討を行うために以下の方法により,E
I画分のさらなる分画を行った。
【0024】
【実験4】 EI画分のゲル濾過 10wt%のEI画分水溶液を調製し,その100μl
を,カラムYMC PackDiol-60に供し,溶離液に水を用
い,流速1ml/minで,検出波長254nmと45
0nmの2波長でゲル濾過を行った。図9に254nm
と450nmの2波長で検出したクロマトグラムを示し
た。実線が254nm,破線が450nmのモニター結
果を示す。得られた図9のクロマトグラムをもとに,得
られたピーク群を,画分A,画分B,画分C,画分Dお
よび画分Eの5つの画分に分取し,得られた前記画分A
〜画分Eの5つの画分それぞれの乳酸菌に対する増殖促
進効果を検討した。
【0025】
【実験5】 画分A〜画分Eの乳酸菌に対する増殖促進
効果 菌株にLactobacillus acidophilus IFO 13951を用い,
培地には,乳酸菌用培地(グルコース1.0wt%,ポ
リペプトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt%,Na
Cl 0.5wt%)を使用したもの(対照),前記乳
酸菌用培地に乾燥重量0.1gのEI画分を加えたも
の,前記乳酸菌用培地に乾燥重量0.1gのEI画分の
前記ゲル濾過により分取して得られる量の画分A,画分
B,画分C,画分Dおよび画分Eをそれぞれ別々に添加
したものを用い,これらの培地でそれぞれ温度37℃,
振とう数100strokes/minで24時間振とう培養を行った
後,菌体量を560nmにおける吸光度で測定した。表
2に,培養終了後の菌体量を示した。
【0026】
【表2】
【0027】得られた表2の結果から,画分Aを加えた
ものは,EI画分を加えたものと同等の菌体量の増加を
示し,また画分Bを加えたものについても,EI画分と
比較して約70%の菌体量の増加を示した。しかし,画
分C,DおよびEを加えたものは,対照とほぼ同じ菌体
量であった。このことから,EI画分中の増殖促進成分
は,前記画分Aおよび画分Bに含まれていることが判っ
た。
【0028】
【実験6】 EI画分の前処理 そこで,これらの増殖促進活性のある画分Aおよび画分
Bを,さらに効率的に取り出すために,前記EI画分を
C18Sep−Packに供し,水および50vol%
メタノールで溶出させ,得られたそれぞれの画分をゲル
濾過に供した。すなわち10wt%のEI画分水溶液を
調製し,該水溶液3mlをWaters社製C18Se
p−Packに供し,得られた溶出液を除いた後,前記
C18Sep−Packに20mlの脱イオン水を流
し,これにより得られた溶出液をエバポレーターを用い
て3mlまで減圧濃縮し,該濃縮液を水溶性画分とし
た。次に前記C18Sep−Packに,20mlの5
0vol%メタノールを流し,これにより得られた溶出
液をエバポレーターを用いて3mlまで減圧濃縮し,該
濃縮液を50%メタノール溶性画分とした。
【0029】
【実験7-1】 EI画分から得られた水溶性画分のゲル
濾過 次に,前記の水溶性画分をさらに分画するためにゲルろ
過を行った。すなわち,100μlの前記水溶性画分
を,カラムYMC-Pack Diol-60に供し,溶離液には水を
用い,流速1ml/minで,検出波長は254nmと
450nmの2波長とした。図10に254nmと45
0nmの2波長で検出したクロマトグラムを示した。実
線が254nm,破線が450nmのモニター結果を示
す。得られた図10のクロマトグラムをもとに,前記実
験4とほぼ同一の画分A’と画分B’を分取した。なお
前記実験4の画分C,画分Dおよび画分Eに相当する画
分は,前記実験5の結果から,菌体量の増加が認められ
なかったため,分取しなかった。
【0030】
【実験7-2】 EI画分から得られた50%メタノー
ル溶性画分のゲル濾過 同様にして,前記の50%メタノール溶性画分について
も,これをさらに分画するためにゲルろ過を行った。す
なわち,100μlの前記50%メタノール溶性画分
を,カラムYMC Pack Diol-60に供し,溶離液に水を用
い,流速1ml/minで,検出波長254nmと45
0nmの2波長で,ゲル濾過を行った。
【0031】図11に254nmと450nmの2波長
で検出したクロマトを示した。実線が254nm,破線
が450nmのモニター結果を示す。得られた図11の
クロマトグラムをもとに,得られた2つの重なり合った
ピークを画分Fとして分取した。
【0032】
【実験7-3】 画分A〜画分Fの乳酸菌に対する増殖
促進効果 前記実験7-1で得た画分A’,画分B’および前記実
験7-2で得た画分Fの乳酸菌に対する増殖促進効果を
検討した。すなわち,菌株にLactobacillus acidophilu
s IFO 13951を用い,培地には,乳酸菌用培地(グルコ
ース1.0wt%,ポリペプトン0.5wt%,酵母エキ
ス0.5wt%,NaCl 0.5wt%)と前記乳酸菌
用培地に前記実験6で得られた水溶性画分を加えたも
の,前記乳酸菌用培地に前記実験7-1で得た画分
A’,画分B’および前記実験7-2で得た画分Fをそ
れぞれ別々に添加したものを用い,それぞれ温度37
℃,振とう数100strokes/minで24時間振とう培養を行
った後,菌体量を560nmにおける吸光度で測定し
た。表3に,培養終了後の菌体量を示した。
【0033】
【表3】
【0034】得られた表3の結果から,画分A’を加え
たものは,水溶性画分を加えたものと同等の菌体量の増
加を示し,また画分B’を加えたものについても,水溶
性画分を加えたものと比較して約70%の菌体量の増加
を示した。しかし,画分Fを加えたものは,コントロー
ルとほぼ同じ菌体量であった。このことから,EI画分
中の増殖促進成分は,前記画分A’および画分B’に含
まれていることが判った。
【0035】そこで次に,この促進活性のあった前記画
分A’および画分B’について,酸加水分解を行い,糖
およびアミノ酸組成を調べた。
【0036】
【実験8】 画分A’および画分B’の糖組成 前記画分A’および画分B’の乾燥重量1000mgを
2N HCLを用いて95℃,3.5時間の条件で加水
分解を行い,得られた加水分解物をHPLC分析に供
し,糖組成を調べた。さらに前記画分A’および画分
B’の乾燥重量1000mgを6N HCLを用いて1
10℃,6時間の条件で加水分解を行い,得られた加水
分解物をアミノ酸アナライザーに供し,アミノ酸組成を
調べた。得られた結果を表4および表5に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】表4の結果から,前記画分A’および画分
B’の糖組成は,グルコース,キシロース,アラビノー
スを主体とし,前記画分A’は前記画分B’に比べて,
グルコースが少なく,キシロースおよびアラビノースが
多く,またトータルの糖含量も多かった。また,表5の
結果から,前記画分B’は前記画分A’に比べて,アミ
ノ酸含量が高かった。
【0040】以上の結果から,前記画分A’および画分
B’は,いずれも糖が主体であることから,糖とタンパ
クの複合体ではないかと推測された。本発明者らは以上
のような経緯に従って本発明を完成するに至った。
【0041】
【発明の実施の形態】
【0042】
【実施例】本発明を以下の実施例により,さらに具体的
に説明するが,本発明はこれらの実施例によりなんら限
定されるものではない。
【0043】
【実施例1】メッシュ1mmでろ過した大麦製の焼酎蒸
留残液1L(水分約90%)を3000rpmで5分間
遠心分離し,終濃度90%になるようにエタノール約9
Lを添加した。生じた沈殿を遠心分離によって固液分離
し、EI画分を作成した。次に、10wt%のEI画分
水溶液を調製し,該水溶液3mlをWaters社製C
18Sep−Packに供し,得られた溶出液を除いた
後,前記C18Sep−Packに20mlの脱イオン
水を流し,これにより得られた溶出液をエバポレーター
を用いて3mlまで減圧濃縮した。該濃縮液100μl
を,カラムYMC−Pack Diol−60に供し,
溶離液には水を用い,流速1ml/minで,検出波長
254nmと450nmの2波長でゲルろ過を行い、得
られたクロマトグラムをもとに画分A’と画分B’を分
取した。
【0044】得られたEI画分および画分A’画分B’
の乳酸菌およびビフィズス菌に対する効果を調べた。す
なわち、乳酸菌については、菌株にLactobaci
llus acidophilus IFO 1395
1を、培地には乳酸菌用培地(グルコース1.0wt
%,ポリペプトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt
%,NaCl 0.5wt%)と前記乳酸菌用培地にそ
れぞれの画分を別々に添加したものを用いて、温度37
℃,振とう数100 strokes/minで24時
間振とう培養を行った後、菌体量を560nmにおける
吸光度で測定した。ビフィズス菌については、菌株にB
ifidobacterium longum JCM
1217を、培地にはビフィズス菌用培地(グルコー
ス1.0wt%,酵母エキス0.5wt%,ビーフエキス
0.5wt%,カゼイン・トリプシン加水分解物1.0w
t%,L-アスコルビン酸ナトリウム1.0wt%,L-
システイン0.05wt%,リン酸水素二カリウム0.3
wt%,Tween80 1ml/L)と前記ビフィズ
ス菌用培地にそれぞれの画分を別々に添加したものを用
いて、温度37℃で48時間静置培養を行った後菌体量
を測定した。表6に培養終了後の菌体量を示した。
【0045】
【表6】
【0046】得られた表6の結果から、乳酸菌、ビフィ
ズス菌のどちらについても、EI画分、画分A’画分
B’をそれぞれ添加することで、菌体量が対照と比べて
増大した。
【0047】
【実施例2】メッシュ1mmでろ過した大麦製の焼酎蒸
留残液2L(水分約90%)を3000rpmで5分間
遠心分離し,加熱濃縮により約1L(水分約80%)ま
で濃縮し、さらに終濃度90%になるようにエタノール
約9Lを添加した。生じた沈殿を遠心分離によって固液
分離し、EI画分を作成した。
【0048】次に、10wt%のEI画分水溶液を調製
し,該水溶液3mlをWaters社製C18Sep−
Packに供し,得られた溶出液を除いた後,前記C1
8Sep−Packに20mlの脱イオン水を流し,こ
れにより得られた溶出液をエバポレーターを用いて3m
lまで減圧濃縮した。該濃縮液100μlを,カラムY
MC−Pack Diol−60に供し,溶離液には水
を用い,流速1ml/minで,検出波長254nmと
450nmの2波長でゲルろ過を行い、得られたクロマ
トグラムをもとに画分A’と画分B’を分取した。
【0049】得られたEI画分および画分A’画分B’
の乳酸菌およびビフィズス菌に対する効果を調べた。す
なわち、乳酸菌については、菌株にLactobaci
llus acidophilus IFO 1395
1を、培地には乳酸菌用培地(グルコース1.0wt
%,ポリペプトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt
%,NaCl 0.5wt%)と前記乳酸菌用培地にそ
れぞれの画分を別々に添加したものを用いて、温度37
℃,振とう数100 strokes/minで24時
間振とう培養を行った後、菌体量を560nmにおける
吸光度で測定した。ビフィズス菌については、菌株にB
ifidobacterium longum JCM
1217を、培地にはビフィズス菌用培地(グルコー
ス1.0wt%,酵母エキス0.5wt%,ビーフエキス
0.5wt%,カゼイン・トリプシン加水分解物1.0w
t%,L-アスコルビン酸ナトリウム1.0wt%,L-
システイン0.05wt%,リン酸水素二カリウム0.3
wt%,Tween80 1ml/L)と前記ビフィズ
ス菌用培地にそれぞれの画分を別々に添加したものを用
いて、温度37℃で48時間静置培養を行った後菌体量
を測定した。表7に培養終了後の菌体量を示した。
【0050】
【表7】
【0051】得られた表7の結果から、乳酸菌、ビフィ
ズス菌のどちらについても、EI画分、画分A’画分
B’をそれぞれ添加することで、菌体量が対照と比べて
増大した。
【0052】
【実施例3】メッシュ1mmでろ過した大麦製の焼酎蒸
留残液3L(水分約90%)を3000rpmで5分間
遠心分離し,加熱濃縮により約1L(水分約70%)ま
で濃縮し、さらに終濃度90%になるようにエタノール
約9Lを添加した。生じた沈殿を遠心分離によって固液
分離し、EI画分を作成した。
【0053】次に、10wt%のEI画分水溶液を調製
し,該水溶液3mlをWaters社製C18Sep−
Packに供し,得られた溶出液を除いた後,前記C1
8Sep−Packに20mlの脱イオン水を流し,こ
れにより得られた溶出液をエバポレーターを用いて3m
lまで減圧濃縮した。該濃縮液100μlを,カラムY
MC−Pack Diol−60に供し,溶離液に水を
用い,流速1ml/min,検出波長254nmと45
0nmの2波長でゲルろ過を行い、得られたクロマトグ
ラムをもとに画分A’と画分B’を分取した。
【0054】得られたEI画分および画分A’画分B’
の乳酸菌およびビフィズス菌に対する効果を調べた。す
なわち、乳酸菌については、菌株にLactobaci
llus acidophilus IFO 1395
1を、培地には乳酸菌用培地(グルコース1.0wt
%,ポリペプトン0.5wt%,酵母エキス0.5wt
%,NaCl 0.5wt%)と前記乳酸菌用培地にそ
れぞれの画分を別々に添加したものを用いて、温度37
℃,振とう数100 strokes/minで24時
間振とう培養を行った後、菌体量を560nmにおける
吸光度で測定した。ビフィズス菌については、菌株にB
ifidobacterium longum JCM
1217を、培地にはビフィズス菌用培地(グルコー
ス1.0wt%,酵母エキス0.5wt%,ビーフエキス
0.5wt%,カゼイン・トリプシン加水分解物1.0w
t%,L-アスコルビン酸ナトリウム1.0wt%,L-
システイン0.05wt%,リン酸水素二カリウム0.3
wt%,Tween80 1ml/L)と前記ビフィズ
ス菌用培地にそれぞれの画分を別々に添加したものを用
いて、温度37℃で48時間静置培養を行った後菌体量
を測定した。表8に培養終了後の菌体量を示した。
【0055】
【表8】
【0056】得られた表8の結果から、乳酸菌、ビフィ
ズス菌のどちらについても、EI画分、画分A’画分
B’をそれぞれ添加することで、菌体量が対照と比べて
増大した。
【0057】
【発明の効果】微生物増殖促進成分を得る目的で,焼酎
蒸留残液から水分を除去し,固液分離後,有機溶剤を加
えて,生じた沈殿をろ過あるいは遠心分離等で分離し,
得られた固形物を再び水で溶解し,それをODS樹脂で
処理後,ゲル濾過し,得られた液を濃縮あるいは噴霧乾
燥することにより、乳酸菌等の微生物の増殖促進物質を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験3-1における菌体量の経時変化を示す図
である。
【図2】実験3-1におけるグルコース濃度の経時変化
を示す図である。
【図3】実験3-1における乳酸濃度の経時変化を示す
図である。
【図4】実験3-2における菌体量の経時変化を示す図
である。
【図5】実験3-2におけるグルコース濃度の経時変化
を示す図である。
【図6】実験3-2における乳酸濃度の経時変化を示す
図である。
【図7】実験3-3における菌体量の経時変化を示す図
である。
【図8】実験3-3におけるグルコース濃度の経時変化
を示す図である。
【図9】実験4における254nmと450nmの2波
長で検出したクロマトグラムである。
【図10】実験7-1における254nmと450nm
の2波長で検出したクロマトグラムである。
【図11】 実験7-2における254nmと450n
mの2波長で検出したクロマトグラムである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高下 秀春 大分県宇佐市大字山本2231−1 三和酒類 株式会社内 (72)発明者 古田 吉史 大分県宇佐市大字山本2231−1 三和酒類 株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物増殖促進成分を得る目的で,焼酎
    蒸留残液から水分を除去し,固液分離後,有機溶剤を加
    えて,生じた沈殿をろ過あるいは遠心分離等で分離し,
    得られた固形物を再び水で溶解し,それをODS樹脂で
    処理後,ゲル濾過し,得られた液を濃縮あるいは噴霧乾
    燥して製品とする焼酎蒸留残液から乳酸菌等の微生物の
    増殖促進物質の製造方法。
JP9138164A 1997-05-28 1997-05-28 焼酎蒸留残液から微生物増殖促進成分を分離濃縮する方法 Pending JPH10327852A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009209132A (ja) * 2008-02-05 2009-09-17 Kitii Corp 新菌株ラクトバチルス・クリスパタスkt−11、kt−23、およびkt−25を用いた抗アレルギー用組成物
JP2010200677A (ja) * 2009-03-04 2010-09-16 Satsuma Shuzo Kk 焼酎粕機能性エキスおよびその製造方法
JP2021126061A (ja) * 2020-02-12 2021-09-02 株式会社ヤクルト本社 新規乳酸菌用培地

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