JPH10326436A - 光学的情報記録用媒体 - Google Patents

光学的情報記録用媒体

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JPH10326436A
JPH10326436A JP10074132A JP7413298A JPH10326436A JP H10326436 A JPH10326436 A JP H10326436A JP 10074132 A JP10074132 A JP 10074132A JP 7413298 A JP7413298 A JP 7413298A JP H10326436 A JPH10326436 A JP H10326436A
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Takashi Ono
孝志 大野
Masao Komatsu
昌生 小松
Masae Kubo
正枝 久保
Masaaki Mizuno
正明 水野
Michikazu Horie
通和 堀江
Natsuko Nobukuni
奈津子 信國
Haruo Kunitomo
晴男 国友
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 相変化媒体において、反射層の体積抵抗率を
特定の範囲とすることで、記録層の冷却速度をコントロ
ールし、記録線速および記録パワーに対するマージンを
大幅に改善する。 【解決手段】 基板上に下部保護層、相変化記録層、上
部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵
抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層を
この順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マーク
の記録・再生・消去を行う光学的情報記録用媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、書き換え可能な相
変化媒体に関する。特に、コンパクトディスク及び高密
度コンパクトディスクあるいはディジタルビデオディス
クとの互換性を有する相変化媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、情報量の増大に伴い高密度でかつ
高速に大量のデータの記録・再生ができる記録媒体が求
められているが、光ディスクはまさにこうした用途に応
えるものとして期待されている。書換型の光ディスクと
して、光磁気効果を利用した光磁気記録媒体や、可逆的
な結晶状態の変化に伴う反射率変化を利用した相変化媒
体がある。
【0003】相変化媒体は外部磁界を必要とせず、レー
ザー光のパワーを変調するだけで記録・消去が可能であ
り、記録・再生装置を小型化できるという利点を有す
る。さらに、特に記録層等の材料を変更することなく短
波長光源による高密度化が可能であるといった利点もあ
る。このような、相変化の記録層材料としては、カルコ
ゲン系合金薄膜を用いることが多い。例えば、GeSb
Te系、InSbTe系、GeSnTe系、AgInS
bTe系合金があげられる。
【0004】現在、実用化されている書換可能な相変化
媒体では、結晶状態を未記録・消去状態とし、非晶質の
マークを形成する。非晶質マークは記録層を融点より高
い温度まで加熱し、急冷することによって形成される。
このような記録層の加熱による蒸発・変形を防ぐため、
通常は記録層の上下を耐熱性でかつ化学的にも安定な誘
電体保護層で挟む。
【0005】記録過程においては、この保護層は記録層
からの熱拡散を促し過冷却状態を実現して非晶質マーク
の形成にも寄与している。さらに、上記サンドイッチ構
造の上部に金属反射層を設けた4層構造とすることで、
熱拡散をさらに促し、非晶質マークを安定に形成するこ
とができる。消去(結晶化)は、記録層の結晶化温度よ
りは高く、融点よりは低い温度までもしくは融点直上ま
で記録層を加熱して行う。この場合、誘電体保護層は、
記録層を固相結晶化に十分な高温に保つ蓄熱層として働
く。
【0006】近年、書換可能コンパクトディスク(CD-R
ewritable 、CD−RW)が提唱されている。CD−R
Wは、反射率の低さを除けばCDやCD−ROMとの再
生互換性を有している。また最近、CDを高密度化した
DVD(Digital Video DiscもしくはDigital Versatil
e Discの略とされる)の書き換え可能型も提案されてい
る。
【0007】CD−RWには、蛇行(Wobble)した溝が
設けられ溝内に記録する。蛇行の周波数は搬送波周波数
22.05kHzをアドレス情報により周波数(FM)
変調したものである。これはATIP信号と呼ばれる。
ATIP信号を用いることで未記録ディスクの回転数制
御が可能になり、CD線速(1.2〜1.4m/s)の
1倍速、2倍速、さらには4倍、6倍速での記録ができ
る。この際、安価な半導体レーザーを用いるためには記
録パワーは約15mW以下でなければならず、また、記
録時の線速が異なっても単純に線速に反比例して基準ク
ロック周波数Tを変えるだけで、所望のマーク長が記録
できなければならない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、相変化
媒体においては、記録時の線速の変化は非晶質マーク形
成過程と再結晶化による消去過程に影響を及ぼし、最大
線速と最小線速の比が2倍程度から大きいと、いずれか
の線速で正常な記録ができなくなることが多い。通常、
記録可能光ディスクでは、線速が早くなると記録層を同
じ温度まで昇温させるのに高めの照射パワーを要する。
【0009】しかし、照射パワーを調整して記録層の到
達温度を同じにしても、線速が異なれば、必ずしも同じ
熱履歴が達成されるわけではない。非晶質マークの形成
は、一旦記録パワーで溶融せしめた記録層を、臨界冷却
速度以上の速さで冷却することによって行われる。この
冷却速度は同一層構成を用いた場合線速に依存する。つ
まり、高線速では冷却速度が速くなり、低線速では冷却
速度は遅くなる。
【0010】一方、非晶質マークを消去するには、記録
層を結晶化温度以上融点近傍以下に一定時間保温する必
要がある。この保温時間は逆に、高線速では短く、低線
速では長くなる傾向がある。従って、線速の比較的速い
記録条件では光ビームを照射した際に、その照射された
部分の記録層の熱分布が時間的、空間的に比較的急峻に
なるため消去時の消し残りが懸念される。
【0011】かかる記録条件に対応するためには比較的
短時間で結晶化すなわち消去が行えるように、記録層に
は結晶化速度の比較的速い組成の化合物を用いたり、熱
の逃げにくい層構成にしたりする。逆に、線速が比較的
遅い記録条件では、前述のように冷却速度が遅くなるた
めに、記録時の再結晶化が懸念される。記録マーク形成
時の再結晶化を防ぐ方法として、記録層には結晶化速度
の比較的遅い組成の化合物を用いたり、熱の逃げやすい
層構成にしたりする。
【0012】しかしながら、例えばCD−RWにおいて
CDの2倍速および4倍速で記録するのに別種のディス
クを用意するのは好ましくない。線速に応じてパルスス
トラテジー(良好なピット形状を得るために照射ビーム
をパルス分割し、コントロールする方式)を変化させる
ことにより、CDの1倍もしくは2倍速から10m/s
程度の線速範囲において良好なオーバーライト特性を得
る方法については、本発明者らも含めいくつか報告があ
る。しかし、一般的には、パルスストラテジーを可変と
することはパルス発生回路等を複雑化させドライブの製
造コストを高くするので、同一パルスストラテジーで基
準クロック周期を変更するだけで広い線速範囲をカバー
できることが望ましい。本発明においては、記録線速お
よび記録パワーに対するマージンを大幅に改善した相変
化媒体を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、基板上
に下部保護層、相変化記録層、上部保護層、膜厚が40
nm以上300nm以下で体積抵抗率が20nΩ・m以
上150nΩ・m以下の反射層をこの順に設けてなり、
マーク長変調された非晶質マークの記録・再生・消去を
行うことを特徴とする光学的情報記録用媒体に存する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明におけるディスクの層構成
は図1に模式的に示すように、基板1上に少なくとも下
部保護層2、相変化型記録層3、上部保護層4、反射層
5を設けてなる。保護層2、4、記録層3、反射層5は
スパッタリング法などによって形成される。記録層用タ
ーゲット、保護層用ターゲット、必要な場合には反射層
材料用ターゲットを同一真空チャンバー内または連続し
た真空チャンバー内に設置したインライン装置で層形成
を行うことが各層間の酸化や汚染を防ぐ点で望ましい。
また、生産性の面からもすぐれている。
【0015】反射層5上に、傷防止、繰返しオーバーラ
イトによる変形防止、耐腐食性向上のために、紫外線も
しくは熱硬化性樹脂からなる保護コート層6を設けるこ
とが望ましい。保護コート層は通常スピンコート法によ
り塗布され、1mm以上10mm以下の厚みとすること
が望ましい。本発明における記録媒体の基板1として
は、ガラス、プラスチック、ガラス上に光硬化性樹脂を
設けたもの等のいずれであってもよいが、コストを含む
生産性の面ではプラスチックが好ましく、特にポリカー
ボネート樹脂が好ましい。
【0016】記録時の高温による変形を防止するため、
基板表面には下部保護層2が、記録層3上には上部保護
層4が設けられる。保護層2及び4の材料としては、屈
折率、熱伝導率、化学的安定性、機械的強度、密着性等
に留意して決定される。一般的には透明性が高く高融点
である金属や半導体の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物
やCa、Mg、Li等のフッ化物を用いることができ
る。
【0017】これらの酸化物、硫化物、窒化物、炭化
物、フッ化物は必ずしも化学量論的組成をとる必要はな
く、屈折率等の制御のために組成を制御したり、混合し
て用いることも有効である。繰返しオーバーライト特性
を考慮すると誘電体混合物がよい。より具体的にはZn
Sや希土類硫化物と酸化物、窒化物、炭化物等の耐熱化
合物の混合物が挙げられる。これらの保護層の膜密度は
バルク状態の80%以上であることが機械的強度の面か
ら望ましい。混合物誘電体薄膜を用いる場合には、バル
ク密度として下式の理論密度を用いる。 ρ=Σmi ρi (1) mi :各成分iのモル濃度 ρi :単独のバルク密度
【0018】下部保護層2の膜厚は、繰返しオーバーラ
イト時の熱ダメージによる基板変形を抑制し繰返しオー
バーライト耐久性を上げるためには、厚いほうが好まし
い。下部保護層膜厚が薄いと繰返しオーバーライトの初
期にジッタが悪化しやすいからである。
【0019】本発明者等の原子間力顕微鏡(AFM)に
よる観察によれば、この初期劣化は基板表面が2〜3n
m程度へこむ変形によるものであることがわかった。基
板変形を抑制するために、記録層の発熱を伝えないため
に熱絶縁効果があり、かつ、機械的に変形を押さえ込む
ような保護層膜厚が好ましいのである。例えば、CD−
RWで繰返しオーバーライト1000回を達成するため
には、好ましくは厚さ70nm以上、より好ましくは8
0nm以上がよい。上部保護層4は記録層3と反射層5
の相互拡散を防止する。
【0020】本発明の媒体の記録層3は相変化の記録層
であり、その厚みは10nmから30nmの範囲が好ま
しい。記録層3の厚みが10nmより薄いと十分なコン
トラストが得られにくい。また15nm未満では結晶化
速度が遅くなる傾向があり、特に10nm未満では短時
間での記録消去が困難となりやすい。一方30nmを越
すとやはり光学的なコントラストが得にくくなり、ま
た、熱容量が大きくなるために記録感度が悪くなるので
好ましくない。さらにまた、相変化に伴う記録層の体積
変化は記録層が厚くなるほど大きくなり、繰返しオーバ
ーライト時に保護層及び基板表面等に微視的な変形が蓄
積され、ノイズの上昇につながる。
【0021】また、30nmより厚いと繰返しオーバー
ライトによる劣化が著しくなるので好ましくない。特に
繰返しオーバーライト耐久性の観点からは25nm以下
とすることがより望ましい。記録層3としては本発明に
おいては、特に、結晶・非晶質いずれの状態も安定でか
つ、両状態間の高速の相転移が可能である、Sb70Te
30共晶点近傍のSbTe合金を主成分とする、MSbT
e(MはIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、
Au、Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、S、
Se、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、M
o、Rh、希土類元素のうちの少なくとも1種)合金薄
膜が好ましい。
【0022】前述の様に本発明の媒体の線速依存性は、
第1次的には、Sb70Te30共晶点組成を基本として、
Sb/Te比により左右される。そのために、上記記録
層の組成はMww (Sbz Te1-z 1-w (0≦w≦
0.2、0.5≦z≦0.9、MはIn、Ga、Zn、
Ge、Sn、Si、Cu、Au、Ag、Pd、Pt、P
b、Cr、Co、O、N、S、Se、Ta、Nb、V、
Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土類元素のう
ちの少なくとも1種)合金薄膜が好適に用いられる。
【0023】高線速に対応させるには、Sb量を増やせ
ばよいが、あまり増やすと非晶質マークの安定性が損な
われるので、Sb量を0.5≦z≦0.9とするのが好
ましく、0.6≦z≦0.8がより好ましい。結晶化速
度及び結晶化温度を微調整するために、Sbの一部をB
iに置換しても良い。In、Ga及びGe、Sn、S
i、Pbは結晶化温度を上昇させて経時安定性を高める
効果ある。また、In、Gaはスムースな非晶質マーク
と結晶領域との境界を形成し、マーク長記録、すなわ
ち、マーク端検出におけるノイズを小さくできる。
【0024】Ag、Zn、Cu、Au、Ag、Pd、P
t、Cr、Co、Zr、Ti、Mn、Mo、Rh、希土
類元素はそれ自身もしくはそれらとSbもしくはTeと
の化合物が高融点であるため、微細な分散したクラスタ
ーとして析出して結晶核となり、高速結晶化に寄与す
る。しかし、多すぎるとかえって非晶質マークの安定性
を損なう。O、S、SeはTeと同族であり、Teの鎖
状ネットワークに入り込んで、Sb70Te30共晶合金の
結晶化温度、屈折率、粘度を微調整するのに利用でき
る。
【0025】いずれの添加元素も20原子%を超える
と、偏析・相分離を生じ易い。特に、繰返しオーバーラ
イトにより偏析を生じ易く、安定な記録ができなくなる
ので好ましくない。繰返しオーバーライト耐久性の観点
からはいずれの原子も単独では10原子%以下とするこ
とが望ましい。また、特にO、S、N、Seは5原子%
を超えると結晶化速度が遅くなりすぎる傾向があるの
で、5原子%以下とすることがより好ましい。
【0026】より具体的で好ましい例として、MaαI
nβSbγTeη(ただし、MaはAgもしくはZn、
0.03≦α≦0.1、0.03≦β≦0.08、0.
55≦γ≦0.65、0.25≦η≦0.35、0.0
6≦α+β≦0.13、α+β+γ+η=1である)な
る記録層があげられる。Inは結晶化温度を上昇させて
経時安定性を高める効果があり、室温での保存安定性を
確保するためには少なくとも3原子%は必要である。ま
た、スムースな非晶質マークと結晶領域との境界を形成
し、マーク長記録、すなわち、マーク端検出におけるノ
イズを小さくできる。
【0027】8原子%以上含まれると相分離が生じ易
く、繰りしオーバーライトにより偏析が起きるため好ま
しくない。より好ましくは、In量を5原子%以上8原
子%以下とする。Ag又はZnは成膜直後の非晶質膜の
初期化を容易にするために用いられる。初期化方法にも
よるが10原子%以下の添加で十分であり、多すぎると
かえって経時安定性を損ねたり、上記マーク端検出にお
けるジッタが悪化するので好ましくない。
【0028】また、Ag又はZnとInをあわせて13
原子%以上とすることは繰返しオーバーライト時に偏析
を生じ易いので好ましくない。もう一種の好適な記録層
の例としてMbv Mcy (Sbx Te1-x 1-y-v (た
だし、MbはAg又はZnの少なくとも1種、McはG
eもしくはSnの一種であり、0.6≦x≦0.8、
0.01≦y≦0.15、0.01≦v≦0.15、
0.02≦y+v≦0.2である)なる組成を有する合
金があげられる。
【0029】InのかわりにGeを用いることで、上記
のMaInSbTe合金における低融点金属Inおよび
In化合金の析出のしやすさを改善することができる。
一方で、GeもしくはSnの添加とともに、急激に初期
化(as−depo.膜の結晶化)に時間を要するよう
になる。Inの析出しやすさとGeによる初期化のしに
くさを克服するために、MdaInb Gec Sbd Te
e (ただし、MdはAgもしくはZnの少なくとも1種
であり、0.01≦a≦0.1、0.001≦b≦0.
1、0.01≦c≦0.1、0.5≦d≦0.7、0.
25≦e≦0.4、0.03≦b+c≦0.15、a+
b+c+d+e=1.0である)なる組成を有する5元
記録層を用いても良い。
【0030】記録層及び保護層の厚みは、上記機械的強
度、信頼性の面からの制限の他に、多層構成に伴う光学
干渉効果も考慮して、レーザー光の吸収効率が良く、記
録信号の振幅、すなわち記録状態と未記録状態のコント
ラストが大きくなるように選ばれる。本発明の要点は、
とりわけ低体積抵抗率の反射層5を用いることによっ
て、線速マージンや記録パワーマージンを改善したこと
にある。特に、上部保護層4を30nm以上と比較的厚
くした場合に顕著な効果が得られる。
【0031】上部保護層4は、従来、厚くなりすぎると
記録層3の熱が反射層5に到達する時間が長くなり、反
射層5による放熱効果が有効に作用しないとされてい
た。上部保護層4を厚くした例はあるものの、具体的な
応用例がピット位置記録法に限定されており、反射層へ
の熱の拡散をむしろ抑制し、おおむね10m/s以上の
高線速における記録において高感度化することを主眼と
していた(USP5665520、5674649
等)。
【0032】しかし、本発明者らの検討によれば、マー
ク長記録に適用した場合には、単に上部保護層を厚くす
ると、記録時に溶融された記録層の冷却速度が小さくな
りすぎ、良好な非晶質マークの形成が阻害されジッタが
悪化するという問題点が生じる。すなわち、再凝固時の
再結晶化が促進されて、非晶質マークの周辺に粗大なグ
レインの帯が形成されるため、マーク位置検出ならばと
もかく、マークエッジを検出するマーク長記録では著し
くジッタが悪化するのである。また、上部保護層4の内
部に繰返しオーバーライト時のヒートサイクルによる塑
性変形が蓄積され、オーバーライト回数に伴い劣化が進
みやすいという問題が生じる。これも、マーク長が短い
ものだけで構成されるマーク位置記録よりも、長いマー
クが混じるマーク長記録の場合に顕著になる。
【0033】以上で述べた問題点は、記録時の線速が1
0m/s以下、特に5m/s以下の低線速である場合に
顕著となる。これは、記録層の冷却速度が記録に用いる
集束光ビームと記録媒体との相対的な移動速度に依存
し、低線速ほど冷却速度が低下するためである。冷却速
度の低下は、非晶質マークの形成阻害、記録時の熱ダメ
ージの増大という上記の問題点をより過酷なものとす
る。
【0034】上記先願では、使用形態として少なくとも
5m/s以上であり、特に10m/s以上における記録
感度改善を想定しており、このような低線速における問
題点については言及していない。本発明によれば、低線
速での記録再生において、厚く設けた上部保護層4に極
めて低体積抵抗率の反射層5を組み合わせることによ
り、相変化による位相差δを有利に利用でき、なおか
つ、上部保護層の薄い従来の急冷構造よりも記録感度お
よび線速依存性を改善できるという効果をも得られる。
【0035】従って、上部保護層膜厚は好ましくは30
nm以上60nm以下、より好ましくは40nm以上6
0nm以下である。位相差の効果δを積極的に利用しな
い場合でも、比較的厚い上部保護層と極めて低体積抵抗
率の反射層5を用いることの利点はここにある。これ
は、図14を用いて以下のように説明される。記録のた
めにまず記録層温度を融点以上に昇温する必要がある
が、熱伝導には有限の時間が必要であるから、昇温過程
(初期の数十ナノ秒以下)では、平面方向の熱伝導は顕
著ではなく、膜厚方向の熱伝導のみでほとんど温度分布
が決まる(図14(a))。
【0036】従って、まず記録マークの先端部分を所定
の温度まで昇温するときには、この膜厚方向の熱伝導が
効いてくる。一方、昇温開始後数十nsec以降になる
と図14(b)に示すように横方向の熱伝導による温度
分布の平面的変化が重要になる。なぜなら、膜厚方向は
熱拡散距離の有効範囲が高々0.1μmであるのに対し
て、平面方向は熱拡散距離の有効範囲が1μmのオーダ
ーだからである。
【0037】特に非晶質化過程を支配する記録層の冷却
速度はこの平面分布に依存し、前述の冷却速度の線速依
存性はまさにこの平面分布で支配されている。低線速で
は光ビームの走査速度が遅いため、同一照射時間でも周
辺部まで加熱しながら進むことになり、平面方向の熱伝
導の影響が大きい。また比較的長時間連続して記録光ビ
ームが照射される長マークの後端部分でも、平面方向の
熱伝導の影響が大きい。
【0038】従って、マーク長記録を記録時の最大線速
と最小線速比が2倍以上になる様な広線速範囲で良好に
行うためには、単に膜厚方向の温度分布や時間変化のみ
ならず、平面方向の分布や時間変化を正確に制御する必
要がある。図14(b)において、上部保護層の熱伝導
率を低くし、適度な厚みを持たせた方が反射層への熱の
流れに一定の遅延効果をもたらすことができ、平面方向
の温度分布を制御しやすくなるのである。
【0039】従来のいわゆる「急冷構造」は、再結晶化
による粗大グレインのない非晶質マーク形成には有効で
あったが、上部保護層膜厚が30nm以下であり、この
熱伝導の遅延効果に十分な留意を払っていなかったた
め、記録感度の低下をもたらしていた。本発明において
問題としている反射率の熱伝導率は、あくまで、実際に
上部保護層上に形成された薄膜状態での熱伝導率であ
る。一般には薄膜の熱伝導率はバルク状態の熱伝導率と
大きく異なり、小さくなっているのが普通である。
【0040】特に40nm以下の薄膜では成長初期の島
状構造の影響で熱伝導率が1桁以上小さくなる場合があ
り好ましくない。さらに、成膜条件によって結晶性や不
純物量が異なり、これが同じ組成でも熱伝導率が異なる
要因になる。本発明において良好な特性を示す反射層5
を規定するために、反射層の熱伝導率は直接測定するこ
とも可能であるが、その熱伝導の良否を電気抵抗を利用
して見積もることができる。
【0041】金属膜のように電子が熱もしくは電気伝導
を主として司る材料においては熱伝導率と電気伝導率は
良好な比例関係があるためである。薄膜の電気抵抗はそ
の膜厚や測定領域の面積で規格化された抵抗率値で表
す。体積抵抗率と面積抵抗率は通常の4探針法で測定で
き、JISK7194によって規定されている。
【0042】薄膜の熱伝導率そのものを実測するよりも
はるかに簡便かつ再現性の良いデータが得られる。本発
明において好ましい反射層は体積抵抗率でいうと20n
Ω・m以上150nΩ・m以下、好ましくは20nΩ・
m以上100nΩ・m以下である。体積抵抗率20nΩ
・m以下の材料は薄膜状態では実質的に得にくい。体積
抵抗率150nΩ・mより体積抵抗率が大きい場合で
も、たとえば300nm以上の厚膜とすれば面積抵抗率
を下げることはできるが、本発明者らの検討によれば、
このような高体積抵抗率材料で面積抵抗率のみ下げて
も、十分な放熱効果は得られなかった。
【0043】厚膜では単位面積当たりの熱容量が増大し
てしまうため、反射層自体の放熱がかえって遅くなって
しまうからと考えられる。また、このような厚膜では成
膜に時間がかかり、材料費も増えるため製造コストの観
点から好ましくない。膜厚300nm以下で面積抵抗率
0.2以上0.9Ω/□以下が得られるような、低体積
抵抗率材料を用いるのが特に好ましい。上記のような低
体積抵抗率を得るためには、不純物含有量2原子%以下
のAl合金(純Alを含む)または不純物含有量5原子
%以下のAu又はAg合金(純Au、Agを含む)膜と
するのがよい。
【0044】本発明に適したAl金属材料をより具体的
に述べると、Siを0.3重量%以上0.8重量%以
下、Mgを0.3重量%以上1.2重量%以下含有する
Al−Mg−Si系合金であることが好ましい。この
他、AlにTa、Ti、Co、Cr、Si、Sc、H
f、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又はMnを0.2
原子%以上2原子%以下含むAl合金は、添加元素濃度
に比例して体積抵抗率が増加し、また、耐ヒロック性が
改善されることが知られているので、耐久性、体積抵抗
率、成膜速度等考慮して用いることができる。
【0045】Al合金に関しては、添加不純物量0.2
原子%以下では、成膜条件にもよるが、耐ヒロック性は
不十分であることが多い。また、2原子%より多いと上
記の低抵抗率が得られない。経時安定性をより重視する
場合には添加成分としてはTaが好ましい。一方、上記
反射層がAg合金薄膜である場合にはTi、V、Ta、
Nb、W、Co、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、H
f、Pd、Rh、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、又は
Mnを0.2原子%以上5原子%以下含むものが望まし
い。経時安定性をより重視する場合には添加成分として
はTi、Mgが好ましい。
【0046】本発明者らは上記、Alへの添加元素、A
gへの添加元素は、その添加元素濃度に比例して、体積
抵抗率が増加することを確認している。不純物の添加は
一般的に結晶粒径を小さくし、粒界の電子散乱を増加さ
せて熱伝導率を低下させると考えられる。添加不純物量
を調節することは、結晶粒径を大きくすることで材料本
来の高熱伝導率を得るために必要である。
【0047】高熱伝導率を得るためには、上記のよう
に、不純物量を少なくするのが望ましいが、一方で、A
lやAgの純金属は耐食性や耐ヒロック性に劣る傾向が
あるため、両者のバランスを考慮して最適組成が決ま
る。なお、反射層は通常スパッタ法や真空蒸着法で形成
されるが、ターゲットや蒸着材料そのものの不純物量も
さることながら、成膜時に混入する水分や酸素量も含め
て全不純物量を下げる必要がある。全不純物量を2原子
%以下とするためには、プロセスチャンバの到達真空度
は1×10-3Pa以下とすることが望ましい。
【0048】また、1×10-4Paより悪い到達真空度
で成膜するなら、成膜レートを1nm/秒以上、好まし
くは10nm/秒以上として予期しない不純物が取り込
まれるのを防ぐことが望ましい。あるいは、意図的な添
加元素を1原子%より多く含む場合は、成膜レートを1
0nm/秒以上として予期しない不純物混入を極力防ぐ
ことが望ましい。
【0049】膜中の不純物組成あるいは結晶性は、スパ
ッタに用いる合金ターゲットの製法やスパッタガス(A
r、Ne、Xe等)にも依存する。上記のように薄膜状
態の体積抵抗率は金属材料、組成のみによっては決まら
ないから、たとえばAl合金反射層材料を規定した先願
(特開平3−1338、平1−169571、平1−2
08744、平2−128332等)もあるが本願の層
構成を示唆するものではない。
【0050】また、先に延べたごとく、本願は実際にデ
ィスク上に成膜された薄膜状態での熱伝導率に注目し、
反射層の放熱効果を確実にするために、簡便かつ精度の
高い測定が容易にできる、体積抵抗率によって反射層の
高熱伝導率を担保している。単に合金組成や、バルクの
熱伝導率を参照した先願にくらべ、産業上の利益ははか
りしれない。また、薄膜状態の熱伝導率がバルク値とは
大きくことなり、組成のみならず成膜条件にも依存する
ことから、熱伝導率の最適範囲の単なるパラメータのお
きかえでないことも明らかである。
【0051】さらなる高熱伝導と高信頼性を得るために
反射層を多層化することも有効である。反射層の多層化
は、高体積抵抗率材料と低体積抵抗率材料を組み合わせ
て所望の膜厚で所望の面積抵抗率を得るためにも有効で
ある。反射層を複数の金属膜からなる多層反射層とし、
全膜厚を40nm以上300nm以下、多層反射層の厚
さの50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150n
Ω・m以下の金属薄膜層(多層であっても良い)とする
のが好ましい。
【0052】本発明においては、特に30〜60nmと
いう厚めの上部保護層による熱伝導の遅延効果を十分発
揮させるために上部保護層4の材料としては、熱伝導が
低い方が望ましい。具体的にはZnS、ZnO、TaS
2 もしくは希土類硫化物を単独もしくは混合物として2
0モル%以上90モル%以下含み、他方融点もしくは分
解温度が1000℃以上の耐熱性化合物からなる複合誘
電体が望ましい。より具体的にはLa、Ce、Nd、Y
等の希土類の硫化物を50モル%以上90モル%以下含
む複合誘電体が望ましい。あるいは、ZnS、ZnOも
しくは希土類硫化物の組成の範囲を70〜90モル%と
することが望ましい。
【0053】これらと混合されるべき融点もしくは分解
点が1000℃以上の耐熱化合物材料としては、Mg、
Ca、Sr、Y、La、Ce、Ho、Er、Yb、T
i、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Zn、Al、Si、
Ge、Pb等の酸化物、窒化物、炭化物やCa、Mg、
Li等のフッ化物を用いることができる。特にZnOと
混合されるべき材料としては、Y、La、Ce、Nd等
希土類の硫化物あるいは硫化物と酸化物の混合物が望ま
しい。
【0054】従来、知られている保護層材料で、SiO
2 、Ta25 、Al23 、AlN、SiN等を主成
分とする薄膜は、それ自身の熱伝導率が高く好ましくな
い。なお、ZnS:SiO2 からなる上部保護層の厚み
を30nm以上60nm以下とし、反射層に0.5原子
%以上5原子%以下の不純物を含むAl合金を用いるこ
とが記載されている例があるが(特開平7−26261
3)。しかしこの出願はむしろ、高感度化のために反射
層膜厚を100nm以下とすることが好ましいなど反射
層への放熱を制限して高感度化を図ったものであり、本
願における、冷却速度を高速に保つために薄膜状態の反
射層の熱伝導率をとりわけ高いものに制限するという思
想は全く見られない。
【0055】従って、反射層組成として似た例示があっ
たとしても、低体積抵抗率の反射層については全く示唆
していない。少なくとも、本願では、該先願において対
応不十分な10m/s以下における低線速域での、記録
感度改善とマーク長記録における非晶質マークの良好な
形成(再結晶化の抑制)を確実にするという点で、高密
度マーク長記録における特性を飛躍的に改善できる。ま
た、そのために、実際の薄膜状態での熱伝導率の重要性
に注目し、簡便にかつ高精度に実測可能な体積抵抗率に
注目している。
【0056】これは、生産管理を容易にし、量産工程に
おいて本発明の効果を確実にするために重要なことであ
る。さらにまた、凹凸ピットを利用した再生専用光記録
媒体との互換性に留意した溝形状、位相差についても、
上記先願は全く触れていない。次に、本発明のより好ま
しい設計例について説明する。すなわち、光学設計の最
適化によりコントラストを高くとりつつ、安定なトラッ
キングサーボ特性を得る。
【0057】特に、凹凸ピットにおける位相差を利用し
てコントラストおよびトラッキングサーボ信号を得るC
DやDVDと互換性を取り易い媒体を提供することであ
る。本発明においてはこのコントラストを変調度によっ
て定義する。変調度(Modulation、以下ではModと略
す)は、マーク長変調記録においてすべてのマーク長が
含まれるランダムパターンを記録した際、再生信号をD
Cカップリング状態で観測した際のエンベロープ再生信
号の振幅とその上端のレベルの比 Mod=(エンベロープ再生信号の振幅)/(エンベロープ上端レベル)(2) によって定義される。高SN(signal to noise )比を
達成するためには、この変調度を高くすることが必要で
ある。
【0058】より具体的な例としては、CD−RWある
いは書き換え可能なDVDとしてCDもしくはDVDと
の互換性を確保するためには、CDもしくはDVD規格
で定められる変調度を高くとらねばならない。CDもし
くはDVDにおける変調度とは、図2に示すようにラン
ダム信号を記録したときのDC再生信号(直流成分を含
む再生信号)において、最長マーク(CDでは11T、
DVDでは14T)のトップの信号強度Itop と、信号
振幅I 11との比I11/Itop (もしくはI14とItop
比、I14/Itop )として定義される。
【0059】信号振幅I11(もしくはI14)が上記定義
のエンベロープ再生信号の振幅に相当し、Itop がその
上端レベルに相当する。書換型CD、DVDでは変調度
に対する規定は、再生専用そのものより若干緩和されて
おり、おおむねMod>0.5であることが望ましい。
top は実際上、マーク間(結晶状態)の溝内での反射
率に相当する。一方、幅1μm程度より狭い溝内に記録
した非晶質マークを、同程度の径の集束光ビームで読み
出した場合には平面波の干渉を考慮しなければならな
い。
【0060】再生信号振幅I11(もしくはI14)は相変
化媒体の結晶部分と非晶質部分から反射光の強度差I
ref 及び位相差による反射率差Iphase の両方が問題と
なる。すなわち、非晶質マークと結晶状態の反射光の間
の位相差δを考慮する必要がある。結晶部と非晶質マー
クにおける位相の差が、ちょうどそこに深さの異なるピ
ットが存在するのと同じ効果をもたらすからである。こ
の場合の信号振幅は近似的には反射率差による振幅I
ref と位相差による振幅Iphase と上記の和として I11=Iref +Iphase (3) としてあらわされる。
【0061】図3に示すように、位相差δは、前述の多
層構成を有する記録媒体を、基板裏面側から再生光ビー
ムを入射して反射光を読み取る場合の、 δ=( 結晶領域を通過した反射波の位相) − ( 非晶質領域を通過した反射波の位相) (4) によって定義される。δが負の場合は見かけ上非晶質マ
ーク部で溝深さが深くなるのと同じ効果を有し、δが正
の場合は見かけ上非晶質マーク部で溝深さが浅くなるの
と同じ効果を有する。ただし、位相は2πの周期で既約
化できるので、−π<(位相差)<0の場合は、π<
(位相差)<2πの範囲の値に置き換えても同等である
(逆の置き換えも可)。
【0062】一方、溝記録を行う場合、下式で表される
溝深さによる位相差が存在する。 Φ=( ランド部からの反射波の位相) −( 溝部からの反射波の位相) (5) ここで、基板の屈折率をn、dを溝深さとすると具体的
には Φ=−4πnd/λ (6) である。この定義では、基板面入射光から見て、溝部の
ほうが近くにあるからΦ<0である。通常は、dは|Φ
|<πとなるように選ばれる。すなわち、−π<Φ<0
である。前述のように2πを加えても同じ結果が得られ
るから、π<Φ<2πとも記述できる。
【0063】光ビーム内で局所的な平面波の干渉は、こ
の溝深さによる位相差Φと相変化による位相差δの和
Δ、 Δ=δ+Φ=δ−4πnd/λ (7) を考慮する必要がある。従って、局所的に形成された非
晶質マークは、見かけ上溝内に位相差δを有する凹凸ピ
ットが存在する形になり、単なる結晶状態と非晶質状態
の反射率差以上にコントラストすなわち変調度がとれる
場合がある。すなわちIphase がI11を増大させる方向
に寄与する場合がある。
【0064】このための条件、すなわち溝内記録におい
てIphase >0とするためには、Δが±π近傍となるこ
とが望ましい。これは、凹凸ピットの位相差のみを利用
したコンパクトディスクで最も変調度がとれる条件と同
じである。(7)式より、Δが−πに近づくためには、
位相差δは見かけ上非晶質部で溝が深くなるように変化
することが望ましい。すなわち、 −π<δ<0 (8) が好ましい。さて、相変化方式の書き換え型光ディスク
を再生専用のCDやDVDプレーヤーやROMドライブ
とでそのまま再生できるためには、記録信号品質のみな
らずサーボ信号にも留意する必要がある。
【0065】すなわち、これら再生専用装置は、トラッ
キングサーボや所定トラックへのシークのために、凹凸
ピットから発生するサーボ信号を利用しているおり、必
ずしも溝から発生するプッシュプル信号を効率的に検出
できず、記録されたマークの位相差δを主として利用し
ている場合がある。このため、サーボ信号にも留意して
相変化による位相差δを最適化する必要がある。ここ
で、問題となるサーボ信号としてはプッシュプル信号と
ラジアルコントラストがあげられる。
【0066】ここでラジアル・コントラストRCは以下
のように定義される。 RC=2{(IL −IG )/(IL +IG )} (9) ここで、IL 、IG はそれぞれランド部、溝部にの反射
光強度である。ラジアルコントラストは、特定トラック
へのアクセスにおいて、目的トラック近傍において所定
の本数のトラックを正確に移動する精密制御において用
いられる。
【0067】反射光強度は図4に示すように、トラック
中心に対して左右に配置された4分割の光検出器の和信
号I1 +I2 =(A+C)+(B+D)ある。ここでI
1 =A+C、I2 =B+Dと定義した。実際はフォーカ
スサーボのみをかけて得られるトラック横断信号の溝部
とランド部強度を測定する。記録前後で定義されるが、
記録後のラジアル・コントラストは記録による反射率低
下部の信号強度を低域通過フィルタによって平均化した
強度ILa、IGaを用いる。
【0068】記録前の溝によるプッシュプル信号PPb
は PPb=|I1 −I2 | (10) で定義される。記録後のプッシュプル信号PPaは、や
はり、差信号の平均値(低周波フィルタ通過後の値)を
用いる。いずれも一般的な定義である。ただし、CDの
規格ではPPbをIG で、PPaをItop で規格化した
値を用いる。Itop に替わって記録後の溝の平均反射率
Gaや(IGa+ILa)/2を用いて規格化する場合もあ
る。
【0069】また、実際のサーボ回路で、プッシュプル
信号をこれらの反射率値で割る割り算回路を付加して、
記録に伴うサーボ信号の変動を小さくする工夫もある
(DPP、Devided Push-pull )。本発明では、プッシ
ュプル信号の振幅そのものをPPbもしくはPPbで表
すこととする。さらに、CDにおいては、トラック中心
から0.1μmオフセットした状態の|I1 −I2 |値
を用いているが、本発明ではPPaの絶対値自体の精度
を問題にしているわけではないので、特にこの点は区別
して考えない。
【0070】図4においてピックアップが複数の溝を横
断するときに発生する信号の模式図を図5に示す。すな
わち、フォーカスサーボのみをかけ、トラッキングサー
ボをはずしたときに光検出器からえられる出力である。
図5において|I1 −I2 |a信号は、記録後のI1
2 信号の低周波通過フィルタ(LowPassFilter 、LP
F)通過後の信号、すなわち平均値である。I1 、I2
はトラック横断時のゆっくりした変動に加えて、いずれ
のチャネルの信号も記録後には高周波成分である記録信
号により図のような変動が重畳される。また、絶対値は
異なるものの、和信号I=I1 +I2 も同様のパターン
の信号となるから、近似的にはI1 、I2 の高周波成分
の変調度はRF信号の変調度と同じとみなせる。
【0071】特に、溝深さによる位相Φと結晶と非晶質
の位相差δの和Δが±πとなる近傍では、プッシュプル
信号が得にくくなるので好ましくない。逆にΔがπ/2
付近でプッシュプル信号は最大となる。この位相差とプ
ッシュプル強度についての関係は、やはり、ピットの位
相差のみを利用したCDでのプッシュプル信号強度と同
じである。ピット位相差を利用する再生専用ドライブと
の互換性を確保するためには、変調度とサーボ信号のバ
ランスを考慮して、位相差が−π/2と−πの間(もし
くはπ3/2と2πの間)であることが望ましい。すな
わち再生専用ドライブとの互換性の観点からは −π<Δ<−π/2+π/8 (11) の範囲に設定することが望ましい。+π/8の項は、厳
密な−π/2からπ/8程度のぶれは許容範囲とみなせ
るからである。ただし、−πを越えることはプッシュプ
ル信号の極性が反転するので好ましくない。従って−π
を越えてのずれは好ましくない。
【0072】一方、記録装置内部においては、記録前後
においてプッシュプル信号やラジアルコントラスト値が
急激に変化することは、トラッキングサーボやシーク性
能を不安定にさせるので好ましくない。すなわち、あま
りδの影響が大きいと記録と同時に溝形状(特に深さ)
が変化するのと同等の効果が生じ、サーボ信号が記録前
後で大きく変化するのでサーボが不安定になり易いとい
う問題点が生じる。さて、上記の説明では、非晶質状態
の反射率低下を考慮しなかった。凹ピットと異なり、記
録マークでは位相差のみならず、マーク内の反射率も低
下するが、図3の説明において、マーク部分の反射率そ
のものが低下すれば、その部分からの光線の寄与は少な
くなるので、干渉効果そのものは相殺される。
【0073】非晶質マークを記録する場合、マーク反射
率は数%未満になるので、実際は、干渉効果は上記説明
で期待するほど顕著に表れない。したがって、プッシュ
プル信号の発生に必要な干渉効果が弱まり、位相差に関
わらず、記録後のPPaは減少する(PPa<PPb)
のが普通である。この場合、記録後のプッシュプル信号
PPaがあまりにも小さくなりすぎてトラッキングサー
ボが不安定にならにようにするためには、なおさら位相
差Δがプッシュプル信号を強める方向でなければいなら
ない。すなわち、 −π/2−π/8< Δ <−π/2+π/8 (12) になるのが望ましい。
【0074】一方、記録後の反射率低下を補うためにサ
ーボ回路側で補償する方法として、前述のように、DP
Pを使用する場合には、例えば、書き換え型CDの規格
では、反射率で規格化したプッシュプル信号PPb/I
G 、PPa/IGaを用いて、記録前後のプッシュプル変
化NPPR(Normalized Push Pull Ratio)を規定して
いる。 NPPR=(PPb/IG )/(PPa/IGa) =(PPb/PPa)(IGa/IG ) =(PPb/PPa)Itop (Itop −I11/2)/IG =(PPb/PPa)(Itop /IG )(Itop −I11/2) =k・Itop (PPb/PPa){1−(I11/Itop )/2)} =k・Itop (PPb/PPa)(1−Mod/2) (ここでk=Itop /IG ) (13)
【0075】この(13)式において、位相差δ及びΔ
にかかわる項は、PPaとModである。いずれも大き
くなればNPPRを小さく、すなわち記録前後での変化
量を少なくできる。CD−RWにおいてはNPPRは概
ね1.0程度より小さいことが好ましいとされる。Mo
d及びPPaの双方を大きくする観点からは(11)
式、PPaを優先して大きくする観点からは(12)式
が成立することが望ましい。
【0076】なお、後に詳述するDPD(Differential
Phase Detection)方式では、PPaの減少分を反射率
Ga、(ILa+IGa)/2等で規格化するので、これら
の減少効果でかえってDPP信号が記録後に大きくなり
すぎることがあるので(11)式の範囲でより−πに近
い方向で最適化することが望ましい場合もある。また、
意図的にPPbを予め小さめに設定する場合には、 −π/2<Φ<−π/8 (14a) となるように溝形状を浅めに設定する。より好ましく
は、 −π/4−π/8<Φ<−π/8 (14b) とする。
【0077】なお、記録前後における反射率変化を少な
くし、むしろ位相差変化のみによって、つまり、I
phase 成分を主体に変調度を得る場合も相変化媒体には
ありうる。この場合、記録による位相差変化δによる記
録前後のRC及びプッシュプル信号の変化を小さくする
ためには、記録後の非晶質マークにおける全位相差Δが
記録前の溝のみの位相差Φと−π/2に対して対称な
量、すなわちΔ=−π−Φになっていれば、記録前後で
の位相差の影響はほとんど同じになる。
【0078】さらにまた、−π/2を超えて−πに近づ
いていれば、位相差による変調度も十分期待できる。実
際には、やはり±π/8程度のぶれは許容されるので、 (−π−Φ)−π/8< Δ <(−π−Φ)+π/8 (15) の範囲であることが望ましい。なお、本発明をCD−R
W(記録再生波長780nm)に応用する場合、CDと
の互換性の観点からは、記録前後の溝信号、例えば記録
前後それぞれのプッシュプル信号やラジアルコントラス
ト、またその比などに配慮して溝形状等を決める必要が
ある。
【0079】例えば特開平8−212550では、溝深
さ50〜60nm、溝幅0.3〜0.6μmが好ましい
としている。しかし、本発明者らの検討によれば、上述
したような層構成においては、溝深さは20nm以上4
5nm以下が好ましい。これより深いと記録後のプッシ
ュプル信号が0.1より過剰に大きくなりやすく、ま
た、記録後のラジアルコントラスト値が0.6以上と記
録前の値0.1〜0.2に比べて過剰に大きくなり、サ
ーボの安定性に問題が生じることがわかった。
【0080】繰返しオーバーライト耐久性及び溝信号の
溝深さ依存性を考慮すれば、より好ましくは30nm以
上40nm以下である。40nmより深くすると、溝内
反射率が低くなりすぎ規格の下限値である15%を満た
しにくくなる。また、記録後のプッシュプルの振幅PP
aが大きくなり過ぎ、既存の凹凸ピット再生回路ではプ
ッシュプル検出回路のゲインが飽和してしまう。溝深さ
を浅くしすぎるとスタンパ製造や射出成形による溝形状
形成が困難になり、あるいはラジアル・コントラストや
プッシュプルの下限規格を下回る。また、溝壁による記
録層閉じ込め効果が薄れ、繰返しオーバーライトによる
劣化が促進される点でも好ましくない。従って、好まし
くは20nmより深くし、より好ましくは30nmより
深くする。
【0081】この場合、溝深さが20〜45nmの範囲
での溝による位相差Φは、−0.16πから−0.36
πであるから、溝内記録において最も振幅を大きくする
ために(7)式のΔを−π近傍とするためには、δを−
0.84πから−0.64πとなるよう層構成を調整す
ればよい。またΔを−π/2近傍とするためには、δを
−0.34πから−0.14πとすればよい。
【0082】なお、記録後のラジアル・コントラストの
絶対値が0.6以下であるという規格値から溝幅は0.
3μm以上が望ましく、ウォブルと溝形状に関したオー
バーライト耐久性の観点から、特に相変化タイプの書換
え可能なCDやDVDに応用する場合、0.6μm以下
であることが望ましい。ウオブルの存在による劣化促進
のメカニズムは必ずしも明らかではないが、記録用光ビ
ームの一部が溝の側壁に照射されやすくなるためではな
いかと考えられる。
【0083】すなわち、トラッキングサーボがかかった
集束光ビームはウオブルの蛇行には追従せず溝中心部を
直進して行く。溝壁の蛇行があれば、光ビームが、わず
かではあるが溝壁に照射されやすくなる。薄膜の密着性
が悪い溝壁部や溝角部で応力集中が起きやすい等により
繰返しオーバーライト時の熱ダメージによる劣化が起き
やすいと考えられるので、ここに光ビームの一部でも照
射されれば、劣化は促進されると考えられる。
【0084】相変化媒体の溝内記録では深溝、細溝であ
るほど耐久性が良いという傾向があるが、ウオブルが存
在する場合、溝幅が狭すぎるとかえって上述の溝壁部の
劣化現象が顕著になるため劣化が著しい。すなわち、繰
返しオーバーライト耐久性の面から溝幅に制限があり、
0.6μmより広いと相変化媒体一般の現象として、ま
た、0.4μmより狭いとウォブルの存在によるオーバ
ーライト耐久性による劣化が著しくなるので好ましくな
い。CD−RWにおいてはより好ましくは0.45μm
以上0.55μm以下である。
【0085】このように、記録された非晶質マークにお
ける位相差の制御は、今後重要になると思われるディジ
タル・ビデオ・ディスク(いわゆるDVD)の書換え可
能媒体(相変化媒体)でも有効であることは言うまでも
ない。例えば、波長630〜660nm、NA=0.6
〜0.65で記録再生を行う相変化DVDも提案されて
いるが、再生専用DVDと互換性を取るためには、ま
ず、変調度がCDと同様に少なくとも50%はあること
が必要である。
【0086】一般的に、DVDのように最短マーク長が
0.4μmといった高密度記録では、十分な再生信号振
幅とそれによる良好なジッタが選られるように、プッシ
ュプル信号振幅を小さくしてでも、Iphase 成分を有効
に使用しなければならくなっている。つまり、凹凸ピッ
トの位相差をCDよりさらに±πに近づけるよう、深め
のピットを採用せざるを得なくなっている。実際のピッ
ト深さは再生波長が650nmまで短くなるので、現行
CDとほぼ同じであり、100nm前後である。
【0087】このように、プッシュプルの小さい再生専
用ドライブでトラッキングサーボが安定にかかるために
は、DPD(Differential Phase Detection)方式での
トラッキングサーボ信号を十分得る必要があり、やはり
非晶質マークでの位相差δは式(8)に示された範囲に
あることが望ましい。ここで、DPD方式とは、図4に
示すように、ビーム進行方向(ピット配列方向)にそっ
て、4分割に配列された光検出器A、B、C、Dの出力
を用いて(B+C)信号の位相と、(A+D)信号の位
相の位相差として定義される。あるいは、TangentialPu
shPullと呼ばれる量が問題となる。これは、(C+D)
−(A+B)信号として定義される。
【0088】このような再生系との互換性を確保するた
めには、非晶質マークにおいても、凹凸ピット同様
(7)式のΔを−πに近づけ、Iphase 成分を有効に活
用すべきである。この場合は、 −π<Δ<−3/4π ( 16) の範囲であることが望ましい。DVDと再生互換性を確
保するためには、溝内記録であることが望ましいが、上
記のように溝自体のプッシュプル信号を小さ目にする必
要があり、そのためにCD−RWと同様に溝深さを浅く
して溝深さによる位相差を小さくする必要がある。記録
再生波長がCD−RWの780nmに対して、630〜
660nm程度となるからやや狙い目は浅めになるが、
やはり25から40nmの範囲であることが望ましい。
【0089】以下、記録前後の反射率差及び位相差を、
実際の多層構成においてどのように制御できるかを具体
的構成例をもって説明する。 (層構成設計例1)第一の好ましい層構成は、波長60
0以上800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を
行うものであって、下部保護層の膜厚が70nm以上1
50nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、相変化
記録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層
の膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以
上2.3以下、反射層の膜厚が40nm以上300nm
以下で体積抵抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以
下である。
【0090】図6〜10に基板上に下部保護層、記録
層、上部保護層、反射層を設けた種々の4層構成におけ
る反射率及び結晶と非晶質の位相差δの計算例を示し
た。各層の屈折率は780nmにおける実測値を用いて
いる。以下の図においては、−π≦δ≦0なるδは、2
πを加えて、π≦δ≦2πとなるように表示している。
(8)、(11)、(12)、(14)、(15)、
(16)式において、すべてこのような置き換えをすれ
ばすべての条件式がそのまま成立する。
【0091】図6〜10では例として、基板の屈折率n
sub =1.5、上下部保護層は屈折率2.10の(Zn
S)80(SiO220、記録層は結晶、非晶質状態の屈
折率がそれぞれnc =3.7−4.3i、na =4.2
−2.1iのAg5 In6 Sb60Te29、反射層は屈折
率2.1−6.0iのAl99Ta1 の場合をあげてい
る。本発明で特に好ましいとしている、Sb70Te30
晶点近傍組成に20原子%程度までの添加元素を加えた
記録層では、図6〜10とほぼ類似の光学特性が発揮さ
れる。
【0092】ただし、特定の軽元素、すなわちN、S、
O、Seを添加すると光学的影響が大きいので、これら
の元素は単独では10原子%以上添加するのは好ましく
ない。また、Au、Ag、Alを主成分とする反射層で
ある限り、反射率の絶対値は多少変化するものの、反射
層組成にもほとんど依存しない。例えば、Ag5 Ge5
Sb70Te20ではnc =2.61−4.43i、na
3.63−2.70iであり、Ge6 Sb69Te25では
c =2.34−4.06i、na =3.54−2.5
6iである。
【0093】まず図6〜9は、反射層は100nmで一
定とし、記録層は16、18、20nm、上部保護層は
30、40、50、60nmとした場合の、下部保護層
膜厚依存性とを計算している。光学計算においては、A
l合金反射層の厚みは60nm程度より厚ければ、実質
的にすべての光を反射してしまうので、100nmで一
定としても問題ない。下部保護層依存性を見る限り、通
常は振幅の反射率成分Iref 変化は小さく、変調度は分
母であるItop 、すなわち結晶状態の反射率に強く依存
する。
【0094】また、Iref を少しでも大きくとるために
は、非晶質の反射率を小さくとることが望ましい。通
常、結晶状態の反射率の極小点より、厚めの膜厚で非晶
質状態の反射率の極小点がくる。従って、Iref は結晶
状態の反射率の極小点をとる膜厚より、厚めの膜厚が望
ましい。なお、結晶状態反射率に対しては、通常、規格
もしくはドライブ側の制限で決まる許容下限が存在する
ので、あまり低すぎることは好ましくない。通常は、最
低でも10〜15%は必要とされる。
【0095】図6〜9の計算例では第1の結晶状態反射
率の極小値はd1 =60〜80nm、第2の極小値はd
2 =250〜270nmで達成される。それ以上の膜厚
では下部保護層膜厚に対して周期的に変化する。結晶状
態の反射率が極小となる下部保護層膜厚は反射率が高い
記録層であれば実質上、保護層の屈折率のみで決まる。
1 、d2 に2.1/n(nは屈折率)を掛ければ、各
屈折率における極小点膜厚がほぼ得られるが、通常n=
2.0〜2.3であるから、d1 はせいぜい85nm程
度である。
【0096】下部保護層屈折率が2.0よりも小さいと
極小点における反射率が増加して変調度が著しく低下
し、0.5以下となるのでCDやDVDと再生互換を確
保するためには好ましくない。逆に、2.3より大とす
ると、極小点の反射率が低くなりすぎ10%を達成でき
ず、フォーカスやトラッキングサーボが困難になるので
好ましくない。さて、以下では第一の反射率極小点付近
における位相差δの下部保護層膜厚依存性に注目する。
【0097】図6や図7では、下部保護層膜厚が0から
厚くなるにつれ、位相差2π(=0)から単調に減少
し、反射率の極小点近傍で、すべての位相差がπを横切
って溝有利の位相差からランド有利の位相差に急激に変
化している。図10に下部保護層95nm、上部保護層
40nmの場合の記録層膜厚依存性を示した。記録層1
0〜20nmの付近で急激に位相差δが変化しており、
(8)式の条件(ここではπ<δ<2π)を成立させる
には記録層膜厚が概ね17nm以上でなければならない
ことがわかる。
【0098】この急激な変化のポイントは、記録層膜厚
が薄いほど薄い下部保護層膜厚にシフトし、上部保護層
膜厚が30nm以下では、記録層膜厚25nm以下の範
囲で、Iref が大きくなるd1 より厚めの膜厚範囲で
は、(8)式を満たすことは困難である。さらにまた、
上部保護層膜厚30nm以下では、記録層膜厚20〜2
5nm程度においては、Iref の最適範囲において、こ
のような急激なδ変化がありうるが、製造ばらつきによ
って、ディスクごとの変調度や記録後のプッシュプル信
号にばらつきを生じるので、製造マージンの観点から望
ましくない。
【0099】少なくとも、目標とする下部保護層膜厚の
±5%以内、より好ましくは±10%以内の範囲で、δ
が安定して溝有利を維持する、すなわちπ<δ<2πで
あることが望ましい。以上の観点から、結晶状態反射率
top の下部保護層D1 依存性において、 ∂Rtop /∂D1 >0 (17) なる部分を用いることが好ましいことがわかる。なお、
生産性の観点からは下部保護層膜厚は150nm以下に
とどめるのが望ましい。なぜなら、現在、誘電体保護層
のスパッタ法による成膜速度は高々15nm/秒であ
り、その成膜に10秒以上かけることはコストを上昇さ
せるからである。
【0100】また、膜厚変動の許容値が厳しくなるので
生産上好ましくない。即ち、図8からわかるように、反
射率は所望の膜厚d0 からΔdずれると、第1の極小値
1近傍であろうが、第2の極小値d2 近傍であろうが
おなじだけ変動する。一方、製造上膜厚分布はd0 に対
して何%かで決まり、通常はd0 ±2〜3%が均一性の
限度である。従って、d0 が薄いほど膜厚の変動幅Δd
は小さくなり、ディスク面内あるいはディスク間の反射
率変動を抑制出来るので有利である。
【0101】基板自公転機構を有しない安価な静止対向
タイプのスパッタ装置では、結果として大量生産可能な
第1の極小値d1 近傍の膜厚を採用せざるを得ない。下
部保護層膜厚を150nmをこえて厚くしないとするこ
とのもう一つの効果は、スパッタ成膜時における発熱の
抑制である。DVDのように厚さ0.6mmのプラスチ
ック(特にポリカーボネート)基板上に、相変化媒体を
形成しようとする場合、スパッタ成膜時の発熱による基
板の変形が問題となる。
【0102】150nmという膜厚は、ちょうど反射率
が極大となる膜厚付近であり、これを越えて厚い下部保
護層を採用することは、反射率的にも、生産性の観点か
らもメリットはない。また、150nmという膜厚は、
特に屈折率2.0〜2.3の下部保護層を用いた場合、
ちょうど1波長相当の膜厚であり、膜厚0と光学的に同
等になる点でもある。光学的に同等ならば、不必要に厚
膜をつけて、製造上の問題を大きくする必要はないわけ
である。
【0103】図10の記録層依存性は上部保護層60n
mまでの範囲では、若干薄い記録層側にシフトする。位
相差の変動が少なく、かつ、溝有利であるという面から
は、記録層膜厚は20nm以上が望ましいが、本発明者
らの検討によれば、記録層膜厚が20nmを越すと繰返
しオーバーライト耐久性が悪化する。CD−RWとして
使用する場合、線速2.4m/sのオーバーライトでは
30nmより記録層膜厚が厚いと、CD−RWとしての
規格上1000回の耐久性が満足されず不適当であっ
た。このため、可能な限り25nm以下、より好ましく
は20nm以下の記録層膜厚で、位相差δを有利になる
ようにしたい。
【0104】図6〜9の順に、上部保護層膜厚が厚くな
った場合を想定しているが、上部保護層膜厚が厚いほ
ど、πを横切る急激な位相差変化のポイントが厚い下部
保護層膜厚に移動しており、上部保護層膜厚40nmで
は、記録層20nmにおいて常に溝有利なままである。
上部保護層膜厚が厚くなるほど、この傾向は顕著であ
り、60nmでは16nm以上の記録層膜厚では、すべ
ての下部保護層膜厚で、溝有利の位相差をとることがわ
かる。このように、本発明の一つの要件である、30n
m以上と厚い上部保護層は、位相差δを有効に使用する
ために必要な要件であることがわかる。
【0105】一方、上部保護層膜厚が60nmより厚い
と、繰返しオーバーライト耐久性は悪化しやすい。上部
保護層が厚くなると、保護層自体の熱膨張による体積変
形量が大きくなったり、それ自体の熱容量が大きくなっ
て、冷却速度が遅くなり、非晶質マーク形成が阻害され
たり、蓄熱による熱ダメージが増大するためであると考
えられる。また、上部保護層膜厚が60nmより厚い
と、本発明の低体積抵抗率の反射層を用いても放熱効果
が小さい。
【0106】本発明においては、金属で最も体積抵抗率
の低いAg系反射層も検討したが、記録層膜厚を10〜
15nmと薄くしないと効果は得られにくかった。15
nm以下の記録層膜厚については、成膜初期の均一性等
にも留意が必要で、できれば15nm以上の膜厚で最適
化することが望ましい。さて、繰返しオーバーライト耐
久性を考慮した場合、記録層膜厚D2 及び上部保護層膜
厚D3 は薄い方が好ましい。しかし、ただ、D2 、D3
を薄くするのでは位相差δが(8)式の範囲に入らな
い。
【0107】そこで、D3 を厚くしたときにはD2 を薄
くすれば、繰返しオーバーライト耐久性を悪化させるこ
となく、δを一定の値に維持した層構成設計ができるこ
とが図6〜9の計算例よりわかる。より具体的には、す
でに述べた、70≦D1 ≦150nm、15≦D2 ≦2
0nm、30≦D3 ≦60nm、及び(17)式の制限
のもとで(D3 、D2 )の組み合わせが、 −5D2 +120≦ D3 ≦−5D2 +140 (18) の関係を満たすことが望ましい。
【0108】そして、70≦D1 ≦150nmの範囲で
δが少なくとも(8)式を満たすように選べば良い。本
層構成はとりわけ、未記録すなわち結晶状態の反射率を
15〜20%に設定するCD−RWのような記録媒体に
おいて有用である。特に、(8)、(11)、(1
2)、(15)式のいずれの条件で位相差を制御するか
は、個々の商品設計の範囲であるが、相変化による位相
差δを積極的に活用するためには、本発明要件の一つで
ある、記録層膜厚10〜30nmに対しては、上部保護
層膜厚を30nm以上、より好ましくは60nmするこ
とが望ましいことがわかる。
【0109】この範囲の膜厚を用いれば、Iref が最大
となる非晶質及び結晶状態の反射率極小点付近で、δが
π<δ<2πの領域から0<δ<πの領域に急激に位相
変化することを回避でき、製造時における膜厚マージン
が確保できる上に、繰返しオーバーライト耐久性にも問
題ない層構成設計が可能である。なお、記録層膜厚、及
び上部保護層膜厚の上限値と繰返しオーバーライト耐久
性との関係については、実施例においてより具体的に述
べる。
【0110】(層構成設計例2)図11、12は、設計
例1と同様の材料を用いた場合の、波長650nmにお
ける計算例である。各層の屈折率は波長650nmにお
ける実測値を用いている。記録層は18nm、反射層は
100nmで一定とした。図11、12はそれぞれ上部
保護層20nm及び40nmの場合である。650nm
というDVDに対応した波長においてもやはり、上部保
護層が厚い場合にはδが(8)式を満足しうることがわ
かる。なお、650nmにおける計算例で用いた光学定
数は、Al合金反射層1.69−5.34i、ZnS:
SiO2 保護層2.12−0i、記録層(結晶状態)n
c =2.8−4.1i、記録層(非晶質状態)na
3.7−2.4i、基板nsub =1.56−0iで実測
値である。
【0111】(層構成設計例3)設計例1においては、
繰返しオーバーライト耐久性、生産性、及び位相差δの
観点から、下部保護層膜厚として(17)式の領域を用
いることが望ましいとした。ここでは、上部保護層が概
ね40nm以上であれば記録層膜厚が20nmより薄い
場合Rtop の極小点より厚い下部保護層を用いている。
しかし、上部保護層が概ね40nmより厚い場合には、
どんな下部保護層膜厚であっても位相差δが(8)式を
満たすような記録層膜厚が10nm以上30nm以下の
範囲に存在する。
【0112】またこの場合、図7〜9でわかるように、
結晶反射率の極小点以下である程度の位相差δ(π<δ
<2π)が安定的に選られるため、生産における膜厚変
動でδがばらつくのを防ぐ上で好ましい状況となる。し
かし、前述のようにそのように薄い下部保護層膜厚で
は、繰返しオーバーライトによる基板変形が著しいため
に、このままでは用いられない。
【0113】第3の好ましい層構成は、波長600以上
800nm以下の光ビームで記録・再生・消去を行うも
のであって、下部保護層が2層からなり、第1下部保護
層の膜厚が20nm以上70nm以下で屈折率が基板の
屈折率nsub に対してnsub±0.1の範囲にあり、第
2下部保護層の膜厚が70nm以下で屈折率が2.0以
上2.3以下であり、相変化記録層の膜厚が15nm以
上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm以上60
nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、反射層の膜
厚が40nm以上300nm以下で体積抵抗率が20n
Ω・m以上150nΩ・m以下である。
【0114】すなわち、 ∂Rtop /∂D12<0 (19) なる領域を有効活用するために、図13に示すように第
1下部保護層2a(厚さD11)、第2下部保護層2b
(厚さD12)と下部保護層を2層化する。ここで第1下
部保護層2aは、基板とほぼ同じ屈折率を有し、単に基
板の熱変形を抑制する機械的・熱的保護層として機能
し、光学的には基板そのものとみなせる。
【0115】基板屈折率をnsub とするとき、第1保護
層の屈折率はnsub の±0.1以内であること望まし
く、より好ましくは±0.05以内である。第2保護層
2bは光学的な保護層とみなされ、図6〜9及び図1
1、12における下部保護層膜厚依存性においては、第
2保護層膜厚D12のみを考慮すればよい。D12は(1
9)式の範囲で光学特性、すなわち反射率と位相差δを
主に注目して選定すればよい。
【0116】上部保護層膜厚D3 及び記録層膜厚D2
ついてはやはり、(18)式を満たすことが繰返しオー
バーライト耐久性を維持する上で好ましい。また、2層
の下部保護層全体の膜厚はやはり70nm以上150n
m以下とすることが、繰返しオーバーライト耐久性、生
産性の観点から好ましい。このような下部保護層2層化
は、(17)及び(18)式の条件下での層構成設計
で、基板変形をさらに抑制したい場合に用いることがで
きる。通常用いられるガラスやプラスチック基板の屈折
率は1.4〜1.6程度である。基板とほぼ同等の屈折
率を有し、かつ機械的強度にすぐれる保護層材料として
は、具体的にはSiC−SiO2 、SiC−SiO2
MgF2 、ZnS−SiO2 −MgF2 混合膜である。
【0117】ここで、低屈折率化のために用いるMgF
2 はCaF2 、LiF2 等で置換することも可能であ
る。また、ZnSはZnSeや希土類の硫化物やセレン
化物に置換可能である。より具体的に、ポリカーボネー
ト樹脂基板と同等の屈折率(1.55)を与えるものと
して、(SiC)38(SiO257(Y235 (屈
折率n=1.57)や(SiC)19(SiO25 (M
gF276(n=1.49)が挙げられる(いずれもモ
ル%)。
【0118】これらの材料は、混合比を調整すること
で、屈折率のさらなる微調整が可能である。なお相変化
による位相差δは、上記のように層構成(各層厚み)と
各層の屈折率から計算によって推定できる。また、平面
において結晶状態と非晶質状態の2つが明確な境界を有
して接していれば、位相差光学顕微鏡で見積もることも
できる。
【0119】次に、本発明の媒体に用いる好ましい記録
法について説明する。以下の記録方法を併せ用いること
で、記録層の再凝固時の冷却速度を正確に制御し、より
一層広い線速範囲および記録パワーで正確なマーク長記
録を行うことができる。本発明の相変化媒体はこれまで
GeTe−Sb2 Te3 擬似2元合金系で用いられてき
た記録パワーPwと消去パワーPeの2値で変調する場
合よりも、オフパルス区間を設けることが望ましい。
【0120】2値変調のオーバーライトも可能ではある
が、本発明においては図15に示すような3値変調方式
を用いることで、パワーマージン、記録時線速マージン
を広げることができる。長さnT(Tは基準クロック周
期、nは自然数)のマークを形成する際には、時間nT
を、以下のようにn−k個にパルス分割し、 α1 T、β1 T、α2 T、β2 T、・・・・、αm T、
βm T、 (但しn−j=α1 +β1 +・・・・・+αm +β
m (0≦j≦2)、m=n−k(k=0、1、2)かつ
min −k≧1) αi T(1≦i≦m)なる時間に記録層を溶融させるに
足る記録パワーPw(>Pe)を照射し、βi T(1≦
i≦m)なる時間には、0<Pb≦0.5Pe(ただ
し、βm Tにおいては、0<Pb≦Peとなりうる)な
るバイアスパワーPbを照射してオーバーライトする。
【0121】図16に(a)Pb=Peとした場合と、
(b)Pb=0(極端な場合)とした場合の記録層の温
度変化を模式的に示した。3個に分割された分割パルス
の、1番目のパルスP1と2番目のパルスP2が照射さ
れる間の位置を想定している。図16(a)では後続の
記録パルスによる加熱の影響が前方に及ぶために、1番
目の記録パルス照射後の冷却速度が遅く、かつオフパル
ス区間でもPeが照射されるため、オフパルス区間での
温度降下で到達する最低温度TLが融点近傍に留まって
いる。
【0122】一方、図16(b)では、オフパルス区間
のPbがほとんど0のため、TLは融点から十分下がっ
た点まで下がり、かつ、途中の冷却速度も大きい。非晶
質マークは1番目のパルス照射時に溶解し、その後のオ
フパルス時の急冷によって形成される。上記のm、j、
αi 、βi で規定されるパルスストラテジーを線速によ
って変更することなく、クロック周期Tのみをおおむね
線速に反比例させて記録密度を一定に保てることが望ま
しい。
【0123】このパルスストラテジーを一定にして、少
なくとも記録可能な線速の最低値と最大値が2倍以上は
確保するできるのが本発明の付加的な効果である。P
w、Pe、Pbを線速に応じて変化させることは、パル
スストラテジーとは別の問題であり、適宜行われる。な
ぜなら、パワーの変更は分割パルス発生回路とは無関係
に行われるからである。
【0124】特に、本発明の具体的な応用例としてのC
D−RWにおいては、図17に示すように、nTマーク
(n=3〜11の整数)の記録に際して、n−1個の記
録パルスに分割し、1番目の記録パルスを1.0Tと
し、後続の記録パルスをすべて0.5Tとする。またバ
イアスパワーPbを照射する時間(オフパルス時間)は
すべて0.5Tとする。
【0125】特に、本発明記録層に対してはオフパルス
時のバイアスPbを0<Pb≦0.5Peなるように十
分低くとることが必要である。少なくとも線速2.4m
/sから5.6m/sの範囲(コンパクトディスクにお
ける2倍速程度の速度)においてEFM変調された非晶
質マークを形成する際に、マーク間では非晶質マークを
再結晶化しうる消去パワーPeを照射し、長さnT(n
は3〜11までの整数)のマークを形成する際には、上
記パルスストラテジーにおいて、m=n−1、α1
0.1〜1.5、αi =0.1〜0.6(2≦i≦
m)、βi =0.4〜0.9(1≦i≦m)とし、αi
T(1≦i≦m)なる時間には記録層を溶融させるにた
る記録パワーPw(>Pe)を照射し、βi T(1≦i
≦m)なる時間には0<Pb≦0.5Peなるバイアス
パワーPbを照射するのがよい(ただし、i=mにおい
ては0<Pb≦Peもしくは0≦βm <0.5となりう
る)。
【0126】なお、このパルスストラテジーは後述の実
施例に示されているように、本発明層構成を用いること
により、2〜4倍速でもオーバーライト可能な互換性の
高いCD−RW媒体が得られる。すなわち、同じパルス
ストラテジーで2および4倍速記録ができる。特に、4
倍速においては、上記パルスストラテジーを用いた場
合、各nTマーク間のマーク長をより厳密に調整するた
め、最後のオフパルス区間βm Tの長さのみを、各マー
ク長もしくは後続マーク間長または後続マーク長の組み
合わせによって、微調整することも有効である。これは
図15においてn−jを前後のマーク長やマーク間長に
応じて微調整することを意味する。極端なケースとして
最後のβm =0とする場合もある。
【0127】
【実施例】以下に実施例により本発明を説明するが、本
発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定され
るものではない。以下の実施例において、溝形状は、光
学回折法を用い、U溝近似により求めた。もちろん、走
査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡で溝形状を実測
しても良い。この場合、溝幅は、溝深さの半分の位置に
おける溝幅とする。各層組成は蛍光X線分析、原子吸光
分析、X線励起光電子分光法等を組み合わせて確認し
た。膜厚は、蛍光X線強度を、触針計で測定した膜厚で
校正して求めた。
【0128】保護層の膜密度は、基板上に数百nm程度
に厚く設けた場合の重量変化から求めた。反射層の面積
抵抗率は4探針法抵抗計{Loresta FP(商品名)、三菱
油化(現ダイアインスツルメント)社製}で測定した。
反射層の抵抗率は、ディスク基板に下部保護層、記録
層、上部保護層、反射層を形成したのち測定した。ある
いは、ガラスもしくはポリカーボネート製ディスク基板
に反射層を成膜して測定した。ガラス、ポリカーボネー
トや誘電体保護層は絶縁物であるため、抵抗率測定に影
響はない。また、ディスク基板は直径120mmで、本
測定においては実質的に無限大の面積とみなせる。抵抗
値Rから、下記式に基づいて面積抵抗率ρS及び体積抵
抗率ρVを計算した。 ρS=F・R (20) ρV=ρS・t (21)
【0129】ここで、tは膜厚、Fは測定する薄膜領域
の形状で決まる補正係数であり、4.3〜4.5の値を
とる。ここでは、4.4とした。成膜直後の記録層は非
晶質であり、バルクレーザーで初期化を行った。すなわ
ち、長軸約70μm、短軸約1.3μmに集光した波長
830nmのレーザービームをパワー500〜600m
W、線速3.5m/sで照射して全面結晶化させ初期状
態(未記録状態)とした。このパワーでは、記録層はい
ったん溶融して再凝固する再に結晶化していると考えら
れる。
【0130】記録再生の評価にはパルステック製DDU
1000評価機を用いた。光ヘッドの波長は780n
m、NAは0.55である。記録線速は1.2〜4.8
m/sとし、再生速度は2.4m/sとした。なお、1
倍速、2倍速、3倍速、4倍速とはそれぞれ1.2m/
s、2.4m/s、3.6m/s、4.8m/sを指
す。
【0131】記録には図17に示したパルスストラテジ
ーを用いた。ただし、線速2.8m/s以上では、マー
ク最後端のオフパルス区間βm TにおいてPb=Peと
した場合がある。Pbはすべての線速において0.8m
Wで一定とした。2倍速でのクロック周期は115ns
ecであり、線速切り替え時にはクロック周期Tを線速
に反比例させた。再生速度は2倍速であり、ジッタの許
容値はCD規格で定められた17.5nsecとした。
オーバーライト耐久性の評価は、2倍速で繰返しオーバ
ーライトしたときに3Tマークのジッタが17.5ns
ec以下に保たれる回数を目安とした。
【0132】(実施例1)基板上に、下部保護層(Zn
S)80(SiO220を100nm、記録層Ag 5 In
5 Sb61.5Te28.5を18nm、上部保護層(ZnS)
80(SiO220を50nm、反射層Al99Ta1 合金
を200nm設けた。すべての膜はスパッタ法で真空を
解除せずに作成した。基板は厚さ1.2mmのポリカー
ボネート基板で、特に断らない限り、射出成形により
1.6μmピッチで幅0.53μm、深さ32nmの溝
が形成されている。記録はこの溝内に行った。
【0133】反射層は、到達真空度2×10-4Pa以
下、Ar圧0.54Pa、成膜レート1.3nm/秒で
成膜した。体積抵抗率は92nΩ・m、面積抵抗率は
0.46Ω/□であった。酸素、窒素等の不純物はX線
励起光電子分光での検出感度以下であった。全部あわせ
てもほぼ1原子%以下であると見なせる。保護層の膜密
度は3.50g/cm3 で理論的バルク密度3.72g
/cm3の94%であった。
【0134】本媒体に対し、記録線速マージンおよび記
録パワーマージンを評価した。Pe/Pw=0.5で一
定とし、Pwと線速を変化させて3Tマークジッタを測
定した。なお、記録は図17に示すパルスストラテジー
を用いたが、線速2.8m/s以上ではβm Tにおいて
Pb=Peとしている。また、媒体はあらかじめEFM
ランダム信号を10回オーバーライトしたのち、本測定
に用いた。
【0135】結果を図18に示した(以後このような図
を等高線図と呼ぶ)。低ジッタの領域が広いほど、線速
マージンと記録パワーマージンが広いことを意味する。
図18において、線速2.4m/s、記録パワー12m
Wを中心に線速4.8m/sまで広いマージンが確保で
きているのがわかる。なお、線速1.2m/sで急激に
ジッタが悪化したが、パルスストラテジーにおいて記録
パルス幅が1T、0.5T、0.5T、…(先頭パルス
のみ1Tで2番目以降のパルス0.5T)となっている
のを、1T、0.2T、0.2T、…(ただし、各記録
パルスの先頭位置は同じ)と変更することで、良好なジ
ッタが得られた。
【0136】次に、2倍速、4倍速における変調度と3
Tマークジッタの記録パワー依存性を評価した。この評
価では、図17に示すパルスストラテジーを厳密に用い
て記録し、2倍速で再生し測定を行った。また、媒体は
あらかじめ所定の条件で10回オーバーライトしたの
ち、本測定に用いた。
【0137】2倍速においてPe/Pw=0.5とした
場合の測定結果を図19に、4倍速においてPe=8m
Wで一定とした場合の測定結果を図20に示す。4倍速
においてPe/Pw=0.5とし、βm =0とした場合
の測定結果を図21に示す。2倍速、4倍速において、
変調度、3Tマークジッタともに広い記録パワーマージ
ンを有することがわかる。なお、4倍速でのジッタが高
めであるが、これは、本発明者らが使用したEFM信号
発生信号源の高周波数での特性が悪いためで、それを差
し引くとさらに、3〜5nsec良好なジッタが得られ
ることがわかっている。
【0138】(実施例2)実施例1の基板及び層構成に
おいて、記録層組成をAg5 In5 Sb61Te29、Ag
5 In5 Sb61.5Te28.5、Ag5 In5 Sb62Te28
の3種類とし、反射層を厚さ80nmの純Al(純度9
9.99%)として同様にディスクを作成した。反射層
は、到達真空度2×10-4Pa以下、Ar圧0.54P
a、成膜レート1.4nm/秒でスパッタ成膜した。体
積抵抗率は46nΩ・m、面積抵抗率は0.58Ω/□
であった。バルクイレーザで初期化を行った。
【0139】本媒体に対し、記録線速マージンおよび記
録パワーマージンを評価した。図22(a)、(b)、
(c)にそれぞれ記録層組成Ag5 In5 Sb61
29、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5、Ag5 In5
62Te28の3Tマークジッタの等高線図を示す。Sb
/Te比が大きくなるにつれて最小のジッタが得られる
最適線速は高線速側にシフトするものの、広線速範囲、
広記録パワー範囲において良好なジッタが得られてい
る。Sb/Te比をさらに増やして10m/s程度の高
線速記録に対応させてもこの傾向は同じで、最高線速/
最低線速の比2倍以上のジッタマージンが得られる。
【0140】(実施例3)反射層を厚さ80nmの純A
gとした以外は実施例1と同様にディスクを作成した。
反射層は、到達真空度3×10-4Pa以下、Ar圧1.
0Pa、成膜レート20nm/秒でスパッタ成膜した。
体積抵抗率は32nΩ・m、面積抵抗率は0.4Ω/□
であった。
【0141】バルクイレーザで初期化を行った。本媒体
に対し、記録線速マージンおよび記録パワーマージンを
評価した。図23に3Tマークジッタの等高線図を示し
た。ジッタマージンの中心そのものは低線速側に移った
が、1倍速から3倍速にかけて広範なマージンを有する
ことがわかる。
【0142】(実施例4)実施例1の基板及び層構成に
おいて、反射層をAl99Ta1 とAgの2層とし、記録
層膜厚、上部保護層膜厚を種々組み合わせて、以下の4
種の層構成を用意した。AlTa及びAg反射層の成膜
条件はそれぞれ、実施例1及び実施例3と同じである。 (a)下部保護層(ZnS)80(SiO220を110
nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を16n
m、上部保護層(ZnS)80(SiO220を50nm
とし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層
と厚さ90nmの純Agの2層とした。
【0143】(b)下部保護層(ZnS)80(SiO
220を120nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5
録層を14nm、上部保護層(ZnS)80(SiO2
20を60nmとし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta
1 合金反射層と厚さ110nmの純Agの2層とした。 (c)下部保護層(ZnS)80(SiO220を110
nm、Ag5 In5 Sb61.5Te28.5記録層を18n
m、上部保護層(ZnS)80(SiO220を50nm
とし、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層
と厚さ90nmの純Agの2層とした。 (d)下部保護層(ZnS)80(SiO220を90n
m、Ag5 In5 Sb 61.5Te28.5記録層を18nm、
上部保護層(ZnS)80(SiO220を40nmと
し、反射層は厚さ21nmのAl99Ta1 合金反射層と
厚さ50nmの純Agの2層とした。
【0144】図24(a)、(b)、(c)、(d)に
それぞれ実施例4(a)、(b)、(c)、(d)の3
Tマークジッタの等高線図を示す。いずれにおいても、
2〜4倍速で広範な線速マージン及び記録パワーマージ
ンが得られた。なお、Ag単層反射層では繰返しオーバ
ーライト耐久性が1000回程度であったのが、この2
層構成反射層を用いると5000回程度まで改善され
た。
【0145】(実施例5)反射層を厚さ180nmの、
Siを0.66%(重量%)、Cuを0.34%、Mg
を0.9%、Crを0.08%含有するAl合金とした
以外は実施例1と同様にディスクを作成した。反射層
は、到達真空度4×10-4Pa以下、Ar圧1.0P
a、成膜レート20nm/秒でスパッタ成膜した。体積
抵抗率は88nΩ・m、面積抵抗率は0.48Ω/□で
あった。バルクイレーザで初期化を行った。本媒体にお
いても、実施例1と同様の線速・記録パワーマージンが
確保できた。
【0146】(比較例1、2、3)反射層をAl98Ta
2 とし膜厚400nmとした以外は実施例1と同様にデ
ィスクを作成した。(比較例1)この組成ではほとんど
の成膜条件において150nΩ・m以上の高い体積抵抗
率であった。特に、成膜レート2nm/秒以下では、非
晶質成分が多く含まれ、体積抵抗率が増加し170〜2
20nΩ・mとなった。体積抵抗率190nΩ・mであ
った。面積抵抗率は0.48Ω/□で、平面方向の放熱
効果は十分であると考えられるが、記録感度が1〜2m
W悪くなった。単位面積当たりの反射層の熱容量が大き
くなりすぎ、その加熱に余分なエネルギーが消費される
ためと考えられる。
【0147】また、厚い反射層が冷却されるのに時間が
かかるため、線速約3m/s以下での冷却が不十分で再
結晶化が著しく、良好な非晶質マークが形成できず信号
振幅も小さくなってしまった。また、線速4.8m/s
でもジッタは改善されなかった。同じ反射層で膜厚16
0nm(比較例2)としたところ、同等の記録感度が得
られ、また、4.8m/sではジッタが改善された。し
かし、今度は面積抵抗率が大きく、平面方向の放熱が不
十分で2.4m/sにおける再結晶化が著しく、非晶質
マークの形成が不十分であった。
【0148】膜厚をさらに薄くしても2.4m/sでの
再結晶化は抑制できなかった。なお、図25(a)、
(b)に反射層膜厚が400nm(比較例1)と160
nm(比較例2)の場合の3Tジッタ等高線図を示し
た。いずれの場合も2倍速でのボトムジッタが実施例1
に比較して2〜4nsec高めである。この理由は、上
述のように、特に、低線速において、十分な記録層冷却
速度が得られておらず、非晶質マークの一部が再結晶化
されるため、信号振幅が低下したり、歪んだりしている
ためである。
【0149】次に、線速2.4m/sで非晶質マークが
得られるよう、比較例1において記録層組成をAg5
5 Sb59.5Te30.5とSb/Te比を低くし結晶化速
度を落とした媒体(比較例3)を用意した。反射層膜厚
200nmにおいて線速2.4m/sでは記録パワー1
0〜16mWにおいて良好なジッタが得られた。しか
し、今度は線速4.8m/sでの消去が不十分で、10
回オーバーライト後にはほとんどの記録パワーでジッタ
が17.5nsec以上あった。
【0150】(比較例4、5)実施例1の層構成におい
て下部保護層膜厚を80nm、記録層を20nmのAg
5 In5 Sb59.5Te30.5、上部保護層膜厚を30n
m、反射層を160nmのAl98Ta2 とし(比較例
4)、線速マージン及び記録パワーマージンを評価し
た。上部保護層を薄くしたことによる反射率増加を相殺
し、光学的に同等の干渉構造を得るために、下部保護層
膜厚を若干薄めにした。この程度の下部保護層膜厚の差
は熱的にはなんら変化をもたらさず、実質的に上部保護
層膜厚の差が熱拡散を支配している。
【0151】図26に3Tマークジッタの等高線図を示
す。4倍速では全くマージンがないことがわかる。ま
た、比較例4において記録層組成をAg5 In5 Sb
61.5Te28.5として4倍速での消去特性を改善した媒体
を作製した(比較例5)が、再結晶化のため2倍速での
非晶質マーク形成が不十分であった。
【0152】(実施例6)実施例1の層構成において下
部保護層膜厚を100nm、記録層を18nmのAg9
Ge6 Sb67Te18、上部保護層膜厚を40nm、反射
層を250nmのAl99Ta1 とし、ディスクを作成し
た。各層の成膜条件は実施例1と同様である。図27に
3Tマークジッタの等高線図を示す。実施例1とほぼ同
様の広い線速及び記録パワーマージンが得られた。
【0153】(実施例7)記録層を厚さ18nmのAg
5 Sn6 Sb66Te23、反射層をAl99.5Ta0. 5 とし
た以外は、実施例6と全く同様の層構成でディスクを作
成した。反射層の体積抵抗率は55nΩ・mであった。
図28に3Tマークジッタの等高線図を示す。1〜4倍
速にかけて幅広い線速・記録パワーマージンが得られ
た。
【0154】(実施例8) (a)実施例1の層構成において下部保護層膜厚を10
0nm、記録層を20nmのAg5 In3 Ge2 Sb68
Te28、上部保護層膜厚を30nm、反射層を160n
mのAl99Ta1 とし、ディスクを作成した。各層の成
膜条件は実施例1と同様である。 (b)実施例1の層構成において下部保護層膜厚を10
3nm、記録層を16nmのAg5 In3 Ge2 Sb64
Te26、上部保護層膜厚を42nm、反射層を200n
mのAl99.5Ta0.5 とし、ディスクを作成した。各層
の成膜条件は実施例1と同様である。図29(a)、
(b)に3Tマークジッタの等高線図を示す。1〜4倍
速にかけて幅広い線速・記録パワーマージンが得られ
た。上部保護層膜厚が厚い(b)のほうが(a)より広
い線速マージンが得られた。
【0155】(実施例9)表−1に示す層構成を有する
ディスクを作製した。基板は実施例1と同じものを用い
た。反射層はAl99Ta1 で膜厚160nmとした。参
考として上部保護層38nmの場合も記載した。
【0156】
【表1】
【0157】実施例1と同様に図17の記録パルススト
ラテジーで2.4m/sにおいて記録を行った。変調度
は記録パワーに対してあるパワー以上でほぼ一定になる
(ex.図19)。そこで、記録パワー依存性において
変調度がほぼ一定になり、ジッタが最小となる記録パワ
ー(最適記録パワー)での変調度を比較した。変調度、
top 、PPb/PPa、NPPR、及び計算上の位相
差δを同表中にまとめた。また、表−1において、2.
4m/sにおける最適記録パワーでの繰返しオーバーラ
イト耐久性を測定した。
【0158】CD規格に基づいて、1000回後のジッ
タが15nsec以下の場合を○、15〜18nsec
を△、18nsec以上を▲、特に500回以下で20
nsec以上となるような場合を×で表した。上部保護
層30nmの場合には繰返しオーバーライト耐久性に有
利な80nm以上の下部保護層膜厚で、記録によるプッ
シュプルの変化が大きく、PPb/PPa>1.6ある
いは、NPPR>1.0となり、記録後のサーボ特性が
不安定であった。
【0159】図6に示すように、下部保護層膜厚が75
nmから95nmに増加するに伴い、δが急激に変化し
0<δ<πの領域に入るためである。上部保護層が38
nmの時には、特に記録層膜厚が25nmより厚いと繰
返しオーバーライト特性の劣化が比較的早く、記録層膜
厚35nmでは500回以下で著しく劣化した。
【0160】(実施例10)本発明の媒体にCDとの互
換性を持たせるためには、トラックピッチ1.6μm程
度、溝幅0.4〜0.5μm、溝間幅1.2〜1.1μ
mとし、この溝内に記録を行う。この場合、溝間におけ
る非晶質マークの幅が若干広めになり、見かけ上反射率
起因の変調度が大きくなりうる。この非対称性を打ち消
して、なおかつ溝内記録の変調度が溝間記録の変調度よ
り大きくなるほど、非晶質マークが溝内記録に有利な位
相差δを有することになる。
【0161】すなわち、再生信号の変調度を(2)式の
ように規定し、ModG およびModL をそれぞれ溝記
録及び溝間記録における変調度とするとき、 ModG −ModL >0 (22a) ModG >0.5 (22b) であれば、δは(8)式を満足していると考えられる。
ここで変調度は実施例6のように、記録パワーに対して
飽和してほぼ一定となり、ジッタが最小となる記録パワ
ー(最適記録パワー)での測定値を用いた。溝内と溝間
での最適記録パワーの差は極めて小さく、同一の記録パ
ワーにて比較を行う。
【0162】なお、トラックピッチにかかわらず、おお
むね溝幅≦溝間幅なる溝形状を有する場合に、溝内記録
の変調度>溝間記録の変調度であれば、位相差δが溝幅
記録に有利であると判定できる。さらに、変調度の絶対
値そのものは振幅の反射率差成分Iref 及び再生系に依
存するが、変調度の差 ModR =(ModG −ModL )/(ModG +ModL ) (23) に注目して規格化すれば再生系及び反射率差に依存せ
ず、位相差の影響を把握できる。
【0163】以下では、本発明の媒体において各層厚み
を表−2のように種々変化させて図6〜9で計算される
ような範囲で、位相差δを変化させる実験を行った。溝
幅0.5μm、溝深さ35nmとした。溝による位相差
Φ=0.28πである。
【0164】
【表2】
【0165】記録再生にはパルステック社製DDU10
00のNA=0.5、波長780nmのシステムを用い
た。図17のパルスストラテジーで、線速2.4m/s
でPw/Pe=13mW/6.5mWとし、EFMラン
ダムパターンの記録を行った。本実施例において上下の
保護層は(ZnS)80(SiO220、記録層はAg 5
In5 Sb60Te30であり、反射層はAl99Ta1 (4
0nm)/純Ag(60nm)の2層構成を用いた。各
層成膜条件は実施例4と同じである。
【0166】熱的には実施例4とほとんど同等であり、
いずれの場合も図18に相当する広い線速、記録パワー
マージンが得られた。下部保護層(D1 )、記録層(D
2 )、及び上部保護層(D3 )膜厚だけを種々変化させ
たので、その膜厚だけを表−2に示した。本実施例にお
いては、非晶質状態の反射率が最も低くなる付近を利用
して、(3)式のIref 成分を有効に活用できる層構成
を利用している。したがって、層構成設計例1において
∂Rtop /∂D2 >0の領域を利用することになる。
【0167】さらにまた、非晶質マークからの反射光に
よる寄与が少ないことから、記録後のサーボ信号を考慮
して、特に、Δを±π/2近傍としてプッシュプル信号
が大きく取れる層構成設計を意図している。図30に計
算上のδ(図6〜10の計算例の範囲)とModR の規
格化変調度の差の相関を示した。δがπ付近から大きく
なるにつれ(図中“a”から“b”点への矢印)、Mo
R が大きくなり3π/2近傍で最大値をとり、さらに
δが大きくなる(図中“b”から“c”点への矢印)と
ModR は再び小さくなる。厳密に言うと、ModR
0である、すなわち、δ=πもしくは2πとなる点(図
中でそれぞれ“a”、“c”で表示)、及びModR
最大となる、すなわちδ=3π/2となる点(図中で
“b”で表示)は若干すれている。
【0168】しかし、計算と実測値の差、すなわち、
(計算例)における計算は、平面波近似であり、集束光
での測定値ではある程度のずれが生じること、膜厚測定
値のばらつきが記録層で2nm程度、保護層で3〜5n
m程度あることを考慮すればおおむね良好な対応がとれ
ていると考えられる。同表には、記録前後のプッシュプ
ル比PPb/PPaや規格化されたプッシュプル比NP
PRも合わせて掲載している。概ねPPb/PPa≦
1.6、もしくはNPPR≦1.0であれば、記録前後
で安定したサーボ信号を得ることができる。すなわち、
PPb/PPa>1.6もしくはNPPR>1.0とな
って、記録によりサーボが不安定になる傾向がある。
【0169】図31には、(13)式からわかるように
位相差δ及び位相差δ(したがってΔ)に最も影響され
るNPPR値{図31(a)}や、PPb/PPa{図
31(b)}、さらにPPa/Itop 値{図31
(c)}とModR の関係を示した。NPPRやPPa
といった位相差δに強く依存する量がModR と極めて
良い正または負の相関を示すことがわかる。記録前後の
サーボ信号の変化が少ないという点で記録システムにと
って都合がよく、かつ記録後のプッシュプル信号PPa
/Itop が大きいという点で再生専用システムにとって
も都合が良いのはModR が大きい場合、すなわちδ=
π・3/2である。
【0170】このように、ModR は直接測定困難な位
相差Δもしくはδに替わって実験的に位相差を有効に活
用できる層構成を検討する上で有効な指標であり、同一
の溝形状であれば、ModR >0であることはもちろん
のこと、0.03以上の大きな値を取るように選択する
ことが望ましい。一方、表−2には、線速2.4m/s
において最適記録パワーにおける繰返しオーバーライト
テストを行い、CD規格に照らして、1000回後のジ
ッタが15nsec以下の場合を○、15〜18nse
cを△、18nsec以上を▲で表した。特に、500
回以下で20nsec以上となるような場合を×とし
た。○、もしくは△の耐久性を達成するためには、上部
保護層を50nmと厚くした場合、記録層を薄くする必
要があり、(18)式の範囲であれば良いことがわか
る。
【0171】より詳細に考察すれば、同じ変調度0.7
1〜0.72が得られる105/15/50の層構成
(ModR *100=−1.09)場合と、105/1
8/50の層構成(ModR *100=6.77)を比
較した場合、ModR が大きく、位相差の寄与が大きい
と考えられる105/18/50の場合のほうが、Ito
p が高いわりには変調度が高く、かつ、記録前後のサー
ボ信号の変化(PPb/PPaもしくはNPPR)が小
さく、記録後のプッシュプル信号も大きい。初期特性と
いう面からは105/18/50の方が好ましい。
【0172】しかし、繰返しオーバーライト耐久性の面
からは105/15/50の方が好ましい。どちらを優
先するかは当業者の選択の範囲であるが、例えば、両者
のバランスを考慮すれば、105/17/50(Mod
R *100=3.60)といった層構成が選ばれる。
【0173】(実施例11)比較例4において、反射層
を200nmのAl99Ta1 とした。2倍速での低パワ
ー側の再結晶化は改善が見られたが、高パワー側の再結
晶化は改善されなかった。また、記録感度が1〜2mW
悪化した。
【0174】(実施例12)上部保護層膜厚を65n
m、反射層を200nmのAl99Ta1 とした以外は実
施例1と同様にディスクを作成した。2倍速における初
期特性は、実施例1とほとんど同じであった。しかし、
2倍速において繰返しオーバーライトしたところ、記録
パワー10〜15mWにおいて、1000回後の3Tジ
ッタが20〜25nsecにまで増加した。ジッタが1
7.5nsec以下なのは繰返しオーバーライト500
回以下であった。なお、繰返しオーバーライト耐久性
は、上部保護層が60nmより厚くなると悪化する傾向
があった。
【0175】
【発明の効果】本発明は、相変化媒体において、反射層
の体積抵抗率を特定の範囲とすることで、記録層の冷却
速度をコントロールし、記録線速および記録パワーに対
するマージンを大幅に改善することができる。特に、S
70Te30共晶点近傍組成をベースとする記録層に対し
て効果的である。さらに、相変化による位相差変化を適
当な値とすることにより、CD−ROM、DVD−RO
M等と再生互換性の高い相変化媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学的情報記録用媒体における層構成
の模式図
【図2】信号の変調度の説明図
【図3】反射光の位相差の説明図
【図4】光検出系の説明図
【図5】再生信号の説明図
【図6】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図7】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図8】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図9】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図10】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図11】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図12】反射光の反射率及び位相差の計算例の説明図
【図13】本発明の光学的情報記録用媒体における層構
成の模式図
【図14】本発明の光学的情報記録用媒体の記録層の熱
拡散の状態を説明する説明図
【図15】本発明の光学的情報記録用媒体への光記録時
のレーザーパワーの照射パターンの一例を示す説明図
【図16】記録層の温度プロファイルの説明図
【図17】記録パルスの説明図
【図18】実施例1の3Tマークジッタの等高線図
【図19】実施例1の2倍速での変調度、記録パワー依
存性を示すグラフ
【図20】実施例1の4倍速での変調度、記録パワー依
存性を示すグラフ
【図21】実施例1の4倍速での変調度、記録パワー依
存性を示すグラフ
【図22】実施例2の3Tマークジッタの等高線図
【図23】実施例3の3Tマークジッタの等高線図
【図24】実施例4の3Tマークジッタの等高線図
【図25】比較例1、2の3Tマークジッタの等高線図
【図26】比較例4の3Tマークジッタの等高線図
【図27】実施例6の3Tマークジッタの等高線図
【図28】実施例7の3Tマークジッタの等高線図
【図29】実施例8の3Tマークジッタの等高線図
【図30】実施例10の層構成におけるModR の実測
値と計算上のΔとの相関
【図31】実施例10の層構成におけるNPPR、PP
b/PPa、及びPPa/Itop とModR の相関
【符号の説明】
1 基板 2 下部保護層 2a 第1下部保護層 2b 第2下部保護層 3 相変化型記録層 4 上部保護層 5 反射層 6 保護コート層
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G11B 7/24 534 G11B 7/24 534G 535 535G 561 561P 563 563E B41M 5/26 B41M 5/26 X (72)発明者 水野 正明 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社横浜総合研究所内 (72)発明者 堀江 通和 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社横浜総合研究所内 (72)発明者 信國 奈津子 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社横浜総合研究所内 (72)発明者 国友 晴男 岡山県倉敷市潮通三丁目10番地 三菱化学 株式会社水島事業所内

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に下部保護層、相変化記録層、上
    部保護層、膜厚が40nm以上300nm以下で体積抵
    抗率が20nΩ・m以上150nΩ・m以下の反射層を
    この順に設けてなり、マーク長変調された非晶質マーク
    の記録・再生・消去を行うことを特徴とする光学的情報
    記録用媒体。
  2. 【請求項2】 相変化記録層が、Mww (Sbz Te
    1-z 1-w (0≦w≦0.2、0.5≦z≦0.9、M
    はIn、Ga、Zn、Ge、Sn、Si、Cu、Au、
    Ag、Pd、Pt、Pb、Cr、Co、O、N、S、S
    e、Ta、Nb、V、Bi、Zr、Ti、Mn、Mo、
    Rh、希土類元素のうちの少なくとも1種)合金薄膜か
    らなる請求項1記載の光学的情報記録用媒体。
  3. 【請求項3】 相変化記録層の膜厚が10nm以上30
    nm以下である請求項1または2に記載の光学的情報記
    録用媒体。
  4. 【請求項4】 上部保護層の膜厚が30nm以上60n
    m以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学
    的情報記録用媒体。
  5. 【請求項5】 上部保護層の膜厚が40nm以上60n
    m以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の光学
    的情報記録用媒体。
  6. 【請求項6】 請求項2において、0.6≦z≦0.8
    である光学的情報記録用媒体。
  7. 【請求項7】 反射層が不純物含有量が2原子%以下の
    Al合金(純Alを含む)または不純物含有量が5原子
    %以下のAu又はAg合金(純Au、Agを含む)であ
    る請求項1ないし6のいずれかに記載の光学的情報記録
    用媒体。
  8. 【請求項8】 反射層がTa、Ti、Co、Cr、S
    i、Sc、Hf、Pd、Pt、Mg、Zr、Mo、又は
    Mnのうちの少なくとも一種を0.2原子%以上2原子
    %以下含むAl合金である請求項7に記載の光学的情報
    記録用媒体。
  9. 【請求項9】 反射層がTi、V、Ta、Nb、W、C
    o、Cr、Si、Ge、Sn、Sc、Hf、Pd、R
    h、Au、Pt、Mg、Zr、Mo、またはMnのうち
    の少なくとも一種を0.2原子%以上5原子%以下含む
    Ag合金である請求項7に記載の光学的情報記録用媒
    体。
  10. 【請求項10】 反射層が多層からなり、全反射層膜厚
    の50%以上が体積抵抗率20nΩ・m以上150nΩ
    ・m以下の1層以上の金属薄膜である請求項1ないし6
    のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  11. 【請求項11】 反射層の体積抵抗率が20nΩ・m以
    上100nΩ・m以下で、面積抵抗率が0.2Ω/□以
    上0.9Ω/□以下である請求項1ないし6のいずれか
    に記載の光学的情報記録用媒体。
  12. 【請求項12】 上部保護層が、ZnS、ZnO、Ta
    2 又は希土類硫化物のうちの少なくとも一種が20モ
    ル%以上90モル%以下と、融点又は分解点が1000
    ℃以上の耐熱性化合物との混合物である請求項1ないし
    11のいずれかに記載の光学的情報記録用媒体。
  13. 【請求項13】 基板上に溝を設け、該溝内に光ビーム
    を照射し情報の記録を行い、基板裏面から光ビームを照
    射して反射光を読み取り情報を再生する光学的情報記録
    用媒体であって、δを δ=( 結晶領域を通過した反射光の位相) −( 非晶質領
    域を通過した反射光の位相) とするとき、 −π< δ <0 である請求項1ないし6のいずれかに記載の光学的情報
    記録用媒体。
  14. 【請求項14】 請求項13において、再生光ビームの
    波長λ、波長λにおける基板の屈折率n、基板の溝深さ
    dとし、ΦおよびΔを Φ=( ランド部からの反射光の位相) −( 溝部からの反射光の位相) =−4πnd/λ Δ=δ+Φ とするとき、 −π/2< Φ <−π/8 −π< Δ <−π/2+π/8 である光学的情報記録用媒体。
  15. 【請求項15】 請求項14において、 −π/2−π/8< Δ <−π/2+π/8 である光学的情報記録用媒体。
  16. 【請求項16】 溝が蛇行しており、溝深さを20nm
    以上45nm以下、溝幅を0.3μm以上0.6μmと
    する請求項13ないし15のいずれかに記載の光学的情
    報記録用媒体。
  17. 【請求項17】 溝内のみにユーザーデータを記録する
    媒体であって、溝幅と溝間幅がほぼ等しいかまたは溝幅
    が溝間幅より狭く、記録信号の変調度Modを Mod=(DC再生信号のエンベロープの振幅)/(D
    C再生信号のエンベロープの上端値) とし、溝記録及び溝間記録における変調度をModG
    びModL とするとき、溝内及び溝間それぞれにおい
    て、変調度の記録パワー依存性がほぼ飽和する、ほぼ等
    しい記録パワーで記録を行ったときに、 ModG −ModL >0 ModG >0.5 である請求項13ないし16のいずれかに記載の光学的
    情報記録用媒体。
  18. 【請求項18】 請求項17において、 ModR =(ModG −ModL )/(ModG +Mo
    L ) >0.03 である光学的情報記録用媒体。
  19. 【請求項19】 下部保護層の膜厚が70nm以上15
    0nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下、相変化記
    録層の膜厚が15nm以上25nm以下、上部保護層の
    膜厚が30nm以上60nm以下で屈折率が2.0以上
    2.3以下であり、波長600以上800nm以下の光
    ビームで記録・再生・消去を行う請求項1または2に記
    載の光学的情報記録用媒体。
  20. 【請求項20】 下部保護層膜厚D1 nm、記録層膜厚
    2 nm、上部保護層膜厚D3 nm、結晶領域からの反
    射光Rtop のD1 依存性∂Rtop /∂D1 とするとき、 ∂Rtop /∂D1 >0 15≦ D2 ≦20 30≦ D3 ≦60 −5D2 +120≦ D3 ≦−5D2 +140 である請求項19に記載の光学的情報記録用媒体。
  21. 【請求項21】 下部保護層が2層からなり、第1下部
    保護層の膜厚が20nm以上70nm以下で屈折率が基
    板の屈折率nsub に対してnsub ±0.1の範囲にあ
    り、第2下部保護層の膜厚が70nm以下で屈折率が
    2.0以上2.3以下であり、相変化記録層の膜厚が1
    5nm以上25nm以下、上部保護層の膜厚が30nm
    以上60nm以下で屈折率が2.0以上2.3以下であ
    り、波長600以上800nm以下の光ビームで記録・
    再生・消去を行う請求項1または2に記載の光学的情報
    記録用媒体。
  22. 【請求項22】 下部保護層の全膜厚が70nm以上1
    50nm以下であり、第2下部保護層膜厚D12nm、記
    録層膜厚D2 nm、上部保護層膜厚D3 nm、結晶領域
    からの反射光Rtop のD12依存性∂Rtop /∂D12とす
    るとき、 ∂Rtop /∂D12 <0 15≦ D2 ≦20 30≦ D3 ≦60 −5D2 +120≦ D3 ≦−5D2 +140 である請求項21に記載の光学的情報記録用媒体。
  23. 【請求項23】 相変化記録層が、Mbv Mcy (Sb
    x Te1-x 1-y-v(ただし、MbはAg又はZnの少
    なくとも1種、McはGeもしくはSnの一種であり、
    0.6≦x≦0.8、0.01≦y≦0.15、0.0
    1≦v≦0.15、0.02≦y+v≦0.2である)
    合金薄膜からなる請求項6記載の光学的情報記録用媒
    体。
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