JPH1032397A - 電磁波シールド用導電マット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 所要厚みを有する電磁波シールド用導電マッ
トを得る。 【解決手段】 多孔体シート３にメッキ処理を施してメ
ッキシート１に加工し、このメッキシート１を２層以上
積層接着して導電マット５に加工する。多孔体シート３
に発泡体シートを用いて所要厚みを有し、緩衝性，断熱
性に優れた電磁波シールド用導電マット５を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波遮蔽性能を
有する導電マットに関する。

【０００２】

【従来の技術】インテリジェントビルやＦＡ工場内にお
いては、ＯＡ機器，情報処理装置，コンピュータ制御機
器などの電子機器，通信機器から放射される電磁波漏洩
の防止、あるいは外来の電磁波の侵入を防止するために
建物の床面，天井面，壁面に、電磁波遮蔽材が設置され
る。従来、電磁波遮蔽材として鉄，銅，アルミニウムな
どの金属箔または金属板が知られ、通常は、ボード建材
を壁面，天井面，床面に配設した後、このボード建材に
電磁波遮蔽材を張り合わせることによって施工されるこ
とが多い。

【０００３】電磁波遮蔽材に金属箔を用いる場合に、箔
には可撓性が得られるとしても膜厚が薄いと破損しやす
く、自己保型性がなく、現場施工でボード建材の形態に
倣わせてその表面に施工するのは一般に厄介である。箔
の膜厚を厚くして自己保型性を保有させたものは、一般
には金属板であり、現場施工時に所要形状に賦形するこ
とが難しい。その他電磁波遮蔽材としてフェライト含有
塗剤や金属繊維、または金属繊維と非金属繊維とを編み
合わせた導電性シートがある。フェライト含有塗料は、
ボード建材に盛り付けて固化させれば良いために施工性
に優れてはいるが、充分な電磁波遮蔽性を付与するには
塗剤を多量に塗布しなければならず、このため、重量が
過大となる欠点がある。また、金属繊維を編み込んだ導
電性シートは、電磁波遮蔽効果を得ることはできるが、
高価であり、必ずしも金属板や金属箔に比べて施工性が
改善されるわけではない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記問題を解消するた
め、合成樹脂不織布に金属メッキ加工を施工してこれを
電磁波遮蔽用シートに用いる試みが提案され、特開平７
−１３８８７４号公報には、無電解ニッケルめっき法に
よるニッケル皮膜を被覆した繊維からなる不織布に、そ
のニッケル皮膜上に、さらに鉄または鉄とニッケルとを
含む合金の皮膜を形成した電磁波遮蔽用シートが紹介さ
れている。上記公報には、その電磁波遮蔽用シートイン
テリジェントビルやＦＡ工場等の内壁または、電子機器
等の筐体に張り付けることにより、安価で且つ充分な電
磁波遮蔽及び磁気遮蔽を行うことができるという効果が
強調されている。

【０００５】しかしながら、上記電磁波遮蔽用シート
は、不織布にニッケル皮膜と鉄または鉄とニッケルとを
含む合金の皮膜が形成されるものであり、不織布は厚み
が０．２ｍｍ以上であることを構成上の要件として規定
されているが、不織布の厚みが厚いときには、不織布の
内部の組織にメッキ液が充分に浸透せずに、例えば不織
布の厚さが５ｍｍを越える場合は、不織布の表面部分に
しかメッキされないことがあり、メッキ可能な不織布の
厚さには自ずから限度がある。厚さの厚い不織布に、所
望の電磁波シールド性を得るためには、メッキ時間を多
大に費やすことで可能となるが、メッキの目付量が不織
布内部と表面部とでバラツキが生じて好ましくない。ま
た、空隙部分の大きい不織布であれば、内部と表面部を
均一にメッキすることも可能となるが、所望の電磁波シ
ールド性を得るために必要以上の厚さの不織布を用いた
り、多大なメッキ目付量を確保しなければならない。

【０００６】これは、不織布に関してだけでなく、軟質
ポリウレタン等の合成樹脂発泡体の場合も同様であり、
一定以上の厚みを必要とする電磁波シールド用導電マッ
ト等を作成する場合、マット自体をメッキ等で導電性と
するのではなく、マットを導電性布帛等で被覆して、電
磁波シールド性を得ていたので、高性能の電磁波シール
ド用マットを得ることが不可能であり、コスト，作業性
の面であまり好ましいものでなかった。

【０００７】本発明の目的は、一定以上の厚みを有し、
しかも組織の全厚みにわたって均等な電磁波シールド機
能を有する電磁波シールド用導電マットを提供すること
にある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明による電磁波シールド用導電マットにおいて
は、導電性シートが２層以上接着，積層されてなる電磁
波シールド用導電マットであって、導電性シートは、金
属メッキされたシート状多孔体である。

【０００９】またシート状多孔体は、厚みを有し、多孔
体の内外の組織の表面に金属メッキが施されて金属多孔
体を形成しているものである。

【００１０】また材質が異なる２種類以上のシート状多
孔体を有するものである。

【００１１】また導電性シートの少なくとも一層は、積
層の表裏面又は層間に介在されて積層の強度を補強する
ものである。

【００１２】また２層以上の導電性シートを有し、各層
の導電性シートは、電気的に導通しているものである。

【００１３】本発明の電磁波シールド用導電マットは、
従来より使用されていた電磁波シールド用導電マットと
比較して、２倍以上の厚さの物を得ることが容易とな
る。このため、高性能の電磁波シールド性を有するとと
もに、例えばシールドルームの床材の下に敷き詰めて電
磁波シールドする場合に、電磁波シールド用にとどまら
ず、遮音性，クッション性等の性能を保有するものとし
て使用することもできる。

【００１４】また、表面に樹脂層を設けたり、フローリ
ング材等を貼着して、クッション性，遮音性を有する電
磁波シールド床材や床マットとしても使用可能となる。
そして、異なる２種類以上の素材で形成されたものは、
クッション性を重視したり，遮音性を重視したり，電磁
波シールド性を重視したり，耐久性を重視したり，ある
いはそれらの複合性能を重視した構成を選定することが
可能となる。

【００１５】さらに、シールドルームの壁や天井に使用
する場合、一般住宅用の遮音マット等の代わりに本発明
のマットを使用することで、単一作業だけで特別な電磁
波シールド作業を必要としなくなるので、施工作業の簡
易化を図ることが可能となる。

【００１６】またさらに、電磁波シールド用のガスケッ
トとして使用することも可能であり、従来より使用され
ているものと比較して、電磁波シールド性能を向上させ
ることができ、被覆材の破れ等により電磁波漏れ等の不
良の発生の可能性を低減できる。勿論ガスケットとして
だけでなく、電磁波シールド性に優れた自由な厚さのマ
ットであるので、電子部品等の梱包用緩衝材としても使
用可能である。

【００１７】したがって、本発明の電磁波シールド用導
電マットは、電磁波シールド用として、あらゆる用途に
使用可能であり、使用にあたっては、そのままでも表皮
材層等を付加しても使用可能である。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図に
よって説明する。図１において、本発明による電磁波シ
ールド用マットにおいては、メッキシート１，１，…の
積層からなるものである。メッキシート１は、金属メッ
キされたシート状の多孔体であり、図２に示す多孔体ブ
ロック２をスライスして導電処理としてメッキ処理が施
されたものであり、本発明にいう導電性シートである。
多孔体ブロック２は、例えばポリウレタンフォームブロ
ックである。ポリウレタンフォームブロックは、連続気
泡の発泡体であり、弾力性を有している。

【００１９】図２において、多孔体ブロック２は、これ
を薄くスライスして多孔体シート３に加工する。メッキ
処理は、多孔体シート３の組織に金属メッキを施してシ
ートを導電化する処理である。金属メッキは、多孔体シ
ート２にまず無電解メッキを行い、化学的に金属をシー
トの内外の多孔組織の表面に還元析出させるが、勿論発
泡体成形時に導電性素材を混合したり、シートに導電材
料を塗布，含浸させた後に、電気メッキによって金属を
組織表面に析出させてもよい。また、無電解メッキを行
った後に電解メッキを行ってシートを導電化させてもよ
い。

【００２０】スライスされた多孔体シート３の厚みに関
しては、多孔体シートの組織内部にまで完全に金属メッ
キが行えるように適正な厚みを設定することが必要であ
る。多孔体の組織によってメッキ金属の浸透度合いが違
うために多孔体シートの厚みを一律に規定することはで
きないが、多孔体シートがポリウレタン発泡体シートの
場合には、３〜５ｍｍの範囲の厚みに調整するのが好ま
しい。処理によって、多孔体シート３には、メッキ金属
が付着してメッキシート１となる。スライスされたシー
トが３ｍｍ未満であるとスライス時に厚みのバラツキが
発生したり、メッキ作業時にシートの破断が発生したり
し易くなるために、作業性が悪化することがある。また
スライスされたシートが５ｍｍを越えるとシート内部の
メッキが不十分なために電磁波シールド性が低減した
り、メッキ作業時間が増加したりしており好ましくな
い。しかし、多孔体の空隙の大きさにより、メッキ作業
性は違ってくるので、空隙部の状態及び所望電磁波シー
ルド性等によって、シートの厚みを調製することが好ま
しい。

【００２１】図３において、メッキシート１は、所要の
厚みになるまで必要枚数を積層する。メッキシート１の
積層に際しては、各層のメッキシート１，１，…の相互
間に電気的な導通を阻害しないように接着する。

【００２２】このためには、例えば、各メッキシート
１，１，…間に網状のホットメルト接着剤フィルム４を
介在させ、その積層を加熱加圧して一体化すれば、各層
のメッキシート１，１，…は、ホットメルト接着剤の網
目を通して相互間の導電性を維持して積層一体化され、
導電マット５が得られる。用途によっては、各層相互間
の導電性は必ずしも必要ではない。

【００２３】図４は、３層に積層したメッキシート１，
１，…の各層の多孔体シートに発泡体シートを用いた例
である。多孔体シート３に発泡体シートを用いたときに
は肉厚で、緩衝性，断熱性に優れた導電性が得られる。

【００２４】多孔体シートは、必ずしも発泡体シートに
限らず、実質的に多孔体であれば不織布，ガラス繊維
布，セラミックウール，織物，編物，起毛布などの繊維
シートを使用できる。繊維シートを用いるときには、発
泡体シートのようなスライス加工は不要であるが、メッ
キ処理の都合から厚みは自ずから制約を受ける。繊維シ
ートにメッキ処理を施してメッキシートに加工する要領
は、発泡体シートをメッキシートに加工する要領とまっ
たく同じである。

【００２５】図５は、繊維シートを用いたメッキシート
１ａを芯材とし、これを発泡体シートを用いた２層のメ
ッキシート１，１間に介在させた例である。この例で
は、表面に緩衝性を有する導電マットとなる。あるいは
図６のように、発泡体シートを用いたメッキシート１の
両面に繊維シートを用いたメッキシート１ａ，１ａを接
着すれば発泡体シートの組織を繊維シートによって保護
することができる。もっとも、用途によっては、同質又
は異質の繊維シートの組合せによる導電マットを形成す
ることができる。

【００２６】同質の多孔体シートによるメッキシートを
２層以上積層した積層構造によれば、電磁波シールド性
能を有する任意の厚みのマットが得られ、メッキシート
に用いる多孔体シートの材質を選定して２層以上に積層
することによって単一素材では対応できない物性の導電
性マットを形成できる。

【００２７】

【実施例】以下に本発明の実施例を示す。

【００２８】（実施例１）長さ５０ｍ，幅１．２ｍ，厚
さ１ｍの大きさのポリウレタン発泡体ブロック（密度２
６ｋｇ／ｍ³）を３ｍｍの厚さの発泡体シートにスライ
スし、各々の発泡体シートに無電解メッキ処理（メッキ
目付量４０ｇ／ｍ²）を施した。メッキ液は、発泡体シ
ートの内部にまで浸透して発泡組織に均一に付着した。
得られたメッキシートの間に網状ホットメルト接着剤フ
ィルムを介してメッキシートを３層積層し、１００℃で
熱プレスにて熱圧して各層のメッキシートを積層一体化
し、導電マットを得た。各層のメッキシート間の電気的
導通は保たれた。抵抗値は圧縮前後ともに０．１Ω／□
以下であった。

【００２９】得られた導電マットを幅２０ｍｍのストラ
ップにカットし、ガスケットとして実際の筐体に適用し
たところ１０ＭＨｚ〜１ＧＨｚで６０〜８０ｄＢ（ＫＥ
Ｇ法）の電磁波遮蔽性が得られた。また、厚さ１０ｍ
ｍ，幅２ｍｍのガスケットを厚さ２ｍｍまで圧縮する操
作を１００回繰返し、圧縮前と圧縮後の抵抗値を測定し
たところ、抵抗値には変化がみられなかった。

【００３０】（実施例２）ポリエステル繊維（繊維の太
さ２ｄ，長さ５１ｍｍ）をエポキシ樹脂結合剤で結合し
た不織布（目付量８０ｇ／ｍ²，厚さ３．０ｍｍ）に化
学銅メッキ（銅の付着量１１．５ｇ／ｍ²）した後、そ
の上に化学ニッケルメッキ（ニッケル付着量１０．５ｇ
／ｍ²）を行ってメッキシートを得た。

【００３１】得られたメッキシート４枚をそれぞれのシ
ート間にホットメルトシート（ナイロン系融点９５℃，
目付量２５ｇ／ｍ²）を挾みながら熱ロール間で圧着し
た。圧着シートの積層の厚みは１０ｍｍであった。この
熱圧着により各層のシートが接着して導電マットが得ら
れた。

【００３２】得られた導電マットと、積層に用いたメッ
キシート（厚さ３ｍｍ）とのシートの電磁波シールド特
性をＫＺＣ法で測定した。電界シールド特性の結果を表
１に示し、磁界シールド特性の結果を表２に示す。

【００３３】

【表１】

【００３４】

【表２】

【００３５】以上、表１，表２の結果に明らかなとお
り、メッキシートは、その積層によって、電磁シールド
特性、特に磁界シールド特性においてシールド特性が大
幅に向上することが分かった。

【００３６】

【発明の効果】以上のように本発明によるときには、メ
ッキシートを多層に積層一体化することによって、所要
厚みの電磁波シールド用導電マットを得ることができ、
電磁波シールド性を向上できる。これは、メッキシート
に用いられた多孔体シートの孔の位置が上下シート間で
ずれるためであると考えられる。

【００３７】本発明は、多孔体シートの弾性を有する、
例えばポリウレタン発泡体シートを用いることにより、
弾力性を有する導電マットを得ることができ、また、物
性の異なる材質の多孔体シートを用いることによって、
単独の多孔体シートでは対応できない物性の導電マット
を提供できる。

【００３８】また、今まで、例えば１０ｍｍ以上の作成
は不可能であった厚い導電マットを得ることができるの
で、金属板等を使用せずに高性能な電磁波シールドが可
能となり、電子部品等の梱包緩衝材やクッションマット
としても使用可能となる。さらに、所望の厚みを自由に
選択できるので、成形型による加熱成形等により、表面
に凹凸を設けたり、全体的に賦形をすることが可能とな
り、広い用途に使用展開が可能となる。

【００３９】本発明は、シールドルームの床，壁，天井
材に用いて本来の電磁波シールド効果のほか多孔体シー
トの選定組合せによって、断熱性，遮音性，緩衝性を付
与でき、また、ストラップに加工して電磁波シールド用
ガスケットその他の用途に広く利用できる効果を有す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の基本的構成を示す図である。

【図２】多孔体シートの形成要領を示す図である。

【図３】メッキートの積層要領を示す図である。

【図４】本発明の第１の実施形態を示す図である。

【図５】本発明の第２の実施形態を示す図である。

【図６】本発明の第３の実施形態を示す図である。

【符号の説明】

１ メッキシート ２ 多孔体ブロック ３ 多孔体シート ４ 接着剤フィルム ５ 導電マット

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 導電性シートが２層以上接着，積層され
   てなる電磁波シールド用導電マットであって、 導電性シートは、金属メッキされたシート状多孔体であ
   ることを特徴とする電磁波シールド用導電マット。
2. 【請求項２】 シート状多孔体は、厚みを有し、多孔体
   の内外の組織の表面に金属メッキが施されて金属多孔体
   を形成しているものであることを特徴とする請求項１に
   記載の電磁波シールド用導電マット。
3. 【請求項３】 材質が異なる２種類以上のシート状多孔
   体を有することを特徴とする請求項１又は２に記載の電
   磁波シールド用導電マット。
4. 【請求項４】 導電性シートの少なくとも一層は、積層
   の表裏面又は層間に介在されて積層の強度を補強するも
   のであることを特徴とする請求項１，２又は３に記載の
   電磁波シールド用導電マット。
5. 【請求項５】 ２層以上の導電性シートを有し、各層の
   導電性シートは、電気的に導通しているものであること
   を特徴とする請求項１，２，３又は４に記載の電磁波シ
   ールド用導電マット。