JPH10320741A - 垂直磁気記録媒体 - Google Patents

垂直磁気記録媒体

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JPH10320741A
JPH10320741A JP12978997A JP12978997A JPH10320741A JP H10320741 A JPH10320741 A JP H10320741A JP 12978997 A JP12978997 A JP 12978997A JP 12978997 A JP12978997 A JP 12978997A JP H10320741 A JPH10320741 A JP H10320741A
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研也 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 1平方インチ当たり4ギガビット以上の高密
度記録に適するような十分に高い媒体S/Nを持ち、か
つ記録情報の長期間保持が可能な垂直磁気記録媒体を提
供する。 【解決手段】 磁気記録層として、時間Δt(秒)の間
に減少する残留磁化量ΔIr(emu/cm3)と、25
℃において測定した保磁力と等しい磁界強度での磁気粘
性の揺らぎ場Hf(エルステッド)との間に、4π×Δ
r/ln(Δt)<Hfの関係が成り立つ強磁性薄膜を
用いる。特に十分高い媒体S/Nを得るためには、磁気
粘性の揺らぎ場Hfが30エルステッド以上の強磁性薄
膜を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータの補
助記憶装置などとして使用される磁気記録再生装置に用
いる磁気記録媒体に係り、さらに詳しくは、1平方イン
チ当たり4ギガビット以上の高い記録密度を実現するの
に好適な磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】情報化時代の進行により、日常的に扱う
情報量は増加の一途を辿っている。これに伴い、磁気記
録装置に対する高記録密度化と大容量化の要求が強くな
っている。磁気記録装置を高記録密度化していった場
合、記録ビット当たりの媒体面積が小さくなるため、再
生出力が低下し、再生が困難になる。この問題を解決す
るため、記録と再生を別のヘッドで行い、再生用ヘッド
として高い感度を持つ磁気抵抗効果を利用したヘッドを
用いる方式が実用化されている。さらに、高密度化を進
めるために、より高い感度を持つ巨大磁気抵抗効果を利
用したヘッドも検討されている。このような高感度の再
生ヘッドを用いることにより、再生出力は大きくできる
が、同時にノイズも増幅してしまい、ノイズの大きな媒
体を用いた場合には記録された情報の読み取りが不可能
になる。したがって、高密度の記録と再生を行うための
磁気記録媒体としては、媒体ノイズを低く抑えることが
必須である。
【0003】現在の磁気ディスクに用いられている面内
磁気記録方式では、媒体ノイズの低減のために、結晶粒
の微細化が不可欠である。さらに、ビット境界の磁荷か
らの反磁界に打ち勝って磁化を記録方向に保持しておく
ために、保磁力を高くすると同時に、磁性層の膜厚と残
留磁束密度の積を小さくして反磁界を小さくする必要が
ある。このような課題を解決して、1平方インチ当たり
4ギガビット以上の面記録密度を達成するためには、3
000〜4000エルステッドの保磁力を磁性層の膜厚
10〜20nmで実現する必要があり、技術的にかなり
の困難が予想される。また、結晶粒が小さくなり、磁性
層の膜厚も小さくなると、記録磁化状態の熱的安定性が
問題になり、高密度に記録した情報の再生出力が時間の
経過とともに小さくなり、いずれは再生が不可能となる
事態が予想される。
【0004】これに対して、垂直磁気記録方式は記録密
度が高くなるにつれて反磁界が減少するという特徴があ
り、高密度に記録した場合に、記録磁化状態が安定で媒
体ノイズも小さく、高密度記録に適した方式であると考
えられる。ただし、垂直磁気記録方式においても、高密
度に記録された情報を再生する場合には出力が小さいた
めに、媒体ノイズの低減は必須である。垂直磁気記録媒
体のノイズは、記録ビット内の逆磁区の大きさと記録ビ
ット境界の乱れの大きさに依存すると考えられる。これ
らを小さくしてノイズを低減するためには、磁性膜の結
晶粒径を小さくするなどして、磁化反転単位を小さくす
る必要がある。
【0005】磁化反転単位の大きさは、磁気粘性とも関
連がある。すなわち、磁気粘性の揺らぎ場が大きいほど
磁化反転単位は小さく、媒体ノイズも小さいと考えられ
る。磁気粘性の揺らぎ場の意味については、Journal of
Physics F: Metal Physics、14巻、L155〜L15
9頁(1984年発行)に記載されている。種々の媒体
についてノイズの大きさを定量的に比較して比べること
は難しく、同じ媒体でもヘッドの種類やヘッドと媒体の
相対関係によって測定されるノイズの値は変化する。こ
れに対して磁気粘性の揺らぎ場の測定は簡便かつ再現性
が良い。Journal of Magnetism and Magnetic Material
s、127巻、233〜240頁(1993年発行)に
詳細が記載されている。
【0006】媒体ノイズを小さくするために磁気粘性の
揺らぎ場の大きい媒体を作製したとき、多くの場合に記
録磁化の熱的安定性が問題となってくる。すなわち、時
間の経過とともに再生出力が減少する割合が大きくな
り、情報を長期間保持する事が不可能になる。垂直磁気
記録媒体においては、記録ビット長が長くなった場合
に、このような出力の減少が顕著である。これは、各記
録ビットに生じる膜厚方向の反磁界のためと考えられ
る。垂直磁気ディスク媒体における出力の経時変化に関
する報告は、例えば、IEEE Transactions on Magnetic
s、31巻、2755〜2757頁(1995年発行)
に記載されている。
【0007】従来、垂直磁気記録媒体は連続薄膜型磁気
テープを中心に研究や開発が進められており、この場合
には磁性層の膜厚が100nm以上と厚く、またトラッ
ク幅の広いヘッドで記録再生を行うため、再生出力が大
きく、媒体ノイズのレベルをそれほど抑える必要がなか
った。これに対して、磁気ディスクとして垂直磁気記録
媒体を用いる場合、トラック方向にも高密度化する必要
があることから、記録ビット面積は小さくなり、再生出
力は非常に小さくなる。この小さな出力を高感度ヘッド
により再生することから、必然的に媒体ノイズに対する
制限は厳しくなり、また出力の減衰も極力抑える必要が
ある。
【0008】垂直磁気ディスク媒体のノイズに関する検
討結果は、例えば、Journal of Magnetism and Magneti
c Materials、134巻、304〜309頁(1994
年発行)に記載されているが、CoCrTa垂直二層媒
体について、90kFCIにおける媒体S/Nが23.
8dBと示されており、1平方インチ当たり4ギガビッ
ト以上の高い面記録密度の記録再生は困難であると考え
られる。
【0009】一方、垂直磁気ディスク媒体の再生出力の
減衰に関しては、系統的な検討結果は報告されていな
い。出力減衰が抑制できる媒体として、例えば、Journa
l of Applied Physics、79巻、7920〜7925頁
(1996年発行)にCo/Pd多層膜が記載されてい
るが、磁気特性パラメーターの影響が明確には示されて
おらず、媒体ノイズとの相関に関しても触れられていな
い。
【0010】これらの例からわかるように、現状では高
密度記録に適した低ノイズで出力減衰の小さな垂直磁気
ディスク媒体の作製指針が明らかでなく、またそのよう
な媒体の報告例もない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】垂直磁気記録媒体で
は、長い記録ビットで記録した情報の再生出力は時間の
経過とともに減衰する場合が多く、特に高密度記録に適
するように媒体S/Nを十分大きくした媒体においては
出力減衰の割合が大きく、情報を記録してから長期間経
過した後には再生が不可能である。本発明の目的は、1
平方インチ当たり4ギガビット以上の高密度記録に適す
るような、十分に高い媒体S/Nを持ち、かつ記録情報
の長期間保持が可能な垂直磁気記録媒体を提供すること
にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的の垂直磁気記録
媒体は、磁気記録層として、時間Δt(秒)の間に減少
する残留磁化量ΔIr(emu/cm3)と、25℃にお
いて測定した保磁力と等しい磁界強度での磁気粘性の揺
らぎ場Hf(エルステッド)との間に、4π×ΔIr/l
n(Δt)<Hfの関係が成り立つ強磁性薄膜を用いる
ことで得られる。
【0013】特に十分高い媒体S/Nを得るためには、
磁気粘性の揺らぎ場Hfが30エルステッド以上の強磁
性薄膜を用いるのが良い。このような特徴をもつ垂直磁
気記録媒体を作製するためには、磁気記録層として、コ
バルトとクロムを主たる成分とし膜厚が30nm以下で
あり、かつ磁気異方性定数が2×106erg/cm3
上である強磁性薄膜を用いることが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。図2は、本発明の垂直磁気記録媒体の基本
的な構成を示す断面模式図である。図2において21は
強化ガラス、シリコン、カーボン、セラミックス、チタ
ン合金、有機樹脂、Ni−P合金メッキアルミ合金基板
などの非磁性基板である。22はチタンあるいはチタン
合金などの下地層、又は、これと磁気記録層の間にコバ
ルトとクロムを主成分とする合金で構成される常磁性あ
るいは常磁性に近い磁気特性の多結晶薄膜を併せ持つ2
層構造の下地層である。23はコバルトとクロムを主成
分とし、例えばCo−Cr−Ta、Co−Cr−Pt、
Co−Cr−Pt−Ta、Co−Cr−Nb、Co−C
r−Wなどのような強磁性薄膜を用い、単層構造又は非
磁性中間層で隔てられた多層構造の磁気記録層である。
24はカーボン、シリコン−カーボン、ボロン−カーボ
ンなどの保護膜と有機系潤滑膜とから成る保護潤滑層で
ある。
【0015】(実施例1)非磁性基板21として基板表
面粗さRaが3nm以下の直径2.5インチの強化ガラ
ス製ディスクを用い、下地層22、磁性層23及び保護
層24の膜形成は直流マグネトロンスパッタ法により、
以下の条件で行った。スパッタ装置内の到達真空度は1
×10-8Torr以下、放電用アルゴンガス圧力は3×
10-3Torr、基板温度は230〜280℃、投入電
力は直径6インチのターゲットに対して1kWとした。
【0016】下地層としては、厚さ30nmのTi又は
Ti−10at%Crの単層膜、あるいはその上に厚さ
20nmのCo−35at%Crを積層した2層膜を形
成した。2層膜下地は磁性層の初期成長層の粒径制御に
役立ち、媒体ノイズの低減に効果がある。磁性層として
は、材料としてCo−17at%Cr−4at%Ta、
Co−16at%Cr−13at%Pt、Co−19a
t%Cr−10at%Pt、Co−22at%Cr−1
0at%Pt又はCo−19at%Cr−10at%P
t−2at%Taを用いた厚さ7〜200nmの種々の
膜を形成した。保護潤滑層としては厚さ5nmのカーボ
ン膜と厚さ5nmの有機系潤滑膜を形成した。
【0017】保磁力、磁気粘性の揺らぎ場及び残留磁化
などの磁気特性の測定は、これら磁気ディスク媒体の一
部を8mm角に切り出し、試料振動型磁力計を用いて2
5℃で行った。保磁力などの基本磁気特性は、膜面に対
して垂直方向に磁界を印加して磁化曲線を測定すること
により求めた。磁気粘性の揺らぎ場は、残留磁化保磁力
又は保磁力と等しい強度の磁界を膜面に対して垂直方向
に印加して測定した。その測定原理については後で述べ
る。残留磁化の経時変化は15000エルステッドの磁
界を膜面に対して垂直方向に印加したのち、磁界をゼロ
にしてからの各時間に対応させて測定した。特に磁性層
が薄く磁気モーメントの小さな試料に関しては、同じ測
定を数十回繰り返してその平均を計算することにより求
めた。
【0018】再生出力と媒体ノイズの測定に際しては、
ギャップ長0.2μm、トラック幅1μm、巻線数20
ターンの誘導電磁型ヘッドにより記録し、シールド間隔
0.2μm、トラック幅0.9μmの磁気抵抗効果型ヘ
ッドにより再生を行った。ヘッドと媒体の磁気スペーシ
ングは40nmとした。再生出力Sは線記録密度2kF
CIの孤立波出力を、媒体ノイズNは300kFCIを
記録した場合の0〜50MHzの積算ノイズを測定して
求め、これらの比を媒体S/Nとして評価した。
【0019】以下に、磁気粘性の揺らぎ場の測定原理を
説明する。磁性材料に新たな磁場を印加すると、磁性材
料の磁化I(t)は磁場印加時間の対数ln(t)に対
して、次の〔数1〕の関係で変化する場合が多い。
【0020】
【数1】I(t)=定数+S×ln(t) ここで、I(t)は単位体積当たりの磁気モーメントで
あり、tは新たな磁場を印加した後の経過時間である。
Sは磁気粘性と呼ばれ、磁場を正方向にシフトして印可
したときには正、負にシフトして印可したときには負の
値を持つ。Sは非可逆磁化率χirrと揺らぎ場Hfとの積
で表せることが知られている。すなわち、次の〔数2〕
の関係が成立する。
【0021】
【数2】S=χirr×Hf したがって、実験からS及びχirrを求めれば、揺らぎ
場Hfを計算できる。磁界強度が保磁力Hc又は残留磁化
保磁力Hrに等しいところでの揺らぎ場は、これらの磁
場印加時間依存性からも求めることができる。保磁力又
は残留磁化保磁力は、磁場印加時間tの増加とともに、
次の〔数3〕の関係で低下する場合が多い。
【0022】
【数3】Hc(又はHr)=−A×ln(t)+定数 このような場合、Aは磁場強度が保磁力又は残留磁化保
磁力に等しいところでの揺らぎ場とほとんど同じ値を示
す。この方法は簡便でかつ再現性が良い。そこで、本発
明では〔数3〕のAの値を揺らぎ場とした。
【0023】図3に、垂直磁気記録媒体について測定し
た残留磁化の経時変化の例を示した。図中の直線31は
Co−Cr−Pt媒体の測定結果を表し、直線32はC
o−Cr−Pt−Ta媒体の測定結果を表す。このよう
に、媒体磁性層の残留磁化Irは時間の対数ln(t)
に対して線形の関係で減少する。そこで、時間Δt
(秒)の間に減少する残留磁化量をΔIr(emu/c
3)とした場合の4π×ΔIr/ln(Δt)の値を残
留磁化変化の指標とした。また、この値は記録ビット長
が長い記録を行った場合の再生出力の経時変化に対応
し、記録情報を長期間保持できるかどうかの指標にもな
る。
【0024】垂直磁気記録媒体の多くの場合、この値は
大きく、記録ビット長が長い記録情報の長期間保持が難
しいと考えられる。特に、媒体S/Nの向上のための検
討を進める中でこの問題が顕在化してきた。そこで、こ
の問題を解決しつつ媒体S/Nを向上させるために、種
々の垂直磁気記録媒体について検討したところ、残留磁
化の変化率と磁気粘性の揺らぎ場の関係が重要であるこ
とがわかった。
【0025】図4に、残留磁化変化率4π×ΔIr/l
n(Δt)と磁気粘性の揺らぎ場Hfの関係をプロット
した。この中には、残留磁化の変化を抑えるため、特に
磁性膜厚の小さい媒体及び磁気異方性の大きい媒体を意
識して含めた。図中の媒体は{4π×ΔIr/ln(Δ
t)}/Hf=1の境界線41で区切られる2つのグル
ープに分かれており、以下の図ではこの2つのグループ
を区別して表示している。
【0026】境界線41より上に存在する媒体11につ
いては、残留磁化変化率と揺らぎ場の間にほぼ比例関係
が存在していることがわかった。このことは媒体S/N
を向上させるために磁気粘性の揺らぎ場の大きな媒体を
作製すると、その媒体は残留磁化の変化が大きく、再生
出力の減衰が顕著であることを示している。図1には、
上記と同じ媒体について記録直後に測定した媒体S/N
と再生出力の経時変化から予想される5年後の媒体S/
Nの関係を示した。媒体S/Nは磁気粘性の揺らぎ場と
たいへん良い相関をもっているため、多くの媒体では媒
体S/Nの大きなものほど再生出力の低減が顕著であ
り、5年後の媒体S/Nは記録直後と比較して低減して
しまう。
【0027】これに対して{4π×ΔIr/ln(Δ
t)}/Hf<1の関係を満たす媒体12は媒体S/N
の低減がほとんどなく、記録情報の長期間保持が可能で
あることがわかった。また、好ましくは、{4π×ΔI
r/ln(Δt)}/Hf<1/10の関係を満たす媒体
14を用いることにより、媒体S/Nの低減をより小さ
く抑えることができる。さらに、図1に示されるよう
に、{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf<1の関係を
満たしていても、磁気粘性の揺らぎ場Hfが30エルス
テッドより小さい媒体13は5年後の媒体S/Nが比較
的小さいため、1平方インチ当たり4ギガビット以上の
高密度記録に適するような十分に高い媒体S/Nを持つ
媒体を作製するためには、磁気粘性の揺らぎ場を30エ
ルステッド以上にすれば良いことがわかった。
【0028】次に、{4π×ΔIr/ln(Δt)}/
f<1の関係を満たす媒体を作製するために、磁性層
としてどのようなものを用いれば良いかを検討した。そ
の結果、図5に示したように磁性層の膜厚tmagは30
nm以下であることが好ましく、また図6に示したよう
に、磁気異方性定数Kuは2×106erg/cm3以上
である強磁性薄膜を用いる必要があることがわかった。
図7に示したように、これら2つの条件を満たしたと
き、{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf<1の関係を
満たし、高密度記録に適した十分に高い媒体S/Nを持
ち、かつ記録情報の長期間保持が可能な垂直磁気記録媒
体が得られることがわかった。
【0029】(実施例2)実施例1と同様の方法を用い
て、磁性層を多層化した2種類の媒体を作製した。一つ
は、磁気異方性の大きいCo−16at%Cr−13a
t%Pt強磁性膜を厚さ3nmのTi−10at%Cr
層で分断することにより、媒体ノイズを小さくすること
を試みた。Co−Cr−Pt層の構成としては、厚さ8
nmの3層及び厚さ12nmの2層の2つのタイプを作
製した。もう一つは、ノイズの小さいCo−17at%
Cr−4at%Ta強磁性膜を厚さ0.4nmのPt層
と短周期で積層することにより、磁気異方性を大きくす
ることを試みた。Co−Cr−Ta層の構成としては厚
さ1nmの20層及び厚さ1.5nmの15層の2つの
タイプを作製した。
【0030】これらの媒体について、実施例1と同様に
残留磁化の経時変化と磁気粘性の揺らぎ場の評価を行っ
たところ、Co−Cr−Pt/Ti−Cr多層膜媒体の
場合、4π×ΔIr/ln(Δt)=0.52及び0.
48(emu/cm3)、Hf=42.8及び48.7
(エルステッド)であり、Co−Cr−Ta/Pt多層
膜媒体の場合、4π×ΔIr/ln(Δt)=0.21
及び0.56(emu/cm3)、Hf=35.9及び4
0.1(エルステッド)であった。いずれも{4π×Δ
r/ln(Δt)}/Hf<1の関係を満たしている。
【0031】実施例1と同様の条件で記録再生特性の測
定を行ったところ、いずれの媒体も35dB以上の良好
な媒体S/Nの値を示し、再生出力の経時変化から予想
される5年後の媒体S/Nもほとんど減少することなく
35dB以上の値を示した。これらの媒体は高密度記録
に適した十分に高い媒体S/Nを持ち、かつ記録情報の
長期間保持が可能であることがわかった。
【0032】
【発明の効果】本発明によると、高密度記録に適した十
分に高い媒体S/Nを持ち、かつ記録情報の長期間保持
が可能な垂直磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録直後に実測した媒体S/Nと記録後5年経
過して測定した場合に予想される媒体S/Nの関係をプ
ロットした図。
【図2】本発明の垂直磁気記録媒体の基本的な構造を示
す断面模式図。
【図3】垂直磁気記録媒体の残留磁化の経時変化を表す
図。
【図4】磁気粘性の揺らぎ場Hfと残留磁化の経時変化
4π×ΔIr/ln(Δt)の関係をプロットした図。
【図5】残留磁化の経時変化と磁気粘性の揺らぎ場の比
{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hfと磁性層の膜厚t
magの関係を表す図。
【図6】残留磁化の経時変化と磁気粘性の揺らぎ場の比
{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hfと磁気異方性定数
uの関係を表す図。
【図7】磁気異方性定数Kuと磁性層の膜厚tmagの関係
をプロットし、残留磁化の経時変化と磁気粘性の揺らぎ
場の比{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hfを1より小
さくするための磁性層の条件を示した図。
【符号の説明】
11…{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf>1の関係
を満たす媒体 12…{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf<1の関係
を満たす媒体 13…{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf<1かつH
f<30エルステッドの関係を満たす媒体 14…{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf<1/10
の関係を満たす媒体 21…非磁性基板 22…下地層 23…磁気記録層(磁性層) 24…保護潤滑層 31…Co−Cr−Pt媒体の測定結果 32…Co−Cr−Pt−Ta媒体の測定結果 41…{4π×ΔIr/ln(Δt)}/Hf=1を表す
境界線
フロントページの続き (72)発明者 伊藤 研也 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 山中 一助 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気記録層として、時間Δt(秒)の間
    に減少する残留磁化量ΔIr(emu/cm3)と、25
    ℃において測定した保磁力と等しい磁界強度での磁気粘
    性の揺らぎ場Hf(エルステッド)との間に、4π×Δ
    r/ln(Δt)<Hfの関係が成り立つ強磁性薄膜を
    用いたことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記磁気粘性の揺らぎ場Hfが30エル
    ステッド以上であることを特徴とする請求項1記載の垂
    直磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記磁気記録層としてコバルトとクロム
    を主たる成分とし膜厚が30nm以下であり、かつ磁気
    異方性定数が2×106erg/cm3以上である強磁性
    薄膜を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の垂
    直磁気記録媒体。
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