JPH10310476A - 粉体成形用バインダーおよび組成物、並びに焼結部材 - Google Patents

粉体成形用バインダーおよび組成物、並びに焼結部材

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JPH10310476A
JPH10310476A JP10059517A JP5951798A JPH10310476A JP H10310476 A JPH10310476 A JP H10310476A JP 10059517 A JP10059517 A JP 10059517A JP 5951798 A JP5951798 A JP 5951798A JP H10310476 A JPH10310476 A JP H10310476A
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JP
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binder
powder
powder molding
reaction
polymer
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Application number
JP10059517A
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English (en)
Inventor
Terunori Matsushita
輝紀 松下
Hiroya Kobayashi
博也 小林
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強靭で、割れ・膨れ等の欠陥のなく、かつカ
ーボン残さをほとんど含まない焼結部材を得るための粉
体成形用バインダーを提供する。 【解決手段】 ポリエーテルポリエステル構造を有する
数平均分子量500〜500,000の重合体を含んで
なる粉体成形用バインダーに関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属、セラミック
ス、サーメット等の焼結可能な粉体材料から焼結部材を
製造するにあたり、使用される粉体成形用バインダー、
粉体成形用組成物およびそれらを用いてなる成形体およ
び焼結部材に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、セラミックおよび金属製
品の複雑形状製品等の成形方法に、射出成形法、プレス
成形、押し出し成形、テープ成形、泥漿鋳込み成形等が
利用されている。これらの成形法では、粉体材料に流動
性を付与させるために種々の有機化合物、熱可塑性樹脂
を添加し、混練り後、これを成形用原料として成形し、
得られた成形体を脱脂、焼結することにより、焼結部材
製品が得られる。
【0003】欠陥のない焼結部材を得るために最も重要
な工程は、脱脂工程であり、現在行われている脱脂方法
として、(1)成形体を加熱し、含まれる有機バインダ
ーを加熱分解およびガス化させる熱分解法、(2)有機
溶剤等を用いて成形体から有機バインダーを溶出させ、
その後必要に応じて、有機バインダーを加熱分解および
ガス化させる溶剤抽出法の、二種類の方法が挙げられ
る。
【0004】加熱による有機バインダーを除去する
(1)の脱脂方法では、成形体中に欠陥を生じないよう
に脱脂するには、有機バインダーの加熱分解、および蒸
発が短時間に集中しないようにする必要がある。すなわ
ち、有機バインダーの加熱分解および蒸発が短時間に集
中すると成形体内部に圧力がかかり、割れおよび膨れの
原因になる。このことから脱脂中に割れ・膨れを生じな
いようにするためには、有機バインダーの加熱分解およ
び蒸発が徐々に行われるように長時間かける必要があ
る。特に、粉体材料の粒径が小さくなり、比表面積が大
きい場合には、成形を行う際の加熱流動を、安定して行
うために必要とされる有機バインダーの量が多くなり、
結果的に脱脂の際に加熱工程を多段階にする等の工夫が
必要となり、ますます脱脂に長時間を要する。現在、バ
インダーに昇華性物質を加える方法も考えられている
が、混練り・成形の際に昇華性物質が蒸発することが考
えられ、成形時のスプール・ランナー部の再生が困難で
ある。
【0005】次に、有機溶剤を用いて成形体から有機バ
インダーを溶出する(2)の方法では、溶媒により有機
バインダー中の溶媒に可溶な物質が溶出し、除かれた有
機バインダーの部分が通り道となって、残りの有機バイ
ンダーの加熱分解、蒸発が容易に行われる。そのため、
脱脂の際の割れや膨れ等の欠陥が生じにくくなる。しか
しながら、現在行われている溶剤抽出法では用いられる
有機バインダーに、鉱油、脂肪酸系油、天然油等の液体
原料を多量に用いることから、成形体から前記油が滲み
出すことが多く、長期の成形体原料の保管においても油
の滲み出しにより、安定した原料の保管が困難である。
また、長期保存した成形体では、表面に移行した油によ
り抽出脱脂等に割れや膨れ等が生じることが多い。
【0006】また、バインダーとして水溶性樹脂を用
い、この水溶性樹脂に水を用いて溶出することが、例え
ば特開平2−101101号公報に提案されている。こ
の発明では脱脂に水を用いることで、有機溶剤に比べ安
価で取り扱いが安全であるという長所がある。
【0007】しかしながら、溶剤に比べ成形体に対する
浸透度が劣る面があり、成形体内部に浸透した場合も溶
剤に比べ蒸発が遅く、特に多くの有機バインダーを必要
とする比表面積が10m2/g程度であるセラミック・
金属・サーメット粉体を用いた場合、抽出後に乾燥時間
が長くかかり、加熱により成形体内部に浸透した水を取
り除く場合、加熱温度が高くなると成形体に割れ、膨れ
を生じることがある。さらには、脱脂に水を用いるた
め、水に接触して錆びるような鉄、銅等の粉体は使用で
きなくなり、また、セラミックス、例えばSi34は水
と反応してアンモニアガスを発生するという問題があ
り、成形体としての原料が限定されるという問題点を有
する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の粉体
成形用バインダーの上記問題を解決するためになされた
ものである。すなわち本発明の目的は、脱脂工程におい
て溶媒や水を使用する必要が無く、しかも割れ・膨れ等
の欠陥のない成形体を得ることができ、さらに短時間で
脱脂の完了を可能にする粉体成形用バインダー、および
組成物を提供することにある。また、特定の構造をバイ
ンダー中に有することで、従来のバインダーよりも強度
の優れた粉体成形用組成物とその成形体を提供すること
でもある。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、下記
一般式(1):
【0010】
【化2】
【0011】(式中、Rは2価の有機残基、Zは4価の
有機残基であり、XおよびYはいずれも、水素原子、金
属原子、アンモニウム基および有機アミン基からなる群
より選ばれる、少なくとも1種であり、n=1〜100
0である。)で表される、ポリエーテルポリエステル構
造単位を有する数平均分子量500〜500,000の
重合体(I)を含んでなる粉体成形用バインダーに関す
る。
【0012】例えば、前記重合体(I)は、ポリエチレ
ングリコールをテトラカルボン酸二酸無水物で、鎖延長
反応することにより得られるポリエーテルポリエステル
を含む重合体である。
【0013】本発明の他の発明は、前記粉体成形用バイ
ンダーと、粉体とを含む粉体成形用組成物に関する。
【0014】また本発明の他の発明は、前記粉体成形用
組成物を成形してなる焼結部材に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の粉体成形用バインダー
を、構成するポリエーテルポリエステルは、前記一般式
(1)で示される構造単位を含有していることが必須で
ある。
【0016】本発明の粉体成形用バインダーは、特定の
ポリエーテルポリエステル構造を有しているので、従来
のポリエーテル構造のみを有するバインダーや、他のバ
インダーよりも強い機械的強度を有しており、本願発明
のバインダーを含有する粉体成形用組成物やその成形体
は、従来のバインダーで得ることのできる当該組成物や
成形体よりも優れた機械的強度を示す。よって、取り扱
いやすく好ましい。また、バインダーを除去する工程に
おいても、成形体の割れ、ふくれ、くずれ等が発生しに
くいので好ましい。
【0017】前記一般式(1)中のRとしては、2価の
有機残基であれば特に限定されないが、炭素数2〜6の
2価の有機残基が好ましく、具体的には、−CH2CH2
−、−CH2−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2
2−、等の構造単位が挙げられ、これらの1種または
必要に応じて2種以上を、混合したものであってもよ
い。
【0018】前記一般式(1)中のZとしては、4価の
有機残基であれば特に限定されないが、炭素数4〜20
の4価の有機残基が好ましく、具体的には、フェニル
基、ブチル基、ビフェニル基、p−ターフェニル基、ベ
ンゾフェニル基、シクロペンチル基、ナフチル基、ペリ
ル基、テトラヒドロフリル基、ジフェニルスルホニル基
等の4価の残基が挙げられ、これらの1種または必要に
応じて2種以上を混合したものであってもよい。
【0019】前記一般式(1)で示される構造単位とし
て、具体的には、下記に示す一般式(2)〜(12)等
の構造単位が挙げられ、これらの1種または必要に応じ
て2種以上を、混合したものであってもよい。
【0020】一般式(2):
【0021】
【化3】
【0022】一般式(3):
【0023】
【化4】
【0024】一般式(4):
【0025】
【化5】
【0026】一般式(5):
【0027】
【化6】
【0028】一般式(6):
【0029】
【化7】
【0030】一般式(7):
【0031】
【化8】
【0032】一般式(8):
【0033】
【化9】
【0034】一般式(9):
【0035】
【化10】
【0036】一般式(10):
【0037】
【化11】
【0038】一般式(11):
【0039】
【化12】
【0040】一般式(12):
【0041】
【化13】
【0042】(前記一般式(2)〜(12)中、Rは炭
素数2〜6の2価の有機基、Zは炭素数4〜20の4価
の有機基であり、XおよびYはいずれも、水素原子、金
属原子、アンモニウム基および有機アミン基から選ばれ
る1種または2種以上であり、n=1〜1000であ
る。) 前記一般式(1)、および(2)〜(12)中のXおよ
びYはいずれも、水素原子、金属原子、アンモニウム基
および有機アミン基からなる群より選ばれる少なくとも
1種であり、XとYは同じでも異なっていてもよい。
【0043】前記金属原子としては、カルボキシル基と
塩を形成するものであれば特に限定はないが、具体的に
はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、
亜鉛、チタン、ジルコニウム等が挙げられ、これらの1
種または必要に応じて2種以上を使用したものであって
もよい。
【0044】前記有機アミン基として、有機アミン類か
ら由来し、有機アミン類と、カルボキシル基とから塩を
形成してできる構造であれば特に限定はない。このよう
な有機アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、
ピリジン、トリプロピルアミン、1,4−ジアザビシク
ロ〔2.2.2〕オクタン、テトラメチルエチレンジア
ミン等が挙げられ、これらの1種または必要に応じて2
種以上を使用したものであってもよい。
【0045】前記ポリエーテル構造単位:nは、1以上
であれば特に限定はないが、通常は1〜1000、好ま
しくは25〜700である。ポリエーテル構造単位:n
が前述の範囲より小さくなると親水性が低下し、ポリエ
ーテルポリエステル構造を有する樹脂バインダーを水に
溶解させて、焼結用粉体と混合できない場合が生じる。
また、熱安定性が高くなり、脱脂温度が高くなったり、
昇温を多段階で行うなど脱脂工程が煩雑になる。一方、
ポリエーテル構造単位:nが前述の範囲より大きくなる
と、樹脂バインダーに占める、ポリエステルおよび/ま
たは、ポリカルボン酸および/またはポリカルボン酸塩
の割合が小さくなり、本発明にかかる樹脂バインダーの
特徴である、成形用粉体に対する濡れ性が低下し、成形
用粉体に対する樹脂バインダーの分散性が低下するため
に、均一な成形用粉体組成物が得られなくなかったり、
得にくくなる。このような状態で焼結を行うと、成形品
の割れ・膨れが生じてしまうために好ましくない。
【0046】また、前記一般式(1)で示されるポリエ
ーテルポリエステル構造を有する樹脂バインダーの数平
均分子量は、500〜500,000である。好ましく
は1,000〜400,000であり、さらに好ましく
は10,000〜300,000、最も好ましくは、3
0,000〜300,000である。ポリエーテルポリ
エステル構造を有する、樹脂バインダーの数平均分子量
が前述の範囲より小さいと、成形時にジェッティングが
起きたり、得られる成形体の強度が弱くなる場合があ
る。一方、前述の範囲より大きいと、粉体材料との濡れ
性が低下して焼結部材の強度が低下したり、成形時の作
業性が低下したり、脱脂時に成形体に割れや膨れ等が生
じたり、脱脂時に時間がかかる場合がある。
【0047】本発明にかかる、ポリエーテルポリエステ
ルの構造を有する樹脂バインダーは、例えば、ポリエチ
レングリコールとテトラカルボン酸二酸無水物との反応
等により得られる。
【0048】前記反応の原料として用いる、ポリエチレ
ングリコールの数平均分子量は特に限定はないが、通常
200〜30,000、好ましくは300〜30,00
0であり、より好ましくは700〜25,000、最も
好ましくは1,000〜20,000である。ポリエチ
レングリコールの平均分子量が前述の範囲より小さい
と、ポリエステル成分が多くなり、ポリエーテルポリエ
ステルの耐熱性が向上する。粉体成形用バインダーとし
て用いた時、脱脂温度が高くなったり、昇温を多段階で
行うなど脱脂工程が煩雑になる。また、本発明にかかる
樹脂バインダーの特徴である水溶性が低下する。さら
に、後述するテトラカルボン酸二無水物との鎖延長反応
を行って、ポリエーテルポリエステルを合成する場合、
十分に分子量が上がらず、射出成形等の成形を行ったと
き、十分な機械的強度が発揮されなくなるため樹脂バイ
ンダーとしての性能も低下するか、または損なわれる。
【0049】一方、ポリエチレングリコールの平均分子
量が前述の範囲より大きいと、後述するテトラカルボン
酸二酸無水物との鎖延長反応を行って、ポリエーテルポ
リエステルを合成して得られたものは、樹脂バインダー
に占める、ポリエステルおよび/または、ポリカルボン
酸および/またはポリカルボン酸塩の割合が小さくな
り、本発明にかかる樹脂バインダーの特徴である成形用
粉体に対する濡れ性が低下し、成形用粉体に対する樹脂
バインダーの分散性が低下するために、均一な成形用粉
体組成物が得られなくなかったり、得にくくなる。この
ような状態で焼結を行うと、成形品の割れ・膨れが生じ
てしまうために好ましくない。
【0050】前記反応の原料として用いるテトラカルボ
ン酸二酸無水物であるが、酸無水物基が2つあれば特に
限定はない。具体的には、ブタン−1,2,3,4−テ
トラカルボン酸二酸無水物、二無水ピロメリット酸、ビ
フェニルテトラカルボン酸二酸無水物、p−ターフェニ
ル3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二酸無水物、
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸
二酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカ
ルボン酸二酸無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テ
トラカルボン酸二酸無水物,3,4,9,10−ペリレ
ンテトラカルボン酸二酸無水物、2,3,4,5−テト
ラヒドロフランテトラカルボン酸二酸無水物、3,
3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸
二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−
2,3,5,6−テトラカルボン酸二酸無水物等が挙げ
られ、これらの中から1種または2種以上を用いてもよ
い。
【0051】これらのテトラカルボン酸二酸無水物の中
で、二無水ピロメリット酸、ブタン−1,2,3,4−
テトラカルボン酸二酸無水物、3,3’,4,4’−ベ
ンゾフェノンテトラカルボン酸二酸無水物から選ばれる
少なくとも1種または2種以上であると、反応性および
製造効率が高いためにさらに好ましい。
【0052】前記テトラカルボン酸二酸無水物を用いる
場合、中和剤を用いてもよい。該中和剤は、金属化合
物、金属単体、アンモニアおよびアミン類からなる群よ
り選ばれる、少なくとも1種が添加される。
【0053】前記中和剤として用いられる、金属化合物
および金属単体を構成する金属原子の具体例としては、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウ
ム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシ
ウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、チタン、
ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロ
ム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニ
ウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、
ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウム、水銀、アルミニ
ウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲル
マニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、スカンジ
ウム等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上
を用いてもよく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ル
ビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、スト
ロンチウム、バリウム、クロム、マンガン、鉄、コバル
ト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジル
コニウムから選ばれる1種または2種以上であると比較
的取り扱いやすく、カルボン酸塩として導入されやす
く、比較的安定な塩となるため好ましい。前記中和剤と
して用いられる金属化合物としては、上記金属原子から
なる酸化物、カルボン酸塩、金属アルコキシド、炭酸
塩、水酸化物、水素化物、過酸化物、塩化物、硫酸塩、
硝酸塩、リン酸塩、亜硫酸塩、炭化物等が挙げられる。
これらの金属化合物は1種または必要に応じて2種以上
を使用したものでもよい。中でも、金属化合物が、酸化
物、炭酸塩、水酸化物、カルボン酸塩から選ばれる少な
くとも1種であると、ポリエチレングリコールおよびポ
リエーテルポリエステルに対する相溶性がよいため、金
属を容易に導入することができ、安全性が高く、製造時
の取り扱いが容易で、安価であるために好ましい。
【0054】前記中和剤としては、金属化合物でない金
属単体をそのまま使用することもできる。金属単体の具
体例として特に好ましいものとして、リチウム、ナトリ
ウム、カリウム等が挙げられる。ただし、このような金
属単体を使用する場合は、空気や湿気で反応し、火災を
引き起こす危険性が高いので安全性に万全を期する必要
がある。
【0055】前記中和剤として用いられるアミン類の具
体例としては、トリメチルアミン、トリエチエルアミ
ン、トリプロピルアミン、ピリジン、ピロリジン、ピロ
ール、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルア
ミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアザビシク
ロ[2.2.2]オクタン、ヒドラジン、N,N−ジメ
チルシクロヘキシルアミン、エチルアミン、アニリン、
トルイジン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリ
ルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミ
ン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、2−エ
チルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキ
シ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジ
イソブチルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルア
ミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、3−(ジブチル
アミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミ
ン、トリ−n−オクチルアミン、tert−ブチルアミ
ン、2−ブチルアミン、ピコリン、ビニルピリジン、ピ
ペコリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、エタノ
ールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミ
ン等を挙げることができる。これらのアミン類は1種ま
たは必要に応じて2種以上を使用したものでも良い。中
でも、アミン類がトリエチルアミン、ピリジン、トリプ
ロピルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]
オクタン、テトラメチルエチレンジアミンから選ばれる
少なくとも1種であると、入手し易く安価であり、アミ
ン類がカルボン酸塩として導入しやすいため好ましい。
【0056】前記中和剤の使用量は、テトラカルボン酸
二酸無水物1モルに対して0.001〜10.0モルで
あれば特に限定はなく、好ましくは0.01〜6.0モ
ル、さらに好ましくは0.05〜5.0モル、最も好ま
しくは、0.1〜4.0モルである。添加量が前述の範
囲より多いと、中和剤がポリエーテルポリエステル中に
均一に分散、溶解できなくなるため、ポリエーテルポリ
エステルの機械的強度が低下する。また、中和剤が少な
いと、反応時間が長くなり、製造効率が低下する。中和
剤の添加量が前述の範囲よりも少ないと、中和剤の添加
効果であるpH調整効果および機械的強度を増加させる
効果が著しく低下する。中和剤の添加時期は、ポリエー
テルポリエステルを合成するに際して、反応の開始時、
反応中、反応後のいつでも良いが、反応の開始時および
/または反応中に中和剤を存在させる方が、製造効率が
高くなるために好ましい。中和剤の添加の際、中和剤の
分散を良くするために溶媒を用いても構わないが、無溶
媒の方が溶媒を除去する工程を省略できるため効率がよ
い。
【0057】前記の反応を行う際の反応温度は、特に限
定はされない。好ましくは70〜300℃、さらに好ま
しくは80〜200℃、最も好ましくは90〜180℃
である。反応温度が前述の範囲より低いと、反応時間が
何時間もかかったり、未反応の原料が残るなど生産効率
が低下する場合があるため好ましくない。また、反応温
度が前述の範囲より高いと、反応中に生成したポリエー
テルポリエステルが熱劣化を起こす場合があるため、好
ましくない。
【0058】前記の反応を行う際の反応圧は、通常0.
003MPa以上、好ましくは0.030以上、さらに
好ましくは0.080MPa以上、最も好ましくは0.
094MPa以上である。反応圧が低すぎると、反応系
は減圧状態となり、得られるポリエーテルポリエステル
中の水酸基等との間で、副反応である脱水反応が促進さ
れる。副反応が促進されると、ポリエーテルポリエステ
ルのカルボキシル価が低下し、ポリエーテルポリエステ
ルの分子間に存在するカルボキシル基等の凝集力が失わ
れ、機械的強度が著しく低下する。
【0059】前記、低分子量ポリアルキレンオキサイド
を、テトラカルボン酸二酸無水物によって鎖延長する反
応において、反応系内に存在する活性プロトン化合物の
量に着目して、その活性プロトン化合物の含有量は5,
000ppm以下であることが好ましい。特に低分子量
ポリアルキレンオキサイドを、テトラカルボン酸二酸無
水物によって鎖延長する反応においては、典型的な活性
プロトン化合物は水であり、原料である、低分子量ポリ
アルキレンオキサイドに多く含まれる。
【0060】前記、反応系とは、低分子量ポリアルキレ
ンオキサイドおよび/またはテトラカルボン酸二酸無水
物および/または中和剤および/または反応系内に残存
する気体および/または反応装置および/または原料導
入部であり、反応原料や反応生成物と直接または窒素・
アルゴン・ヘリウムのような不活性気体等を介在して間
接的に触れる可能性のある部分全てを含む。
【0061】本発明に係る反応系内の活性プロトン化合
物(低分子量ポリアルキレンオキサイドの場合の典型は
水)の含有量は、5,000ppm以下に調整すること
が好ましく、さらに好ましくは、1,000ppm以
下、また、さらに好ましくは、500ppm以下、最も
好ましくは、200ppm以下である。
【0062】活性プロトン化合物(低分子量ポリアルキ
レンオキサイドの場合の典型は水)の含有量が前述の範
囲より大きくなると、テトラカルボン酸二酸無水物の該
活性プロトン化合物に対しての反応活性が、低分子量ポ
リアルキレンオキサイドより高いため、低分子量ポリア
ルキレンオキサイドと反応する前に反応が起こり、本来
目的とする低分子量ポリアルキレンオキサイドとの反応
が、起こりにくくなったり、起こらなくなったりするた
め好ましくない。
【0063】つまり、該反応が起こりにくい、あるいは
起こらないと目的とする鎖延長反応が有効に行われない
ので好ましくない。
【0064】同様に、水以外の活性プロトン化合物も低
分子量ポリアルキレンオキサイドとテトラカルボン酸二
酸無水物との反応を阻害する要因になる。水分以外の活
性プロトン化合物の具体例としては、メタノール、エタ
ノール、プロパノール、フェノール、エチレングリコー
ル等のアルコール化合物、アンモニア、メチルアミン、
アニリン等のアミン化合物、水素化ナトリウム、水素化
カルシウム等の水素化化合物、水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム等の水酸化物、酢酸、ギ酸、シュウ酸、アク
リル酸等のカルボキシル基を持ったカルボン酸化合物、
硫酸、硝酸、塩酸、リン酸等の無機酸類、リンタングス
テン酸、リンモリブデン酸、トリフルオロメタンスルホ
ン酸等のヘテロポリ酸類、その他、250℃以下で大気
圧下または、1Pa〜0.09MPaの真空下で揮発性
があり酸無水物基と反応性のある置換基を持った化合物
が挙げられる。
【0065】上記に挙げた水分以外の活性プロトンを持
つ化合物が、反応系内に含まれる場合、5,000pp
m以下である方が好ましい。さらに好ましくは、1,0
00ppm以下、また、さらに好ましくは、500pp
m以下、最も好ましくは、200ppm以下である。上
述した様に、低分子量ポリアルキレンオキサイドの場
合、その典型的な活性プロトン化合物は水であり、いか
に含有される水の量が少ない原料の、低分子量ポリアル
キレンオキサイドを選択して使用することは好ましい。
また、以下具体的に述べるが、例えば反応系から水分を
除去あるいは、脱揮しながら該鎖延長反応をすること
も、該反応の好ましい実施形態である。反応系内の活性
プロトン化合物の量を、少なくする目的で行われる手法
は特に限ることなく、この反応に応用することができ
る。
【0066】例えば、上述の様に原料として、活性プロ
トン化合物(典型的は水)の量が少ない低分子量ポリア
ルキレンオキサイドを選択して使用することは好ましい
が、活性プロトン化合物(典型的は水)の量が多くて
も、除去あるいは脱揮しながら反応させる等の工夫で、
系内の活性プロトン化合物の量を低減させることがで
き、該鎖延長反応を有効に起こさせることができる。
【0067】前記の反応を行う際には、高粘度用反応装
置を用いて反応を行うと、さらに容易に効率良く製造す
ることができるため好ましい。高粘度用反応装置の具体
例としては、変形翼を連ねた攪拌軸を並べて配置した横
型二軸混練装置、並べて配置された2本の攪拌軸と、前
記攪拌軸に位相を変形させて組み込まれた凸レンズ形状
のパドルとを有する、セルフクリーニング型の横型二軸
混練装置、格子状の翼を連ねた軸無し構造の攪拌部を並
べて配置した横型二軸混練装置、内側に配置された板状
攪拌翼と、前記板状攪拌翼の外側に同芯状に配置された
変形螺旋状翼とを有する縦型混練装置、逆円錐リボン翼
を有する縦型混練装置、ねじり格子状の翼を連ねた軸無
し構造の攪拌翼を有する縦型混練装置一軸または二軸押
し出し機、排出用の一軸または二軸押し出し機を備えて
いる、変形翼を連ねた攪拌軸を並べて配置した横型二軸
混練装置等が挙げられる。
【0068】上述の高粘度用反応装置に脱揮装置を併設
し、低分子量ポリアルキレンオキサイドとテトラカルボ
ン酸二酸無水物との反応で、ポリエーテルポリエステル
を合成しながら平行して脱揮を行い、反応を目的のレベ
ルまで完結させることもできる。
【0069】また、上記高粘度用反応装置でポリエーテ
ルポリエステルを合成しながらおよび/または合成後
に、成形用粉体、助バインダー、流動化剤等を混合して
もよい。
【0070】また、前記の反応を行う際には、反応初期
においては低粘度であるが、反応後期になると分子量と
ともに粘度も上昇して攪拌が困難になるのを防ぐため
に、溶媒を使用してもよい。反応溶媒の具体例として
は、ベンゼン、トルエン、キシレン、炭酸エチレン、炭
酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、
酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサ
ン、アニソール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエ
チルケトン、メチルプロピルケトン、ジクロロメタン、
ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトニ
トリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド、エチレンジ
アミン、プロピレンジアミン等を挙げることができる。
これらの反応溶媒の1種または必要に応じて2種以上を
混合したものを使用してもよい。
【0071】本発明に係る粉体成形用組成物は、前記粉
体成形用バインダーと粉体とを含むものである。
【0072】前記粉体成形用バインダーは、単独でとし
て優れた性能を有しているが、使用する焼結可能な粉体
材料の種類により、更に、助バインダーおよび/または
流動化剤を混合した形態で使用することも可能である。
【0073】助バインダーとしては、例えば、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリブ
チルメタクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸(エステ
ル)、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)等の(メタ)アク
リル系(共)重合体、ポリビニルアルコールおよびその
他の熱可塑性重合体、カルボキシメチルセルロース、グ
ルコース、メチルセルロース、でんぷん、デキストリ
ン、糖蜜、ゼラチン、パルプ廃液、ペプトン、ポリビニ
ルエーテル、エチルセルロース、アセチルセルロース、
ワックス、流動パラフィン、重油、機械油、フェノール
樹脂、エチルシリケート、ポリアセタール、ナイロン系
樹脂等を挙げることができ、これらの1種または2種以
上を使用することができる。
【0074】流動化剤としては、例えば、パラフィンワ
ックス、マイクロクリスタリンワックス、ウレタン化ワ
ックス、およびフィッシャートロプシュワックス等のワ
ックス類、ポリエチレングリコール、ステアリン酸等の
高級脂肪酸、ステアリン酸ジグリコール等の高級脂肪酸
エステル、パン粉、鉱油、ジエチルフタレート、ジブチ
ルフタレート、ジオクチルフタレート等の脂肪酸ジエス
テル、脂肪酸モノエステルを挙げることができ、これら
の1種または2種以上を使用することができる。 前記
粉体成形用バインダーと、前記助バインダーおよび/ま
たは前記流動化剤の混合方法については、特に制限はな
く、従来の混合方法を使用することができる。例えば、
ニーダー等を用いて、70〜200℃で0.1〜3時間
混合を行えばよい。
【0075】本発明の粉体成形用組成物に含有される粉
体としては、焼結可能な粉体であれば特に限定はない。
例えば、金属(クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッ
ケル、銅、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウ
ム、鉛、ケイ素、スズ、金、銀、プラチナ、ステンレ
ス、チタン、タングステンおよびそれらの合金等)、左
記金属原子からなる酸化物、カルボン酸塩、金属アルコ
キシド、炭酸塩、水酸化物、水素化物、過酸化物、塩化
物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、亜硫酸塩、炭化物等、
磁性材料、炭素鋼、セラミックスおよびサーメット等が
挙げられる。これらの粉体は、1種または必要に応じて
2種以上を使用したものでもよい。
【0076】前記バインダーおよび前記組成物を、前記
粉体に混合する方法についても、特に制限はなく、従来
の混合方法を使用することができる。例えば、ニーダー
等を用いて、70〜200℃で0.1〜3時間混合を行
えばよい。
【0077】本発明の、ポリエーテルポリエステル構造
を有するバインダーの粉体に対する添加量は、粉体材料
の種類や粉体材料との混合方法によって異なるため特に
限定されるものではないが、0.001重量%〜50.
0重量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.05
重量%〜30.0重量%である。ポリエーテルポリエス
テル構造を有するバインダーと、粉体との混合比が前述
の範囲より小さい場合、添加量が少なすぎて十分に成形
用粉体とバインダーが混合しないため、均一かつ実用上
十分な強度を持つ成形用粉体組成物が得られなかった
り、得られにくくなるため好ましくない。一方、前述の
範囲より大きいため、添加量が多すぎるため、脱脂行程
において割れ・膨れ等の欠陥が生じるため好ましくな
い。
【0078】本発明の焼結部材は、前記粉体成形用組成
物を成形してなる焼結部材に関する。
【0079】本発明の焼結部材は、例えば、(i)前記
粉体成形用組成物を成形し成形体を得る工程、(ii)
(i)で得られた成形体を脱脂する工程、(iii)
(ii)で処理された成形体を加熱して焼結する工程、
を有する方法により得られる焼結部材である。
【0080】(i)の工程における前記粉体成形用組成
物を成形する方法は、特に限定されるものではないが、
例えば、射出成形の場合、70〜200℃で50〜1,
500kgf/cm2の条件で行うことができる。
【0081】(ii)の工程における脱脂方法も特に限
定されるものではない。通常、樹脂バインダーは溶剤あ
るいは水による脱脂も可能であるが、樹脂バインダーの
熱分解性を利用して、加熱による脱脂を行う方が、溶剤
回収や排水処理といった問題も生じないことから好まし
い。
【0082】したがって、本発明の好ましい脱脂方法
は、脱脂炉にて常圧、減圧、真空のいずれかの雰囲気中
で加熱を行い、本発明の粉体成形用バインダーを除去す
る。この際の条件は特に制限はなく、一般の方法が用い
られる。例えば、窒素雰囲気下で室温から500℃まで
30〜100℃/時の昇温速度で行われる。この際、本
発明の樹脂バインダーが溶融、熱分解によって脱脂さ
れ、さらに温度の上昇に伴い助バインダーやその他の有
機物が脱脂される。
【0083】有機溶剤による脱脂を行う場合に使用する
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、炭酸エ
チレン、炭酸プロピレン、メタノール、エタノール、プ
ロパノール、ブタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢
酸プロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、1,4
−ジオキサン、アニソール、アセトン、メチルエチルケ
トン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジクロ
ロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭
素、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビト
ール、ブチルセロソルブ、酢酸、アセトニトリル、ピリ
ジン、ジメチルホルムアミド、アセトアルデヒド、エチ
レンジアミン、プロピレンジアミン等を使用することが
できる。脱脂は、20〜80℃で10〜360分行うの
が好ましい。必要に応じて攪拌を行い脱脂を促進するこ
とも可能である。溶剤による脱脂工程では、本発明の粉
体成形用バインダーの、70〜90%を除去するのが好
ましい。次いで、脱脂炉にて常圧、減圧、真空のいずれ
かの雰囲気中で加熱を行うことにより、残りのバインダ
ーおよび助バインダー、その他の有機物が脱脂される。
【0084】(iii)の工程における焼結方法は、通
常脱脂後の成形体を焼結することによる。この際の条件
は一般の条件が使用でき、例えば、真空中あるいは不活
性ガス中、1,300℃で2時間保持するといった条件
で行われる。
【0085】以上、本発明の焼結部材は、例えば、
(i)〜(iii)の工程を有する方法を用いることに
より、高品質でかつ効率よく得られる。
【0086】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0087】(分子量)ゲルパーミエーションクロマト
グラフを用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量を測
定した。
【0088】(引張試験)JIS K7121に準拠し
て、試験速度20mm/minで引張試験を行った。
【0089】実施例A1 100ミリリットルフラスコに、数平均分子量20,0
00のポリエチレングリコールを10部仕込み、140
℃で2時間減圧脱揮を行い、反応系内の水分および活性
プロトンを除去した。ポリエチレングリコールに含まれ
る水分量をカールフィッシャー水分計にて測定したとこ
ろ、186ppmであった。窒素気流下、二無水ピロメ
リット酸0.105部を仕込み、1.5時間、大気圧
下、窒素気流中、150℃で鎖延長反応を行いポリエー
テルポリエステル構造を有する樹脂バインダー(1)を
得た。得られたポリエーテルポリエステルは、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフ測定結果から、数平均分子
量は14.7万であった。
【0090】得られた樹脂バインダー(1)7部とアル
ミナ粉末(昭和軽金属製AL−45−2)22部を13
0℃でニーダーを用いて20分間混合し、粉体成形用組
成物を得た。得られた粉体成形用組成物を加熱プレスに
よって、厚さ216μmのフィルムに成形した。このフ
ィルムの破断強度を測定したところ96.3kgf/c
2であった。
【0091】実施例A2 100ミリリットルフラスコに、数平均分子量13,0
00のポリエチレングリコールを10部仕込み、150
℃で1.5時間減圧脱揮を行い、反応系内の水分および
活性プロトンを除去した。ポリエチレングリコールに含
まれる水分量をカールフィッシャー水分計にて測定した
ところ、261ppmであった。窒素気流下、二無水ピ
ロメリット酸0.151部を仕込み、2時間、大気圧
下、窒素気流中、130℃で鎖延長反応を行いポリエー
テルポリエステル構造を有する樹脂バインダー(2)を
得た。得られたポリエーテルポリエステルは、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフ測定結果から、数平均分子
量は11.3万であった。
【0092】得られた樹脂バインダー(2)7部とアル
ミナ粉末(昭和軽金属製AL−45−2)23部を13
0℃でニーダーを用いて20分間混合し、粉体成形用組
成物を得た。得られた粉体成形用組成物を加熱プレスに
よって、厚さ224μmのフィルムに成形した。このフ
ィルムの破断強度を測定したところ98.9kgf/c
2であった。
【0093】実施例A3 1リットルニーダーに、数平均分子量4,000のポリ
エチレングリコールを500部仕込み、140℃で2時
間減圧脱揮を行い、反応系内の水分および活性プロトン
を除去した。ポリエチレングリコールに含まれる水分量
を、カールフィッシャー水分計にて測定したところ、5
27ppmであった。窒素気流下、二無水ピロメリット
酸27.0部を仕込み、2時間、大気圧下、窒素気流
中、110℃で鎖延長反応を行いポリエーテルポリエス
テル構造を有する樹脂バインダー(3)を得た。得られ
たポリエーテルポリエステルは、ゲルパーミエーション
クロマトグラフ測定結果から、数平均分子量は7.5万
であった。
【0094】得られた樹脂バインダー(3)6部とアル
ミナ粉末(昭和軽金属製AL−45−2)25部を13
0℃でニーダーを用いて20分間混合し、粉体成形用組
成物を得た。得られた粉体成形用組成物を加熱プレスに
よって、厚さ196μmのフィルムに成形した。このフ
ィルムの破断強度を測定したところ85.4kgf/c
2であった。
【0095】実施例A4 1リットルフラスコに、数平均分子量14,000のポ
リエチレングリコールを500部、炭酸カルシウム4.
09部仕込み、130℃で2時間減圧脱揮を行い、反応
系内の水分および活性プロトンを除去した。ポリエチレ
ングリコールに含まれる水分量をカールフィッシャー水
分計にて測定したところ、98ppmであった。窒素気
流下、二無水ピロメリット酸7.86部を仕込み、2時
間、大気圧下、窒素気流中、120℃で鎖延長反応を行
い、ポリエーテルポリエステル構造を有する樹脂バイン
ダー(4)を得た。得られたポリエーテルポリエステル
は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定結果か
ら、数平均分子量は15.2万であった。
【0096】得られた樹脂バインダー(4)7部とアル
ミナ粉末(昭和軽金属製AL−45−2)23部を13
0℃でニーダーを用いて20分間混合し、粉体成形用組
成物を得た。得られた粉体成形用組成物を加熱プレスに
よって、厚さ239μmのフィルムに成形した。このフ
ィルムの破断強度を測定したところ90.1kgf/c
2であった。
【0097】比較例A1 樹脂バインダーを分子量約200,000のポリエチレ
ンオキサイドに変えた以外は、実施例A1と同様に行
い、粉体成形用組成物を得た。得られた粉体成形用組成
物を加熱プレスによって厚さ256μmのフィルムに成
形した。このフィルムの破断強度を測定したところ5
1.0kgf/cm2であった。
【0098】実施例A1〜A4で示したように、ポリエ
ーテルポリエステル構造を有する樹脂バインダーから得
られた、粉体成形用組成物は、比較例A1で得られた粉
体成形用組成物より強い機械的強度を有している。した
がって、実施例例A1〜A4で得られた、ポリエーテル
ポリエステル構造を有する樹脂バインダーを用いれば、
高強度の粉体成形用組成物が提供可能であることが明か
である。
【0099】実施例B1 実施例A1で得られた樹脂バインダー(1)2.0部、
ポリプロピレン(徳山曹達製、PN670)2.2部お
よびパラフィンワックス(日本精蝋製、SP0145)
5.0部を、加圧ニーダー内で135℃にて40分間加
熱・混練することにより、粉体成形用バインダー(I)
を得た。
【0100】得られた粉体成形用バインダー(I)9.
2部を粒径10〜20μmのSUS316L粉末(三菱
製鋼製、粒径10.6μm、タップ密度4.28g/c
3)100部に添加し、加圧ニーダーを用いて150
℃で40分間混練し、取り出した後混練物を粉砕するこ
とにより、粉体成形用組成物(I)を得た。
【0101】得られた粉体成形用組成物(I)を、成形
温度150℃、射出圧力1750kgf/cm2で射出
成形し、厚み4mm、幅10mm、長さ50nmの成形
体(I)を得た。
【0102】得られた成形体(I)を電気炉に入れ、5
0℃で2時間保持した後、20℃/時間の昇温速度で3
70℃まで昇温し、さらに370℃で2時間保持するこ
とにより成形体(I)の脱脂を行った。成形体(I)の
脱脂率は92.2%であった。 得られた脱脂後の成形
体(I)を、50℃の電気炉に入れ、空気雰囲気下10
0℃/時間の昇温速度で600℃まで昇温した。600
℃で2時間保持した後、200℃/時間の昇温速度で1
300℃まで昇温し、さらに1300℃で2時間保持し
た後室温まで放冷することにより、焼結部材(I)を得
た。得られた焼結部材に残存するカーボン残さ(有機物
すなわち残存しているバインダーの量を示す値である)
は50ppmであった。また、焼結部材(I)には、割
れ・膨れは認められなかった。
【0103】比較例B1 粉体成形用バインダーとしてポリプロピレン4.0部お
よびパラフィンワックス5.1部を、加圧ニーダー内で
140℃にて40分間加熱・混練することにより得られ
た比較例粉体成形用バインダー(I)を用いた以外は、
実施例B1と同様にして、金属粉と粉体成形用バインダ
ーとの混練、成形、脱脂を行い、脱脂後の比較例成形体
(I)を得た。比較例成形体(I)の脱脂率は88.4
%であった。得られた脱脂後の比較例成形体(I)を、
さらに実施例B1と同様に焼結することにより、比較例
焼結部材(I)を得た。得られた焼結部材内に残存する
カーボン残さは1200ppmであった。また、比較例
焼結部材(I)には、割れ・膨れが認められた。
【0104】実施例B1と比較例B1の結果より、本発
明の粉体成形用バインダーを使用することによって、脱
脂を高速かつ円滑に行うことが可能となり、しかも焼結
後のカーボン残さの低減に効果があることは明かであ
る。
【0105】比較例C1 100ミリリットルフラスコに、5,174ppmの水
分を含む数平均分子量20,000のポリエチレングリ
コールを10部仕込み、窒素気流下、二無水ピロメリッ
ト酸0.106部を仕込み、1.5時間、大気圧下、窒
素気流中、150℃で鎖延長反応を行い、ポリエーテル
ポリエステル構造を有する樹脂バインダー(1)を得
た。得られたポリエーテルポリエステルは、ゲルパーミ
エーションクロマトグラフ測定結果から、数平均分子量
は6.5万であった。
【0106】得られた樹脂バインダー(1)7部とアル
ミナ粉末(昭和軽金属製AL−45−2)22部を13
0℃でニーダーを用いて20分間混合し、粉体成形用組
成物を得た。得られた粉体成形用組成物を加熱プレスに
よって、厚さ209μmのフィルムに成形した。このフ
ィルムの破断強度を測定したところ28.1kgf/c
2であった。
【0107】実施例A1〜A4と比較例C1の結果よ
り、原料中および/または反応系内の水分量が少ない状
態で得られた、ポリエーテルポリエステルは、鎖延長反
応の重合度が大きくなり、分子量も大きくなっているこ
とが明かであり、また、得られたポリエーテルポリエス
テルを含有する、粉体成形用組成物からなるフィルムの
破断強度もより強いものが得られる。
【0108】一方、比較例C1の水分量の多い反応系で
の鎖延長反応で得られたポリエーテルポリエステルは、
重合度が低く、分子量もあまり大きくならない。さら
に、このポリエーテルポリエステルからなる粉体成形用
組成物のフィルムの破断強度は、脆弱であることは明か
である。
【0109】したがって、粉体成形用樹脂組成物用とし
てポリエーテルポリエステルを合成する際、反応系内の
活性プロトン化合物の典型である水の量をできるだけ少
なくした方が、より分子量が高く、より強度の高い粉体
成形用樹脂組成物用のポリエーテルポリエステルが得ら
れ、粉体成形用バインダーとして好ましく利用すること
ができる。当該バインダーを含有する粉体成形用組成物
も優れた特性をもつ。また、当該粉体成形用組成物を成
形して得られる成形体も従来にない優れた(強度、脱脂
工程の安定性等)ものとすることができる。
【0110】
【発明の効果】本発明の粉体成形用バインダーは柔軟か
つ強靭であるため、本発明の粉体成形用バインダーを使
用すれば、焼結可能な粉体材料の成形を成形性よく行う
ことができる。さらに、本発明の粉体成形用バインダー
は、焼結後のカーボン残さがほとんど皆無であることか
ら、チタンやタングステン、磁性材料や炭素鋼といった
カーボン残さの制御を、非常に厳密に行う必要のある素
材の焼結部材の製造に特に好ましく用いられる。
【0111】さらに、本発明の粉体成形用バインダーの
効果を以下にまとめると、 (1)成形用粉体への濡れ性がよいため、高い強度の粉
体成形用組成物が得られる。
【0112】(2)金属、セラミックス、サーメットに
対する親和性が良好であるため、混練時にバインダー成
分が粉体材料に均一に浸透する。
【0113】(3)滑性に優れているため成形時の流動
性が非常に良好である。
【0114】(4)粘度、分子量のバランスが良好であ
るため成形時にはジェッティング等の問題が生じない。
【0115】以上の特徴により、薄肉形状や、偏肉形状
はもちろんのこと、著しく複雑な形状の焼結部材を量産
性よく製造することができる。
【0116】また本発明の粉体成形用バインダーを用い
ると、脱脂工程において溶媒や水を使用する必要がな
く、しかも割れ・膨れ等の欠陥のない成形体を得ること
ができる。
【0117】本発明の粉体成形用組成物を用いれば、薄
肉形状や、偏肉形状はもちろんのこと、著しく複雑な形
状の焼結部材を量産性よく製造することができる。ま
た、脱脂工程において溶媒や水を使用する必要がなく、
しかも割れ・膨れ等の欠陥のない成形体を得ることがで
きるという効果を奏する。
【0118】本発明の焼結部材は、カーボン残さが少な
く、割れ・膨れ等の欠陥が少ないという特徴を有する。
そのため、鋳物、陶磁器、IC基板等の各種ファインセ
ラミックス等の用途に有用である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1): 【化1】 (式中、Rは2価の有機残基、Zは4価の有機残基であ
    り、XおよびYはいずれも、水素原子、金属原子、アン
    モニウム基および有機アミン基からなる群より選ばれる
    少なくとも1種であり、n=1〜1000である。)で
    表されるポリエーテルポリエステル構造単位を有する数
    平均分子量500〜500,000の重合体(I)を含
    んでなる粉体成形用バインダー。
  2. 【請求項2】 前記重合体(I)が、ポリエチレングリ
    コールをテトラカルボン酸二酸無水物で鎖延長反応する
    ことにより得られる、ポリエーテルポリエステルを含む
    重合体である請求項1記載の粉体成形用バインダー。
  3. 【請求項3】 前記重合体(I)が、反応系内の活性プ
    ロトン化合物の量を5,000ppm以下に調整して、
    該鎖延長反応を行うことによって得られる重合体である
    ことを特徴とする、請求項1または2記載の粉体成形用
    バインダー。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の反応系内の活性プロトン
    化合物が、水であることを特徴とする、請求項3記載の
    粉体成形用バインダー。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉
    体成形用バインダーと、焼結可能な粉体とを含有するこ
    とが特徴の粉体成形用組成物。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の粉体成形用組成物を成形
    してなる成形体。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の成形体を脱脂、焼結させ
    ることで得られる焼結部材。
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JP2009024179A (ja) * 2003-11-06 2009-02-05 Mitsubishi Chemicals Corp ポリエステル
CN105764987A (zh) * 2013-11-29 2016-07-13 和仁化学株式会社 粉末搪塑组合物

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