JPH10310435A - 高純度硫酸ニッケルの精製方法 - Google Patents

高純度硫酸ニッケルの精製方法

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JPH10310435A
JPH10310435A JP9126347A JP12634797A JPH10310435A JP H10310435 A JPH10310435 A JP H10310435A JP 9126347 A JP9126347 A JP 9126347A JP 12634797 A JP12634797 A JP 12634797A JP H10310435 A JPH10310435 A JP H10310435A
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nickel sulfate
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厚志 合田
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正樹 今村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硫酸ニッケル溶液を溶媒抽出法によって精製
する場合における排水処理量や中和剤の使用量を削減し
ながら、鉄、亜鉛、銅、ナトリウム、アンモニアら等の
不純物を効果的に除去し、高純度硫酸ニッケル溶液を効
率的に得るための高純度硫酸ニッケルの精製方法を提供
する。 【解決手段】 粗硫酸ニッケル溶液を、含有されるナト
リウム、アンモニア量を基準として2つに分け、該基準
により定められた量の一方の粗硫酸ニッケル溶液を、酸
性有機抽出剤を用いた溶媒抽出を行うことにより、前記
粗硫酸ニッケル中のニッケルを酸性有機抽出剤中に抽出
し、ニッケル抽出後の有機剤をニッケルを含む洗浄水で
洗浄する第1精製工程と、他方の粗硫酸ニッケル水溶液
を、前記第1精製工程で得られる洗浄後のニッケル含有
有機剤と反応させて、その中に含まれるナトリム、アン
モニア以外の不純物を前記有機剤中に分離して高純度の
硫酸ニッケル溶液を回収する第2精製工程とからなるこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硫酸ニッケル水溶
液中からアンモニア、ナトリウム等の不純物を除去して
高純度硫酸ニッケル水溶液を得るための高純度硫酸ニッ
ケルの精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ニッケルの工業的用途として、例えば一
般電解めっきのほか、コンピュータのハードデスク用ニ
ッケル無電解めっき等に硫酸ニッケルが広く用いられて
おり、さらに最近では、二次電池用ニッケルの用途とし
ても原料として硫酸ニッケルが多用されるようになって
きている。
【0003】しかしながら、これらの用途のうちには、
硫酸ニッケル不純物として含まれるアンモニア、ナトリ
ウム、コバルト、鉄、亜鉛、銅等の含有を極力抑えなけ
ればならない場合がある。従来硫酸ニッケルの精製に
は、酸性抽出剤、例えばリン酸系の酸性抽出剤、即ち酸
性ホスホン酸エステルや酸性ホスフィン酸エステルなど
を使用して行われるが、これらの酸性抽出剤を使用する
ときは、原料溶液中の不純物やニッケルを抽出するとき
に水素イオンを放出するために、中和剤とし水酸化ナト
リウムやアンモニアの使用が必要となる
【0004】硫酸ニッケルから不純物を抽出する場合に
は、酸性有機抽出剤で通常ニッケルよりも低pH側で抽
出される鉄、亜鉛、銅が抽出剤中に抽出され除去するこ
とができるが、その抽出の際に必要な中和剤中のN
、NH イオンが精製された硫酸ニッケル水溶液
中に混入し、これによる汚染が大きな問題であった。
【0005】一方、酸性抽出剤で不純物を含む硫酸ニッ
ケルから、そのニッケル分の全量を抽出しようとすれ
ば、ニッケルよりも低いpH側で抽出される不純物元素
も同時に抽出剤中に抽出されてしまう。さらにニッケル
の抽出と同時に一部のナトリウム、アンモニアの抽出が
起こることも避けられない。抽出完了後の有機抽出剤
(以後、抽出有機剤と称する。)にすべての不純物とナ
トリウム、アンモニア等が混入することになり、通常抽
出有機剤中のニッケルを回収するために行われる硫酸を
用いた逆抽出操作を行うのみでは、これらの不純物元素
の全部を分離させることは困難である。
【0006】そこで、ナトリウム、アンモニアは抽出有
機剤を強力に洗浄することによって分離し、その他の不
純物群は、硫酸逆抽出によって得られた硫酸ニッケル
を、異なる種類の抽出剤を使用して、それぞれを抽出分
離する再精製処理を施さなければならなかった。
【0007】従って、溶媒抽出法を使用し有機酸性抽出
剤でニッケルの全量を抽出を精製を行う場合には、ニッ
ケル含有抽出有機剤を強力に洗浄して該抽出有機剤中か
らナトリウム分やアンモニア分を洗浄水中に分離除去す
ることが必要となる。しかしながら、このような洗浄法
では洗浄水が大量に必要になるばかりでなく、全ニッケ
ル分を抽出しようとする場合には多量の中和剤が必要と
なるので、排水処理や中和剤の費用を考慮すると経済的
に著しく不利であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、硫酸ニッケ
ル溶液を溶媒抽出法によって精製する場合における排水
処理量や中和剤の使用量を削減しながら、鉄、亜鉛、
銅、ナトリウム、アンモニアらは排水処理し、抽出有機
剤中に含まれるナトリウム、アンモニア等の不純物を経
済的に除去し、高純度硫酸ニッケル溶液を効率的に得る
ための高純度硫酸ニッケルの精製方法を提供することを
目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明は、粗硫酸ニッケル溶液を、含有されるナト
リウム、アンモニア量を基準として2つに分け、該基準
により定められた量の一方の粗硫酸ニッケル溶液を、酸
性有機抽出剤を用いた溶媒抽出を行うことにより、前記
粗硫酸ニッケル中のニッケルを酸性有機抽出剤中に抽出
し、ニッケル抽出後の有機剤をニッケルを含む洗浄水で
洗浄する第1精製工程と、他方の粗硫酸ニッケル水溶液
を、前記第1精製工程で得られる洗浄後のニッケル含有
有機剤と反応させて、その中に含まれるナトリウム、ア
ンモニア以外の不純物を前記有機剤中に分離して高純度
の硫酸ニッケル溶液を回収する第2精製工程とからなる
高純度硫酸ニッケル精製方法を特徴とするものである。
【0010】本発明において、第2精製工程から得られ
る反応後の抽出有機剤に硫酸を加えpH4.0〜5.0
の範囲で残存するニッケルを硫酸中に逆抽出することに
より付加的な高純度硫酸ニッケルを回収操作を行わせれ
ば、より高いニッケル回収率を得ることができるので好
ましい。また、前記逆抽出後の不純物の残存する有機剤
にさらに硫酸を加えてpHを0以下として前記有機剤中
に残存する不純物を逆抽出させて硫酸中に分離し、逆抽
出後の不純物の除去された有機剤を第1精製工程の有機
抽出剤として循環使用するようにすれば、ニッケルの溶
媒抽出に使用する酸性有機抽出剤の利用効率を高めるこ
とができるので経済的に好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の基本となる工程は上記し
たように、粗硫酸ニッケル溶液を、含有されるナトリウ
ム、アンモニア量を基準として2つに分け、粗硫酸ニッ
ケル溶液を、酸性有機抽出剤を用いた溶媒抽出法によ
り、粗硫酸ニッケル中のニッケルを酸性有機抽出剤中に
抽出し、ニッケル抽出後の有機剤をニッケルを含む洗浄
水で洗浄する第1精製工程と、他方の粗硫酸ニッケル水
溶液を、前記第1精製工程で得られる洗浄後のニッケル
含有有機剤と反応させて、ナトリム、アンモニア以外の
不純物を該有機剤中に分離して高純度の硫酸ニッケル溶
液を回収する第2精製工程とからなる高純度硫酸ニッケ
ル精製方法である。
【0012】以下本発明の基本となる技術思想について
説明する。鉄、亜鉛、銅、コバルト、カルシウム、ナト
リウム、アンモニア等の不純物を含む粗硫酸ニッケル溶
液から酸性有機抽出剤を用いて不純物またはニッケルを
溶媒抽出する場合、抽出反応により水素イオンが放出さ
れるため、中和剤として一般に水酸化ナトリウム、アン
モニア等が使用される。従って溶媒抽出法によって粗硫
酸ニッケルから不純物を前記有機抽出剤中に分離して、
精製硫酸ニッケル溶液を得る場合には、これら中和剤の
Na、NH イオンの全量が精製硫酸ニッケル溶液
中に混入することになり好ましくない。一方、粗硫酸ニ
ッケル溶液からその中に含まれるニッケルの全量を有機
抽出剤中に抽出しようとすると、ニッケルと同時に粗硫
酸ニッケル溶液中に含まれる鉄、亜鉛、銅の全量と、一
部のナトリウム、アンモニアが抽出剤中に抽出されてし
まうので、これから得られる精製硫酸ニッケル溶液から
のこれら不純物の分離が極めて困難になる。
【0013】このため、本発明者らは、酸性有機抽出剤
中に予めニッケル分を含ませておき、このニッケル分
と、精製しようとする粗硫酸ニッケル中の鉄、亜鉛、銅
とを置換反応させて、これらの不純物の大部分を有機抽
出剤中に含ませて粗硫酸ニッケル溶液中から分離除去す
ることにより、中和剤の使用による精製硫酸ニッケル溶
液中へのナトリウム、アンモニアの混入を防ぐことがで
きると考えた。
【0014】しかしながら、当初から粗硫酸ニッケル中
に不純物として含まれているナトリウム、アンモニア
は、ニッケルよりも高いpHで抽出されるためにニッケ
ルとの置換反応により分離除去することは困難である。
従って本発明では、原料となる粗硫酸ニッケル溶液をナ
トリウム、アンモニアの含有量によって2つに分け、先
ずこのうちナトリウム、アンモニアを多く含む粗硫酸ニ
ッケル溶液を第1精製工程として溶媒抽出を行うことに
よりニッケルを有機抽出剤中に抽出し、このニッケル含
有有機剤を、第2精製工程で上記した鉄、亜鉛、銅置換
反応用のニッケル源として使用することにより、溶媒抽
出に使用する酸性有機抽出剤や中和剤の量を大幅に削減
させるとともに、中和剤の使用による精製硫酸ニッケル
溶液中へのナトリウム、アンモニアの混入を防止するこ
とに成功したものである。
【0015】上記した第1精製工程のニッケル抽出工程
に供給されるニッケル量は、精製しようとする粗硫酸ニ
ッケル溶液からのナトリウム、アンモニア等の酸性抽出
剤でニッケルよりも高いpHで抽出される不純物の除去
量と、第2精製工程の置換反応工程で置換除去される
鉄、亜鉛、銅等のニッケルよりも低いpHで抽出される
不純物の含有量で決定される。即ち、当該粗硫酸ニッケ
ル溶液中のナトリウム、アンモニアでその除去すべき量
の多いほうの不純物の量をXモル、精製硫酸ニッケル中
の当該不純物の許容量をYモルとすれば、抽出工程に供
給するニッケル量はその濃度比、例えば当該不純物をナ
トリウムとすると、Ni/Na=Zから、式:(X−
Y)×Zで表される。また、置換工程で除去すべき不純
物の総量を2価のイオンでMモルとすれば、置換の化学
等量関係より抽出工程に供給されるニッケル量はMモル
となる。したがって、(X−Y)×ZとMとのどちら
か、大きい方のニッケル量を抽出工程に供給すればよ
い。
【0016】図1は、本発明の精製硫酸ニッケル溶液の
製造方法の典型的な実施態様における概略工程図を示し
たものである。第1精製工程の抽出工程でのニッケルの
抽出は、少なくとも向流連続2段抽出槽を用いた2段抽
出工程で行われ、通常はミキサーセトラーが用いられ
る。抽出剤としては、例えばCynex272、D2E
HPA、PC−88A等の酸性有機抽出剤が使用され
る。粗硫酸ニッケル溶液の供給は2段目の抽出槽に対し
て行われ、そこで1段目の抽出槽から供給される有機抽
出剤と向流的に反応を行わせ該有機抽出剤中に原料硫酸
ニッケル溶液中のニッケル分の一部を抽出させる。
【0017】次いで2段目での抽出終了後の残部のニッ
ケル分を含む粗硫酸ニッケル溶液を1段目の抽出槽に供
給し、そこで新しく供給される有機抽出剤と向流的に反
応を行わせて該有機抽出剤中に原料硫酸ニッケル溶液中
の残部のニッケル分を抽出させる。この1段目の抽出槽
で行われるニッケル抽出においてニッケルを抽出残液に
損失させないようにするためには、抽出反応のpHを
5.5以上にすることが望ましい。有機剤中に含まれる
ニッケル濃度が一定であれば、pHが低いほど同時に一
部抽出されて有機剤中に混入するナトリウム、アンモニ
アの量を低減させる効果がある。しかし、有機剤中に抽
出されるニッケルの濃度が高くなるほど、同時に有機剤
中に抽出されるナトリウム、アンモニアの量を少なくす
ることができるため、使用抽出剤の量を減らす方が、ナ
トリウム、アンモニアの除去効果が大きい。
【0018】第1精製工程における洗浄工程ではニッケ
ル抽出後のニッケルを含有する有機剤を硫酸ニッケルを
含む水溶液で洗浄すればよい、このときに、水溶液中の
ニッケル分と有機剤中のナトリウム、アンモニアの置換
が行われて有機剤からナトリウム、アンモニアの除去が
促進されるので、ニッケルを含まない通常の洗浄水を使
用するよりも効率的なナトリウム、アンモニアの除去を
行うことができる。
【0019】洗浄工程に供給する洗浄水は硫酸ニッケル
溶液のニッケル分がをNi10〜20g/リットルにな
るように水で希釈したものが用いられるが、溶液中のナ
トリウム、アンモニア濃度によってその希釈倍率の調整
を行えばよい。この洗浄工程で排出される洗浄廃液は、
そのまま2段目の抽出槽に送ることができるので特別な
処理を施さなくてよい。
【0020】第2精製工程である置換工程では、粗硫酸
ニッケル溶液と第1精製工程でニッケルを抽出したニッ
ケル含有有機剤との間で粗硫酸ニッケル溶液中の鉄、亜
鉛、銅等の不純物と有機剤中のニッケルが置換反応によ
り交換され、有機剤中のニッケルは水相中に、また粗硫
酸ニッケル溶液中の前記不純物は有機剤へとそれぞれ移
行し、精製硫酸ニッケル溶液を得ることができる。従っ
て、通常の酸性抽出剤を使用した抽出工程と異なり、抽
出剤からの水素イオンの放出がないので、中和剤を使用
しなくても、通常そのpHは4〜6の範囲に保たれてい
る。
【0021】しかし、有機相中のニッケル濃度は置換反
応終了後もNi5g/リットル程度とするのがよい。こ
れは有機剤中のニッケル濃度がこれより低下すると、水
相中のニッケル濃度が高いときは、水相中のニッケルが
逆に有機剤中に抽出され、その結果として反応pHが低
下してしまうので、不純置換反応が進行しなくなるから
である。
【0022】第2精製工程の置換工程終了後の有機剤
は、第1精製工程の抽出工程で使用される有機抽出剤と
して循環再利用することが望ましい。しかし、この有機
剤中には若干量のニッケル分が残存しており、かつ鉄、
亜鉛、銅、コバルト、カルシウム等の不純物が含まれて
いるのでそのままで循環させることはニッケルの回収効
率の点からも、また抽出工程遂行の上からも好ましくな
い。本発明者らは、これらニッケルおよび不純物の分離
は硫酸を使用した逆抽出法を採用し、それぞれを適切な
pH制御を行うことによって行い得ることを見出した。
即ち、有機剤中に残存するニッケル分は、pHを4.0
〜5.0に調整した硫酸を使用する選択逆抽出工程でニ
ッケル分を硫酸中に逆抽出させて回収し、また鉄、亜
鉛、銅等の不純物もpHを0以下に調整した硫酸を使用
した最終逆抽出工程で、硫酸中に逆抽出させて分離除去
することができる。
【0023】
【実施例】以下に本発明の実施例について説明する。 実施例1:この実施例においては、第1精製工程におけ
る抽出工程で、ナトリウムとアンモニアを可及的に混入
させないで有機抽出剤中にニッケルを抽出させるための
条件設定実験を行った。実験には、酸性有機抽出剤とし
てPC−88A(大八化学社製)をクリーンソルG(日
本石油社製)で20%(V/V)に希釈したものを用
い、ミキサー部の有効容積が1.72リットル、セトラ
ー部の容積が10.3リットルのミキサーセトラーを2
連用いた連続向流2段のミキサーセトラーを用い、1段
目のミキサーセトラーに有機抽出剤を、2段目のミキサ
ーセトラーに原料粗硫酸ニッケル溶液を導入して、該酸
性有機抽出剤を用いて粗硫酸ニッケル溶液からニッケル
を向流抽出した。各ミキサーセトラーは温水中において
温度40℃に一定に保持した。表1にこの実施例で使用
した原料粗硫酸ニッケル溶液の化学組成を示す。
【0024】
【表1】 粗硫酸ニッケル溶液化学組成(g/l) Ni Cu Zn Fe Co Ca NH3 Na ──────────────────────── 103 0.20 0.04 0.002 0.035 0.60 0.34 0.35
【0025】この実施例の抽出実験では、上記表1の粗
硫酸ニッケル溶液を水で3倍に希釈して用いた。また洗
浄には上記粗硫酸ニッケル溶液を水で10倍に希釈した
ものを用いた。有機抽出剤および粗硫酸ニッケル溶液の
供給量、反応pH、その他の条件を表2に示す。抽出工
程の各抽出段でのpH調整は、200g/リットルの苛
性ソーダを使用して行い、反応中のpHを一定に維持し
た。
【0026】
【表2】 Test pH 抽出工程 洗浄液 抽出始液 抽出残液 有機相流量 流量 洗浄比 流量 Ni Na NH3 (l/hr) (l/hr) (l/hr) (g/l) (g/l) (g/l) 7.2 17.6 7.5 0.44 5.5 0.04 14.3 0.045 6.2 21.4 7.5 0.38 5.5 0.33 14.0 0.045 5.5 29.2 7.5 0.26 5.5 0.48 14.8 0.056
【0027】下記する表3に抽出実験結果を示したが、
抽出反応のpHがニッケルの回収率、ナトリウム、アン
モニアの除去に大きな影響を有することが分かった。抽
出反応におけるpH値の範囲は5.5〜7.0が適当で
あるが、ナトリウム、アンモニアの除去効率を考慮すれ
ば、pH6付近が最も好ましい。上記のpH範囲よりも
pH値が高くなるとナトリウム、アンモニアの混入量が
さらに増加し、洗浄工程での効果的な除去が困難になる
し、低くなるとニッケルの抽出量が減少し、抽出に多量
の有機抽出剤を使用しなければならなくなるので、いず
れにしても好ましくない。
【0028】
【表3】 Test pH 洗浄後有機相 Ni回収率 Na除去率 NH3 除去率 ──── ───────────────── ───── ────── Ni Na NH3 (%) (%) (%) (g/l) (g/l) (g/l) 7.2 15.1 0.004 0.015 99.8 92.3 70.0 6.2 12.4 0.001 0.012 98.3 97.7 70.8 5.5 9.11 0.002 0.004 97.5 93.7 88.3
【0029】実施例2:この実施例においては、第2精
製工程である置換工程についての条件設定のための実験
を行った。本実験では有機相として実施例1の洗浄後の
有機剤を用い、水相として表1の粗硫酸ニッケル溶液を
用いて、有機相中のニッケルと水相中の鉄、亜鉛、銅等
の不純物との間で置換反応を行わせた。水相中の不純物
濃度は2価の金属イオンとしては、0.035モルであ
るので、ニッケルに換算すれば約2.1g/リットルと
なる。従って、本実験では有機相として実施例1のpH
5.5の条件で得られた有機剤を使用した。置換工程に
は実施例1と同様の使用のミキサーセトラーを5連用い
た向流5段ミキサーセトラーを使用し、温度も実施例1
と同一とした。使用した有機剤の成分を表4に示す。水
相の供給量は2リットル/hr、有機相の供給量は6リ
ットル/hrで、O/A=3で実験を行った。各段での
pH値は4.7〜4.8でほぼ一定していた。実験の結
果を表5に示す。
【0030】
【表4】 Ni抽出有機相粗化学組成(g/l) Ni Cu Zn Fe Co Ca NH3 Na ─────────────────────────────── 9.11 0.018 0.004 <0.001 0.003 0.052 0.004 0.002
【0031】
【表5】 元素(g/l) Ni Cu Zn Fe Co Ca NH3 Na ─────────────────────────────────── 有機相 7.06 0.078 0.017 0.001 0.015 0.262 0.002 0.002 精製水相 109 <0.001 <0.001 <0.001 0.004 0.020 0.35 0.35
【0032】実施例3:この実施例においては第1精製
工程における洗浄後の有機剤からニッケルを回収するた
めの硫酸による選択逆抽出実験を行った。蒸留水400
ミリリットルを実施例1で得られた有機剤と1:1.5
の割合でビーカーで混合し、35℃で撹拌をしながら、
硫酸でpHを一定に調整維持して20分間反応を行わ
せ、静置後有機相と水相中のニッケルおよびその他の不
純物の濃度を測定した。平衡試験結果を表6に示した
が、有機相にはニッケルを22g/リットル含み、その
他の不純物として、ニッケル抽出時に同時に抽出される
銅、コバルト、カルシウムが有機相中に存在した。
【0033】
【表6】 pH 有機相Ni Ni回収 Cu(g/l) Co(g/l) Ca(g/l) (g/l) (g/l) 有機相 水相 有機相 水相 有機相 水相 3.73 0.012 99.9 0.06 0.01 0.009 0.001 0.30 0.11 4.02 0.021 99.9 0.07 0.001 0.016 0.004 0.30 0.03 4.28 0.09 99.6 0.07 <0.001 0.020 0.001 0.33 0.004 4.63 0.12 99.4 0.07 <0.001 0.020 <0.001 0.33 0.003 5.07 2.33 89.4 0.07 <0.001 0.020 <0.001 0.33 0.003
【0034】表6に示されるように、本実験ではこれら
の不純物は、逆抽出反応のpHの低下に伴って逆抽出さ
れ、回収される硫酸ニッケル溶液を汚染する。従って、
逆抽出のpHは、4.0以上が好ましい。しかし、pH
5.0を超えるとニッケルの回収率は大幅に低下してし
まうのでこれ以下に設定することが望ましい。
【0035】実施例4:この実施例は、第1精製工程の
抽出工程で得られた有機剤と第2精製工程の置換工程で
得られた有機剤とを同時に硫酸によるニッケルの選択逆
抽出するための実験である。本実験では実施例1と同様
の仕様のミキサーセトラーを3連用いた連続向流3段の
ミキサーセトラーを使用した。1段目のミキサーセトラ
ーに有機相として抽出工程からの有機剤を23.2リッ
トル/hr、置換工程からの有機剤を6.0リットル/
hrの供給量で同時に供給した。それぞれの有機剤の組
成は表4および表5に示したものと同一組成のものであ
る。一方3段目のミキサーセトラーに水相として蒸留水
3.0リットル/hrを供給し、反応pHの調整は、1
50g/リットルの硫酸で連続的に行った。このため最
終的な水相の供給量は約5.8リットル/hrとなっ
た。温度は全段で40〜50℃に維持した。
【0036】表7には、1段目のミキサーセトラーから
得られる精製硫酸ニッケル溶液と、3段目のミキサーセ
トラーから得られる有機剤の化学組成を示した。表7の
結果から得られた精製硫酸ニッケル溶液は高い純度を有
していることが分かる。さらに蒸気の装置を用いて、有
機剤を硫酸による最終逆抽出工程を行う実験を行った。
このときの1段目のミキサーセトラーに供給する有機剤
は上記の選択逆抽出後の有機剤を用いた。有機相の供給
量は29.2リットル/hr、水相の供給量は5.0リ
ットル/hrであった。水相のpHは硫酸150g/リ
ットルでpH0に連続調整した。最終逆抽出により得ら
れた有機剤の化学組成を表7に同時に示した。
【0037】
【表7】 元素(g/l) Ni Co Zn Cu Fe Ca ニッケル回収液 43.7 0.002 <0.001 <0.001 <0.001 0.007 選択逆抽出有機相 0.043 0.005 0.007 0.030 0.001 0.043 最終逆抽出有機相 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.002 <0.001
【0038】表7から分かるように、最終逆抽出工程に
よりほぼ全ての不純金属元素が水相側に逆抽出されるの
で、この工程から排出される有機剤は、本発明の第1精
製工程に使用する有機抽出剤として十分に使用可能であ
る。
【0039】これらの結果から、抽出工程のpHを5.
5としたときの工程別平衡分配値を表8に示した。表1
に示した粗硫酸ニッケル溶液を、抽出工程で2.6リッ
トル/hrの供給量で供給した。一方、置換工程で使用
した粗硫酸ニッケル溶液の供給量は2.0リットル/h
rである。すなわち約56%の硫酸ニッケル溶液を酸性
有機抽出剤で抽出し、全ての硫酸ニッケル溶液を精製し
たことになる。
【0040】
【表8】 工程液 Ni Cu Co Ca NH3 Na ────────────────────────────────── 抽出残液分配(%) 2.1 nil nil nil 49.8 55.6 置換工程精製液(%) 44.4 nil 5.0 1.4 44.9 43.5 選択逆抽出液(%) 53.3 nil 7.2 1.5 3.0 2.9 最終逆抽出液(%) 0.1 100 87.8 97.1 nil nil 精製実収(%) 97.8 nil 12.2 2.9 47.9 46.4
【0041】本発明におけるニッケルの回収率は、全工
程を通じて97.8%と計算された。一方、不純物で
は、表記されていない鉄、亜鉛を含め、銅、カルシウム
で97%以上が除去された。また、コバルトに関しても
90%近くが粗硫酸ニッケル溶液から除去されている。
また、ナトリウム、アンモニアに関しては従来の酸性有
機抽出法による溶媒抽出を行ったときの約50%程度に
なっている。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるとき
は、有機酸性溶媒抽出法と置換法とを同時に使用するこ
とにより、従来溶媒抽出法では、困難であったニッケル
の抽出に際して混入する鉄、亜鉛、銅、コバルト、カル
シウム、ナトリウムおよびアンモニア等の不純物を除去
して容易に高純度硫酸ニッケル溶液を得ることができる
ので工業的に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高純度硫酸ニッケル溶液の製造工
程の概略を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高石 和幸 愛媛県宇摩郡土居町津根901 (72)発明者 尾崎 佳智 愛媛県新居浜市王子町3−647

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗硫酸ニッケル溶液を、含有されるナト
    リウム、アンモニア量を基準として2つに分け、該基準
    により定められた量の一方の粗硫酸ニッケル溶液を、酸
    性有機抽出剤を用いた溶媒抽出を行うことにより前記粗
    硫酸ニッケル中のニッケルを酸性有機抽出剤中に抽出
    し、ニッケル抽出後の有機剤をニッケルを含む洗浄水で
    洗浄する第1精製工程と、他方の粗硫酸ニッケル水溶液
    を、第1精製工程で得られる洗浄後のニッケル含有有機
    剤と反応させ、その中に含まれるナトリム、アンモニア
    以外の不純物を前記有機剤中に分離して高純度の硫酸ニ
    ッケル溶液を回収する第2精製工程とからなることを特
    徴とする高純度硫酸ニッケルの精製方法。
  2. 【請求項2】 前記第2精製工程から得られる反応後の
    抽出有機剤に硫酸を加え、pH4.0〜5.0の範囲で
    残存するニッケルを硫酸中に逆抽出することにより付加
    的な高純度硫酸ニッケルを回収を行うことを特徴とする
    請求項1記載の高純度硫酸のニッケル精製方法。
  3. 【請求項3】 前記逆抽出後の不純物の残存する有機剤
    に、さらに硫酸を加えてpHを0以下として前記有機剤
    中に残存する不純物を逆抽出させて硫酸中に分離し、逆
    抽出後の不純物の除去された有機剤を第1精製工程の有
    機抽出剤として循環使用することを特徴とする請求項1
    または2記載の高純度硫酸ニッケルの精製方法。
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