JPWO2013077296A1 - 高純度硫酸ニッケルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

酸性有機抽出剤を用いた溶媒抽出により高ニッケル濃度の硫酸ニッケル溶液を得る工程において、抽出剤の濃度と処理時のpH濃度を調整する事で、不純物、特にマグネシウムや塩化物品位が低く、高純度な硫酸ニッケルを得る製造方法の提供を目的とする。
ニッケルを含有する酸性溶液を、ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケル硫化物の沈澱と硫化後液とを得る硫化工程、硫化工程で得たニッケル硫化物のスラリーを作製し、前記スラリーに酸化剤を添加して、ニッケル濃縮液を得る再溶解工程、再溶解工程で得たニッケル濃縮液に、中和剤の添加による中和を施して生成する中和澱物と脱鉄後ニッケル濃縮液を得る浄液工程、浄液工程で得た脱鉄後ニッケル濃縮液を溶媒抽出し、逆抽液と硫酸ニッケル溶液とを得る溶媒抽出工程の各工程を少なくとも経て処理することを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法。

Description

本発明は、ニッケルを含有する酸性溶液から、不純物、特にマグネシウム、マンガン、カルシウムが少ない電池材料に使用できる高純度な硫酸ニッケルを得ようとする分野に利用できる高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

ニッケルは、ステンレスや耐蝕合金の材料として広く用いられるほか、最近ではハイブリッド電気自動車、携帯電話、パソコンなどに用いられるニッケル水素電池やリチウムイオン電池の材料としても多く使われている。
このような材料に用いられるニッケルは、硫化物鉱や酸化物鉱として存在する鉱石を採掘し、製錬して製造される。

例えば、硫化鉱石を処理する場合の一つの方法として、鉱石を炉に入れて熔融し、スラグとして不純物を分離してニッケルを濃縮したマットを得、このマットを硫酸や塩酸で溶解し、その溶解溶液から不純物を分離してニッケル溶液を得、中和や晶析等の手段によって硫酸ニッケルや酸化ニッケルなどのニッケル塩類を製造する。あるいは、電解採取等を行ったりしてニッケルメタルを製造する場合がある。

一方、酸化鉱石を処理する場合の一つの方法として、例えばコークスなどの還元剤と共に加熱熔融してスラグと分離し、ニッケルと鉄の合金であるフェロニッケルを得てステンレスの原料とすることが行なわれている。

しかし、このような製錬方法は、いずれも多量のエネルギーを必要とし、不純物の分離に多くのコストと手間を要する。
特に、高品質な鉱石が枯渇しつつある近年は、その確保が困難となり、その結果入手できる鉱石中のニッケル品位は低下傾向となり、これらの低品位原料からニッケルを得るのには、さらにコストと手間を要するようになってきた。

そこで、最近は従来には原料に用いられなかった低品位の酸化鉱石を高温加圧下で酸浸出し、その浸出溶液を消石灰等のアルカリで中和してニッケル塩類やニッケルメタルを得る方法が開発されてきた。
この方法は、低品位の資源を有効かつ比較的少ないエネルギーで有効に利用できる技術であるが、上記のようなニッケル塩類を得ようとする場合、従来の製錬方法では見られなかった新たな課題も生じてきている。

例えば、鉱石に含有されるマグネシウムやマンガン等は、上記の炉を用いた製錬方法では、大部分がスラグに分配され、マットへの分配は少なくなる。その結果、ニッケル塩類への混入はごくわずかな量にとどまり、ほとんど問題にならなかった。
これに対して、高温加圧浸出を用いた製錬方法では、マグネシウムやマンガンは酸によってよく浸出され、その結果ニッケル塩類への混入も増加する。また高温加圧浸出では、得た浸出スラリーにアルカリを添加してpHを調整する操作が行われるが、中和剤に使われるカルシウムのニッケル塩類への混入の影響も無視できない。
特に、ニッケルをリチウムイオン電池やニッケル水素電池の材料に用いる場合、マグネシウムやカルシウムや塩化物イオンが共存すると、製品に仕上げた電池の特性に大きく影響するため、ニッケル塩を製造する段階から混入をできるだけ排除した高純度ニッケル塩が望ましいとされる。

ところで、ニッケル塩の一つである硫酸ニッケルを高純度で得るには、例えばニッケルを電解採取などの方法によって一度メタルとして得、このメタルを再度硫酸に溶解し、次いで溶解した液を濃縮するなどして硫酸ニッケルを晶析させる方法も考えられる。しかし、メタルを得るには相当な電力と相応の規模の設備を必要とし、エネルギー効率やコストを考えると有利な方法ではない。

さらに、ニッケルを含む鉱物には同時にコバルトも含有する場合が多い。コバルトも有価金属であり、ニッケルと共存する必要はないので、分離してそれぞれを回収することが行なわれる。

硫酸溶液中のニッケルとコバルトとを分離する効率的かつ実用的な方法として、溶媒抽出が用いられることが多い。例えば、特許文献1には、商品名PC88A(大八化学工業株式会社製)を抽出剤に用いた溶媒抽出によってコバルトを抽出し、ニッケルとコバルトとを分離する例が示されている。

この抽出剤にPC88Aを用いた場合、マグネシウムやカルシウムの抽出挙動も、ニッケルの挙動に類似する。このため、ニッケルが高濃度で含有される溶液を溶媒抽出に付した場合、マグネシウムやカルシウムの抽出率が低下するなどマグネシウムやカルシウムを分離する効率が低下する問題を生じてしまう。

一方、特許文献2には、カルシウム、マグネシウム、コバルト等を不純物として含むニッケル水溶液から、ニッケルを含有するアルキルホスホン酸エステルまたはアルキルホスフィン酸を抽出剤として用い、ニッケル水溶液中の不純物を抽出分離し、かつナトリウムやアンモニアを含まない高純度ニッケル水溶液を製造する方法が示されている。

特許文献2に提案される予め高いpHでニッケルを有機溶媒中へ抽出し、このニッケルを抽出した有機溶媒と不純物を含むニッケル溶液を接触させる方法によって、ニッケルより抽出されやすい元素が有機相へ、有機中のニッケルが水相側へ移行する交換反応が起こり、ニッケル溶液中の不純物を除去することができる。
また、pH調整剤に含まれるナトリウムなどの不純物元素がニッケル溶液へ混入し、製品を汚染することを防止する方法としても有効である。

しかしながら、特許文献2に提案される硫酸ニッケルの浄液工程においても、溶液中のマグネシウムは、ニッケルと似た挙動を持ち、マグネシウムを除去することは困難であった。

また、原料となるニッケル含有物に鉄やアルミニウムなどの不純物が大量に含有されている場合、これらを中和などの方法で分離するには大量の中和剤を必要とし、さらに不純物が沈澱する際にニッケルやコバルトなどの有価物も共沈してロスとなるなどの可能性もあり、効率的な操業を行なうことは容易でなかった。

このような理由により、マグネシウムなどの金属イオンや塩化物イオンが多く含有される硫酸酸性溶液からマグネシウムや塩化物品位が低く、電池原料に使用できる高純度な硫酸ニッケルを効率よく得られる実用的な方法が望まれていた。

特開平10−310437号公報 特開平10−30135号公報

このような状況に鑑み本発明は、酸性有機抽出剤を用いた溶媒抽出により高ニッケル濃度の硫酸ニッケル溶液を得る工程において、抽出剤の濃度と処理時のpH濃度を調整する事で、不純物、特にマグネシウムなどの金属イオンや塩化物品位が低く、高純度な硫酸ニッケルを得る製造方法を提供するものである。

このような課題を解決するための本発明の第1の発明は、ニッケルを含有する酸性溶液を、下記(1)〜(4)の工程を少なくとも経て処理することを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。
[工程]
(1)硫化工程
ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケル硫化物の沈澱と硫化後液とを得る硫化工程。
(2)再溶解工程
(1)硫化工程で得たニッケル硫化物のスラリーを作製し、前記スラリーに酸化剤を添加して、ニッケル濃縮液を得る再溶解工程。
(3)浄液工程
(2)再溶解工程で得たニッケル濃縮液に、中和剤の添加による中和を施して生成した中和澱物と脱鉄後ニッケル濃縮液を得る浄液工程。
(4)溶媒抽出工程
(3)浄液工程で得た脱鉄後ニッケル濃縮液を溶媒抽出し、逆抽液と硫酸ニッケル溶液とを得る溶媒抽出工程。

本発明の第2の発明は、第1の発明における再溶解工程の再溶解が、60℃以上、180℃以下の温度範囲で行われることを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明における再溶解工程で添加される酸化剤が、空気、酸素、過酸化水素溶液およびオゾンガスから選択される1種類以上の酸化剤であることを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

本発明の第4の発明は、第1から第3の発明における浄液工程の中和が、中和剤のアルカリを添加して、そのpHを5.0以上6.0以下の範囲に調整して行われることを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における溶媒抽出工程の脱鉄後ニッケル濃縮液に対する溶媒抽出が、抽出剤に酸性燐酸エステル系抽出剤を用いて行われることを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

本発明の第6の発明は、第1から第5の発明における溶媒抽出工程で得た硫酸ニッケル溶液を晶析工程を経て硫酸ニッケル結晶とすることを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

本発明の第7の発明は、第1から第6の発明における硫化工程を施す前に、下記工程(1a)の予備硫化工程を施すことを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。
工程(1a);ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケルより硫化しやすい不純物を予め硫化して分離する予備硫化工程。

本発明の第8の発明は、第1から第7の発明におけるニッケルを含有する酸性溶液(ニッケル含有酸性溶液とも称す。)が、ニッケル酸化鉱、ニッケルマット、ニッケル硫化物、ニッケルとコバルトの混合硫化物、銅製錬工程で産出する粗硫酸ニッケル、並びに酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉、ニッケルメタル、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池およびこれらの製造工程で発生した不良品あるいは仕掛品のいずれか1種類以上のものに、硫酸もしくは塩酸を加えてニッケルを浸出して得られた溶液であることを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法である。

(a)二次電池の原料に適正なマグネシウム品位の低い硫酸ニッケルを得ることができる。
(b)ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得た酸性溶液からも高純度な硫酸ニッケルを直接得ることができる。
(c)原料品位や操業負荷が変動しても得られる硫酸ニッケルの品質が安定する。

高純度硫酸ニッケルの製造方法の一例を示す工程図である。 本発明における硫酸ニッケルの製造工程を示す製錬工程図である。

以下に、本発明の高純度硫酸ニッケルの製造方法を説明する。
本発明は、ニッケルやマグネシウムなどの金属イオンを含有する硫化物からニッケル水素電池やリチウムイオン電池の原材料にも使用できる高純度な硫酸ニッケルを得るものである。
図1は、高純度硫酸ニッケルの製造方法の一例を示す工程図で、ニッケルを含むニッケル溶液への硫化剤添加による硫化から通常、白抜き矢印1に従って工程が進行して高純度硫酸ニッケル溶液が製造される。その製造過程中において、不純物元素は「破線」枠の工程を経ることによって、ニッケル含有物から除去され、排水若しくは排水澱物として系外に排出されるが、不純物元素の中のマグネシウムは、溶液中ではニッケルと反応挙動が似ており、ニッケルを含む溶液からのマグネシウムの除去は不十分な状況であった。

そのような中で、本発明で用いる原料となるニッケルを含有する酸性溶液には、ニッケル酸化鉱、ニッケルマット、ニッケル硫化物、ニッケルとコバルトの混合硫化物、銅製錬工程で産出した粗硫酸ニッケル、並びに酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などのニッケル化成品、ニッケルメタルなど、さらにニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの電池、およびニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの電池を製造する工程で発生した余剰品や不良品など幅広くニッケルを含有する材料に、硫酸や塩酸などの鉱酸を加えてニッケルを浸出して得られた溶液を用いることができる。

これらのニッケルを浸出して得られた溶液のなかでも、特にマグネシウム、マンガン、カルシウムが蓄積あるいは濃縮した溶液、またはその溶液を酸性溶液の一部に用いると効果的である。
さらに、マグネシウム、マンガン、カルシウム濃度が高く、ニッケル濃度が低い溶液に、本発明を適用するほうが、ニッケルを硫化物として沈殿させるための硫化剤の低減が図れ、経済的でもある。

本発明は、以下の(1)から(4)の工程を少なくとも経て、製造されることを特徴とするもので、さらに原料の酸性溶液の状態によっては、(1a)の工程を加えると、さらに効率性の高い高純度ニッケルの製造を可能とするものである。

[製造工程]
(1)硫化工程
ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケル硫化物の沈澱と硫化後液とを得る硫化工程。
(2)再溶解工程
(1)の硫化工程で得たニッケル硫化物のスラリーを作製し、前記スラリーに酸化剤を添加して、ニッケル濃縮液を得る再溶解工程。
(3)浄液工程
(2)の再溶解工程で得たニッケル濃縮液に、中和剤の添加による中和工程を施して生成する中和澱物と脱鉄後ニッケル濃縮液を得る浄液工程。
(4)溶媒抽出工程
(3)の浄液工程で得た脱鉄後ニッケル濃縮液を溶媒抽出し、逆抽液と硫酸ニッケル溶液とを得る溶媒抽出工程。
(1a)予備硫化工程
ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケルより硫化しやすい不純物を予め硫化して分離する予備硫化工程。

以下、各製造工程の詳細を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の製錬工程図である。
(1)硫化工程[(1a)予備硫化工程の説明を含む]
第1の硫化工程では、先に示したニッケルを含む酸性溶液に、硫化剤を添加して硫化することで、酸性溶液中のニッケル成分を硫化ニッケルとして沈殿させる。
この硫化は、公知の方法を用いることができる。例えば酸性溶液の酸化還元電位(ORP)とpHを測定しながらガスあるいは液状の硫化剤を添加することで行なうことができる。

このとき、コバルト、亜鉛、銅、鉛など硫化物を形成しやすいものはニッケルと同じように硫化物を生成して沈殿する。そのため、特に銅、亜鉛、鉛などの不純物を多く含有する酸性溶液をスタート原料に用いる場合には、ニッケルを硫化する硫化工程に先立って、ニッケルが沈澱しない程度に硫化剤の添加量を制限したり、酸性溶液の酸化還元電位を厳密に制御するなどして銅、亜鉛、鉛などの不純物だけを事前に選択的に分離する予備硫化工程(1a)を施すことで、以後の工程での負荷が軽減できて好ましい。

なお、ニッケルを硫化物として沈澱させた場合、マグネシウム、マンガン、カルシウム、クロム、アルミニウム、ナトリウム、カリウムなどは硫化物を形成せず、巻き込みや付着に起因する一部を除いて溶液中に残留するため、大部分はニッケルと分離できる。

使用する硫化剤は、特に限定はないが、硫化水素ガス、水硫化ソーダ、硫化ナトリウムなど大量かつ容易に入手できるものを用いることができる。

硫化工程、予備硫化工程の硫化温度は、特に限定はされないが、40〜80℃が好ましい。
40℃未満では反応時間が長くなりすぎ、必要な処理量を確保するための設備容量が増加する。また、80℃を超えると反応容器や配管に用いられる塩ビやFRPなど樹脂系の材料が使用できないため、設備の材質が制限され、設備投資が増加する。

硫化終了後、ニッケル硫化物と硫化後液とを固液分離する。
この固液分離の方法は、特に限定せず、使用する固液分離装置は、特に限定されるものではなく、加圧濾過装置、吸引濾過装置、デカンターなどを用いることができる。
回収されたニッケルを主成分とするニッケル硫化物の一部は、硫化工程に種晶として繰り返すことで、硫化物の粒径を拡大し、不純物の付着や巻き込みを抑制することができる。

(2)再溶解工程
次に、(1)硫化工程で得た硫化物に、塩酸や硫酸などの鉱酸を加え、スラリー化した後、酸化剤を添加し、ニッケルを再び酸溶解して浸出する。この浸出する際は、例えば硫酸を濃度100〜300g/lとなるように調整した溶液に硫化物を入れてスラリーを作製し、そのスラリーに酸化剤を添加しながら60〜100℃に加熱することで行うことができる。

また、オートクレーブなどの加圧容器を使用して、例えば160℃以上の温度を与えると、迅速に溶解することができ有利である。また、加圧容器を使用して100℃以上の温度で浸出する場合、上記のような硫酸を添加しなくても、硫化物の硫黄が酸化されて硫酸を生成し、容易に硫酸ニッケルを得ることができる。

浸出温度は、高いほうが迅速に反応を進行させる。さらに浸出する温度が200℃を超えると、より迅速に反応が進行し、かつ残存あるいは混入する鉄が不溶性の酸化鉄を生成してニッケルと効率よく分離できる。
しかし、200℃を越える温度に耐える材質の容器は、きわめて高価で投資を増加させ、かつ加熱に要するコストや維持整備に費用と手間を要する。したがって、より安価手軽に取り扱える160〜180℃程度の温度で操業することが望ましい。

(3)浄液工程
前工程の(2)再溶解工程では、硫化物に巻き込まれたり、付着したりした不純物も液中へ溶出するが、硫化物は微細なため無視できない量になることが多い。
そのため固液分離後の不純物を含む液は、アルカリを添加する中和処理により鉄、アルミニウムなどの重金属を中和澱物として沈殿させる浄液工程を施す。

中和する際に目標とするpHは5.0〜6.0の範囲とすることが望ましい。pHが5.0未満ではアルミニウムの除去が不十分であり、一方pH6.0を超えるとニッケルまで沈澱を開始しロスとなるので好ましくない。
使用する中和剤は特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどを用いることができる。

(4)溶媒抽出工程
次に、ニッケル硫化物を酸浸出して得られた酸性溶液にはニッケルと化学的な挙動が類似したコバルトが含有されるが、浄液工程を経た後にもコバルトは存在するため、その分離が必要となる。
ニッケルとコバルトとの分離は、浄液工程を経た溶液に溶媒抽出を行うのが効果的である。
溶媒抽出に用いる抽出剤には、酸性燐酸エステル系の抽出剤を用いることができる。

以上説明した各工程を経ることにより硫酸ニッケルを製造するプロセスの系内からマグネシウム、マンガン、カルシウムを選択的に排出することが可能となり、製造プロセス内での不純物の蓄積を抑制し、高純度の硫酸ニッケルを製造することができる。
また、本発明により製造される高純度の硫酸ニッケルは、硫酸ニッケル溶液の形での提供や、晶析やスプレードライ等の一般的な結晶化方法を用いて形成した硫酸ニッケル結晶として提供することができる。

さらに本発明では、(4)溶媒抽出工程における抽残液に、アルカリを加えて中和し、マグネシウムなどの不純物を沈澱させて分離し、その分離後の液をニッケル硫化物を再浸出する工程の原液として、再利用しても良く、そのように不純物を分離した後の液を繰り返し利用することによって、プロセスにおける液量の増加を抑制し、同時に排水処理工程での不純物除去の負荷を軽減できる。
排水処理工程での中和は、pHを7.5〜9程度の範囲に調整することが好ましい。

また、同様に、酸性溶液を硫化した後に得られる硫化後液にアルカリを添加して、硫化工程で澱物を生成しなかった不純物を分離し、得られた中和後液を排水処理する方法も用いることができる。

以下、実施例を用いて本発明を説明する。

[硫化工程]
表1に示す組成のニッケルを含有する硫酸酸性溶液を400ml分取し、ウォーターバスを用いて液温を40℃に維持した。スターラーを用いて300rpmで撹拌しながら、硫化剤を添加した。なお、硫化剤には硫化ナトリウム9水和物を水に溶解し500g/Lに調整した液を使用した。

この硫化反応中は、濃度500g/Lの硫酸を添加し、pHを3.0に保持した。次に、硫化ナトリウム溶液を136ml添加し後、攪拌しながらスラリーをサンプリングし、濾過後、ICP発光分光分析法により各元素の定量分析を行なった。

硫化後液は、表1に示すようにニッケルおよびコバルトが99%以上沈殿したのに対し、マグネシウムやカルシウムが溶液から分離したのは3%未満と少なく、大部分は溶液に残留し、硫化によってマグネシウムやカルシウムと分離できることがわかった。

[再溶解工程]
次に、硫化工程で得られたニッケル硫化物(その組成を表2に示す。)を200Dry−g分取し、これに純水を加えてスラリー濃度が約200g/Lとなる混合硫化物スラリーを1リットル作製した。

作製した混合硫化物スラリーを、オートクレーブ装置内に装入し、攪拌機を毎分750〜1000回転で撹拌しつつ、加熱して容器内の温度を160〜170℃に保持した状態で、酸素ボンベから純酸素を毎分0.43リットルの流量で4時間にわたって吹込み、混合硫化物を再溶解した。途中2.5時間と3.3時間経過後に容器内から少量のサンプルを取り出した。
4時間の吹き込み、再溶解の反応が終了後、オートクレーブを冷却して浸出スラリーを取り出し、ヌッチェで濾過し、浸出残渣とニッケル濃縮液とに分離した。

得られたニッケル濃縮液の組成は、Ni:120g/L,Co:8g/L,Fe:210mg/Lであった。
残渣の分析値から装入した混合硫化物中のニッケルの浸出率を計算するといずれも99%以上とよく浸出されており、特に170℃で4時間浸出することで99.9%を浸出できた。
なお、表3に反応時間によるニッケル浸出率の変化を温度、付与圧力毎に示す。表3に示されるように、2.5時間から3.3時間程度でも99%以上のニッケル浸出率が得られることがわかる。

[浄液工程]
次に、得られたニッケル濃縮液に消石灰を添加し、pHを5.0〜6.0の範囲に調整して浄液後液とした。この調整後、濾瓶とヌッチェを用いて中和後液(脱鉄後ニッケル濃縮液)と中和澱物とに固液分離し、ICPで分析した。
表4に、その結果を示すが、中和によりニッケル濃縮液に共存した鉄、クロム、銅、アルミなどを効果的に低減できることが確認できた。

[溶媒抽出工程]
次いで、pH調整後の浄液後液100mlを分液ロートに分取し、予めニッケルを抽出した有機溶媒を、有機(O)と溶液(A)との体積比率がO/A=3.5となるように添加した。
なお、上記の有機溶媒は、酸性燐酸エステル系の抽出剤(大八化学工業株式会社製「商品名:PC−88A」)を、希釈剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「商品名:テクリーンN20」)を体積比で20:80となるように混合し、これを硫酸ニッケル溶液と接触させて有機溶媒中のニッケル濃度が15g/Lになるように調整したものを使用した。

次に、有機溶媒と浄液後液を入れた分液ロートを10分間振とう、静置、抽出後に、有機相と水相とに分離した。この抽出操作によりマグネシウムやコバルトなどニッケル以外の成分が有機溶媒中に抽出され、それに相当する分の予め有機溶媒中に含有していたニッケルが硫酸ニッケル溶液に移行する。

引き続き、抽出後有機相にpH4〜4.5の範囲に調整した100mlの硫酸溶液を添加して振とうして、有機溶媒中に含有するニッケル以外の成分を逆抽出し、逆抽出後有機溶媒と逆抽液とを得た。
その結果、表5に示すように、ニッケルに対するマグネシウムの存在量を6分の1に低減した高純度な硫酸ニッケル溶液を得ることができた。

[予備硫化工程]
表6に示す組成の銅、亜鉛、含むニッケル含有硫酸酸性溶液を1800ml分取し、ヒーターを用いて液温を60℃に保持した。攪拌機を用いて300rpmで撹拌しながら、硫化剤を添加した。なお、硫化剤には硫化水素ガスを使用した。反応には密閉型容器を使用した。

硫化水素は溶液に含有する銅、亜鉛に対して2.3当量添加した。反応後のスラリーをサンプリングし、濾過後、ICP発光分光分析法により各元素の定量分析を行なった。

予備硫化後液は、表6に示すように銅の99%以上、亜鉛の80%以上が沈殿したのに対し、ニッケルは、その大部分が予備硫化後液に残留し、予備硫化によって銅、亜鉛と分離できることがわかった。

以下、この予備硫化後液をニッケル含有酸性溶液として用い、実施例1と同様の手順によって、表6に併せて組成が示される硫酸ニッケル溶液を作製した。
表6より、原料の銅、亜鉛を多く含むニッケル含有酸性溶液から高純度のニッケル硫酸溶液が得られることがわかった。

(比較例1)
ニッケルとコバルトを硫黄と共に硫化焙焼して得た混合硫化物を公知の方法である塩素ガスを用いて浸出した塩酸酸性溶液を、実施例1と同じ条件で溶媒抽出工程に付し、逆抽出して表7に示す組成の硫酸ニッケル溶液を得た。
銅、マグネシウム、塩化物イオンなどいずれの不純物品位も表4に示す本発明の場合に比べて高くなっていた。

すなわち硫化工程を用いた本発明により、上記の不純物品位の低い高純度な硫酸ニッケル溶液が得られることがわかった。

Claims (8)

  1. ニッケルを含有する酸性溶液を下記(1)〜(4)の工程を少なくとも経て処理することを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法。
    [工程]
    (1)硫化工程
    ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケル硫化物の沈澱と硫化後液とを得る硫化工程。
    (2)再溶解工程
    (1)の硫化工程で得たニッケル硫化物のスラリーを作製し、前記スラリーに酸化剤を添加して、ニッケル濃縮液を得る再溶解工程。
    (3)浄液工程
    (2)の再溶解工程で得たニッケル濃縮液に、中和剤の添加による中和を施して生成する中和澱物と脱鉄後ニッケル濃縮液を得る浄液工程。
    (4)溶媒抽出工程
    (3)の浄液工程で得た脱鉄後ニッケル濃縮液を溶媒抽出し、逆抽液と硫酸ニッケル溶液とを得る溶媒抽出工程。
  2. (2)の再溶解工程における再溶解が、60℃以上、180℃以下の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
  3. (2)の再溶解工程で添加される酸化剤が、空気、酸素、過酸化水素溶液およびオゾンガスから選択される1種類以上の酸化剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
  4. (3)の浄液工程における中和が、中和剤のアルカリを添加してpHを5.0以上、6.0以下の範囲に調整して行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
  5. 工程(4)の溶媒抽出工程における脱鉄後ニッケル濃縮液に対する溶媒抽出が、抽出剤に酸性燐酸エステル系抽出剤を用いて行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
  6. 工程(4)の溶媒抽出工程で得た硫酸ニッケル溶液を、晶析工程を経て硫酸ニッケル結晶とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
  7. 工程(1)の硫化工程を施す前に、下記工程(1a)の予備硫化工程を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
    工程(1a);ニッケルを含有する酸性溶液に硫化剤を添加し、ニッケルより硫化しやすい不純物を予め硫化して分離する予備硫化工程。
  8. 前記ニッケルを含有する酸性溶液が、ニッケル酸化鉱、ニッケルマット、ニッケル硫化物、ニッケルとコバルトの混合硫化物、銅製錬工程で産出する粗硫酸ニッケル、並びに酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉、ニッケルメタル、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池およびこれらの製造工程で発生した不良品あるいは仕掛品のいずれか1種類以上のものに、硫酸もしくは塩酸を加えてニッケルを浸出して得られた溶液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
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