JPH1029819A - 紡錘状を呈したゲーサイト粒子及びその製造方法 - Google Patents

紡錘状を呈したゲーサイト粒子及びその製造方法

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JPH1029819A
JPH1029819A JP20783796A JP20783796A JPH1029819A JP H1029819 A JPH1029819 A JP H1029819A JP 20783796 A JP20783796 A JP 20783796A JP 20783796 A JP20783796 A JP 20783796A JP H1029819 A JPH1029819 A JP H1029819A
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spindle
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aqueous solution
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particles
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JP20783796A
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English (en)
Inventor
Yoshiyasu Yamamoto
良恭 山元
Michihito Igaki
通人 井垣
Shigeo Fujii
滋夫 藤井
Toshiharu Arita
俊治 有田
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】平均長軸径が0.05〜0.25μmであ
り、かつ平均軸比が4〜10であって長軸径の変動係数
が0.2以下であることを特徴とする紡錘状を呈したゲ
ーサイト粒子、該ゲーサイト粒子を還元して得られる磁
気記録媒体用金属磁性粉末、および該ゲーサイト粒子の
製造方法。 【効果】本発明により、粒度が均斉であって、樹枝状粒
子が混在しておらず、しかも粒子の凝集が存在しない、
優れた静磁気特性を有する紡錘状を呈したゲーサイト粒
子を提供することが可能となった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオ用、オーデ
ィオ用、コンピューター用等の磁気記録再生機器用の磁
気記録媒体に用いられる金属磁性粉末の出発原料として
好適な、粒度がより均斉で、樹枝状粒子が混在せず、凝
集物が存在しない、かつ大きな軸比(長軸径/短軸径)
を有する紡錘状を呈したゲーサイト粒子、およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録再生機器の小型軽量化が
すすむにつれて、磁気テープ、磁気ディスク等の記録媒
体に対する高性能化が必要とされてきている。すなわ
ち、高記録密度、高感度特性、高出力特性、低ノイズ特
性、および各域での高出力且つ出力安定性等が要求され
る。磁気記録媒体に対する上記のような要求を満足させ
るために要求される金属磁性粉末の特性は、高い保磁力
かつ狭いSFD(保磁力分布)等の特性を有することで
ある。
【0003】周知のごとく、磁性粒子粉末の保磁力の大
きさは、形状磁気異方性、結晶磁気異方性等に依存して
いると予想され、異方性の高い(軸比の高い)形状、磁
性を発現する粒子内部の磁気的構造等が必要であると考
えられる。また、狭いSFD(保磁力分布)は、個々の
粒子の磁気的均斉度、および粒子間の凝集等の磁気的相
互作用に依存していると考えられ、粒子形状の均質性お
よび粒子同士の凝集、融着の有無に大きく影響を受ける
ものと考えられる。
【0004】現在、磁気記録用磁性粒子粉末として使用
されている金属磁性粉末の保磁力は、形状磁気異方性が
支配的であることから、その粒子の軸比(長軸径/短軸
径)を大きくすることが必要である。これらの金属磁性
粉末は、出発原料であるゲーサイト粒子またはゲーサイ
ト粒子を加熱処理して得られるヘマタイト粒子を、水素
等の還元性ガスにて接触還元することにより鉄を主成分
とする金属粒子とすることにより得られている。このこ
とより、金属磁性粉末の高い保磁力かつ狭いSFD(保
磁力分布)等の諸特性は、出発原料であるゲーサイト粒
子の形状および形態に依存するところが大きい。従っ
て、このような諸特性を保持する金属磁性粉末の出発原
料となりうるゲーサイト粒子は、軸比が大きく、粒度が
均斉であり、樹枝状粒子が混在しない紡錘状を呈したゲ
ーサイト粒子が適当である。
【0005】一般的に、針状を呈したゲーサイト粒子の
場合、樹枝状粒子を混在させない合成は、困難であり、
樹枝状粒子を完全になくすことはできない。一方、紡錘
状を呈したゲーサイト粒子では比較的容易に合成でき
る。また、ここでいう「紡錘状」とは、一般に用いられ
る「針状」と比較される用語であり、含水酸化鉄粉末ま
たは酸化鉄粉末(一次粒子)の場合、その長軸方向の中
央部が大きく(太く)、その端部に向かうと細くなる形
状と定義される(図1)。これに対し、「針状」とは、
短軸の長さ(太さ)が長軸方向の場所によらずほぼ一定
の形状をいう(図2)。さらに具体的には、「紡錘状」
は長軸に沿う面上への投影図形がほぼ楕円形状を呈し、
「針状」は長軸に沿う面上への投影図形がほぼ長方体の
角および先端部を丸めた形状を基本形状とする。尚、金
属磁性粉末の場合、高温での熱処理あるいは還元条件に
より粒子内焼結を受けて多少変形し、先端部の形状が丸
くなってしまうことがあるが、紡錘状、針状の定義は前
記と同様である。このような形状特性は通常の場合、透
過型電子顕微鏡等により観察することが可能である。
【0006】従来、出発原料であるゲーサイト粒子粉末
を製造する方法としては、第一鉄塩水溶液に当量以上
の水酸化アルカリ水溶液を加えて得られる水酸化第一鉄
粒子を含む懸濁液をpH11以上にて80℃以下の温度
で酸素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより針
状ゲーサイト粒子を生成させる方法(特公昭39−56
10号公報)、および第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ
水溶液または、炭酸アルカリ・水酸化アルカリ水溶液と
を反応させて得られたFe含有沈澱物を含む懸濁液に酸
素含有ガスを通気して酸化反応を行うことにより紡錘状
を呈したゲーサイト粒子を生成させる方法(特公昭50
−80999号公報)等が知られている。
【0007】更に、粒度が均斉である針状ゲーサイト粒
子を得る試みは、種々行われており、特開昭60−21
817号公報には第一鉄塩水溶液と1.0当量以上のア
ルカリ水溶液との反応により得られた水酸化第一鉄を含
む懸濁液に酸素含有ガスを通気して酸化することにより
針状ゲーサイト粒子を製造する方法において、酸素含有
ガスを通気する前に、ヒドロキシカルボン酸またはその
エステル、またはヒドロキシジカルボン酸等を添加する
技術が開示されている。
【0008】一方、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混
在していない紡錘状を呈したゲーサイト粒子を得る試み
は、種々行われており、特開平6−16425号公報に
は第一鉄塩水溶液と炭酸アルカリ水溶液または、炭酸ア
ルカリ・水酸化アルカリ水溶液とを反応させて得られた
Fe含有沈澱物を含む懸濁液に酸素含有ガスを通気して
酸化反応を行うことにより紡錘状を呈したゲーサイト粒
子を生成させる方法において、酸素含有ガスを通気する
前に、アスコルビン酸またはその塩や亜鉛化合物等を添
加する技術が開示されている。
【0009】しかしながら、前記の特開昭60−218
17号公報記載の方法においては、樹枝状粒子が混在
し、凝集が存在する針状のゲーサイトが生成する。ま
た、粒度の点からは、金属磁性粉末用原料として未だ十
分でなく、また、該ゲーサイト粒子を原料とする金属磁
性粉末粒子の磁気的均斉度(保磁力分布)及び磁気的配
向度も未だ十分でないものしか得られない。
【0010】一方、前記の特開平6−16425号公報
記載の方法においても、粒度が均斉であって、樹枝状粒
子が混在していないゲーサイト粒子を得ることを目的と
するものであるが、凝集の問題が解決できず、未だ分散
性が十分ではない。また、該ゲーサイト粒子を原料とす
る金属磁性粉末粒子の磁気的均斉度(保磁力分布)及び
磁気的配向度も未だ十分でないものしか得られない。
【0011】このように粒度が均斉であり、かつ樹枝状
粒子が混在せず、かつ凝集が存在しない金属磁性粉末用
原料となりえるゲーサイト粒子は得られていない。そこ
で、特開昭60−21817号、特開平6−16425
号よりもさらに粒度が均斉であって、樹枝状粒子が混在
しておらず、しかも粒子の凝集が存在しないゲーサイト
粒子が要望されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、粒度が均斉であって、樹枝状粒子が混在しておら
ず、しかも粒子の凝集が存在しない紡錘状を呈したゲー
サイト粒子を提供することにある。本発明の他の目的
は、該ゲーサイト粒子を還元して得られる磁気記録媒体
用金属磁性粉末を提供することにある。本発明のさらに
他の目的は、該ゲーサイト粒子の製造方法を提供するこ
とにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を
解決するために鋭意検討した結果、炭酸アルカリ水溶液
または炭酸アルカリ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩
水溶液とを反応させて得られるpH8〜11のFeCO
3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液中に、酸素含有ガス
を通気して酸化することにより紡錘状を呈したゲーサイ
ト粒子を生成させる前に、反応系内にキレート能をもつ
カルボン酸またはその塩を、あるいはさらに2価の遷移
金属化合物予め存在させておくことにより、前記課題を
解決し得る優れた特性を有するゲーサイト粒子が得られ
ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】即ち、本発明の要旨は、(1) 平均長軸
径が0.05〜0.25μmであり、かつ平均軸比が4
〜10であって長軸径の変動係数が0.2以下であるこ
とを特徴とする紡錘状を呈したゲーサイト粒子、(2)
ゲーサイト粒子のメディアン径と平均長軸径の比(メ
ディアン径/平均長軸径)が2.5未満である前記
(1)記載のゲーサイト粒子、(3) 炭酸アルカリ水
溶液または炭酸アルカリ・水酸化アルカリ水溶液と第一
鉄塩水溶液とを反応させて得られるpH8〜11のFe
CO3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液中に、酸素含有
ガスを通気して酸化することにより得られる紡錘状を呈
したゲーサイト粒子において、紡錘状を呈したゲーサイ
ト粒子を生成させる前に、該アルカリ水溶液、該第一鉄
塩水溶液、FeCO3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液
のいずれか1つ以上の溶液中にキレート能をもつカルボ
ン酸またはその塩を予め存在させておくことにより得ら
れることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のゲー
サイト粒子、(4) 炭酸アルカリ水溶液または炭酸ア
ルカリ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反
応させて得られるpH8〜11のFeCO3 又はFe含
有沈澱物を含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸
化することにより得られる紡錘状を呈したゲーサイト粒
子において、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生成させ
る前に、該アルカリ水溶液、該第一鉄塩水溶液、FeC
3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液のいずれか1つ以
上の溶液中にキレート能をもつカルボン酸またはその
塩、および2価の遷移金属化合物とを予め存在させてお
くことにより得られることを特徴とする前記(1)又は
(2)記載のゲーサイト粒子、(5) 前記(1)〜
(4)いずれか記載のゲーサイト粒子を還元して得られ
る磁気記録媒体用金属磁性粉末、(6) 炭酸アルカリ
水溶液または炭酸アルカリ・水酸化アルカリ水溶液と第
一鉄塩水溶液とを反応させて得られるpH8〜11のF
eCO3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液中に、酸素含
有ガスを通気して酸化することにより紡錘状を呈したゲ
ーサイト粒子を製造する方法において、紡錘状を呈した
ゲーサイト粒子を生成させる前に、該アルカリ水溶液、
該第一鉄塩水溶液、FeCO3 又はFe含有沈澱物を含
む懸濁液のいずれか1つ以上の溶液中にキレート能をも
つカルボン酸またはその塩を予め存在させておくことを
特徴とする、平均長軸径が0.05〜0.25μmであ
り、かつ平均軸比が4〜10であって長軸径の変動係数
が0.2以下である紡錘状を呈したゲーサイト粒子の製
造方法、(7) 炭酸アルカリ水溶液または炭酸アルカ
リ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応さ
せて得られるpH8〜11のFeCO3 又はFe含有沈
澱物を含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸化す
ることにより紡錘状を呈したゲーサイト粒子を製造する
方法において、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生成さ
せる前に、該アルカリ水溶液、該第一鉄塩水溶液、Fe
CO3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液のいずれか1つ
以上の溶液中にキレート能をもつカルボン酸またはその
塩、および2価の遷移金属化合物とを予め存在させてお
くことを特徴とする、平均長軸径が0.05〜0.25
μmであり、かつ平均軸比が4〜10であって長軸径の
変動係数が0.2以下である紡錘状を呈したゲーサイト
粒子の製造方法、(8) キレート能をもつカルボン酸
としてリンゴ酸を、鉄に対するモル比で0.05〜10
%存在させておくことを特徴とする、前記(6)又は
(7)記載の製造方法、(9) 2価の遷移金属化合物
としてCo化合物を、鉄に対する重量比で5〜40%存
在させておくことを特徴とする、前記(7)又は(8)
記載の製造方法、(10) FeCO3 又はFe含有沈
澱物を含む懸濁液に、酸素含有ガスを通気して紡錘状ゲ
ーサイト粒子を生成させる工程の反応温度が25〜55
℃である前記(6)〜(9)いずれか記載の製造方法、
に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の紡錘状を呈したゲーサイ
ト粒子は、平均長軸径が0.05〜0.25μmであ
り、かつ平均軸比が4〜10であって長軸径の変動係数
が0.2以下である。本発明でいうゲーサイトとは、面
間隔4.183±0.05、2.693±0.05、
2.450±0.05オングストロームに相当する位置
にX線回折の主要ピークを有する状態をさしている。こ
のゲーサイトの典型的な粉末X線回折パターンを図3に
示す。このような紡錘状を呈したゲーサイト粒子は、次
のような方法により製造することができる。まず、Fe
CO3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液を調製する。F
eCO3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液は、通常、炭
酸アルカリを含む水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させ
るか、または炭酸アルカリと水酸化アルカリとの混合水
溶液と第一鉄塩とを反応させることにより得られる。軸
比を高くできる点から、後者の方がより好ましい。該懸
濁液を得る際には、第一鉄塩水溶液及びアルカリ水溶液
の溶存酸素を予め除去しておき、非酸素雰囲気の下で反
応させ、該懸濁液を調製することが望ましい。
【0016】本発明において使用される第一鉄塩として
は、特に限定されないが、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、お
よび硝酸第一鉄からなる群より選ばれる1種以上が使用
できる。本発明では、反応に先だって、通常、上記の第
一鉄塩は水溶液とする。このときの第一鉄塩水溶液濃度
は、通常0.5 〜2.0mol/Lである。
【0017】一方、本発明において使用される炭酸アル
カリとしては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、
炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、
炭酸水素アンモニウム等を挙げることができる。また、
水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウム、水酸化アンモニウム等を挙げることができる。
通常、アルカリも水溶液とする。このときのアルカリ水
溶液の濃度は、通常0.3 〜1.0mol/Lである。
【0018】アルカリの使用量としては、第一鉄に対し
て1 〜4 当量が好ましく、1 〜2 当量がさらに好まし
い。アルカリ使用量が1当量未満では粒度分布の均一な
ゲーサイトが生成しにくく、4 当量を超えて使用するこ
とはコスト高となり工業的に有利とは言い難い。
【0019】本発明におけるFeCO3 又はFe含有沈
澱物を含む懸濁液のpHは、8〜11が好ましい。pH
が8未満の場合またはpHが11を超える場合には、粒
度がより均斉な紡錘状を呈したゲーサイト粒子は得られ
ない。
【0020】本発明におけるキレート能をもつカルボン
酸またはその塩は、生成する紡錘状を呈したゲーサイト
粒子の均斉度、粒度、樹枝状粒子の有無や軸比(長軸径
/短軸径)等の形態に影響するものであるから、紡錘状
を呈したゲーサイト粒子を生成させる前に予めこれらの
液中に存在させておくことが必要であり、第一鉄塩水溶
液、炭酸アルカリ水溶液、炭酸アルカリ・水酸化アルカ
リ水溶液、FeCO3またはFe含有沈澱物を含む懸濁
液のいずれか1つ以上の液中に添加しておく。添加の時
期は、酸化反応前であればいずれの段階でもよい。
【0021】キレート能をもつカルボン酸としては、特
に限定されないが、例えばリンゴ酸、酒石酸、グルコン
酸等を使用することができる。キレート能をもつカルボ
ン酸の塩としては、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリ
ウム、グルコン酸ナトリウム等を使用することができ
る。なかでもリンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸な
どが好ましい。キレート能をもつカルボン酸またはその
塩の使用量は、好ましくはFeに対するモル比で0.0
5〜10%、さらに好ましくは0.05〜7%、特に好
ましくは0.1〜3%存在させておくのがよい。0.0
5%未満では効果が発現せず、10%を越えると凝集の
多いゲーサイト粒子が生成する。
【0022】このように本発明においては、キレート能
をもつカルボン酸またはその塩の存在下で酸素含有ガス
を通気して酸化することにより、粒度が均斉であって樹
枝状粒子が混在しない紡錘状を呈したゲーサイト粒子が
得られる。
【0023】これらの諸特性を保持する紡錘状を呈した
ゲーサイト粒子が本発明の方法により得られる理由につ
いては明らかではないが、紡錘状を呈したゲーサイト粒
子の生成にあたり、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生
成させる前にキレート能をもつカルボン酸、例えばリン
ゴ酸、酒石酸またはそれらの塩を存在させなかった場合
やこれらのキレート能をもつカルボン酸またはその塩の
存在下であっても水酸化アルカリのみを使用してpH1
1以上で針状ゲーサイト粒子を生成させる場合には、本
発明の目的とする諸特性を保持するゲーサイト粒子を得
ることができない。また、特開平6−16425号公報
におけるアスコルビン酸またはその塩のようにキレート
能をもたないものを使用する方法においても本発明の目
的とする諸特性を十分に保持するゲーサイト粒子は合成
することは困難である。
【0024】本発明者は、これらの現象の相違について
検討したところ、アスコルビン酸は鉄とキレートを作ら
ないが、キレート能をもつカルボン酸は鉄とキレートを
作るため、FeCO3 またはFe含有沈澱物を含むpH
8〜11の懸濁液中でアスコルビン酸よりも強く作用
し、ゲーサイトの晶癖形成過程に好ましく作用するもの
と考えている。
【0025】本発明においては、キレート能をもつカル
ボン酸またはその塩に加えて、さらに2価の遷移金属化
合物を添加してこれらの化合物を予め存在させておく
と、粒度が均斉であって樹枝状粒子が混在しておらず、
粒子の凝集が存在しない金属磁性粉末の原料となるゲー
サイト粒子を得る際に、特に有用である。本発明で用い
られる2価の遷移金属化合物としては、Co化合物、N
i化合物、Zn化合物、Cu化合物等が挙げられる。な
かでも金属磁性粉末の耐食性向上、磁気特性向上の点か
らCo化合物が好ましい。Co化合物としては、特に限
定されないが、CoSO4 、CoCl2 、Co(NO3)
2 、Co(CH3 COO)2等が挙げられる。2価の遷移
金属化合物の使用量は、好ましくは鉄に対する重量比で
5〜40%、さらに好ましくは10〜30%存在させて
おくのがよい。5%未満では十分な効果が得られにく
く、40%を越えると目的とする十分な分散性が得られ
ない。
【0026】本発明においては、前記のようにして調製
されたpH8〜11のFeCO3 又はFe含有沈澱物を
含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸化すること
により紡錘状を呈したゲーサイト粒子を製造するが、こ
こでの酸素含有ガスの通気による酸化工程は、常法によ
り行われ、特に限定されるものではない。通常、酸素含
有ガスとして空気などを用い、好ましくは25〜55
℃、さらに好ましくは30〜50℃で反応槽下部から酸
素含有ガスを送り込むことで行われる。反応時間は0.
5〜6時間であり、更に生成粒子の高分散化の目的で酸
化反応前に非酸化性雰囲気下、例えば窒素ガス通気下
で、0.5〜5時間程度熟成するのがよい。
【0027】本発明の製造方法により得られる紡錘状を
呈したゲーサイト粒子は、樹枝状粒子が混在しないもの
であり、その長軸径、短軸径、及び軸比は、反応で得ら
れたゲーサイト粒子を水洗した後、透過型電子顕微鏡
(TEM)により写真をとり、TEM写真から1次粒子
の長軸径及び短軸径を読みとり求める。平均長軸径及び
平均軸比は、300個の1次粒子についての測定値の平
均により求める。
【0028】本発明のゲーサイト粒子の平均長軸径は
0.05〜0.25μmであるのが好ましく、さらに好
ましくは0.07〜0.2μmである。平均長軸径が
0.05μm未満であると、超常磁性が発現して、還元
したメタル粉の静磁気特性が劣り、0.25μmを超え
ると高密度記録媒体用メタル粉原料となりにくい。さら
に、平均軸比は4〜10であるのが好ましく、さらに好
ましくは4〜8、特に好ましくは5〜8である。平均軸
比が4未満であると、還元したメタル粉の静磁気特性が
劣り、10を超えると十分な分散性が得られない。
【0029】粒度分布は、長軸径の変動係数σY/Yで
表される。σYは長軸径の標準偏差、Yは平均長軸径で
ある。変動係数の数値の小さいほど、粒度分布がシャー
プであり、粒度が均斉であることを示す。本発明のゲー
サイト粒子では、長軸径の変動係数が0.2以下、好ま
しくは0.18以下、さらに好ましくは0.16以下で
ある。従来の技術の項で述べた前記の特公昭39−56
10号公報記載の方法のようにpH11以上にて酸化す
る方法では、長軸径の変動係数が0.2以下となる粒度
分布がシャープなゲーサイト粒子を製造することはでき
ない。これに対し本発明の製造方法では、長軸径の変動
係数が0.2以下となる粒度分布がシャープなゲーサイ
ト粒子を製造することができる。
【0030】また、本発明では分散性の高い、即ち凝集
の少ない金属磁性粉末の原料となるゲーサイト粒子であ
るのが好ましいが、ゲーサイト粒子の凝集度合は、次の
ようにして求められる。まず、レーザー回折/散乱式粒
度分布測定装置((株)堀場製作所製)を用いて測定さ
れる粒度分布をもとに、メディアン径を得る。屈折率は
2.0とし、凝集度合はTEM写真から得られたメディ
アン径と得られた平均長軸径との比(メディアン径/平
均長軸径)で表すことができる。該メディアン径/平均
長軸径の数値が小さいほど凝集度合が少ないことを示
す。前記の特開平6−16425号公報に記載の方法で
は、該メディアン径/平均長軸径が2.5未満となるゲ
ーサイトを製造することはできないが、本発明の方法で
は、キレート能をもつカルボン酸またはその塩、2価の
遷移金属化合物などの添加物の量を適宜調整することに
より、該メディアン径/平均長軸径が2.5未満、さら
に好ましくは2.0以下となる凝集が少ないゲーサイト
粒子を製造することができる。
【0031】本発明では、さらに前記のような本発明の
ゲーサイト粒子を還元して得られる磁気記録媒体用金属
磁性粉末を提供する。磁気記録媒体用金属磁性粉末を得
るためのゲーサイト粒子の還元工程は常法により行うこ
とができ、特に限定されるものではない。通常、水素気
流中で400〜550℃に0.5時間以上保つなどの一
般的に用いられる還元方法により行うことができる。還
元終了後の金属磁性粉末(メタル粉)は、非常に活性が
強く酸化を受けやすいために、常法により表面酸化処理
が行われ、安定化される。
【0032】このようにして得られた磁気特性に優れた
本発明の金属磁性粉末は、通常の方法により塗料化、塗
工し、磁気記録媒体用塗膜として使用される。例えば、
この金属磁性粉末を、結合剤樹脂、有機溶剤およびその
他の必要成分とともに分散混合して磁性塗料を調製し、
この磁性塗料をポリエステルフィルムなどの基体上に、
ドクターブレード法、グラビア、リバース法、ロール塗
りなど任意の手段で塗布し、必要により磁場配向後、乾
燥するなどの方法で行なう。
【0033】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を詳述
するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定され
るものではない。
【0034】実施例1 2.0mol/LのNa2 CO3 水溶液2.00L(4
mol)及び2.0mol/LのNaOH水溶液1.0
0L(2mol)との混合溶液にリンゴ酸を含む水溶液
0.33L(鉄に対してリンゴ酸0.10mol%)を
添加した後、Fe2+1.5mol/Lを含む硫酸第一鉄
水溶液1.67Lを添加し、撹拌羽の回転速度を600
rpmとし、外部循環分散機(エバラマイルダー)を配
した気泡攪拌槽内で混合し、温度40℃において第一鉄
塩を含む沈澱物を生成した。該第一鉄塩を含む沈澱物か
らなるpH10.6の懸濁液中に、温度40℃において
毎分5Lの空気を66分間通気させた。さらに酸素含有
ガス通気前に150分間窒素ガス通気による熟成を行っ
た。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。該黄褐色
粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TE
M)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成しているこ
とをX線回折装置「RAD」(理学電機(株)製)を用
いて確認した。
【0035】該黄褐色粒子粉末は、X線回折の結果ゲー
サイトであり、図3に示す電子顕微鏡写真(×2000
0)から、平均値で長軸径0.12μm、短軸径0.0
17、軸比7.2の紡錘状を呈した粒子であった。長軸
径の変動係数は0.16であった。また、該黄褐色粒子
のケークをレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置
((株)堀場製作所製)で測定したところ、メディアン
径が、0.20μmとなる結果を得た。メディアン径/
平均長軸径は1.67であった該黄褐色粒子は、粒度が
均斉で、樹枝状粒子が混在しない粒子であった。ゲーサ
イトの主要製造条件(第一鉄塩水溶液の種類及び使用
量、アルカリ水溶液の種類、濃度及び使用量など)を表
1に示す。また、生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒
子の諸特性(平均長軸径、平均短軸径、平均軸比、長軸
径変動係数、短軸径変動係数、軸比変動係数及びメディ
アン径、メディアン径/平均長軸径など)を表2に示
す。
【0036】実施例2 リンゴ酸を含む水溶液のリンゴ酸の量を鉄に対して0.
35mol%に、更に混合時の撹拌羽の回転速度を50
0rpmに変えた以外は、実施例1と同様に実施した。
温度40℃において毎分5Lの空気を108分間通気さ
せた。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。該黄褐
色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TE
M)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成しているこ
とを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子
の諸特性を表2に示す。
【0037】実施例3 リンゴ酸を含む水溶液のリンゴ酸の量を鉄に対して0.
50mol%に、更に混合時の撹拌羽の回転速度を50
0rpmに変えた以外は、実施例1と同様に実施した。
温度40℃において毎分5Lの空気を120分間通気さ
せた。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。該黄褐
色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TE
M)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成しているこ
とを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子
の諸特性を表2に示す。
【0038】実施例4 リンゴ酸を含む水溶液のリンゴ酸の量を鉄に対して5.
0mol%に、リンゴ酸を含む水溶液の添加を熟成時に
行い、かつ混合時の撹拌羽の回転速度を500rpm
に、更に温度を45℃に変えた以外は、実施例1と同様
に実施した。温度45℃において毎分5Lの空気を11
0分間通気させた。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成
した。該黄褐色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子
顕微鏡(TEM)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生
成していることを確認した。生成した紡錘状を呈したゲ
ーサイト粒子の諸特性を表2に示す。
【0039】実施例5 紡錘状を呈したゲーサイト粒子が生成する以前の液中
に、鉄に対する重量比15%のCoを含有する硫酸コバ
ルト六水塩をさらに添加し、かつ混合時の撹拌羽の回転
速度を400rpmに熟成時間を180分に、変えた以
外は、実施例1と同様に実施した。温度40℃において
毎分5Lの空気を275分間通気させた。反応終了後、
赤褐色沈澱粒子を生成した。該赤褐色粒子を、濾別、水
洗した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、
紡錘状ゲーサイトが生成していることを確認した。生成
した紡錘状を呈したゲーサイト粒子の諸特性を表2に示
す。
【0040】実施例6 紡錘状を呈したゲーサイト粒子が生成する以前の液中
に、鉄に対する重量比15%のCoを含有する硫酸コバ
ルト六水塩をさらに添加し、リンゴ酸を含む水溶液のリ
ンゴ酸の量を鉄に対して0.35mol%に、混合時の
撹拌羽の回転速度を400rpmに、かつ熟成時間を1
80分に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。温
度40℃において毎分5Lの空気を256分間通気させ
た。反応終了後、赤褐色沈澱粒子を生成した。該赤褐色
粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TE
M)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成しているこ
とを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子
の諸特性を表2に示す。
【0041】実施例7 キレート能をもつカルボン酸としてリンゴ酸ではなく、
酒石酸にかえた以外は、実施例1と同様に実施した。温
度40℃において毎分5Lの空気を59分間通気させ
た。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。該黄褐色
粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TE
M)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成しているこ
とを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子
の諸特性を表2に示す。
【0042】実施例8 キレート能をもつカルボン酸としてリンゴ酸ではなく酒
石酸にかえ、酒石酸を含む水溶液の酒石酸の量を鉄に対
して0.20mol%に、かつ混合時の撹拌羽の回転速
度を500rpmに変えた以外は、実施例1と同様に実
施した。温度40℃において毎分5Lの空気を70分間
通気させた。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。
該黄褐色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡
(TEM)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成して
いることを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイ
ト粒子の諸特性を表2に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】比較例1 キレート能をもつカルボン酸を添加せず、1.72mo
l/LのNa2 CO3水溶液を2.33L(4mol)
に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。温度40
℃において毎分5Lの空気を72分間通気させた。反応
終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。該黄褐色粒子を、
濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により
観察し、紡錘状ゲーサイトが生成していることを確認し
た。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子の諸特性を
表2に示す。
【0046】比較例2 キレート能をもつカルボン酸を添加せず、紡錘状を呈し
たゲーサイト粒子が生成する以前の液中に、鉄に対する
重量比15%のCoを含有する硫酸コバルト六水塩を添
加し、混合時の撹拌羽の回転速度を400rpmに、
1.72mol/LのNa2 CO3 水溶液量を2.33
L(4mol)に、熟成時間を180分に変えた以外
は、実施例1と同様に実施した。温度40℃において毎
分5Lの空気を268分間通気させた。反応終了後、赤
褐色沈澱粒子を生成した。該赤褐色粒子を、濾別、水洗
した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、紡
錘状ゲーサイトが生成していることを確認した。生成し
た紡錘状を呈したゲーサイト粒子の諸特性を表2に示
す。
【0047】比較例3 キレート能をもたないカルボン酸であるアスコルビン酸
を、リンゴ酸のかわりに添加した以外は、実施例1と同
様に実施した。温度40℃において毎分5Lの空気を7
1分間通気させた。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成
した。該黄褐色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子
顕微鏡(TEM)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生
成していることを確認した。生成した紡錘状を呈したゲ
ーサイト粒子の諸特性を表2に示す。
【0048】比較例4 キレート能をもたないカルボン酸であるアスコルビン酸
を、リンゴ酸のかわりに鉄に対して0.2mol%添加
した以外は、実施例1と同様に実施した。温度40℃に
おいて毎分5Lの空気を57分間通気させた。反応終了
後、黄褐色沈澱粒子を生成した。該黄褐色粒子を、濾
別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観
察し、紡錘状ゲーサイトが生成していることを確認し
た。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子の諸特性を
表2に示す。
【0049】比較例5 キレート能をもたないカルボン酸であるクエン酸を、リ
ンゴ酸のかわりに添加した以外は、実施例1と同様に実
施した。温度40℃において毎分5Lの空気を71分間
通気させた。反応終了後、黄褐色沈澱粒子を生成した。
該黄褐色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡
(TEM)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成して
いることを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイ
ト粒子の諸特性を表2に示す。
【0050】比較例6 キレート能をもたないカルボン酸であるアスコルビン酸
を、リンゴ酸のかわりに添加し、紡錘状を呈したゲーサ
イト粒子が生成する以前の液中に、鉄に対する重量比1
5%のCoを含有する硫酸コバルト六水塩を添加し、混
合時の撹拌羽の回転速度を400rpmに、熟成時間を
180分に変えた以外は、実施例1と同様に実施した。
温度40℃において毎分5Lの空気を199分間通気さ
せた。反応終了後、赤褐色沈澱粒子を生成した。該赤褐
色粒子を、濾別、水洗した後、透過型電子顕微鏡(TE
M)により観察し、紡錘状ゲーサイトが生成しているこ
とを確認した。生成した紡錘状を呈したゲーサイト粒子
の諸特性を表2に示す。
【0051】比較例における第一鉄塩水溶液の種類及び
使用量、アルカリ水溶液の種類及び使用量、カルボン酸
の種類、使用量及び添加時期、2価遷移金属化合物の種
類、使用量、熟成時間、反応温度などの主要製造条件に
ついて表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】試験例 実施例および比較例で得られたゲーサイト粒子を用い
て、以下のようにしてメタル粉粒子を調製し、さらに塗
膜を得た。即ち、反応槽の外部にパイプライン型分散機
マイルダー(荏原製作所製)を設置した循環ラインを設
けた装置を用い、実施例および比較例で得られたゲーサ
イト500gを、イオン交換水14リットルに添加し約
2時間分散した。マイルダーによる分散を続けながら、
硝酸コバルト6水和塩311g(Co/Fe=20重量
%)を1500mlのイオン交換水に溶解した水溶液を
添加し、15分間分散した後、8%NaOH水溶液を滴
下し、スラリーのpHを10に調整し、表面に水酸化コ
バルトを主とする化合物を形成した。その後、さらに8
%NaOHを1740g添加し、次に酢酸カルシウム1
水和物11g(Ca/Fe=0.5重量%)を50gの
イオン交換水に溶解した水溶液を添加した後、空気を5
時間吹き込んだ。その後、酸化ランタン22g(La/
Fe=6重量%)を硝酸に溶解した11%硝酸ランタン
水溶液199gを滴下し、さらに硝酸アルミニウム9水
和物175g(Al/Fe=4重量%)をイオン交換水
800gに溶解した硝酸アルミニウム水溶液を滴下した
後、15%HNO3 を滴下し、スラリーのpHを9.0
に調整し、ランタン及びアルミニウムの水酸化物を主と
する化合物を形成した。
【0054】その後、イオン交換水にてスラリーを洗浄
し、洗浄液の電気伝導度が100μS/cm以下になる
まで洗浄した(洗浄終了時の洗浄液の電気伝導度は50
μS/cmとなった)。洗浄完了後、スラリーの上澄み
液を取り除き、スラリーの総量を15リットル程度にし
たものを、さらに分散を行い、8%アンモニア溶液を2
9g添加し後、オクタン酸(ルナック8−98、花王
(株)製)20g(対粉4重量%)を添加し、分散を3
0min程度続け、その後、スラリーを濾過、乾燥し
た。以上のようにして得られたメタル前駆体を48〜6
4メッシュに整粒し、内径62mmの流動槽炉でガス線速
度7cm/秒の窒素気流中で500℃/2時間の加熱処理
を行なった。次いで水素気流中500℃で2時間還元し
た。還元終了後、80℃で250ppmの酸素を含むチ
ッ素ガスをガス線速度7cm/秒で30分間通気し、出口
酸素濃度が230ppm以上になるまで表面の酸化を行
ない、メタル粉粒子を得た。
【0055】次いで、下記塗料配合の配合物をバッチ式
サンドミルで6時間混練後、混練物にコロネートL(日
本ポリウレタン工業株式会社製)2.5重量部を添加
し、さらに15分間混練を行った後、濾過してガラスビ
ーズを分離し、磁性塗料を調製した。この塗料を10μ
m厚のPETフィルム上に乾燥膜厚が3μmになるよう
に塗布し、磁場配向処理後乾燥してPETフィルム上に
磁性層を形成した。次いで、カレンダー処理により鏡面
加工して塗膜を得た。
【0056】<塗料配合> メタル粉粒子 100重量部 レシチン 2 〃 カーボンブラック 3 〃 γ−アルミナ 5 〃 VAGH*1 15 〃 ニッポラン2304*2 10 〃 メチルエチルケトン 150 〃 トルエン 50 〃 シクロヘキサノン 75 〃 (註)*1:ユニオンカーバイド社製塩化ビニル/酢酸
ビニル/ポリビニルアルコール共重合体 *2:日本ポリウレタン工業(株)製のポリウレタン樹
【0057】これらゲーサイト粒子を出発物質とした金
属磁性粉末(メタル粉粒子)の粒子特性、静磁気特性、
並びに得られた塗膜の静磁気特性を表4に示す。表4中
の略字は次の通りである。 SSA:比表面積 Hc:保磁力 σs:飽和磁化 Rs:金属磁性粉末の角型比(σr/σs) SFD:M−Hカーブの微分波形の半値幅(Ha)を保
磁力(Hc)で規格化した値(磁気的均斉度) Bs:飽和磁化 Sq:塗膜の角型比(Br/Bs)で磁気的配向度を示
す。
【0058】
【表4】
【0059】表4に示すように実施例1〜8では高保磁
力(Hc)のメタル粉粒子が得られ、これを用いて得た
塗膜のSq(磁気的配向度)も高く、SFD(磁気的均
斉度)も小さい値であり、磁気録媒体用の塗膜として望
ましい特性であった。これに対し、比較例1〜6ではメ
タル粉粒子の保磁力が低く、塗膜のSqは低く、SFD
が大きかった。
【0060】
【発明の効果】本発明により、粒度が均斉であって、樹
枝状粒子が混在しておらず、しかも粒子の凝集が存在し
ない、優れた静磁気特性を有する紡錘状を呈したゲーサ
イト粒子を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、紡錘状を呈したゲーサイト粒子の形状
の概略を示す図である。
【図2】図2は、針状を呈したゲーサイト粒子の形状の
概略を示す図である。
【図3】図3は、リンゴ酸をアルカリ水溶液中に予め存
在させておいた場合のゲーサイト粒子の粉末X線回折パ
ターンである。
【図4】図4は、実施例2で得られた紡錘状のゲーサイ
ト粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×2000
0)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 有田 俊治 和歌山市湊1334番地 花王株式会社研究所 内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均長軸径が0.05〜0.25μmで
    あり、かつ平均軸比が4〜10であって長軸径の変動係
    数が0.2以下であることを特徴とする紡錘状を呈した
    ゲーサイト粒子。
  2. 【請求項2】 ゲーサイト粒子のメディアン径と平均長
    軸径の比(メディアン径/平均長軸径)が2.5未満で
    ある請求項1記載のゲーサイト粒子。
  3. 【請求項3】 炭酸アルカリ水溶液または炭酸アルカリ
    ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させ
    て得られるpH8〜11のFeCO3 又はFe含有沈澱
    物を含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸化する
    ことにより得られる紡錘状を呈したゲーサイト粒子にお
    いて、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生成させる前
    に、該アルカリ水溶液、該第一鉄塩水溶液、FeCO3
    又はFe含有沈澱物を含む懸濁液のいずれか1つ以上の
    溶液中にキレート能をもつカルボン酸またはその塩を予
    め存在させておくことにより得られることを特徴とする
    請求項1又は2記載のゲーサイト粒子。
  4. 【請求項4】 炭酸アルカリ水溶液または炭酸アルカリ
    ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させ
    て得られるpH8〜11のFeCO3 又はFe含有沈澱
    物を含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸化する
    ことにより得られる紡錘状を呈したゲーサイト粒子にお
    いて、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生成させる前
    に、該アルカリ水溶液、該第一鉄塩水溶液、FeCO3
    又はFe含有沈澱物を含む懸濁液のいずれか1つ以上の
    溶液中にキレート能をもつカルボン酸またはその塩、お
    よび2価の遷移金属化合物とを予め存在させておくこと
    により得られることを特徴とする請求項1又は2記載の
    ゲーサイト粒子。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4いずれか記載のゲーサイト
    粒子を還元して得られる磁気記録媒体用金属磁性粉末。
  6. 【請求項6】 炭酸アルカリ水溶液または炭酸アルカリ
    ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させ
    て得られるpH8〜11のFeCO3 又はFe含有沈澱
    物を含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸化する
    ことにより紡錘状を呈したゲーサイト粒子を製造する方
    法において、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生成させ
    る前に、該アルカリ水溶液、該第一鉄塩水溶液、FeC
    3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液のいずれか1つ以
    上の溶液中にキレート能をもつカルボン酸またはその塩
    を予め存在させておくことを特徴とする、平均長軸径が
    0.05〜0.25μmであり、かつ平均軸比が4〜1
    0であって長軸径の変動係数が0.2以下である紡錘状
    を呈したゲーサイト粒子の製造方法。
  7. 【請求項7】 炭酸アルカリ水溶液または炭酸アルカリ
    ・水酸化アルカリ水溶液と第一鉄塩水溶液とを反応させ
    て得られるpH8〜11のFeCO3 又はFe含有沈澱
    物を含む懸濁液中に、酸素含有ガスを通気して酸化する
    ことにより紡錘状を呈したゲーサイト粒子を製造する方
    法において、紡錘状を呈したゲーサイト粒子を生成させ
    る前に、該アルカリ水溶液、該第一鉄塩水溶液、FeC
    3 又はFe含有沈澱物を含む懸濁液のいずれか1つ以
    上の溶液中にキレート能をもつカルボン酸またはその
    塩、および2価の遷移金属化合物とを予め存在させてお
    くことを特徴とする、平均長軸径が0.05〜0.25
    μmであり、かつ平均軸比が4〜10であって長軸径の
    変動係数が0.2以下である紡錘状を呈したゲーサイト
    粒子の製造方法。
  8. 【請求項8】 キレート能をもつカルボン酸としてリン
    ゴ酸を、鉄に対するモル比で0.05〜10%存在させ
    ておくことを特徴とする、請求項6又は7記載の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 2価の遷移金属化合物としてCo化合物
    を、鉄に対する重量比で5〜40%存在させておくこと
    を特徴とする、請求項7又は8記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 FeCO3 又はFe含有沈澱物を含む
    懸濁液に、酸素含有ガスを通気して紡錘状ゲーサイト粒
    子を生成させる工程の反応温度が25〜55℃である請
    求項6〜9いずれか記載の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6219610B1 (en) 1998-04-03 2001-04-17 Nissan Motor Co., Ltd. Turn control system for vehicle

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US6219610B1 (en) 1998-04-03 2001-04-17 Nissan Motor Co., Ltd. Turn control system for vehicle

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