JPH10288173A - スクロール型コンプレッサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 吸入ガスの流路抵抗を減少させ、流路抵抗の
増大に起因するコンプレッサの性能の低下及び騒音を抑
制する。 【解決手段】 吸入部の挿入側端部と圧縮室の吸入側と
を連通する吸入通路を設け、この吸入通路が吸入部から
吸入された流体が前記圧縮室の吸入側において前記圧縮
室の吸入方向となるように形成されたことにより、圧縮
室に吸入される流体の流入方向と圧縮室の吸入方向が一
致することから、吸入される流体の流路抵抗を低減でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、冷凍機、空調装
置の冷媒圧縮機として使用される圧縮機であって、渦巻
状に形成された固定スクロールと、この固定スクロール
に噛合して圧縮室を画成する揺動スクロールとを有し、
この揺動スクロールを固定スクロールに対して自転しな
い旋回運動をさせることによって前記圧縮室の容積を変
化させて、冷媒を圧縮するスクロール型コンプレッサに
関する。

【０００２】

【従来の技術】特開平７−９７９９５号公報に開示され
るスクロール型コンプレッサは、吸入部と出口パイプが
装着された密閉ケースと、該密閉ケース内に配された駆
動手段によって回転する駆動軸と、この駆動軸の下端面
から軸方向に延出する偏心軸と、この偏心軸に装着され
る揺動スクロール部材と、この揺動スクロール部材が噛
合して圧縮室を画成する固定スクロール部材と、前記駆
動軸を回転自在に保持すると共に前記固定スクロール部
材が固定されるブロックとを有するものであり、揺動ス
クロール部材と固定スクロール部材が噛合して形成され
る圧縮室は、外周方向から吸入して中心より吐出する構
成となっているものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】以上のようなコンプレ
ッサにおいて、コンプレッサの効率を悪化させる因子の
一つとして吸入ガスの流路抵抗が上げられる。具体的に
は、圧縮機の大きさの制約から、吸入部から吸入された
吸入ガスは圧縮室への吸入直前に大きく曲げられるた
め、吸入ガスは大きな抵抗を受け、圧縮室への吸入量が
低減してしまうという不具合が生じていた。また、吸入
ガス経路において、曲がり抵抗が発生した場合、そのエ
ネルギーによって騒音振動することも確認されており、
特に吸入ガスの流体エネルギーが大きい場合（吸入ガス
が液状態の時、若しくは吸入ガスに多量の潤滑オイルが
混入している場合など）には問題となっていた。

【０００４】したがって、この発明は、吸入ガスの流路
抵抗を減少させ、流路抵抗の増大に起因するコンプレッ
サの性能の低下及び騒音を抑制したスクロール型コンプ
レッサを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】よって、この発明は、吸
入部と出口パイプを有する密閉ケースと、該密閉ケース
内に配された駆動手段と、該駆動手段から延出する駆動
軸と、該駆動軸の一端を回動自在に支持するメイン軸受
が配され、前記密閉ケースに固着されるブロックと、前
記駆動軸の軸方向の一端面から偏心して突出する偏心軸
と、該偏心軸が回動自在に装着される揺動軸受を有し、
該揺動軸受の反対側から軸方向に渦巻状に延出する揺動
スクロールを有する揺動スクロール部材と、前記揺動ス
クロールと噛合して圧縮室を画成する固定スクロールを
有し、前記ブロックとの間に前記揺動スクロール部材を
揺動自在に挟持して前記ブロックに固定される固定スク
ロール部材とを具備するスクロール型コンプレッサにお
いて、前記吸入部の挿入側端部と前記圧縮室の吸入側と
連通する吸入通路であって、該吸入通路は前記吸入部か
ら吸入された流体が前記圧縮室の吸入側端部において前
記圧縮室の吸入方向となるように形成されたことにある
（請求項１）。

【０００６】したがって、この発明によれば、吸入部の
挿入側端部と圧縮室の吸入側とを連通する吸入通路を設
け、この吸入通路が吸入部から吸入された流体が前記圧
縮室の吸入側において前記圧縮室の吸入方向となるよう
に形成されたことにより、圧縮室に吸入される流体の流
入方向と圧縮室の吸入方向が一致することから、吸入さ
れる流体の流路抵抗を低減できるものである。

【０００７】具体的には、前記吸入通路は前記揺動スク
ロールの外側端部の接線方向に沿って直線的に形成さ
れ、前記吸入部は該吸入通路に沿って挿入されるもので
ある（請求項２）。これによって、吸入部から吸入され
た流体は、直線的に圧縮室内に流入することができるの
で、流路抵抗を極端に低減できるものである。

【０００８】また、吸入部を吸入パイプと吸入パイプ装
着部によって構成すると共に、この吸入パイプ部を前記
吸入通路の深く装着することができるために、この吸入
パイプ装着部と固定スクロール部材との間をシールする
シール手段、たとえばＯリングを、前記吸入パイプと吸
入パイプ装着部とをろう付けする時の熱から保護するこ
とができるので、吸入パイプ装着部と固定スクロール部
材との間のシール不良をなくすことができる。

【０００９】さらに、前記吸入部は、前記密閉ケースに
対して略垂直に挿着され、前記吸入通路は前記吸入部の
挿着側端部から前記圧縮室の吸入側端部で前記圧縮室の
吸入方向となる曲線に沿って形成してもよいものである
（請求項３）。これによって、吸入部が通常通り密閉ケ
ースに略垂直に形成された場合にも、吸入部から吸入さ
れた流体が曲線に沿って圧縮室に流れ込むので、流路抵
抗を低減することができると共に、揺動スクロールに直
接流体が衝突しないことから低振動騒音化を達成するこ
とができる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態につ
いて図面により説明する。

【００１１】図１に示すスクロール型コンプレッサ１に
おいて、密閉ケース２は、吸入部（入口パイプ３と、入
口パイプ装着部３Ａ）が設けられる円筒状ケース４と、
この円筒状ケース４の上部開口端を閉塞すると共に出口
部（出口パイプ）５と電源端子６が装着される上蓋部７
Ａと、前記円筒ケース４の下部開口端を閉塞する下蓋部
７Ｂとによって構成され、この密閉ケース２内に、駆動
部８と圧縮部９とが収納される。

【００１２】前記駆動部８は、前記密閉ケース２の内周
側面に固定されると共に周囲に励磁コイル１０が巻回さ
れるステータ１１と、このステータ１１と対峙する面に
複数の磁極を有する永久磁石が装着されたロータ１２
と、このロータ１２が固着される駆動軸（シャフト）１
３とによって構成され、前記ステータ１１が励磁コイル
１０によって適宜励磁されて前記ロータ１２に対して回
転磁界を発生させ、前記ロータ１２を回転させるもので
ある。

【００１３】前記駆動部８と下記する圧縮部９とをつな
ぐシャフト１３は、その上端部分が保持プレート１４に
装着されたベアリング１５によって回動自在に保持さ
れ、また下端部分は下記するブロック１６の貫通孔１８
に装着されたメイン軸受１７によって回動自在に保持さ
れている。また、前記シャフト１３には、下記する揺動
スクロール部材３０との回転バランスを維持するための
バランスウェート１９が形成されている。さらに前記シ
ャフト１３には、前記メイン軸受１７との当接摺動面に
回転方向に傾斜して形成されたスパイラル溝２０が形成
されてこの当接摺動部分の潤滑を行なうようになってお
り、また前記シャフト１３の軸方向の端部には、該シャ
フト１３の軸心から偏心して軸方向に突出する偏心軸２
１が形成され、前記スパイラル溝２０の先端部分近傍に
形成された孔と偏心軸２１の端面に形成された孔とを連
通するオイル導引孔２３が形成されている。

【００１４】前記圧縮部９は、前記密閉ケース２の内周
側面に固着されたブロック１６と、前記シャフト１３の
回転に伴って自転が防止された旋回運動（以下、揺動運
動という）を行なう揺動スクロール部材３０と、該揺動
スクロール部材３０に噛合して圧縮室４０を画成する固
定スクロール部材５０とによって構成される。

【００１５】前記ブロック１６は、中央部分を軸方向に
貫通する前記貫通孔１８を有し、前記メイン軸受１７を
介して前記シャフト１３を回動自在に保持している。ま
た、このブロック１６の上面には前記バランスウェート
１９の回転範囲を囲むようにカバー２４が設けられ、該
カバー２４の脚部２５には冷媒通路２６が形成されてい
る。

【００１６】また、ブロック１６の上部にはオイル溜２
７が形成され、さらにこのオイル溜２７の上方は前記出
口パイプ５と連通する高圧空間２８となるもので、この
オイル溜２７は、前記シャフト１３、前記ブロック１
６、メイン軸受１７の下端及び下記するシールベアリン
グ部８０によって画成されるオイル空間７２とオイル通
路７３を介して連通されるものである。

【００１７】また、ブロック１６の下面には、下記する
揺動スクロール部材３０の自転を防止するオルダムリン
グ２９のブロック側の爪部２９Ａが噛合するブロック側
オルダム溝７０が形成され、さらにブロック１６の側部
近傍には、前記冷媒通路２６と連通する冷媒通路孔７１
が形成される。

【００１８】揺動スクロール部材３０のブロック側側面
には、前記偏心軸２１が挿着される揺動軸受３１と、前
記オルダムリング２９の揺動スクロール側の爪部２９Ｂ
が噛合する揺動スクロール側オルダム溝３２が形成され
る。また、前記揺動軸受３１に前記偏心軸２１が挿着さ
れることによって、前記揺動軸受３１の内部に軸受空間
３３が画成される。さらに、この揺動スクロール部材３
０の固定スクロール側側面には、渦巻状に形成された揺
動スクロール３４が形成される。

【００１９】前記固定スクロール部材５０には前記揺動
スクロール部材３０の揺動スクロール３４と噛合して圧
縮室４０を構成する固定スクロール５１が形成され、さ
らに外周側面近傍には前記吸入部３と連通されて前記圧
縮室４０の吸入側となる吸入通路５２が形成され、また
中央部分には前記圧縮室４０の吐出側となる吐出孔５３
が形成される。また、圧縮室４０の中間位置近傍には、
圧縮室４０内と吐出空間６０とを連通するバイパス通路
５４が形成される。

【００２０】そして、固定スクロール部材５０の吐出孔
５３の開口部には、逆止弁６１を保持すると共に前記バ
イパス通路５４を開閉するリリーフ弁６２を保持固定す
る保持プレート６３がネジ止め固定される。さらに、前
記吐出孔５３の吐出側には、カバー７４によって画成さ
れた吐出空間６０が形成される。この吐出空間６０は、
冷媒通路孔７１及び冷媒通路２６を介して高圧空間２８
と連通される。

【００２１】以上の構成のスクロール型コンプレッサ１
において、前記シャフト１３が回転することによって、
揺動スクロール部材３０が固定スクロール部材５０に対
して揺動運動を行ない、前記圧縮室４０の容積を変化さ
せて吸入空間５２から吸入された冷媒を圧縮して吐出孔
５３から吐出するものである。

【００２２】また、オイル溜２７に収容された潤滑油
は、一方ではオイル空間７２からスパイラル溝２０を上
昇してメイン軸受１７とシャフト１３との摺動当接面を
潤滑してオイル溜２７に回帰するという第１の潤滑ルー
トをたどり、また他方では高圧空間２８と吸入空間５２
との差圧によってオイル空間７２からオイル導引孔２３
を介して軸受空間３３に至り、偏心軸２１と揺動軸受３
１との当接摺動面を潤滑しながら上昇し、揺動スクロー
ル部材の揺動軸受３１の旋回範囲である旋回空間２５か
ら揺動スクロール部材３０とブロック１６との摺動当接
面であるスラストガイド７６を潤滑し、さらにオルダム
リング２９とオルダム溝３２，７０とを潤滑して吸入空
間５２に至る第２の潤滑ルートをたどるものである。

【００２３】さらに、第２の潤滑ルートから吸入空間５
２に至った潤滑油は冷媒と共に吸引されて圧縮室４０の
シール及び揺動スクロール部材３０と固定スクロール部
材５０の当接面の潤滑を行なって冷媒と共に高圧空間２
８に至り、ここでオイル分離されてオイル溜２７に回帰
するものである。

【００２４】この第２の潤滑ルートにおいて、オイル空
間７２と旋回空間２５はシールベアリング部８０によっ
て圧力的に遮断され、高圧空間２８と吸入空間５２の圧
力差（以下、差圧）によって潤滑油が確実にオイル空間
７２からオイル導引孔２３を経て軸受空間３３に流れる
ものである。

【００２５】上記スクロール型コンプレッサ１におい
て、図２及び図３に示すように、圧縮室４０の圧縮経路
は、吸入通路５２からに直接冷媒が吸入される第１の圧
縮経路４０Ａと、前記吸入通路５２とバイパス通路９０
及び揺動スクロールの移動空間９１を介して冷媒が吸入
される第２の圧縮経路４０Ｂとによって構成される。
尚、圧縮室４０の他方の吸入通路９０は前記吸入通路５
２と図示しない迂回路によって連通するものである。

【００２６】図２に示す第１の実施の形態において、前
記吸入通路５２は前記揺動スクロール３４の外周端部の
接線方向にまっすぐに形成され、前記パイプ装着部３Ａ
は該吸入通路５２に沿って深く挿着される。つまり、前
記揺動スクロール部材３０が揺動して前記揺動スクロー
ル３４の外周端部が固定スクロール５１に対して最も離
れた状態において、前記圧縮室４０の第１の圧縮経路４
０Ａの吸入端部は、前記パイプ装着部３Ａに対面して開
口するもので、前記第１の圧縮経路４０Ａの吸入行程に
おいて、冷媒はまっすぐに圧縮室４０内に流入するよう
になるため、冷媒の流路抵抗を最小限にすることができ
るものである。また、前記揺動スクロール３４が最も固
定スクロール５１に近づいた状態において、前記冷媒は
前記移動空間９１から前記第２の圧縮経路４０Ｂに至る
ことができるので、第２の圧縮経路４０Ｂへの流路抵抗
も低減することができる。

【００２７】また、該パイプ挿着部３Ａと固定スクロー
ル部材５０の間はＯリング９２によってシールされる
が、この第１の実施の形態においては、前記パイプ装着
部３Ａと前記吸入パイプ３とのろう付け部と前記Ｏリン
グ９２との間の距離を大きくとることができるので、前
記吸入パイプ３と前記パイプ装着部３Ａとのろう付け時
の熱による前記Ｏリング９２の変形を防止することがで
きる。

【００２８】図３に示す第２の実施の形態において、前
記パイプ装着部３Ａは従来と同様に前記密閉ケース２に
垂直に挿着される。そして、前記吸入通路５２は、第１
の曲線（大きい径の円弧）に沿って曲がる外側側壁９３
と第２の曲線（小さい径の円弧）に沿って曲がる内側側
壁９４を有し、前記パイプ挿着部３Ａの端部から、前記
揺動スクロール３４の外周端部が最も固定スクロール５
１から離れた状態の時の第１の圧縮経路４０Ａの開口端
部にかけて曲がり、最終的には前記揺動スクロール３４
の外周端部の接線方向に至るように形成されるものであ
る。

【００２９】これによって、第１の圧縮経路４０Ａの開
口端において、冷媒はまっすぐに圧縮室４０内に流入す
ることができるので、第１の実施の形態と同様に流路抵
抗を低減することができる。また、この第２の実施の形
態においては、揺動スクロール３４の外周端部に冷媒が
直接衝突することを防止できるので、流路抵抗を低減し
つつ騒音を低減することができるものである。また、内
側側壁９４をＲで形成したことによって、カルマン渦の
発生を防止できるものである。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、圧縮室の吸入方向に沿って冷媒の流入方向を設定で
きるので、圧縮室内に流入する冷媒の流路抵抗を低減す
ることができるので、コンプレッサの性能を向上させる
ことができる。

【００３１】また、パイプ装着部を吸入通路に深く挿着
することができるので、パイプ挿着部と固定スクロール
部材間のシールを行なうＯリングをろう付け位置から遠
くに設定できるので、パイプ挿着部と固定スクロール部
材間のシール性を確保できる。

【００３２】さらに、吸入通路を曲げることによって、
揺動スクロールの端部に冷媒がまっすぐにあたることを
防止できるので、騒音振動を低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施の形態に係るスクロール型コン
プレッサの断面図である。

【図２】この発明に係る第１の実施の形態の説明図であ
る。

【図３】この発明に係る第２の実施の形態の説明図であ
る。

【符号の説明】

１ スクロール型コンプレッサ ２ 密閉ケース ３ 吸入パイプ ３Ａ 吸入パイプ装着部 ５ 吐出パイプ ８ 駆動部 ９ 圧縮部 １３ 駆動軸（シャフト） １６ ブロック １７ メイン軸受 １８ 貫通孔 ２１ 偏心軸 ２３ オイル導引孔 ２７ オイル溜 ２８ 高圧空間 ３０ 揺動スクロール部材 ３１ 揺動軸受 ３３ 軸受空間 ４０ 圧縮室 ５０ 固定スクロール部材 ５２ 吸入通路 ７２ オイル空間 ７５ 旋回空間 ８０ スラストベアリング部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 吸入部と出口部を有する密閉ケースと、
   該密閉ケース内に配された駆動手段と、該駆動手段から
   延出する駆動軸と、該駆動軸の一端を回動自在に支持す
   るメイン軸受が配され、前記密閉ケースに固着されるブ
   ロックと、前記駆動軸の軸方向の一端面から偏心して突
   出する偏心軸と、該偏心軸が回動自在に装着される揺動
   軸受を有し、該揺動軸受の反対側から軸方向に渦巻状に
   延出する揺動スクロールを有する揺動スクロール部材
   と、前記揺動スクロールと噛合して圧縮室を画成する固
   定スクロールを有し、前記ブロックとの間に前記揺動ス
   クロール部材を揺動自在に挟持して前記ブロックに固定
   される固定スクロール部材とを具備するスクロール型コ
   ンプレッサにおいて、 前記吸入部の挿入側端部と前記圧縮室の吸入側と連通す
   る吸入通路であって、該吸入通路は前記吸入部から吸入
   された流体が前記圧縮室の吸入側端部において前記圧縮
   室の吸入方向となるように形成されたことを特徴とする
   スクロール型コンプレッサ。
2. 【請求項２】 前記吸入通路は前記揺動スクロールの外
   側端部の接線方向に沿って直線的に形成され、前記吸入
   部は該吸入通路に沿って挿入されることを特徴とする請
   求項１記載のスクロール型コンプレッサ。
3. 【請求項３】 前記吸入部は、前記密閉ケースに対して
   略垂直に挿着され、前記吸入通路は前記吸入部の挿着側
   端部から前記圧縮室の吸入側端部で前記圧縮室の吸入方
   向となる曲線に沿って形成されたことを特徴とする請求
   項１記載のスクロール型コンプレッサ。