JPH10287033A - 木調質感エンボスシートおよびこれを用いた建材ならびに木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置 - Google Patents

木調質感エンボスシートおよびこれを用いた建材ならびに木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置

Info

Publication number
JPH10287033A
JPH10287033A JP9113554A JP11355497A JPH10287033A JP H10287033 A JPH10287033 A JP H10287033A JP 9113554 A JP9113554 A JP 9113554A JP 11355497 A JP11355497 A JP 11355497A JP H10287033 A JPH10287033 A JP H10287033A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wood
angle
fiber
pixel
pattern
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP9113554A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4044171B2 (ja
Inventor
Naoki Kawai
直樹 河合
Tomotaka Noda
智孝 野田
Takeshi Oshima
健 大嶋
Toshio Ariyoshi
俊雄 有吉
Tetsuo Jinriki
哲夫 神力
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP11355497A priority Critical patent/JP4044171B2/ja
Publication of JPH10287033A publication Critical patent/JPH10287033A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4044171B2 publication Critical patent/JP4044171B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 より天然木の材面に近い自然な照り模様を表
現する。 【解決手段】 天然木の繊維質の配向性を示す三次元繊
維方向ベクトル場を定義し、このベクトル場を切断面J
によって切断し、切断面J上の各点Pについて、繊維方
向ベクトルF→と切断面Jとのなす角として、繊維もぐ
り角ξ定義する(S10)。角ξと角θとの変換式に基
づいて、角ξを角θに変換し、参照線Rに対して角度θ
をなし、切断面Jに含まれる方向ベクトルV→を各点P
について生成し(S20)、切断面J上に二次元ベクト
ル場を定義する。切断面J上に、方向ベクトルV→に沿
って伸びる多数の万線Mを形成し(S30)、この万線
パターンを透明なエンボスシートE上に凹凸パターンと
して形成する。このエンボスシートEを、木目柄が印刷
された印刷シート上に積層すれば、万線条溝によって照
り模様が表現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木調質感エンボス
シートおよびこれを用いた建材に関し、特に、天然木材
の表面に現れる「照り」あるいは「もく」と呼ばれてい
る光沢模様を表現するために、木目柄パターンの印刷面
の上に積層して用いる木調質感エンボスシートに関す
る。
【0002】
【従来の技術】壁紙や床材などの建材の表面装飾や、家
具の表面装飾の模様として、木目柄パターンは最も好ま
れて用いられるモチーフである。このような木目柄パタ
ーンをもった印刷物を作成する場合、通常は、天然木の
材面をカメラなどで撮影し、この天然木のもつ木目柄パ
ターンをそのまま利用する方法が採られる。近年では、
印刷分野においてもコンピュータを利用した画像処理技
術が普及してきているため、天然木の木目柄パターンを
CCDカメラなどで画像データとして取り込み、この画
像データに対して、コンピュータを利用して必要な画像
処理を施し、処理後の画像データに基づいて印刷を行う
という手法も広く行われている。
【0003】また、最近は、意匠性の高い木目柄をもっ
た天然木を入手することが困難になってきており、実際
の天然木材を全く用いることなしに、コンピュータを利
用して完全に人為的に木目柄パターンを作成しようとす
る試みもなされている。たとえば、特開平8−2253
8号公報には、三次元空間内に三次元樹木モデルを定義
し、これを所定の切断面で切断することにより、木目導
管断面パターンを得る手法が開示されている。
【0004】一般に、天然木にみられる木目模様は、主
に、年輪模様、導管溝模様、照り模様などから構成され
ている。年輪模様は、一年ごとの寒暖差に基づいて天然
木の一年の成長に合わせて形成される細胞組織の粗密の
模様である。導管溝模様は、天然木の成長に必要な水分
や養分の通路として用いられる繊維状の導管を切断する
ことによって得られる断面模様であり、通常は、ややい
びつな楕円状をした模様になる。一方、照り模様は、一
般に「照り」あるいは「もく」と呼ばれている光沢模様
であり、材面からの反射光に基づいて生じる模様であ
る。天然木の材面では、繊維質の配向性が部分ごとに異
なっており、この配向性の分布が照り模様として観察さ
れることになる。光の反射に基づいて生じる模様である
ため、同一の材面であっても、光源からの光の入射方向
および観察者による観察方向によって、異なった照り模
様が現れることになる。
【0005】このように、照り模様は、光学的な観察条
件によって変化するという特有の性質をもった模様であ
るため、塩化ビニールなどのシート上に木目柄を印刷し
た人工的な建材の場合、通常の印刷層のみによって表現
することは困難である。そこで、印刷シートの上にエン
ボスシートを形成した積層構造を採り、このエンボスシ
ートの表面の凹凸構造により、照り模様を表現する技術
が提案されている。たとえば、特開平5−289302
号公報には、表面に多数の万線条溝を形成した木調質感
エンボスシートを用いて、照り模様を表現する手法が開
示されており、特開平8−323948号公報には、こ
の木調質感エンボスシート上の照り模様を、年輪模様お
よび導管溝模様に融合させるための手法が開示されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した万線条溝を用
いた木調質感エンボスシートを用いれば、観察方向に応
じて変化する照り模様を表現することは可能である。し
かしながら、従来提案されている万線条溝による照り模
様の表現は、あくまでも疑似的な表現であり、天然木の
材面から得られる実際の照り模様を十分に再現すること
はできない。このため、天然の照り模様に比べて不自然
さが残り、観察者に違和感を抱かせてしまう結果とな
る。
【0007】そこで本発明は、より天然木の材面に近い
自然な照り模様を表現することが可能な木調質感エンボ
スシートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、天然木材の表面に現れる
木調質感を表現するために用いる木調質感エンボスシー
トを作成する方法において、所定の画像形成面上の各点
に、木材の繊維の配向性を示す繊維もぐり角を定義する
繊維もぐり角定義段階と、与えられた繊維もぐり角を画
像形成面に沿った方向ベクトルに変換する変換式を定義
し、この変換式を用いて、画像形成面上の各点に定義さ
れた繊維もぐり角をそれぞれ方向ベクトルに変換する方
向ベクトル生成段階と、画像形成面上に、方向ベクトル
に沿った万線を形成する万線形成段階と、万線を凹凸パ
ターンとして表現したエンボスシートを作成するエンボ
スシート作成段階と、を行うようにしたものである。
【0009】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1
の態様に係る木調質感エンボスシートの作成方法におい
て、繊維もぐり角定義段階で、所定の基準軸に対する配
向性が部分ごとに異なる三次元ベクトル場を定義し、こ
の三次元ベクトル場を画像形成面で切断し、切断面上の
各点におけるベクトル場の配向性に基づいて繊維もぐり
角を定義するようにしたものである。
【0010】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1
の態様に係る木調質感エンボスシートの作成方法におい
て、繊維もぐり角定義段階で、天然木材の表面上の各点
からの反射光の強度を測定することができる測定系を用
い、天然木材を種々の角度から観察したときの各点から
の反射光強度を測定し、この測定結果に基づいて天然木
材表面上の各点の繊維もぐり角を演算により求め、この
演算により求めた繊維もぐり角を画像形成面上に定義す
るようにしたものである。
【0011】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1
の態様に係る木調質感エンボスシートの作成方法におい
て、方向ベクトル生成段階で、繊維もぐり角ξの変化に
対して単調増加もしくは単調減少する角度θを定義し、
この角度θに応じた方向ベクトルを定めるようにしたも
のである。
【0012】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1
の態様に係る木調質感エンボスシートの作成方法におい
て、万線形成段階で、画像形成面上に縦横に配列された
多数の画素からなる画素配列を定義する第1のステップ
と、この画素配列の第1行目に、互いに所定間隔をおい
て配置された複数の代表画素を定義し、各代表画素の近
傍に、連続配置された画素群からなる画素帯をそれぞれ
定義する第2のステップと、第i行目の各代表画素につ
いて、これら各代表画素内の点に定義された方向ベクト
ルの示す方向に位置する第(i+1)行目の画素を求
め、求めたこれらの画素を第(i+1)行目の代表画素
と定義し、これら第(i+1)行目の代表画素の近傍
に、連続配置された画素群からなる画素帯をそれぞれ定
義する第3のステップと、パラメータiの値をi=1か
ら1ずつ増加させながら、第3のステップを繰り返し実
行する第4のステップと、を行い、最終的に得られた画
素帯の集合によって万線を形成するようにしたものであ
る。
【0013】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5
の態様に係る木調質感エンボスシートの作成方法におい
て、第3のステップの後に、相互の間隔が所定の基準以
上離れた一対の画素帯が存在する場合には、この一対の
画素帯の間に新たな代表画素を定義し、この新たな代表
画素に基づいて新たな画素帯を発生させる調整処理を行
うようにしたものである。
【0014】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第5
の態様に係る木調質感エンボスシートの作成方法におい
て、第3のステップの後に、自己の左側に隣接する画素
帯と自己の右側に隣接する画素帯との間隔が所定の基準
以下に接近している画素帯が存在する場合には、当該画
素帯およびその代表画素を消滅させる調整処理を行うよ
うにしたものである。
【0015】(8) 本発明の第8の態様は、天然木材の
表面に現れる木調質感を表現するために用いる木調質感
エンボスシートを作成する装置において、天然木の木理
を表現する三次元ベクトル場を発生させるベクトル場発
生手段と、所定の画像形成面によって、発生させた三次
元ベクトル場を切断したときに、切断面上の各点におけ
るベクトル場の配向性に基づいて繊維もぐり角を求め、
画像形成面上の各点に繊維もぐり角を定義する繊維もぐ
り角演算手段と、与えられた繊維もぐり角を画像形成面
に沿った方向ベクトルに変換する所定の変換式に基づい
て、画像形成面上の各点に定義された繊維もぐり角をそ
れぞれ方向ベクトルに変換する方向ベクトル演算手段
と、画像形成面上に、所定の幅を有し方向ベクトルに沿
って配置された万線を定義し、これら万線から構成され
る二値画像パターンを生成するパターン生成手段と、こ
の二値画像パターンに基づいて、凹凸パターンをもった
エンボス版を作成する刷版手段と、このエンボス版を用
いてエンボスシートを作成するエンボス加工手段と、を
設けたものである。
【0016】(9) 本発明の第9の態様は、天然木材の
表面に現れる木調質感を表現するために用いる木調質感
エンボスシートにおいて、表面に、多数の万線からなる
凹凸パターンを形成し、かつ、これら万線が、木材の繊
維の配向性を示す繊維もぐり角に対応した方向成分を有
するようにしたものである。
【0017】(10) 本発明の第10の態様は、上述の第
1〜第7の態様に係る作成方法によって作成された木調
質感エンボスシートもしくは上述の第9の態様に係る木
調質感エンボスシートを、透明材料によって構成し、木
目柄を印刷した印刷シート上に、この木調質感エンボス
シートを積層することにより建材を構成したものであ
る。
【0018】(11) 本発明の第11の態様は、上述の第
10の態様に係る建材において、印刷シート上の木目柄
のパターンと、木調質感エンボスシート上の万線のパタ
ーンとを、同一の三次元ベクトル場を用いたコンピュー
タ画像処理によって形成するようにしたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示する実施形態
に基づいて説明する。
【0020】§1. 天然木の材面に現れる照り模様の
本質 本発明の主眼は、天然木の材面に現れる自然な照り模様
を、エンボスシートを用いて人為的に再現することにあ
る。そこで、ここでは、天然木の材面に現れる照り模様
の本質について述べておく。
【0021】既に述べたように、一般的な天然木の材面
には、年輪模様、導管溝模様、照り模様が存在する。こ
こで照り模様は、入射光の角度や観察方向によって変化
する特有の模様であり、一般に「照り」あるいは「も
く」と呼ばれている。たとえば、天然木から切り出した
材木板をある方向から観察すると、図1(a) にハッチン
グを施して示す領域が白っぽく光って見え、観察方向を
若干変えると、今度は、図1(b) に示すように、別な領
域が白っぽく光って見える。このように、照り模様のパ
ターンが観察角度によって変化するのは、天然木の材面
上では、繊維質の配向性が部分ごとに異なっているため
である。天然木の内部には、植物としての営みを行うた
めに、細胞、導管、繊維などの種々の要素が含まれてお
り、これらの要素は全体的には樹木の成長方向を向いて
いる。ここでは、このように樹木の成長方向に沿った軸
方向要素を包括的に繊維質と呼ぶことにする。
【0022】このように、天然木の繊維質の配向性は、
全体的には樹木の成長方向を向いているものの、部分的
にはその配向性にバラツキを生じていることが多い。こ
のような配向性は一般に「木理」と呼ばれており、配向
性の状態により、波状木理、螺旋木理、交錯木理といっ
た名称で呼ばれている。たとえば、実際の天然木の成長
方向が基準軸Aの方向だとすると、天然木内部の繊維質
は全体としてはこの基準軸Aに沿った方向に伸びている
が、部分的にはその配向性にバラツキが生じていること
になる。このような部分的な配向性のバラツキが、材面
上では照り模様として認識されることになる。
【0023】ここでは、この「木理」の概念を視覚的に
把握できるように、図2に示すような基準繊維束モデル
を考えてみる。ここに示すモデルは、樹木内の導管や繊
維などの軸方向要素の配向性を、多数の細長い円筒状繊
維の束で示したものであり、樹木を構成する繊維質の流
れの向きを示すものである。もちろん、実際の天然木
は、このような単純な円筒状繊維の束から構成されるわ
けではなく、細胞、導管、繊維など多数の要素を含んで
いるが、ここではこれら多数の要素の軸方向要素の配向
性を示すモデルとして、円筒状の繊維束モデルを用いる
ことにする。基本的には、この図2に示すように、繊維
束の配向性は成長方向を向いた基準軸Aに沿ったものと
なり、個々の繊維はいずれも基準軸Aに平行に配置され
るはずである。すなわち、ある繊維上での着目点Pと、
同じ繊維上の隣接点Qとの位置関係を考えると、点Pか
ら点Qへ向かうベクトル(以下、繊維方向ベクトルと呼
ぶ)は、基準軸Aの方向を向いたものになる。しかしな
がら、自然界で成長する樹木には、その成長過程におい
て、部分的に配向性が異なる現象が多くみられ、そのよ
うな配向性のバラツキ現象が「木理」として現れること
になる。
【0024】たとえば、図3左に示すように、基準軸A
に対して垂直な方向Bを定義し、基準軸Aに沿った方向
を示すベクトルに方向Bの成分を部分的に付加すること
により繊維方向ベクトルF1→(電子出願の制約から、
本願明細書においては、本来符号の上部に付記するベク
トル記号“→”を符号右側に付記することにする)を定
義する。そして、個々の繊維がこの繊維方向ベクトルF
1→に沿った方向を向くように、図2に示す基準繊維束
モデルを歪ませると、図3右に示すような歪曲繊維束モ
デルが得られる。図2のモデルにおける点P,Qは、図
3のモデルではそれぞれ点P′,Q′へと変位してお
り、点P′から点Q′へ向かうベクトルは、点P(もし
くは点P′)の位置における繊維方向ベクトルF1→と
なる。このような歪曲繊維束モデルは、一般に波状木理
と呼ばれている木理を含んだモデルとなる。
【0025】また、図4左に示すように、基準軸Aの周
囲を螺旋状に取り巻く繊維方向ベクトルF2→を定義
し、個々の繊維がこの繊維方向ベクトルF2→に沿った
方向を向くように、図2に示す基準繊維束モデルを歪ま
せると、図4右に示すような歪曲繊維束モデルが得られ
る。図2のモデルにおける点P,Qは、図4のモデルで
はそれぞれ点P′,Q′へと変位しており、点P′から
点Q′へ向かうベクトルは、点P(もしくは点P′)の
位置における繊維方向ベクトルF2→となる。このよう
な歪曲繊維束モデルは、一般に螺旋木理と呼ばれている
木理を含んだモデルとなる。
【0026】続いて、繊維質の配向性と照り模様との関
係を考えてみる。いま、図2に示すような基準繊維束モ
デル(すなわち、繊維質の配向性がすべて基準軸Aに沿
ったモデル)を、図5に示すように、基準軸Aに垂直な
切断面Jで切った場合と、図6に示すように、基準軸A
に平行な切断面Jで切った場合について、それぞれ切断
面Jの鏡面反射光強度(光沢度)を比べてみる。一般
に、図5に示すように、樹木の成長方向(基準軸Aの方
向)に対して垂直な切断面で天然木を切断したときに現
れる切り出し面は「木口面」と呼ばれており、図6に示
すように、樹木の成長方向(基準軸Aの方向)に対して
平行な切断面で天然木を切断したときに現れる切り出し
面は「柾目面」と呼ばれている(より正確には、「柾目
面」とは、特に中心軸を通る面で切断した場合の切り出
し面をいい、切断面が成長方向に平行ではあるが、中心
軸からはずれている場合は「板目面」という)。
【0027】図5に示すような「木口面」による切断を
行うと、材木板表面に対して、個々の繊維は垂直に潜る
ような配向性を有することになり、照射された光は材木
板内部で吸収されやすくなり、外部に出てきにくくな
る。したがって、表面の鏡面反射率は低くなり、光沢感
のない面になる。これに対し、図6に示すような「柾目
面」による切断を行うと、材木板表面に対して、個々の
繊維は水平に寝るような配向性を有することになり、照
射された光の多くは材木板内部へは浸透せずに表面で反
射することになる。したがって、表面の鏡面反射率は高
くなり、光沢感のある面になる。もちろん、観察者から
見た光沢感は、表面の鏡面反射率だけでなく、光源の方
向および観察方向に基づいて定まる。
【0028】図7は、材木板表面の繊維質の配向性と鏡
面反射率との関係を説明する図である。いま、材木板1
00の表面(切断面J)に、図に繊維方向ベクトルF→
として示すような配向性をもって繊維Fが配置されてい
るものとする。このとき、切断面Jと繊維Fとのなす角
ξは、繊維もぐり角と呼ばれている。図5に示す「木口
面」による切断の場合、繊維もぐり角ξ=90°とな
り、図6に示す「柾目面」による切断の場合、繊維もぐ
り角ξ=0°となる。ここでは、材木板100の上方に
仮想光源200(面光源)を仮定し、この仮想光源20
0から材木板100の表面(切断面J)に対して垂直な
光線が照射され、この表面からの拡散反射光および鏡面
反射光を観察する単純な場合を考える。この場合、観察
される拡散反射光の強度は、材木板100の表面の木目
模様の色成分によって左右され、この拡散反射光による
画像は、いわゆる着色された模様として認識されること
になる。一方、観察される鏡面反射光の強度W(光沢
度)は、繊維もぐり角ξによって左右され、通常、図8
のグラフに示すような関係が定義される。
【0029】より正確には、各部における鏡面反射光強
度は、光の照射方向と繊維もぐり角ξとの双方によって
決定される。すなわち、図7に示すように、切断面J上
の点Pにおいて、光線方向ベクトルL→と繊維方向ベク
トルF→とを図のように定義すれば、両ベクトルの交錯
角φによって点Pにおける鏡面反射光強度が決定される
ことになる。上述の例のように、光線方向ベクトルL→
が切断面Jに対して垂直であるモデルの場合、ベクトル
交錯角φ=90°−ξとなり、図8のグラフに示すよう
に、φ=90°のときに鏡面反射光強度が最高になり、
φ=0°のときに最低となる。図5に示す「木口面」に
よる切断の場合、繊維もぐり角ξ=90°となるため鏡
面反射光強度Wが小さくなり、光沢感が少なくなる。逆
に、図6に示す「柾目面」による切断の場合、繊維もぐ
り角ξ=0°となるため鏡面反射光強度Wが大きくな
り、光沢感が大きくなる。
【0030】ところで、図2に示すような基準繊維束モ
デルを平面で切断した場合、その切断方向によって、切
断面全体の光沢感の大小は左右されるが、光沢感の部分
的な大小分布は生じないので、いわゆる照り模様は発生
しない。実際の天然木から切り出した材木板の表面に照
り模様が見られるのは、実際の天然木には、図3あるい
は図4に示したような木理の要素が含まれているためで
ある。このように、木理の要素を含んだ樹木を切断する
と、切断面上の各部分ごとに異なる繊維もぐり角ξが得
られることになり、この部分ごとの異なる繊維もぐり角
ξに基づいて照り模様が現れることになる。もっとも、
天然木の木理に基づく繊維質の配向性の変化は、自然の
揺らぎをもった緩やかなものであるため、材面の観察角
度を変えることにより現れる照り模様の変化も、自然の
揺らぎをもった緩やかなものになる。要するに、天然木
には、木理による「繊維質の独特な流れ」が存在し、部
分的に繊維質の流れが変わると、上述したように鏡面反
射光の強度にも変化が現れるため、部分的に「反射ム
ラ」が生じることになり、いわゆる「照り模様」が現れ
ることになる。
【0031】§2. 本発明による照り模様再現のアプ
ローチ このように、天然木の材面に現れる照り模様の本質は、
木理に基く繊維もぐり角ξの分布にあり、繊維もぐり角
ξがほぼ同じ領域が、ある特定の観察条件において同時
に光って見えることになる。したがって、天然木の照り
模様を全く同じ原理で再現するためには、エンボスシー
トの表面に種々の繊維もぐり角ξをもった繊維質の構造
を物理的に再現する必要がある。しかしながら、現在の
エンボス加工技術では、商業用の建材製造プロセスに、
このような実際の繊維質構造を再現するための複雑な工
程を組み込むことは現実的ではない。現在、一般的に利
用されているエンボス版の製造方法は、ダイレクトエッ
チング法と呼ばれる方法であり、この方法で作成された
エンボス版上には、凹部と凸部との二段階の段差構造が
形成されるだけである。このダイレクトエッチング法を
何回か繰り返し行えば、多段構造を得ることもできる
が、種々の繊維もぐり角ξをもった繊維質の構造を物理
的に再現することは不可能である。
【0032】本発明の基本概念は、実際の天然木の材面
に現れる繊維もぐり角ξという要素を、エンボスシート
上では万線条溝の方向に置き換え、多数の万線条溝とし
て、照り模様を表現する点にある。一般に、多数の細か
な線からなるパターンは、万線パターンと呼ばれてお
り、本発明では、この万線をエンボスシート上に凹凸構
造をもった万線条溝として形成することになる。
【0033】図9は、エンボスシートE上に形成された
万線条溝Gの基本構造を示す斜視図である。この例で
は、幅W1の万線条溝Gが相互に間隔W2を保ちながら
多数形成されている。エンボスシートEの全体の厚みD
1に対して、万線条溝Gは深さD2の溝を形成してお
り、多数の万線条溝Gがほぼ平行に配置されている。こ
のような万線条溝Gからなるパターンは、幅W1をもっ
た凹部と幅W2をもった凸部との二段階の段差構造から
なり、従来の一般的なダイレクトエッチング法を用いて
容易に構成することができる。
【0034】このような万線条溝Gが形成されたエンボ
スシートEは、その表面から得られる反射光の強度が観
察方向によって異なることが知られている。このエンボ
スシートEを、万線条溝Gに平行な面で切断した断面を
図10(a) に示し、万線条溝Gに垂直な面で切断した断
面を図10(b) に示す。図10(a) に示すように、万線
条溝Gに対して平行な方向から入射した光は、万線条溝
Gの底面で反射して、そのまま万線条溝Gに沿った方向
へと鏡面反射光として射出する。これに対して、図10
(b) に示すように、万線条溝Gに対して垂直な方向から
入射した光は、万線条溝Gの壁面および底面で何回も反
射して、最終的にバラバラな方向へ拡散反射光として射
出する。このため、万線条溝Gに平行な方向から観察す
ると、強い鏡面反射光が得られるが、万線条溝Gに垂直
な方向から観察すると、鏡面反射光は弱くなる。
【0035】万線条溝Gのこのような性質を利用すれ
ば、照り模様を疑似的に表現することが可能になる。た
とえば、図11の平面図に示すように、エンボスシート
Eの表面全体に渡って万線条溝Gを形成しておき、しか
も、ある部分領域についての万線条溝Gの向きを異なら
せておけば、この部分領域から得られる鏡面反射光の強
度は、他の部分領域から得られる鏡面反射光の強度とは
異なることになり(強くなるか、弱くなるかは、観察方
向によって変化する)、いわゆる照り模様が観察される
ことになる。したがって、このようなエンボスシートE
を透明材料によって構成しておき、図12に示すよう
に、このエンボスシートEを木目柄を印刷した印刷シー
トS上に積層するようにして壁紙や床材などの建材を構
成すれば、照り模様をもった木目柄建材を得ることがで
きる。
【0036】もっとも、このような万線条溝Gをもった
エンボスシートEを建材に用いて、照り模様を表現する
手法自体は、既に述べたように、特開平5−28930
2号公報や特開平8−323948号公報に開示されて
いる。しかしながら、従来の手法では、たとえば正弦波
を基調とした波状の万線条溝を形成したり、便宜的に複
数の閉領域を定義して各閉領域ごとに所定の向きの万線
条溝を形成したりしていたため、実際の天然木の材面に
見られる自然な風合いをもった照り模様を十分に再現す
ることが困難であった。
【0037】本発明の特徴は、§1で述べた天然木の材
面に現れる照り模様の本質を踏まえた上で、同様の照り
模様を万線条溝によって疑似的に表現する点にある。天
然木の材面に現れる照り模様は、繊維もぐり角ξの分布
に基づくものであるのに対し、万線条溝を有するエンボ
スシート上に現れる照り模様は、万線条溝の平面上での
向き(方向ベクトル)の分布に基づくものである。そし
て、前者では、繊維もぐり角ξがほぼ等しい領域が、あ
る状態において同時に白っぽく光っている様子が見られ
るのに対し、後者では、万線条溝の方向ベクトルがほぼ
等しい領域が、ある状態において同時に白っぽく光って
いる様子が見られることになる。もともと繊維もぐり角
ξは、図7に示すように、平面と繊維ベクトルF→との
交差角として定義されたものであるのに対し、万線条溝
の方向ベクトルは、平面上での万線条溝の向きを示すも
のである。したがって、繊維もぐり角ξと万線条溝の方
向ベクトルとは、理論的には全く異なる物理量である。
しかしながら、両者はいずれも観察時の反射光強度を支
配するパラメータとして機能するという共通点を有す
る。本願発明者は、この共通点に着目し、実際の天然木
の材面に現れる繊維もぐり角ξという要素を、万線条溝
の方向ベクトルという要素に関連づけ、エンボスシート
により天然木に近い照り模様を表現することに想到した
のである。
【0038】§3. 本発明に係る木調質感エンボスシ
ートの作成方法 続いて、図13の流れ図を参照しながら、本発明に係る
木調質感エンボスシートの作成方法の基本手順を説明す
る。まず、ステップS10において、繊維もぐり角の定
義を行う。すなわち、まず所定の画像形成面を定義し、
この画像形成面上の各点に、それぞれ木材の繊維の配向
性を示す繊維もぐり角ξを定義することになる。図13
では、流れ図の右脇に、各ステップで行われる処理の概
念図が示されており、ステップS10の右脇の概念図
は、画像形成面J上の点Pに、繊維ベクトルF→と画像
形成面Jとのなす角度ξを繊維もぐり角として定義した
状態を示している。ステップS10では、このように、
画像形成面J上のすべての点に対して、それぞれ所定の
繊維もぐり角ξが定義されることになる。もっとも、実
際には、後の§4で述べるように、最終的な万線パター
ンは個々の画素によって構成されることになるので、画
像形成面J上に有限個の点を定義し、これらの各点につ
いて、それぞれ繊維もぐり角ξを定義しておけば十分で
ある。
【0039】以下、繊維もぐり角ξを定義する具体的な
方法を述べる。本願発明者が最も好ましい実施形態と考
えている方法は、所定の基準軸に対する配向性が部分ご
とに異なる三次元ベクトル場を定義し、この三次元ベク
トル場を画像形成面で切断し、切断面上の各点における
ベクトル場の配向性に基づいて繊維もぐり角を定義する
方法である。たとえば、図14に示すような波状木理を
表現した歪曲繊維束モデルを生成し、このモデルを所定
の切断面J(この例では木口面)で切断したとしよう。
すると、図15に示すように、切断面J上の任意の点P
について、繊維ベクトルF→を求めることができる。こ
こで、繊維ベクトルF→は、図14に示す歪曲繊維束モ
デルを構成する繊維のうち、点Pに位置する繊維の向き
を示すベクトルである。このような繊維ベクトルF→が
求まったら、切断面Jと繊維ベクトルF→とのなす角ξ
を求めれば、この角ξが点Pにおける繊維もぐり角とな
る。切断面Jを画像形成面とすれば、画像形成面上の各
点に、それぞれ所定の繊維もぐり角ξを定義することが
できる。
【0040】ところで、図14に示す歪曲繊維束モデル
は、図2に示す基準繊維束モデルを、図3左に示す繊維
ベクトルF1→に沿って歪ませることにより得られたも
のであり、その本質は、三次元ベクトル場に他ならな
い。この三次元ベクトル場は、所定の方程式を用いて定
義することができる。たとえば、XYZ三次元座標系に
おいて、図2に示すような基準繊維束モデルを構成する
各点の位置を座標値(x,y,z)で定義しておき、 x′=x+α・sin(β・z) y′=y z′=z なる変換式(αおよびβは所定の定数、乱数もしくは関
数)に基づいて、新たな座標値(x′,y′,z′)を
求め、座標値(x,y,z)に位置していた点を、新た
な座標値(x′,y′,z′)へと移動させれば、移動
後の点の集合によって図3に示すような波状木理の歪曲
繊維束モデルが形成される。ここで、図2のモデルにお
いて基準軸Aに沿って配置されていた2点P,Qが、図
3のモデルではそれぞれ点P′,Q′に移動したとすれ
ば、点P′から点Q′に向かう方向を、たとえば点P′
におけるベクトル場の方向と定義することができる。別
言すれば、上述の変換式によって、図3に示すような波
状木理に相当する三次元ベクトル場を定義することがで
きる。同様に、図4に示すような螺旋木理に相当する三
次元ベクトル場は、θ0およびβを所定の定数、乱数も
しくは関数として、 x′=r・cos(θ0+θ) y′=r・sin(θ0+θ) z′=z ただし、r=(x+y1/2 θ=β・z なる座標変換式によって定義することができる。
【0041】結局、ステップS10における繊維もぐり
角の定義処理は、上述した座標変換式などを用いて三次
元ベクトル場を定義し、この三次元ベクトル場内に所定
の切断面J(画像形成面)を定義し、この切断面J上の
各位置について、ベクトルと切断面とのなす角度ξを演
算によって求める処理として実行することができる。い
わば、この方法は、コンピュータ内に木理の要素をもっ
た三次元の仮想樹木モデルを構築し、これを仮想切断面
で切断したときの繊維もぐり角を求める処理ということ
ができる。
【0042】もちろん、仮想樹木モデルを用いる代わり
に、実際の天然木を用いて繊維もぐり角を定義すること
も可能である。すなわち、天然木材の表面上の各点から
の反射光の強度を測定することができる測定系を用い、
この天然木材を種々の角度から観察したときの各点から
の反射光強度を測定し、この測定結果に基づいて天然木
材表面上の各点の繊維もぐり角を演算により求めるので
ある。たとえば、図16に示すように、天然木材Tを用
意し、所定点Pを観察方向O1,O2,O3,…と種々
の方向から観察して、それぞれの場合の反射光強度を求
める。§1で述べたように、点Pにおける繊維もぐり角
ξと、各観察方向における反射光強度との間には所定の
相関関係があるので、観察方向の数をある程度増やせ
ば、各観察方向における反射光強度の結果を解析するこ
とにより、点Pにおける繊維もぐり角ξをある程度の精
度で決定することができる。このように、天然木材の表
面の反射光強度を実際に測定することによっても、ステ
ップS10における繊維もぐり角の定義を行うことは可
能である。
【0043】ただ、この天然木の反射光強度を測定して
繊維もぐり角を定義する手法は、反射光強度を測定する
段階での作業負担が重く、また、測定結果を解析して繊
維もぐり角を決定するための演算負担も重くなる。した
がって、建材などを製造するための商業利用上は、前述
した三次元ベクトル場を定義する手法の方が実用的であ
る。
【0044】続いて、ステップS20において、画像形
成面上の各点に方向ベクトルが生成される。そのため
に、まず、与えられた繊維もぐり角ξを画像形成面Jに
沿った方向ベクトルに変換する変換式を定義しておく必
要がある。図13のステップS20の右脇に示す概念図
では、画像形成面J上の点Pの位置に、画像形成面Jに
含まれる方向ベクトルV→が定義されている。ここで
は、この方向ベクトルV→を、画像形成面J上に定義さ
れた参照線Rとのなす各θで表わすことにし、変換式と
してθ=f(ξ)なる関数を用い、繊維もぐり角ξを角
度θに変換することにする。このような変換式を用いれ
ば、ステップS10において定義されたすべての繊維も
ぐり角ξを、角度θに変換することができ、画像形成面
上の各点にそれぞれ所定の方向ベクトルV→を定義する
ことができる。
【0045】図17は、繊維もぐり角ξを角度θに変換
するための変換式の一例を示すグラフである。この例で
は、θ=90°+ξなる変換式を用いて線形変換を行っ
ている。すなわち、繊維もぐり角ξ=−90°に対して
は、角度θ=0°が与えられ、繊維もぐり角ξ=0°に
対しては、角度θ=90°が与えられ、繊維もぐり角ξ
=90°に対しては、角度θ=180°が与えられる。
もちろん、本発明におけるξとθとの間の変換式は、図
17のグラフに示す変換式に限定されるものではなく、
所定のξに対して何らかのθが定まれば、どのような変
換式を用いてもかまわない。しかしながら、より効果的
な照り模様を得るためには、繊維もぐり角ξの増加に対
して、角度θが単調増加もしくは単調減少するような変
換式を用いるのが好ましい。
【0046】図18および図19は、図17のグラフに
示す変換式を用いて、繊維もぐり角ξを角度θに変換す
る処理の具体例を示す図である。図18(斜視図)に示
すように、切断面J(画像形成面)上の所定点P1,P
2,P3には、各位置における繊維ベクトルF1→,F
2→,F3→(三次元ベクトル場における各点のベクト
ル)と切断面Jとのなす角として、それぞれ繊維もぐり
角ξ1=60°,ξ2=0°,ξ3=−30°が定義さ
れている。この場合、θ=90°+ξなる変換式を用い
て、図19(平面図)に示すように、点P1,P2,P
3の各位置には、切断面J(画像形成面)に含まれる方
向ベクトルV1→,V2→,V3→が定義されることに
なる。ここで、切断面Jの一片に参照線Rを定義する
と、方向ベクトルV1→,V2→,V3→と参照線Rと
のなす角は、それぞれθ1=150°,θ2=90°,
θ3=60°になる。
【0047】この具体例では、所定点P1,P2,P3
の3点についての例を示したが、実際には、§4で詳述
するように、切断面J上に所定の解像度で画素配列を定
義し、個々の画素位置(たとえば、各画素の中心位置)
に対応する有限個の点について、このような処理が実行
されることになる。繊維もぐり角ξは、−90°≦ξ≦
90°の範囲をとるので、たとえば、この例のように、
θ=90°+ξなる変換式を用いた変換を行うと、角度
θは、0°≦θ≦180°の範囲をとる角度になり、図
19に示す参照線Rを基準にすると、方向ベクトルV
は、図の右方向(θ=0°の場合)および左方向(θ=
180°の場合)の臨界方向を含めて、図の下方へ向か
うベクトルになる。この方向ベクトルVのとるべき方向
の範囲は、定義すべき変換式次第で制御することが可能
であり、たとえば、θ=90°+ξ/2なる変換式を定
義すれば、角度θは、45°≦θ≦135°の範囲をと
ることになる。
【0048】こうして、切断面(画像形成面)J上の各
点(個々の画素位置)にそれぞれ方向ベクトルVが定義
できたら、ステップS30において、各方向ベクトルに
沿った万線が形成される。図13のステップS30の右
脇の概念図には、点Pにおいて、方向ベクトルVに沿っ
た万線Mを形成した状態が示されている。画像形成面J
上の各点に定義された方向ベクトルVにより、この面上
には二次元ベクトル場が形成されている。ステップS3
0の万線形成段階では、この二次元ベクトル場に沿った
多数の万線を形成する処理が行われることになる。その
具体的な処理手順については、§4において述べる。
【0049】最後に、ステップS40において、形成さ
れた万線を凹凸パターンとして表現したエンボスシート
が作成される。ステップS30において、万線パターン
を二値画像のパターンとして用意しておけば、この二値
画像パターンに基づいて、従来の一般的なダイレクトエ
ッチング法によりエンボス版を作成し、このエンボス版
を用いて木調質感エンボスシートを大量生産することが
できる。ステップS40の右脇には、こうして生産され
たエンボスシートEの概念を示す側断面図である。
【0050】このような工程により、透明材料からなる
エンボスシートEを大量生産し、このエンボスシートE
を、図12に示すように、木目柄の印刷シートS上に積
層して建材を構成すれば、天然木の材面に近い自然な照
り模様が表現された建材が得られる。すなわち、特定の
方向から観察すると、エンボスシートE上に形成された
万線条溝の方向ベクトルがほぼ等しい領域が、同時に白
っぽく光り、光沢領域が観察されることになる。この光
沢領域は、観察方向を変えると変化する。しかも、各万
線条溝の方向ベクトルは、繊維もぐり角に基づいて決定
されているため、天然木の材面に近い自然な照り模様が
観察されることになる。
【0051】なお、図12に示す印刷シートS上に印刷
される木目柄パターンとして、コンピュータで発生させ
た人為的なパターンを用いる場合には、印刷シートS上
の木目柄のパターンと、木調質感エンボスシートE上の
万線のパターンとを、同一の三次元ベクトル場を用いた
コンピュータ画像処理によって形成するのが好ましい。
たとえば、特開平8−22538号公報には、コンピュ
ータ内の三次元仮想空間内に、三次元樹木モデルを定義
し、この三次元樹木モデルを所定の切断面で切断したと
きに、切断面上に得られる二次元パターンに基づいて、
木目柄模様を人為的に発生させる手法が開示されてい
る。また、特願平8−168504号明細書には、三次
元ベクトル場を用いて、木理を考慮した三次元樹木モデ
ルを定義し、この木理を考慮した三次元樹木モデルを切
断することにより、木理の要素が含まれた二次元木目柄
模様を人為的に発生させる手法が開示されている。この
ように、印刷シートS上の木目柄パターンを、三次元ベ
クトル場を利用して人為的に発生させる場合には、エン
ボスシートE上の万線パターンも、同じ三次元ベクトル
場を利用して発生させるのが好ましい。既に述べたよう
に、三次元ベクトル場を用いると、三次元樹木モデルに
木理に基づく歪みの要素を付加することができるが、同
一の三次元ベクトル場を用いて、印刷シートS上の木目
柄パターンと、エンボスシートE上の万線パターンとを
形成するようにすれば、印刷シートS上の木目模様に含
まれる木理の成分と、エンボスシートE上の照り模様に
含まれる木理の成分とが整合性をもつことになる。その
ため、照り模様と木目模様とが同調した、全体的に自然
な木調質感を表現することができるようになる。
【0052】§4. 万線形成処理の具体的な手順 ここでは、図13の流れ図にステップS30として示し
た万線形成段階の具体的な手法を述べる。図20は、そ
の具体的な手順を示す流れ図である。まず、ステップS
31において、画像形成面上に画素配列を定義する。こ
こでは、図21に示すように、画像形成面上に縦横に配
列された画素配列を定義し、左上隅の画素を第1行目の
第1列目の画素として画素P(1,1)と呼び、一般
に、第i行目の第j列目の画素を画素P(i,j)と呼
ぶことにする。既に述べたように、画像形成面上の各点
には、それぞれ所定の方向ベクトルVが定義されてい
る。したがって、任意の画素P(i,j)には、それぞ
れ所定の方向ベクトルV(i,j)を対応づけることが
できる。たとえば、各画素の中心点の位置に定義された
方向ベクトルを、その画素の方向ベクトルと定義すれば
よい。
【0053】このように、ここで述べる方法では、個々
の画素の中心点についての方向ベクトルが定義できれば
足りるので、ステップS10で定義すべき繊維もぐり角
ξや、ステップS20で定義すべき方向ベクトルV(角
度θ)は、いずれも個々の画素の中心点位置についての
み求めておけば十分である。
【0054】さて、続くステップS32では、この画素
配列の第1行目に、互いに所定間隔をおいて配置された
複数の代表画素を定義し、各代表画素の近傍に、連続配
置された画素群からなる画素帯をそれぞれ定義する処理
が行われる。たとえば、図22には、第1行目に配置さ
れた多数の画素の中から、代表画素R11,R12を定
義した状態が示されている。この例では、第7列目の画
素P(1,7)を最初の代表画素R11と定義し、以
下、10画素ピッチで現れる画素P(1,17),画素
P(1,27),画素P(1,37),…を代表画素R
12,R13,R14,…と定義している。
【0055】続いて、これら各代表画素の近傍に、画素
帯を定義する。たとえば、図23には、各代表画素の左
右に隣接する各2画素を含めた全5画素からなる画素帯
H11,H12,…を定義した状態が示されている。こ
こに示す実施形態では、画素帯は常に代表画素を中心と
した全5画素からなる画素群によって構成されるような
設定を行っている。もちろん、個々の画素帯は連続配置
された複数の画素から構成されていれば、いくつの画素
から構成してもかまわない。たとえば、全7画素により
個々の画素帯を構成してもよいし、全8画素により個々
の画素帯を構成してもよい。ここでは、画素帯を構成す
る画素については、内部にハッチングを施して示すこと
にし、特に、代表画素については、中心に黒丸を付して
示すことにする。
【0056】次のステップS33では、画素配列の行数
を示すパラメータiが初期値1に設定され、以下、ステ
ップS34およびステップS35の処理が繰り返し実行
される。すなわち、ステップS36において、パラメー
タi=n−1(ただし、nは全行数)と判断されるま
で、ステップS37においてパラメータiが1ずつ更新
され、ステップS34およびステップS35の処理が繰
り返されることになる。
【0057】ステップS34では、第i行目の各代表画
素について、これら各代表画素内の点に定義された方向
ベクトルの示す方向に位置する第(i+1)行目の画素
を求め、求めたこれらの画素を第(i+1)行目の代表
画素と定義し、これら第(i+1)行目の代表画素の近
傍に、連続配置された画素群からなる画素帯をそれぞれ
定義する処理が実行される。たとえば、i=1の場合、
図24に示すように、第1行目の代表画素R11,R1
2,…に基づいて、第2行目の代表画素R21,R2
2,…が決定され、図25に示すように、この第2行目
の代表画素R21,R22に基づいて、第2行目の画素
帯H21,H22,…が定義されることになる。第2行
目の代表画素R21,R22は、図24に示すように、
第1行目の代表画素R11,R12について定義されて
いる方向ベクトルV11→,V12→に基づいて決定さ
れる。具体的には、第2行目の画素のうち、方向ベクト
ルV11→に最も近い中心点を有する画素が代表画素R
21として選択され、同様に、方向ベクトルV12→に
最も近い中心点を有する画素が代表画素R22として選
択される。また、第2行目の画素帯H21,H22は、
この例では、各代表画素R21,R22の左右に隣接す
る各2画素を含めた全5画素からなる画素帯として定義
されている。
【0058】このように、ステップS34において、第
2行目の代表画素および画素帯の定義が行われると、続
くステップS35で調整処理が行われる。この調整処理
については後述する。続いて、ステップS36およびス
テップS37を経て、i=2に更新され、再びステップ
S34の処理が実行されることになる。今度は、第2行
目の代表画素R21,R22,…に定義されている方向
ベクトルV21→,V22→に基づいて、第3行目の代
表画素R31,R32,…が決定され、これら代表画素
R31,R32に基づいて、第3行目の画素帯H31,
H32,…が定義されることになる。以上の処理をi=
n−1になるまで繰り返してゆけば、最終的に得られた
画素帯の集合によって、たとえば、図26に示すような
万線M1,M2,…が形成されることになる(実際に
は、個々の万線M1,M2は、より上下方向に伸びた細
い線状のパターンになる)。結局、上述の繰り返し処理
は、個々の万線を図の下方へと伸ばしてゆく処理という
ことになる。
【0059】こうして得られた万線の特徴は、個々の画
素に定義されている方向ベクトルに沿った流れをもって
いる、という点にあり、万線によって示される流れは、
ステップS20において定義された方向ベクトルの流れ
を示すものになる。
【0060】なお、方向ベクトルの流れをより高い精度
で表現した万線を形成するには、方向ベクトルの始点
を、前の行の方向ベクトルの終点に連結させるようにす
るとよい。たとえば、図27に示すように、第a行目の
代表画素Ra内の点Qaを始点として、この画素につい
て定義された方向ベクトルVa→を考えた場合、この方
向ベクトルVa→と第b行目の中心線(図に一点鎖線で
示す)との交点Qbを方向ベクトルVa→の終点とす
る。そして、この第b行目の代表画素Rbに基づいて、
第c行目の代表画素Rcを求める際には、方向ベクトル
Va→の終点を、代表画素Rbについて定義された方向
ベクトルVb→の始点とするのである。そして、この方
向ベクトルVb→と第c行目の中心線(図に一点鎖線で
示す)との交点Qcを方向ベクトルVb→の終点とすれ
ばよい。もちろん、各代表画素の中心点を常に方向ベク
トルの始点とする方法を採ることもできるが、図27に
示すように、方向ベクトルを連結させてゆく方法を採れ
ば、二次元ベクトル場の流れをより忠実に万線の流れと
して表現することができる。
【0061】また、この図20の流れ図に示す手法によ
り万線を形成する場合には、図13の流れ図におけるス
テップS20で定義される角度θの値は、0°≦θ≦1
80°にしておく必要がある。このような設定にすれ
ば、万線は、図の上方から下方へと伸びてゆくことにな
る。なお、第i行目の代表画素に基づいて、第(i+
1)行目の代表画素が決定できない場合(たとえば、θ
=0°の場合や、θ=180°の場合)は、第(i+
1)行目には代表画素も画素帯も定義せず、第i行目の
画素帯をもって当該万線の終端とすればよい。
【0062】以上、各画素帯の中心位置に代表画素を定
義する手法を述べたが、必ずしも代表画素が中心にくる
ように画素帯を構成する必要はなく、たとえば、代表画
素とその右に隣接する4画素との合計5画素により個々
の画素帯を構成することもできる。あるいは、2つの代
表画素によって1つの画素帯を定義するような手法を採
ることも可能である。たとえば、1つの画素帯の左端画
素および右端画素をそれぞれ代表画素として、常に、両
代表画素に挟まれた部分を画素帯とするような手法を採
ることも可能である。
【0063】続いて、図20にステップS35として示
した調整処理について説明する。この調整処理の第1の
目的は、新たな万線を発生させることにある。たとえ
ば、図28に示す例のように、2本の万線M1,M2を
図の下方へと徐々に伸ばしていったときに、両万線M
1,M2の間隔が徐々に広がってきたとしよう。このよ
うな場合、そのまま放置しておくと、両万線M1,M2
の間に、大きな空隙領域が発生することになり好ましく
ない。そこで、図示のように、両万線M1,M2間に、
新たな万線M3を発生させる調整処理を行うのが好まし
い。また、ステップS35の調整処理の第2の目的は、
互いに接近する一対の万線に挟まれた万線を終端させる
ことにある。たとえば、図29に示す例のように、3本
の万線M1,M2,M3を図の下方へと徐々に伸ばして
いったときに、両万線M1,M3の間隔が徐々に狭くな
ってきたとしよう。このような場合、そのまま放置して
おくと、3本の万線M1,M2,M3が互いに接触する
ようになり好ましくない。そこで、図示のように、中央
の万線M2を終端させる調整処理を行うのが好ましい。
【0064】具体的には、ステップS35では、ステッ
プS34で発生させた第(i+1)行目の画素帯につい
て、次のようなチェックを行い、必要に応じて調整処理
を行えばよい。まず、相互の間隔が所定の基準以上離れ
た一対の画素帯が存在するか否かをチェックする。そし
て、そのような画素帯が存在する場合には、この一対の
画素帯の間に新たな代表画素を定義し、この新たな代表
画素に基づいて新たな画素帯を発生させる調整処理を行
う。図28に示す例では、所定の基準をd1として、d
1=11画素なる設定を行っており、一対の画素帯M
1,M2の間隔がd1以上となった第12行目におい
て、新たな代表画素RRおよびこれを含む新たな画素帯
を発生させ、新たな万線M3を発生させるようにしてい
る。また、自己の左側に隣接する画素帯と自己の右側に
隣接する画素帯との間隔が所定の基準以下に接近してい
る画素帯が存在するか否かのチェックも行う。そして、
そのような画素帯が存在する場合には、当該画素帯およ
びその代表画素を消滅させる調整処理を行う。図29に
示す例では、所定の基準をd2として、d2=10画素
なる設定を行っており、画素帯M2の左側に隣接する画
素帯M1と、画素帯M2の右側に隣接する画素帯M3と
の間隔が、d2以下となった第11行目において、当該
画素帯およびその代表画素RRを消滅させている。
【0065】§5. 木調質感エンボスシートの作成装
最後に、本発明に係る木調質感エンボスシートの作成装
置の構成を、図30のブロック図に基づいて説明する。
この装置は、ベクトル場発生手段10、繊維もぐり角演
算手段20、方向ベクトル演算手段30、パターン生成
手段40、刷版手段50、エンボス加工手段60によっ
て構成されている。ベクトル場発生手段10は、天然木
の木理を表現する三次元ベクトル場を発生させる機能を
もった手段であり、たとえば、図3に示すような歪曲繊
維束モデルに対応する三次元ベクトル場を発生させる機
能を有する。具体的には、図3に示す繊維ベクトルF1
→を示すための方程式を格納することができる手段であ
ればよい。
【0066】繊維もぐり角演算手段20は、所定の画像
形成面によって、ベクトル場発生手段10が発生した三
次元ベクトル場を切断したときに、この切断面上の各点
におけるベクトル場の配向性に基づいて繊維もぐり角を
求め、画像形成面上の各点に繊維もぐり角を定義する演
算を行う構成要素である。具体的には、ベクトル場発生
手段10内に格納されている三次元ベクトル場を示す方
程式と、画像形成面を示す方程式とに基づいて、幾何学
演算を実行し、画像形成面上の各点(たとえば、各画素
の中心位置に対応する点など、後の演算で必要になる
点)について、それぞれ繊維もぐり角ξを求める処理を
行う構成要素になる。
【0067】方向ベクトル演算手段30は、与えられた
繊維もぐり角ξを画像形成面に沿った方向ベクトルに変
換する所定の変換式を格納しており、この変換式に基づ
いて、画像形成面上の各点に定義された繊維もぐり角ξ
をそれぞれ方向ベクトルに変換する演算を行う。具体的
には、方向ベクトルは所定の参照線Rとのなす角度θに
よって表現される。たとえば、θ=2・ξなる変換式を
用意しておけば、この変換式に基づいて、画像形成面上
の各点に定義された繊維もぐり角ξが角度θに変換され
ることになる。
【0068】パターン生成手段40は、画像形成面上
に、所定の幅を有し、方向ベクトル演算手段30によっ
て求められた方向ベクトルに沿って配置された万線を定
義し、これら万線から構成される二値画像パターンを生
成する演算を行う。この演算処理の具体的な手法は、既
に§4で述べたとおりである。
【0069】結局、上述したベクトル場発生手段10,
繊維もぐり角演算手段20,方向ベクトル演算手段3
0,パターン生成手段40の各構成要素は、いずれもコ
ンピュータを利用して構築される構成要素であり、最終
的に、このコンピュータによって、二値画像パターン
(万線パターン)を示す画像データが出力されることに
なる。
【0070】刷版手段50は、こうしてパターン生成手
段40から出力された二値画像パターンに基づいて、凹
凸パターンをもったエンボス版を作成する手段である。
たとえば、一般的なダイレクトエッチング法を用いてエ
ンボス版を作成するのであれば、パターン生成手段40
から出力される二値画像パターンをマスクに焼き付け、
このマスクを用いて、露光、現像、エッチングといった
フォトリソグラフィ工程を行うためのシステムによっ
て、刷版手段50を構成することができる。ダイレクト
エッチング法を用いてエンボス版を作成すれば、万線部
分が凸部もしくは凹部を形成する二値段差構造をもった
エンボス構造を得ることができる。エンボス加工手段6
0は、こうして作成されたエンボス版を用いて、エンボ
スシートを大量生産するための装置であり、最終的に、
万線部分が凹部もしくは凸部を形成する二値段差構造を
もったエンボスシートが得られる。
【0071】なお、エンボスシート上に形成される万線
は、§2で述べた光学的な特性(観察方向に応じて異な
る光沢感を提示する特性)を示すのに適当な寸法値を有
している必要がある。ここに示す実施形態では、次のよ
うな条件設定を行っている。まず、パターン生成手段4
0から出力される二値画像パターンを、一辺が10μm
の正方形の画素の集合によって構成し、かつ、図20に
示した万線形成手順では、代表画素を中心とした合計9
画素によって1つの画素帯を構成するようにしている。
その結果、1本の万線の幅は、90μmとなる。また、
図20のステップS32では、個々の画素帯の間隙部分
の寸法も9画素分の90μmとなるような設定を行って
おり、90μm幅のライン、90μm幅のスペースから
なるライン/スペースパターンを基本として、万線形成
を行っている。
【0072】最後に、この木調質感エンボスシート作成
装置によって、実際に作成された二値画像パターン(パ
ターン生成手段40から出力されるパターン)の例を図
31および図32に示しておく。このような万線パター
ンを有するエンボスシートを作成し、木目柄の印刷シー
ト上に積層させたところ、天然木の材面に近い自然な照
り模様を観察することができた。
【0073】以上、本発明を図示する実施形態に基づい
て説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるもの
ではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。特
に、上述の実施形態で示した具体的な数値は、一例とし
て提示したものであり、本発明はこれらの数値によって
何ら限定されるものではない。また、上述の実施形態で
は、本発明を木調質感を表現するための手法として説明
したが、本発明は木調質感と等価な質感をもった模様
(たとえば、流体の流れの要素が含まれた石目模様な
ど)にも適用することができる。
【0074】
【発明の効果】以上のとおり、本発明に係る木調質感エ
ンボスシートでは、天然木材の繊維の流れを示す繊維も
ぐり角を方向ベクトルに置換して万線として表現するよ
うにしたため、天然木の材面に近い自然な照り模様を表
現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な天然木の材面に見られる照り模様を示
す図である。
【図2】繊維束がすべて基準軸Aの方向を向いた基準繊
維束モデルを示す斜視図である。
【図3】繊維束の方向が波状木理に基づいて変化する歪
曲繊維束モデルを示す斜視図である。
【図4】繊維束の方向が螺旋木理に基づいて変化する歪
曲繊維束モデルを示す斜視図である。
【図5】図2に示す基準繊維束モデルを木口面で切断し
た状態を示す斜視図である。
【図6】図2に示す基準繊維束モデルを柾目面で切断し
た状態を示す斜視図である。
【図7】一般的な材木板における繊維方向ベクトルF→
と光線方向ベクトルL→との関係を示す側断面図であ
る。
【図8】一般的な材木板におけるベクトル交錯角φ(繊
維もぐり角ξ)と鏡面反射光強度Wとの関係を示すグラ
フである。
【図9】木調質感エンボスシートの表面に形成された万
線条溝Gの構造を示す斜視図である。
【図10】図9に示す万線条溝Gにおける光の反射特性
を示す断面図である。
【図11】万線条溝を形成した本発明に係る木調質感エ
ンボスシートEの基本構成を示す平面図である。
【図12】図11に示す木調質感エンボスシートEを、
木目柄を印刷した印刷シートSに積層することにより建
材を構成する状態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る木調質感エンボスシートの作成
方法の基本手順を示す流れ図である。
【図14】図13の流れ図におけるステップS10での
繊維もぐり角ξの定義方法の一例を示す斜視図である。
【図15】図14に示す定義方法によって、画像形成面
J上の点Pに定義された繊維もぐり角ξを示す斜視図で
ある。
【図16】図13の流れ図におけるステップS10での
繊維もぐり角ξの別な定義方法の一例を示す斜視図であ
る。
【図17】図13の流れ図におけるステップS20で方
向ベクトルを生成する際に用いるξ/θの変換式の一例
を示すグラフである。
【図18】図13の流れ図におけるステップS10で、
画像形成面J上に定義された繊維もぐり角ξの一例を示
す斜視図である。
【図19】図18に示す繊維もぐり角ξを、画像形成面
Jに沿った方向ベクトルを示す角度θに変換した状態を
示す平面図である。
【図20】図13の流れ図におけるステップS30の万
線形成段階の詳細な処理手順を示す流れ図である。
【図21】図20の流れ図におけるステップS31で定
義される画素配列の具体例を示す図である。
【図22】図20の流れ図におけるステップS32で、
第1行目に定義された代表画素を示す図である。
【図23】図20の流れ図におけるステップS32で、
第1行目に定義された画素帯を示す図である。
【図24】図20の流れ図におけるステップS34で、
第1行目の代表画素に基づいて、第2行目に定義された
代表画素を示す図である。
【図25】図20の流れ図におけるステップS34で、
第1行目の代表画素に基づいて、第2行目に定義された
画素帯を示す図である。
【図26】図20の流れ図に示す手順により生成された
万線を示す図である。
【図27】図20の流れ図に示す手順を、より高い精度
で実行するための手法を示す図である。
【図28】図20の流れ図におけるステップS35の調
整処理により、新たな万線M3が発生した状態を示す図
である。
【図29】図20の流れ図におけるステップS35の調
整処理により、万線M2が終端した状態を示す図であ
る。
【図30】本発明に係る木調質感エンボスシートの作成
装置の基本構成を示すブロック図である。
【図31】図30に示す装置によって作成された万線パ
ターンの一例を示す図である。
【図32】図30に示す装置によって作成された万線パ
ターンの別な一例を示す図である。
【符号の説明】
10…ベクトル場発生手段 20…繊維もぐり角演算手段 30…方向ベクトル演算手段 40…パターン生成手段 50…刷版手段 60…エンボス加工手段 100…材木板 200…仮想光源 A…基準軸 E…エンボスシート F…繊維 F→,F1→,F2→…繊維方向ベクトル G…万線条溝 H11,H12,H21,H22…画素帯 J…切断面(画像形成面) L→…光線方向ベクトル M,M1,M2,M3…万線 O1,O2,O3…観察方向 P,Q…繊維束モデルあるいは画像形成面上の点 P′,Q′…歪曲繊維束モデル上の点 P(i,j)…画素配列上の画素 Qa,Qb,Qc…ベクトルの端点 R…参照線 R11,R12,R21,R22,RR…代表画素 Ra,Rb,Rc…代表画素 S…木目柄の印刷シート T…天然木材 V→…方向ベクトル V11→,V12→…方向ベクトル Va→,Vb→…方向ベクトル V(i,j)…画素P(i,j)についての方向ベクト
ル W…鏡面反射光強度(光沢度) ξ…繊維もぐり角 φ…ベクトル交錯角 θ…方向ベクトルV→と参照線Rとのなす角
フロントページの続き (72)発明者 有吉 俊雄 東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内 (72)発明者 神力 哲夫 東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然木材の表面に現れる木調質感を表現
    するために用いる木調質感エンボスシートを作成する方
    法であって、 所定の画像形成面上の各点に、木材の繊維の配向性を示
    す繊維もぐり角を定義する繊維もぐり角定義段階と、 与えられた繊維もぐり角を前記画像形成面に沿った方向
    ベクトルに変換する変換式を定義し、この変換式を用い
    て、前記画像形成面上の各点に定義された繊維もぐり角
    をそれぞれ方向ベクトルに変換する方向ベクトル生成段
    階と、 前記画像形成面上に、前記方向ベクトルに沿った万線を
    形成する万線形成段階と、 前記万線を凹凸パターンとして表現したエンボスシート
    を作成するエンボスシート作成段階と、 を有することを特徴とする木調質感エンボスシートの作
    成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の作成方法において、 繊維もぐり角定義段階で、所定の基準軸に対する配向性
    が部分ごとに異なる三次元ベクトル場を定義し、この三
    次元ベクトル場を画像形成面で切断し、切断面上の各点
    におけるベクトル場の配向性に基づいて繊維もぐり角を
    定義することを特徴とする木調質感エンボスシートの作
    成方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の作成方法において、 繊維もぐり角定義段階で、天然木材の表面上の各点から
    の反射光の強度を測定することができる測定系を用い、
    前記天然木材を種々の角度から観察したときの各点から
    の反射光強度を測定し、この測定結果に基づいて前記天
    然木材表面上の各点の繊維もぐり角を演算により求め、
    この演算により求めた繊維もぐり角を画像形成面上に定
    義することを特徴とする木調質感エンボスシートの作成
    方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の作成方法において、 方向ベクトル生成段階で、繊維もぐり角ξの変化に対し
    て単調増加もしくは単調減少する角度θを定義し、この
    角度θに応じた方向ベクトルを定めることを特徴とする
    木調質感エンボスシートの作成方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の作成方法において、 万線形成段階で、 画像形成面上に縦横に配列された多数の画素からなる画
    素配列を定義する第1のステップと、 前記画素配列の第1行目に、互いに所定間隔をおいて配
    置された複数の代表画素を定義し、各代表画素の近傍
    に、連続配置された画素群からなる画素帯をそれぞれ定
    義する第2のステップと、 第i行目の各代表画素について、これら各代表画素内の
    点に定義された方向ベクトルの示す方向に位置する第
    (i+1)行目の画素を求め、求めたこれらの画素を第
    (i+1)行目の代表画素と定義し、これら第(i+
    1)行目の代表画素の近傍に、連続配置された画素群か
    らなる画素帯をそれぞれ定義する第3のステップと、 パラメータiの値をi=1から1ずつ増加させながら、
    前記第3のステップを繰り返し実行する第4のステップ
    と、 を行い、最終的に得られた画素帯の集合によって万線を
    形成することを特徴とする木調質感エンボスシートの作
    成方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の作成方法において、 第3のステップの後に、相互の間隔が所定の基準以上離
    れた一対の画素帯が存在する場合には、この一対の画素
    帯の間に新たな代表画素を定義し、この新たな代表画素
    に基づいて新たな画素帯を発生させる調整処理を行うこ
    とを特徴とする木調質感エンボスシートの作成方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の作成方法において、 第3のステップの後に、自己の左側に隣接する画素帯と
    自己の右側に隣接する画素帯との間隔が所定の基準以下
    に接近している画素帯が存在する場合には、当該画素帯
    およびその代表画素を消滅させる調整処理を行うことを
    特徴とする木調質感エンボスシートの作成方法。
  8. 【請求項8】 天然木材の表面に現れる木調質感を表現
    するために用いる木調質感エンボスシートを作成する装
    置であって、 天然木の木理を表現する三次元ベクトル場を発生させる
    ベクトル場発生手段と、 所定の画像形成面によって、前記三次元ベクトル場を切
    断したときに、切断面上の各点におけるベクトル場の配
    向性に基づいて繊維もぐり角を求め、前記画像形成面上
    の各点に繊維もぐり角を定義する繊維もぐり角演算手段
    と、 与えられた繊維もぐり角を前記画像形成面に沿った方向
    ベクトルに変換する所定の変換式に基づいて、前記画像
    形成面上の各点に定義された繊維もぐり角をそれぞれ方
    向ベクトルに変換する方向ベクトル演算手段と、 前記画像形成面上に、所定の幅を有し前記方向ベクトル
    に沿って配置された万線を定義し、これら万線から構成
    される二値画像パターンを生成するパターン生成手段
    と、 前記二値画像パターンに基づいて、凹凸パターンをもっ
    たエンボス版を作成する刷版手段と、 前記エンボス版を用いてエンボスシートを作成するエン
    ボス加工手段と、 を備えることを特徴とする木調質感エンボスシートの作
    成装置。
  9. 【請求項9】 天然木材の表面に現れる木調質感を表現
    するために用いる木調質感エンボスシートにおいて、 表面に、多数の万線からなる凹凸パターンが形成されて
    おり、前記万線が、木材の繊維の配向性を示す繊維もぐ
    り角に対応した方向成分を有することを特徴とする木調
    質感エンボスシート。
  10. 【請求項10】 請求項1〜7のいずれかに記載の作成
    方法によって作成された木調質感エンボスシートもしく
    は請求項9に記載の木調質感エンボスシートを、透明材
    料によって構成し、木目柄を印刷した印刷シート上に、
    前記木調質感エンボスシートを積層してなる建材。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の建材において、 印刷シート上の木目柄のパターンと、木調質感エンボス
    シート上の万線のパターンとが、同一の三次元ベクトル
    場を用いたコンピュータ画像処理によって形成されてい
    ることを特徴とする建材。
JP11355497A 1997-04-15 1997-04-15 木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置 Expired - Fee Related JP4044171B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11355497A JP4044171B2 (ja) 1997-04-15 1997-04-15 木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11355497A JP4044171B2 (ja) 1997-04-15 1997-04-15 木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10287033A true JPH10287033A (ja) 1998-10-27
JP4044171B2 JP4044171B2 (ja) 2008-02-06

Family

ID=14615245

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11355497A Expired - Fee Related JP4044171B2 (ja) 1997-04-15 1997-04-15 木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4044171B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000351263A (ja) * 1999-06-11 2000-12-19 Dainippon Printing Co Ltd 万線データの作成方法および装置
JP2001009907A (ja) * 1999-06-29 2001-01-16 Dainippon Printing Co Ltd 万線状凹凸模様を有する化粧材、及びその製造方法
JP2001232927A (ja) * 2000-02-22 2001-08-28 Dainippon Printing Co Ltd 木目模様生成方法および木目模様生成システム
JP2014188902A (ja) * 2013-03-27 2014-10-06 Oji Holdings Corp 表示物
WO2016093322A1 (ja) * 2014-12-10 2016-06-16 凸版印刷株式会社 エンボスシート、及び化粧シート
JP2017138726A (ja) * 2016-02-02 2017-08-10 凸版印刷株式会社 面材模様仕上がりシミュレーションシステム及び面材模様仕上がりシミュレーション方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000351263A (ja) * 1999-06-11 2000-12-19 Dainippon Printing Co Ltd 万線データの作成方法および装置
JP4531155B2 (ja) * 1999-06-11 2010-08-25 大日本印刷株式会社 万線データの作成方法および装置
JP2001009907A (ja) * 1999-06-29 2001-01-16 Dainippon Printing Co Ltd 万線状凹凸模様を有する化粧材、及びその製造方法
JP2001232927A (ja) * 2000-02-22 2001-08-28 Dainippon Printing Co Ltd 木目模様生成方法および木目模様生成システム
JP4569989B2 (ja) * 2000-02-22 2010-10-27 大日本印刷株式会社 木目模様生成方法および木目模様生成システム
JP2014188902A (ja) * 2013-03-27 2014-10-06 Oji Holdings Corp 表示物
WO2016093322A1 (ja) * 2014-12-10 2016-06-16 凸版印刷株式会社 エンボスシート、及び化粧シート
US10322541B2 (en) 2014-12-10 2019-06-18 Toppan Printing Co., Ltd. Embossed sheet and decorative sheet
JP2017138726A (ja) * 2016-02-02 2017-08-10 凸版印刷株式会社 面材模様仕上がりシミュレーションシステム及び面材模様仕上がりシミュレーション方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4044171B2 (ja) 2008-02-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4228058B2 (ja) 発色体とその製造方法
US10540810B2 (en) System and method of rendering a graphical object with modification in structure
JPH11512835A (ja) 多重レベル回折光学素子
US8194970B2 (en) Method for producing three-dimensionally structured surfaces
JPH10287033A (ja) 木調質感エンボスシートおよびこれを用いた建材ならびに木調質感エンボスシートの作成方法および作成装置
JP4402224B2 (ja) 立体模様を有するシートおよびその製造方法
Vukusic et al. Shedding light on butterfly wings
JP3285142B2 (ja) エンボスシート、化粧シート及び万線パターンを作成するための方法、そのための装置
JPWO2008032593A1 (ja) シボ柄印刷用のシボ柄並びにそのシボ柄の創成方法および創成プログラム、並びにそのシボ柄を印刷した住宅建材製品、自動車用内装部品、家庭電化製品および情報機器
JP4211956B2 (ja) 画像作成方法及び画像作成装置
CN111145071A (zh) 将水印叠加在连续灰度图像中的三通道超表面复用方法
van Goethem et al. Exploring curved schematization of territorial outlines
JP7162219B2 (ja) 層構成予測方法及び層構成予測装置
JP4018760B2 (ja) 木目柄パターンの作成方法および作成装置
JP4531155B2 (ja) 万線データの作成方法および装置
US7161676B2 (en) Method for designing a plastic article having a desired appearance
JP4305884B2 (ja) ヘアラインデータの作成方法及び装置
JP3998084B2 (ja) 異方性反射のシミュレーション方法、及びシミュレーション装置
JP4698229B2 (ja) 木目の異方性反射面を表現したエンボスシートの製造方法および製造装置
Hosseini et al. Portal: design and fabrication of incidence-driven screens
JP4440373B2 (ja) 木理モデリング装置
Larsson et al. Procedural texturing of solid wood with knots.
JP4172556B2 (ja) 二次元スカラ場デザイン方法及びそのシステム
JP4416058B2 (ja) エンボスシートの作成方法および装置
JP3761998B2 (ja) 木目導管断面パターンの作成方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040224

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070320

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071002

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071018

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20071113

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20071115

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101122

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101122

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111122

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121122

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131122

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees