JP4018760B2 - 木目柄パターンの作成方法および作成装置 - Google Patents

木目柄パターンの作成方法および作成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木目柄パターンの作成方法および作成装置に関し、特に、木理を考慮することにより、自然な風合いをもった木目柄パターンあるいは意匠性の高い木目柄パターンを人為的に発生させるための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
壁紙などの建材製品や、種々の商品のパッケージなどの模様として、木目柄パターンは広く利用されている。このような木目柄パターンをもった印刷物を作成する場合、通常は、天然木の材面をカメラなどで撮影し、この天然木のもつ木目柄パターンをそのまま利用する方法が採られる。また、近年では、印刷分野においてもコンピュータを利用した画像処理技術が普及してきているため、天然木の木目柄パターンをCCDカメラなどで画像データとして取り込み、この画像データに対して、コンピュータを利用して必要な画像処理を施し、処理後の画像データに基づいて印刷を行うという手法も広く行われている。
【0003】
一般に、木目柄パターンは、年輪パターンと導管断面パターンとを含んでいる。年輪パターンは、樹木の年ごとの成長に合わせて形成されるパターンである。通常は、樹木の成長環境における寒暖の差に基づいて濃淡の差が生じ、この濃淡の差がそのまま年輪パターンとして現れることになる。したがって、1年ごとの周期的な濃淡パターンになる。一方、導管断面パターンは、樹木の導管を切断することによって得られる断面パターンである。導管は、樹木が植物としての生理作用を営むために必要な器官であり、幹から梢に向かって伸びる細い管であり、その断面は細長い楕円状になるのが一般的である。したがって、天然木の材面に現れる木目柄パターンを観察すると、全体的には年輪パターンが認識されるが、細かく見ると、小さな導管断面パターンが多数配置されているのが認識される。
【0004】
壁紙などでは、上述のような天然木の木目柄パターンの風合いをできるだけ忠実に再現するために、年輪パターンと導管断面パターンとを重畳して木目柄パターンを表現するのが一般的である。通常は、天然木の板目から、年輪パターンと導管断面パターンとをそれぞれ別個に撮影し、別個の版を作成し、印刷時に両者を合成する手法が採られる。年輪パターンと導管断面パターンとは、いずれも印刷によって塩化ビニルシートなどの媒体上に形成されることもあるし、年輪パターンを印刷によって、導管断面パターンをエンボス凹凸構造によって、それぞれ別個に形成することもある。もともと、天然木についての導管断面は凹凸構造を有するため、導管断面パターンをエンボス凹凸構造として形成すれば、より天然木に近い質感が表現できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、木目柄パターンをもった印刷物を作成する場合、最近では、コンピュータを利用した画像処理技術が盛んに利用されるようになってきている。しかしながら、このようなコンピュータによる画像処理のもとになるパターンは、本物の天然木の木目柄から取り込むのが一般的である。ところが、将来、天然木材の供給不足が予想されており、意匠性の高い木目柄をもった天然木を入手することが益々困難になることが予想される。また、天然木材を用いる限り、表現可能な木目柄パターンは限られてしまい、デザインの自由度が制限されることは否めない。しかも、天然木の木目柄を写真撮影する場合、照明むらが生じないような環境設定を行う必要があり、高度な技術が必要になるという問題もある。
【0006】
このような問題を解決するため、実際の天然木材を全く用いることなしに、コンピュータを利用して完全に人為的に木目柄パターンを作成しようとする試みがなされている。たとえば、特開平8−22538号公報には、三次元空間内に三次元樹木モデルを定義し、これを所定の切断面で切断することにより、木目導管断面パターンを得る手法が開示されている。しかしながら、従来提案されている手法では、天然木に近い自然な木目柄を作成するという点ではまだまだ不十分であり、特に、天然木に固有の木理(樹木内の導管や繊維など軸方向要素の配向性)を考慮した意匠性の高い木目導管断面パターンを作成することができない。
【0007】
そこで本発明は、天然木のもつ木理の要素を考慮した自然な木目柄パターンあるいは意匠性の高い木目導管断面パターンを、人為的に発生させることのできるパターンの作成方法および作成装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、木目柄パターンを人為的に作成する方法において、
所定の中心軸からの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルを三次元空間上に定義する段階と、
第1の点を第2の点へ移動させる座標変換ベクトルを、三次元空間上の任意の点をそれぞれ第1の点として、三次元空間上の任意の点についてそれぞれ定義する段階と、
基準三次元樹木モデルを構成する各画素が座標変換ベクトルによる移動によって再配置されるように各画素を変位させ、変位後の画素により歪曲三次元樹木モデルを定義する段階と、
歪曲三次元樹木モデルを所定の切断面によって切断したときに切断面に位置する画素の集合によって構成されるパターンを木目柄パターンとして抽出する段階と、
を行うようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、木目柄パターンを人為的に作成する方法において、
所定の中心軸からの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルを三次元空間上に定義する段階と、
第1の点から第2の点へ向かう座標変換ベクトルを、三次元空間上の任意の点をそれぞれ第1の点として、三次元空間上の任意の点についてそれぞれ定義する段階と、
基準三次元樹木モデルが定義された空間内に所定の切断面を定義し、この切断面上の各位置に、この各位置を第1の点とする座標変換ベクトルの第2の点の位置に存在する基準三次元樹木モデル内の画素を割り当て、切断面上に割り当てられた画素の集合によって構成されるパターンを木目柄パターンとして抽出する段階と、
を行うようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る作成方法において、
基準三次元樹木モデルについて、所定の着目点Pと、この着目点Pに関して中心軸に沿った方向に隣接する隣接点Qとを考慮し、着目点Pを当該位置に定義された座標変換ベクトルによって移動することにより得られる変位点P′と、隣接点Qを当該位置に定義された座標変換ベクトルによって移動することにより得られる変位点Q′とを求め、変位点P′から変位点Q′へ向かうベクトルを、着目点Pの位置における繊維方向ベクトルF→と定義する段階と、
切断面に対して仮想光源を定義し、この仮想光源に基づいて、切断面上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義する段階と、
木目柄パターンを構成する切断面上の各画素の画素値を、繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなす角φに依存する鏡面反射光成分によって修正する段階と、
を更に行うようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第3の態様に係る作成方法において、
中心軸がXYZ三次元座標系におけるZ軸方向を向くような基準三次元樹木モデルを定義し、予め所定の隣接間隔Δzを設定しておき、座標値P(x,y,z)をもった着目点Pと、座標値Q(x,y,z+Δz)をもった隣接点Qとを考慮するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第3または第4の態様に係る作成方法において、
繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなすベクトル交錯角φと、所定の係数a,b,cと、を用いて、鏡面反射光強度Wを、
W=a・sin|φ|+c
なる式で定義し、各画素の画素値を鏡面反射光強度Wを用いて修正するようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第5の態様に係る作成方法において、
加色混合系の三原色についての画素値を用いている場合には、各画素値に対して鏡面反射強度Wに応じた補正値を加算することにより修正を行い、
減色混合系の三原色についての画素値を用いている場合には、各画素値に対して鏡面反射強度Wに応じた補正値を減算することにより修正を行うようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る作成方法において、
αおよびβを所定の定数、乱数もしくは関数として、
x′=x+α・sin(β・z)
y′=y
z′=z
なる座標変換式を定義し、この座標変換式を用いて第1の点P(x,y,z)を第2の点P′(x′,y′,z′)に移動させる座標変換ベクトルを定義するようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る作成方法において、
θおよびβを所定の定数、乱数もしくは関数として、
x′=r・cos(θ+θ)
y′=r・sin(θ+θ)
z′=z
ただし r=(x+y1/2
θ=β・z
なる座標変換式を定義し、この座標変換式を用いて第1の点P(x,y,z)を第2の点P′(x′,y′,z′)に移動させる座標変換ベクトルを定義するようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1〜第8の態様に係る作成方法において、
所定のスカラー値を自己相似的に二次元平面上の各点に定義した二次元フラクタル場を用意し、
この二次元フラクタル場の各点のもつスカラー値に応じて、平面上の各点を所定方向に変位させることにより有皺面を生成し、
この有皺面を切断面として用いるようにしたものである。
【0017】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第1〜第8の態様に係る作成方法において、
所定のスカラー値を自己相似的に三次元空間内の各点に定義した三次元フラクタル場を用意し、
三次元空間上の各点に定義された個々の座標変換ベクトルが三次元フラクタル場に基づく揺らぎ成分を含むように、個々の座標変換ベクトルの定義を行うようにしたものである。
【0018】
(11) 本発明の第11の態様は、木目柄パターンを人為的に作成する装置において、
パターン作成に必要な所定のパラメータを設定するパラメータ設定手段と、
パラメータ設定手段において設定されたパラメータに基づき、所定の中心軸からの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルを生成する基準三次元樹木モデル生成手段と、
パラメータ設定手段において設定されたパラメータに基づき、基準三次元樹木モデルを構成する各画素を再配置して歪曲三次元樹木モデルが得られるように、各画素を変位させるための第1の座標変換を定義する第1の座標変換定義手段と、
基準三次元樹木モデルを切断するための切断面を設定する切断面設定手段と、
切断面上に位置する点に対して第1の座標変換を行い、第1の座標変換後の点について基準三次元樹木モデルで定義されている画素値を、切断面上のもとの点に付与する画素値付与手段と、
画素値が付与された前記切断面上の点によって構成されるパターンを木目柄パターンを示す画像として出力する画像出力手段と、
を設けたものである。
【0019】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第11の態様に係る装置において、
パラメータ設定手段において設定されたパラメータに基づき、所定のスカラー値を自己相似的に三次元空間内の各点に定義した三次元フラクタル場を発生し、この三次元フラクタル場に基づいて、三次元樹木モデルを構成する各点に対する第2の座標変換を定義する第2の座標変換定義手段を更に設け、
画素値付与手段が、第1の座標変換および第2の座標変換の双方を行い、これら双方の座標変換を行った後の点について定義されている画素値を、切断面上に位置するもとの点に対して付与するようにしたものである。
【0020】
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第11の態様に係る装置において、
基準三次元樹木モデルについて、所定の着目点Pと、この着目点Pに関して中心軸に沿った方向に隣接する隣接点Qとを考慮し、「着目点Pに対して第1の座標変換を施して得られる変位点P′」と、「隣接点Qに対して第1の座標変換を施して得られる変位点Q′」とを求め、「変位点P′から変位点Q′へ向かうベクトル」を、着目点Pの位置における繊維方向ベクトルF→と定義し、
切断面に対して定義された仮想光源に基づいて、切断面上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義し、
画素値付与手段が、繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなす角φに依存する鏡面反射光成分に基づいて、付与すべき画素値に修正を加えるようにしたものである。
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第12の態様に係る装置において、
基準三次元樹木モデルについて、所定の着目点Pと、この着目点Pに関して中心軸に沿った方向に隣接する隣接点Qとを考慮し、「着目点Pに対して第1の座標変換および第2の座標変換の双方を施して得られる変位点P″」と、「隣接点Qに対して第1の座標変換および第2の座標変換の双方を施して得られる隣接点Q″」とを求め、「変位点P″から変位点Q″へ向かうベクトル」を、着目点Pの位置における繊維方向ベクトルF→と定義し、
切断面に対して定義された仮想光源に基づいて、切断面上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義し、
画素値付与手段が、繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなす角φに依存する鏡面反射光成分に基づいて、付与すべき画素値に修正を加えるようにしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。本発明の基本的な手法は、コンピュータ上に三次元樹木モデルを定義し、このモデルを所定の切断面で切断し、この切断面上に木目柄パターンを得ることである。図1はこの基本的な手法を示す概念図である。図1(a) に示す三次元樹木モデルMは、図にその概略が示されているように、いわば同軸円筒状の幾何学的モデルであり、このモデルでは、所定の中心軸Cからの距離に基づいて画素値が周期的に変化する多数の画素が定義され、いわば概念上の立体画像が形成されていることになる。この三次元樹木モデルMを所定の切断面Jで切断すれば、図1(b) に示すように、切断面J上に木目柄パターンが得られる。
【0022】
なお、ここでは図示の便宜上、三次元樹木モデルMを、同軸円筒をいくつか重ねた単純なモデルとして描き、これを切断面Jによって切断することにより、多重楕円からなる線画パターンが得られた状態を示しているが、実際には、より複雑なパターンが得られることになる。すなわち、実際には、たとえば茶系統の色彩を示す種々の画素値をもった多数の画素を三次元空間内に配置することにより三次元樹木モデルMが定義され、切断面J上には、この茶系統の色彩をもった多数の画素の配列からなるラスター画像が得られることになる。三次元樹木モデルMの特徴は、中心軸Cからの距離に基づいて画素値が周期的に変化する多数の画素から構成されるという点にあり、この画素値の周期的な変化は、年単位の成長によって醸し出される天然木の特有の周期的なパターン(いわゆる年輪パターン)を表現している。
【0023】
このように、三次元樹木モデルMを所定面で切断するシミュレーションにより木目柄パターンを得る手法自体は、たとえば、特開平8−22538号公報などによって既に提案されている方法である。同公報には、上述した年輪パターンに、更に、天然の樹木の繊維質を表現するための木肌パターンを重ね合わせる方法や、フラクタル場を利用して揺らぎの成分を付加する方法などが開示されている。しかしながら、より自然な風合いの表現あるいはより意匠性の高い表現を行うという点においては、既に開示されたこれらの方法では、まだまだ不十分である。本願発明者は、その原因のひとつが、天然木に固有の「木理」という要素の考慮が欠けている点であることを見出だした。本願発明の骨子は、三次元樹木モデルMに「木理」という要素を導入することにより、更に自然な意匠性の高い木目柄パターンを作成する点にある。
【0024】
一般に、「木理」とは、天然木内の成長輪や構成細胞の配列の状態をさす言葉であり、特に、天然木の導管や繊維など軸方向要素の配向性をさすことが多い。たとえば、実際の天然木の成長方向が基準軸Aの方向だとすると、天然木内部の繊維束は全体としてはこの基準軸Aに沿った方向に伸びているが、部分的にはその配向性にバラツキを生じていることが多い。このような配向性が一般に「木理」と呼ばれており、配向性の状態により、波状木理、螺旋木理、交錯木理といった名称で呼ばれている。
【0025】
この「木理」の概念を視覚的に把握できるように、図2に示すような基準繊維束モデルを考えてみる。ここに示すモデルは、樹木内の導管や繊維などの軸方向要素の配向性を、多数の細長い円筒状繊維の束で示したものであり、樹木を構成する繊維束の流れの向きを示すものである。もちろん、実際の天然木は、このような単純な円筒状繊維の束から構成されるわけではなく、細胞質、導管、繊維質など多数の要素を含んでいるが、ここではこれら多数の要素の軸方向要素の配向性を示すモデルとして、円筒状の繊維束モデルを用いることにする。基本的には、この図2に示すように、繊維束の配向性は成長方向を向いた基準軸Aに沿ったものとなり、個々の繊維はいずれも基準軸Aに平行に配置されるはずである。すなわち、ある繊維上での着目点Pと、同じ繊維上の隣接点Qとの位置関係を考えると、点Pから点Qへ向かうベクトル(以下、繊維方向ベクトルと呼ぶ)は、基準軸Aの方向を向いたものになる。しかしながら、自然界で成長する樹木には、その成長過程において、部分的に配向性が異なる現象が多くみられ、そのような配向性のバラツキ現象が「木理」として現れることになる。
【0026】
たとえば、図3左に示すように、基準軸Aに対して垂直な方向Bを定義し、基準軸Aに沿った方向を示すベクトルに方向Bの成分を部分的に付加することにより繊維方向ベクトルF1→(電子出願の制約から、本願明細書においては、本来符号の上部に付記するベクトル記号“→”を符号右側に付記することにする)を定義する。そして、個々の繊維がこの繊維方向ベクトルF1→に沿った方向を向くように、図2に示す基準繊維束モデルを歪ませると、図3右に示すような歪曲繊維束モデルが得られる。図2のモデルにおける点P,Qは、図3のモデルではそれぞれ点P′,Q′へと変位しており、点P′から点Q′へ向かうベクトルは、点P(もしくは点P′)の位置における繊維方向ベクトルF1→となる。このような歪曲繊維束モデルは、一般に波状木理と呼ばれている木理を含んだモデルとなる。
【0027】
また、図4左に示すように、基準軸Aの周囲を螺旋状に取り巻く繊維方向ベクトルF2→を定義し、個々の繊維がこの繊維方向ベクトルF2→に沿った方向を向くように、図2に示す基準繊維束モデルを歪ませると、図4右に示すような歪曲繊維束モデルが得られる。図2のモデルにおける点P,Qは、図4のモデルではそれぞれ点P′,Q′へと変位しており、点P′から点Q′へ向かうベクトルは、点P(もしくは点P′)の位置における繊維方向ベクトルF2→となる。このような歪曲繊維束モデルは、一般に螺旋木理と呼ばれている木理を含んだモデルとなる。
【0028】
そこで、図1(a) に示すような基準となる三次元樹木モデルMを定義したら、このモデルMの中心軸Cを基準軸Aとして、この基準軸Aに対する配向性が部分ごとに異なるベクトル場Fを定義し、基準三次元樹木モデルMの当初の配向性(図2に示すモデルにおける点Pから点Qへ向かう基準軸Aに沿った配向性)を歪ませれば、木理の要素を含んだ歪曲三次元樹木モデルM′を定義することができる。基準三次元樹木モデルMを歪ませて歪曲三次元樹木モデルM′を定義するための処理は、具体的には、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素を、それぞれ所定方向に変位させて再配置する処理ということになる。たとえば、図2に示す点P,Qの位置にある画素を、図3に示す点P′,Q′の位置へと再配置する処理を行えば、波状木理を表現した歪曲三次元樹木モデルM′を定義することができるし、同様に、図4に示す点P′,Q′の位置へと再配置する処理を行えば、螺旋木理を表現した歪曲三次元樹木モデルM′を定義することができる。要するに、「もとの基準三次元樹木モデルMにおいては、中心軸に沿った方向に隣接配置されていた隣接画素が、歪曲三次元樹木モデルM′においては、定義したベクトル場Fに沿った方向に再配置されている」という条件が個々の画素について満足されるように、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素について再配置がなされればよい。このような再配置は、実際には、座標変換に基づく変位により行うのが好ましい。この座標変換についての具体的な手法については、後述する実施例で述べることにする。
【0029】
さて、こうして定義された歪曲三次元樹木モデルM′は、定義したベクトル場Fに基づく木理の情報を含んでいるので、この歪曲三次元樹木モデルM′を所定の切断面Jで切断すれば、木理の要素を考慮した木目柄パターンが得られることになる。本発明の基本思想は、このようにして、木理の情報を含んだ木目柄パターンを人為的に発生させる点にある。
【0030】
こうして得られた木目柄パターンには、「繊維質の独特な流れ」が表現されることになり、天然木に近い自然らしさや高い意匠性を感じさせることが可能になる。ただ、本願発明者は、このような「繊維質の流れ」を「模様の流れ」としてパターン上に表現するだけでなく、更に、「反射ムラ」としてパターン上に表現すれば、より効果的であることを見出だした。ここでいう「反射ムラ」とは、建材の業界では一般に「もく」と呼ばれている模様に対応するものであり、材木面上の鏡面反射率の分布に起因して現れる光沢模様である。材木面上での光沢の有無は、その領域の鏡面反射強度に左右されることになるが、この鏡面反射強度はその領域の繊維質の流れの方向に依存することが知られている。
【0031】
その最も顕著な例が、一般に「木口面」、「柾目面」と呼ばれている材木板の切り出し方向による光沢感の相違である。「木口面」とは、成長方向に対して垂直な切断面で天然木を切断したときに現れる切り出し面であり、前述した基準繊維束モデルの例では、図5に示すように、基準軸Aに対して垂直な切断面Jによって切断したときに切断面Jに現れる材木面をさす。これに対して、「柾目面」とは、成長方向に平行な切断面で天然木を切断したときに現れる切り出し面であり(より正確には、「柾目面」とは、特に中心軸を通る面で切断した場合の切り出し面をいい、切断面が成長方向に平行ではあるが、中心軸からはずれている場合は「板目面」という)、前述した基準繊維束モデルの例では、図6に示すように、基準軸Aに沿った切断面Jによって切断したときに切断面Jに現れる材木面をさす。
【0032】
図5に示すような「木口面」による切断を行うと、材木板表面に対して、個々の繊維は垂直に潜るような配向性を有することになり、照射された光は材木板内部で吸収されやすくなり、外部に出てきにくくなる。したがって、表面の鏡面反射率は低くなり、光沢感のない面になる。これに対し、図6に示すような「柾目面」による切断を行うと、材木板表面に対して、個々の繊維は水平に寝るような配向性を有することになり、照射された光の多くは材木板内部へは浸透せずに表面で反射することになる。したがって、表面の鏡面反射率は高くなり、光沢感のある面になる。
【0033】
図7は、材木板表面の繊維質の配向性と鏡面反射率との関係を説明する図である。いま、材木板10の表面(切断面J)に、図に繊維方向ベクトルF→として示すような配向性をもって繊維Fが配置されているものとする。このとき、切断面Jと繊維Fとのなす角ξは、繊維もぐり角と呼ばれている。図5に示す「木口面」による切断の場合、繊維もぐり角ξ=90°となり、図6に示す「柾目面」による切断の場合、繊維もぐり角ξ=0°となる。ここでは、材木板10の上方に仮想光源20(面光源)を仮定し、この仮想光源20から材木板10の表面(切断面J)に対して垂直な光線が照射され、この表面からの拡散反射光および鏡面反射光を観察する単純な場合を考える。この場合、観察される拡散反射光の強度は、材木板10の表面の木目模様の色成分によって左右され、この拡散反射光による画像は、いわゆる着色された模様として認識されることになる。一方、観察される鏡面反射光の強度W(光沢度)は、繊維もぐり角ξによって左右され、通常、図8のグラフに示すような関係が定義される。
【0034】
より正確には、この鏡面反射光強度は、光の照射方向と繊維もぐり角ξとの双方によって決定される。すなわち、図7に示すように、切断面J上の点Pにおいて、光線方向ベクトルL→と繊維方向ベクトルF→とを図のように定義すれば、両ベクトルの交錯角φによって点Pにおける鏡面反射光強度が決定されることになる。上述の例のように、光線方向ベクトルL→が切断面Jに対して垂直であるモデルの場合、ベクトル交錯角φ=90°−ξとなり、図8のグラフに示すように、φ=90°のときに鏡面反射光強度が最高になり、φ=0°のときに最低となる。
【0035】
さて、本発明の基本概念は、上述したように、三次元樹木モデルMをベクトル場Fに基づいて歪ませ、木理の要素を含んだ歪曲三次元樹木モデルM′を定義し、これを切断面Jで切断することにより、木理による「繊維質の独特な流れ」を表現することにある。ところが、一般の天然木では、このように木理によって部分的に繊維質の流れが変わると、上述したように鏡面反射光の強度にも変化が現れるため、部分的に「反射ムラ」が生じることになり、いわゆる「もく」と呼ばれる「光沢模様」が現れることになる。しかも、各領域の鏡面反射光強度は、その領域における繊維質の配向性(繊維もぐり角)に依存しているため、「もく」と呼ばれる「光沢模様」は、その領域における「繊維質の流れ」に同調した模様になる。そこで、本発明では、木理に基づいた「繊維質の流れ」をもった木目柄パターンを作成し、更に、これに同調した鏡面反射要素を加味することにより「光沢模様」の表現をも実現している。
【0036】
図9は、本発明に係る木目柄パターンの作成方法の基本手順を示す流れ図である。ここに示す手順のうち、前段のステップS1〜S4は、木理を考慮した木目柄パターンを生成する手順であり、いわば拡散反射成分を示す画像データを作成するプロセスである。これに対し、後段のステップS5〜S7は、木理に基づいて光沢模様を付加する手順であり、いわば前段で生成した木目柄パターンに対して鏡面反射成分に基づく修正を施すプロセスである。以下、これらの手順を順に説明する。
【0037】
まず、前段のプロセスでは、ステップS1において、基準三次元樹木モデルMを定義する。すなわち、図1(a) の概念図に示したように、所定の中心軸Cからの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される三次元画素配列を定義する。続くステップS2では、木理を表現するための三次元ベクトル場Fを定義する。このとき、ステップS1で定義した基準三次元樹木モデルMと同一の三次元座標系にベクトル場Fが定義されるようにする。たとえば、波状木理を表現するのであれば、図3に示すような繊維方向ベクトルF1→で示される三次元ベクトル場を定義すればよいし、螺旋木理を表現するのであれば、図4に示すような繊維方向ベクトルF2→で示される三次元ベクトル場を定義すればよい。要するに、基準三次元樹木モデルMの中心軸Cに対する配向性が部分ごとに異なる三次元ベクトル場が定義できればよい。
【0038】
次に、ステップS3において、ステップS1で定義した基準三次元樹木モデルMを、ステップS2で定義したベクトル場Fを考慮して変形し、歪曲三次元樹木モデルM′を定義する。すなわち、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素がベクトル場Fに沿って再配置されるように各画素を変位させ、変位後の画素により歪曲三次元樹木モデルM′を定義すればよい。具体的には、後述するように、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素を、所定の座標変換式に基づいて変位させれば、変位後の画素により木理の要素を含んだ歪曲三次元樹木モデルM′が定義されることになる。最後に、ステップS4において、所定の切断面Jを定義し、歪曲三次元樹木モデルM′をこの切断面Jによって切断し、切断面Jに位置する画素の集合によって構成されるパターンを木目柄パターンとして抽出する。こうして得られた木目柄パターンには、木理に基づく繊維質の流れの要素が表現されていることになる。
【0039】
続いて、後段のプロセスを実行する。まず、ステップS5において、ステップS2で定義したベクトル場Fに基づいて、切断面J上の各位置における繊維方向ベクトルF→を定義する。繊維方向ベクトルF→は、図7に示したように、切断面J上の着目点Pにおける繊維Fの方向を示すベクトルである。図2に示すような基準繊維束モデルを切断した場合、切断面J上の各位置における繊維方向ベクトルF→はすべて同一方向を向くことになる。ところが、この基準繊維束モデルを図3に示すようなベクトル場F1によって変形させたり、図4に示すようなベクトル場F2によって変形させたりして得られる歪曲繊維束モデルを切断した場合、切断面J上の各位置における繊維方向ベクトルF→は個々の位置ごとに向きが異なってくる。ステップS5の処理は、このように個々の位置ごとに異なる繊維方向ベクトルF→をそれぞれ求める処理である。
【0040】
図10は、このステップS5において繊維方向ベクトルF→を定義する具体的な手法を説明する図である。いま、XYZ三次元座標系に、基準軸A(中心軸C)がZ軸方向を向くようにして基準三次元樹木モデルMが定義されているものとし、この基準三次元樹木モデルM内の所定の着目点Pとこれに隣接する隣接点Qとの相互位置関係を考える。ここで、隣接点Qは、着目点Pに関して基準軸A(中心軸C)に沿った方向(図の例では、Z軸正方向)に隣接する点とする。すなわち、着目点Pの座標値をP(x,y,z)とすれば、隣接点Qの座標値はQ(x,y,z+Δz)となる。ここで、Δzは予め設定した所定の隣接間隔である。基準三次元樹木モデルMでは、木理による繊維方向の歪みは加えられておらず、着目点Pから隣接点Qへ向かう方向(すなわちZ軸正方向)は、樹木の成長方向に一致し、繊維方向ベクトルF→はどの着目点PについてもZ軸正方向となり共通している。
【0041】
次に、この基準三次元樹木モデルMを変形し、歪曲三次元樹木モデルM′を定義した場合、着目点Pと隣接点Qとの相互位置関係がどのように変化したかを考えてみる。既に述べたように、歪曲三次元樹木モデルM′の定義は、基準三次元樹木モデルM内の各点を再配置することによって行われる。この再配置は、予め定義された座標変換式によって行われることになるが、ここでは、この座標変換式によって着目点Pについては座標変換ベクトルG→(P)が定義され、隣接点Qについては座標変換ベクトルG→(Q)が定義されていたものとして説明を続けよう。この場合、図10に示すように、着目点P(x,y,z)は座標変換ベクトルG→(P)によって点P′(x′,y′,z′)に変位し、隣接点Q(x,y,z+Δz)は座標変換ベクトルG→(Q)によって点Q′(x,y、z+Δz)に変位することになる。このとき、変位後の着目点P′から隣接点Q′へ向かう方向は、木理により変化を生じた繊維質の流れの方向を示している。本発明では、点P′から点Q′へ向かう方向ベクトルを、点P(もしくは点P′)についての繊維方向ベクトルF→(P)と定義している。ちなみに、点Q(もしくは点Q′)についての繊維方向ベクトルF→(Q)は、点Qを着目点としたときの隣接点R(x,y,z+2Δz)を考え(図示されていない)、点Rを座標変換することにより得られる変位点R′を求め、点Q′から点R′へ向かうベクトルとして定義されることになる。
【0042】
次に、ステップS6において、切断面Jに対する仮想光源を定義し、この仮想光源に基づいて、切断面J上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義する。たとえば、図7に示す単純なモデルの場合、仮想光源20として切断面J上方に平行光源(たとえば、無限遠に存在する太陽のような平行光線を発生する光源)を定義しているため、切断面J上の各位置における光線方向ベクトルL→は、いずれも切断面Jに垂直な方向を向いたベクトルとなる。
【0043】
最後に、ステップS7において、前段のプロセスで作成された木目柄パターンを構成する切断面J上の各画素Eの画素値を、繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなす角φ(ベクトル交錯角)によって修正する処理が行われる。図8のグラフに示すように、ベクトル交錯角φと鏡面反射光強度W(光沢度)との間には所定の相関関係がみられる。したがって、切断面J上の所定点Pについてベクトル交錯角φが得られていれば、この点Pについて鏡面反射光強度Wを求めることができる。そこで、前段のプロセス(ステップS4)で得られた木目柄パターンを構成する個々の画素の画素値を、各位置ごとに求めた鏡面反射光強度Wに基づいて修正する処理を行えば、鏡面反射光成分を考慮した木目柄パターンを得ることができる。
【0044】
画素値の修正処理は、たとえば、加色混合系の三原色(いわゆる光の三原色R,G,B)の画素値を用いている場合には、各画素値に対してそれぞれ鏡面反射光強度Wに応じた補正値を加算する修正を行い、減色混合系の三原色(いわゆる色の三原色C,M,Y)の画素値を用いている場合には、各画素値に対してそれぞれ鏡面反射光強度Wに応じた補正値を減算することにより修正を行うようにすればよい。このような修正処理によって、鏡面反射光強度Wの大きい領域ほど色調が白っぽく修正されることになり、光沢度の表現が可能になる。
【0045】
以上、本発明の基本概念を図9の流れ図に基づいて説明したが、コンピュータを用いて演算処理を行う上では、実際の演算処理プロセスを工夫するのが好ましい。すなわち、上述の基本概念では、図1(a) に示すような基準三次元樹木モデルMを定義し、これをベクトル場Fに基づいて変形し、歪曲三次元樹木モデルM′を構築し、このモデルM′を所定の切断面Jで切断して木目柄パターンを得ている。もちろん、技術思想としての発明の基本概念によれば、上述のように、歪曲三次元樹木モデルM′を切断面Jで切断することになるのであるが、実際に演算処理を行う上では、必ずしも歪曲三次元樹木モデルM′の立体画像を生成する必要はない。最終的な目的は、切断面J上に平面画像としての木目柄パターンを得ることであり、三次元樹木モデルの立体画像を得ることではない。したがって、実際に画素値を求める演算を行う必要がある対象画素は、切断面J上の画素のみであり、それ以外の画素については画素値を求める演算を行う必要はない。要するに、効率的な演算を行う上では、図9のステップS1〜S4に示す前段プロセスも、ステップS5〜S7に示す後段プロセスも、いずれも切断面J上の点についてのみ行えば足りる。以下、効率的な演算処理を行うという観点から、図9に示す流れ図の各手順についての実用的な処理方法について触れておく。
【0046】
まず、ステップS1において基準三次元樹木モデルMを定義し、ステップS2においてベクトル場Fを定義する。そして、続くステップS3において、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素を再配置することにより歪曲三次元樹木モデルM′を定義することになるが、実用上は、基準三次元樹木モデルMを構成する全画素について再配置処理を行う必要はない。このステップS3では、少なくとも基準三次元樹木モデルMを構成する任意の画素に対して、一義的な再配置処理(変位処理)が定義されていれば足りる。具体的には、個々の画素に対して、ベクトル場Fを構成できるような座標変換式が一義的に定まっていれば足り、この時点で、全画素に対してこの座標変換式を適用して変換後の座標を求める必要はない。別言すれば、このステップS3では、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素を、何らかの規則に基づいて変位させることにより歪曲三次元樹木モデルM′を構成できるような変位条件が定まっていれば足り、実際に歪曲三次元樹木モデルM′の立体画像を演算によって求める必要はない。
【0047】
続くステップS4で行われる処理は、基本概念としては、歪曲三次元樹木モデルM′を切断面Jで切断する処理であり、三次元空間内において、歪曲三次元樹木モデルM′の立体画像と切断面Jの立体画像との交点位置を求める処理ということになるが、実用上は、次のような演算を行えば十分である。すなわち、図11に示すように、XYZ三次元座標系に所定の切断面Jを定義し、この切断面J上に有限の面積をもった画素Eの配列を定義する。そして、各画素Eに対して、次のような方法で特定の画素値を付与する。まず、1つの画素Eについての代表点P(x,y,z)を求める。これは、たとえば、正方形状の画素Eについて、その中心点を代表点Pとするように定めておけばよい。続いて、所定の座標変換に基づく変位を行うことにより代表点Pの位置に到達するような基準三次元樹木モデルM上の点Pを演算によって求め、この点Pの位置に定義された画素(基準三次元樹木モデルM上の画素)のもつ画素値を抽出し、この画素値を切断面J上の画素Eに付与すればよい。図11における点P,点Pは、それぞれ図10における点P,点P′に対応する点になり、上述した基本概念と全く等価な処理プロセスによって、画素Eの画素値が決定されたことになる。
【0048】
もっとも、図11に示す点Pは、基準三次元樹木モデルM上の点Pに対して、この点Pの位置について定義された座標変換ベクトルG→(P)を作用させて得られる変位後の点であるから、点Pの座標値に基づいて点Pの座標値を求める演算に比べて、点Pの座標値に基づいて点Pの座標値を逆算する演算は、やや複雑にならざるを得ない。そこで、実用上は、点Pの代わりに点Pを用いるようにするのが好ましい。点Pは、点Pに対して、この点Pの位置について定義された座標変換ベクトルG→(P)を作用させて得られる変位後の点であり、点Pの座標値に基づいて、点Pの座標値を単純な演算によって求めることが可能である。
【0049】
この方法によれば、各画素Eに対して、次のような方法で特定の画素値が付与されることになる。まず、1つの画素Eについての代表点P(x,y,z)を求める。そして、所定の木理を表現するために予め設定された座標変換式に基づく座標変換ベクトルG→(P)に基づいて点Pを変位させることにより点Pを求める。次に、基準三次元樹木モデルM内の点Pの位置に定義されている画素についての画素値を抽出し、この画素値を画素Eに付与する。この簡便な方法によれば、切断面J上に定義された各画素の代表点Pについてのみ座標変換の演算を行えばよく、しかもこの座標変換の演算はステップS3で定義した座標変換式を用いた単純な算術演算となるため、演算効率は非常に向上する。原理的には、この簡便な方法では、基準三次元樹木モデルMを座標変換式で変形して歪曲三次元樹木モデルM′を得る代わりに、上記座標変換式の逆関数に相当する変換式で歪曲三次元樹木モデルM′を得た形になるため、たとえば、図4に示すような螺旋木理を表現した場合、螺旋の向きが反転することになるが、実用上は問題は生じない。
【0050】
【実施例】
続いて、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
【0051】
§1 基準三次元樹木モデルMの定義
図9のステップS1において定義される基準三次元樹木モデルMは、所定の中心軸Cからの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素からなる立体画像モデルであるが、ここでは、この基準三次元樹木モデルMを定義するためのより具体的な実施例を示す。
【0052】
図12は、この実施例において定義された基準三次元樹木モデルMの具体例を示す斜視図である。このような三次元樹木モデルMは、
1年間の平均成長幅:D(単位mm)
年間成長幅のばらつきの最大値:Δ(単位mm)
これまでの成長年:year
なる年輪パラメータに基づいて定義されたものであり、図示のモデルは、year=4に設定したものである。斜視図には、1年目の成長幅D1、2年目の成長幅D2、3年目の成長幅D3、4年目の成長幅D4が示されている。ここで、i年目の成長幅Diは、
Di = D + Δ・RND
なる式で与えられる。なお、RNDは、−1≦RND≦+1の範囲をとる乱数である。
【0053】
この三次元樹木モデルMの実態は、三次元立体画像であり、三次元空間に分布した画素の集合である。したがって、各画素には所定の画素値が定義されることになり、このモデルでは、中心軸Cからの距離に基づいて周期的に変化するような画素値が与えられる。この実施例では、画素値を8ビットのデータで表現しており、各画素には、0〜255という256とおりの画素値のいずれかが与えられることになる。ただ、この段階で各画素に与えられる画素値は、実際に印刷の段階で濃度値として直接用いられる値ではなく、後にカラーパレットに基づく色調割り当てを行う上でのインデックスとして用いられる値である。すなわち、茶系統の256種類の色のそれぞれについての実際の画素値(ディスプレイ表示用の三原色R,G,Bもしくは印刷用の三原色C,M,Yの各濃度値)は別のカラーパレットに用意されており、この三次元樹木モデルMの定義段階で用いられる画素値は、256種類の色のうちのどれを割り当てるべきかを示すインデックスの役割を果たす値にすぎない。したがって、本実施例の説明では、この段階で各画素に定義される8ビットの画素値を、特に「ポテンシャル値」と呼ぶことにする。
【0054】
図13は、中心軸Cに対して垂直な面において、この三次元樹木モデルMの各画素に定義されるポテンシャル値Kを示す図である。1年目の成長幅D1の区間内では、成長方向に向かってポテンシャル値Kは0〜255と単調増加するが、2年目の成長幅D2の区間内に入ると、ポテンシャル値Kは再び0に戻り、やはり0〜255と単調増加する。このように、各年の成長幅の区間内において、ポテンシャル値Kは0〜255と単調増加することになる。図14は、このようなポテンシャル値Kの周期的な変化をグラフで示したものである。この実施例では、ポテンシャル値Kの単調増加はいずれも線形増加になっているが、必ずしも線形に増加させる必要はない。このモデルの特徴である「中心軸Cからの距離に基づいて周期的に変化するような画素値が与えられる」という意味は、このように、各年の成長幅区間ごとに、周期的な(必ずしも一定周期ではない)ポテンシャル値Kが与えられるという意味である。このようなポテンシャル値Kの定義は、本実施例では、中心軸Cの周囲360°のいずれの成長方向に関しても同様であり、また、中心軸Cに対して垂直ないずれの面についても同様である。もちろん、360°の各成長方向ごとに、あるいは、中心軸Cに対して垂直な各面ごとに、異なるポテンシャル値を定義してもかまわない。
【0055】
結局、このような三次元樹木モデルMの立体画像をコンピュータ上に構築すれば、この三次元空間内の任意の位置に存在する画素についてのポテンシャル値Kは、非常に単純な演算により求めることができる。もっとも、コンピュータ上での実際の演算を考えるならば、この三次元樹木モデルMは、有限の大きさをもった画素の集合からなる立体画像としてとらえるよりも、三次元空間内の任意の座標位置(体積が0の幾何学的な点)に特定のポテンシャル値Kが定義された三次元ポテンシャル場としてとらえる方が適切であろう。
【0056】
§2 歪曲三次元樹木モデルM′の定義
既に述べた本発明の基本概念によれば、図9のステップS2において、木理を表現するためのベクトル場Fが定義され、続くステップS3において、基準三次元樹木モデルMがベクトル場Fに基づいて変形され歪曲三次元樹木モデルM′が定義されることになる。しかしながら、実用上は、ステップS3において、実際に歪曲三次元樹木モデルM′の立体画像が演算によって求められるわけではなく、ステップS3では単に座標変換式が定義されるだけである。しかも、ステップS2において行われるベクトル場Fの定義処理と、ステップS3で行われる座標変換式の定義処理とは、実質的には表裏一体のものになる。
【0057】
たとえば、図2に示すように、まず、基準軸Aに沿った配向性を有する基準繊維束モデルを定義し、続いて、図3左に示すようなベクトル場F1を定義し、最後に、配向性がベクトル場F1に沿うように基準繊維束モデルを変形して図3右に示すような歪曲繊維束モデルを定義する、というプロセスを考える。このようなプロセスは、概念的には、粘度でできた立体モデルを捻ったり、捩じったりするプロセスとしてとらえることができるが、実際にコンピュータを用いて実行する場合には、立体モデルを捻ったり、捩じったりする処理は、座標変換の演算処理として行われることになる。すなわち、図2に示す基準繊維束モデルを構成する各点P,Q,…について、何らかの座標変換式を定義することができれば、歪曲繊維束モデルは一義的に定まることになる。別言すれば、たとえ座標変換の演算を実際に行わなくても、座標変換式さえ定義できていれば、必要なときにはいつでも点P,Q,…に基づいて点P′,Q′,…を演算により求めることができ、図3右に示す歪曲繊維モデルを得ることができるのであるから、基準三次元樹木モデルMについて適用すべき座標変換式を定義することは、歪曲三次元樹木モデルM′を定義することと等価であり、また、木理を表現するためのベクトル場Fを定義することとも等価である。
【0058】
以下、この座標変換式の定義について、より具体的な実施例を参照しながら説明しよう。図15は、波状木理に基づく座標変換の一例を示す概念図である。ここでは、中心軸CがZ軸に平行になるように、XYZ三次元座標系を定義し、基準三次元樹木モデルMを構成する任意の点P(図では、中心軸C上の点として示されているが、モデルM内の点であればどの点でもかまわない)を別な点P′に座標変換する方法を示してある。すなわち、もとの点P(x,y,z)の座標値x,y,zに対して、
x′=x+α・sin(β・z)
y′=y
z′=z
なる座標変換式を定義し、この座標変換式を用いて点P(x,y,z)を点P′(x′,y′,z′)に変換することになる。ここで、αは変位振幅を示す係数であり、βは変位周期を示す係数である。係数α,βとして定数を用いると、幾何学的に画一的な座標変換が行われることになるが、必要に応じて乱数を用いたり、関数を用いたりすれば、より柔軟な座標変換が可能になる。たとえば、乱数を用いる場合であれば、α=α+RND,β=β+RNDのような定義を行い、所定の初期値α,βに対して、たとえば、−1≦RND≦+1のように範囲が限定された乱数を作用させればよい。また、関数を用いるのであれば、α=α(z),β=β(z)のように、もとの座標値x,y,zを引数とする関数を定義すればよい。もちろん、各係数として、定数、乱数、関数の組み合わせを用いることも可能である。
【0059】
図9の流れ図におけるステップS1で定義した基準三次元樹木モデルMを構成する各点P(x,y,z)を、上述の座標変換式を用いて変換して点P′(x′,y′、z′)を得れば、この点P′の集合によって表現されるモデルは、図3に示すような波状木理の要素を含んだ歪曲三次元樹木モデルM′となる。
【0060】
一方、図14は、螺旋木理に基づく座標変換の一例を示す概念図である。ここでは、基準軸AがZ軸に一致するように、XYZ三次元座標系を定義し、基準三次元樹木モデルMを構成する任意の点P(x,y,z)に対して、
Figure 0004018760
なる座標変換式を定義し、この座標変換式を用いて点P(x,y,z)を点P′(x′,y′,z′)に変換している。ここで、θはXY平面上の螺旋の位置を示す係数(初期位相)であり、βはZ軸方向に関する螺旋の周期を示す係数である。係数θ,βとして定数を用いると、幾何学的に画一的な座標変換が行われることになるが、必要に応じて乱数を用いたり、関数を用いたりすれば、より柔軟な座標変換が可能になる。たとえば、係数βとして、β=β(z)なる関数を用いれば、Z座標値によって螺旋の旋回程度が異なるような螺旋木理の表現が可能になり、β=β(r)なる関数を用いれば、中心軸(Z軸)からの距離に応じて螺旋の旋回程度が異なるような螺旋木理の表現が可能になる。もちろん、各係数として、定数、乱数、関数の組み合わせを用いることも可能である。
【0061】
こうして、図9の流れ図におけるステップS1で定義した基準三次元樹木モデルMを構成する各点P(x,y,z)を、上述の座標変換式を用いて変換して点P′(x′,y′,z′)を得れば、この点P′の集合によって表現されるモデルは、図4に示すような螺旋木理の要素を含んだ歪曲三次元樹木モデルM′となる。
【0062】
結局、図9の流れ図におけるステップS2およびステップS3の処理は、この実施例の場合、上述した座標変換式を定義する処理と実質的に等価になる。なお、上述の例ではいずれも座標変換を変換式に基づいて行っているが、所定の変換テーブルを用意しておき、この変換テーブルに基づく座標変換を行うようにすることも可能である。ただ、変換テーブルではなく変換式による座標変換を行えば、最終的に得られる歪曲三次元樹木モデルM′全体を式として記述することができるので便利である。
【0063】
§3 木目柄パターンの抽出
既に述べた本発明の基本概念によれば、図9のステップS4で、歪曲三次元樹木モデルM′を切断面Jで切断し、切断面J上に木目柄パターンを抽出することになっているが、効率よい演算処理を行うために、本実施例では次のような方法により木目柄パターンを抽出している。
【0064】
いま、図17に示すようなXYZ三次元座標系に、基準三次元樹木モデルMが定義されているものとする。この実施例では、§1で説明したように、この基準三次元樹木モデルMを構成する各画素には、ポテンシャル値K(0≦K≦127)が定義されている。このXYZ座標系内に、二次元画素配列をもった切断面Jを定義する。具体的には、二次元画素配列の1画素あたりの実寸長(単位:mm/画素)と、切断面Jの大きさ(画素配列の縦横の画素数)と、三次元樹木モデルに対する位置(切断面Jの上辺と中心軸Cとの距離および下辺と中心軸Cとの距離)と、を定義することにより、切断面Jの定義を行っている。なお、切断面J上には、UV二次元座標系が定義されており、切断面J上の個々の画素は、その代表点(たとえば、画素の中心点)についてのUV座標値で示される。また、XYZ三次元座標系において切断面Jの位置が定まっているので、切断面J上のUV座標系で示された点P(u,v)は、所定の座標変換式に基づいてXYZ座標系で示された点P(x,y,z)に一義的に変換できる。
【0065】
ステップS4の処理を実行すると、図18に示すように、UV座標系上に定義された個々の画素E(代表点P(u,v)で特定される)に所定の画素値が付与され、このような画素の集合として木目柄パターンが抽出されることになる。ここで、個々の画素Eに付与すべき画素値は、次のようにして決定される。まず、着目する画素Eの代表点Pの座標値(u,v)を、XYZ座標系による座標値(x,y,z)に変換する。すなわち、図18に示すUV平面上の点P(u,v)が、図17に示すXYZ空間内の点P(x,y,z)に変換されることになる。続いて、前述の§2で説明した手法により定義された座標変換ベクトルG→(P)に基づいて、この点P(x,y,z)を点P′(x′,y′,z′)に変換する(具体的には、図15あるいは図16に示すような座標変換式によって座標変換ベクトルG→(P)が定義されていることになる)。そして、このXYZ空間内に定義されている基準三次元樹木モデルMにおける点P′(x′,y′、z′)の位置に定義されたポテンシャル値Kを抽出し、このポテンシャル値Kを着目画素Eの画素値として付与するのである。
【0066】
上述の方法によれば、歪曲三次元樹木モデルM′の立体画像を求める必要はない。基準三次元樹木モデルMと、切断面Jと、点Pから点P′への座標変換式と、が用意できれば、切断面J上の個々の画素Eに所定の画素値(ポテンシャル値K)を付与することが可能である。このため、必要な演算を最小限に抑えることができ、効率的な処理が可能になる。要するに、この方法の基本概念は、歪曲三次元樹木モデルM′を切断面Jで切断するというよりは、むしろ、切断面Jを構成する各点Pをそれぞれ点P′へ変位させ、変位後の点P′から構成される切断面によって基準三次元樹木モデルMを切断する処理ということができる(もちろん、技術思想としては、歪曲三次元樹木モデルM′を切断面Jで切断する処理と等価である。)。
【0067】
なお、この時点で各画素Eに付与される画素値は、実際に印刷の段階で濃度値として直接用いられる値ではなく、0〜255の値をとるポテンシャル値Kである。そこで、実際の木目柄パターン画像を得るためには、このポテンシャル値Kを実際の画素値に変換する処理を行う必要がある。このような変換処理は、予め用意されたカラーパレットを利用した色調割当処理によって行うことができる。この実施例では、茶系統の256種類の色のそれぞれについての実際の画素値(ディスプレイ表示用の三原色R,G,Bもしくは印刷用の三原色C,M,Yの各濃度値)をカラーパレットに用意しており、個々の画素Eに付与されたポテンシャル値Kをインデックスとしてこのカラーパレットを参照することにより、各画素に三原色R,G,Bもしくは三原色C,M,Yの濃度割合で示された画素値を付与している。
【0068】
§4 画素値の修正
さて、これまで述べた§3までの処理は、図9の流れ図に示す前段プロセスに相当する処理であり、一応、木理の要素を含んだ木目柄パターンが切断面J上に得られたことになる。ここでは、この木目柄パターンに対して、木理に基づく光沢模様を付加する後段プロセスの実施例を説明する。
【0069】
まず、図9のステップS5の処理では、図18に示す切断面J上の各画素Eの代表点P(u,v)について、それぞれその位置における繊維方向ベクトルF→が求められる。具体的には、次のような処理が行われる。まず、着目する画素Eの代表点Pの座標値(u,v)を、XYZ座標系による座標値(x,y,z)に変換する。すなわち、図18に示すUV平面上の点P(u,v)が、図17に示すXYZ空間内の点P(x,y,z)に変換される。続いて、この点P(x,y,z)に対して、座標変換ベクトルG→(P)を適用して(所定の座標変換式を適用して)、変位点P′(x′,y′,z′)を求める。一方、点P(x,y,z)に対して、所定の隣接間隔ΔzだけZ軸方向に離れた隣接点Q(x,y,z+Δz)を考慮し、この隣接点Q(x,y,z+Δz)に対して、座標変換ベクトルG→(Q)を適用して(所定の座標変換式を適用して)、変位点Q′(x,y,z+Δz)を求める。そして、変位点P′から変位点Q′へ向かうベクトルを、画素Eの代表点P(u,v)についての繊維方向ベクトルF→(P)として求める。これは、既に図10を参照しながら説明したとおりである。かくして、切断面J上に定義された個々の画素Eについて、それぞれ所定の繊維方向ベクトルF→が定義されることになる。
【0070】
続いて、図9のステップS6の処理として、切断面J上に定義された個々の画素Eについて、それぞれ光線方向ベクトルL→が定義される。この実施例では、図7のモデルで示したように、切断面Jの上方に平行光源として仮想光源20を設定しているため、光線方向ベクトルL→は、いずれの画素Eについても切断面J(すなわちUV平面)に対して垂直な方向になる。
【0071】
最後に、図9のステップS7の処理により、各画素Eの画素値に対して修正が行われる。この実施例では、まず、個々の画素Eについて、それぞれ定義された繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなす角φ(ベクトル交錯角)に基づいて、
W=a・sin|φ|+c
なる式で鏡面反射光強度Wを演算する。ここで、a,b,cは係数であり、この実施例では所定の定数を用いているが、必要に応じて乱数や関数を用いるようにしてもよい。既に述べたように、鏡面反射光強度Wとベクトル交錯角φとの間には、たとえば、図8のグラフに示すような相関関係がみられる。もちろん、実際には、樹木の種類や固体差によって、グラフの形状はさまざまであるが、全体的な傾向はいずれも近似したものになる。上述の式は、このような全体的な傾向を数式表現した一例を示すものであり、係数a,b,cの設定により、グラフの形状を自由に調節することが可能である。
【0072】
具体的には、係数aは鏡面反射光強度W全体についての強度を示す係数となり、係数aの値を大きく設定すれば、それだけ鏡面反射光成分が木目柄パターン上に多く取り入れられることになる。本明細書では、拡散反射光成分(図9の前段プロセスで求まる画素値)を主たる画素値と位置づけ、鏡面反射光成分を従たる補正値と位置づけることにより、「鏡面反射光成分に基づく修正を加える」という表現を行っているが、両成分を対等に取り扱えば、この修正処理は「拡散反射光成分と鏡面反射光成分とを合成して最終的な画素値を決定する処理」というべき処理であり、係数aは、合成を行う際の両成分の配合比率を定めるパラメータとなる。また、係数bは、鏡面反射の広がりを示す係数であり、大きいほど広がりの小さなするどい鏡面反射が得られることになる。係数cは、ベクトル交錯角φ=0のときに得られる鏡面反射光強度Wの最小値を与える係数である。もっとも、上述の例のように、この強度Wを画素値を修正するための補正値として用いる上では、c=0に設定しておけばよい。
【0073】
こうして、個々の画素Eについて、それぞれ所定の鏡面反射光強度Wが求まったら、この強度Wを用いて画素値の修正処理を行う。この修正処理は、たとえば、加色混合系の三原色(いわゆる光の三原色R,G,B)の画素値を用いている場合には、各画素値に対してそれぞれ鏡面反射光強度Wに応じた補正値を加算する修正を行い、減色混合系の三原色(いわゆる色の三原色C,M,Y)の画素値を用いている場合には、各画素値に対してそれぞれ鏡面反射光強度Wに応じた補正値を減算することにより修正を行うようにすればよい。
【0074】
たとえば、各画素Eが、それぞれ8ビットからなる画素値R,G,Bで表現されていたとする(すなわち、0≦R≦255,0≦G≦255,0≦B≦255)。この場合、もとの画素値(R,G,B)に対して、鏡面反射光強度Wをそのまま補正値として用い、
R′=R+W
G′=G+W
B′=B+W
なる演算を行って新たな画素値(R′,G′,B′)を得るような修正を行えばよい。鏡面反射光強度Wに応じた白色成分が付加されることになり、鏡面反射光による光沢感が表現できる。なお、上述の補正演算により、新たな画素値R′,G′,B′が8ビットで表現できなくなってしまう場合(すなわち、補正演算の結果が255を越えてしまう場合)は、新たにスケーリングをしなおすか、あるいは、単に255を越えた場合には画素値=255と飽和させるような処理を行えばよい。
【0075】
また、各画素Eが、画素値C,M,Yで表現されていた場合には、
C′=C−W
M′=M−W
Y′=Y−W
なる演算を行って新たな画素値(C′,M′,Y′)を得るような修正を行えば、やはり鏡面反射光強度Wに応じた白色成分が付加されることになり、鏡面反射光による光沢感が表現できる。この場合も、補正演算により新たな画素値C′,M′,Y′が8ビットで表現できなくなってしまう場合(すなわち、補正演算の結果が負になってしまう場合)は、新たにスケーリングをしなおすか、あるいは、単に画素値が負になった場合には画素値=0と飽和させるような処理を行えばよい。
【0076】
§5 揺らぎ成分の付加
これまで述べた実施例では、平面状の切断面Jを用いた切断を行っているが、切断面Jは必ずしも平面にする必要はない。特に、基準三次元樹木モデルMの年輪周期に比べて十分細かな皺状の凹凸が形成された切断面(ここでは、有皺切断面JJと呼ぶ)を用いて切断を行うと、揺らぎの要素を含んだ木目柄パターンを得ることができる。図19は、このような有皺切断面JJを用いて歪曲三次元樹木モデルM′を切断するプロセスを示す概念図である。有皺切断面JJとしては、二次元フラクタル場を利用して皺を生成した面を用いると、自然の揺らぎを表現することができるので好ましい。二次元フラクタル場は、所定のスカラー値を自己相似的に二次元平面上の各点に定義したスカラー場である。たとえば、UV平面上にこのような二次元フラクタル場を定義すれば、このUV平面上の任意の点N(u,v)について、それぞれ所定のスカラー値Sが定義されることになる。しかもこのスカラー値Sの空間的な分布は、自己相似的となっており、マクロ的に全体を観察しても、ミクロ的にその一部分を観察しても、スカラー値の分布の複雑さは同じになる。そこで、UV平面上の各点を、それぞれに定義されたスカラー値Sに対応する寸法だけUV平面に垂直な方向に変位させれば、自然の揺らぎをもった有皺切断面JJを定義することができる。このような自然の揺らぎをもった有皺切断面JJによって、歪曲三次元樹木モデルM′を切断し、切断面上の画素によって木目柄パターンを形成するようにすれば、パターン自身に自然の揺らぎが含まれることになり、自然に近い風合いをもった木目柄パターンを得ることが可能になる。
【0077】
上述のように、切断面側に揺らぎの要素を付加する代わりに、歪曲三次元樹木モデルM′側に揺らぎの要素を付加しても同じ結果が得られる。図20は、このような揺らぎを含む歪曲三次元樹木モデルM″を、UV平面からなる切断面Jによって切断するプロセスを示す概念図である。三次元モデルである歪曲三次元樹木モデルM″側に揺らぎの要素が付加してあるため、切断面Jとしては通常の平面を用いればよい。歪曲三次元樹木モデルM′に基づいて揺らぎを含む歪曲三次元樹木モデルM″を定義するためには、所定の揺らぎ場に基づく座標変換を行えばよい。
【0078】
この実施例では、図21に示すような3組の三次元フラクタル場I,II,III を揺らぎ場として利用して、この座標変換を行っている。ここで、各フラクタル場I,II,III は、いずれも所定のスカラー値を自己相似的に三次元空間内の各点に定義したスカラー場であり、たとえば、所定の座標値(x,y,z)で示される点P(x,y,z)について、各フラクタル場では、それぞれスカラー値S1,S2,S3が定義されている。そこで、たとえば、図19に示す歪曲三次元樹木モデルM′内のすべての点P(x,y,z)を、上記フラクタル場を用いて、新たな座標値(x+S1,y+S2,z+S3)で示される点へと変位させる作業を行えば、図19に示すモデルM′を、図20に示すモデルM″に変換することができる。変換後のモデルM″は、フラクタル場に基づく自然の揺らぎを含んでいるため、これを切断面Jで切断することによって得られる木目柄パターンも、自然の揺らぎを含んだものになる。
【0079】
以上、フラクタル場を利用して自然の揺らぎの成分を付加する手法の基本概念を説明した。しかしながら、コンピュータを用いた実際の演算処理を行う上では、歪曲三次元樹木モデルM′や揺らぎを含む歪曲三次元樹木モデルM″といった立体画像を演算によって求めるのは効率的ではない。実際には、基準三次元樹木モデルMと、この基準三次元樹木モデルMから歪曲三次元樹木モデルM′への第1の座標変換と、この歪曲三次元樹木モデルM′から揺らぎを含む歪曲三次元樹木モデルM″への第2の座標変換と、を定義し、切断面J上の画素Eの代表点P(x,y,z)に対して第1の座標変換を行って点P′(x′,y′,z′)を求め、更にこの点P′に対して第2の座標変換を行って点P″(x″,y″,z″)を求め、基準三次元樹木モデルM内の点P″の位置に定義された画素値を、画素Eに付与する処理を行えばよい。第1の座標変換は、たとえば、図15または図16に示すような座標値(x,y,z)から座標値(x′,y′,z′)への座標変換式で定義される。また、第2の座標変換は、たとえば、図21に示すような三次元フラクタル場I,II,III を用いて、座標値(x′,y′,z′)で表される位置におけるスカラー値S1,S2,S3を求め、
x″=x′+S1
y″=y′+S2
z″=z′+S3
なる演算式により、座標値(x′,y′,z′)から座標値(x″,y″,z″)への座標変換を行えばよい。
【0080】
図22は、上述した点Pから点P′への座標変換および点P′から点P″への座標変換の様子を示す概念図である。ここでは、各点を原点Oからの位置ベクトルを用いて表現している。すなわち、点P(x,y,z)は位置ベクトルP→で示され、点P′(x′,y′,z′)は位置ベクトルP′→で示され、点P″(x″,y″,z″)は位置ベクトルP″→で示されている。点Pから点P′への変換を示す座標変換ベクトルG→(P→)は、点Pの位置に定義された第1の座標変換(木理を表現するための座標変換)を示し、点P′から点P″への変換を示す座標変換ベクトルS→(P→)は、点Pの位置に定義された第2の座標変換(揺らぎを表現するための座標変換)を示す。したがって、最終的に求められる点P″の位置ベクトルP″→は、
P″→ = P→ + G→(P→) + S→(P→)
なるベクトル演算式によって表され、切断面J上において、位置ベクトルP→で示される位置に存在する画素Eに対しては、基準三次元樹木モデルM内において、位置ベクトルP″→で示される位置に定義された画素値が付与されることになる。また、この画素Eについての繊維方向ベクトルF→(P→)は、点P(x,y,z)に対して所定の隣接点Q(x,y,z+Δz)を考慮し、
Q″→ = Q→ + G→(Q→) + S→(Q→)
なるベクトル演算式によって位置ベクトルQ″→を求め、
F→(P→) = Q″→ − P″→
なるベクトル演算によって求めることができる。
【0081】
§6 本発明に係るパターン作成装置の基本構成
図23は、本発明の一実施例に係る木目柄パターン作成装置の基本構成を示すブロック図である。ここで、パラメータ設定手段101は、パターン作成に必要な所定のパラメータを設定する手段であり、この実施例では、年輪パラメータ、木理パラメータ、揺らぎパラメータが、このパラメータ設定手段101によって設定されることになる。乱数発生手段102は、所定の数値範囲内の乱数を発生する手段であり、たとえば、−1≦RND≦+1の範囲をとる一様乱数RNDを発生する機能を有する。この乱数発生手段102により発生した乱数を用いることにより、自然物の不規則性を表現したパターンを得ることが可能になる。
【0082】
基準三次元樹木モデル生成手段103は、パラメータ設定手段101において設定された年輪パラメータ(図12参照)と、乱数発生手段102において発生された乱数とに基づき、三次元空間内の所定の中心軸Cからの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルMを生成する機能を有する。なお、この実施例では、この時点で定義される画素値として8ビットで表現されるポテンシャル値Kを用いている。
【0083】
木理に基づく座標変換定義手段104は、パラメータ設定手段101において設定された木理パラメータ(波状木理,螺旋木理といった木理のタイプを示すパラメータや、具体的な変換式に用いられる係数値α,βなど)と乱数発生手段102において発生された乱数とに基づき、中心軸Cに対する配向性が部分ごとに異なるベクトル場Fを定義し、基準三次元樹木モデルMを構成する各画素がベクトル場Fに沿って再配置されるように各画素を変位させるための座標変換を定義する機能を有する。
【0084】
揺らぎに基づく座標変換定義手段105は、パラメータ設定手段101において設定された揺らぎパラメータ(用いる揺らぎのタイプや揺らぎの最大値など)と乱数発生手段において発生された乱数とに基づき揺らぎ場を発生し、この揺らぎ場に基づいて、基準三次元樹木モデルMを構成する各点に対する座標変換を定義する機能を有する。この実施例では、三次元フラクタル場を揺らぎ場として利用している。コンピュータを用いたフラクタル場の発生方法としては、たとえば、ランダム中点変位法など公知の一般的な方法を用いればよい。
【0085】
切断面設定手段106は、基準三次元樹木モデル生成手段103で生成された基準三次元樹木モデルMを切断するための切断面Jを定義する手段であり、この実施例では、切断面Jのサイズ(縦横の長さ)、上辺と中心軸Cとの距離、下辺と中心軸Cとの距離を設定することにより、UV平面上の切断面Jを定義している。また、この切断面J上に定義される画素配列の解像度は、1画素あたりの実寸長として設定される。
【0086】
画素値設定手段107は、いわゆるカラーパレットとして機能する手段であり、この実施例では、8ビットのポテンシャル値Kをインデックスとして、256種類の色についての実画素値(三原色R,G,BもしくはC,M,Yの各濃度値)が設定されている。
【0087】
画素値付与手段108は、次のような手順により、切断面J上に定義された各画素Eに対して、所定の実画素値を付与する処理を実行する。まず、画素Eの位置を示す代表点Pに対して、木理に基づく座標変換定義手段104で定義された座標変換と、揺らぎに基づく座標変換定義手段105で定義された座標変換と、の双方の座標変換を行い、座標変換後の点P″について基準三次元樹木モデルM内に定義されている画素値(ポテンシャル値K)を抽出し、これを画素Eに付与する。続いて、画素値設定手段107を参照することにより、各画素Eに付与されたポテンシャル値Kを実画素値に変換する。最後に、各画素Eについて、繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とを求め、両ベクトルの交錯角φに基づいて、その画素Eについての鏡面反射光強度Wを求め、この強度Wに基づいてその画素Eに付与された実画素値に対する修正を行う。具体的な修正処理方法は、既に述べたとおりである。
【0088】
画像出力手段109は、こうして修正された実画素値を有するUV平面上の画素配列を、ラスター画像データとして出力する機能を有する。最終的に出力されるラスター画像データは、木理の情報を有し、かつ、自然な揺らぎの成分を含んだ木目柄パターンとなる。実際には、画像出力手段109から出力されるラスター画像データに基づいて、印刷やエンボス加工が行われることになる。
【0089】
なお、以上述べた各構成要素101〜109は、実際にはコンピュータを利用して実現されるものである。したがって、図23では説明の便宜上、これらの各構成要素をそれぞれ機能ブロックとして分けて示しているが、実際には、これらの各構成要素は物理的に区別されうるものではない。
【0090】
最後に、上述した木目柄パターンの作成装置を用いた木目柄パターン作成処理手順の概要を、図24の流れ図に基づいて説明する。まず、ステップS11において、パラメータ設定手段101に対する種々のパラメータ設定、切断面設定手段106に対する切断面の設定、画素値設定手段107に対する実画素値の設定が行われる。この作成装置に対するオペレータの実質的な入力操作は、このステップS11の設定操作により完了し、ステップS12以下の処理は、コンピュータ内部で自動的に実行される。
【0091】
まずステップS12において、三次元樹木モデルが生成される。すなわち、基準三次元樹木モデル生成手段103において、設定された年輪パラメータに基づいて基準三次元樹木モデルMが定義されることになる。続くステップS13では、木理に基づく座標変換定義手段104において、木理に基づく座標変換(位置ベクトルP→で示される点Pについての座標変換ベクトルG→(P→))が定義され、ステップS14では、揺らぎに基づく座標変換手段105において、揺らぎに基づく座標変換(位置ベクトルP→で示される点Pについての座標変換ベクトルS→(P→))が定義される。
【0092】
続くステップS15〜ステップS20までの処理は、すべて画素値付与手段108で実行される処理である。まず、ステップS15において、切断面J上に定義された画素配列の中の特定の1画素を示すパラメータu,vが、それぞれ初期値u,vに設定される。このパラメータu,vは、UV座標系上の座標値であり、特定の画素Eの中心点に定義された代表点P(u,v)の座標値を示すものである。続いて、ステップS16において、このUV座標系上の代表点P(u,v)が、XYZ座標系上の点P(x,y,z)に変換される(ここでは、XYZ座標系上の点Pを、その位置ベクトルP→で示してある)。そして、ステップS17において、この点Pおよびその隣接点Qに対して、
P″→ = P→ + G→(P→) + S→(P→)
Q″→ = Q→ + G→(Q→) + S→(Q→)
なるベクトル演算式を実行し、位置ベクトルP″→,Q″→を求め、更に、
F→(P→) = Q″→ − P″→
なるベクトル演算によって、繊維方向ベクトルF→(P→)を求める。そして、この繊維方向ベクトルF→(P→)と、切断面Jに対して垂直な方向に定義された光源方向ベクトルL→(P→)と、のなすベクトル交錯角φを用いて、
W=a・sin|φ|+c
なる演算により、鏡面反射光強度Wを求める。そして、ステップS18では、代表点P(u,v)で示される画素Eについて、次のようにして画素値を定義する。すなわち、基準三次元樹木モデルM内における点P″(位置ベクトルP″で示される点)に定義された画素値(ポテンシャル値K)に基づいて、画素値設定手段107に設定されたカラーパレットを参照して実画素値を求め、この実画素値に対して、鏡面反射光強度Wを用いた修正を行う。これにより、特定の1画素Eについての実画素値が定義されたことになる。
【0093】
以上の処理を、ステップS19において全画素について完了したと判断されるまで、ステップS20においてパラメータu,vの値を更新しながら、個々の画素について繰り返し実行し、全画素についての処理が完了したら、ステップS21において画像出力を行えばよい。
【0094】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係る木目柄パターンの作成方法によれば、天然木のもつ木理の要素を考慮した自然な木目柄パターンあるいは意匠性の高い木目導管断面パターンを、人為的に発生させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る木目柄パターンの作成方法の基本的な手法を示す概念図である。
【図2】繊維束がすべて基準軸Aの方向を向いた基準繊維束モデルを示す斜視図である。
【図3】繊維束の方向が波状木理に基づいて変化する歪曲繊維束モデルを示す斜視図である。
【図4】繊維束の方向が螺旋木理に基づいて変化する歪曲繊維束モデルを示す斜視図である。
【図5】図2に示す基準繊維束モデルを木口面で切断した状態を示す斜視図である。
【図6】図2に示す基準繊維束モデルを柾目面で切断した状態を示す斜視図である。
【図7】一般的な材木板における繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→との関係を示す側断面図である。
【図8】一般的な材木板におけるベクトル交錯角φ(繊維もぐり角ξ)と鏡面反射光強度Wとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る木目柄パターンの作成方法の基本手順を示す流れ図である。
【図10】図9のステップS5において繊維方向ベクトルF→を定義する具体的な手法を説明する図である。
【図11】図9にステップS4におけるより効率的な演算処理の方法を示す図である。
【図12】本発明の一実施例において定義された基準三次元樹木モデルMの具体例を示す斜視図である。
【図13】中心軸Cに対して垂直な面において、三次元樹木モデルMの各画素に定義されるポテンシャル値Kを示す平面図である。
【図14】三次元樹木モデルMにおいて定義されるポテンシャル値Kの周期的な変化の一例を示すグラフである。
【図15】本発明で利用される波状木理に基づく座標変換の一例を示す概念図である。
【図16】本発明で利用される螺旋木理に基づく座標変換の一例を示す概念図である。
【図17】基準三次元樹木モデルMを用いて、切断面J上に木目柄パターンを抽出する方法を示す斜視図である。
【図18】図17に示す切断面J上に抽出された木目柄パターンを示す平面図である。
【図19】図17に示す切断プロセスで用いた切断面Jの代わりに、有皺切断面JJを用いた切断プロセスを示す斜視図である。
【図20】木理に基づく座標変換と揺らぎに基づく座標変換との双方を行って得られた揺らぎを含む歪曲三次元樹木モデルM″に対して、切断面Jによる切断を行うプロセスを示す斜視図である。
【図21】揺らぎに基づく座標変換を行うために用いられる3組の三次元フラクタル場を示す概念図である。
【図22】基準三次元樹木モデルM内の任意の点P(x,y,z)が、木理を表現するための座標変換により点P′(x′,y′,z′)に変位し、更に、揺らぎを表現するための座標変換により点P″(x″,y″,z″)に変位する状態を示す概念図である。
【図23】本発明の一実施例に係る木目柄パターン作成装置の基本構成を示すブロック図である。
【図24】図23に示す作成装置を用いた木目柄パターン作成処理手順の概要を示す流れ図である。
【符号の説明】
10…材木板
20…仮想光源(面光源)
101…パラメータ設定手段
102…乱数発生手段
103…基準三次元樹木モデル生成手段
104…木理に基づく座標変換定義手段
105…揺らぎに基づく座標変換定義手段
106…切断面設定手段
107…画素値設定手段
108…画素値付与手段
109…画像出力手段
A…基準軸
B…基準軸に直交する方向
C…中心軸
D…一年間の平均成長幅
D1〜D4…一年間の成長幅
E…画素
F…繊維
F→,F1→,F2→…繊維方向ベクトル
G→…木理を表現するための座標変換ベクトル
J…切断面
JJ…有皺切断面
K…ポテンシャル値
L→…光線方向ベクトル
M…基準三次元樹木モデル
M′…歪曲三次元樹木モデル
M″…揺らぎを含む歪曲三次元樹木モデル
P,P′,P″…三次元空間内の点
Q,Q′,Q″…三次元空間内の点
S→…揺らぎを表現するための座標変換ベクトル
t…成長時期
W…鏡面反射光強度
φ…ベクトル交錯角
ξ…繊維もぐり角

Claims (14)

  1. 木目柄パターンを人為的に作成する方法であって、
    所定の中心軸からの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルを三次元空間上に定義する段階と、
    第1の点を第2の点へ移動させる座標変換ベクトルを、前記三次元空間上の任意の点をそれぞれ前記第1の点として、前記三次元空間上の任意の点についてそれぞれ定義する段階と、
    前記基準三次元樹木モデルを構成する各画素が前記座標変換ベクトルによる移動によって再配置されるように前記各画素を変位させ、変位後の画素により歪曲三次元樹木モデルを定義する段階と、
    前記歪曲三次元樹木モデルを所定の切断面によって切断したときに切断面に位置する画素の集合によって構成されるパターンを木目柄パターンとして抽出する段階と、
    を有することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  2. 木目柄パターンを人為的に作成する方法であって、
    所定の中心軸からの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルを三次元空間上に定義する段階と、
    第1の点から第2の点へ向かう座標変換ベクトルを、前記三次元空間上の任意の点をそれぞれ前記第1の点として、前記三次元空間上の任意の点についてそれぞれ定義する段階と、
    前記基準三次元樹木モデルが定義された空間内に所定の切断面を定義し、この切断面上の各位置に、この各位置を前記第1の点とする前記座標変換ベクトルの前記第2の点の位置に存在する前記基準三次元樹木モデル内の画素を割り当て、前記切断面上に割り当てられた画素の集合によって構成されるパターンを木目柄パターンとして抽出する段階と、
    を有することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  3. 請求項1または2に記載の作成方法において、
    基準三次元樹木モデルについて、所定の着目点Pと、この着目点Pに関して中心軸に沿った方向に隣接する隣接点Qとを考慮し、前記着目点Pを当該位置に定義された座標変換ベクトルによって移動することにより得られる変位点P′と、前記隣接点Qを当該位置に定義された座標変換ベクトルによって移動することにより得られる変位点Q′とを求め、前記変位点P′から前記変位点Q′へ向かうベクトルを、前記着目点Pの位置における繊維方向ベクトルF→と定義する段階と、
    切断面に対して仮想光源を定義し、この仮想光源に基づいて、前記切断面上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義する段階と、
    木目柄パターンを構成する前記切断面上の各画素の画素値を、前記繊維方向ベクトルF→と前記光線方向ベクトルL→とのなす角φに依存する鏡面反射光成分によって修正する段階と、
    を更に有することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  4. 請求項3に記載の作成方法において、
    中心軸がXYZ三次元座標系におけるZ軸方向を向くような基準三次元樹木モデルを定義し、予め所定の隣接間隔Δzを設定しておき、座標値P(x,y,z)をもった着目点Pと、座標値Q(x,y,z+Δz)をもった隣接点Qとを考慮することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  5. 請求項3または4に記載の作成方法において、
    繊維方向ベクトルF→と光線方向ベクトルL→とのなすベクトル交錯角φと、所定の係数a,b,cと、を用いて、鏡面反射光強度Wを、
    W=a・sin|φ|+c
    なる式で定義し、各画素の画素値を鏡面反射光強度Wを用いて修正することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  6. 請求項5に記載の作成方法において、
    加色混合系の三原色についての画素値を用いている場合には、各画素値に対して鏡面反射強度Wに応じた補正値を加算することにより修正を行い、
    減色混合系の三原色についての画素値を用いている場合には、各画素値に対して鏡面反射強度Wに応じた補正値を減算することにより修正を行うことを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の作成方法において、
    αおよびβを所定の定数、乱数もしくは関数として、
    x′=x+α・sin(β・z)
    y′=y
    z′=z
    なる座標変換式を定義し、この座標変換式を用いて第1の点P(x,y,z)を第2の点P′(x′,y′,z′)に移動させる座標変換ベクトルを定義することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の作成方法において、
    θ0およびβを所定の定数、乱数もしくは関数として、
    x′=r・cos(θ+θ)
    y′=r・sin(θ+θ)
    z′=z
    ただし r=(x+y1/2
    θ=β・z
    なる座標変換式を定義し、この座標変換式を用いて第1の点P(x,y,z)を第2の点P′(x′,y′,z′)に移動させる座標変換ベクトルを定義することを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の作成方法において、
    所定のスカラー値を自己相似的に二次元平面上の各点に定義した二次元フラクタル場を用意し、
    この二次元フラクタル場の各点のもつスカラー値に応じて、平面上の各点を所定方向に変位させることにより有皺面を生成し、
    この有皺面を切断面として用いることを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の作成方法において、
    所定のスカラー値を自己相似的に三次元空間内の各点に定義した三次元フラクタル場を用意し、
    三次元空間上の各点に定義された個々の座標変換ベクトルが前記三次元フラクタル場に基づく揺らぎ成分を含むように、個々の座標変換ベクトルの定義を行うことを特徴とする木目柄パターンの作成方法。
  11. 木目柄パターンを人為的に作成する装置であって、
    パターン作成に必要な所定のパラメータを設定するパラメータ設定手段と、
    前記パラメータ設定手段において設定されたパラメータに基づき、所定の中心軸からの距離に基づいて周期的に変化する画素値をもった多数の画素から構成される基準三次元樹木モデルを生成する基準三次元樹木モデル生成手段と、
    前記パラメータ設定手段において設定されたパラメータに基づき、前記基準三次元樹木モデルを構成する各画素を再配置して歪曲三次元樹木モデルが得られるように、前記各画素を変位させるための第1の座標変換を定義する第1の座標変換定義手段と、
    前記基準三次元樹木モデルを切断するための切断面を設定する切断面設定手段と、
    前記切断面上に位置する点に対して前記第1の座標変換を行い、前記第1の座標変換後の点について前記基準三次元樹木モデルで定義されている画素値を、前記切断面上のもとの点に付与する画素値付与手段と、
    画素値が付与された前記切断面上の点によって構成されるパターンを木目柄パターンを示す画像として出力する画像出力手段と、
    を備えることを特徴とする木目柄パターンの作成装置。
  12. 請求項11に記載の装置において、
    パラメータ設定手段において設定されたパラメータに基づき、所定のスカラー値を自己相似的に三次元空間内の各点に定義した三次元フラクタル場を発生し、この三次元フラクタル場に基づいて、三次元樹木モデルを構成する各点に対する第2の座標変換を定義する第2の座標変換定義手段を更に設け、
    画素値付与手段が、第1の座標変換および第2の座標変換の双方を行い、これら双方の座標変換を行った後の点について定義されている画素値を、切断面上に位置するもとの点に対して付与するようにしたことを特徴とする木目柄パターンの作成装置。
  13. 請求項11に記載の装置において、
    基準三次元樹木モデルについて、所定の着目点Pと、この着目点Pに関して中心軸に沿った方向に隣接する隣接点Qとを考慮し、「前記着目点Pに対して第1の座標変換を施して得られる変位点P′」と、「前記隣接点Qに対して第1の座標変換を施して得られる変位点Q′」とを求め、「前記変位点P′から前記変位点Q′へ向かうベクトル」を、前記着目点Pの位置における繊維方向ベクトルF→と定義し、
    切断面に対して定義された仮想光源に基づいて、前記切断面上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義し、
    画素値付与手段が、前記繊維方向ベクトルF→と前記光線方向ベクトルL→とのなす角φに依存する鏡面反射光成分に基づいて、付与すべき画素値に修正を加える機能を有することを特徴とする木目柄パターンの作成装置。
  14. 請求項12に記載の装置において、
    基準三次元樹木モデルについて、所定の着目点Pと、この着目点Pに関して中心軸に沿った方向に隣接する隣接点Qとを考慮し、「前記着目点Pに対して第1の座標変換および第2の座標変換の双方を施して得られる変位点P″」と、「前記隣接点Qに対して第1の座標変換および第2の座標変換の双方を施して得られる隣接点Q″」とを求め、「前記変位点P″から前記変位点Q″へ向かうベクトル」を、前記着目点Pの位置における繊維方向ベクトルF→と定義し、
    切断面に対して定義された仮想光源に基づいて、前記切断面上の各位置における光線方向ベクトルL→を定義し、
    画素値付与手段が、前記繊維方向ベクトルF→と前記光線方向ベクトルL→とのなす角φに依存する鏡面反射光成分に基づいて、付与すべき画素値に修正を加える機能を有することを特徴とする木目柄パターンの作成装置。
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