JPH10286775A - カッター用基板 - Google Patents

カッター用基板

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JPH10286775A
JPH10286775A JP9779597A JP9779597A JPH10286775A JP H10286775 A JPH10286775 A JP H10286775A JP 9779597 A JP9779597 A JP 9779597A JP 9779597 A JP9779597 A JP 9779597A JP H10286775 A JPH10286775 A JP H10286775A
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正智 手島
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Noritake Diamond Industries Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダイヤモンドブレード等のカッターの基板に
発生する切断時の振動を効果的に抑制して騒音を低減さ
せる。 【解決手段】 3層以上の金属プレート1,2,3をス
ポット溶接によって互いに微小な隙間を持たせて積層一
体化して基板を構成し、積層方向の端部に位置する2枚
の金属プレートを除く内プレート1にはその振動モード
における振動の節部分を溶接線とし且つ振動の腹に相当
する部分には孔1bを開け、この孔1bに含まれる部分
を空気層として内在させ、金属プレートどうしの間の隙
間及び空気層によって切断時に刃先から伝達される振動
を緩衝可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえばポータブ
ル式の電動工具に取り付けられ乾式または湿式でコンク
リートや石材を切断するダイヤモンドブレード等のカッ
ター用の基板に係り、特に切断時に発生する騒音を効果
的に抑制できるようにした基板の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、コンクリートや各種石材の切
断には、円形ディスク状の鋼製の基板の外周にダイヤモ
ンドチップや超硬チップを固着したダイヤモンドブレー
ド等のカッターが利用されている。このダイヤモンドブ
レード等のカッターは、高速で回転させて被削材を切断
するので、この切断時に刃先で発生する被削材から受け
る切削負荷及び衝撃によって大きな騒音を発生する。
【0003】このような騒音の発生を抑えるためには、
チップを保持している基板の構造に改良を加えることが
一つの有効な対応策であり、たとえば特許第25191
66号公報に記載のものがある。
【0004】これは、多数の孔を開けた鋼製の内側プレ
ートを、複数のスリットを切開するとともにこれらのス
リット部の全体に合成樹脂またはゴム等の弾性部材を充
填した2枚の外側プレートで挟んで接合した3層構造と
したものである。そして、外側プレートの接合によって
内側プレートに開けた孔はこれらの外側プレートによっ
て閉じられて空気層を形成し、この空気層によって振動
を吸収できるようにしている。また、この空気層による
振動の吸収のほかに、内側プレートの孔及び外側プレー
トのスリットの分布の相違によってそれぞれの固有振動
数を異ならせることによっても、互いの共振を避けて振
動の抑制を可能としている。
【0005】この外にも、特開平8−85066号公報
には、離隔材を介して重ね合わせた複数の円板状のディ
スクを備え、その外側のディスクの表面には凹凸を設け
ることで内側のディスクとの突き当て面に空隙を形成
し、更にこの空隙部を外気に開放させるための貫通孔を
開けた構成が開示されている。
【0006】また、実開平3−72340号公報は、2
枚の鋼板を貼り合わせて基板を構成するに際して、これ
らの鋼板の突き合わせ面のそれぞれに同心円状の環状溝
を形成することによって消音を図る構成を開示してい
る。更に、同様に2枚の鋼板を張り合わせた鋼板におい
て、これらの鋼板の突き合わせ面に凹部を設けてこの中
に防振材を充填した構成が特開平4−115874号公
報に記載されている。
【0007】このように、従来の基板構造における消音
の抑制は、2枚以上のディスクを重ね合わせてその中に
振動吸収用の空洞部や防振材を設けたり、空洞部を外気
に開放させたりするというものが殆どである。
【0008】既に述べたように、高速回転するカッター
ではその刃先が被削材から受ける切削抵抗や衝撃に起因
して騒音が発生するものであり、これらの刃先での切削
抵抗及び衝撃が基板の中心部に振動として伝達されるこ
とが騒音発生の最大の原因である。したがって、基板の
中心側への振動の伝達を遮断したり緩衝させたりするこ
とが有効であり、3層構造の基板としてその中に空気層
を設けることはこの緩衝の一つに相当するといえる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特許第25
19166号公報に記載のものでは、空気層を内側プレ
ートのほぼ全体の領域に一様に介在させた構成である。
一方、カッターブレードだけの分野でなく、振動系から
みて或る臨界以上の平面的な大きさを持つ部材について
強制振動を加えると、この部材には振動が激しく発生し
ている(振幅が大きい)いわゆる「腹」の領域と、振動
が発生していない(振幅がほぼ零)いわゆる「節」とが
区分けされて発生して固有の振動モードを形成する。
【0010】したがって、「腹」の部分の振動振幅につ
いてこれを集中的に抑制できるようにすれば最適といえ
るが、「節」に相当する領域に空気層を設けても振動の
大きさの抑制効果は低い。このため、内側プレートに多
数の孔を一様に分布していても、振動振幅(振動の大き
さ)の抑制に貢献しているのはその一部であり、したが
って孔を余分に開けることによる内側プレートの強度不
足という不利な面が残るだけとなる。更に、合成樹脂ま
たはゴム等の弾性部材を充填して振動を緩衝するように
しても、乾式切断の場合では刃先からの熱伝達及び基板
自身の発熱によってこれらの弾性部材は溶融してしま
い、その所期の目的を十分に達成できるとはいえない。
【0011】また、特開平8−85066号公報に記載
のものでは、空隙部に貫通孔を設けているので、カッタ
ーの高速回転時には笛吹き音が発生しやすく、切断時の
騒音にこの発生音が加わることになり、騒音の抑制の効
果が低下してしまう。そして、特開平4−115874
号公報に記載のものでも、ディスクの側面に凸部を設け
るので、同様の問題を生じる。
【0012】更に、実願平3−72340号公報に記載
のものも同心円状の環状溝を空気層として利用するもの
であるものの、空気層の容積が2枚合わせでは振動の減
衰のためには十分ではなく、したがって騒音低減の効果
は小さい。
【0013】このように、刃先での切削抵抗や衝撃が基
板の中心に伝達されるのを緩衝して騒音の発生レベルを
下げることは有効とはいえるものの、却って基板の強度
を弱めてしまったり、振動が殆ど発生せずに伝達率も低
い部分も含めて空気層を設けるという無駄な加工をした
りすることになり、基板の生産性にも少なからず影響を
与えてしまう。
【0014】本発明は、ダイヤモンドブレード等の切断
用カッターの基板に発生する振動をより効果的に抑制し
且つ基板の強度を低下させることなく確実に騒音を低減
できるようにすることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板の外周に
切断用のチップを備えるカッター用基板であって、少な
くとも3層以上の金属プレートをスポット的な接合によ
って相互の間に微小な隙間を持たせて一体に積層し、積
層方向の端部の2層を除く任意の層の内プレートには、
この内プレート自身の振動に緩衝可能な空気層を形成す
る孔を備えてなることを特徴とする。
【0016】このような構成では、各金属プレートどう
しの間に微小な隙間が介在するので、切削時に発生する
チップからの衝撃による振動の伝達が緩衝されて抑制さ
れる。また、内プレートに設ける孔は、この内プレート
の両側に配置する金属プレートに挟まれて閉じられた空
間を形成してその中を空気層とするので、この空気層に
よっても同様に振動の伝達が緩衝される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明においては、内プレートに
加わる振動によって発生する振動の腹と節に対し、節に
沿う部分をスポット的な接合線とするとともに腹に対応
する部分に空気層を形成する孔を備えた構成とすること
ができる。
【0018】この場合では、振動の腹になる部分が孔に
よって消去されるので、内プレート自身の振動が減衰さ
れる。
【0019】また、内プレートに設ける孔は、カッター
全体の半径をrとするときほぼ(0.5r〜0.7r)
の環状の領域に含ませたものとすれば、内プレートの強
度を低下させることなく騒音の低減が可能となる。
【0020】そして、内プレートに設ける孔の個数は、
3及び4またはこれらの値の整数倍としたり、内プレー
トの環状の領域に対する孔の開孔率をほぼ10%〜30
%としたり、更に内プレートの肉厚をほぼ0.2mm〜
0.7mmとしたりすることで、最適な騒音の低減効果
が得られる。
【0021】ダイヤモンドブレードは、従来から知られ
ているように、たとえば鋼製の円板状の基板の外周縁に
ダイヤモンドチップをセグメント式またはリム式として
固着したものである。図1は本発明において、基板に開
ける孔の最適領域を示すためのダイヤモンドブレードの
正面図であり、後述するように3枚の金属プレートを重
ね合わせて接合した基板51の外周縁に、リム式のダイ
ヤモンドチップ52を一体に接合している。そして、図
中において、斜線を施した環状帯53として示す部分
が、3枚の金属プレートの中で真ん中に挟まれた内プレ
ートについて開ける孔の最適領域に相当する。
【0022】このような孔を開ける領域の特定は、1枚
の金属プレートに対して実際に切断時に加わるときと同
じ程度の強制振動を与えて、振動の腹と節の分布がどの
ようになっているかを把握することで可能である。すな
わち、金属プレートの外径や肉厚及びチップを固着した
ときの半径方向の重量分布等の様々なファクタ及び金属
プレートの固有振動数によって、腹と節の分布が様々に
変化する。したがって、金属プレートに対して切断時同
じ程度の振動数の強制振動を与えることで、この腹と節
の分布のパターンを知ることができる。そして、振動数
を変化させて腹と節の分布がどのように変わるかを確認
することによっても、孔を開けるのに最適な領域を特定
するためのデータとして活用することができる。
【0023】図2の(a)〜(d)はこのような要領に
よって得た各振動数毎の腹と節のパターンを示す図であ
る。
【0024】これらの図面は、実際に行った実験結果を
写真撮影したものを図面化したものであり、1枚の金属
プレート54に対して、実際のダイヤモンドブレードと
して構成したときの全体の重量及び重量分布を再現でき
るように、金属プレート54の外周縁にリム54aを一
体に形成したものを使用した。そして、リム54aに囲
まれた部分には粒子が小さくて乾燥した砂を適当量だけ
散布させておき、金属プレート54に振動を与えること
で、この金属プレート54の振動モードを砂の動きを観
察して知ることができる。なお、これらの図面におい
て、金属プレート54の中心に現れる二重円は、電動工
具の出力軸を通して固定するためのボスである。
【0025】ダイヤモンドブレードで実際に切断すると
きの周波数分析を行った結果、3KHz以上の帯域でパ
ワースペクトルが高い周波数が現れることが確認され
た。したがって、このような帯域でパワースペクトルが
高い周波数に対応する振動を付与するようにすれば、実
際の切断時において振動負荷が大きな状態を再現するこ
とができ、図2に示す4通りのパワースペクトルが高い
測定結果が得られた周波数について振動モードを観察し
た。
【0026】図2の(a),(b),(c)及び(d)
は、それぞれ金属プレート54に3200Hz,347
5Hz,4250Hz及び6600Hzの振動を与えた
ときの振動モードを示す。これらの図において、斑点で
示す領域は砂が動いていない部分であり、中央部を除く
白抜きの領域は砂が激しく振動している部分を示す。
【0027】図2の(a)の場合の周波数では、砂が振
動している部分は中心周りにほぼ同一間隔で現れる卵形
状の部分であり、振動振幅の腹の数が3個であることを
示している。そして、周波数を少し高くした同図(b)
の場合では、大小の領域に4部分に別れた振動振幅の腹
の数が4個となっている。また、周波数を更に高くした
同図(c)の場合では、振動振幅の腹の数は6個であ
り、周波数の差によって振動モードによる腹の形状及び
その分布は相違している。そして、更に周波数を高くし
た同図の(d)では振動振幅の腹の数は8個である。
【0028】このように、振動数に応じて振動の腹と節
のパターンが様々に変化することが確認されたが、外周
縁にダイヤモンドチップを固着するという重量分布等に
よる特異な点は、金属プレート3の半径方向に対する振
動振幅の腹と節の分布の態様とその個数である。
【0029】すなわち、いずれの振動周波数において
も、発生する振動の腹はカッター全体の半径rに対して
0.5r〜0.7r程度に相当する領域に必ずかかって
いて、その個数は3または4及びこれらの整数倍となっ
ていることである。
【0030】このような振動振幅の腹の分布は、金属プ
レート54を切断時と同じ回転速度で回転させたときに
発生する振動を金属プレート54自身のレベルから観る
と、半径方向の0.5r〜0.7rの範囲内の領域に強
い振動源があって、この振動源の個数は3または4の整
数倍のパターンとなって現れるということになる。そし
て、ダイヤモンドブレードによる切断とのときに、その
刃先が受ける切削抵抗及び衝撃のブレード中心側への伝
播が最終的に騒音となって発生するので、このような強
い振動源となり得る部分を衝撃伝播の遮断に利用すると
同時に振動源自体を消去すれば、騒音の抑制効果が得ら
れることは明らかである。したがって、先の半径方向の
0.5r〜0.7rの範囲内の領域に、3または4及び
これらの整数倍の個数の空洞部または孔を設けること
で、衝撃伝播の遮断と基板自体の振動の減衰が可能であ
る。
【0031】また、金属プレート54の機械的強度の面
からみれば、0.7rを越える範囲であると、刃先によ
り近くなるので、このような部分にかけてまで金属プレ
ート54に孔を開けてしまうと、孔と刃先までが短くな
り、刃先が受ける切削抵抗や衝撃に耐えられなくなる可
能性がある。また、0.5rよりも小さい範囲では、中
心から扇状の領域となっていくので、もしこの部分にか
けて孔を開けたとしても、その開口面積の増分は図2の
(d)の例からも判るように僅かであり、したがって空
気層の容量の増分も小さく、緩衝効果の面からみればメ
リットは少ない。
【0032】このように、金属プレート54の強度の面
も含めて、先の半径方向の0.5r〜0.7rの範囲内
の領域に空洞部や孔を設けることが最良といえる。
【0033】以上のように、1枚の金属プレート54に
ついての実験結果から、騒音低減に有効な空洞部または
孔の最適分布及び最適個数を得ることができるが、後述
の実施例において示すように、ダイヤモンドブレードの
基板は、2枚の外プレートとこれらに挟まれた内プレー
トの3層構造のものとし、この中の内プレートに孔を開
けることによって基板の内部に空洞部を形成するものと
する。
【0034】このように内プレートに孔を開けることで
基板の内部に空洞部を形成するものでは、孔の内径及び
内プレートの肉厚が空洞部の容量を決める。したがっ
て、この容量が小さすぎると振動の腹に発生している振
動減衰の効果が小さくなることが予測される。
【0035】そこで、最適な内プレートの肉厚を得るた
め、この内プレートの肉厚を変えたものについて騒音音
圧レベルを測定した。この測定においては、内プレート
及び外プレートの外径が105mmで、外プレートの肉
厚ガ0.5mmのものを使用し、内プレートに開ける孔
は先の条件を満たすものであって、その内径は8mm及
び先の条件を満たす領域内での孔の開孔率は18%であ
る。その測定結果を図3に示す。
【0036】図3の測定結果から、内プレートの肉厚が
0.2〜0.7mmの範囲としたものが、これよりも薄
いもの及び厚いものに比べると、騒音音圧レベルが低い
傾向にあることが判る。このような内プレートの肉厚に
よる騒音音圧レベルの変化においては、内プレートの肉
厚が0.2mmよりも小さいものでは、この内プレート
に含まれる孔による空洞の容量が不足し、3層の基板に
発生する振動の腹の振動を減衰させる作用が足りないた
めに騒音音圧レベルが高くなると思われる。また、内プ
レートの肉厚が0.7mm以上になると、孔による空洞
の容量が大きくなりすぎてしまい、振動による空洞内の
空気の密度変化量が減ってしまうために振動減衰が達成
できないことによるものと推察される。
【0037】また、内プレートに開ける孔の開口面積及
びその個数が多いほど、内プレートの機械的強度が低下
していくことは明らかである。そこで、内プレートにお
いて孔が占める割合すなわち開孔率が内プレートの強度
にどのような影響を与えるか、及び騒音音圧レベルの変
化がどのようになるかを測定した。
【0038】この測定では、内プレート及び外プレート
のそれぞれの外径は105mm(r=52.5mm)で
あって、肉厚はいずれも0.5mmとしたものを使用
し、カッター全体の半径方向の0.5r〜0.7rの範
囲の領域内に設ける孔の内径は8mmである。測定結果
を図4に示す。
【0039】図4の測定結果から、孔の開孔率が15%
〜30%の範囲であれば、騒音音圧レベルは低い値をと
り、これを外れた開孔率の範囲では小さくても大きくて
も騒音音圧レベルは高い値となる傾向にあることが判
る。また、外プレートを含む基板全体の曲げ強度は、開
孔率が高くなるにつれて次第に低くなっていくが、開孔
率15%〜30%に相当する範囲では、開孔率2.5%
のものに比べて15%程度のみの減少であり、機械的強
度の低下は殆ど無視し得る。
【0040】以上のことから、内プレートと2枚の外プ
レートの3層構造の基板であって、内プレートに孔を開
ける構成においては、内プレートの肉厚が0.2mm〜
0.7mmであって、半径をrとするとき、(0.5r
〜0.7r)の環状の領域に、3または4及びこれらの
整数倍に相当する個数の孔を先の環状の領域全体に対す
る開孔率が10%〜30%となるようにすれば、騒音の
抑制及び振動の減衰が可能な基板を得ることができる。
【0041】また、各金属プレート54どうしはスポッ
ト溶接によって接合するが、このとき金属プレート54
どうしの間に微小な隙間ができるように製作する。そし
て、スポット溶接の溶接線は、図2に示した金属プレー
ト54に現れる振動の節に沿うものとする。なお、この
スポット溶接の溶接線は、金属プレート54の外周縁に
は全周に施すようにすることで、金属プレート54どう
しの間の隙間を外部から遮断することができ、切り粉等
の入り込みが防止される。
【0042】
【実施例】図5〜図8はダイヤモンドブレードの具体的
な例を示すものである。
【0043】図5の例は、SK5材を用い、外径がそれ
ぞれ105mmで肉厚が0.5mmの内プレート1と外
プレート2,3を互いに重合してスポット溶接して基板
を構成したものである。これらの内,外プレート1,
2,3の外周縁には、それぞれ切欠1a,2a,3aを
形成してセグメント化し、このセグメント部分の外周縁
にダイヤモンドチップ4を固着している。
【0044】このような内プレート1と外プレート2,
3の組み立てにおいては、先に述べたように、内プレー
ト1への振動負荷の際に発生する振動の節に合うように
溶接点SW(同図(a)において小さな黒点で示す)を
施すようにし、各プレート1,2,3どうしの間にはほ
ぼ0.01mm程度の隙間Gができるようにする。
【0045】内プレート1には、同図の(a)に示すよ
うに、内径が8mmの孔1bを、内プレート1の中心と
して直径63mmのピッチ円上に45°の角度ピッチで
配列している。これらの孔1bの分布及びその全体の開
口面積は先の条件を満たすものであり、同図の(b)に
示すように、内プレート1及び外プレート2,3を重合
したときには、孔1bは外プレート2,3によって封じ
られて空洞を形成する。そして、これらの孔1bによる
空洞の分布や内プレート1の肉厚等は先に示した条件を
満足するものであり、各プレート1,2,3どうしの間
の微小な隙間G及びこの空洞の介在によって切断時の衝
撃が基板の中心部に伝達されるのを抑制すると同時に、
基板自身の振動を減衰させることができる。
【0046】図6はリムタイプのダイヤモンドブレード
の例であり、SUS製であって、外径が155mmの内
プレート5と外プレート6,7のそれぞれを0.3mm
及び0.6mmとしたものを、スポット溶接SW(同図
(a)において小さな黒点で示す)によって互いに微小
な隙間Gを持たせて一体に接合して基板を構成し、その
外周縁にダイヤモンドチップ8を固着している。そし
て、内プレート5には先の条件を満たす涙滴形状の複数
の孔5aを一定の角度ピッチで設け、これらの孔5aに
より基板の内部に空洞を介在させている。
【0047】図7の例は、セグメントタイプのダイヤモ
ンドブレードの例であり、SCM製であって、外径が3
05mmの2枚の内プレート9,10(肉厚:0.4m
m)と2枚の外プレート11,12(肉厚:0.8m
m)を外周のセグメント部分のダイヤモンドチップ13
とともにレーザ溶接によって一体に接合して基板を構成
したものである。各プレート9〜12どうしの間には先
の例と同様に微小な隙間Gを介在させ、スポット的なレ
ーザー溶接SW(同図(a)において小さな黒点で示
す)によって接合している。そして、内プレート9,1
0のそれぞれには楕円形状の孔9a,10aを先の条件
を満たすようにそれぞれ12個ずつ一定の30°の角度
ピッチで形成している。これらの内プレート9,10
は、それぞれの孔9a,10aが互いに整合しないよう
に15°の角度だけ相対的に回転させた位置関係として
重合するものとする。したがって、外プレート11,1
2に挟まれた部分には、内プレート9,10のそれぞれ
の孔9a,10aが外プレート11,12によって封じ
られ、合計24個の空洞部が形成されることになる。
【0048】図8の例は、SK5材を用いた外径が30
5mmの2枚の内プレート14,15(肉厚:0.4m
m)と、2枚の外プレート16,17(肉厚:0.8m
m)とを、セグメント部分のダイヤモンドチップ18と
ともに銀ロー付けにより一体に接合して基板を構成した
ものである。各プレート14〜17の間には微小な隙間
Gを介在させ、スポット的な銀ロー付け(図示せず)に
よって接合している。そして、内プレート14,15の
それぞれには半径方向の距離が異なる位置に周方向に向
けて千鳥状となるように24個の円形開口の孔14a,
15aを開け、これらの孔14a,15aが重なり合わ
ないように内プレート14,15を重合させることによ
り、基板の中に合計48個の空洞を持たせている。
【0049】以上の各例のダイヤモンドブレードは、先
に述べた孔の分布位置や開孔率及び内プレートの肉厚の
条件を満たすことによって、いずれも騒音の抑制及び基
板自身の振動の減衰が可能である。
【0050】図5に示した本発明のダイヤモンドブレー
ドの騒音低減の効果を示すための試験を表1に示した比
較対象のダイヤモンドブレードとともに実施した。N
o.1が図5に示したダイヤモンドブレードの仕様に相
当するものであり、No.2〜No.5の試料について
は表1に記載のとおりである。
【0051】
【表1】
【0052】また、試験条件は次のとおりである。 ・切断機 :ポータブル電動工具 ・回転数 :12000rpm ・被削材 :コンクリートブロック ・負荷電流 :6〜8A ・湿式/乾式:乾式切断 ・切断長さ :20m
【0053】No.1の本発明によるダイヤモンドブレ
ード及びNo.2〜No.5の比較対象試料についての
それぞれの騒音音圧レベルの測定結果は図9に示すとお
りである。
【0054】この測定結果から判るように、基板を一枚
のSK材(肉厚:1.5mm)としたNo.2の試料
は、3層構造ではあるが空洞が全くないNo.3の試料
よりも音圧レベルが高い。このことから1枚ものの基板
よりも複数の層によって基板を構成したほうが好ましい
ことが判る。
【0055】また、No.4の試料は、内プレートに相
当するものを多数の小孔を全面に開けたパンチンブプレ
ートとしたものであり、No.3の空洞を介在させない
ものよりも音圧レベルは低下している。したがって、空
洞を基板の中に介在させた3層構造のほうが、中実構造
よりも騒音低減の効果があることが判る。
【0056】更にNo.5の試料は、No.4の試料に
おいてパンチングプレートにエポキシ樹脂を挿入し、こ
の樹脂による防振効果を向上させようとしたものである
が、No.4の試料に比較して音圧レベルの低減度はさ
ほど大きくない。したがって、空洞を基板に内在させた
ものにおいて樹脂等を防振材として組み込んでも、その
防振効果は十分には発揮されていないことが判る。
【0057】本発明のダイヤモンドブレードであるN
o.1の試料では、その音圧レベルは94dBであり、
3層構造であって空洞部を全面に内在させているNo.
4の試料よりも4dB程度音圧レベルは低下している。
また、防振性を持たせたNo.5と比較しても3dB程
低い音圧レベルに抑えられている。
【0058】ここで、3層構造であって空洞を内在させ
ないNo.3の試料に対して、空洞を持つNo.4の試
料との音圧レベルの差は2dBである。そして、空洞が
あることは同じ条件であっても、本発明のNo.1とN
o.4との比較では音圧レベルの差は4dBである。し
たがって、空洞を持たせることによる音圧レベルの低下
度合に比べると、孔の配置や分布及び内プレートの肉厚
を特定した本発明の試料No.1は、No.4の試料と
比較した音圧レベルの低下度合いは非常に大きいものと
いうことができ、騒音の低減効果が十分に現れているこ
とがこの試験により明らかになった。
【0059】更に、各実施例で示したダイヤモンドブレ
ードにおいては、それぞれの内プレートに設ける孔の分
布や開孔率を先の条件とすることによって、外プレート
を含む基板全体の機械的強度の低下も防止し得る。した
がって、石材やコンクリートの切断に際して基板の無用
な撓み変形等を防止することができ、効率的な切断が可
能となるとともに、切断面も良好なものが得られる。ま
た、防振用としての合成樹脂やゴム等の弾性部材を含ま
ないので、切断時の加熱によってもこれらの部材が溶融
劣化することによる弊害を伴うこともない。
【0060】
【発明の効果】本発明では、基板に内在させる空洞部
を、刃先からの衝撃の伝達の抑制及び基板自身の振動源
の消去ができるように構成したことによって、単に基板
の全体に空洞部を散在させるという従来構造に比べる
と、騒音抑制の効果が格段に向上し、コンクリート等の
切断の作業環境が改善される。
【0061】また、空洞部を形成させるために組み込む
内プレートは、騒音抑制の効果だけでなく、機械的な強
度が低下しないようなパターンで孔を分布させるように
することで、基板の強度を十分に維持することができ、
切断時の基板の撓み変形等の発生がなく良好な切断が可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のダイヤモンドブレードにおいて内プ
レートに分布させる孔の領域範囲を示すための正面図で
ある。
【図2】 内プレートに振動を与えて振動モードを観察
した結果であって、3200Hz〜6600Hzの範囲
の場合の振動の腹及び節のパターンを示す図である。
【図3】 内プレートの最適厚さを知るための肉厚と騒
音音圧レベルの関係の測定結果を示すグラフである。
【図4】 内プレートに開ける孔の最適開孔率を知るた
めの開口率と騒音音圧レベル及び曲げ強度の測定結果を
示すグラフである。
【図5】 本発明のダイヤモンドブレードの第1の実施
例を示す図であって、(a)は孔の配置を示す正面図、
(b)は縦断面図である。
【図6】 本発明のダイヤモンドブレードの第2の実施
例を示す図であって、(a)は孔の配置を示す正面図、
(b)は縦断面図である。
【図7】 本発明のダイヤモンドブレードの第3の実施
例を示す図であって、(a)は孔の配置を示す正面図、
(b)は縦断面図である。
【図8】 本発明のダイヤモンドブレードの第4の実施
例を示す図であって、(a)は孔の配置を示す正面図、
(b)は縦断面図である。
【図9】 図5に示した実施例のダイヤモンドブレード
を他の試料比較した騒音音圧レベルの測定結果を示すグ
ラフである。
【符号の説明】
1,5,9,10,14,15 内プレート 1b 孔 2,3,6,7,11,12,16,17 外プレート 4,8,13,18 ダイヤモンドチップ 5a,9a,10a,14a,15a 孔 G 隙間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 手島 正智 福岡県浮羽郡田主丸町大字竹野210番地 ノリタケダイヤ株式会社内 (72)発明者 井手 大介 福岡県浮羽郡田主丸町大字竹野210番地 ノリタケダイヤ株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の外周に切断用のチップを備えるカ
    ッター用基板であって、少なくとも3層以上の金属プレ
    ートをスポット的な接合によって相互の間に微小な隙間
    を持たせて一体に積層し、積層方向の端部の2層を除く
    任意の層の内プレートには、この内プレート自身の振動
    に緩衝可能な空気層を形成する孔を備えてなるカッター
    用基板。
  2. 【請求項2】 内プレートに加わる振動によって発生す
    る振動の腹と節に対し、節に沿う部分をスポット的な接
    合線とするとともに腹に対応する部分に空気層を形成す
    る孔を備えてなる請求項1記載のカッター用基板。
  3. 【請求項3】 内プレートに設ける孔は、カッター全体
    の半径をrとするときほぼ(0.5r〜0.7r)の環
    状の領域に含ませてなる請求項1または2記載のカッタ
    ー用基板。
  4. 【請求項4】 内プレートに設ける孔の個数は、3及び
    4またはこれらの値の整数倍としてなる請求項1から3
    のいずれかに記載のカッター用基板。
  5. 【請求項5】 内プレートの環状の領域に対する孔の開
    孔率をほぼ10%〜30%としてなる請求項3または4
    記載のカッター用基板。
  6. 【請求項6】 内プレートの肉厚をほぼ0.2mm〜
    0.7mmとしてなる請求項1から5のいずれかに記載
    のカッター用基板。
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