JPH10272565A - 低熱伝導度耐熱合金の立向き下進溶接方法 - Google Patents

低熱伝導度耐熱合金の立向き下進溶接方法

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JPH10272565A
JPH10272565A JP9510297A JP9510297A JPH10272565A JP H10272565 A JPH10272565 A JP H10272565A JP 9510297 A JP9510297 A JP 9510297A JP 9510297 A JP9510297 A JP 9510297A JP H10272565 A JPH10272565 A JP H10272565A
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pulse
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droplet
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JP9510297A
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Tomoyuki Kamiyama
智之 上山
Takayuki Dewa
孝行 出羽
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Daihen Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低熱伝導度耐熱合金の立向き下進溶接にお
いて、溶融金属の垂れ下がり落ちがない連続した良好な
溶接ビードが得られる溶接方法を提供する。 【解決手段】 本発明は、消耗電極を予め設定した送
給速度で送給し、ピーク電流とべース電流とを繰り返す
パルス電流を通電してスプレー移行させる立向き下進パ
ルスアーク溶接方法において、パルス電流のピーク電流
値Ip及びベース電流値Ib及びピーク電流通電時間T
p及びベース電流通電時間Tbを、各ピーク電流と同期
して消耗電極から被溶接物に溶滴が移行する1パルス1
溶滴移行となる値に予め設定しておき、立向き下進溶接
中の溶融金属の垂れ下がりによるアーク電圧の低下を検
出したときに、パルス電流のピーク電流値Ip及びベー
ス電流値Ib及びピーク電流通電時間Tp及びベース電
流通電時間Tbの1以上を、1パルス1溶滴移行又は複
数パルス1溶滴移行する範囲内で、パルス電流の平均値
よりも低い値に一時的に切り換えて、湯垂れ現象を抑制
しながらスプレー移行溶接する低熱伝導度耐熱合金の立
向き下進パルスMIGアーク溶接方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はNi基耐熱合金等の
低熱伝導度耐熱合金の溶接方法において、常に良好な溶
接部を得るためのパルスアーク溶接方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ゴミ消却炉の燃焼室ボイラーの内面材に
は従来から高炭素鋼が使用されれている。このボイラー
内面材は、長時間、ゴミ焼却の高温のために腐食する環
境にある。この内面材に補修溶接をして良好な結果を得
るためには、下向き姿勢の溶接をすることが望ましい。
その下向き姿勢の溶接をするためには、腐食した構造物
を溶接現場で、取り外す必要がある。この腐食した構造
物を取り外すには、ゴミ消却炉を長時間停止し、過大な
労力と費用とを要し、危険な作業となるために、構造物
を取り外さないで、Ni基耐熱合金を消耗電極とする被
覆アーク溶接又はNi基耐熱合金フィラワイヤを添加す
るTIGアーク溶接によって立向肉盛溶接を行ってい
る。
【0004】しかし、この被覆アーク溶接法による肉盛
溶接では、溶接後のスラグ除去作業が必要となり、また
TIGアーク溶接では、フィラワイヤの溶融速度が遅い
ために、いずれの溶接も生産効率が低い。
【0006】そこで、近年、溶接速度が速いガスシール
ド消耗電極アーク溶接方法、例えば、MIG溶接が実施
されているが、Ni基合金の一つであるインコネル62
5(商標)は、融点が1290から1350[℃]、熱
伝導度が0. 0234[cal/cm℃・s]であって、軟鋼の
融点が1500[℃]、熱伝導度が0. 1234[cal/
cm℃・s]よりも低く、しかも、比重が8. 5[g/cm3 ]
であり、軟鋼の比重が7. 8[g/cm3 ]がよりも高い。
このために、立向き下進溶接を行うと、溶融金属の冷却
に時間がかかり、その溶融金属の自重によって、溶融金
属の垂れ落ち(以下、湯垂れという。)現象が発生す
る。
【0008】この湯垂れ現象を防ぐために、溶接速度を
高速度にしなければならない。溶接速度を高速度にする
と、ボイラー内面材を溶融させるために、溶接電流を高
電流になければならない。そこで、高速度で高電流の立
向き下進溶接が実施されている。しかし、この方法で
は、溶接電流を高電流にすると、消耗電極の溶融が過大
となるために、消耗電極を周期的にボイラー内面材に短
絡(短絡移行)させて入力を減少させ、消耗電極の溶融
を少なくする必要がある。しかし、消耗電極をボイラー
内面材に短絡させると、多量のスパッタが発生するとい
う問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】図1は、従来の短絡移
行による立向き下進MIGアーク溶接方法によって溶接
した肉盛溶接ビード外観を示す図である。この従来の短
絡移行MIGアーク溶接方法の溶接条件は、例えば、被
溶接物が板厚10[mm]の高炭素鋼で、消耗電極が直径
1. 2[mm]のインコネル625で、溶接電流が270
[A]で、アーク電圧が23[V]で、溶接速度が15
0[cm/mit]である。この従来の溶接方法では、短絡移
行であるために、図1示すように、溶接ビードの周囲に
スパッタ2が多量に付着し、また肉盛溶接ビード幅が狭
く、余盛り高さが低くて、良好な肉盛溶接ビード外観を
得ることができない。
【0020】図2(A)及び(B)は、最近のスプレー
移行による立向き下進溶接のパルスMIGアーク溶接方
法によって溶接した溶接ビード外観を示す図である。こ
の最近の溶接方法は、150[A]程度のパルス溶接電
流を通電して、消耗電極から被溶接物に1パルス1溶滴
移行(各ピーク電流に同期して溶滴が1回移行する移
行)のスプレー移行をさせ、消耗電極をウィビングさせ
ながら立向き溶接する方法である。この最近の溶接方法
の溶接条件は、例えば、被溶接物が板厚10[mm]の高
炭素鋼で、消耗電極が直径1. 2[mm]のインコネル6
25で、溶接電流が150[A]で、アーク電圧が23
[V]で、溶接速度が40[cm/mit]で、ウィビング振
幅が3[mm]で、ウィビング周波数が2[Hz]ある。
【0022】この最近の溶接方法は、溶接電流を150
[A]程度の小電流にして消耗電極の過大な溶融を防
ぎ、また小電流にしてもスプレー移行になるようにパル
ス溶接を採用してスパッタの発生を少なくし、さらにウ
ィビングをして肉盛溶接ビード幅を広げることによって
かなりの改善がされている。
【0024】しかし、この最近の溶接方法で溶接して
も、図2(A)に示すように、溶接途中で湯垂れ3が生
じ、また、同図(B)に示すように、湯垂れが生じた溶
接部分の断面では余盛高さが低くて、均一な溶接ビード
を得ることができない。その原因は、この最近の溶接方
法で溶接しても、肉盛りする溶接長が長くて被溶接物に
熱が蓄積されて、被溶接物の温度が約100[℃]を越
えると湯垂れが発生するために、溶接を途中で休止して
被溶接物を冷却して、溶接後の被溶接物の温度が約10
0[℃]以下となるまで次回の溶接を待機しなければな
らなかったので、作業性が悪い問題があった。
【0026】従って、本発明者は、最近のパルスMIG
アーク溶接方法を使用して、Ni基耐熱合金の立向き下
進溶接を行い、溶接中の湯垂れ現象がどのようにして起
こるかを高速度ビデオ撮影等を用いて調査して、次のよ
うな原因を究明した。
【0030】図3(A)乃至(F)は、ワイヤ径1. 2
[mm]のインコネル625の消耗電極を使用して、最近
のパルスMIGアーク溶接方法によて、板厚9[mm]の
軟鋼板に、立向き下進溶接を行ったときの湯垂れの発生
と溶接電圧との関係を示す図である。同図(A)は、平
均アーク電圧の時間経過を示す図であり、同図(B)
は、溶接電流の時間経過を示す図であり、同図(C)乃
至(F)は、高速度ビデオ撮影によって解明した「溶融
金属が湯垂れを発生する現象」であって、インコネル6
25の溶融金属が短時間で凝固しないで時間経過と共
に、その自重によって「溶融金属が湯垂れする」現象を
示す図である。
【0034】高速度ビデオ撮影によって解明した現象
は、次のとおりである。同図(A)の時刻t1に示す溶
融金属が湯垂れを発生していない状態においては、同図
(C)に示すように、「溶融池6に生じている溶融金属
の自重による重力」と「表面張力及びアーク5のアーク
力」とのバランスによって平衡が保たれ、消耗電極4の
先端と溶融池6との距離で示されるアーク長L1は一定
であり、同図(A)及び(B)に示すように、平均アー
ク電圧及び溶接電流は常に一定値に維持されている。
【0036】しかし、アーク熱によって消耗電極が溶融
し続けると、前述示したようにインコネル625が低熱
伝導度であるために、溶融池の温度が短時間で低下しな
いで溶融金属が凝固し難くなるので、同図(D)に示す
ように、溶融池は溶融金属量が多くなって、垂れ下がり
が生じ始め、同図(A)に示すように、アーク長L2が
短くなってアーク電圧が降下する。さらに、この状態が
続くと、溶融池の溶融金属は、自重による重力が溶融金
属の表面張力及びアーク力の総和よりも大きくなってバ
ランスが崩れ、同図(E)に示すように、溶融金属の湯
垂れ現象が発生する。
【0041】
【課題を解決するための手段】請求項1のパルスMIG
アーク溶接方法は、消耗電極を予め設定した送給速度で
送給し、ピーク電流とべース電流とを繰り返すパルス電
流を通電してスプレー移行させる立向き下進パルスアー
ク溶接方法において、溶融金属の垂れ下がりによるアー
ク電圧降下を検出したときに、パルス電流の平均値より
も低い値の溶接電流に一時的に切り換えて溶接する低熱
伝導度耐熱合金の立向下進パルスアーク溶接方法であ
る。
【0042】請求項2のパルスMIGアーク溶接方法
は、消耗電極を予め設定した送給速度で送給し、ピーク
電流とべース電流とを繰り返すパルス電流を通電してス
プレー移行させる立向き下進パルスアーク溶接方法にお
いて、溶融金属の垂れ下がりによるアーク電圧降下を検
出したときに、第1のパルス電流の平均値よりも低い平
均値の第2のパルス電流を予め定めた時間だけ通電して
溶接する低熱伝導度耐熱合金の立向下進パルスアーク溶
接方法である。
【0043】請求項3のパルスMIGアーク溶接方法
は、消耗電極を予め設定した送給速度で送給し、ピーク
電流とべース電流とを繰り返すパルス電流を通電してス
プレー移行させる立向き下進パルスアーク溶接方法にお
いて、パルス電流のピーク電流値Ip及びベース電流値
Ib及びピーク電流通電時間Tp及びベース電流通電時
間Tbを、各ピーク電流と同期して消耗電極から被溶接
物に溶滴が移行する1パルス1溶滴移行となる値に予め
設定しておき、立向き下進溶接中の溶融金属の垂れ下が
りによるアーク電圧の低下を検出したときに、パルス電
流のピーク電流値Ip及びベース電流値Ib及びピーク
電流通電時間Tp及びベース電流通電時間Tbの1以上
を、1パルス1溶滴移行又は複数パルス1溶滴移行する
範囲内で、パルス電流の平均値よりも低い値に一時的に
切り換えて、湯垂れ現象を抑制しながらスプレー移行溶
接する低熱伝導度耐熱合金の立向き下進パルスMIGア
ーク溶接方法である。
【0050】以下、図4乃至図6を参照して本発明の溶
接方法の作用について説明する。図4は、直径1. 2
[mm]のインコネル625の消耗電極及びアルゴン10
0%のシールドガスを用いて、溶接電流平均値150
[A]でアーク長3[mm]でパルスMIGアーク溶接を
して、ピーク電流通電時間Tp[ms](横軸)とピーク
電流値Ip[A](縦軸)との関係において、1パルス
1溶滴移行及び複数パルス1溶滴移行が得られる範囲を
示す図である。
【0052】同図において、1パルス1溶滴移行が得ら
れる範囲は、図面内の斜線で示した1P1Dで示す範囲
内である。また、パルス電流のピーク電流値Ip及びベ
ース電流値Ib及びピーク電流通電時間Tp及びベース
電流通電時間Tbの1以上を、一時的に切り換えて、パ
ルス電流の平均値を、1パルス1溶滴移行範囲1P1D
のパルス電流の平均値よりも低い値に減少させると、複
数のパルス電流の内の1つのパルス電流と溶滴移行とが
同期する複数パルス1溶滴移行の状態が発生する。この
複数パルス1溶滴移行範囲nP1Dにおいては、スパッ
タの発生がなく、スプレー移行の溶接が可能であるの
で、1パルス1溶滴移行範囲1P1Dと同様に実用範囲
になる。
【0054】しかし、パルス電流のピーク電流値Ip及
びベース電流値Ib及びピーク電流通電時間Tp及びベ
ース電流通電時間Tbの1以上を、一時的に切り換え
て、パルス電流の平均値を、複数パルス1溶滴移行範囲
nP1Dよりも減少させると、短絡が発生し始め、パル
ス電流と溶滴移行とが同期しなくなり、短絡によってス
パッタが発生する。したがって、この短絡移行範囲DR
Pは、スパッタによる溶接部の溶着量を損失させ、ビー
ド外観も美麗とならない。
【0060】図5は、パルスMIGアーク溶接によって
消耗電極から離脱したインコネルの溶滴の温度を測定す
るための実験装置を示した図である。同図に示すよう
に、消耗電極4(陽極側)とタングステン電極8(陰極
側)とを対向させてアーク5を発生させると、消耗電極
4から離脱した溶滴9が落下して水槽10で捕集され
る。ここで、溶滴が捕集される前後の水温及び溶滴の質
量を測定すれば、インコネルの物理的性質から1溶滴当
たりの溶滴温度を測定することができる。
【0062】前述した測定方法で測定すると、図4に示
した1P1D範囲内のA点におけるピーク電流値Ip=
360[A]及びピーク電流通電時間Tp=2. 0[m
s]によって得られた溶滴の1溶滴当たりの溶滴温度は
1800[℃]であり、nP1D範囲内のB点における
ピーク電流値Ip=340[A]及びピーク電流通電時
間Tp=1. 5[ms]によって得られた溶滴の1溶滴当
たりの溶滴温度は1450[℃]である。
【0064】したがって、1P1D範囲内のA点におけ
るピーク電流値Ip及びピーク電流通電時間Tpによっ
て得られた溶滴の溶滴温度は、1溶滴当たり1800
[℃]もあり、A点のパルス条件のみで立向き下進溶接
すれば、溶接中に頻繁に湯垂れ現象が生じる。一方、n
P1D範囲内のB点におけるピーク電流値Ip及びピー
ク電流通電時間Tpによって得られた溶滴の溶滴温度
は、1溶滴当たり1450[℃]であり、B点のパルス
条件のみで立向き下進溶接をすれば湯垂れの発生はない
が、肉盛する被溶接物との融合が不十分となるので肉盛
溶接ビードの剥離が生じやすくなる。
【0070】図6は、板厚10[mm]の高炭素鋼の被溶
接物を直径1. 2[mm]のNi基耐熱合金(インコネル
625)の消耗電極を使用して、B点のパルス条件のみ
のパルス電流を用いて溶接電流150[A]、アーク電
圧23[V]、溶接速度40[cm/mit]、ウィビング振
幅3[mm]及びウィビング周波数2[Hz]の条件でス
プレー移行による立向き下進溶接をしたときの肉盛溶接
ビードの外観を示す図である。同図に示すように、肉盛
溶接ビードの剥離13が一部に生じて良好な肉盛溶接部
が得られていない。
【0072】
【発明の実施の形態】したがって、以上の解明を基にし
て、予め設定した1P1Dの溶滴移行の得られるパルス
条件範囲内で、立向き下進のパルスMIGアーク溶接を
し、その溶接中に発生する溶融金属の垂れ下がりによっ
て生じたアーク長変化による平均アーク電圧降下を検出
して、この検出信号によって予め設定したパルス電流の
ピーク電流値Ip及びベース電流値Ib及びピーク電流
通電時間Tp及びベース電流通電時間Tbの1以上を、
1P1D又はnP1Pの溶滴移行が得られる範囲内で、
一時的に切り換えると、溶滴温度を低くすることができ
るので、溶融池の温度を下げて、溶融金属の凝固を促進
して湯垂れを防止することができる。
【0074】図4において、予め設定した1P1Dのピ
ーク電流値Ip=360[A]でピーク電流通電時間T
p=2. 0[mS]のA点で溶接中に、平均アーク電圧降
下を検出したとき、ピーク電流値Ip=340[A]で
ピーク電流通電時間Tp=2. 0[mS]のC点又はピー
ク電流値Ip=360[A]でピーク電流通電時間Tp
=1. 5[mS]又はnP1PのB点のピーク電流値Ip
=340[A]でピーク電流通電時間Tp=1. 5[m
S]のD点に、一時的に切り換えると、溶滴温度を低く
することができる。
【0080】
【実施例】
(実施例1…図7の説明)図7(A)乃至(F)は、板
厚9[mm]の軟鋼板にワイヤ径1. 2[mm]のインコネ
ル625の消耗電極を使用して本発明のパルスMIGア
ーク溶接による立向き下進溶接を行ったときの状態を示
す図である。同図(C)乃至(F)は、溶融金属が湯垂
れを発生する現象の時間経過を示す図であって、同図
(A)は、平均アーク電圧の時間経過を示す図であり、
同図(B)は、溶接電流の時間経過を示す図である。
【0082】同図(A)の時刻t1に示す溶融金属が湯
垂れを発生していない状態においては、同図(C)に示
すように、「溶融池6における溶融金属の自重による重
力」と「溶融金属の表面張力とアーク力」とのバランス
によって平衡が保たれ、消耗電極4の先端と溶融池6と
の距離で示されるアーク長L1は一定であり、同図
(A)及び(B)に示すように、平均アーク電圧及び溶
接電流は常に一定値に維持されている。
【0084】しかし、前述したように、アークによって
消耗電極が溶融し続けると、インコネル625の低熱伝
導度のために、溶融池の温度が短時間に低下しないで溶
融金属が凝固し難くなるので、同図(D)に示すよう
に、溶融池は溶融金属量が多くなって、垂れ下がりが生
じ始め、アーク長L2が短くなって平均アーク電圧も低
下する。
【0086】このとき、同図(A)の時刻t2に示すよ
うに、低下した平均アーク電圧を検出して、同図(B)
の時刻t2に示すように、予め設定したピーク電流値I
pとピーク電流通電時間Tpの溶接電流よりも低い値の
ピーク電流値Ipとピーク電流通電時間Tpの溶接電流
に切り換えると、溶滴温度を低くすることができるの
で、溶融池の温度を下げて、溶融金属の凝固を促進して
湯垂れを抑制することができ、アーク長L4も、略アー
ク長L1と同等に回復する。
【0090】(実施例2…図8の説明)図8は、図7で
説明した本発明の溶接方法によって溶接した実施例2の
肉盛溶接ビード外観を示す図である。この実施例2の溶
接条件は、被溶接物が板厚9[mm]の軟鋼板を150
[℃]に予熱した状態で、消耗電極が直径1. 2[mm]
のインコネル625で、溶接電流が150[A]で、ア
ーク電圧が23[V]で、溶接速度が40[cm/mit]
で、ウィビング振幅が3[mm]で、ウィビング周波数が
2[Hz]ある。
【0092】同図(A)は、この溶接条件で溶接中に、
溶融金属の垂れ下がりによる平均アーク電圧の低下を検
出したとき、2秒間だけ一時的に、ピーク電流値Ip=
340[A]及びピーク電流通電時間Tp=1. 5[m
s]の溶接電流に切り換えた場合の肉盛溶接ビード外観
を示す図である。同図(B)は、同図(A)の肉盛溶接
部の断面を示す図であって、湯垂れや剥離部分のない良
好な肉盛溶接ビードが得られている。
【0100】(実施例3…図9の説明)図9は、本発明
の溶接方法によって溶接した実施例3の溶接結果の良好
及び不良範囲を示す図である。同図は、本発明の溶接方
法において、溶融金属の垂れ下がりによるアーク電圧降
下を検出して予め設定したピーク電流値Ipとピーク電
流通電時間Tpよりも低い値のピーク電流値Ipとピー
ク電流通電時間Tpに切り換えた場合に、切り換え中の
時間TSと被溶接物の予熱温度TBとをパラメータにし
て、良好な溶接結果が得られる範囲を示す図である。
【0102】この実施例3の溶接条件は、被溶接物が板
厚9[mm]の軟鋼板で300[℃]に予熱した状態で、
消耗電極が直径1. 2[mm]のインコネル625で、ピ
ーク電流値Ipが360[A]で、ピーク電流通電時間
Tpが2. 0[ms]で、溶接電流が150[A]で、ア
ーク電圧が23[V]で、溶接速度が40[cm/mit]
で、ウィビング振幅が3[mm]で、ウィビング周波数が
2[Hz]ある。同図は、この溶接条件で溶接中に、溶
融金属の垂れ下がりによる平均アーク電圧の低下を検出
したとき、電流値Ip=340[A]及びピーク電流通
電時間Tp=1. 5[ms]の溶接電流に切り換え、この
切り換え中の時間TSを変化させた場合に、切り換えら
れた部分の肉盛溶接結果を示した図である。
【0104】同図の縦軸に示す軟鋼板の予熱温度TB
[℃]に関係なく、切り換え中の時間TS[S]が1
[秒]未満のときは、溶融金属の温度を短時間に下げる
ことができないために湯垂れが生じている。また、切り
換え中の時間TSが5[秒]を越えると、切り換えた部
分の肉盛溶接部で剥離が発生し始める。したがって、本
発明において溶接電流の切り換え中の時間は、1[秒]
乃至5[秒]の範囲であることが望ましい。
【0110】低熱伝導度耐熱合金の代表例として、イン
コネル、モネル、ハステロイ等の商標のNi基耐熱合金
があり、それらの一部は、JIS H 4551 「ニッケル及び
ニッケル合金板及び条」として規格化されている。本発
明は、これらの低熱伝導度耐熱合金の立向き下進パルス
MIGアーク溶接に適用される。
【0112】本発明は、溶融金属の垂れ下がりが生じて
いない定常状態で通電する溶接電流はパルス電流である
が、一時的に切り換える電流は、必ずしも、パルス電流
でなくても、切り換え後も、スプレー移行を維持するこ
とができる溶接電流であればよい。
【0114】実施例では、パルス電流の平均値よりも低
い値の溶接電流に一時的に切り換える電流として、パル
ス電流のピーク電流値Ip、ピーク電流通電時間Tp及
びピーク電流値Ipとピーク電流通電時間Tpとの両方
であったが、パルス電流のピーク電流値Ip及びベース
電流値Ib及びピーク電流通電時間Tp及びベース電流
通電時間Tbの1以上であればよい。
【0120】
【発明の効果】本発明の低熱伝導度耐熱合金の立向き下
進パルスMIGアーク溶接方法は、溶融池の溶融金属の
垂れ下がりが生じ始め、溶融金属の湯垂れが発生する前
に、平均アーク電圧の降下を検出して、この検出信号に
よって、1P1D又はnP1Pの溶滴移行が得られる範
囲内で、パルス電流の平均値よりも低い値の溶接電流に
一時的に切り換えて溶接することによって、溶融金属の
湯垂れ現象を防止すると共に、溶接を途中で休止して被
溶接物を冷却する必要がないので、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の短絡移行による立向き下進MI
Gアーク溶接方法によって溶接した肉盛溶接ビード外観
を示す図である。
【図2】図2(A)及び(B)は、最近のスプレー移行
による立向き下進溶接のパルスMIGアーク溶接方法に
よって溶接した溶接ビード外観を示す図である。
【図3】図3(A)は、平均アーク電圧の時間経過を示
す図であり、同図(B)は、溶接電流の時間経過を示す
図であり、同図(C)乃至(F)は、高速度ビデオ撮影
によって解明した「溶融金属が湯垂れを発生する現象」
であって、インコネル625の溶融金属が短時間で凝固
しないで時間経過と共に、その自重によって「溶融金属
が湯垂れする」現象を示す図である。
【図4】図4は、直径1. 2[mm]のインコネル625
の消耗電極及びアルゴン100%のシールドガスを用い
て、溶接電流平均値150[A]でアーク長3[mm]で
パルスMIGアーク溶接をして、ピーク電流通電時間T
p[ms](横軸)とピーク電流値Ip[A](縦軸)と
の関係において、1パルス1溶滴移行及び複数パルス1
溶滴移行が得られる範囲を示す図である。
【図5】図5は、パルスMIGアーク溶接によって消耗
電極から離脱したインコネルの溶滴の温度を測定するた
めの実験装置を示した図である。
【図6】図6は、図4のB点のパルス条件のみのパルス
電流を用いてスプレー移行による立向き下進溶接をした
ときの肉盛溶接ビードの外観を示す図である。
【図7】図7は、インコネル625の消耗電極を使用し
て本発明のパルスMIGアーク溶接による立向き下進溶
接を実施した場合において、溶接中の平均アーク電圧及
び溶接電流の時間経過を示す図及び溶接中の溶融池形状
の時間経過に伴う変化を示す図である。
【図8】図8は、図7で説明した本発明の溶接方法によ
って溶接した実施例2の肉盛溶接ビード外観を示す図で
ある。
【図9】図9は、本発明の溶接方法によって溶接した実
施例3の溶接結果の良好及び不良範囲を示す図である。
【符号の説明】
1 溶接ビード 2 スパッタ 3 湯垂れ 4 消耗電極 5 アーク 6 溶融池 8 タングステン電極 9 溶滴 10 水槽 13 剥離発生部 E 平均アーク電圧(値) I 溶接電流(値) Ip ピーク電流値 Ib ベース電流値 Tp ピーク電流通電時間 Tb ベース電流通電時間 L1 溶融池内の溶融金属に垂れ下がりがないときのア
ーク長 L2 溶融池内の溶融金属が垂れ下がり始めたときのア
ーク長(L1<L2) L3 溶融池の溶融金属が湯垂れしたときのアーク長
(L1=L3) L4 溶融池の溶融金属が湯垂れした後のアーク長(L
1=L4) t1,t2,t3,t4 tの時間的経過における各時
刻 1P1D 1パルス1溶滴移行範囲 nP1D 複数パルス1溶滴移行範囲 TS 切り換え中の時間 TB 被溶接物の予熱温度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H02M 9/00 H02M 9/00 B

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 消耗電極を予め設定した送給速度で送給
    し、ピーク電流とべース電流とを繰り返すパルス電流を
    通電してスプレー移行させる立向き下進パルスアーク溶
    接方法において、溶融金属の垂れ下がりによるアーク電
    圧降下を検出したときに、パルス電流の平均値よりも低
    い値の溶接電流に一時的に切り換えて溶接する低熱伝導
    度耐熱合金の立向下進パルスアーク溶接方法。
  2. 【請求項2】 消耗電極を予め設定した送給速度で送給
    し、ピーク電流とべース電流とを繰り返すパルス電流を
    通電してスプレー移行させる立向き下進パルスアーク溶
    接方法において、溶融金属の垂れ下がりによるアーク電
    圧降下を検出したときに、第1のパルス電流の平均値よ
    りも低い平均値の第2のパルス電流を予め定めた時間だ
    け通電して溶接する低熱伝導度耐熱合金の立向下進パル
    スアーク溶接方法。
  3. 【請求項3】 消耗電極を予め設定した送給速度で送給
    し、ピーク電流とべース電流とを繰り返すパルス電流を
    通電してスプレー移行させる立向き下進パルスアーク溶
    接方法において、パルス電流のピーク電流値及びベース
    電流値及びピーク電流通電時間及びベース電流通電時間
    を、各ピーク電流と同期して消耗電極から被溶接物に溶
    滴が移行する1パルス1溶滴移行となる値に予め設定し
    ておき、立向き下進溶接中の溶融金属の垂れ下がりによ
    るアーク電圧の低下を検出したときに、パルス電流のピ
    ーク電流値及びベース電流値及びピーク電流通電時間及
    びベース電流通電時間の1以上を、1パルス1溶滴移行
    又は複数パルス1溶滴移行する範囲内で、パルス電流の
    平均値よりも低い値に一時的に切り換えて、湯垂れ現象
    を抑制しながらスプレー移行溶接する低熱伝導度耐熱合
    金の立向き下進パルスMIGアーク溶接方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010052037A (ja) * 2008-07-30 2010-03-11 Daihen Corp 交流パルスアーク溶接によるインコネルの肉盛り溶接方法
CN102581436A (zh) * 2011-01-11 2012-07-18 株式会社大亨 电弧焊接方法以及电弧焊接系统

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CN102581436B (zh) * 2011-01-11 2016-05-04 株式会社大亨 电弧焊接方法以及电弧焊接系统

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