JPH10263622A - 耐食性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法

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JPH10263622A
JPH10263622A JP8893897A JP8893897A JPH10263622A JP H10263622 A JPH10263622 A JP H10263622A JP 8893897 A JP8893897 A JP 8893897A JP 8893897 A JP8893897 A JP 8893897A JP H10263622 A JPH10263622 A JP H10263622A
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scale
corrosion resistance
hot
rolled
rolling
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Masaaki Kono
雅昭 河野
Kazuhide Ishii
和秀 石井
Susumu Sato
佐藤  進
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Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 黒皮のままでの耐食性、特に加工部の耐食性
に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 表面のスケール厚さが 2.0μm 以下で該
スケール中のFe、Crの濃度CFe、CCrで定まるCCr
〔=CCr/(CFe+CCr)〕が0.20以上であるフェライ
ト系ステンレス熱延鋼板であって、スラブを熱間にて粗
圧延し、デスケーリングを行い、仕上げ圧延してコイル
状に巻き取るにあたり、仕上げ圧延ロール噛み出し部
を、好ましくは局所ガスパージすることにより、酸素濃
度3.0vol%以下の雰囲気に保持し、 700℃以下で巻き取
ることにより製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性に優れたフ
ェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法に関
し、詳しくは、熱延後、酸洗等の脱スケール処理なしで
供用されうる耐食性、とくに曲げ等の加工を受けた部位
の耐食性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼帯の熱間圧延においては、一般に、加
熱炉で加熱後抽出された鋼スラブを、一次スケール除去
後、数段の圧延機からなる粗圧延設備により厚さ20〜40
mm程度のシートバーと呼ばれる半製品に粗熱延し、この
シートバーをデスケーリング装置によって二次スケール
を除去した後、数段の圧延機群からなる仕上げ圧延設備
により仕上げ熱延して鋼帯となし、この鋼帯を冷却装置
で制御冷却して所定の材質に調えた後、コイル状に巻き
取るという工程が採用される。
【0003】熱間圧延の各工程は全て大気中で進められ
るため、仕上げ圧延前のスケール除去にもかかわらず熱
延鋼帯の表面には、酸化皮膜(これも単にスケールと呼
ばれる)が形成される。このスケールを有したままの熱
延鋼帯を冷間圧延すると、圧延中に剥離し鋼表面に噛み
込んで表面品質の低下を来すため、冷間圧延に先立って
酸洗等の化学的、さらにはその前にショットブラスト等
の機械的な、脱スケールを行ってスケール除去を行うの
が常であり、このスケール除去工程がコストアップ要因
の一つとなっている。
【0004】このコストアップ要因を排除するためにス
ケールの極薄化を指向する熱延方法として、例えば、特
開昭58-53323号公報、特開昭59-97710号公報、特開昭61
-123403 号公報等に示されるように、熱間仕上げ圧延機
最終スタンド出側から巻取機までの鋼帯通過区間を不活
性ガスまたは還元性ガス雰囲気に管理したボックスで覆
うことにより仕上げ熱延後巻き取られるまでの鋼帯のス
ケール生成を抑える方法が提案されている。これらは、
熱間圧延時にそれ以前のスケールが除去され、最終的に
残るスケールは最終圧延から巻き取りまでの間に生成し
たもので、その間を無酸化雰囲気に保持すればスケール
の極薄化が達成できるとの技術思想に立つものである。
【0005】しかし、この方法は最終圧延機出側から巻
取機までの長大な区間をガスシールするため、多量のガ
スを供給する必要があって実用化が困難であり、また、
酸洗を省略できるほどの薄さにまでスケール生成を抑制
することは甚だ難しい。これに対し、熱間圧延時にはそ
れ以前のスケールは除去されず圧下率にほぼ等しい割合
で圧延されて薄くなるという知見に基づき、例えば、特
開平4-266401号公報には、比較的圧延温度が低くそれゆ
えスケール生成速度の小さい仕上げ圧延機列後段での圧
下率を大きくし、その段階で生成するスケールを薄く展
延するとともに、仕上げ圧延機出側以降を不活性ガス雰
囲気下で冷却して巻き取る方法が提案されている。しか
し、この方法によれば、温度の低い仕上げ圧延機後段で
多大な圧下量を要し、圧延機の付加が大きく最終的に圧
延できる板厚が制限されるという問題がある。
【0006】また、特開平4-66203 号公報には、熱間仕
上げ圧延機のスタンド間を不活性ガス雰囲気下に置くと
ともに、圧延機入側近傍で表面スケールを除去して圧延
するという方法も提案されている。しかし、この方法で
は、仕上げスタンド間全体を不活性ガス雰囲気に置くた
めに使用する不活性ガス量が膨大なものとなるのみなら
ず、スタンド間がボックスで覆われるため、例えばスタ
ンド間張力のかかり過ぎによる鋼帯破断等のトラブル発
生時の復旧に多大な労力と時間を要して生産性が大幅に
阻害されるという問題がある。
【0007】さらに、これらの従来技術はいずれも普通
鋼あるいは低炭素鋼を対象としたものであり、表面品質
や耐食性が特に重視されるステンレス鋼に関するもので
はない。ステンレス鋼では熱間圧延時に生成するスケー
ル量は低炭素鋼などと比較して若干少なめではあるが、
ほとんどの場合、そのままでは使用に供することができ
ず酸洗を行う必要がある。そして、ステンレス鋼は普通
鋼に比べて脱スケール性が悪いため、専用の酸洗設備を
誂える必要があり、さらに酸洗速度も低炭素鋼などに比
べ遅いため生産性の悪化を余儀なくされて製造コストが
高くならざるをえない。
【0008】一方、ステンレス鋼を対象とする薄スケー
ル化方法としては、例えば、特開平8-108210号公報に、
熱間仕上圧延終了後、巻き取りまでの間で、鋼帯に鋼帯
温度に応じた衝突エネルギーを有する高圧水を噴射する
ことによりデスケーリングする薄スケール熱延フェライ
ト系ステンレス鋼帯の製造方法が開示されている。しか
し、この方法により製造されたステンレス熱延鋼帯は、
脱スケール処理を行わない場合には耐食性に劣り、さら
に、急激な高圧水噴射により鋼帯に大きな熱応力を生じ
変形が誘発され、鋼帯の形状不良や巻き取り装置での巻
き取り不良が生じ問題となっていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、熱延鋼板
の薄スケール化は従来から試みられているにもかかわら
ず、生産性やコストを満足し実用に足る技術は未だ存在
しない。ステンレス鋼は、高価なCrやNi等の金属元素を
多量に含有することに加え、普通鋼と比較して酸洗性が
悪いため専用の酸洗設備を要し、さらに酸洗速度も遅い
ことから生産性も制約を受けるため、非常に高価な材料
となっている。そのため、いかに耐食性、美観等の点で
普通鋼より優れた特徴を有していても、コスト面でその
使用が制限される場合が多いのが現状である。
【0010】ステンレス鋼でも表面性状があまり問題視
されない用途向けに酸洗工程を経ない熱延鋼板を提供で
きれば、コスト面での使用制限が大幅に緩和される筈で
ある。ところが現状では、焼鈍(酸洗前に一般に行われ
る)−酸洗を経ない熱延ステンレス鋼板(以下適宜「黒
皮材」という)は、耐食性についても、通常のステンレ
ス鋼の酸洗板や冷延板に比べて耐食性が劣っており、特
に曲げ・プレス等の加工を受けた部位の耐食性が劣ると
いう問題がある。
【0011】上記従来技術の問題点に鑑み、本発明は、
表面酸化スケール生成が大幅に抑制されてなり、黒皮材
同士の比較において従来よりも、特に加工部の耐食性に
優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造
方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこの目的達
成に向け、ステンレス熱延鋼板、とくにフェライト系ス
テンレス熱延鋼板の表面酸化スケール形成に及ぼす熱延
条件とくに熱間圧延雰囲気の影響を詳細に検討した結
果、酸化スケールの生成・成長には熱間圧延工程のうち
でもとくに仕上げ圧延ロール噛み出し部の雰囲気酸素濃
度が大きく影響し、さらに、黒皮材の耐食性はスケール
厚さとスケール組成に大きく支配されるという新規かつ
重要な知見を得た。
【0013】本発明はかかる知見に基づいて完成された
ものであって、表面のスケール厚さが 2.0μm 以下で該
スケール中のFe、Crの濃度をそれぞれCFe、CCrとした
とき、CCr比=CCr/(CFe+CCr)で定義されるCCr
比が0.20以上であることを特徴とする黒皮のままでの耐
食性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板である。
【0014】また、本発明は、スラブを熱間にて粗圧延
し、デスケーリングを行い、仕上げ圧延してコイル状に
巻き取るにあたり、仕上げ圧延ロール噛み出し部を、好
ましくは局所ガスパージすることにより、酸素濃度3.0v
ol%以下の雰囲気に保持し、700℃以下で巻き取ること
を特徴とする黒皮のままでの耐食性に優れたフェライト
系ステンレス熱延鋼板の製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】はじめに、本発明の契機となった
研究実験について説明する。図1は、この実験に用いた
試験圧延機の(a)は模式側面図、(b)は(a)で上
圧延ロールを取り去った状態の部分的模式平面図であ
り、試験材10を加熱炉1で加熱後圧延ロール2で圧延
し、その後冷却水噴霧装置3で冷却後均熱炉4に装入し
て均熱保持することにより、仕上げ熱延工程を模すこと
ができるようになっている。試験材10は噛み込み線10A
から噛み出し線10B までの間で圧延ロール2により圧下
される。5は噛み出し部(噛み出し線10B 直近周辺)の
雰囲気制御用のガスノズル、6はこの雰囲気の酸素濃度
測定用の酸素メータ、6Aは酸素センサである。
【0016】この試験圧延機を用いて、熱間圧延中の雰
囲気と表面スケール生成挙動との関連を検討した。試験
材としては16wt%Crのフェライト系ステンレス鋼を使用
し、初期厚さ10mmのものをステンレスフォイルでくる
み、Arガスを満たして無酸化雰囲気とした加熱炉1に装
入して950 ℃で加熱した。加熱後、圧延直前に試験材10
をフォイルから取り出して圧延ロール2に噛み込ませ、
圧延温度 900℃、圧下率50%の1パス圧延を行い、噛み
出し部の雰囲気を種々変更するとともに、圧延後の試験
材(熱延板)10を冷却水噴霧装置3で水噴射量を変更し
て冷却した後、巻取後コイル内部雰囲気相当の酸素濃度
3.0vol%(残部N2)に雰囲気調整し各種温度に維持した
均熱炉4内に2時間保持することにより各種巻き取り条
件をシミュレートし、この過程を経た熱延板10につい
て、表面に生成したスケールの厚さを調査した。
【0017】噛み出し部の雰囲気変更は、酸素メータ6
(酸素センサ6Aは噛み出し線10B から下流側に200mm 離
れた位置に置いた)で酸素濃度をモニタしながら、ガス
ノズル5から流量を変えてN2ガスを噴出させて局所ガス
パージすることにより行った。この方法によれば、噛み
出し部の酸素濃度を0.1vol%から大気中濃度までの範囲
で任意かつ容易に制御できる。なお、酸素センサ6Aの噛
み出し線10B からの距離を50〜500mm の範囲で変化させ
ても酸素メータ6の測定値に有意差はなかったが、それ
より離れると測定値が高くなった。
【0018】熱延板のスケール厚さは、断面のSEM像
から測定した。例えば図2は、冷却後均熱保持温度 700
℃とした場合の噛み出し部酸素濃度とスケール厚さとの
関係を示すグラフであり、図2より、スケール厚さが噛
み出し部の雰囲気酸素濃度に大きく依存し、酸素濃度を
3.0vol%以下に抑制することによりスケール厚さを大幅
に抑制でき、さらに酸素濃度を1.0vol%以下に抑制する
ことによりスケール厚さを1.0 μm 以下とすることがで
きることがわかる。
【0019】また、例えば図3は、噛み出し部酸素濃度
を1.0vol%に制御した場合の冷却後均熱保持温度とスケ
ール厚さとの関係を示すグラフであり、図3より、この
保持温度が高くなるとスケール成長速度が大きくなるた
めスケール厚さは厚くなるが、保持温度700 ℃以下で
は、噛み出し部酸素濃度3.0vol%の場合、スケール厚さ
は2.0 μm 以下、噛み出し部酸素濃度1.0vol%の場合、
スケール厚さは 1.0μm以下に抑えられることがわか
る。
【0020】なお、このようなスケール厚さの抑制現象
は次のような機構に基づくものと推察される。すなわ
ち、スケール生成・成長に対しては酸化雰囲気および温
度の他に、圧延時に導入される歪みも駆動力として作用
するが、噛み出し部酸素濃度を抑制された圧延材は、歪
み導入から回復・解放までの熱延歪みが駆動力として作
用しうる僅かな時間帯を難酸化雰囲気に護られて通過す
ることで急激なスケール生成・成長が抑制されたものと
考えられる。
【0021】一方、これらの表面スケールをAES、X
線回折、TEM等により分析したところ、検出される酸
化物はいずれの熱延板においても主として(Fe,Cr)2O3
よび(Fe,Cr)3O4であったが、噛み出し部酸素濃度を低下
および熱延後の保持温度を低下した条件下ではスケール
中のCr濃度が高くなる傾向が認められた。そして、スケ
ール中のCr濃度がある値以上になると、後述の実験例に
示すように、同じスケール厚さの熱延板の耐食性が一段
と向上することがわかった。
【0022】なお、スケール中のCr濃度が前記のように
高くなるのは、酸化能力の低い条件下では、Feよりも低
い酸化物生成エネルギーを有するCrの酸化割合が増加す
るためと考えられる。本発明者らは、こうした研究実験
で得られた上記知見に基づき、フェライト系ステンレス
熱延鋼板の表面スケールを、従来の熱間圧延設備の大幅
な改造を伴うことなく、効果的に抑制できる技術を発明
するに至り、さらに、フェライト系ステンレス熱延鋼板
のスケール厚さ・スケール組成と耐食性との関係を鋭意
検討した結果、両者には密接な関係があることを見出し
て本発明を完成した。
【0023】次に、本発明の要件限定理由を説明する。 スケール厚さ: 2.0μm 以下 フェライト系ステンレス熱延鋼板の耐食性は、母地合金
組成によるところが大きいが、黒皮材の耐食性、とくに
曲げ加工等を受けた部位の耐食性は表面スケールの組成
および厚さによっても大きく変わることがわかった。す
なわち、スケール組成を代表させたCCr比が後述の好適
範囲にあり、かつスケール厚さが薄くなると黒皮のまま
での耐食性が向上し、その効果は 2.0μm 以下で顕著と
なる。
【0024】よって、黒皮のままでの耐食性、とくに曲
げ加工等を受けた部位の耐食性を顕著に向上させるに
は、スケール厚さが 2.0μm 以下である必要がある。な
お、スケール厚さが 0.5μm 以下で外観がテンパーカラ
ー状を呈し表面光沢が一層向上するので、スケール厚さ
のより好ましい範囲は 0.5μm 以下である。また、スケ
ールは全くないに越したことはないのでスケール厚さの
下限は特に設ける必要がない。
【0025】CCr比:0.20以上 黒皮材の耐食性(とくに加工部分の耐食性)は、前述の
スケール厚みとともにCCr比に大きく依存し、スケール
厚さ 2.0μm 以下においてCCr比が0.20以上であると、
曲げ加工等を施した場合にも耐食性が向上する。耐食性
の向上する理由は明らかではないが、スケール厚みが2.
0 μm 以下でかつCCr比が0.20以上では、スケールと母
地合金との密着性が加工によっても剥離しないレベルに
達し、それに随伴してスケール剥離に伴う耐食性への悪
影響、すなわち隙間腐食を起こしやすい環境の形成や、
不働態皮膜の発達が不十分で発錆しやすい状態にある母
地合金の露出などが抑えられるためと考えられる。
【0026】さらに、スケール厚さが厚いものはスケー
ル内部でのCrの内部酸化量も多く、地鉄表層中のCr含有
量が低下するため耐食性が劣化することも予想される。
一方、スケール厚さが薄くかつ表層でのスケール中のC
Cr比が高い黒皮材では、スケールの密着性が優れ、ま
た、スケール自体が緻密で耐食性を有し地鉄部の腐食を
抑制し、さらに、スケール厚さが薄いため全体的に見た
場合、地鉄表層のCr欠乏が生じにくい、等の理由によ
り、耐食性が向上したものと考えられる。
【0027】このようなことから、本発明では、スケー
ル厚さ:2.0 μm 以下、CCr比:0.20以上に限定した。
仕上げ圧延ロール噛み出し部の酸素濃度:3.0vol%以下 前述のように、熱延中のスケールの生成・成長を抑制す
るには、コイル巻取り温度の低下とともに、圧延により
導入された歪みが多量に残存する圧延直後の鋼帯を難酸
化環境に置くことが有効である。とくに、熱延中のフェ
ライト系ステンレス鋼のスケール生成・成長を厚さ 2.0
μm 以下に抑え、かつCCr比を0.20以上に制御するため
には、コイル巻取り温度を700 ℃以下にするとともに、
仕上げ圧延ロール噛み出し部を酸素濃度3.0vol%以下の
雰囲気に保持することが必要である。さらに、スケール
厚さを安定的に薄くするためには、ロール噛み出し部の
酸素濃度を1.0vol%以下とするのが好ましい。なお、酸
素濃度は可能なかぎり低いほうが望ましいことは自明で
あるから本発明では特に下限は設けない。
【0028】圧延ロール噛み出し部雰囲気制御は、前記
研究実験で述べたように局所ガスパージによって容易に
実施できるので、従来技術にあるような長大なボックス
を設ける必要はない。またパージ用のガスとしては前記
研究実験で用いたN2ガスのほか、Arガスあるいは他の不
活性ガス等の非酸化性ガスを用いてもよい。なお、噛み
出し部雰囲気制御は、仕上圧延機全スタンドの圧延ロー
ルに対して行うのが最善であるが、製品によってはいく
つかのスタンドについてこれを省略することもできる。
【0029】巻取温度: 700℃以下 圧延後のコイル巻取温度が 700℃を超えると、噛み出し
部雰囲気制御を行って熱延中のスケール生成・成長を抑
制しても、コイル冷却中にスケールが成長し厚さ 2.0μ
m を超えたりあるいはスケール中のCr濃度が増加しない
ため、巻取温度は 700℃以下に規定する。なお、スケー
ル厚さ 0.5μm 以下に制御してテンパーカラー状とし表
面光沢をさらに向上させるには巻取温度を 650℃以下と
することが望ましい。また、巻取温度の下限はスケール
厚さ制御の観点からは特に規定されず、巻き形状の不良
を防止する観点から通常設定される下限(300 ℃程度)
以上であればよい。
【0030】
【実施例】厚さ200mm のSUS430スラブを1200℃に加熱
後、粗圧延機にて厚さ30mmのシートバーに粗圧延して図
4に示す仕上げ圧延設備に送り、デスケーリング装置7
でデスケーリング後、各スタンド出側に噛み出し部酸素
濃度制御用のN2ガスノズル5が配置された7スタンドの
仕上げ圧延機8により、圧延開始温度900 ℃、圧延終了
温度 800℃とし、N2ガス噴出量の調整により噛み出し部
酸素濃度を表1に示すように種々変えて、仕上げ板厚4
mmに仕上げ圧延し、続いて冷却装置(冷却水噴霧装置)
3で水量を変えて水噴霧冷却することにより巻取温度
(CT)を表1に示す通り種々変えてコイラ9で巻き取
った。なお、図中の11は圧延パスラインである。
【0031】こうして得られた熱延コイル(熱延板)か
ら試験片を採取し、スケール厚さ、CCr比、耐食性を調
査した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】スケール厚さは、断面のSEM像から測定
した。CCr比は、表層スケールをAESにより定量分析
して求めた。耐食性は、5%NaCl水溶液を用いた塩水噴
霧試験(SST)により評価した。塩水噴霧試験(SS
T)は、7×10cmに切り出した試験片を用い、35℃で4
時間行い、試験後の試料面を目視観察して、表2に示す
グレード1〜3で評価した。試験片は、切り出しのまま
(未加工部)、および90°の曲げ加工を施したもの(加
工部)を用いた。
【0034】なお、熱延板を酸洗して、スケールのない
状態で上記した試験方法で耐食性を調査したが、当然な
がら、加工部、未加工部いずれも表2に示すグレードの
1であり、発錆は見られなかった。
【0035】
【表2】
【0036】圧延材No.1〜3 は、噛み出し部雰囲気制御
を行わない従来例である。コイル巻取り温度が低下する
にしたがい、スケール厚さは薄くなる傾向を示している
が、スケール厚さは3.8 〜9.1 μm と厚い。また、スケ
ール表面のCCr比は0.04〜0.13と低い。これら従来例の
耐食性のグレードはいずれも3であり、スケールのない
状態の母材の耐食性より著しく劣っている。
【0037】圧延材No.4、5 は、噛み出し部の酸素濃度
を10vol %まで低下した比較例である。スケール厚さは
3.2 〜5.1 μm と、噛み出し部雰囲気制御を行わない場
合にくらべ、薄くなっているが、耐食性はグレード2〜
3であり優れているとは言えない。圧延材No.6は、噛み
出し部の酸素濃度を3.0vol%に低下した例であるが、コ
イル巻取り温度が760 ℃と高い比較例である。スケール
厚さは3.5 μm と厚く、CCr比は0.13と低く、また、耐
食性はグレードは2で、加工部に発錆がみられた。
【0038】圧延材No.14 は、噛み出し部の酸素濃度を
0.1vol%まで低下した例であるが、コイル巻取り温度が
760 ℃と高い比較例である。スケール厚さは0.8 μm と
薄いが、CCr比は0.16と低く、また、耐食性はグレード
は2で、加工部に発錆がみられた。これに対し、圧延材
No.7〜13は、本発明の範囲内の例である。スケール厚さ
は2.0 μm 以下と薄く、CCr比は0.20以上と高く、また
耐食性グレードは1であり、加工部、未加工部ともに良
好な耐食性を有している。
【0039】図5に、上記した各圧延材の耐食性グレー
ドにおよぼすコイル巻取温度と噛み出し部酸素濃度の関
係を図示する。この図から熱延条件のうち、コイル巻取
温度を700 ℃以下、噛み出し部酸素濃度を3.0vol%以下
の本発明範囲内に調整することにより、黒皮のままでの
耐食性、とくに曲げ加工を受けた部位での耐食性が著し
く向上することがわかる。
【0040】このように、本発明によれば、黒皮のまま
での耐食性、とくに曲げ加工等の加工を受けた部位での
耐食性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板が得ら
れる。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、黒皮材同士で従来に比
較してスケール厚さが際立って薄くそれゆえ耐食性(特
に加工部の)に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼板
を、多大な設備投資を要さず、また生産性を損なうこと
なく製造することができる。また、これにより、従来、
コスト的に有利であっても耐食性の問題で使用が制限さ
れ酸洗板や冷延板に供用の座を譲らざるをえなかった黒
皮材を、例えば、パイプ曲げ加工とを施して使用され、
かつ耐食性が要求される自動車排ガス部材や、工事現場
などで使用される足場板などの各種用途分野に安価に提
供できるようになることに加え、これを冷延素材とする
場合にも、そのスケールの薄さから酸洗工程の省略ある
いは酸洗負荷の大幅な低減が必至で製造コストの低減が
期待できるという、産業上寄与するところ多大な種々特
段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験圧延機の(a)は模式側面図、(b)は
(a)で上圧延ロールを取り去った状態の部分的模式平
面図である。
【図2】噛み出し部酸素濃度とスケール厚さとの関係を
示すグラフである。
【図3】冷却後均熱保持温度とスケール厚さとの関係を
示すグラフである。
【図4】実施例に用いた仕上げ圧延設備の模式図であ
る。
【図5】耐食性におよぼすコイル巻取温度と噛み出し部
酸素濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 加熱炉 2 圧延ロール 3 冷却装置(冷却水噴霧装置) 4 均熱炉 5 ガスノズル 6 酸素メータ 6A 酸素センサ 7 デスケーリング装置 8 仕上げ圧延機 9 コイラ 10 試験材(熱延板) 10A 噛み込み線 10B 噛み出し線 11 圧延パスライン

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面のスケール厚さが 2.0μm 以下で、
    該スケール中のFe、Crの濃度をそれぞれCFe、CCrとし
    たとき下記に定義されるCCr比が0.2 以上であることを
    特徴とする黒皮のままでの耐食性に優れたフェライト系
    ステンレス熱延鋼板。 記 CCr比=CCr/(CFe+CCr
  2. 【請求項2】 スラブを熱間にて粗圧延し、デスケーリ
    ングを行い、仕上げ圧延してコイル状に巻き取るにあた
    り、仕上げ圧延ロール噛み出し部を酸素濃度3.0vol%以
    下の雰囲気に保持し、 700℃以下で巻き取ることを特徴
    とする黒皮のままでの耐食性に優れたフェライト系ステ
    ンレス熱延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 スラブを熱間にて粗圧延し、デスケーリ
    ングを行い、仕上げ圧延してコイル状に巻き取るにあた
    り、仕上げ圧延ロール噛み出し部を局所ガスパージして
    酸素濃度3.0vol%以下の雰囲気に保持し、 700℃以下で
    巻き取ることを特徴とする黒皮のままでの耐食性の優れ
    たフェライト系ステンレス熱延鋼板の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007275930A (ja) * 2006-04-06 2007-10-25 Nippon Steel Corp 熱延鋼板の製造方法
JP2009248163A (ja) * 2008-04-09 2009-10-29 Nippon Steel Corp 熱延鋼板の製造方法

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