JPH1025679A - ゴム補強用スチールコードおよびラジアルタイヤ - Google Patents

ゴム補強用スチールコードおよびラジアルタイヤ

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JPH1025679A
JPH1025679A JP8198384A JP19838496A JPH1025679A JP H1025679 A JPH1025679 A JP H1025679A JP 8198384 A JP8198384 A JP 8198384A JP 19838496 A JP19838496 A JP 19838496A JP H1025679 A JPH1025679 A JP H1025679A
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義之 小黒
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    • D07ROPES; CABLES OTHER THAN ELECTRIC
    • D07BROPES OR CABLES IN GENERAL
    • D07B1/00Constructional features of ropes or cables
    • D07B1/06Ropes or cables built-up from metal wires, e.g. of section wires around a hemp core
    • D07B1/0606Reinforcing cords for rubber or plastic articles
    • D07B1/062Reinforcing cords for rubber or plastic articles the reinforcing cords being characterised by the strand configuration

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  • Ropes Or Cables (AREA)
  • Tires In General (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】ゴム浸透性が良好でしかもすぐれた靭性と高耐
疲労性を備え、ゴム製品の適切な軽量化と耐疲労性向上
を図ることができる安価なゴム製品補強用スチールコー
ドを提供する。 【解決手段】素線を同一方向に同一ピッチで同時に撚り
合わせた1×n(3〜5本)のルーズオープン構造のス
チールコードであり、素線の型付け率がどのコード断面
においても115%以上で、かつ素線が重量%で0.7
0〜0.76の炭素を含有する炭素鋼を用いて作られて
おり、コードに撚り合わせる前の引張り強さが素線の直
径d(mm)との関係でZ(kgf/mm2)≧−200d+
365を満たすとともに、コードに撚り合わせる前の素
線の集合強度Aと撚り合わせ後のコードの強度Bとの比
(B/A)が0.935以上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用タイヤや搬送
用コンベアベルトなどの各種ゴム製品の補強材として用
いられる高強度なスチールコードおよびこれを用いたラ
ジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用タイヤ、高圧ホース、コンベア
ベルト等のゴム製品の補強材としてゴムと加硫接着させ
るために真鍮めっきを施した直径が0.10〜0.40
mmの素線を撚り合わせたスチールコードが用いられて
いる。このうち乗用車用ラジアルタイヤのベルト補強材
としては、従来4本または5本の素線を同時に撚り合わ
せた1×4、1×5構造のスチールコードが主に持ちい
られている。しかし、このような構造においては、図3
(a)(b)にその断面を示すように素線間に隙間がほ
とんどないため、製造されたタイヤにおいてスチールコ
ードの内部までゴムがほとんど浸透しない。このような
状態ではタイヤはその機能が長期に渡って十分に発揮す
ることができない。すなわち、タイヤが外傷を受けると
ここから水分がタイヤに浸入しコード内部のゴムの浸透
していない空隙を伝わって錆がコード全長に伝播するこ
とになる。これによりスチールコードの強度低下が起る
だけでなく、錆の進行によってコードの素線表面とゴム
との接着層が破壊され、いわゆるセパレーション(剥
離)現象が発生することになる。このような状態におい
ては、ゴムとスチールコードとの一体性が損なわれ、複
合体としてのタイヤの性能が大きく低下する。したがっ
て、ゴム製品においては、スチールコードへのゴム浸透
性は最重要特性の1つである。
【0003】そこで最近では、図4にその断面を示すよ
うにコード内部までゴムが浸透しやすい構造のスチール
コードが採用されるようになっている。図4(a)はほぼ
平行に束ねた2本の素線イの周りに2本の素線ロを巻き
付けるように撚り合わせた2+2構造のものである。
(b)は5本の素線ハにそれぞれ過大な型付けを施し、
それら素線をルーズに撚り合わせたオープン構造のもの
である。これらによれば、ゴム浸透性を向上することが
できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、自動車の燃費
削減の要求からタイヤの軽量化が図られており、これに
呼応してタイヤの補強材としてのスチールコードについ
て、その強度を強くして使用量を減らすとともにスチー
ル構造を簡素化し、同時にコスト低減を図ることが、前
記したゴム浸透性とともに大きな課題となっている。こ
の点に関して従来では効果的な解決策がなかった。
【0005】すなわち、従来では一般に、スチールコー
ド用原料として、炭素を0.70〜0.76wt%含有
する炭素鋼線材を用いて、図5のようにZ=−200d
+(335〜355)kgf/mm2(d:素線の直径
mm)程度の強度の素線が使用されていたが、これでは
軽量化を達成するのに必要な強度が不足するため、原料
自体を強度の高いものに替え(炭素含有量の多いものを
用いる)、これと併せて最終の伸線総加工度を高くして
加工硬化を高め、Z=ー200d+(365〜395)kg
f/mm2程度の高強度素線を用いたスチールコードが普及
しつつある。しかしながら、かかるスチールコードは素
線原料の炭素含有量が0.80〜0.86重量%程度と
多いため、コストアップが避けられない。また、原料の
炭素含有量が高くなるほど製鋼工程で偏析など欠陥が出
やすく、その線材の加工工程においても熱処理が難しく
なったり、伸線時に非金属介在物の影響が大きく現われ
たりする。この点からも使用原料はできるだけ炭素含有
量の少ない方が好ましいのである。
【0006】しかしながら、この対策として、原料の炭
素含有量を上げずに伸線加工度だけを高めて素線強度を
上げようとしても靭性が大きく劣化してしまい、時には
最後まで伸線加工ができなくなって所定の直径の素線が
得られなくなることもある。たとえ無理な加工によって
製造できても、かかる高強度、低靭性の素線はその後の
撚り線工程において断線が多発してコードに撚りあげる
ことができなくなったり、たとえコードに撚りあげられ
ても、撚ることによって起る強度劣化の程度も大きく、
素線を高強度化した意味がなくなってしまう。さらには
コードの耐疲労性も悪いものになってしまうのである。
したがって、単純に素線の強度を上げればよいというも
のではなく、靭性にも富んだ素線でなければ実用化は不
可能である。ところがこのような素線の靭性良否限界を
図る尺度としては今までに適当なものがなく、実際には
コードに撚り上げてみなければ判断がつかないのが現状
であり、コードを構成している素線の靭性良否を評価
し、これによってコードの善し悪しを判定する適当な手
段もなかった。このようなことから、炭素を0.70〜
0.76wt%含有する鋼線材をもってしては実用的な
高強度素線を製造することができず、従来ではコストの
上昇をやむなきことととして0.80重量%以上の炭素
を含有する高炭素鋼線材を使用して高強度素線とし、こ
れを用いて前記構造のスチールコードとしていたもので
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は前記のような問
題点を解消するために研究して創案されたもので、その
第1の目的は、ゴム浸透性が良好でしかもすぐれた靭性
と高耐疲労性を備え、ゴム製品の適切な軽量化と耐疲労
性向上を図ることができる安価なゴム製品補強用スチー
ルコードを提供することにある。また、本発明の第2の
目的は、高性能で寿命の長い軽量タイヤを提供すること
にある。なお、本発明のスチールコードはラジアルタイ
ヤに好適であるが、そのほか搬送用コンベアベルトなど
の各種ゴム製品の補強材としても好適である。
【0008】上記第1の目的を達成するため本発明は、
n本(3〜5本)の過大な型付けを施した素線を同一方
向に同一ピッチで同時に撚り合わせた1×nのルーズオ
ープン構造のスチールコードにおいて、該スチールコー
ドにおける素線の型付け率がどの断面においても115
%以上であり、かつ素線が重量%で0.70〜0.76
の炭素を含有する炭素鋼を用いて作られており、コード
に撚り合わせる前の引張り強さZが下記の式を満たすと
ともにコードに撚り合わせる前の素線の集合強度Aと撚
り合わせ後のコードの強度Bとの比(B/A)が0.9
35以上である構成としたものである。 Z≧−200d+365 〔Z:引張り強さ(kgf/mm2)、d:素線の直径
(mm)〕
【0009】好ましくは、スチールコードを構成する素
線は一方向ねじり後、逆方向ねじりを与える捻回−トル
ク試験においてトルクの低下率が7%以下のものであ
り、かかる素線としては、炭素を0.70〜0.76重
量%含有する炭素鋼線材を使用し、これに熱処理とめっ
きを施した後、下記の条件にて最終湿式伸線を行って作
られたものが好適である。 引抜き用ダイスとして、アプローチ角度2αが8〜1
0°、ベアリング長さが0.3d1(d1=ダイス孔径)
のものを用いる。 仕上げ引抜きは2個の引抜きダイスを直列に配したダ
ブルダイスを使用し、出口側のダイスにおける減面率を
1.2〜3.9%としたスキンパス伸線を行なう。 ダブルダイスおよびこれより上流の数枚の引抜きダイ
スに焼結ダイヤモンドニブを用いる。 最終ダイス通過直後のスチールワイヤ温度を150℃
以下に制御する。第2の目的を達成するため本発明は、
上記スチールコードをベルト部の補強に用いたものであ
る。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明を添付図面に基いて詳
細に説明する。図1は本発明によるスチールコードを例
示しており、(a)は3本の同径の素線Wを100%を
越える過大な型付け率をもってルーズに撚り合せたもの
であり、(b)は4本の素線Wを100%を越える過大
な型付け率をもってルーズに撚り合せたものであり、
(c)は5本の素線Wを100%を越える過大な型付け
率をもってルーズに撚り合せたものである。それらの例
において、スチールコードを構成する素線Wは通常、直
径0.20〜0.35mmで表面には真ちゅうめっきな
どゴムと接着性のよい被覆が施されている。素線Wは同
一方向に同一ピッチで同時に撚り合わされており、該ス
チールコードにおける素線は長手方向において非接触が
続くということはありえず、当然にコード長手方向と直
角の断面において2本以上が部分的に接触する個所が存
在するが、その場合でも、コード断面における型付け率
が115%以上となっていることが必要である。コード
断面における型付け率とは、図1(a)(b)(c)に示すよう
な無負荷状態のスチールコードにおいて、全素線が納ま
る最小外接円D1と図2(a)(b)(c)に示すように素線をタ
イトに撚った場合の外接円D2との比すなわち、〔(D1
/D2)×100(%)〕で表される値であり、この型
付け率が115%未満では素線相互間の隙間Sが小さく
なり、ゴム浸透性が低下するため不可である。ただ、型
付け率ががあまり大きすぎるとコードの均一性が悪くな
るので、上限は160%未満程度に抑えることが好まし
い。
【0011】本発明は、上記スチールコードにおいてさ
らに次のような構成を有している。まず、各素線Wは、
炭素含有量が0.70〜0.76重量%の炭素鋼線材を
用い、これを従来より高い総加工度の伸線加工すること
よって作られており、撚り合わせ前の引っ張り強さZが
Z≧ー200d+365(kgf/mm2)の高強度となってい
る。炭素鋼線材の炭素含有量の下限を0.70%とした
のは、これを下回る炭素量では、好適な最終伸線条件を
採用しても、引っ張り強さがZ≧−200d+365(k
gf/mm2)が得られないからである。上限を0.76%と
したのは、これを上回る炭素量ではコストが高くなるな
どの問題があるからである。具体的な化学的成分組成と
しては、C:0.70〜0.76%、Si:0.12〜0.
35%、Mn:0.3〜0.9%、残部Feおよび不可避
的不純物からなるものであるが、前記基本成分組成にC
rやNiなどを合金元素として所定量添加していてもよ
い。撚り合わせ前の引っ張り強さZがZ<ー200d+
365では従来のものとの差が少なく、高強度化による
タイヤの軽量化には効果を発揮できない。
【0012】さらに本発明は、各素線の強力が、コード
撚り合わせ前の集合強力Aとコード撚り合わせ後のコー
ド強力Bの比(B/A)で0.935以上としている。
これは撚り減りを少なくするような撚り効率とするため
であり、B/Aが0.935未満では、素線の引張り強
さが前記条件を満たしていても撚り合わせたコードとし
ては強度が不十分となる不具合があるためである。さら
に本発明は、好適には、撚り合わせ前および撚り合わせ
後において各素線Wが良好な靭性を備えている。これは
具体的には、一方向捻り後、逆方向捻りを与える捻回試
験において、捻回ートルクの連続曲線をとったときに破
断までの間にトルク値の低下が7%以下であることであ
る。詳しく説明すると、従来では靭性に関して適切な評
価法と尺度がなく、素線を所定のつかみ間隔として素線
軸線に軽く張力を掛けながら一定方向に捻り、素線が切
断するまでの回数をもって捻り特性としていた。これに
対して、本発明では、靭性良否判断の手段として、一方
向と逆方向の捻りを与える捻回試験を採用し、この試験
における捻回ートルク曲線においてトルク低下率が7%
以下であるものを靭性良好としたのである。このパラメ
ータの採用により、素線が高強度と靭性を兼ね備え、コ
ードに撚り合わせても強度低下が少なく(撚り効率が高
く)、その強度が十分に発揮され、しかも耐疲労性にお
いても従来のコードに比べて大幅にすぐれたものを得る
ことができるのである。
【0013】本発明において靭性良否判断法は、図7の
ように素線Wを固定側の掴み工具6と可動側の掴み工具
7により所定の間隔で掴み、素線Wに軸方向に軽く張力
を掛けた状態で一方の可動側の掴み工具7を可逆モータ
9により一定速度で一定方向(例えば時計回り方向)に所
定回数回転させて捻り、ここで一旦可逆モータ9の回転
を止め、その後逆方向(例えば、反時計回り方向)に捻り
返して素線Wが破断するまでの捻回ートルク曲線をとる
ものである。ここで、図6(a)のように一方向に捻って
捻回ートルク曲線を測定した場合には、トルクが連続し
て右上がりとなる正常な曲線を描いて破断に到る間でト
ルクの低下するものが現れる。かかるトルクの低下は伸
線強加工により素線内部に生じた微細欠陥から割れが入
ることにより生じるものと考えられる。しかし、一方向
のみの捻回試験でトルク低下が見られない素線を実際に
使用してこれを撚り合わせてみると、断線が発生した
り、コードの強度低下が大きかったり、耐疲労性も不十
分なものが多数現れた。従って、この試験による靭性可
否の判別は不十分かつ不正確である。
【0014】そこで本発明者は直径や材質を異にする多
数の素線について図6(b)のように一方向−逆方向に捻
って捻回ートルク曲線をとってみた。その結果、かかる
一方向ー逆方向捻回試験においてもトルクの低下率7%
以下の素線は強度が十分に高く、靭性も良好で撚り合わ
せてコードにしても強度の低下も少なく、耐疲労性も良
好であることが判った。これに対して、一方向捻りのみ
の捻回試験でトルク低下が現れないものの、一方向−逆
方向捻回試験の逆方向捻り過程で8%以上のトルク低下
が生じた素線は靭性が明らかに不十分であり、撚り線工
程においても断線の発生もあり、しかも撚り効率も悪
く、得られたスチールコードは素線の強度が十分に発揮
されず、耐疲労性も十分といえるものではなかった。前
記トルク低下率△Tは、図6(b)の捻回ートルク曲線に
おいて、最初の一方向捻りでの捻りの弾性限すなわち、
図における右上がり直線部分の上限でのトルク値をTと
し、逆方向の捻りでの低下部の最小トルク値をtとする
と、トルク低下率△Tは次式で表される。但し、トルク
低下0の場合はt=Tとする。 △T=[(Tー|t|)/T]×100(%) このトルク低下率8%以上が現れる素線においては前記
した不具合が生じ、それ以外の素線は靭性が十分でスチ
ールコードにしても補強材として最適である。
【0015】次に、上記のようなスチールコードのため
の素線を製造する方法を説明する。まず、前記した成分
組成の直径が4.0〜5.5mmの炭素鋼線材を通常の
ように酸洗、コーティングを行い、連続乾式伸線を行っ
てたとえば直径1.2〜2.3mmの中間線を得る。そ
して、この中間線をパテンティング処理してベイナイト
等の異組織を含まない均一な微細パーライト組織にし、
ゴムとの接着性のよい合金(通常、真ちゅう)めっきを
施し、最終原料線を得る。ついで、前記最終原料線を湿
式伸線して目的の直径例えば直径0.20〜0.35m
mのめっき付きスチールワイヤを得る。そして、かかる
湿式伸線工程において次の条件を採用する。 引抜きダイスとしてアプローチ角度(2α)が8〜1
0°、ベアリング長さが0.3d1(d1=引抜き孔径)
のものを使用する。 仕上げ引抜きを2個のダイスを重ねたダブルダイスを
使用して行い、出口側ダイスで減面率を1.2〜3.9
%としたスキンパスを行う。 使用する引抜き用ダイスは、少なくともダブルダイス
の2枚とそれよりも上流のもの数枚のものに焼結ダイヤ
モンドニブを用いる。他は従来の合金ニブを用いてもよ
い。 最終引抜きダイス通過直後のワイヤの温度が150°
C以下になるように制御する。なお、従来では、この湿
式伸線工程において、引抜きはすべてアプローチ角度が
12°で、ベアリング長さが0.5d1の合金ニブダイ
スを用い、全引抜きともシングルダイスで行うのが一般
であった。
【0016】本発明による製造条件を詳しく説明する
と、図8は湿式伸線工程に用いる引抜き用ダイス(後述
する仕上げ引抜き用のダブルダイスを含む)を示してお
り、1はニブ2を内蔵したダイスであり、ニブ2はアプ
ローチ部20の角度2αが8〜10°となっており、ま
たベアリング部21の長さlが0.3d1となってい
る。従来、アプローチ角は引抜き力が最も低くなること
から12°が一般に採用され、またベアリング長さは
0.5d1を用いるのが一般的であったが、本発明はダ
イスアプローチ角を8〜10°と小さくすることにより
伸線ワイヤの表面と内部の加工を均一化することがで
き、さらには表面残留応力も低くなるため、総加工度を
大きくとっても靭性を保持することができる。また、ベ
アリング長さを短くすることにより、ワイヤとの接触長
さを短縮し、引抜き抵抗を緩和することができる。
【0017】図9は仕上げ引抜き用のダブルダイス3を
示しており、ケーシング4,4にそれぞれノーマルダイ
ス5aとスキンパス用ダイス5bを近接して直列状に配
置し、所定減面率を2分割して得るようにしている。前
記ノーマルダイス5aとスキンパス用ダイス5bのニブ
2a,2bはそれぞれ焼結ダイヤモンドで作られ、前記
したアプローチ角とベアリング長さとなっている。上記
のようにダブルダイス3の2枚のニブ2a,2bとこれ
の上流の引抜き用ダイスを含めて4枚程度以上のものに
焼結ダイヤモンドニブを用いることにより、第1に焼結
ダイヤモンドが合金に比べて表面の粗さも非常に平滑な
ため引抜き力を低くすることができ、また、引き抜いた
ワイヤの表面も平滑になり、耐疲労性向上にも効果があ
る。第2に焼結ダイヤモンドが特に硬いことから連続引
抜きによる摩耗がほとんどなく、摩耗によるダイス径の
増大とこれによる減面率の変化を防止でき、交換の手間
や生産停止時間を節減することができる。ダイヤモンド
はそれ自体は高価であるが、上記のようなことから総合
的にみれば安価となる。
【0018】また、仕上げ引抜き用ダイスとしてダブル
ダイスを使用して減面率1.2〜3.9%のスキンパス
を行う。これにより、引抜きによるワイヤ発熱をシング
ルダイスの場合に比べて25〜40℃程度も低減するこ
とができる。しかも、ワイヤ表面の残留応力をマイナス
側に低く抑えることができる。スキンパス用ダイス5b
による引抜き減面率を1.2〜3.9%の範囲としたの
は、1.1%以下では加工量が少なすぎて残留応力の緩
和作用が少なく、4.0%以上とあまり大すぎても残留
応力の緩和作用が少ないからである。そして、最終ダイ
ス通過直後のワイヤの温度が150°C以下になるよう
に制御する。これは必要に応じて潤滑液温度を低く保持
することで行う。これにより、スキンパスの採用と併せ
て時効によるワイヤの脆化を防ぐことができる。潤滑液
温度を低く保持する方法は、湿式伸線機の槽外に循環ポ
ンプと冷却機を設け、循環液を槽から強制的に抜きこれ
を冷却して槽に戻す循環系とし、潤滑液温度を例えば操
業中35℃以下に温度制御すればよい。以上の最終伸線
工程条件を採用することにより、原料として製造コスト
の増大をもたらさないC含有量が0.70〜0.76重
量%の炭素鋼線材を用いて強度が高くしかも靭性がすぐ
れた素線を得ることができ、したがって少ない素線本数
のコードでも撚り合わせによる強度低下が少なく、耐疲
労性もすぐれたものになるのである。
【0019】
【実施例】次に本発明の実施例を示す。 [具体例1] 1)原料として、化学成分が重量%でC:0.75、S
i:0.21、Mn:0.52、残部Fe及び不可避的
不純物からなる直径5.5mmの線材を用いた。該原料
線材を酸洗、コーティング等の前処理を施した後、連続
乾式伸線をして中間線とした。この中間線をガス炉で加
熱した後、流動床炉に焼き入れ(パテンティング処理)し
た後、更に電解酸洗に続いて、所定量の銅と亜鉛の2層
電気めっきを施し、この後、流動床炉でめっきを熱拡散
させて真鍮めっきとし、これを最終原料とした。 2)この最終原料を連続湿式伸線して直径0.28mm
の高強度素線を製作した。 この時の伸線条件を変えて
(但し、最終ダイス通過直後の素線の温度は熱流束温度
計の測定値で150℃以下に制御した)素線を製作し
た。そして、この素線を用いてバンチャー式撚線機によ
って1×3構造のルーズオープンコードを製作し、それ
ぞれ実施例1〜3、比較例1〜4とした。また、同一原
料線材を用いて従来の方法で普通強度の素線を製作して
コードを作り、比較例6とした。一方、原料として化学
成分が重量%でC:0.83,Si:0.22、Mn:
0.51、残部Feおよび不可避的不純物からなる直径
5.5mmの線材を用いて従来の方法で高強度の素線を
製作してコードを作り、比較例5とした。これら条件と
素線及びコードの特性を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】[具体例2]原料として化学成分が重量%
でC:0.72、Si:0.23、Mn:0.53、残
部Fe及び不可避的不純物からなる直径5.5mmの線
材を用いるほか、具体例1と同じ工程で直径0.32m
mの素線を製作した。この時、最終の連続湿式伸線にお
いて条件を変えて素線を製作し、引き続いて同様に1×
3構造のルーズオープンコードを製作した。これをそれ
ぞれ実施例4及び5とした。また同一原料線材を用いて
従来の方法で普通強度の素線を製作してコードを作り、
比較例7とした。これらの条件と素線及びコード特性を
表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】[具体例3]原料として、具体例2におけ
る実施例と同一線材を用いて同様に直径0.25mmの高
強度素線を製作した。この時、最終の連続湿式伸線にお
いて条件を変えて素線を製作し、引き続いて同様に1×
4構造および1×5構造のルーズオープンコードを製作
し、それぞれ実施例6〜9、比較例8〜9及び比較例1
1とした。また同一原料線材を用いて従来の方法で普通
強度の素線を製作してルーズオープンコードを作り、従
来例1および従来例2とした。なお、具体例1の比較例
5と同一線材を用いて従来の方法で高強度の素線を製作
してルーズオープンコードを作り、比較例10および比
較例12とした。これらの条件と素線及びコード特性を
1×4構造については表3に、1×5構造については表
4に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】表1ないし表4において、「捻回試験」は
図7における固定側の掴み具6と可動側の掴み具7との
間隔Lを300d(dは素線直径mm)として直線状素線
Wを掴み(撚り線後の素線についてはコードの撚りを解
いて特に手で伸ばす等の加工は施さずにそのままの状態
で掴み)、固定側に400grの重りを吊り下げて軽く
張力をかけた状態で可動側の掴み具7をモーター9によ
り30rpmの速度で回転させて一方向に破断するま
で、或いは一方向に10回転捻った後、一旦、回転を止
め、更に素線が破断するまで前記捻り速度で逆方向に捻
り返しを行い、捻回ートルク曲線をとって判定したもの
である。表中の「捻回試験結果」において、○はトルク
低下率が7%以下のもの(良好)を指し、×はトルク低下
率が8%以上のもの(不良)を示す。「ゴム浸透性」は1
本の直線状のコードを100grの張力下で未加硫ゴム中
で加硫してサンプルを作った後、ゴム中のコードを取り
出し、このコードを長手方向に分解し、ゴムのコード内
部への浸透度を目視で観察して完全に浸透しているもの
を100%として判定した。「耐疲労性指数」は1本の
直線状のコードを未加硫ゴム中で加硫した帯状のサンプ
ルを千鳥状に配置した一定直径の回転自在の3個のロー
ルに張り渡し、コードに破断荷重の10%の引張り荷重
をかけた状態の下で、ロールを左右に繰り返し移動させ
てサンプルに繰り返し曲げを与え、コードが破断するま
での繰り返し数を測定した結果であり、表1においては
比較例6を、表2においては比較例7を、表3,4にお
いては従来例1,2をそれぞれの100として指数で表
した。
【0027】表1ないし表4から明らかなように、実施
例1〜9は破断荷重、撚り効率、耐疲労性が良好である
うえに、ゴム浸透性にもすぐれている。原料として0.
80重量%以上の炭素を含有する線材を用いてた比較例
5,10,12に比べて同程度以上の特性を有し、ま
た、従来の普通強度の比較例6,7、従来例1,2に比
べて何れの特性においても優れており、ことに耐疲労性
が著しくすぐれていることがわかる。これに対して、比
較例1〜3、9,11は、一方向捩じり試験あるいは一
方向−逆方向捻回試験による靭性が不良であり、撚り合
わせ前と撚り合わせ後の強力の比も低いため、ゴム浸透
性を満足していても、耐疲労性が不良である。なお、捻
回試験での捻回ートルク曲線において、コードに撚る前
の素線と撚った後の素線ではほぼ同一の曲線になり、撚
る前の素線で不良なものは撚った後でも不良であり、撚
ることによって靭性が回復することはなかった。
【0028】
【発明の効果】以上説明した請求項1ないし3によれ
ば、1×n(n=3〜5)のスチールコードにおいて、
コードを構成する素線の型付け率が適切な範囲にあるた
めゴム浸透性が良好で、しかも素線が通常の炭素量の原
料を使用しながら高強度でかつ良好な靭性を備え、撚り
効率もすぐれ、高い炭素含有量の原料線材を用いた高強
度材と同等以上の特性を有し、耐疲労性も特にすぐれて
いるので、ゴムに対する補強効果が高いというすぐれた
効果が得られる。請求項4によれば、コード強力が10
%以上も高くなっているので使用量を減らしても補強効
果が維持でき、しかも耐食性がよく、寿命の長い安価で
軽量なラジアルタイヤとすることができるというすぐれ
た効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)(b)(c)はそれぞれ本発明によるスチールコ
ードの例を無負荷状態で示す拡大断面図である。
【図2】(a)(b)(C)はそれぞれタイトに撚った従来のコ
ードの断面図である。
【図3】(a)(b)は従来のゴム補強用スチールコードの例
を示す断面図である。
【図4】(a)(b)は従来のゴム補強用スチールコードの例
を示す断面図である。
【図5】素線直径と引張り強さの関係を示す線図であ
る。
【図6】(a)は一方向捻りトルク曲線図、(b)は本発明に
よる一方向−逆方向捻りトルク曲線図である。
【図7】本発明における捻り−トルク試験機の概要を示
す説明図である。
【図8】本発明に使用する引抜きダイスの断面図であ
る。
【図9】本発明に使用する仕上げ引抜きダイスの断面図
である。
【符号の説明】
W 素線 Z 引張り強度 T ねじり弾性限でのトルク値 t 低下部でのトルク値の最小値 A コード撚り合わせ前の素線の集合強度 B 撚り合わせ後のコードの強度 2 ニブ 3 仕上げ引抜きダイス

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】n本(3〜5本)の過大な型付けを施した
    素線を同一方向に同一ピッチで同時に撚り合わせた1×
    nのルーズオープン構造のスチールコードにおいて、該
    スチールコードにおける素線の型付け率がどの断面にお
    いても115%以上であり、かつ素線が重量%で0.7
    0〜0.76の炭素を含有する炭素鋼を用いて作られて
    おり、コードに撚り合わせる前の引張り強さが下記の式
    を満たすとともにコードに撚り合わせる前の素線の集合
    強度Aと撚り合わせ後のコードの強度Bとの比(B/
    A)が0.935以上であることを特徴とするゴム補強
    用スチールコード。 Z≧−200d+365 〔Z:引張り強さ(kgf/mm2)、d:素線の直径
    (mm)〕
  2. 【請求項2】スチールコードを構成する素線が、一方向
    ねじり後、逆方向ねじりを与える捻回−トルク試験にお
    いてトルクの低下率が7%以下のものである請求項1に
    記載のゴム補強用スチールコード。
  3. 【請求項3】スチールコードを構成する素線が、熱処理
    とめっきを施した後、下記の条件にて最終湿式伸線を行
    うことにより作られたものである請求項1または2に記
    載のゴム補強用スチールコード。 引抜き用ダイスとして、アプローチ角度2αが8〜1
    0°、ベアリング長さが0.3d1(d1=ダイス孔径)
    のものを用いる。 仕上げ引抜きは2個の引抜きダイスを直列に配したダ
    ブルダイスを使用し、出口側のダイスにおける減面率を
    1.2〜3.9%としたスキンパス伸線を行なう。 ダブルダイスおよびこれより上流の数枚の引抜きダイ
    スに焼結ダイヤモンドニブを用いる。 最終ダイス通過直後のスチールワイヤ温度を150℃
    以下に制御する。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれかに記載のスチ
    ールコードをベルト部の補強に用いたラジアルタイヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007034728A (ja) * 2005-07-27 2007-02-08 Mitsuboshi Belting Ltd コード及びその複合体の有限要素モデル作成方法

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