JPH10250313A - 重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な耐発熱性及び耐久性を確保しながら、
耐カット性及び耐チップ性を改善する。 【解決手段】 トレッド部１のカーカス層２外周側に配
置した４層のベルト層３の内、補強コードｆを傾斜方向
を逆向きにして交差するようにした２，３番ベルト層３
Ｂ，３Ｃをそれぞれタイヤ幅方向で３分割した構造にす
る。タイヤセンターラインＣＬからのタイヤ幅方向距離
Ｌ１で表される２番ベルト層３Ｂの左右の分割位置Ｃを
それぞれトレッド展開幅Ｗとの関係で０．２５≦Ｌ１／
Ｗ≦０．３５に設定し、タイヤ幅方向距離Ｌ２で表され
る３番ベルト層３Ｃの左右の分割位置Ｃをそれぞれトレ
ッド展開幅Ｗとの関係で０．１２≦Ｌ２／Ｗ≦０．１８
の範囲にする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、トラックやバス等
に使用される重荷重用空気入りラジアルタイヤに関し、
更に詳しくは、耐発熱性及び耐久性を良好に維持しなが
ら、耐カット性及び耐チップ性を高めるようにした重荷
重用空気入りラジアルタイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、トラックやバス等の重荷重車両
に用いられる空気入りラジアルタイヤは、高荷重が負荷
されるため、トレッド部に３層以上のベルト層を配設
し、タガ効果を高めるようにしている。そのため、トレ
ッド部の剛性が大きくなる結果、砂利道等の走行時にト
レッド部にカット傷やチップ（ゴム欠け）を起こし易
い。

【０００３】そこで、従来、その対策として、例えば、
トレッド部を耐カット性及び耐チップ性に優れたゴムで
構成する提案がある。しかし、このように耐カット性及
び耐チップ性の高いゴムをトレッド部に使用すると、発
熱の問題が生じると共に、経時による物性変化が大きい
ため、ゴムが劣化し易いという問題があった。また、最
内層のベルト層を左右に２分割したベルト層に構成し、
トレッド部の剛性を下げることにより、耐カット性及び
耐チップ性を改善するようにした提案がある。しかし、
このような分割ベルト層の使用により、トレッド中央部
の補強作用が減少するため、走行時にテンションメンバ
ーとして作用する２，３番ベルト層間の歪みが大きく、
その結果、高負荷時に２，３番ベルト層にエッジセパレ
ーションが発生し易くなり、耐久性が悪化するという問
題があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、良好
な耐発熱性及び耐久性を確保しながら、耐カット性及び
耐チップ性を改善することが可能な重荷重用空気入りラ
ジアルタイヤを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明は、トレッド部のカーカス層外周側に４層のベルト層
を設け、該カーカス層側から２番目と３番目に位置する
２，３番ベルト層の補強コードをタイヤ周方向に対する
傾斜方向を逆向きにして互いに交差するように配列した
重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、前記２，３
番ベルト層をそれぞれタイヤ幅方向で３分割した構造に
し、タイヤセンターラインからのタイヤ幅方向距離Ｌ１
で表される２番ベルト層の左右の分割位置をそれぞれト
レッド展開幅Ｗとの関係で０．２５≦Ｌ１／Ｗ≦０．３
５に設定する一方、タイヤセンターラインからのタイヤ
幅方向距離Ｌ２で表される３番ベルト層の左右の分割位
置をそれぞれトレッド展開幅Ｗとの関係で０．１２≦Ｌ
２／Ｗ≦０．１８にしたことを特徴とする。

【０００６】このように補強コードをタイヤ周方向に対
し逆向きにして交差させ、トレッド部におけるテンショ
ンメンバーとして作用する２，３番ベルト層を上記のよ
うに分割構造にするので、カット傷やチップが起こり易
いトレッド部センター側におけるタイヤ幅方向の曲げ剛
性を低減し、そのエンベロープ特性を高めることが可能
になる。その結果、小石等の踏みつけ時にトレッド部を
その小石等を包み込むようにして追従変化させることが
可能になるため、カット傷やチップの発生を改善できる
ようになる。

【０００７】また、ベルト層の構造を変更するだけであ
り、トレッド部のゴム物性を変更する必要がないので、
耐発熱性を良好にすることができ、しかも、テンション
メンバーとして作用する２，３番ベルト層自体を上述し
たように３分割し、この内側に配置された１番ベルト層
は分割としないため、走行時に２，３番ベルト層間の歪
みが小さく、耐久性を良好に維持することができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について添付
の図面を参照しながら詳細に説明する。図１は本発明の
重荷重用空気入りラジアルタイヤの一例を示す要部断面
図であり、１はトレッド部である。タイヤ内側には不図
示の左右のビード部間に補強コードをタイヤ径方向に配
列したカーカス層２が１層装架され、その両端部が図示
せぬビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返さ
れている。トレッド部１のカーカス層外周側には、スチ
ールコードからなる補強コードを配列した４層のベルト
層３が層間ゴム部４を介して埋設されている。

【０００９】これらのベルト層３は、カーカス層側から
２番目と３番目に位置する２，３番ベルト層３Ｂ，３Ｃ
の補強コードｆがタイヤ周方向Ｔに対する傾斜方向を逆
向きにして互いに交差するように配列され、ベルト層の
テンションメンバーとして作用するようになっている。
最内層に位置する１番ベルト層３Ａの補強コードｆは、
２番ベルト層３Ｂの補強コードｆと同じ傾斜方向で、か
つその傾斜角度を大きくしている。最外層に位置する４
番ベルト層３Ｄの補強コードｆは、３番ベルト層３Ｃの
補強コードｆと同じ傾斜方向で３番ベルト層３Ｃの補強
コードｆと略同じ傾斜角度になっている。１〜３番ベル
ト層３Ａ，３Ｂ，３Ｃの補強コードｆが非伸長性のスチ
ールコードからなるのに対して、４番ベルト層は補強コ
ードｆが伸長性のスチールコードから構成され、保護層
として作用している。

【００１０】本発明では、１番ベルト層３Ａと４番ベル
ト層３Ｄがそれそれ１枚のベルト層から構成されている
のに対して、２，３番ベルト層３Ｂ，３Ｃがそれぞれタ
イヤ幅方向で３分割された分割構造になっている。タイ
ヤセンターラインＣＬからのタイヤ幅方向距離Ｌ１で表
される２番ベルト層３Ｂの左右の分割位置（図のように
分割されたベルト層間にゴム部が介在する場合は、その
間の中点の位置）Ｂは、それぞれトレッド展開幅Ｗとの
関係で０．２５≦Ｌ１／Ｗ≦０．３５の式を満足するよ
うになっている。

【００１１】タイヤセンターラインＣＬからのタイヤ幅
方向距離Ｌ２で表される３番ベルト層３Ｃの左右の分割
位置（図のように分割されたベルト層間にゴム部が介在
する場合は、その間の中点の位置）Ｃは、それぞれトレ
ッド展開幅Ｗとの関係で０．１２≦Ｌ２／Ｗ≦０．１８
となるように設定されている。このように補強コードｆ
が逆向きに傾斜して互いに交差し、テンションメンバー
として働く２，３番ベルト層３Ｂ，３Ｃを上記のように
分割した構成とすることにより、カット傷やチップが発
生し易いトレッドセンター部側でのタイヤ幅方向におけ
る曲げ剛性を低下させ、エンベロープ特性を向上するこ
とができる。そのため、図３に示すように、路面Ｒ上の
小石等の突起物Ｘを踏みつけた際に、トレッド部１が突
起物Ｘを包み込むようにして追従変化することができる
ので、耐カット性及び耐チップ性を向上することができ
る。

【００１２】しかも、耐カット性及び耐チップ性の高い
ゴムをトレッド部に使用するのではなく、ベルト層の構
造を変えるだけでよいため、良好な耐発熱性を保つこと
ができ、更に、テンションメンバーとして作用する２，
３番ベルト層３Ｂ，３Ｃ自体を上記範囲のように３分割
し、内側の１番ベルト層３Ａは分割しないので、走行時
に２，３番ベルト層間の歪みが従来のように大きくなる
ことがなく、良好な耐久性も確保することができる。

【００１３】上記Ｌ１／Ｗが０．２５より小さいと、ベ
ルト耐久性が悪化し、逆に０．３５より大きいと、トレ
ッドセンター部側における曲げ剛性を十分に低下させる
ことが困難となる。上記Ｌ２／Ｗが０．１２未満であっ
ても、０．１８を越えても、共にベルト耐久性が低下す
る。

【００１４】本発明において、１番ベルト層３Ａの傾斜
角度αとしては５０〜６０°、２，３番ベルト層３Ｂ，
３Ｃの傾斜角度β，γ及び４番ベルト層３Ｄの傾斜角度
θとしては１５〜２５°にするのがよい。また、１〜３
番ベルト層３Ａ，３Ｂ，３Ｃの補強コードに使用される
非伸長性のスチールコードとしては、破断時伸びが３．
０％以下、好ましくは２．５％以下のコードを使用する
のがよく、４番ベルト３Ｄの補強コードに使用される伸
長性のスチールコードとしては、破断時伸びが３．５％
以上、好ましくは４．０％以上のコードを用いるのがよ
い。

【００１５】

【実施例】タイヤサイズを１１Ｒ２２．５ １４で共通
にし、２，３番ベルト層を表１に示すように分割した本
発明タイヤと比較タイヤ１〜７、及びベルト層を分割し
てない従来タイヤとをそれぞれ作製した。

【００１６】これら各試験タイヤをリムサイズ２２．５
×７．５０のリムに装着し、以下に示す測定条件によ
り、耐カット性及び耐チップ性、耐久性、包み込み性の
評価試験を行ったところ、表１に示す結果を得た。 耐カット性及び耐チップ性

【００１７】各試験タイヤの空気圧を７００kPa にし
て、車輛総重量２０ｔ（積載含む）の大型車両に装着
し、砂利道を２万km走行した後、トレッド部のカット傷
及びゴム欠けを目視により観察し、その結果を５点法で
で評価した。この値が小さい程、耐カット性及び耐チッ
プ性に優れている。

【００１８】耐久性 各試験タイヤをドラム試験機に装着し、空気圧、荷重を
ＪＡＴＭＡ正規条件下でタイヤ故障が発生するまでの走
行距離を測定し、その結果を従来タイヤを１００とする
指数値で評価した。この値が大きい程、耐久性に優れて
いる。

【００１９】包み込み性 新品時及び１／２摩耗時における各試験タイヤの空気圧
を７００kPa にし、路面に置いた突起物を踏みつけた際
の包み込み幅Ｍ（図３参照）を測定し、その結果を従来
タイヤを１００とする指数値で評価した。この値が大き
い程、包み込む幅が小さく、トレッド部の剛性が低下し
たことを意味する。

【００２０】

【表１】

【００２１】表１から明らかなように、本発明タイヤ
は、良好な耐久性を確保しながら、耐カット性及び耐チ
ップ性を大きく改善できることが判る。なお、耐久性は
９８以上あれば実用許容範囲内であり、良好と言える。

【００２２】

【発明の効果】上述したように本発明は、テンションメ
ンバーとして作用する２，３番ベルト層をそれぞれタイ
ヤ幅方向で３分割した構造にし、その分割位置を上記の
ように特定することにより、良好な耐発熱性及び耐久性
を確保しながら、耐カット性及び耐チップ性を改善する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤの一
例を示すタイヤ子午線要部断面図である。

【図２】図１のベルト層の一部切欠き要部平面図であ
る。

【図３】本発明の重荷重用空気入りラジアルタイヤが小
石等の突起物を踏みつけた時の作用を説明する断面図で
ある。

【符号の説明】

１ トレッド部 ２ カーカス層 ３ ベルト層 ３Ａ １番ベルト層 ３Ｂ ２番ベルト層 ３Ｃ ３番ベルト層 ３Ｄ ４番ベルト層 ＣＬ タイヤセンタ
ーライン Ｔ タイヤ周方向 Ｘ 突起物 ｆ 補強コード α，β，γ，θ 傾
斜角度

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 トレッド部のカーカス層外周側に４層の
   ベルト層を設け、該カーカス層側から２番目と３番目に
   位置する２，３番ベルト層の補強コードをタイヤ周方向
   に対する傾斜方向を逆向きにして互いに交差するように
   配列した重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、 前記２，３番ベルト層をそれぞれタイヤ幅方向で３分割
   した構造にし、タイヤセンターラインからのタイヤ幅方
   向距離Ｌ１で表される２番ベルト層の左右の分割位置を
   それぞれトレッド展開幅Ｗとの関係で０．２５≦Ｌ１／
   Ｗ≦０．３５に設定する一方、タイヤセンターラインか
   らのタイヤ幅方向距離Ｌ２で表される３番ベルト層の左
   右の分割位置をそれぞれトレッド展開幅Ｗとの関係で
   ０．１２≦Ｌ２／Ｗ≦０．１８にした重荷重用空気入り
   ラジアルタイヤ。
2. 【請求項２】 最内層に位置する１番ベルト層の補強コ
   ードを２番ベルト層の補強コードと同じ傾斜方向にし、
   かつその傾斜角度を大きくした請求項１に記載の重荷重
   用空気入りラジアルタイヤ。
3. 【請求項３】 最外層に位置する４番ベルト層の補強コ
   ードを３番ベルト層の補強コードと同じ傾斜方向にした
   請求項１または２に記載の重荷重用空気入りラジアルタ
   イヤ。
4. 【請求項４】 前記ベルト層の補強コードがスチールコ
   ードである請求項１，２または３に記載の重荷重用空気
   入りラジアルタイヤ。
5. 【請求項５】 前記１〜３番ベルト層の補強コードが非
   伸長性のスチールコードからなり、前記４番ベルト層の
   補強コードが伸長性のスチールコードからなる請求項４
   に記載の重荷重用空気入りラジアルタイヤ。