JPH1024605A - 液体吐出ヘッド用液体、該液体を用いた液体吐出方法および液体吐出ヘッド - Google Patents

液体吐出ヘッド用液体、該液体を用いた液体吐出方法および液体吐出ヘッド

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JPH1024605A
JPH1024605A JP8181888A JP18188896A JPH1024605A JP H1024605 A JPH1024605 A JP H1024605A JP 8181888 A JP8181888 A JP 8181888A JP 18188896 A JP18188896 A JP 18188896A JP H1024605 A JPH1024605 A JP H1024605A
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discharge
liquid flow
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JP8181888A
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English (en)
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Mikifumi Ogasawara
幹史 小笠原
Satoshi Nagashima
聡 永嶋
Toshio Kashino
俊雄 樫野
Hiroyuki Ishinaga
博之 石永
Yoshie Nakada
佳恵 中田
Sadayuki Sugama
定之 須釜
Fumi Yoshihira
文 吉平
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Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14016Structure of bubble jet print heads
    • B41J2/14032Structure of the pressure chamber
    • B41J2/14048Movable member in the chamber

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  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 液体の吐出口率、吐出力、吐出安定性等が向
上し、良好な記録が行えると共に、吐出が困難であった
液体を良好に吐出でき、さらに、長期の保存後でも繰り
返し安定してこれらの特性を維持できる液体吐出方法、
及び該方法に用いる液体を提供する。 【解決手段】 吐出口に連通する第1の液流路と、気泡
発生領域を有する第2の液流路を設け、該第1の液流路
と該気泡発生領域との間に可動部材を設けた構成とし、
該第1の液流路および該第2の液流路に、吐出液および
発泡液をそれぞれ別々に供給する。さらに該吐出液に用
いるインクとして、その色材の粒径が、前記可動部材と
その周囲とのスリット幅より大きいものを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを液
体に作用させることで起こる気泡の発生によって所望の
液体を吐出する液体吐出ヘッド、該ヘッド用の液体、該
液体を用いた液体吐出方法および液滴吐出方法に関す
る。
【0002】特に本発明は、気泡の発生を利用して変位
する可動部材を有する液体吐出ヘッド、及び該ヘッドを
用いた液体吐出方法に関し、その特性を維持・向上させ
る液体に関する。
【0003】また本発明は、紙、糸、繊維、布帛、皮
革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス
等の被記録媒体に対し記録を行うプリンター、複写機、
通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有す
るワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と
複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる発明
である。
【0004】なお、本発明における、「記録」とは、文
字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与
することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像
を付与することをも意味するものである。
【0005】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわ
ゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。この
バブルジェット記録方法を用いる記録装置には、米国特
許第4,723,129号明細書等の公報に開示されて
いるように、インクを吐出するための吐出口と、この吐
出口に連通するインク流路と、インク流路内に配された
インクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電
気熱変換体が一般的に配されている。
【0006】このような記録方法によれば、品位の高い
画像を高速、低騒音で記録することができると共に、こ
の記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐
出口を高密度に配置することができるため、小型の装置
で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得
ることができるという多くの優れた点を有している。こ
のため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンタ
ー、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利
用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムに
まで利用されるようになってきている。
【0007】このようにバブルジェット技術が多方面の
製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近
年さらにたかまっている。
【0008】例えば、エネルギー効率の向上の要求に対
する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発
熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した
熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。
【0009】また、高画質な画像を得るために、インク
の吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好
なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆
動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐
出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速
い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したもの
も提案されている。
【0010】この流路形状の内、流路構造として図23
(a),(b)に示すものが、特開昭63−19997
2号公報等に記載されている。この公報に記載されてい
る流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発
生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向
かう圧力、即ち、液室12へ向かう圧力)に着目した発
明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギ
ーでないため損失エネルギーとして知られている。
【0011】図23(a),(b)に示す発明は、発熱
素子2が形成する気泡の発生領域よりも離れ且つ、発熱
素子2に関して吐出口11とは反対側に位置する弁10
を開示する。
【0012】図23(b)においては、この弁10は、
板材等を利用する製造方法によって、流路3の天井に貼
り付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流
路3内へ垂れ下がるものとして開示されている。この発
明は、上述したバック波の一部を弁10によって制御す
ることでエネルギー損失を抑制するものとして開示され
ている。
【0013】しかしながら、この構成において、吐出す
べき液体を保持する流路3内部に、気泡が発生した際を
検討するとわかるように、弁10によるバック波の一部
を抑制することは、液体吐出にとっては実用的なもので
ないことがわかる。
【0014】もともとバック波自体は、前述したように
吐出に直接関係しないものである。このバック波が流路
3内に発生した時点では、図23(a)に示すように、
気泡のうち吐出に直接関係する圧力はすでに流路3から
液体を吐出可能状態にしている。従って、バック波のう
ち、しかもその一部を抑制したからといっても、吐出に
大きな影響を与えないことは明らかである。
【0015】他方、バブルジェット記録方法において
は、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すた
め、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生す
るが、インクの種類によってはこの堆積物が多く発生す
ることで、気泡の発生を不安定にしてしまい、良好なイ
ンクの吐出を行うことが困難な場合があった。また、吐
出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十
分に発泡が得られにくい液体の場合においても、吐出す
べき液体を変質させず、良好に吐出するための方法が望
まれていた。
【0016】このような観点から、熱により気泡を発生
させる液体(発泡液)と吐出する液体(吐出液)とを別
液体とし、発泡による圧力を吐出液に伝達することで吐
出液を吐出する方法が、特開昭61−69467号公
報、特開昭55−81172号公報、米国特許第4,4
80,259号明細書等の公報に開示されている。これ
らの公報では、吐出液であるインクと発泡液とをシリコ
ンゴムなどの可撓性膜で完全分離し、発熱体に吐出液が
直接接しないようにすると共に、発泡液の発泡による圧
力を可撓性膜の変形によって吐出液に伝える構成をとっ
ている。このような構成によって、発熱体表面の堆積物
の防止や、吐出液体の選択自由度の向上等を達成してい
る。
【0017】しかしながら、前述のように吐出液と発泡
液とを完全分離する構成のヘッドにおいては、発泡時の
圧力を可撓性膜の伸縮変形によって吐出液に伝える構成
であるため、発泡による圧力を可撓性膜がかなり吸収し
てしまう。また、可撓性膜の変形量もあまり大きくない
ため、吐出液と発泡液とを分離することによる効果を得
ることはできるものの、エネルギー効率や吐出力が低下
してしまう虞があった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本願出願人は、基本的
に従来の気泡(特に膜沸騰に伴う気泡)を液流路中に形
成して液体を吐出する方式の根本的な吐出特性を、従来
では考えられなかった観点から従来では予想できない水
準に高めることを主たる課題とし、可動部材の支点と自
由端の配置関係を吐出口側つまり下流側に自由端が位置
する関係にすること、また可動部材を発熱体もしくは気
泡発生領域に面して配することで、積極的に気泡を制御
する全く新規な発明を出願した。
【0019】この発明は、気泡自体が吐出量に与えるエ
ネルギーを考慮すると気泡の下流側の成長成分を考慮す
るもので、気泡の下流側の成長成分を吐出方向へ効率よ
く変換させることで、吐出効率、吐出速度の向上をもた
らすことを開示している。
【0020】ところで、上記の背景技術に加えて、本発
明者達はインクについても検討を行った。
【0021】先行発明の特徴の一つは、第1の液流路お
よび第2の液流路を設け、それぞれに吐出用液体および
発泡用液体を別々に供給することである。これにより、
吐出用液体に色材を含有するインクを用い、発泡用液体
には色材を含有せず発泡性に優れた液体を用いることが
でき、優れた吐出特性を得ることができる。
【0022】しかしながら、一般に使用されるインク中
の色材は、粒径が通常1μmより小さい染料が用いら
れ、顔料でも1μm程度のものが多い。そのため、長期
間放置後においては、発泡領域を実質的に密閉している
可動部材とその周囲とのスリット部の1〜3μm程度の
微小間隙に色材が介入してしまい、可動部材の動作を妨
げる等の不都合が起きやすい。さらに、この状態のヘッ
ドを高速に作動させると、大量の色材が発泡液側に混入
し、焦げの発生やヒーター上での堆積が起こり本発明の
十分な効果が得られないおそれもある。そのため、イン
クについても検討をする必要があった。
【0023】そこで、本発明の主たる目的は、色材が可
動部材の移動を妨害せず、また気泡発生領域へ混入しな
いように、可動部材変位領域側の液体中の色材の粒径を
考慮した、液体吐出方法、該方法に用いる吐出ヘッド、
及びこれに用いられる液体を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者達は、上記の目
的を達成するために種々の検討を重ねた結果、本発明を
完成した。
【0025】第1の発明は、第1の液体を吐出する吐出
口を備えた第1領域と、第2の液体を備え該第2の液体
に気泡を発生させる気泡発生領域と、該気泡発生領域に
対面して配された第1の位置と該第1領域内で該気泡発
生領域から遠ざかる第2の位置との間を変位可能であっ
て自由端よりも上流側に支点部を有する可動部材とを備
え、該気泡発生領域における気泡の発生に伴って該可動
部材を該第1の位置から該第2の位置の方向へ変位させ
ると共に該可動部材により該気泡を吐出口側へ導く液体
吐出ヘッドに用いられる第1の液体であって、該第1の
液体中の色材の粒径が、前記可動部材とその周囲とのス
リット幅より大きいことを特徴とする可動部材を備えた
液体吐出ヘッド用液体に関する。
【0026】第2の発明は、第1の液体中の色材の8割
以上がスリット幅以上の粒径である第1の発明の液体吐
出ヘッド用液体に関する。
【0027】第3の発明は、第1の液体を吐出する吐出
口を備えた第1領域と、第2の液体を備え該第2の液体
に気泡を発生させる気泡発生領域と、該気泡発生領域に
対面して配された第1の位置と該第1領域内で該気泡発
生領域から遠ざかる第2の位置との間を変位可能であっ
て自由端よりも上流側に支点部を有する可動部材とを備
え、該気泡発生領域における気泡の発生に伴って該可動
部材を該第1の位置から該第2の位置の方向へ変位させ
ると共に該可動部材により該気泡を吐出口側へ導く液体
吐出ヘッドを用い、前記第1の液体として、前記可動部
材とその周囲とのスリット幅より大きい粒径の色材を含
有する液体を用いることを特徴とする液体吐出方法に関
する。
【0028】第4の発明は、第1の液体中の色材の8割
以上がスリット幅以上の粒径である第3の発明の液体吐
出方法に関する。
【0029】第5の発明は、第1の液体を吐出する吐出
口を備えた第1領域と、第2の液体を備え該第2の液体
に気泡を発生させる気泡発生領域と、該気泡発生領域に
対面して配された第1の位置と該第1領域内で該気泡発
生領域から遠ざかる第2の位置との間を変位可能であっ
て自由端よりも上流側に支点部を有する可動部材とを備
え、該気泡発生領域における気泡の発生に伴って該可動
部材を該第1の位置から該第2の位置の方向へ変位させ
ると共に該可動部材により該気泡を吐出口側へ導く液体
吐出ヘッドであって、前記第1の液体として、前記可動
部材とその周囲とのスリット幅より大きい粒径の色材を
含有する液体が用いられていることを特徴とする可動部
材を備えた液体吐出ヘッドに関する。
【0030】第6の発明は、第1の液体中の色材の8割
以上がスリット幅以上の粒径である第5の発明の液体吐
出ヘッドに関する。
【0031】第7の発明は、気泡の発生によって液体を
吐出口から吐出する液体の吐出方法において、吐出口に
連通する第1の液流路と、気泡発生領域を有する第2の
液流路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流
路と前記気泡発生領域との間に配された可動部材とを有
するヘッドを用い、前記気泡発生領域に気泡を発生さ
せ、該気泡の発生による圧力に基づいて前記可動部材の
自由端を前記第1の液流路側に変位させ、該可動部材の
変位によって前記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に
導くことで液体を吐出する液体吐出方法に用いられる該
液体であって、前記第1の液流路に供給される液体中の
色材の粒径が、前記可動部材とその周囲とのスリット幅
より大きいことを特徴とする可動部材を備えた液体吐出
ヘッド用液体に関する。
【0032】第8の発明は、第1の液流路に供給される
液体中の色材の8割以上がスリット幅以上の粒径である
第7の発明の液体吐出ヘッド用液体に関する。
【0033】第9の発明は、気泡の発生によって液体を
吐出口から吐出する液体の吐出方法において、吐出口に
連通する第1の液流路と、気泡発生領域を有する第2の
液流路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流
路と前記気泡発生領域との間に配された可動部材とを有
するヘッドを用い、前記気泡発生領域に気泡を発生さ
せ、該気泡の発生による圧力に基づいて前記可動部材の
自由端を前記第1の液流路側に変位させ、該可動部材の
変位によって前記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に
導くことで液体を吐出する液体吐出方法であって、前記
第1の液流路に供給される液体として、前記可動部材と
その周囲とのスリット幅より大きい粒径の色材が含有さ
れた液体を用いることを特徴とする液体吐出方法に関す
る。
【0034】第10の発明は、第1の液流路に供給され
る液体中の色材の8割以上がスリット幅以上の粒径であ
る第9の発明の液体吐出方法に関する。
【0035】第11の発明は、前記可動部材に面した位
置に発熱体が設けられており、該可動部材と該発熱体と
の間が前記気泡発生領域である第9又は第10の発明の
液体吐出方法に関する。
【0036】第12の発明は、前記可動部材の変位に伴
って、発生した気泡の一部が前記第1の液流路に延在す
る第9又は第10の発明の液体吐出方法に関する。
【0037】第13の発明は、l前記可動部材の変位中
に前記発生した気泡が前記可動部材に接触した状態があ
る第9又は第10の発明の液体吐出方法に関する。
【0038】第14の発明は、前記第2の液流路に供給
される液体は、前記第1の液流路に供給される液体に比
べ、低粘度性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性
質で優れている液体である第9又は第10の発明の液体
吐出方法。
【0039】第15の発明は、吐出口に連通した第1の
液流路と、液体に熱を加えることで該液体に気泡を発生
させる気泡発生領域を有する第2の液流路と、前記第1
の液流路と前記気泡発生領域との間に配され、吐出口側
に自由端を有し、前記気泡発生領域内での気泡の発生に
よる圧力に基づいて該自由端を前記第1の液流路側に変
位させて前記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導く
可動部材とを有する液体吐出ヘッドに用いられる該液体
であって、前記第1の液流路に供給される液体中の色材
の粒径が、前記可動部材とその周囲とのスリット幅より
大きいことを特徴とする可動部材を備えた液体吐出ヘッ
ド用液体に関する。
【0040】第16の発明は、第1の液流路に供給され
る液体中の色材の8割以上がスリット幅以上の粒径であ
る第15の発明の液体吐出ヘッド用液体に関する。
【0041】第17の発明は、吐出口に連通した第1の
液流路と、液体に熱を加えることで該液体に気泡を発生
させる気泡発生領域を有する第2の液流路と、前記第1
の液流路と前記気泡発生領域との間に配され、吐出口側
に自由端を有し、前記気泡発生領域内での気泡の発生に
よる圧力に基づいて該自由端を前記第1の液流路側に変
位させて前記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導く
可動部材とを有する液体吐出ヘッドであって、前記第1
の液流路に供給される液体として、前記可動部材とその
周囲とのスリット幅より大きい粒径の色材を含有する液
体が用いられていることを特徴とする可動部材を備えた
液体吐出ヘッドに関する。
【0042】第18の発明は、第1の液流路に供給され
る液体中の色材の8割以上がスリット幅以上の粒径であ
る第17の発明の液体吐出ヘッド。
【0043】第19の発明は、前記可動部材に面した位
置に発熱体が設けられており、該可動部材と該発熱体と
の間が前記気泡発生領域である第17又は第18の発明
の液体吐出ヘッドに関する。
【0044】第20の発明は、前記可動部材は前記第1
流路と第2流路との間に配された分離壁の一部として構
成されている第17又は第18の発明の液体吐出ヘッド
に関する。
【0045】第21の発明は、前記分離壁は、金属材料
で構成されている第20の発明の液体吐出ヘッドに関す
る。
【0046】第22の発明は、前記金属材料は、ニッケ
ル若しくは金である第21の発明の液体吐出ヘッドに関
する。
【0047】第23の発明は、前記分離壁は、樹脂で構
成されている第20の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0048】第24の発明は、前記分離壁は、セラミッ
クスで構成されている第20の発明の液体吐出ヘッドに
関する。
【0049】第25の発明は、前記第1の液流路の複数
に第1の液体を供給するための第1の共通液室と、前記
第2の液流路の複数に第2の液体を供給するための第2
の共通液室とが配されている第17又は第18の発明の
液体吐出ヘッドに関する。
【0050】第26の発明は、液体を吐出するための複
数の吐出口と、それぞれの吐出口に対応して直接連通す
る複数の第1の液流路を構成するための複数の溝と、前
記複数の第1の液流路に液体を供給するための第1の共
通液室を構成する凹部とを一体的に有する溝付き部材
と、液体に熱を与えることで液体に気泡を発生させるた
めの複数の発熱体が配された素子基板と、前記溝付き部
材と該素子基板との間に配され、前記発熱体に対応した
第2の液流路の壁の一部を構成すると共に、前記発熱体
に面した位置に前記気泡の発生に基づく圧力によって前
記第1の液流路側に変位する可動部材とを具備した分離
壁とを有する液体吐出ヘッドであって、前記第1の液流
路に供給される液体として、前記可動部材とその周囲と
のスリット幅より大きい粒径の色材を含有するインクが
用いられていることを特徴とする可動部材を備えた液体
吐出ヘッドに関する。
【0051】第27の発明は、第1の液流路に供給され
る液体中の色材の8割以上がスリット幅以上の粒径であ
る第26の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0052】第28野発明は、前記可動部材の自由端は
前記発熱体の面積中心より下流側に位置する第26又は
第27の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0053】第29の発明は、前記溝付き部材には、前
記第1の共通液室に液体を導入するための第1導入路
と、前記第2の共通液室に液体を導入するための第2導
入路とを有する第26又は第27の発明の液体吐出ヘッ
ドに関する。
【0054】第30の発明は、前記溝付き部材には、前
記第2導入路が複数設けられている第29の発明の液体
吐出ヘッドに関する。
【0055】第31の発明は、前記第1導入路の断面積
と前記第2導入路の断面積の比は、各液体の供給量に比
例している第29の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0056】第32の発明は、前記第2導入路は、前記
分離壁を貫通して前記第2の共通液室に液体を供給する
導入路である第29の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0057】第33の発明は、前記第2の液流路に供給
される液体は、前記第1の液流路に供給される液体に比
べ、低粘度性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性
質で優れている液体である第17、第18、第26又は
第27の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0058】第34の発明は、前記発熱体は電気信号を
受けることで熱を発生する発熱抵抗体を有する電気熱変
換体である第19、第26又は第27の発明の液体吐出
ヘッドに関する。
【0059】第35の発明は、前記電気熱変換体は前記
発熱抵抗体上に、保護膜を配したものである第34の発
明の液体吐出ヘッドに関する。
【0060】第36の発明は、前記素子基板上には前記
電気熱変換体に電気信号を伝えるための配線と、前記電
気熱変換体に選択的に電気信号を与えるための機能素子
が配されている第34の発明の液体吐出ヘッドに関す
る。
【0061】第37の発明は、前記気泡発生領域もしく
は発熱体が配された部分の前記第2液流路の形状は室形
状である第17、第18、第26又は第27の発明の液
体吐出ヘッドに関する。
【0062】第38の発明は、前記第2流路の形状は、
気泡発生領域もしくは発熱体の上流で狭窄部を有する形
状である第17、第18、第26又は第27の発明の液
体吐出ヘッドに関する。
【0063】第39の発明は、前記発熱体の表面から前
記可動部材までの距離が30μm以下である第19、第
26又は第27の発明の液体吐出ヘッドに関する。
【0064】第40の発明は、気泡発生領域における気
泡の発生に基づいて、該気泡発生領域よりも液滴吐出方
向に関して下流側であって該気泡発生領域に対向しない
位置にある吐出口から液滴を吐出する液滴吐出方法であ
って、前記気泡発生領域の吐出口側領域を前記吐出口に
対して実質的に密閉状態とする自由端部分と、該自由端
部分に関して前記吐出口と反対側に位置する支点部分か
ら該自由端部分に至る面部分とを備える可動部材を用
い、該気泡の発生によって該実質的に密閉状態の自由端
を移動させて前記気泡発生領域を吐出口に対して開放し
液滴を吐出する液滴吐出方法であって、該液滴中の色材
の粒径が、前記可動部材とその周囲とのスリット幅より
大きいことを特徴とする液滴吐出方法に関する。
【0065】第41の発明は、液滴中の色材の8割以上
がスリット幅以上の粒径である第40の発明の液滴吐出
方法に関する。
【0066】上述したような、極めて新規な吐出原理に
基づく本発明の液体吐出方法、液体吐出ヘッド等による
と、発生する気泡とこれによって変位する可動部材との
相乗効果を得ることができ、吐出口近傍の液体を効率よ
く吐出できるため、従来のバブルジェット方式の吐出方
法、ヘッド等に比べて、吐出効率を向上できる。例えば
本発明の最も好ましい形態においては2倍以上という飛
躍的な吐出効率の向上を達成できた。
【0067】この発明の特徴的な構成によれば、低温や
低湿で長期放置を行った場合であっても不吐出になるこ
とを防止でき、仮に不吐出になっても、予備吐出や吸引
回復といった回復処理をわずかに行うだけで正常状態に
即座に復帰できる利点もある。
【0068】具体的には64個の吐出口を持つ従来のバ
ブルジェット方式のヘッドの大半が不吐出になるような
長期放置条件においても、本発明のヘッドでは約半分以
下の吐出口が吐出不良になるだけである。また、これら
のヘッドを予備吐出で回復した場合、各吐出口に対して
従来ヘッドで数千発の予備吐出を行う必要があったが、
本発明では100発程度の予備吐出で回復を行うだけで
十分であった。これは、回復時間の短縮や回復による液
体の損失を低減でき、ランニングコストも大幅に下げる
ことが可能であることを意味する。
【0069】また、特に本発明のリフィル特性を向上し
た構成によれば、連続吐出時の応答性、気泡の安定成
長、液滴の安定化を達成して、高速液体吐出による高速
記録また高画質記録を可能にすることができた。
【0070】さらに、吐出液として、色材の粒径を特定
したインクを用いることにより、以上の特性を長期放置
後でも繰り返し安定して発揮させることができた。
【0071】本発明のその他の効果については、各実施
形態の記載から理解される。
【0072】なお、本発明でいう「粒径」とは、一粒子
が有する最大粒径、あるいは3方向の最大粒径のうちの
最小粒径をいう。
【0073】また、本発明の説明で用いる「上流」「下
流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(又は可動部
材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関して、
又はこの構成上の方向に関しての表現として表されてい
る。
【0074】また、気泡自体に関する「下流側」とは、
主として液滴の吐出に直接作用するとされる気泡の吐出
口側部分を代表する。より具体的には気泡の中心に対し
て、上記流れ方向や上記構成上の方向に関する下流側、
又は、発熱体の面積中心より下流側の領域で発生する気
泡を意味する。
【0075】また、本発明の説明で用いる「実質的に密
閉」とは、気泡が成長するとき、可動部材が変位する前
に可動部材の周囲の隙間(スリット)から気泡がすり抜
けない程度の状態を意味する。
【0076】さらに、本発明でいう「分離壁」とは、広
義では気泡発生領域と吐出口に直接連通する領域とを区
分するように介在する壁(可動部材を含んでもよい)を
意味し、狭義では気泡発生領域を含む流路を吐出口に直
接連通する液流路とを区分し、それぞれの領域にある液
体の混合を防止するものを意味する。
【0077】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明を詳
細に説明する。
【0078】まず図面を参照しつつ本発明で利用する可
動部材の機能について説明する。すなわち、液体を吐出
するための、気泡に基づく圧力の伝搬方向や気泡の成長
方向を制御することで吐出力や吐出効率の向上を図る場
合の例を説明する。なお、以下の各例での説明は、液体
補給タンク、可動部材変位領域や気泡発生領域へ至る液
流路は互いに分離されたものであることを前提とする。
【0079】図1は可動部材を用いた液体吐出ヘッドを
液流路方向で切断した断面模式図を示している。
【0080】この液体吐出ヘッドは、液体を吐出するた
めの吐出エネルギー発生素子として、液体に熱エネルギ
ーを作用させる発熱体2(この例においては40μm×
105μmの形状の発熱抵抗体)が素子基板1に設けら
れており、この素子基板上に発熱体2に対応して液流路
10が配されている。液流路10は吐出口18に連通し
ていると共に、複数の液流路10に液体を供給するため
の共通液室13に連通しており、吐出口から吐出された
液体に見合う量の液体をこの共通液室13から受け取
る。
【0081】この液流路10の素子基板上には、前述の
発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有す
る材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31
が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液
流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニ
ングして形成した土台(支持部材)34等に固定されて
いる。これによって、可動部材は保持されると共に支点
(支点部分)33を構成している。
【0082】この可動部材31は、液体の吐出動作によ
って共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側
へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定
端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端
(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位
置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程
度の距離を隔てて配されている。この発熱体と可動部材
との間が気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の
種類や形状および配置はこれに限られることなく、後述
するように気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状お
よび配置であればよい。なお、上述した液流路10は、
後に取り上げる液体の流れの説明のため、可動部材31
を境にして直接吐出口18に連通している部分を第1の
液流路14とし、気泡発生領域11や液体供給路12を
有する第2の液流路16の2つの領域に分けて説明す
る。
【0083】発熱体2を発熱させることで可動部材31
と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用
し、液体に米国特許第4,723,129号明細書に記載されて
いるような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡
の発生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用
し、可動部材31は図1(b)、(c)で示されるよう
に支点33を中心に吐出口側に大きく開くように変位す
る。可動部材31の変位若しくは変位した状態によって
気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出
口側に導かれる。
【0084】ここで、以上述べた可動部材を用いた場合
の基本的な吐出原理の一つを以下に説明する。この吐出
方法における最も重要な原理の1つは、気泡に対面する
ように配された可動部材が気泡の圧力あるいは気泡自体
に基づいて、定常状態の第1の位置から変位後の位置で
ある第2の位置へ変位し、この変位する可動部材31に
よって気泡の発生に伴う圧力や気泡自身を吐出口18が
配された下流側へ導くことである。
【0085】この原理を可動部材を用いない従来の液流
路構造を模式的に示した図2と可動部材を用いた図3と
を比較してさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口
方向への圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の伝搬
方向をVBとして示した。
【0086】図2で示されるような従来のヘッドにおい
ては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制す
る構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV1〜
V8のように気泡表面の垂線方向となり様々な方向を向い
ていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼすVA
方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜V4即ち気
泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の圧力伝搬の
方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐出速度等に
直接寄与する重要な部分である。さらにV1は吐出方向V
Aの方向に最も近いため効率よく働き、逆にV4はVAに向
かう方向成分は比較的少ない。
【0087】これに対して、図3で示される可動部材を
用いた場合には、可動部材31が図2の場合のように様
々な方向を向いていた気泡の圧力伝搬方向V1〜V4を下流
側(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向に変換する
ものであり、これにより気泡40の圧力が直接的に効率
よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方
向自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下流方向に導か
れ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡
の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力
伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力また吐出
速度等の根本的な向上を達成することができる。
【0088】次に図1に戻って、可動部材を用いた液体
吐出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0089】図1(a)は、発熱体2に電気エネルギー
等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が
熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可
動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対
し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に
設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可
動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも
発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通
って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで
可動部材31が配されている。
【0090】図1(b)は、発熱体2に電気エネルギー
等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって
気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸
騰に伴う気泡を発生させた状態である。
【0091】このとき可動部材31は気泡40の発生に
基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口
方向に導くように第1位置から第2位置へ変位する。こ
こで重要なことは前述したように、可動部材31の自由
端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点33を上流
側(共通液室側)に位置するように配置して、可動部材
の少なくとも一部を発熱体の下流部分すなわち気泡の下
流部分に対面させることである。
【0092】図1(c)は気泡40がさらに成長した状
態であるが、気泡40発生に伴う圧力に応じて可動部材
31はさらに変位している。発生した気泡は上流より下
流に大きく成長すると共に可動部材の第1の位置(点線
位置)を越えて大きく成長している。このように気泡4
0の成長に応じて可動部材31が徐々に変位して行くこ
とで気泡40の圧力伝搬方向や堆積移動のしやすい方
向、すなわち自由端側への気泡の成長方向を吐出口に均
一的に向かわせることができることも吐出効率を高める
と考えられる。可動部材は気泡や発泡圧を吐出口方向へ
導く際もこの伝達の妨げになることはほとんどなく、伝
搬する圧力の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や
気泡の成長方向を制御することができる。
【0093】図1(d)は気泡40が、前述した膜沸騰
の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態
を示している。
【0094】第2の位置まで変位していた可動部材31
は、気泡の収縮による負圧と可動部材自身のばね性によ
る復元力によって図1(a)の初期位置(第1の位置)
に復帰する。また、消泡時には、気泡発生領域11での
気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体
積分を補うために上流側(B)、すなわち共通液室夫々
の側から流れのVD1、VD2のように、また、吐出口側か
ら流れのVcのように液体が流れ込んでくる。
【0095】以上、気泡の発生に伴う可動部材の動作と
液体の吐出動作について説明したが、以下に可動部材を
用いた液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルについて
詳しく説明する。
【0096】図1を用いて可動部材を用いた場合の液供
給メカニズムをさらに詳しく説明する。
【0097】図1(c)の後、気泡40が最大体積の状
態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補
う体積の液体が気泡発生領域に、第1液流路14の吐出
口18側と第2液流路16の共通液室側13から流れ込
む。可動部材31を持たない従来の液流路構造において
は、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液
室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に
近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに起
因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものであ
る。)。
【0098】このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さ
い場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ
込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特
に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を
小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメ
ニスカスの後退が大きくなり、リフィル時間が長くなっ
て高速印字を妨げることとなっていた。
【0099】これに対して本例は可動部材31を設けた
ため、気泡の体積Wを可動部材31の第1位置を境に上
側をW1、気泡発生領域11側をW2とした場合、消泡
時に可動部材が元の位置に戻った時点でメニスカスの後
退は止まり、その後残ったW2の体積分の液体供給は主
に第2流路16の流れVD2からの液供給によって成され
る。これにより、従来、気泡Wの体積の半分程度に対応
した量がメニスカスの後退量になっていたのに対して、
それより少ないW1の半分程度のメニスカス後退量に抑
えることが可能になった。
【0100】さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時
の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿っ
て、主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行う
ことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0101】ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消
泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカス
の振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっ
ていたが、本例の高速リフィルにおいては可動部材によ
って吐出口側の第1液流路14の領域と、気泡発生領域
11との吐出口側での液体の流通が抑制されるためメニ
スカスの振動を極めて少なくすることができることであ
る。
【0102】このように可動部材を用いた場合は、第2
流路16の液供給路12を介しての発泡領域への強制リ
フィルと、上述したメニスカス後退や振動の抑制によっ
て高速リフィルを達成することで、吐出の安定や高速繰
り返し吐出、また記録の分野に用いた場合、画質の向上
や高速記録を実現することができる。
【0103】可動部材を用いた構成においてはさらに次
のような有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡の
発生による圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制す
ることである。発熱体2上で発生した気泡の内、共通液
室13側(上流側)の気泡による圧力は、その多くが、
上流側に向かって液体を押し戻す力(バック波)になっ
ていた。このバック波は、上流側の圧力と、それによる
液移動量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こし、こ
れらは液体の液流路内へのリフィルを低下させ高速駆動
の妨げにもなっていた。可動部材を用いた場合は、まず
可動部材31によって上流側へのこれらの作用を抑える
ことでもリフィル供給性の向上をさらに図っている。
【0104】次に、可動部材を用いた場合における更な
る特徴的な構造と効果について、以下に説明する。
【0105】第2液流路16は、発熱体2の上流に発熱
体2と実質的に平坦につながる(発熱体表面が大きく落
ち込んでいない)内壁を持つ液体供給路12を有してい
る。このような場合、気泡発生領域11および発熱体2
の表面への液体の供給は、可動部材31の気泡発生領域
11に近い側の面に沿って、VD2のように行われる。こ
のため、発熱体2の表面上に液体が淀むことが抑制さ
れ、液体中に溶存していた気体の析出や、消泡できずに
残ったいわゆる残留気泡が除去され易く、また、液体へ
の蓄熱が高くなりすぎることもない。従って、より安定
した気泡の発生を高速に繰り返し行うことができる。な
お、この例では実質的に平坦な内壁を持つ液体供給路1
2を持つもので説明したが、これに限らず、発熱体表面
となだらかに繋がり、なだらかな内壁を有する液供給路
であればよく、発熱体上に液体の淀みや、液体の供給に
大きな乱流を生じない形状であればよい。
【0106】また、気泡発生領域への液体の供給は、可
動部材の側部(スリット35)を介してVD1から行われ
るものもある。しかし、気泡発生時の圧力をさらに有効
に吐出口に導くために図1で示すように気泡発生領域の
全体を覆う(発熱体面を覆う)ように大きな可動部材を
用い、可動部材31が第1の位置へ復帰することで、気
泡発生領域11と第1液流路14の吐出口に近い領域と
の液体の流抵抗が大きくなるような形態の場合、前述の
VD1から気泡発生領域11に向かっての液体の流れが妨
げられる。しかし、可動部材を用いたヘッド構造におい
ては、気泡発生領域に液体を供給するための流れVD1が
あるため、液体の供給性能が非常に高くなり、可動部材
31で気泡発生領域11を覆うような吐出効率向上を求
めた構造を取っても、液体の供給性能を落とすことがな
い。
【0107】ところで、可動部材31の自由端32と支
点33の位置は、自由端が相対的に支点より下流側にあ
る。このような構成のため、前述した発泡の際に気泡の
圧力伝搬方向や成長方向を吐出口側に導く等の機能や効
果を効率よく実現できるのである。さらに、この位置関
係は吐出に対する機能や効果のみならず、液体の供給の
際にも液流路10を流れる液体に対する流抵抗を小さく
しでき高速にリフィルできるという効果を達成してい
る。これは、吐出によって後退したメニスカスが毛管力
により吐出口18へ復帰する際や、消泡に対しての液供
給が行われる場合に、液流路10(第1液流路13、第
2液流路12を含む)内を流れる流れVD1、VD2夫々に
対し、逆らわないように自由端と支点33とを配置して
いるためである。
【0108】補足すれば、図1においては、前述のよう
に可動部材31の自由端32が、発熱体2を上流側領域
と下流側領域とに2分する面積中心3(発熱体の面積中
心(中央)を通り液流路の長さ方向に直交する線)より
下流側の位置に対向するように発熱体2に対して延在し
ている。これによって発熱体の面積中心位置3より下流
側で発生する液体の吐出に大きく寄与する圧力、又は気
泡を可動部材31が受け、この圧力及び気泡を吐出口側
に導くことができ、吐出効率や吐出力を根本的に向上さ
せることができる。
【0109】さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用
して多くの効果を得ている。また、可動部材31の自由
端が瞬間的な機械的変位を行っていることも、液体の吐
出に対して有効に寄与している考えられる。
【0110】前述した機械的変位による液体の吐出力を
さらに向上させた例を図4に示す。図4はこのようなヘ
ッド構造の横断面図である。図4においては、可動部材
31の自由端の位置が発熱体のさらに下流側に位置する
ように、可動部材が延在している例を示している。これ
によって自由端位置での可動部材の変位速度を高くする
ことができ、可動部材の変位による吐出力の発生をさら
に向上させることができる。
【0111】また、自由端が先の例に比較して吐出口側
に近づくことになるので気泡の成長をより安定した方向
成分に集中できるので、より優れた吐出を行うことがで
きる。
【0112】また、気泡の圧力中心部の気泡成長速度に
応じて、可動部材31は変位速度R1で変位するが、こ
の位置より支点33に対して、遠い位置の自由端32は
さらに速い速度R2で変位する。これにより、自由端3
2を高い速度で機械的に液体に作用せしめ液移動を起こ
させることで吐出効率を高めている。
【0113】また、自由端形状は、液流れに対して垂直
な形状をすることにより、気泡の圧力や可動部材の機械
的な作用をより効率的に吐出に寄与させることができ
る。
【0114】以上説明した可動部材を用いた吐出方式を
適用して本発明を構成することができる。なお、本発明
で用いるヘッドは、上記の可動部材を用いたヘッドにお
ける構成や特性、あるいは吐出原理などを基本的に有す
るもので、この基本的な事項に加えて、液流路を第1の
液流路と第2の液流路に分割し、かつ、第1の液流路に
供給される第1の液体と、第2の液流路に供給され、加
熱により発泡させる第2の液体とを分けた構成を有す
る。
【0115】図5は、本発明の液体吐出ヘッドの他の例
における流路方向の断面模式図を示しており、図6はこ
の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0116】本例の液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発
生させるための熱エネルギーを与える発熱体2が設けら
れた素子基板1上に、発泡用の第2液流路16があり、
その上に吐出口18に直接連通した第1液流路14が配
されている。
【0117】第1液流路の上流側は、複数の第1液流路
に吐出液を供給するための第1共通液室15に連通して
おり、第2液流路の上流側は、複数の第2液流路に液体
を供給するための第2共通液室に連通している。
【0118】第1と第2の液流路の間には、金属等の弾
性を有する材料で構成された分離壁30が配されてお
り、第1液流路中の第1の液体と第2の液流路中の第2
の液体とが混合しないようにこれらを液密に区分してい
る。
【0119】発熱体の面方向上方への投影空間(以下吐
出圧発生領域という。;図5中のAの領域とBの気泡発
生領域11)に位置する部分の分離壁は、スリット35
によって吐出口側(液体の流れの下流側)が自由端で、
共通液室(15、17)側に支点33が位置する片持梁
形状の可動部材31となっている。この可動部材31
は、気泡発生領域11(B)に面して配されているた
め、発泡液の発泡によって第1液流路側の吐出口側に向
けて開口するように動作する(図中矢印方向)。図6に
おいても、発熱体2としての発熱抵抗部と、この発熱抵
抗部に電気信号を印加するための配線電極5とが配され
た素子基板1上に、第2の液流路を構成する空間を介し
て分離壁30が配置されている。
【0120】可動部材31の支点33、自由端32の配
置と、発熱体との配置の関係については、先の図1等で
説明した例と同様にしている。
【0121】また、先の例で液供給路12と発熱体2と
の構造の関係について説明したが、本例においても第2
液流路16と発熱体2との構造の関係を同じくしてい
る。
【0122】次に図7を用いて本例の液体吐出ヘッドの
動作を説明する。
【0123】ヘッドを駆動させるにあたっては、第1液
流路14に供給される吐出液と第2の液流路16に供給
される発泡液として同じ水系のインクを用いて動作させ
た。発熱体2が発生した熱が、第2液流路の気泡発生領
域内の発泡液に作用することで、先の例で説明したのと
同様に発泡液に米国特許第4,723,129号明細書に記載さ
れているような膜沸騰現象に基づく気泡40を発生させ
る。
【0124】本例においては、気泡発生領域の上流側を
除く、3方からの発泡圧の逃げがないため、この気泡発
生にともなう圧力が吐出圧発生部に配された可動部材6
側に集中して伝搬し、気泡の成長をともなって可動部材
6が図7(a)の状態から図7(b)のように第1液流
路側に変位する。この可動部材の動作によって第1液流
路14と第2液流路16とが大きく連通し、気泡の発生
に基づく圧力が第1液流路の吐出口側の方向(A方向)
に主に伝わる。この圧力の伝搬と、前述のような可動部
材の機械的変位によって液体が吐出口から吐出される。
【0125】次に、気泡が収縮するに伴って可動部材3
1が図7(a)の位置まで戻ると共に、第1液流路14
では吐出された吐出液体の量に見合う量の吐出液体が上
流側から供給される。本例においても、この吐出液体の
供給は前述の例と同様に可動部材が閉じる方向であるた
め、吐出液体のリフィルを可動部材で妨げることがな
い。
【0126】本発明は、上述のような2流路構成をとる
ことによって、さらに次のような長所を有する。すなわ
ち、上述の構成によると、吐出液と発泡液とを別液体と
し、発泡液の発泡で生じた圧力によって吐出液を吐出す
ることができる。このため従来、熱を加えても発泡が十
分に行われにくく吐出力が不十分であったポリエチレン
グリコール等の高粘度の液体であっても、この液体を第
1の液流路に供給し、発泡液に発泡が良好に行われる液
体(エタノール:水=4:6の混合液1〜2cP程度
等)や低沸点の液体を第2の液流路に供給することで良
好に吐出させることができる。
【0127】また、発泡液として、熱を受けても発熱体
の表面にコゲ等の堆積物を生じない液体を選択すること
で、発泡を安定化し、良好な吐出を行うことができる。
【0128】さらに、本発明のヘッドの構造においては
先の例で説明したような効果をも生じるため、さらに高
吐出効率、高吐出力で高粘性液体等の液体を吐出するこ
とができる。
【0129】また、加熱に弱い液体の場合においてもこ
の液体を第1の液流路に吐出液として供給し、第2の液
流路で熱的に変質しにくく良好に発泡を生じる液体を供
給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を与えることな
く、しかも上述のように高吐出効率、高吐出力で吐出す
ることができる。
【0130】<液流路の天井形状>図8は本発明の液体
吐出ヘッドの一例の流路方向断面図であるが、第1液流
路13(若しくは図1における液流路10)を構成する
ための溝が設けられた溝付き部材50が分離壁30上に
設けられている。本実施形態においては可動部材の自由
端32位置近傍の流路天井の高さが高くなっており、可
動部材の動作角度θをより大きく取れるようにしてい
る。この可動部材の動作範囲は、液流路の構造、可動部
材の耐久性や発泡力等を考慮して決定すればよいが、吐
出口の軸方向の角度を含む角度まで動作することが望ま
しいと考えられる。
【0131】また、この図で示されるように吐出口の直
径より可動部材の自由端の変位高さを高くすることで、
より十分な吐出力の伝達が成される。また、この図で示
されるように、可動部材の自由端32位置の液流路天井
の高さより可動部材の支点33位置の液流路天井の高さ
の方が低くなっているため、可動部材の変位よる上流側
への圧力波の逃げがさらに有効に防止できる。
【0132】<第2液流路と可動部材との配置関係>図
9は、上述の可動部材31と第2の液流路16との配置
関係を説明するための図であり、同図(a)は分離壁3
0、可動部材31近傍を上方から見た図であり、同図
(b)は、分離壁30を外した第2液流路16を上方か
ら見た図である。そして、同図(c)は、可動部材6と
第2液流路16との配置関係を、これらの各要素を重ね
ることで模式的に示した図である。なお、いずれの図も
図面下方が吐出口が配されている前面側である。
【0133】本例の第2の液流路16は発熱体2の上流
側(ここでの上流側とは第2共通液室側から発熱体位
置、可動部材、第1流路を経て吐出口に向う大きな流れ
の中の上流側のことである。)に狭窄部19を持ってお
り、発泡時の圧力が第2液流路16の上流側に容易に逃
げることを抑制するような室(発泡室)構造となってい
る。
【0134】従来のヘッドのように、発泡する流路と液
体を吐出するための流路とが同じで、発熱体より液室側
に発生した圧力が共通液室側に逃げないように狭窄部を
設けるヘッドの場合には、液体のリフィルを充分考慮し
て、狭窄部における流路断面積があまり小さくならない
構成を採る必要があった。
【0135】しかし、本実施形態の場合、吐出される液
体の多くを第1液流路内の吐出液とすることができ、発
熱体が設けられた第2液流路内の発泡液はあまり消費さ
れないようにできるため、第2液流路の気泡発生領域1
1への発泡液の充填量は少なくて良い。従って、上述の
狭窄部19における間隔を数μm〜十数μmと非常に狭
くできるため、第2液流路で発生した発泡時の圧力をあ
まり周囲に逃がすことをさらに抑制でき、集中して可動
部材側に向けることができる。そしてこの圧力を可動部
材31を介して吐出力として利用することができるた
め、より高い吐出効率、吐出力を達成することができ
る。ただ、第1液流路16の形状は上述の構造に限られ
るものではなく、気泡発生に伴う圧力が効果的に可動部
材側に伝えられる形状であれば良い。
【0136】なお、図9(c)で示されるように可動部
材31の側方は、第2液流路を構成する壁の一部を覆っ
ており、このことで、可動部材31の第2液流路への落
ち込みが防止できる。これによって、前述した吐出液と
発泡液との分離性をさらに高めることができる。また、
気泡のスリットからの逃げの抑制ができるため、さらに
吐出圧や吐出効率を高めることができる。さらに、前述
の消泡時の圧力による上流側からのリフィルの効果を高
めることができる。
【0137】なお、図7(b)や図8においては、可動
部材6の第1の液流路14側への変位に伴って第2の液
流路4の気泡発生領域で発生した気泡の一部が第1の液
流路14側に延在しているが、この様に気泡が延在する
ような第2流路の高さにすることで、気泡が延在しない
場合に比べ更に吐出力を向上させることができる。この
様に気泡が第1の液流路14に延在するようにするため
には、第2の液流路16の高さを最大気泡の高さより低
くすることが望ましく、この高さを数μm〜30μmと
することが望ましい。なお、本実施形態においてはこの
高さを15μmとした。
【0138】<可動部材および分離壁>図10は可動部
材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設け
られたスリットであり、このスリットによって、可動部
材31が形成されている。同図(a)は長方形の形状で
あり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動部材
の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が広く
なっており、可動部材の耐久性が向上する形状である。
動作の容易性と耐久性が良好な形状として、図14
(a)で示したように、支点側の幅が円弧状に狭くなっ
ている形態が望ましいが、可動部材の形状は第2の液流
路側に入り込むことがなく、容易に動作可能な形状で、
耐久性に優れた形状であればよい。
【0139】先の実施形態においては、板状可動部材3
1をおよびこの可動部材を有する分離壁5は厚さ5μm
のニッケルで構成したが、これに限られることなく可動
部材、分離壁を構成する材質としては発泡液と吐出液に
対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作する
ための弾性を有し、微細なスリットが形成できるもので
あればよい。
【0140】可動部材の材料としては、耐久性の高い、
銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白
金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、および
その合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、ス
チレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のア
ミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシ
ル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を
持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、
そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐イ
ンク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケ
ル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および
耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングした
もの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、
ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエー
テルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイ
ミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水
酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する
樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポ
キシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等の
アミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を
持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラ
ミックおよびその化合物が望ましい。
【0141】分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレー
ト、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケ
トン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリ
イミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の
近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱
性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合
物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、
金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もし
くは表面にチタンや金をコーティングしたものが望まし
い。
【0142】また、分離壁の厚さは、分離壁としての強
度を達成でき、可動部材として良好に動作するという観
点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、
0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0143】なお、可動部材31を形成するためのスリ
ット35の幅は本実施形態では2μmとしたが、発泡液
と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止し
たい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカスを
形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑制
すればよい。例えば、発泡液として2cP(センチポア
ズ)程度の液体を用い、吐出液として100cP以上の
液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混液
を防止することができるが、3μm以下にすることが望
ましい。
【0144】本発明における可動部材としてはμmオー
ダーの厚さ(tμm)を対象としており、cmオーダー
の厚さの可動部材は意図していない。μmオーダーの厚
さの可動部材にとって、μmオーダーのスリット幅(W
μm)を対象とする場合、製造のバラツキをある程度考
慮することが望ましい。
【0145】スリットを形成する可動部材の自由端ある
いは/且つ側端に対向する部材の厚みが可動部材の厚み
と同等の場合(図7、図8等)、スリット幅と厚みの関
係を製造のバラツキを考慮して以下のような範囲にする
ことで発泡液と吐出液の混液を安定的に抑制することが
できる。このことは限られた条件ではあるが設計上の観
点として、3cp以下の粘度の発泡液に対して高粘度イ
ンク(5cp、10cp等)を用いる場合、W/t≦1
を満足するようにすることで、2液の混合を長期にわた
って抑制することが可能な構成となった。
【0146】本発明の「実質的な密閉状態」を与えるス
リットとしては、このような数μmオーダであればより
確実である。
【0147】上述のように、発泡液と吐出液とに機能分
離させた場合、可動部材がこれらの実質的な仕切部材と
なる。この可動部材が気泡の生成に伴って移動する際に
吐出液に対して発泡液がわずかに混入することが見られ
る。画像を形成する吐出液は、インクジェット記録の場
合、色材濃度を3%乃至5%程度有するものが一般的で
あることを考慮すると、この発泡液が吐出液滴に対して
20%以下の範囲で含まれても大きな濃度変化をもたら
さない。従って、このような混液としては、吐出液滴に
対して20%以下となるような発泡液と吐出液との混合
を本発明に含むものとする。
【0148】尚、上記構成例の実施では、粘性を変化さ
せても上限で15%の発泡液の混合であり、5cps以
下の発泡液では、この混合比率は、駆動周波数にもよる
が、10%程度を上限とするものであった。
【0149】特に、吐出液の粘度を20cps以下にす
ればする程、この混液は低減(例えば5%以下)でき
る。
【0150】次に、このヘッドにおける発熱体と可動部
材の配置関係について、図を用いて説明する。ただし、
可動部材と発熱体の形状および寸法,数は、以下に限定
されるものではない。発熱体と可動部材の最適な配置に
よって、発熱体による発泡時の圧力を吐出圧として有効
に利用することが可能となる。
【0151】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆ
るバブルジェット記録方法の従来技術においては、図1
1に示すように、発熱体面積とインク吐出量は比例関係
にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域Sが
存在していることがわかる。また、発熱体上のコゲの様
子から、この非発泡有効領域Sが発熱体の周囲に存在し
ていることがわかる。これらの結果から、発熱体周囲の
約4μm幅は、発泡に関与されていないとされている。
【0152】したがって、発泡圧を有効利用するために
は、発熱体の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領域
の直上が可動部材の可動領域で覆われるように、可動部
材を配置するのが効果的であると、言える。本実施形態
においては、発泡有効領域を発熱体周囲から約4μm以
上内側としたが、発熱体の種類や形成方法によっては、
これに限定されるものではない。
【0153】図12に、58×150μmの発熱体2に
可動領域の総面積が異なる可動部材301((a)
図)、可動部材302((b)図)を配置したときの上
部から見た模式図を示す。
【0154】可動部材301の寸法は、53×145μ
mで、発熱体2の面積よりも小さいが、発熱体2の発泡
有効領域と同じ程度の寸法であり、該発泡有効領域を覆
うように、配置されている。一方、可動部材302の寸
法は、53×220μmで発熱体2の面積よりも大きく
(幅寸法を同じにした場合、支点〜可動先端間の寸法が
発熱体の長さよりも長い)、可動部材301と同じよう
に発泡有効領域を覆うように配置されている。上記2種
の可動部材301、302に対し、それらの耐久性と吐
出効率について測定を行った。測定条件は以下の通りで
ある。
【0155】 発泡液 : エタノール40%水溶液 吐出用インク: 染料インク 電圧 : 20.2V 周波数 : 3kHz この測定条件で実験を行った結果、可動部材の耐久性に
関しては、(a)可動部材301の方は、1×107
ルス印加したところで可動部材301の支点部分に損傷
が見られた。(b)可動部材302の方は、3×108
パルス印加しても、損傷は見られなかった。また、投入
エネルギーに対する吐出量と吐出速度からもとまる運動
エネルギーも約1.5〜2.5倍程度向上することが確
認された。
【0156】以上の結果から、耐久性、吐出効率の両面
からみても、発泡有効領域の真上を覆うように可動部材
を設け、該可動部材の面積が発熱体の面積よりも大きい
方が、優れていることがわかる。
【0157】図13に発熱体のエッジから可動部材の支
点までの距離と、可動部材の変位量の関係を示す。ま
た、図14に、発熱体2と可動部材31との位置関係を
側面方向から見た断面構成図を示す。発熱体2は40×
105μmのものを用いた。発熱体2のエッジから可動
部材31の支点33までの距離lが大きい程、変位量が
大きいことがわかる。したがって、要求されるインクの
吐出量や吐出液の流路構造および発熱体形状などによっ
て、最適変位量を求め、可動部材の支点の位置を決める
ことが望ましい。
【0158】また、可動部材の支点が発熱体の発泡有効
領域直上に位置する場合は、可動部材の変位による応力
に加え、発泡圧力が直接支点に加わるため可動部材の耐
久性が低下してしまう。本発明者の実験によると、発泡
有効領域の真上に支点を設けたものでは、1×106
ルス程度で、可動壁に損傷が生じており、耐久性が低下
してしまうことが分かっている。したがって、可動部材
の支点は、発熱体の発泡有効領域直上外に配置すること
で耐久性がそれ程高くない形状や材質の可動部材であっ
ても実用可能性が高くなる。ただし、前記発泡有効領域
直上に支点がある場合でも形状や材質を選択すれば、良
好に用いることができる。かかる構成において、高吐出
効率および耐久性に優れた液体吐出ヘッドが得られる。
【0159】<素子基板>以下に液体に熱を与えるため
の発熱体が設けられた素子基板の構成について説明す
る。
【0160】図15は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面
図を示したもので、図15(a)は後述する保護膜があ
るヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0161】素子基板1上に第2液流路16、分離壁3
0、第1液流路14、第1液流路を構成する溝を設けた
溝付き部材50が配されている。
【0162】素子基板1には、シリコン等の気体107
に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチ
ッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体を構成
するハフニュウムボライド(HfB2)、チッ化タンタ
ル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵
抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウ
ム等の配線電極(0.2〜1.0μm厚)を図11のよ
うにパターニングされている。この2つの配線電極10
4から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を流
し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリコ
ンやチッ化シリコン等の保護層を0.1〜2.0μm厚
で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテー
ション層(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、
インク等の各種の液体から抵抗層105を保護してい
る。
【0163】特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧
力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性
を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)
等が耐キャビテーション層として用いられる。
【0164】また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み
合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよく
その例を図15(b)に示す。このような保護層を必要
としない抵抗層の材料としてはイリジュウム−タンタル
−アルミ合金等が挙げられる。
【0165】このように、前述の各実施形態における発
熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱部)
だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含むも
のでもよい。
【0166】本実施形態においては、発熱体として電気
信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有す
るものを用いたが、これに限られることなく、吐出液を
吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるもので
あればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受け
ることで発熱するような光熱変換体や高周波を受けるこ
とで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0167】なお、前述の素子基板1には、前述の発熱
部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供
給するための配線電極104で構成される電気熱変換体
の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するための
トランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等
の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込ま
れていてもよい。
【0168】また、前述のような素子基板1に設けられ
ている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出する
ためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介し
て図16で示されるような矩形パルスを印加し、配線電
極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施
形態のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パルス
幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHzで
加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作によ
って、吐出口から液体であるインクを吐出させた。しか
しながら、駆動信号の条件はこれに限られることなく、
発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号であれ
ばよい。
【0169】<2流路構成のヘッド構造>以下に、第
1、第2の共通液室に異なる液体を良好に分離して導入
でき部品点数の削減を図れ、コストダウンを可能とする
液体吐出ヘッドの構造例について説明する。
【0170】図17は、このような液体吐出ヘッドの構
造を示す模式図であり、先の実施形態と同じ構成要素に
ついては同じ符号を用いており、詳しい説明はここでは
省略する。
【0171】本例においては、溝付き部材50は、吐出
口18を有するオリフィスプレート51と、複数の第1
液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流路14に
共通して連通し、各第1の液流路3に液体(吐出液)を
供給するための第1の共通液室15を構成する凹部とか
ら概略構成されている。
【0172】この溝付部材50の下側部分に分離壁30
を接合することにより複数の第1液流路14を形成する
ことができる。このような溝付部材50は、その上部か
ら第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を
有している。また、溝付部材50は、その上部から分離
壁30を突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2
の液体供給路21を有している。
【0173】第1の液体(吐出液)は、図17の矢印C
で示すように、第1液体供給路20を経て、第1の共通
液室15、次いで第1の液流路14に供給され、第2の
液体(発泡液)は、図17の矢印Dで示すように、第2
液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2
液流路16に供給されるようになっている。
【0174】本例では、第2液体供給路21は、第1液
体供給路20と平行して配されているが、これに限るこ
とはなく、第1共通液室15の外側に配された分離壁3
0を貫通して、第2共通液室17に連通するように形成
されればどのように配されてもよい。
【0175】また、第2液体供給路21の太さ(直径)
に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。
第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、
矩形状等でもよい。
【0176】また、第2共通液室17は、溝付部材50
を分離壁30で仕切ることによって形成することができ
る。形成の方法としては、図18で示す本実施形態の分
解斜視図のように、素子基板上にドライフィルムで共通
液室枠と第2液路壁を形成し、分離壁を固定した溝付部
材50と分離壁30との結合体と素子基板1とを貼り合
わせることにより第2共通液室17や第2液流路16を
形成してもよい。
【0177】本実施形態例では、アルミニュウム等の金
属で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液
に対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生
する発熱体としての電気熱変換素子が複数設けられた素
子基板1が配されている。
【0178】この素子基板1上には、第2液路壁により
形成された液流路16を構成する複数の溝と、複数の発
泡液流路に連通し、それぞれの発泡液路に発泡液を供給
するための第2共通液室(共通発泡液室)17を構成す
る凹部と、前述した可動壁31が設けられた分離壁30
とが配されている。
【0179】符号50は、溝付部材である。この溝付部
材は、分離壁30と接合されることで吐出液流路(第1
液流路)14を構成する溝と、吐出液流路に連通し、そ
れぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1の共
通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、
第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐
出液供給路)20と、第2の共通液室17に発泡液を供
給するための第2の供給路(発泡液供給路)21とを有
している。第2の供給路21は、第1の共通液室15の
外側に配された分離壁30を貫通して第2の共通液室1
7に連通する連通路に繋がっており、この連通路によっ
て吐出液と混合することなく発泡液を第2の共通液室1
5に供給することができる。
【0180】なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板
50の配置関係は、素子基板1の発熱体に対応して可動
部材31が配置されており、この可動部材31に対応し
て吐出液流路14が配されている。また、本実施形態例
では、第2の供給路を1つ溝付部材に配した例を示した
が、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液供
給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に比
例して決めればよい。
【0181】このような流路断面積の最適化により溝付
部材50等を構成する部品をより小型化することも可能
である。
【0182】以上説明したように本例によれば、第2液
流路に第2液体を供給する第2の供給路と、第1液流路
に第1液体を供給する第1の供給路とが同一の溝付部材
としての溝付天板からなることにより部品点数が削減で
き、工程の短縮化とコストダウンが可能となる。
【0183】また第2液流路に連通した第2の共通液室
への、第2液体の供給は、第1液体と第2液体を分離す
る分離壁を突き抜ける方向で第2液流路によって行なわ
れる構造であるため、前記分離壁と溝付部材と発熱体形
成基板との貼り合わせ工程が1度で済み、作りやすさが
向上すると共に、貼り合わせ精度が向上し、良好に吐出
することができる。
【0184】また、第2液体は、分離壁を突き抜けて第
2液体共通液室へ供給されるため、第2液流路に第2液
体の供給が確実となり、供給量が十分確保できるため、
安定した吐出が可能となる。
【0185】<吐出液体、発泡液体>先の例で説明した
ように本発明においては、前述のような可動部材を有す
る構成によって、従来の液体吐出ヘッドよりも高い吐出
力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出することができ
る。
【0186】液体として水性液体を用いる場合は、水性
液媒体に、必要に応じて各種成分を溶解または分散させ
て水性の液体を調製することができる。この水性液媒体
としては、水、あるいは水と水溶性有機溶剤の混合物等
を挙げることができる。水溶性有機溶剤の具体例として
は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の
アミド類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリ
コール類;エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、
1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、
ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアル
キレングリコール類;エチレングリコールメチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエ
チレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコー
ルの低級アルキルエーテル類;エタノール、イソプロピ
ルアルコール等の1価アルコール類;グリセリン;N−
メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミ
ダゾリジノン;トリエタノールアミン;スルホラン;ジ
メチルスルホキシド;及びシクロヘキサノール等を挙げ
ることができ、これらは単独で、あるいはこれらの2種
以上の組合せで用いることができる。
【0187】水溶性有機溶剤の含有量は、これを用いて
調製される液体の用途に応じて適宜選択されるが、例え
ば、液体中に1〜80重量%の量で配合することができ
る。
【0188】また、液体には、用いられる用途に応じ
て、染料、顔料、分散トナー等の色材、界面活性剤、p
H調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の種々の添加物の必要
量を、単独で、あるいはその2種以上を組合せて含有さ
せることができる。
【0189】染料、顔料、分散トナー等の色材として
は、各種の記録方法で用いられている公知のものから本
発明の目的に応じて選択して用いることができる。色材
の含有量も特に限定されないが、例えば、0.1〜20
重量%とすることができる。無機顔料としては、酸化チ
タン、アルミナホワイト、カーボンブラック、アルミニ
ウム粉等が挙げられ、有機顔料としては、キナクリド
ン、フタロシアニンなどが挙げられる。インク等の液体
は、油性、水性のどちらでもよい。
【0190】表面張力調整剤として用いる界面活性剤と
しては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩、
アルキルベンゼンスルホン酸塩類、高級アルコールリン
酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、脂肪族アミン
類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン界面活性剤、
高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフ
ェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオ
キサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エルテルエチレ
ンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキ
サイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加
物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加
物、多価アルコールの脂肪酸エステル、アルカノールア
ミンの脂肪族アミド類等の非イオン性界面活性剤、アミ
ノ型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等を挙
げることができる。
【0191】液体の物性、例えば表面張力や粘度等は、
液体の用途に応じて、その組成を選択することで適宜調
整するとよい。
【0192】本発明における発泡液としては、発熱体か
ら加えられる熱によって劣化せずに、また加熱によって
発熱体上に堆積物を生じにくく、熱によって気化、凝縮
の可逆的状態変化を行うことが可能であり、さらに液流
路や可動部材や分離壁等を劣化させない液体であれば種
々の液体を用いることができる。具体的には、メタノー
ル、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノー
ル、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、トル
エン、キシレン、二塩化メチレン、トリクレン、フレオ
ンTF、フレオンBF、エチルエーテル、ジオキサン、
シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、
メチルエチルケトン、水等およびこれらの混合物が挙げ
られる。
【0193】本発明における吐出液としては、発泡性の
有無、熱的性質に関係なく様々な液体を用いることがで
きる。また、従来吐出が困難であった発泡性が低い液
体、熱によって変質、劣化しやすい液体や高粘度液体等
であっても利用できる。ただし、吐出液の性質として吐
出液自身、又は発泡液との反応によって、吐出や発泡ま
た可動部材の動作等を妨げるような液体でないことが望
まれる。
【0194】記録用の吐出液体としては、従来のバブル
ジェット装置で用いられていた組成のインクを用いるこ
とはもちろん、高粘度インク等をも利用することができ
る。その他の吐出液体としては、熱に弱い医薬品や香水
等の液体を利用することもできる。
【0195】本発明においては、以上のような組成のイ
ンクを用いて記録を行うと、吐出力の向上によってイン
クの吐出速度が高くなり、液滴の着弾精度が向上し、非
常に良好な記録画像を得ることができる。
【0196】例えば、以下のような組成のインクを用い
て記録を行ったが、良好な記録画像がえることができ
た。
【0197】(参考液体例1) C.I.フードブラック2(染料) 3重量% ジエチレングリコール 10重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 3重量% 水 77重量% *インク粘度:2cP また本発明によれば、従来のヘッドでは吐出が困難であ
った十数cps粘度の液体はもちろん、150cP以上
の非常に高い粘度の液体でも良好に吐出でき、高画質な
記録物を得ることができる。
【0198】例えば、以下のような組成の吐出液と発泡
液を組み合わせて用いた。
【0199】(参考液体例2) 発泡液1 エタノール 40重量% 水 60重量% 発泡液2 水 100重量% 発泡液3 イソプロピルアルコール 10重量% 水 90重量% 吐出液1(粘度:約15cp) カーボンブラック5 5重量%スチレン -アクリル酸-アクリル酸エチル共重合体 (酸価140、Mw8000) 1重量% モノエタノールアミン 0.25重量% グリセリン 69重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 3重量% 水 16.75重量% 吐出液2(粘度55cP) ポリエチレングリコール200 100重量% 吐出液3(粘度150cP) ポリエチレングリコール600 100重量% 上記の従来吐出されにくいとされていた液体の場合に
は、吐出速度が低いために、吐出方向性のバラツキが助
長され記録紙上のドットの着弾精度が悪く、また吐出不
安定による吐出量のバラツキが生じ、そのため高品位画
像が得にくかった。しかし、上述の実施形態の構成にお
いては、気泡の発生を、発泡液を用いることで充分に、
しかも安定して行うことができる。これにより、液滴の
着弾精度の向上とインク吐出量の安定化を図ることがで
き、記録画像品位を著しく向上することができる。
【0200】前述した課題に対して、本発明おける吐出
液としての液体は、その色材の粒径が、前記可動部材と
その周囲とのスリット幅より大きいことが必要である。
これにより、色材が、スリット部に介入することがない
ため可動部材の動作を妨げることもなく、また、発泡液
側にも混入しないため焦げの発生やヒーター上の堆積な
どの問題を起こすこともない。
【0201】色材の粒径は、液体中の色材の粒子数の8
割以上がスリット幅以上の粒径であることが好ましい。
すなわち、一粒子が有する最大粒径が、より好ましくは
3方向の最大粒径のいずれもがスリット幅以上である色
材の粒子数が、液体中の色材の粒子数の8割以上である
ことが望ましい。ここでいう粒径は、一次粒子径である
必要はなく、液体中で分散状態の粒子径(二次粒子径な
ど)がスリット幅より大きければよい。さらに粒子の形
状は球形に限られず、例えば金色や銀色等の色材などよ
うに偏平形状の場合は、その最長長さがスリット幅より
大きければ、このスリットを通過することが困難である
と考えられる。
【0202】以下にスリット幅3μmの液体吐出ヘッド
に用いた吐出液と発泡液の例を示す。
【0203】(液体例) 吐出液 酸価チタン 20重量%スチレン -アクリル酸共重合体 20重量% グリセリン 20重量% ジエチレングリコール 10重量% イソプロパノール 5重量% 水 25重量% 上記成分をボールミルにより攪拌、分散しインクを得
た。得られたインク中の分散状態にある色材の平均粒径
(アグリゲート径)は5〜8μmであった。なお、平均
粒子径の測定はマイクロトラック法により測定した。
【0204】発泡液 グリセリン 10重量% ジエチレングリコール 10重量% イソプロパノール 5重量% 水 75重量% <液体吐出ヘッドカートリッジ>次に、上記の例に係る
液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出ヘッドカートリッジ
を概略説明する。
【0205】図19は、前述した液体吐出ヘッドを含む
液体吐出ヘッドカートリッジの模式的分解斜視図であ
り、液体吐出ヘッドカートリッジは、主に液体吐出ヘッ
ド部200と液体容器80とから概略構成されている。
【0206】液体吐出ヘッド部200は、素子基板1、
分離壁30、溝付部材50、押さえバネ78、液体供給
部材90、支持体70等から成っている。素子基板1に
は、前述のように発泡液に熱を与えるための発熱抵抗体
が、複数個、列状に設けられており、また、この発熱抵
抗体を選択的に駆動するための機能素子が複数設けられ
ている。この素子基板1と可動壁を持つ前述の分離壁3
0との間に発泡液路が形成され発泡液が流通する。この
分離壁30と溝付天板50との接合によって、吐出され
る吐出液体が流通する吐出流路(不図示)が形成され
る。
【0207】押さえバネ78は、溝付部材50に素子基
板1方向への付勢力を作用させる部材であり、この付勢
力により素子基板1、分離壁30、溝付部材50と、後
述する支持体70とを良好に一体化させている。
【0208】支持体70は、素子基板1等を支持するた
めのものであり、この支持体70上にはさらに素子基板
1に接続し電気信号を供給するための回路基板71や、
装置側と接続することで装置側と電気信号のやりとりを
行うためのコンタクトパッド72が配置されている。
【0209】液体容器90は、液体吐出ヘッドに供給さ
れる、インク等の吐出液体と気泡を発生させるための発
泡液とを内部に区分収容している。液体容器90の外側
には、液体吐出ヘッドと液体容器との接続を行う接続部
材を配置するための位置決め部94と接続部を固定する
ための固定軸95が設けられている。吐出液体の供給
は、液体容器の吐出液体供給路92から接続部材の供給
路84を介して液体供給部材80の吐出液体供給路81
に供給され、各部材の吐出液体供給路83,71,21
を介して第1の共通液室に供給される。発泡液も同様
に、液体容器の供給路93から接続部材の供給路を介し
て液体供給部材80の発泡液供給路82に供給され、各
部材の発泡液体供給路84,71,22を介して第2液
室に供給される。
【0210】以上の液体吐出ヘッドカートリッジにおい
ては、発泡液と吐出液が異なる液体である場合も、供給
を行いうる供給形態および液体容器で説明したが、吐出
液体と発泡液体とが同じである場合には、発泡液と吐出
液の供給経路および容器を分けなくてもよい。
【0211】なお、この液体容器には、各液体の消費後
に液体を再充填して使用してもよい。このためには液体
容器に液体注入口を設けておくことが望ましい。又、液
体吐出ヘッドと液体容器とは一体であってもよく、分離
可能としてもよい。
【0212】<液体吐出装置>図20は、前述の液体噴
射ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示してい
る。本実施形態では特に吐出液体としてインクを用いた
インク吐出記録装置を用いて説明する液体吐出装置のキ
ャリッジHCは、インクを収容する液体タンク部90と
液体吐出ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリ
ッジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される
記録紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。
【0213】不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ
上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号
に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液
体が吐出される。
【0214】また、本実施形態の液体吐出装置において
は、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための
駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャ
リッジに伝えるためのギア112、113キャリッジ軸
115等を有している。この記録装置及びこの記録装置
で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対し
て液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ること
ができた。
【0215】図21は、本発明の液体吐出方法および液
体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録を動作させるた
めの装置全体のブロック図である。
【0216】記録装置は、ホストコンピュータ300よ
り印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装
置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると
同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘ
ッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力され
る。CPU302はROM303に保存されている制御
プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデ
ータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、
印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0217】またCPU302は前記画像データを記録
用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同
期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モー
タを駆動するための駆動データを作る。画像データおよ
びモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、
モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動
モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミン
グで駆動され画像を形成する。
【0218】上述のような記録装置に適用でき、インク
等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、各種の
紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用
いられるプラスチック材、布帛、アルミニュウムや銅等
の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板
等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ
等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0219】また上述の記録装置として、各種の紙やO
HPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパ
クトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチ
ック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、
皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木
材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミック
ス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して
記録を行う記録装置、又布帛に記録を行う捺染装置等を
も含むものである。
【0220】またこれらの液体吐出装置に用いる吐出液
としては、夫々の被記録媒体や記録条件に合わせた液体
を用いればよい。
【0221】<記録システム>次に、本発明の液体吐出
ヘッドを記録ヘッドとして用い被記録媒体に対して記録
を行う、インクジェット記録システムの一例を説明す
る。
【0222】図22は、前述した本発明の液体吐出ヘッ
ド201を用いたインクジェット記録システムの構成を
説明するための模式図である。本実施形態における液体
吐出ヘッドは、被記録媒体150の記録可能幅に対応し
た長さに360dpiの間隔で吐出口を複数配したフル
ライン型のヘッドであり、イエロー(Y),マゼンタ
(M),シアン(C),ブラック(Bk)の4色に対応
した4つのヘッドをホルダ202によりX方向に所定の
間隔を持って互いに平行に固定支持されている。
【0223】これらのヘッドに対してそれぞれ駆動信号
供給手段を構成するヘッドドライバ307から信号が供
給され、この信号に基づいて各ヘッドの駆動が成され
る。
【0224】各ヘッドには、吐出液としてY,M,C,
Bkの4色のインクがそれぞれ204a〜204dのイ
ンク容器から供給されている。なお、符号204eは発
泡液が蓄えられた発泡液容器であり、この容器から各ヘ
ッドに発泡液が供給される構成になっている。
【0225】また、各ヘッドの下方には、内部にスポン
ジ等のインク吸収部材が配されたヘッドキャップ203
a〜203dが設けられており、非記録時に各ヘッドの
吐出口を覆うことでヘッドの保守を成すことができる。
【0226】符号206は、先の各実施形態で説明した
ような各種、非記録媒体を搬送するための搬送手段を構
成する搬送ベルトである。搬送ベルト206は、各種ロ
ーラにより所定の経路に引き回されており、モータドラ
イバ305に接続された駆動用ローラにより駆動され
る。
【0227】本実施形態のインクジェット記録システム
においては、記録を行う前後に被記録媒体に対して各種
の処理を行う前処理装置251および後処理装置252
をそれぞれ被記録媒体搬送経路の上流と下流に設けてい
る。
【0228】前処理と後処理は、記録を行う被記録媒体
の種類やインクの種類に応じて、その処理内容が異なる
が、例えば、金属、プラスチック、セラミックス等の被
記録媒体に対しては、前処理として、紫外線とオゾンの
照射を行い、その表面を活性化することでインクの付着
性の向上を図ることができる。また、プラスチック等の
静電気を生じやすい被記録媒体においては、静電気によ
ってその表面にゴミが付着しやすく、このゴミによって
良好な記録が妨げられる場合がある。このため、前処理
としてイオナイザ装置を用い被記録媒体の静電気を除去
することで、被記録媒体からごみの除去を行うとよい。
また、被記録媒体として布帛を用いる場合には、滲み防
止、先着率の向上等の観点から布帛にアルカリ性物質、
水溶性物質、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチ
オ尿素から選択される物質を付与する処理を前処理とし
て行えばよい。前処理としては、これらに限らず、被記
録媒体の温度を記録に適切な温度にする処理等であって
もよい。
【0229】一方、後処理は、インクが付与された被記
録媒体に対して熱処理、紫外線照射等によるインクの定
着を促進する定着処理や、前処理で付与し未反応で残っ
た処理剤を洗浄する処理等を行うものである。
【0230】なお、本実施形態では、ヘッドとしてフル
ラインヘッドを用いて説明したが、これに限らず、前述
したような小型のヘッドを被記録媒体の幅方向に搬送し
て記録を行う形態のものであってもよい。
【0231】
【発明の効果】本発明によれば、吐出液として、可動部
材とその周囲とのスリット幅より大きい粒径の色材を含
有する液体を用いることにより、長期の保存後でも繰り
返し安定して本発明の良好な特性を発揮させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す模式断面
図である。
【図2】従来のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示
す模式図である。
【図3】本発明のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を
示す模式図である。
【図4】本発明の第4の実施形態における液体吐出ヘッ
ドの断面図である。
【図5】本発明の第6の実施形態における液体吐出ヘッ
ド(2流路)の断面図である。
【図6】本発明の第6の実施形態における液体吐出ヘッ
ドの部分破断斜視図である。
【図7】可動部材の動作を説明するための図である。
【図8】可動部材と第1液流路の構造を説明するための
図である。
【図9】可動部材と液流路の構造を説明するための図で
ある。
【図10】可動部材の他の形状を説明するための図であ
る。
【図11】発熱体面積とインク吐出量の関係を示す図で
ある。
【図12】可動部材と発熱体との配置関係を示す図であ
る。
【図13】発熱体のエッジと支点までの距離と可動部材
の変位量の関係を示す図である。
【図14】発熱体と可動部材との配置関係を説明するた
めの図である。
【図15】本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図である。
【図16】駆動パルスの形状を示す模式図である。
【図17】本発明の液体吐出ヘッドの供給路を説明する
ための断面図である。
【図18】本発明のヘッドの分解斜視図である。
【図19】液体吐出ヘッドカートリッジの分解斜視図で
ある。
【図20】液体吐出装置の概略構成図である。
【図21】装置ブロック図である。
【図22】液体吐出記録システムを示す図である。
【図23】従来の液体吐出ヘッドの液流路構造を説明す
るための図である。
【符号の説明】
1 素子基板 2 発熱体 3 面積中心 10 液流路 11 気泡発生領域 12 供給路 13 共通液室 14 第1液流路 15 第1共通液室 16 第2液流路 17 第2共通液室 18 吐出口 19 狭窄部 20 第1供給路 21 第2供給路 22 第1液流路壁 23 第2液流路壁 24 凸部 30 分離壁 31 可動部材 32 自由端 33 支点 34 支持部材 35 スリット 36 気泡発生領域前壁 37 気泡発生領域側壁 40 気泡 45 液滴 50 溝付き部材 51 オリフィスプレート 70 支持体 78 ばね 80 供給部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石永 博之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 中田 佳恵 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 須釜 定之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 吉平 文 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (41)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の液体を吐出する吐出口を備えた第
    1領域と、第2の液体を備え該第2の液体に気泡を発生
    させる気泡発生領域と、該気泡発生領域に対面して配さ
    れた第1の位置と該第1領域内で該気泡発生領域から遠
    ざかる第2の位置との間を変位可能であって自由端より
    も上流側に支点部を有する可動部材とを備え、該気泡発
    生領域における気泡の発生に伴って該可動部材を該第1
    の位置から該第2の位置の方向へ変位させると共に該可
    動部材により該気泡を吐出口側へ導く液体吐出ヘッドに
    用いられる第1の液体であって、該第1の液体中の色材
    の粒径が、前記可動部材とその周囲とのスリット幅より
    大きいことを特徴とする可動部材を備えた液体吐出ヘッ
    ド用液体。
  2. 【請求項2】 第1の液体中の色材の8割以上がスリッ
    ト幅以上の粒径である請求項1記載の液体吐出ヘッド用
    液体。
  3. 【請求項3】 第1の液体を吐出する吐出口を備えた第
    1領域と、第2の液体を備え該第2の液体に気泡を発生
    させる気泡発生領域と、該気泡発生領域に対面して配さ
    れた第1の位置と該第1領域内で該気泡発生領域から遠
    ざかる第2の位置との間を変位可能であって自由端より
    も上流側に支点部を有する可動部材とを備え、該気泡発
    生領域における気泡の発生に伴って該可動部材を該第1
    の位置から該第2の位置の方向へ変位させると共に該可
    動部材により該気泡を吐出口側へ導く液体吐出ヘッドを
    用い、前記第1の液体として、前記可動部材とその周囲
    とのスリット幅より大きい粒径の色材を含有する液体を
    用いることを特徴とする液体吐出方法。
  4. 【請求項4】 第1の液体中の色材の8割以上がスリッ
    ト幅以上の粒径である請求項3記載の液体吐出方法。
  5. 【請求項5】 第1の液体を吐出する吐出口を備えた第
    1領域と、第2の液体を備え該第2の液体に気泡を発生
    させる気泡発生領域と、該気泡発生領域に対面して配さ
    れた第1の位置と該第1領域内で該気泡発生領域から遠
    ざかる第2の位置との間を変位可能であって自由端より
    も上流側に支点部を有する可動部材とを備え、該気泡発
    生領域における気泡の発生に伴って該可動部材を該第1
    の位置から該第2の位置の方向へ変位させると共に該可
    動部材により該気泡を吐出口側へ導く液体吐出ヘッドで
    あって、前記第1の液体として、前記可動部材とその周
    囲とのスリット幅より大きい粒径の色材を含有する液体
    が用いられていることを特徴とする可動部材を備えた液
    体吐出ヘッド。
  6. 【請求項6】 第1の液体中の色材の8割以上がスリッ
    ト幅以上の粒径である請求項5記載の液体吐出ヘッド。
  7. 【請求項7】 気泡の発生によって液体を吐出口から吐
    出する液体の吐出方法において、吐出口に連通する第1
    の液流路と、気泡発生領域を有する第2の液流路と、前
    記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流路と前記気泡
    発生領域との間に配された可動部材とを有するヘッドを
    用い、前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発
    生による圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記第
    1の液流路側に変位させ、該可動部材の変位によって前
    記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導くことで液体
    を吐出する液体吐出方法に用いられる該液体であって、
    前記第1の液流路に供給される液体中の色材の粒径が、
    前記可動部材とその周囲とのスリット幅より大きいこと
    を特徴とする可動部材を備えた液体吐出ヘッド用液体。
  8. 【請求項8】 第1の液流路に供給される液体中の色材
    の8割以上がスリット幅以上の粒径である請求項7記載
    の液体吐出ヘッド用液体。
  9. 【請求項9】 気泡の発生によって液体を吐出口から吐
    出する液体の吐出方法において、吐出口に連通する第1
    の液流路と、気泡発生領域を有する第2の液流路と、前
    記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流路と前記気泡
    発生領域との間に配された可動部材とを有するヘッドを
    用い、前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発
    生による圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記第
    1の液流路側に変位させ、該可動部材の変位によって前
    記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導くことで液体
    を吐出する液体吐出方法であって、前記第1の液流路に
    供給される液体として、前記可動部材とその周囲とのス
    リット幅より大きい粒径の色材が含有された液体を用い
    ることを特徴とする液体吐出方法。
  10. 【請求項10】 第1の液流路に供給される液体中の色
    材の8割以上がスリット幅以上の粒径である請求項9記
    載の液体吐出方法。
  11. 【請求項11】 前記可動部材に面した位置に発熱体が
    設けられており、該可動部材と該発熱体との間が前記気
    泡発生領域である請求項9又は10記載の液体吐出方
    法。
  12. 【請求項12】 前記可動部材の変位に伴って、発生し
    た気泡の一部が前記第1の液流路に延在する請求項9又
    は10記載の液体吐出方法。
  13. 【請求項13】 前記可動部材の変位中に前記発生した
    気泡が前記可動部材に接触した状態がある請求項9又は
    10記載の液体吐出方法。
  14. 【請求項14】 前記第2の液流路に供給される液体
    は、前記第1の液流路に供給される液体に比べ、低粘度
    性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性質で優れて
    いる液体である請求項9又は10記載の液体吐出方法。
  15. 【請求項15】 吐出口に連通した第1の液流路と、液
    体に熱を加えることで該液体に気泡を発生させる気泡発
    生領域を有する第2の液流路と、前記第1の液流路と前
    記気泡発生領域との間に配され、吐出口側に自由端を有
    し、前記気泡発生領域内での気泡の発生による圧力に基
    づいて該自由端を前記第1の液流路側に変位させて前記
    圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導く可動部材とを
    有する液体吐出ヘッドに用いられる該液体であって、前
    記第1の液流路に供給される液体中の色材の粒径が、前
    記可動部材とその周囲とのスリット幅より大きいことを
    特徴とする可動部材を備えた液体吐出ヘッド用液体。
  16. 【請求項16】 第1の液流路に供給される液体中の色
    材の8割以上がスリット幅以上の粒径である請求項15
    記載の液体吐出ヘッド用液体。
  17. 【請求項17】 吐出口に連通した第1の液流路と、液
    体に熱を加えることで該液体に気泡を発生させる気泡発
    生領域を有する第2の液流路と、前記第1の液流路と前
    記気泡発生領域との間に配され、吐出口側に自由端を有
    し、前記気泡発生領域内での気泡の発生による圧力に基
    づいて該自由端を前記第1の液流路側に変位させて前記
    圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導く可動部材とを
    有する液体吐出ヘッドであって、前記第1の液流路に供
    給される液体として、前記可動部材とその周囲とのスリ
    ット幅より大きい粒径の色材を含有する液体が用いられ
    ていることを特徴とする可動部材を備えた液体吐出ヘッ
    ド。
  18. 【請求項18】 第1の液流路に供給される液体中の色
    材の8割以上がスリット幅以上の粒径である請求項17
    記載の液体吐出ヘッド。
  19. 【請求項19】 前記可動部材に面した位置に発熱体が
    設けられており、該可動部材と該発熱体との間が前記気
    泡発生領域である請求項17又は18記載の液体吐出ヘ
    ッド。
  20. 【請求項20】 前記可動部材は前記第1流路と第2流
    路との間に配された分離壁の一部として構成されている
    請求項17又は18記載の液体吐出ヘッド。
  21. 【請求項21】 前記分離壁は、金属材料で構成されて
    いる請求項20記載の液体吐出ヘッド。
  22. 【請求項22】 前記金属材料は、ニッケル若しくは金
    である請求項21記載の液体吐出ヘッド。
  23. 【請求項23】 前記分離壁は、樹脂で構成されている
    請求項20記載の液体吐出ヘッド。
  24. 【請求項24】 前記分離壁は、セラミックスで構成さ
    れている請求項20記載の液体吐出ヘッド。
  25. 【請求項25】 前記第1の液流路の複数に第1の液体
    を供給するための第1の共通液室と、前記第2の液流路
    の複数に第2の液体を供給するための第2の共通液室と
    が配されている請求項17又は18記載の液体吐出ヘッ
    ド。
  26. 【請求項26】 液体を吐出するための複数の吐出口
    と、それぞれの吐出口に対応して直接連通する複数の第
    1の液流路を構成するための複数の溝と、前記複数の第
    1の液流路に液体を供給するための第1の共通液室を構
    成する凹部とを一体的に有する溝付き部材と、液体に熱
    を与えることで液体に気泡を発生させるための複数の発
    熱体が配された素子基板と、前記溝付き部材と該素子基
    板との間に配され、前記発熱体に対応した第2の液流路
    の壁の一部を構成すると共に、前記発熱体に面した位置
    に前記気泡の発生に基づく圧力によって前記第1の液流
    路側に変位する可動部材とを具備した分離壁とを有する
    液体吐出ヘッドであって、前記第1の液流路に供給され
    る液体として、前記可動部材とその周囲とのスリット幅
    より大きい粒径の色材を含有するインクが用いられてい
    ることを特徴とする可動部材を備えた液体吐出ヘッド。
  27. 【請求項27】 第1の液流路に供給される液体中の色
    材の8割以上がスリット幅以上の粒径である請求項26
    記載の液体吐出ヘッド。
  28. 【請求項28】 前記可動部材の自由端は前記発熱体の
    面積中心より下流側に位置する請求項26又は27記載
    の液体吐出ヘッド。
  29. 【請求項29】 前記溝付き部材には、前記第1の共通
    液室に液体を導入するための第1導入路と、前記第2の
    共通液室に液体を導入するための第2導入路とを有する
    請求項26又は27記載の液体吐出ヘッド。
  30. 【請求項30】 前記溝付き部材には、前記第2導入路
    が複数設けられている請求項29記載の液体吐出ヘッ
    ド。
  31. 【請求項31】 前記第1導入路の断面積と前記第2導
    入路の断面積の比は、各液体の供給量に比例している請
    求項29記載の液体吐出ヘッド。
  32. 【請求項32】 前記第2導入路は、前記分離壁を貫通
    して前記第2の共通液室に液体を供給する導入路である
    請求項29記載の液体吐出ヘッド。
  33. 【請求項33】 前記第2の液流路に供給される液体
    は、前記第1の液流路に供給される液体に比べ、低粘度
    性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性質で優れて
    いる液体である請求項17、18、26又は27記載の
    液体吐出ヘッド。
  34. 【請求項34】 前記発熱体は電気信号を受けることで
    熱を発生する発熱抵抗体を有する電気熱変換体である請
    求項19、26又は27記載の液体吐出ヘッド。
  35. 【請求項35】 前記電気熱変換体は前記発熱抵抗体上
    に、保護膜を配したものである請求項34記載の液体吐
    出ヘッド。
  36. 【請求項36】 前記素子基板上には前記電気熱変換体
    に電気信号を伝えるための配線と、前記電気熱変換体に
    選択的に電気信号を与えるための機能素子が配されてい
    る請求項34記載の液体吐出ヘッド。
  37. 【請求項37】 前記気泡発生領域もしくは発熱体が配
    された部分の前記第2液流路の形状は室形状である請求
    項17、18、26又は27記載の液体吐出ヘッド。
  38. 【請求項38】 前記第2流路の形状は、気泡発生領域
    もしくは発熱体の上流で狭窄部を有する形状である請求
    項17、18、26又は27記載の液体吐出ヘッド。
  39. 【請求項39】 前記発熱体の表面から前記可動部材ま
    での距離が30μm以下である請求項19、26又は2
    7記載の液体吐出ヘッド。
  40. 【請求項40】 気泡発生領域における気泡の発生に基
    づいて、該気泡発生領域よりも液滴吐出方向に関して下
    流側であって該気泡発生領域に対向しない位置にある吐
    出口から液滴を吐出する液滴吐出方法であって、前記気
    泡発生領域の吐出口側領域を前記吐出口に対して実質的
    に密閉状態とする自由端部分と、該自由端部分に関して
    前記吐出口と反対側に位置する支点部分から該自由端部
    分に至る面部分とを備える可動部材を用い、該気泡の発
    生によって該実質的に密閉状態の自由端を移動させて前
    記気泡発生領域を吐出口に対して開放し液滴を吐出する
    液滴吐出方法であって、該液滴中の色材の粒径が、前記
    可動部材とその周囲とのスリット幅より大きいことを特
    徴とする液滴吐出方法。
  41. 【請求項41】 液滴中の色材の8割以上がスリット幅
    以上の粒径である請求項40記載の液滴吐出方法。
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