JPH1024589A - 液体吐出ヘッド、および、その製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド、および、その製造方法

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JPH1024589A
JPH1024589A JP18382796A JP18382796A JPH1024589A JP H1024589 A JPH1024589 A JP H1024589A JP 18382796 A JP18382796 A JP 18382796A JP 18382796 A JP18382796 A JP 18382796A JP H1024589 A JPH1024589 A JP H1024589A
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JP18382796A
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Shuji Koyama
修司 小山
Kiyomitsu Kudo
清光 工藤
Masayoshi Okawa
雅由 大川
Yoshie Nakada
佳恵 中田
Kazuaki Masuda
和明 益田
Toshio Kashino
俊雄 樫野
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 可動部材を有する分離壁部材を液路形成部材
を介して発熱抵抗体を有する基板に接着するにあたり、
可動部材と発熱抵抗体との距離を均一にするために接着
剤を均等に接着面に分布させること。 【解決手段】 素子基板1上に形成される被覆層91に
おいて、接着剤62を収容する凹部92を設けたもの。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギー等に
よる気泡の発生によって所望の液体を吐出する液体吐出
ヘッドに関し、特に気泡の発生を利用して変位する可動
部材を用いる液体吐出ヘッド、および、その製造方法に
関する。
【0002】また、本発明は紙、糸、繊維、布帛、皮
革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミック等
の被記録媒体に対し記録を行うプリンター、複写機、通
信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有する
ワードプロセッサ等の装置、さらには、各種処理装置と
複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる発明
である。
【0003】なお、本発明における、「記録」とは、文
字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与
することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像
を付与することをも意味するものである。
【0004】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわ
ゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。この
バブルジェット記録方法を用いる記録装置には、USP
4,723,129等の公報に開示されているように、
インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通す
るインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出
するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が
一般的に配されている。
【0005】この様な記録方法によれば、品位の高い画
像を高速、低騒音で記録することができると共に、この
記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出
口を高密度に配置することができるため、小型の装置で
高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得る
ことができるという多くの優れた点を有している。この
ため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンタ
ー、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利
用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムに
まで利用されるようになってきている。
【0006】このようにバブルジェット技術が多方面の
製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近
年さらにたかまっている。
【0007】例えば、エネルギー効率の向上の要求に対
する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発
熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した
熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。
【0008】また、高画質な画像を得るために、インク
の吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好
なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆
動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐
出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速
い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したもの
も提案されている。
【0009】この流路形状の内、流路構造として図16
(a),(b)に示すものが、特開昭63−19997
2号公報等に記載されている。この公報に記載されてい
る流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発
生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向
かう圧力、即ち、液室12へ向かう圧力)に着目した発
明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギ
ーでないため損失エネルギーとして知られている。
【0010】図16(a),(b)に示す発明は、発熱
素子2が形成する気泡の発生領域よりも離れ且つ、発熱
素子2に関して吐出口11とは反対側に位置する弁10
を開示する。
【0011】図16(b)においては、この弁10は、
板材等を利用する製造方法によって、流路3の天井に貼
り付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流
路3内へ垂れ下がるものとして開示されている。この発
明は、上述したバック波の一部を弁10によって制御す
ることでエネルギー損失を抑制するものとして開示され
ている。
【0012】しかしながら、この構成において、吐出す
べき液体を保持する流路3内部に、気泡が発生した際を
検討するとわかるように、弁10によるバック波の一部
を抑制することは、液体吐出にとっては実用的なもので
ないことがわかる。
【0013】もともとバック波自体は、前述したように
吐出に直接関係しないものである。このバック波が流路
3内に発生した時点では、図16(a)に示すように、
気泡のうち吐出に直接関係する圧力はすでに流路3から
液体を吐出可能状態にしている。従って、バック波のう
ち、しかもその一部を抑制したからといっても、吐出に
大きな影響を与えないことは明らかである。
【0014】他方、バブルジェット記録方法において
は、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すた
め、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生す
るが、インクの種類によってはこの堆積物が多く発生す
ることで、気泡の発生を不安定にしてしまい、良好なイ
ンクの吐出を行うことが困難な場合があった。また、吐
出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十
分に発泡が得られにくい液体の場合においても、吐出す
べき液体を変質させず、良好に吐出するための方法が望
まれていた。
【0015】このような観点から、熱により気泡を発生
させる液体(発泡液)と吐出する液体(吐出液)とを別
液体とし、発泡による圧力を吐出液に伝達することで吐
出液を吐出する方法が、特開昭61−69467号公
報、特開昭55−81172号公報、USP4,48
0,259号等の公報に開示されている。これらの公報
では、吐出液であるインクと発泡液とをシリコンゴムな
どの可撓性膜で完全分離し、発熱体に吐出液が直接接し
ないようにすると共に、発泡液の発泡による圧力を可撓
性膜の変形によって吐出液に伝える構成をとっている。
このような構成によって、発熱体表面の堆積物の防止
や、吐出液体の選択自由度の向上等を達成している。
【0016】しかしながら、前述のように吐出液と発泡
液とを完全分離する構成のヘッドにおいては、発泡時の
圧力を可撓性膜の伸縮変形によって吐出液に伝える構成
であるため、発泡による圧力を可撓性膜がかなり吸収し
てしまう。また、可撓性膜の変形量もあまり大きくない
ため、吐出液と発泡液とを分離することによる効果を得
ることはできるものの、エネルギー効率や吐出力が低下
してしまう虞があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、基本的に従
来の気泡(特に膜沸騰に伴う気泡)を液流路中に形成し
て液体を吐出する方式の、根本的な吐出特性を、従来で
は考えられなかった観点から、従来では予想できない水
準に高めることを前提とする。
【0018】この前提は、液滴吐出の原理に立ち返り、
従来では得られなかった気泡を利用した新規な液滴吐出
方法及びそれに用いられるヘッド等を提供すべく、流路
中の可動部材の機構の原理を解析すると言った液流路中
の可動部材の動作を起点とする第1技術解析、及び気泡
による液滴吐出原理を起点とする第2技術解析、さらに
は、気泡形成用の発熱体の気泡形成領域を起点とする第
3解析を行うことにより得られたものである。
【0019】これらの解析によって、可動部材の支点と
自由端の配置関係を吐出口側つまり下流側に自由端が位
置する関係にすること、また可動部材を発熱体もしく
は、気泡発生領域に面して配することで積極的に気泡を
制御する全く新規な技術を確立し、本願出願人は出願し
ている。この出願には、気泡自体が吐出量に与えるエネ
ルギーを考慮すると気泡の下流側の成長成分を考慮する
ことが吐出特性を格段に向上できる要因として最大であ
ること、つまり、気泡の下流側の成長成分を吐出方向へ
効率よく変換させることこそ吐出効率、吐出速度の向上
をもたらすことも開示されている。本発明者達の一部は
気泡の下流側の成長成分を積極的に可動部材の自由端側
に移動させるという従来の技術水準に比べ極めて高い技
術水準を提案した。
【0020】上記発明では、気泡を形成するための発熱
領域、例えば電気熱変換体の液体の流れ方向の面積中心
を通る中心線から下流側、あるいは、発泡を司る面にお
ける面積中心等の気泡下流側の成長にかかわる可動部材
や液流路等の構造的要素を勘案することも好ましいとい
うこと、また、一方、可動部材の配置と液供給路の構造
を考慮することで、リフィル速度が大幅に向上すること
も開示している。
【0021】このように出願人および本発明者達の一部
は、前述した画期的な発明を出願しているが、本発明者
達はこの発明によって、より好ましい着想を想起するに
至った。すなわち、本発明者達が認識した点は可動部材
の固定に関する点であり、各発熱体に対応して設けられ
る可動部材をほぼ均一な状態で配置するためには、各可
動部材が共通の分離壁に設けられることが好ましい。こ
の分離壁の固定は発熱体を備える素子基板に設けられた
支持部材に接着剤等を用いて行うことができる。例え
ば、図4の(A)〜(D)に示すような方法で行うこと
ができる。すなわち、先ず、図4の(A)に示されるよ
うに、発熱体2を備える素子基板1が得られた後、続い
て、図4の(B)に示されるように、第2液流路16を
形成する障壁61aを有する被膜層61が形成される素
子基板1の被膜層の被接着面に、分離壁30と被膜層6
1とを接着する接着剤62を塗布する。その際、発熱体
2が隣接する一対の障壁61aの間に配置されるように
形成されている。
【0022】続いて、図4の(C)に示されるように、
分離壁30の各可動部材31がそれぞれの発熱体2に対
向するように配置されて分離壁30を素子基板1に接着
する。その配置にあたっては、分離壁30の各可動部材
3の発熱体2に対する位置関係を撮影する撮像装置から
の画像データに基づいて精度よく位置決めされる。そし
て、所定時間経過後、接着剤62が硬化されて分離壁3
0と素子基板1とが一体にされたものが得られることと
なる。
【0023】しかし、上述の方法においては、図4の
(D)に示されるように、接着剤62の一部が隆起し被
膜層61の被接着面に全体にわたって均等な厚さで分布
しないために分離壁30の可動部材31と発熱体2とが
略平行とならない場合がある。これにより、良好な吐出
が行われないおそれや不均一な吐出が生じるおそれがあ
る。この場合、接着剤62の層をより薄くすることも考
えられるが、限界があり困難である。
【0024】そこで、分離壁30の可動部材31と発熱
体2とを素子基板1全体にわたって略平行とできるよう
あらかじめ分離壁30を素子基板1に載置した後に、接
着剤62を塗布する方法が考えられる。このような方法
を図5の(A)〜(D)に示す。
【0025】先ず、図5の(A)に示されるように、前
述の方法と同様の素子基板1が得られた後、続いて、図
5の(B)に示されるように、第2液流路16を形成す
る障壁64aを有する被膜層64が形成される素子基板
1の被膜層64の両端部に、接着剤62が塗布される切
欠部64bを形成する。その際、発熱体2が隣接する一
対の障壁61aの間に配置されるように形成されてい
る。
【0026】続いて、前述の方法と同様に分離壁30の
各可動部材31がそれぞれの発熱体2に対向するように
配置する。図5の(C)に示されるように、分離壁30
と被膜層64とを接着する接着剤62をその切欠部64
bにそれぞれ塗布し、分離壁30を素子基板1に接着す
る。そして、所定時間経過後、接着剤62が硬化されて
分離壁30と素子基板1とが一体にされたものが得られ
ることとなる。
【0027】しかしながら、この方法においては、図5
の(D)に示されるように、切欠部64bの内部に所定
量、塗布された接着剤62が分離壁30の上面よりも盛
り上がった状態で硬化される。これにより、素子基板1
と分離壁30とが一体にされたものが分離壁30の上面
を吸着部材などにより保持搬送する場合、吸着部材に接
着剤の一部が侵入されて吸着部材の寿命が短命となり、
また、分離壁30に組み付けられる後述の溝付天板50
の一部が浮き上がり、吐出が不安定となるという不都合
が生じる場合がある。
【0028】このように分離壁30を素子基板1に接着
剤62を用いて固定する場合には、発熱体2と可動部材
31との距離を均一に保ちつつ、接着剤62のはみだし
による不都合を解消しなければいけないという課題があ
った。
【0029】本発明はこのような技術課題に鑑みてなさ
れたものであり、本発明の主たる目的は以下の通りであ
る。
【0030】第1の目的は、可動部材を有する分離壁部
材を液路形成部材を介して発熱抵抗体を有する基板に接
着するにあたり、可動部材と発熱抵抗体との距離を均一
にするために接着剤を均等に接着面に分布させることが
できる液体吐出ヘッド、および、その製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0031】第2の目的は、発生した気泡を根本的に制
御することで極めて新規な液体吐出原理を提供すること
にある。
【0032】本発明の第3の目的は、吐出効率、吐出圧
力の向上を図りつつ、発熱体上の液体への蓄熱を大幅に
軽減できると共に、発熱体上の残留気泡の低減を図るこ
とで、良好な液体の吐出を行いうる液体吐出方法、液体
吐出ヘッド等を提供することにある。
【0033】本発明の第4の目的は、バック波による液
体供給方向とは逆方向への慣性力が働くのを抑えると同
時に、可動部材の弁機能によって、メニスカス後退量を
低減させることで、リフィル周波数を高め、印字スピー
ド等を向上させた液体吐出ヘッド等を提供することにあ
る。
【0034】本発明の第5の目的は、発熱体上への堆積
物を低減すると共に、吐出用液の用途範囲を広げること
ができ、しかも吐出効率や吐出力が十分に高い液体吐出
方法、液体吐出ヘッド等を提供することにある。
【0035】本発明の第6の目的は、吐出する液体の選
択自由度を高くできる液体吐出方法、液体吐出ヘッド等
を提供することにある。
【0036】本発明の第7の目的は前述のような液体吐
出ヘッドの製造を容易に成しうる液体吐出ヘッドの製造
方法を提供することにある。
【0037】本発明の第8の目的は複数の液体を供給す
るための液体導入路を少ない部品点数で構成することで
製造が容易で安価なヘッドおよび装置を提供すること、
また小型化が図れた液体吐出ヘッド、装置等を提供する
ことである。
【0038】また本発明の第9の目的は、本発明の吐出
方法を用いて良好な画像の記録物を得ることにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を加熱する
発熱抵抗体が配列された基板と、基板における発熱抵抗
体に所定の間隔をもって対向して設けられ、発熱抵抗体
との間に液体が供給される空間部を形成する可動部材を
有する分離壁部材と、空間部内に供給された液体中で発
熱抵抗体による加熱によって発生する気泡に基づく圧力
により可動部材が変位されて液体を吐出する吐出口が形
成される液体吐出部と、分離壁部材と基板との間に配さ
れ液体吐出部における吐出口に対応させて空間部を仕切
り、液路を形成する液路形成部材とを備え、液路形成部
材が、分離壁部材に覆われる部分に凹部を有し、凹部に
接着剤を収容し分離壁部材を固定するものとされる。
【0040】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法
は、液体を加熱する発熱抵抗体が配列された基板の表面
に、発熱抵抗体を囲む隔壁により形成される液路を有し
分離壁部材に覆われる部分に凹部が設けられる液路形成
部材を形成する工程と、基板上に形成された液路形成部
材の凹部に接着剤を塗布し、基板における発熱抵抗体に
所定の間隔をもって対向して設けられ、発熱抵抗体との
間に液体が供給される空間部を形成する可動部材を有す
る分離壁部材を、可動部材に基板における発熱抵抗体を
対応させて基板に接着剤により接着する工程と、分離壁
部材が基板に接着されたものを、液体が空間部内に供給
されるとき発熱抵抗体による加熱によって発生する気泡
に基づく圧力により可動部材が変位されて液体を吐出す
る吐出口が形成される液体吐出部に、吐出口に分離壁部
材の可動部材を対応させて配置する工程とを含んで構成
される。
【0041】
【発明の実施の形態】本出願人が先に出願した本発明に
好ましく適用される液体吐出ヘッドの形態を説明し、そ
の後、本発明の実施例の説明を行う。
【0042】まず本実施形態例では液体を吐出するため
の、気泡に基づく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制
御することで吐出力や吐出効率の向上を図る場合の例を
説明する。
【0043】図6はこのような本実施形態例の液体吐出
ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図を示してお
り、図7はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示し
ている。
【0044】本実施形態例の液体吐出ヘッドは、液体を
吐出するための吐出エネルギー発生素子として、液体に
熱エネルギーを作用させる発熱体2(本実施形態例にお
いては40μm×105μmの形状の発熱抵抗体)が素
子基板1に設けられており、この素子基板上に発熱体2
に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐
出口18に連通していると共に、複数の液流路10に液
体を供給するための共通液室13に連通しており、吐出
口から吐出された液体に見合う量の液体をこの共通液室
13から受け取る。
【0045】この液流路10の素子基板上には、前述の
発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有す
る材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31
が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液
流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニ
ングして形成した土台(支持部材)34等に固定されて
いる。これによって、可動部材は保持されると共に支点
(支点部分)33を構成している。
【0046】この可動部材31は、液体の吐出動作によ
って共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側
へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定
端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端
(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位
置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程
度の距離を隔てて配されている。この発熱体と可動部材
との間が気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の
種類や形状および配置はこれに限られることなく、後述
するように気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状お
よび配置であればよい。なお、上述した液流路10は、
後に取り上げる液体の流れの説明のため、可動部材31
を境にして直接吐出口18に連通している部分を第1の
液流路14とし、気泡発生領域11や液体供給路12を
有する第2の液流路16の2つの領域に分けて説明す
る。
【0047】発熱体2を発熱させることで可動部材31
と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用
し、液体にUSP4,723,129に記載されている
ような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発
生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用し、可
動部材31は図6(b)、(c)もしくは図7で示され
るように支点33を中心に吐出口側に大きく開くように
変位する。可動部材31の変位若しくは変位した状態に
よって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長
が吐出口側に導かれる。
【0048】ここで、本発明の基本的な吐出原理の一つ
を説明する。本発明において最も重要な原理の1つは、
気泡に対面するように配された可動部材が気泡の圧力あ
るいは気泡自体に基づいて、定常状態の第1の位置から
変位後の位置である第2の位置へ変位し、この変位する
可動部材31によって気泡の発生に伴う圧力や気泡自身
を吐出口18が配された下流側へ導くことである。
【0049】この原理を可動部材を用いない従来の液流
路構造を模式的に示した図8と本発明の図9とを比較し
てさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口方向への
圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の伝搬方向をV
Bとして示した。
【0050】図8で示されるような従来のヘッドにおい
ては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制す
る構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV1
〜V8のように気泡表面の垂線方向となり様々な方向を
向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼす
VA方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜V
4即ち気泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の圧
力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐出
速度等に直接寄与する重要な部分である。さらにV1は
吐出方向VAの方向に最も近いため効率よく働き、逆に
V4はVAに向かう方向成分は比較的少ない。
【0051】これに対して、図9で示される本発明の場
合には、可動部材31が図8の場合のように様々な方向
を向いていた気泡の圧力伝搬方向V1〜V4を下流側
(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向に変換するも
のであり、これにより気泡40の圧力が直接的に効率よ
く吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向
自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下流方向に導か
れ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡
の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力
伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力また吐出
速度等の根本的な向上を達成することができる。
【0052】次に図6に戻って、本実施形態例の液体吐
出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0053】図6(a)は、発熱体2に電気エネルギー
等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が
熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可
動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対
し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に
設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可
動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも
発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通
って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで
可動部材31が配されている。
【0054】図6(b)は、発熱体2に電気エネルギー
等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって
気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸
騰に伴う気泡を発生させた状態である。
【0055】このとき可動部材31は気泡40の発生に
基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口
方向に導くように第1位置から第2位置へ変位する。こ
こで重要なことは前述したように、可動部材31の自由
端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点33を上流
側(共通液室側)に位置するように配置して、可動部材
31の少なくとも一部を発熱体の下流部分すなわち気泡
の下流部分に対面させることである。
【0056】図6(c)は気泡40がさらに成長した状
態であるが、気泡40発生に伴う圧力に応じて可動部材
31はさらに変位している。発生した気泡は上流より下
流に大きく成長すると共に可動部材の第1の位置(点線
位置)を越えて大きく成長している。このように気泡4
0の成長に応じて可動部材31が徐々に変位して行くこ
とで気泡40の圧力伝搬方向や堆積移動のしやすい方
向、すなわち自由端側への気泡の成長方向を吐出口に均
一的に向かわせることができることも吐出効率を高める
と考えられる。可動部材は気泡や発泡圧を吐出口方向へ
導く際もこの伝達の妨げになることはほとんどなく、伝
搬する圧力の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や
気泡の成長方向を制御することができる。
【0057】図6(d)は気泡40が、前述した膜沸騰
の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態
を示している。
【0058】第2の位置まで変位していた可動部材31
は、気泡の収縮による負圧と可動部材自身のばね性によ
る復元力によって図6(a)の初期位置(第1の位置)
に復帰する。また、消泡時には、気泡発生領域11での
気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体
積分を補うために上流側(B)、すなわち共通液室側か
ら流れのVD1、VD2のように、また、吐出口側から
流れのVcのように液体が流れ込んでくる。
【0059】以上、気泡の発生に伴う可動部材の動作と
液体の吐出動作について説明したが、以下に本発明の液
体吐出ヘッドにおける液体のリフィルについて詳しく説
明する。
【0060】図6を用いて本発明における液供給メカニ
ズムをさらに詳しく説明する。
【0061】図6(c)の後、気泡40が最大体積の状
態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補
う体積の液体が気泡発生領域に、第1液流路14の吐出
口18側と第2液流路16の共通液室側13から流れ込
む。可動部材31を持たない従来の液流路構造において
は、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液
室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に
近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに起
因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものであ
る。)。
【0062】このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さ
い場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ
込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特
に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を
小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメ
ニスカスMの後退が大きくなり、リフィル時間が長くな
って高速印字を妨げることとなっていた。
【0063】これに対して本実施形態例は可動部材31
を設けたため、気泡の体積Wを可動部材31の第1位置
を境に上側をW1、気泡発生領域11側をW2とした場
合、消泡時に可動部材が元の位置に戻った時点でメニス
カスの後退は止まり、その後残ったW2の体積分の液体
供給は主に第2流路16の流れVD2からの液供給によ
って成される。これにより、従来、気泡Wの体積の半分
程度に対応した量がメニスカスの後退量になっていたの
に対して、それより少ないW1の半分程度のメニスカス
後退量に抑えることが可能になった。
【0064】さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時
の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿っ
て、主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行
うことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0065】ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消
泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカス
の振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっ
ていたが、本実施形態例の高速リフィルにおいては可動
部材によって吐出口側の第1液流路14の領域と、気泡
発生領域11との吐出口側での液体の流通が抑制される
ためメニスカスの振動を極めて少なくすることができる
ことである。
【0066】このように本発明は、第2流路16の液供
給路12を介しての発泡領域への強制リフィルと、上述
したメニスカス後退や振動の抑制によって高速リフィル
を達成することで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、ま
た記録の分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実
現することができる。
【0067】本発明の構成においてはさらに次のような
有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡の発生によ
る圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制することで
ある。発熱体2上で発生した気泡の内、共通液室13側
(上流側)の気泡による圧力は、その多くが、上流側に
向かって液体を押し戻す力(バック波)になっていた。
このバック波は、上流側の圧力と、それによる液移動
量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こし、これらは
液体の液流路内へのリフィルを低下させ高速駆動の妨げ
にもなっていた。本発明においては、まず可動部材31
によって上流側へのこれらの作用を抑えることでもリフ
ィル供給性の向上をさらに図っている。
【0068】次に、本実施形態例の更なる特徴的な構造
と効果について、以下に説明する。
【0069】本実施形態例の第2液流路16は、発熱体
2の上流に発熱体2と実質的に平坦につながる(発熱体
表面が大きく落ち込んでいない)内壁を持つ液体供給路
12を有している。このような場合、気泡発生領域11
および発熱体2の表面への液体の供給は、可動部材31
の気泡発生領域11に近い側の面に沿って、VD2のよ
うに行われる。このため、発熱体2の表面上に液体が淀
むことが抑制され、液体中に溶存していた気体の析出
や、消泡できずに残ったいわゆる残留気泡が除去され易
く、また、液体への蓄熱が高くなりすぎることもない。
従って、より安定した気泡の発生を高速に繰り返し行う
ことができる。なお、本実施形態例では実質的に平坦な
内壁を持つ液体供給路12を持つもので説明したが、こ
れに限らず、発熱体表面となだらかに繋がり、なだらか
な内壁を有する液供給路であればよく、発熱体上に液体
の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない形状であ
ればよい。
【0070】また、気泡発生時の圧力をさらに有効に吐
出口に導くために図6で示すように気泡発生領域の全体
を覆う(発熱体面を覆う)ように大きな可動部材を用
い、可動部材31が第1の位置へ復帰することで、気泡
発生領域11と第1液流路14の吐出口に近い領域との
液体の流抵抗が大きくなるような形態の場合、前述のV
D1から気泡発生領域11に向かっての液体の流れが妨
げられる。しかし、本発明のヘッド構造においては、気
泡発生領域に液体を供給するための流れVD1があるた
め、液体の供給性能が非常に高くなり、可動部材31で
気泡発生領域11を覆うような吐出効率向上を求めた構
造を取っても、液体の供給性能を落とすことがない。
【0071】補足すれば、本実施形態例図6において
は、前述のように可動部材31の自由端32が、発熱体
2を上流側領域と下流側領域とに2分する面積中心3
(発熱体の面積中心(中央)を通り液流路の長さ方向に
直交する線)より下流側の位置に対向するように発熱体
2に対して延在している。これによって発熱体の面積中
心位置3より下流側で発生する液体の吐出に大きく寄与
する圧力、又は気泡を可動部材31が受け、この圧力及
び気泡を吐出口側に導くことができ、吐出効率や吐出力
を根本的に向上させることができる。
【0072】さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用
して多くの効果を得ている。
【0073】また、本実施形態例の構成においては可動
部材31の自由端が瞬間的な機械的変位を行っているこ
とも、液体の吐出に対して有効に寄与している考えられ
る。
【0074】<素子基板>以下に液体に熱を与えるため
の発熱体が設けられた素子基板1の構成について説明す
る。
【0075】素子基板1には、図1のAに示されるよう
に、複数個の発熱体2が一直線上に所定のピッチ間隔で
設けられている。また、素子基板1には、シリコン等の
基体に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜また
はチッ化シリコン膜を成膜し、その上に発熱体を構成す
るハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タンタル
(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵抗
層(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウム等の配
線電極(0.2〜1.0μm厚)を図11のようにパタ
ーニングされている。この2つの配線電極から抵抗層に
電圧を印加し、抵抗層に電流を流し発熱させる。配線電
極間の抵抗層上には、酸化シリコンやチッ化シリコン等
の保護層を0.1〜2.0μm厚で形成し、さらにその
うえにタンタル等の耐キャビテーション層(0.1〜
0.6μm厚)が被膜されており、インク等の各種の液
体から抵抗層を保護している。 特に、気泡の発生、消
泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、堅くても
ろい酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料
のタンタル(Ta)等が耐キャビテーション層として用
いられる。
【0076】また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み
合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよ
い。このような保護層を必要としない抵抗層の材料とし
てはイリジュウム−タンタル−アルミ合金等が挙げられ
る。
【0077】このように、実施形態例における発熱体2
の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱部)だけ
でもよく、また抵抗層を保護する保護層を含むものでも
よい。
【0078】本実施形態例においては、発熱体2として
電気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を
有するものを用いたが、これに限られることなく、吐出
液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるも
のであればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を
受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受け
ることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよ
い。
【0079】なお、前述の素子基板1には、前述の発熱
部を構成する抵抗層とこの抵抗層に電気信号を供給する
ための配線電極で構成される電気熱変換体の他に、この
電気熱変換素子を選択的に駆動するためのトランジス
タ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等の機能素子
が一体的に半導体製造工程によって作り込まれていても
よい。
【0080】また、前述のような素子基板1に設けられ
ている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出する
ためには、前述の抵抗層に配線電極を介して矩形パルス
を印加し、配線電極間の抵抗層を急峻に発熱させる。前
述の各実施形態例のヘッドにおいては、それぞれ電圧2
4V、パルス幅7μsec、電流150mA、電気信号
を6kHzで加えることで発熱体2を駆動させ、前述の
ような動作によって、吐出口から液体であるインクを吐
出させた。しかしながら、駆動信号の条件はこれに限ら
れることなく、発泡液を適正に発泡させることができる
駆動信号であればよい。
【0081】<可動部材および分離壁>図1のCは、素
子基板1上に後述する液路形成部材としての被膜層91
を介して所定の位置に配置された分離壁30を示す。分
離壁30は、例えば、素子基板1上の各発熱体2に対向
する位置にそれぞれ設けられる複数の可動部材31を有
する。可動部材31は、例えば、所定のピッチ間隔で櫛
形状に形成されている。可動部材31の先端部は支点3
3に対して変位可能とされる。
【0082】可動部材の材料としては、耐久性の高い、
銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白
金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、および
その合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、ス
チレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のア
ミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシ
ル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を
持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、
そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐イ
ンク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケ
ル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および
耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングした
もの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、
ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエー
テルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイ
ミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水
酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する
樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポ
キシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等の
アミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を
持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラ
ミックおよびその化合物が望ましい。
【0083】分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレー
ト、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケ
トン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリ
イミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の
近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱
性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合
物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、
金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もし
くは表面にチタンや金をコーティングしたものが望まし
い。
【0084】また、分離壁の厚さは、分離壁としての強
度を達成でき、可動部材として良好に動作するという観
点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、
0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0085】<ヘッド構造>図10は、本発明に適用可
能な液体吐出ヘッドの一例の構造を示す模式図である。
先の実施形態例と同じ構成要素については同じ符号を用
いており、詳しい説明はここでは省略する。
【0086】本実施形態例においては、溝付き部材50
は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複
数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流
路14に共通して連通し、各第1の液流路16に液体
(吐出液)を供給するための第1の共通液室15を構成
する凹部とから概略構成されている。
【0087】この溝付部材50の下側部分に分離壁30
を接合することにより複数の第1液流路14を形成する
ことができる。このような溝付部材50は、その上部か
ら第1共通液室15内に到達する液体供給路20を有し
ている。
【0088】液体(吐出液)は、図10の矢印Cで示す
ように、液体供給路20を経て、第1の共通液室15、
次いで第1の液流路14に供給されるとともに図示が省
略される複数の分岐供給通路を通じて第2液流路16に
供給されるようになっている。第2液流路16は、後述
する被膜層91における隣接する一対の隔壁91aによ
り各吐出口18に対応して仕切られている。
【0089】符号50は、溝付部材である。この溝付部
材は、分離壁30と接合されることで吐出液流路(第1
液流路)14を構成する溝と、吐出液流路に連通し、そ
れぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1の共
通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、
第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐
出液供給路)20とを有している。
【0090】なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板
50の配置関係は、素子基板1の発熱体2に対応して可
動部材31が配置されており、この可動部材31に対応
して吐出液流路14が配されている。
【0091】
【実施例】
<液体吐出ヘッドの製造>次に、本発明に係る液体吐出
ヘッドの製造方法の一例について説明する。
【0092】本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の
一例においては、図1のBに示されるように、分離壁3
0の支持部材を兼ねた液路形成部としての被膜層91に
接着剤62を収容するための凹部92を形成するもので
ある。
【0093】図1においては、図1のAに示されるよう
に、発熱体2を備える素子基板1が得られた後、続い
て、図1のBに示されるように、第2液流路16を形成
する障壁91a、および、分離壁30を固定する接着剤
62を収容するための凹部92を有する被膜層91を素
子基板1の被膜層上に形成する。
【0094】被膜層91を形成するにあたっては、例え
ば、先ず、ポリイミド樹脂(商品名PL−3708:日
立化成製)を素子基板1の被膜層上に塗布装置により塗
布した後、4000rpmで素子基板1を回転する。そ
の後、5分間、100度で予備加熱する。続いて、塗布
されたポリイミド樹脂が露光装置により露光量、焦点距
離が、それぞれ、200mJ/cm2 ,0に設定される
もとで、露光される。
【0095】次に、現像液(商品名:PNデベロッパ、
日立化成製)が用いられて露光されたポリイミド樹脂が
約180秒間、ディップ現像処理され、不要な部分が除
去される。これにより、ポリイミド樹脂の被膜層が形成
される。
【0096】続いて、リンス液としてのイソプロピルア
ルコールが用いられて約10秒間、リンス処理される。
そして、ポリイミド樹脂の被覆層が形成された素子基板
1が4000rpmでスピン乾燥された後、100度で
90秒間加熱され、さらに、仕上げ処理として400度
で90分加熱する。これにより、約5μmの厚さを有す
る被膜層91が形成される。被覆層91における接着剤
62を収容するための凹部92の表面積は、例えば、分
離壁30の全面積の約50〜90%程度とされる。ま
た、障壁91aの起端部と接着剤62を収容するための
凹部92の周縁部との距離Laは、少なくとも5μm以
上に設定される。この距離Laは、許容されるパターニ
ング加工精度、および、接着剤62を収容するための凹
部92内に収容される接着剤62が発熱体2側にはみだ
すことがない密封性に基づいて設定される。また、この
距離Laが5μm以上に設定されることにより、可動部
材31の支点33が良好に固定されることとなる。
【0097】ドライフィルムで被膜層91を形成するに
あたっては、例えば、先ず、ラミネート装置により圧
力、ラミネート速度、温度がそれぞれ2kg/m2
0.5m/min、110度の条件で、ドライフィルム
樹脂(商品名SY315:東京応化製)の被覆層が素子
基板1の被膜層上に形成された後、形成された被覆層が
露光装置により露光量、焦点距離が、600mJ/cm
2 、30μmにそれぞれ設定されるもとで、露光され
る。
【0098】次に、現像液(商品名:BMR、東京応化
製)が用いられて露光されたドライフィルムの被覆層が
約90秒間、圧力1kg/cm2 でシャワー現像処理さ
れて障壁91aを有する被覆層91が形成される。
【0099】続いて、被覆層が形成された素子基板1に
対して150度で1時間加熱した後、紫外線が、照射量
100J/cm2 で照射される。
【0100】また、被膜層91をめっきで形成するにあ
たっては、素子基板1上における被覆層91が形成され
る部分を除く表面にめっきレジスト(商品名:VA−4
38東京応化製)をパターニングした後、素子基板1上
における被覆層91が形成される部分にニッケルめっき
(厚さ5〜10μm)を行う。次に、めっきレジストを
アルカリ性の水溶液、例えば、水素化テトラメチルアン
モニウム水溶液(濃度0.5%)で剥離する。これによ
り、障壁91aを有する被膜層91が形成される。その
際、被膜層91と素子基板1の表面との間には、クロ
ム、チタン、チタンタングステンの金属成分を含む層が
積層されている。その層の厚さは、例えば、100〜5
00(オングストロング)程度とされる。なお、ニッケ
ルめっきの層の表面には、金メッキを施しても良い。
【0101】被膜層91が素子基板1の表面上に形成さ
れた後、図1のBに示されるように、例えば、比較的硬
化収縮が少ない常温硬化型(TSE−397(商品
名)、東レシリコーン製)とされる接着剤62が凹部9
2内に適量塗布された後、図1のCに示されるように、
分離壁30が、その各可動部材31が発熱体2にそれぞ
れ対応させて位置決めされて接着される。これにより、
図1のDに示されるように、分離壁30は被膜層91に
よって支持されるため接着剤62が所定の一様な厚さを
もって凹部92内に収容されることとなり可動部材31
と発熱体2との距離がばらつくことなく所定の距離に維
持されることとなる。またこのとき凹部92が分離壁3
0によって覆われるため、接着剤62がはみだすことが
ない。
【0102】図2のA〜Dは、本発明に係る液体吐出ヘ
ッドの製造方法の他の例の各工程を示す。
【0103】図1に示される例では、被覆層91が形成
されるとき、凹部92内は、何も存在しない空間である
が、図2においては、被膜層94が素子基板1上に形成
されるとき、毛管力により円滑に接着剤62を均一に分
布させるために略正方形状の小片94bを格子状に配列
形成したものである。なお、図2および後述する図3に
おいては、図1に示される例において同一とさる構成要
素については、同一の符号を付して示し、その重複説明
を省略する。
【0104】図2のBに示す工程においては、第2液流
路16を形成する障壁94a、および、接着剤62を収
容するための凹部93を有する被膜層94を素子基板1
の被膜層上に形成する。被覆層94は上述の例と同様に
ポリイミド樹脂、ドライフィルム、あるいは、ニッケル
めっきで形成されてもよい。その際、凹部93内には、
所定のピッチ間距離、例えば、5〜10μmで格子状に
小片94bが配列形成される。これにより、分離壁30
が素子基板1の被接着面に接着されたものは、図2のD
に示されるように、接着剤62が凹部93内に均一な厚
さに形成されて収容され、かつ、格子状に配列された小
片94bによって凹部93の内部全体にわたって均一に
収容されることとなる。
【0105】図3のA〜Dは、本発明に係る液体吐出ヘ
ッドの製造方法のさらなる他の例の各工程を示す。図1
に示される例では、被覆層91が形成されるとき、凹部
92内は、何も存在しない空間であるが、図3において
は、被膜層94が素子基板1上に形成されるとき、毛管
力により円滑に接着剤62を均一に分布させるために略
長方形状の小片95bを等間隔に配列形成したものであ
る。
【0106】図3のBに示す工程においては、第2液流
路16を形成する障壁95a、および、接着剤を収容す
るための凹部96を有する被膜層95を素子基板1の被
膜層上に形成する。被覆層95は上述の例と同様にポリ
イミド樹脂、ドライフィルム、あるいは、ニッケルめっ
きで形成されてもよい。その際、凹部96内には、所定
のピッチ間距離、例えば、5〜10μmで等間隔(スリ
ット状)に小片95bが配列形成される。これにより、
分離壁30が素子基板1の被接着面に接着されたもの
は、図3のDに示されるように、接着剤62が凹部96
内に均一な厚さに形成されて収容され、かつ、等間隔に
配列された小片95bによって凹部96の内部全体にわ
たって均一に収容されることとなる。
【0107】<液体吐出ヘッドカートリッジ>次に、上
記実施形態例に係る液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出
ヘッドカートリッジを概略説明する。
【0108】図11は、前述した液体吐出ヘッドを含む
液体吐出ヘッドカートリッジの模式的分解斜視図であ
り、液体吐出ヘッドカートリッジは、主に液体吐出ヘッ
ド部200と液体容器80とから概略構成されている。
【0109】液体吐出ヘッド部200は、素子基板1、
分離壁30、溝付部材50、押さえバネ78、液体供給
部材80、支持体70等から成っている。素子基板1に
は、前述のように発泡液に熱を与えるための発熱抵抗体
が、複数個、列状に設けられており、また、この発熱抵
抗体を選択的に駆動するための機能素子が複数設けられ
ている。この素子基板1に液路を形成する液路形成部材
が備えられている。
【0110】押さえバネ78は、溝付部材50に素子基
板1方向への付勢力を作用させる部材であり、この付勢
力により素子基板1、分離壁30、溝付部材50と、後
述する支持体70とを良好に一体化させている。
【0111】支持体70は、素子基板1等を支持するた
めのものであり、この支持体70上にはさらに素子基板
1に接続し電気信号を供給するための回路基板71や、
装置側と接続することで装置側と電気信号のやりとりを
行うためのコンタクトパッド72が配置されている。
【0112】液体容器90は、液体吐出ヘッドに供給さ
れる、インク等の吐出液体を収容している。液体容器9
0の外側には、液体吐出ヘッドと液体容器との接続を行
う接続部材を配置するための位置決め部94と接続部を
固定するための固定軸95が設けられている。吐出液体
の供給は、液体容器の吐出液体供給路92から接続部材
の供給路を介して液体供給部材80の吐出液体供給路8
1に供給され、各部材の吐出液体供給路83,71を介
して第1の共通液室に供給される。
【0113】なお、この液体容器には、各液体の消費後
に液体を再充填して使用してもよい。このためには液体
容器に液体注入口を設けておくことが望ましい。又、液
体吐出ヘッドと液体容器とは一体であってもよく、分離
可能としてもよい。
【0114】<液体吐出装置>図12は、前述の液体噴
射ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示してい
る。本実施例では特に吐出液体としてインクを用いたイ
ンク吐出記録装置を用いて説明する液体吐出装置のキャ
リッジHCは、インクを収容する液体タンク部90と液
体吐出ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリッ
ジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される記
録紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。
【0115】不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ
上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号
に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液
体が吐出される。
【0116】また、本実施例の液体吐出装置において
は、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための
駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャ
リッジに伝えるためのギア112、113キャリッジ軸
115等を有している。この記録装置及びこの記録装置
で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対し
て液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ること
ができた。
【0117】図13は、本発明の液体吐出方法および液
体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録を動作させるた
めの装置全体のブロック図である。
【0118】記録装置は、ホストコンピュータ300よ
り印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装
置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると
同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘ
ッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力され
る。CPU302はROM303に保存されている制御
プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデ
ータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、
印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0119】またCPU302は前記画像データを記録
用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同
期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モー
タを駆動するための駆動データを作る。画像データおよ
びモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、
モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動
モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミン
グで駆動され画像を形成する。
【0120】上述のような記録装置に適用でき、インク
等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、各種の
紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用
いられるプラスチック材、布帛、アルミニュウムや銅等
の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板
等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ
等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0121】また上述の記録装置として、各種の紙やO
HPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパ
クトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチ
ック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、
皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木
材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミック
ス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して
記録を行う記録装置、又布帛に記録を行う捺染装置等を
も含むものである。
【0122】またこれらの液体吐出装置に用いる吐出液
としては、夫々の被記録媒体や記録条件に合わせた液体
を用いればよい。
【0123】<記録システム>次に、本発明の液体吐出
ヘッドを記録ヘッドとして用い被記録媒体に対して記録
を行う、インクジェット記録システムの一例を説明す
る。
【0124】図14は、前述した本発明の液体吐出ヘッ
ド201を用いたインクジェット記録システムの構成を
説明するための模式図である。本実施例における液体吐
出ヘッドは、被記録媒体150の記録可能幅に対応した
長さに360dpiの間隔で吐出口を複数配したフルラ
イン型のヘッドであり、イエロー(Y),マゼンタ
(M),シアン(C),ブラック(Bk)の4色に対応
した4つのヘッドをホルダ202によりX方向に所定の
間隔を持って互いに平行に固定支持されている。
【0125】これらのヘッドに対してそれぞれ駆動信号
供給手段を構成するヘッドドライバ307から信号が供
給され、この信号に基づいて各ヘッドの駆動が成され
る。
【0126】各ヘッドには、吐出液としてY,M,C,
Bkの4色のインクがそれぞれ204a〜204dのイ
ンク容器から供給されている。なお、符号204eは発
泡液が蓄えられた発泡液容器であり、この容器から各ヘ
ッドに発泡液が供給される構成になっている。
【0127】また、各ヘッドの下方には、内部にスポン
ジ等のインク吸収部材が配されたヘッドキャップ203
a〜203dが設けられており、非記録時に各ヘッドの
吐出口を覆うことでヘッドの保守を成すことができる。
【0128】符号206は、先の各実施例で説明したよ
うな各種、非記録媒体を搬送するための搬送手段を構成
する搬送ベルトである。搬送ベルト206は、各種ロー
ラにより所定の経路に引き回されており、モータドライ
バ305に接続された駆動用ローラにより駆動される。
【0129】本実施例のインクジェット記録システムに
おいては、記録を行う前後に被記録媒体に対して各種の
処理を行う前処理装置251および後処理装置252を
それぞれ被記録媒体搬送経路の上流と下流に設けてい
る。
【0130】前処理と後処理は、記録を行う被記録媒体
の種類やインクの種類に応じて、その処理内容が異なる
が、例えば、金属、プラスチック、セラミックス等の被
記録媒体に対しては、前処理として、紫外線とオゾンの
照射を行い、その表面を活性化することでインクの付着
性の向上を図ることができる。また、プラスチック等の
静電気を生じやすい被記録媒体においては、静電気によ
ってその表面にゴミが付着しやすく、このゴミによって
良好な記録が妨げられる場合がある。このため、前処理
としてイオナイザ装置を用い被記録媒体の静電気を除去
することで、被記録媒体からごみの除去を行うとよい。
また、被記録媒体として布帛を用いる場合には、滲み防
止、先着率の向上等の観点から布帛にアルカリ性物質、
水溶性物質、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチ
オ尿素から選択される物質を付与する処理を前処理とし
て行えばよい。前処理としては、これらに限らず、被記
録媒体の温度を記録に適切な温度にする処理等であって
もよい。
【0131】一方、後処理は、インクが付与された被記
録媒体に対して熱処理、紫外線照射等によるインクの定
着を促進する定着処理や、前処理で付与し未反応で残っ
た処理剤を洗浄する処理等を行うものである。
【0132】なお、本実施例では、ヘッドとしてフルラ
インヘッドを用いて説明したが、これに限らず、前述し
たような小型のヘッドを被記録媒体の幅方向に搬送して
記録を行う形態のものであってもよい。
【0133】<ヘッドキット>以下に、本発明の液体吐
出ヘッドを有するヘッドキットを説明する。図15は、
このようなヘッドキットを示した模式図であり、このヘ
ッドキットは、インクを吐出するインク吐出部511を
有する本発明のヘッド510と、このヘッドと不可分も
しくは分離可能な液体容器であるインク容器520と、
このインク容器にインクを充填するためのインクを保持
したインク充填手段とを、キット容器501内に納めた
ものである。
【0134】インクを消費し終わった場合には、インク
容器の大気連通口521やヘッドとの接続部や、もしく
はインク容器の壁に開けた穴などに、インク充填手段の
挿入部(注射針等)531の一部を挿入し、この挿入部
を介してインク充填手段内のインクをインク容器内に充
填すればよい。
【0135】このように、本発明の液体吐出ヘッドと、
インク容器やインク充填手段等を一つのキット容器内に
納めてキットにすることで、インクが消費されてしまっ
ても前述のようにすぐに、また容易にインクをインク容
器内に充填することができ、記録の開始を迅速に行うこ
とができる。
【0136】なお、本実施例のヘッドキットでは、イン
ク充填手段が含まれるもので説明を行ったが、ヘッドキ
ットとしては、インク充填手段を持たず、インクが充填
された分離可能タイプのインク容器とヘッドとがキット
容器510内に納められている形態のものであってもよ
い。
【0137】また、この図15では、インク容器に対し
てインクを充填するインク充填手段のみを示している
が、インク容器の他に発泡液を発泡液容器に充填するた
めの発泡液充填手段をキット容器内に納めた形態のもの
であってもよい。
【0138】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に係る液体吐出ヘッド、および、その製造方法によれ
ば、可動部材を有する分離壁部材を液路形成部材を介し
て発熱抵抗体を有する基板に接着するにあたり、分離壁
部材と基板との間に配され液体吐出部における吐出口に
対応させて空間部を仕切り、液路を形成する液路形成部
材が、分離壁部材と基板とを接着する接着剤を収容する
接着剤収容部を有するので可動部材と発熱抵抗体との距
離を均一にさせるために接着剤を均等に接着面に分布さ
せることができる。従って、安定した吐出性能が得られ
る。また、接着剤が接着剤収容部から漏れ出し他の部品
に接触することもないので接着剤が他の部品に悪影響を
及ぼすことが回避される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は、本発明に係る液体吐出ヘッ
ドの製造方法の一例の各工程の動作説明に供される図で
ある。
【図2】(A)〜(D)は、本発明に係る液体吐出ヘッ
ドの製造方法の他の一例の各工程の動作説明に供される
図である。
【図3】(A)〜(D)は、本発明に係る液体吐出ヘッ
ドの製造方法のさらなる他の一例の各工程の動作説明に
供される図である。
【図4】(A)〜(D)は、分離壁を基板に接着する方
法の各工程の動作説明に供される図である。
【図5】(A)〜(D)は、分離壁を基板に接着する別
の方法の各工程の動作説明に供される図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明に係る液体吐出ヘッ
ドの一例の動作説明に供される模式断面図である。
【図7】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の要部を示
す部分破断斜視図である。
【図8】従来のインクジェトヘッドにおける気泡からの
圧力伝搬の説明に供される模式図である。
【図9】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例における気
泡からの圧力伝搬の説明に供される模式図である。
【図10】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例の縦断面
図である。
【図11】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例が適用さ
れた液体吐出ヘッドカートリッジを示す分解斜視図であ
る。
【図12】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例が適用さ
れた液体吐出装置の概略構成図である。
【図13】図12に示される例における装置ブロック図
である。
【図14】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例が適用さ
れた液体吐出記録システムを示す図である。
【図15】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例が適用さ
れたヘッドキットの模式図である。
【図16】従来の液体吐出ヘッドの液流路構造を説明す
るための図である。
【符号の説明】
1 素子基板 2 発熱体 30 分離壁 31 可動部材 62 接着剤 91、94、95 被覆層 92、93、96 接着剤収容部 94b、95b 小片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中田 佳恵 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 益田 和明 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 樫野 俊雄 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体を加熱する発熱抵抗体が配列された
    基板と、 前記基板における発熱抵抗体に所定の間隔をもって対向
    して設けられ、前記発熱抵抗体との間に前記液体が供給
    される空間部を形成する可動部材を有する分離壁部材
    と、 前記空間部内に供給された前記液体中で前記発熱抵抗体
    による加熱によって発生する気泡に基づく圧力により前
    記可動部材が変位されて液体を吐出する吐出口が形成さ
    れる液体吐出部と、 前記分離壁部材と前記基板との間に配され前記液体吐出
    部における吐出口に対応させて前記空間部を仕切り、液
    路を形成する液路形成部材とを備え、 前記液路形成部材が、前記分離壁部材に覆われる部分に
    凹部を有し、該凹部に接着剤を収容し、該分離壁部材を
    固定することを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記液路形成部材が感光性樹脂で形成さ
    れることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記液路形成部材がポリイミド樹脂で形
    成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載
    の液体吐出ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記液路形成部材がドライフィルム樹脂
    で形成されることを特徴とする請求項1または請求項2
    記載の液体吐出ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記液路形成部材がめっき膜で形成され
    ることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
  6. 【請求項6】 前記液路形成部材がニッケルめっき膜で
    形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記
    載の液体吐出ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記液路形成部材が金成分を含むニッケ
    ルめっき膜で形成されることを特徴とする請求項6記載
    の液体吐出ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記液路形成部材がめっき膜に加えてめ
    っき膜の下層に、金属性の膜が積層されて形成されるこ
    とを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の液体吐
    出ヘッド。
  9. 【請求項9】 前記金属性の膜がクロム、チタン、チタ
    ンタングステン成分を含むことを特徴とする請求項8記
    載の液体吐出ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記接着剤が常温硬化型とされること
    を特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
  11. 【請求項11】 前記接着剤収容部が前記分離壁部材の
    可動部材における起端部近傍に形成されることを特徴と
    する請求項1記載の液体吐出ヘッド。
  12. 【請求項12】 前記接着剤収容部の周縁部が前記分離
    壁部材の可動部材における起端部から5μm以上離隔し
    ていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の
    液体吐出ヘッド。
  13. 【請求項13】 前記接着剤収容部が接着剤を均一に分
    布させる格子状部分を有することを特徴とする請求項1
    記載の液体吐出ヘッド。
  14. 【請求項14】 前記接着剤収容部が接着剤を均一に分
    布させるスリット状部分を有することを特徴とする請求
    項1記載の液体吐出ヘッド。
  15. 【請求項15】 液体を加熱する発熱抵抗体が配列され
    た基板の表面に、該発熱抵抗体を囲む隔壁により形成さ
    れる液路を有し分離壁部材に覆われる部分に凹部が設け
    られる液路形成部材を形成する工程と、 前記基板上に形成された液路形成部材の凹部に前記接着
    剤を塗布し、前記基板における発熱抵抗体に所定の間隔
    をもって対向して設けられ、前記発熱抵抗体との間に前
    記液体が供給される空間部を形成する可動部材を有する
    分離壁部材を、該可動部材に該基板における発熱抵抗体
    を対応させて前記基板に該接着剤により接着する工程
    と、 前記分離壁部材が前記基板に接着されたものを、前記液
    体が前記空間部内に供給されるとき前記発熱抵抗体によ
    る加熱によって発生する気泡に基づく圧力により前記可
    動部材が変位されて液体を吐出する吐出口が形成される
    液体吐出部に、該吐出口に前記分離壁部材の可動部材を
    対応させて配置する工程と、 を含んでなることを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方
    法。
  16. 【請求項16】 前記液路形成部材が感光性樹脂で形成
    されることを特徴とする請求項15記載の液体吐出ヘッ
    ドの製造方法。
  17. 【請求項17】 前記液路形成部材がポリイミド樹脂で
    形成されることを特徴とする請求項15または請求項1
    6記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  18. 【請求項18】 前記液路形成部材がドライフィルム樹
    脂で形成されることを特徴とする請求項15または請求
    項16記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  19. 【請求項19】 前記液路形成部材がめっき膜で形成さ
    れることを特徴とする請求項15記載の液体吐出ヘッド
    の製造方法。
  20. 【請求項20】 前記液路形成部材がニッケルめっき膜
    で形成されることを特徴とする請求項15または請求項
    16記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  21. 【請求項21】 前記液路形成部材が金成分を含むニッ
    ケルめっき膜で形成されることを特徴とする請求項20
    記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  22. 【請求項22】 前記液路形成部材がめっき膜に加えて
    めっき膜の下層に金属性の膜が積層されて形成されるこ
    とを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載の液
    体吐出ヘッドの製造方法。
  23. 【請求項23】 前記金属性の膜がクロム、チタン、チ
    タンタングステン成分を含むことを特徴とする請求項2
    2記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  24. 【請求項24】 前記接着剤が常温硬化型とされること
    を特徴とする請求項15記載の液体吐出ヘッドの製造方
    法。
  25. 【請求項25】 前記接着剤収容部が前記分離壁部材の
    可動部材における起端部近傍に形成されることを特徴と
    する請求項15記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  26. 【請求項26】 前記接着剤収容部の周縁部が前記分離
    壁部材の可動部材における起端部から5μm以上離隔し
    ていることを特徴とする請求項15または請求項16記
    載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  27. 【請求項27】 前記接着剤収容部が接着剤を均一に分
    布させる格子状部分を有することを特徴とする請求項1
    5記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  28. 【請求項28】 前記接着剤収容部が接着剤を均一に分
    布させるスリット状部分を有することを特徴とする請求
    項15記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011520666A (ja) * 2008-05-23 2011-07-21 富士フイルム株式会社 流体吐出モジュールを取り付ける方法及び装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011520666A (ja) * 2008-05-23 2011-07-21 富士フイルム株式会社 流体吐出モジュールを取り付ける方法及び装置
US8523323B2 (en) 2008-05-23 2013-09-03 Fujifilm Corporation Method and apparatus for mounting a fluid ejection module

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