JPH1024586A - 液体吐出装置および液体吐出方法 - Google Patents

液体吐出装置および液体吐出方法

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JPH1024586A
JPH1024586A JP18366596A JP18366596A JPH1024586A JP H1024586 A JPH1024586 A JP H1024586A JP 18366596 A JP18366596 A JP 18366596A JP 18366596 A JP18366596 A JP 18366596A JP H1024586 A JPH1024586 A JP H1024586A
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flow path
discharge
heating element
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JP18366596A
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Koichi Komata
好一 小俣
Toshio Kashino
俊雄 樫野
Yoshie Nakada
佳恵 中田
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Canon Inc
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2/14016Structure of bubble jet print heads
    • B41J2/14032Structure of the pressure chamber
    • B41J2/14048Movable member in the chamber

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェット記録において生じる濃度むら
の補正範囲が広い液体吐出装置を提供すること。 【解決手段】 発熱体2にダブルパルスを印加して吐出
を行う際、プレパルスのパルス幅を変調することにより
各吐出口毎の吐出量を調整し、濃度むら補正を行う。こ
の際、発泡圧力を可動部材31を介して吐出側へ伝える
ヘッド構造により、プレパルス幅の変調に応じた吐出量
の変化を得ることができ、濃度むら補正の範囲を広くす
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを液
体に作用させることで起こる気泡の発生によって、所望
の液体を吐出する液体吐出装置および液体吐出方法に関
する。
【0002】特に本発明は、気泡の発生を利用して変位
する可動部材を有する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出
装置および液体吐出方法に関する。
【0003】また本発明は紙、糸、繊維、布帛、皮革、
金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の
被記録媒体に対し記録を行うプリンター、複写機、通信
システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワ
ードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合
的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる発明であ
る。
【0004】なお、本発明における、「記録」とは、文
字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与
することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像
を付与することをも意味するものである。
【0005】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわ
ゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。この
バブルジェット記録方法を用いる記録装置には、USP
4,723,129等の公報に開示されているように、
インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通す
るインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出
するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が
一般的に配されている。
【0006】この様な記録方法によれば、品位の高い画
像を高速、低騒音で記録することができると共に、この
記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出
口を高密度に配置することができるため、小型の装置で
高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得る
ことができるという多くの優れた点を有している。この
ため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンタ
ー、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利
用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムに
まで利用されるようになってきている。
【0007】このようにバブルジェット技術が多方面の
製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近
年さらにたかまっている。
【0008】例えば、エネルギー効率の向上の要求に対
する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発
熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した
熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。
【0009】また、高画質な画像を得るために、インク
の吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好
なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆
動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐
出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速
い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したもの
も提案されている。
【0010】この流路形状の内、流路構造として図1
(a),(b)に示すものが、特開昭63−19997
2号公報等に記載されている。この公報に記載されてい
る流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発
生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向
かう圧力、即ち、液室12へ向かう圧力)に着目した発
明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギ
ーでないため損失エネルギーとして知られている。
【0011】図1(a),(b)に示す発明は、発熱素
子2が形成する気泡の発生領域よりも離れ且つ、発熱素
子2に関して吐出口11とは反対側に位置する弁10を
開示する。
【0012】図1(b)においては、この弁10は、板
材等を利用する製造方法によって、流路3の天井に貼り
付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流路
3内へ垂れ下がるものとして開示されている。この発明
は、上述したバック波の一部を弁10によって制御する
ことでエネルギー損失を抑制するものとして開示されて
いる。
【0013】しかしながら、この構成において、吐出す
べき液体を保持する流路3内部に、気泡が発生した際を
検討するとわかるように、弁10によるバック波の一部
を抑制することは、液体吐出にとっては実用的なもので
ないことがわかる。
【0014】もともとバック波自体は、前述したように
吐出に直接関係しないものである。このバック波が流路
3内に発生した時点では、図1(a)に示すように、気
泡のうち吐出に直接関係する圧力はすでに流路3から液
体を吐出可能状態にしている。従って、バック波のう
ち、しかもその一部を抑制したからといっても、吐出に
大きな影響を与えないことは明らかである。
【0015】さらに、従来のインクジェットヘッドにお
いては、液流路の構造や発熱体の形状等についての製造
時のばらつきによって、吐出口毎もしくは、いくつかの
吐出口毎に吐出量あるいは吐出方向がばらつき記録濃度
にむらが生じることがある。
【0016】記録ヘッドを被記録媒体に沿ってスキャン
させて記録を行ういわゆるシリアルタイプの記録装置に
おいては、このような濃度むらを生じるヘッドであって
も、一画素を複数回のスキャンで形成するいわゆるマル
チスキャン方式で記録を行ったり、所定の画像処理を行
うことで記録画像のむらを補正する、いわゆるヘッドシ
ェーディングを行うことによって濃度むらの発生を抑制
することが知られている。
【0017】一方、被記録媒体の記録幅の全体に対応し
て吐出口を配列した、いわゆるフルラインヘッドの場
合、通常、上述のようなマルチスキャン方式の記録を行
うことができないため、上述したヘッドシェーディング
や各吐出口毎にインク吐出量を補正する、いわゆるビッ
ト補正等を行っていた。
【0018】しかしながら、上記フルラインヘッドのよ
うに、特に吐出口数が多い長尺ヘッドでは、各部品の寸
法のズレや、反り、組み立て誤差が大きく影響して吐出
口間の濃度のばらつきが大きくなり易い。このように、
インクの吐出量に大きなばらつきが生じるようなヘッド
においては、上述のような補正だけでは十分に補正仕切
れない場合があり、また、これによってヘッド製造時の
歩留りを低くしてしまう要因にもなっていた。
【0019】他方、バブルジェット記録方法において
は、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すた
め、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生す
るが、インクの種類によってはこの堆積物が多く発生す
ることで、気泡の発生を不安定にしてしまい、良好なイ
ンクの吐出を行うことが困難な場合があった。また、吐
出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十
分に発泡が得られにくい液体の場合においても、吐出す
べき液体を変質させず、良好に吐出するための方法が望
まれていた。
【0020】このような観点から、熱により気泡を発生
させる液体(発泡液)と吐出する液体(吐出液)とを別
液体とし、発泡による圧力を吐出液に伝達することで吐
出液を吐出する方法が、特開昭61−69467号公
報、特開昭55−81172号公報、USP4,48
0,259号等の公報に開示されている。これらの公報
では、吐出液であるインクと発泡液とをシリコンゴムな
どの可撓性膜で完全分離し、発熱体に吐出液が直接接し
ないようにすると共に、発泡液の発泡による圧力を可撓
性膜の変形によって吐出液に伝える構成をとっている。
このような構成によって、発熱体表面の堆積物の防止
や、吐出液体の選択自由度の向上等を達成している。
【0021】しかしながら、上述のように吐出液と発泡
液とを完全分離する構成のヘッドにおいては、発泡時の
圧力を可撓性膜の伸縮変形によって吐出液に伝える構成
であるため、発泡による圧力を可撓性膜がかなり吸収し
てしまう。また、可撓性膜の変形量もあまり大きくない
ため、吐出液と発泡液とを分離することによる効果を得
ることはできるものの、エネルギー効率や吐出力が低下
してしまう虞があった。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】本発明を成すにあたっ
て、本発明者らの一部は、基本的に従来の気泡(特に膜
沸騰に伴う気泡)を液流路中に形成して液体を吐出する
方式の液滴吐出の原理に立ち返り、従来では得られなか
った気泡を利用した新規な液滴吐出方法及びそれに用い
られるヘッド等を提供すべく鋭意研究を行った。
【0023】このとき、流路中の可動部材の機構の原理
を解析すると言った液流路中の可動部材の動作を起点と
する第1技術解析、および気泡による液滴吐出原理を起
点とする第2技術解析、さらには、気泡形成用の発熱体
の気泡形成領域を起点とする第3解析を行うことにし
た。これらの解析によって、可動部材の支点と自由端の
配置関係を吐出口側つまり下流側に自由端が位置する関
係にすること、また可動部材を発熱体もしくは、気泡発
生領域に面して配することで積極的に気泡を制御する全
く新規な技術を確立するに至り、本出願人は、これらの
発明につき先に出願を行った。この出願の他の特徴は、
気泡自体が吐出量に与えるエネルギーを考慮すると気泡
の下流側の成長成分を考慮することが吐出特性を格段に
吐出方向へ効率よく変換させることこそ吐出効率、吐出
速度の向上をもたらす発明であり、気泡の下流側の成長
成分を積極的に可動部材の自由端側に移動させるという
従来の技術水準に比べ極めて高い技術水準の発明であ
る。
【0024】本発明は、先行発明の画期的な吐出原理や
作用効果を一層優れたものにできる新たな吐出方法およ
び吐出原理を提供すべく新たな知見に基づいてなされた
発明である。
【0025】特に本発明は可動部材の作用によって可動
部材より上流側(共通液室側)の流路構造のばらつきが
吐出量のばらつきに与える影響は少ないという知見を得
るに至った。さらには、可動部材を備えることで、吐出
量の補正を大きな範囲で行うことができるという知見に
よって成されたものである。
【0026】本発明の主たる目的は以下の通りである。
【0027】第1の目的は、発生した気泡を根本的に制
御することで極めて新規な液体吐出原理を提供すること
にある。特に、記録に際して生じる濃度むらの補正範囲
が広い液体吐出装置や液体吐出方法を得ることで、より
濃度むらの少ない画像を得ることを目的とする。
【0028】また、第2の目的は濃度むらが生じ易く、
またそれが目立ちやすいフルラインヘッドであっても、
吐出量の補正を十分に行うことができる液体吐出装置お
よび液体吐出方法を提供することをも目的とするもので
ある。
【0029】本発明の第3の目的は、上述の目的に吐出
効率、吐出圧力の向上を図りつつ、発熱体上の液体への
蓄熱を大幅に軽減できると共に、発熱体上の残留気泡の
低減を図ることで、良好な液体の吐出を行いうる液体吐
出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0030】本発明の第4の目的は、バック波による液
体供給方向とは逆方向への慣性力が働くのを抑えると同
時に、可動部材の弁機能によって、メニスカス後退量を
低減させることで、リフィル周波数を高め、印字スピー
ド等を向上させた液体吐出装置および液体吐出方法を提
供することにある。
【0031】本発明の第5の目的は、発熱体上への堆積
物を低減すると共に、吐出用液の用途範囲を広げること
ができ、しかも吐出効率や吐出力が十分に高い液体吐出
装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0032】本発明の第6の目的は、吐出する液体の選
択自由度を高くできる液体吐出装置および液体吐出方法
を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】そのために本発明では、
液体を吐出する複数の吐出口と、該吐出口のそれぞれに
連通する液流路と、該液流路内に位置し液体に気泡を発
生させるための発熱体が配された気泡発生領域と、この
気泡発生領域に面して配され、支点に対して前記吐出口
に近い側に自由端が配された可動部材とを有する液体吐
出ヘッドと、前記発熱体のそれぞれもしくは複数ごとに
発熱体に与える駆動信号の種類を選択するための選択手
段と、を有することを特徴とする。
【0034】また、前記液流路は、前記吐出口に連通す
る第1の液流路と前記気泡発生領域を有する第2の液流
路とを有し、前記可動部材は前記第1の液流路と前記第
2の液流路との間に配置されていることを特徴とする。
【0035】さらに、液体を吐出する複数の吐出口と、
該吐出口のそれぞれに連通する液流路と、該液流路内に
位置し液体に気泡を発生させるための発熱体が配された
気泡発生領域と、この気泡発生領域に面して配され、支
点に対して前記吐出口に近い側に自由端が配された可動
部材とを有する液体吐出ヘッドを用い、前記発熱体のそ
れぞれもしくは複数ごとに発熱体に与える駆動信号の種
類を選択し、選択された駆動信号に基づいて前記気泡発
生領域に気泡を発生させることを特徴とする。
【0036】上述したような、極めて新規な吐出原理に
基づく本発明の液体吐出方法、ヘッド等によると、発生
する気泡とこれによって変位する可動部材との相乗効果
を得ることができ、吐出口近傍の液体を効率よく吐出で
きるため、従来のバブルジェット方式の吐出方法、ヘッ
ド等に比べて、吐出効率を向上できる。例えば本発明の
最も好ましい形態においては2倍以上という飛躍的な吐
出効率の向上を達成できた。
【0037】また、特に本発明のリフィル特性を向上し
た構成によれば、連続吐出時の応答性、気泡の安定成
長、液滴の安定化を達成して、高速液体吐出による高速
記録また高画質記録を可能にすることができた。
【0038】特に本発明の液体吐出方法および液体吐出
装置においては、製造誤差によるインク吐出量のむらを
低減することができるだけでなく、ヘッド自体に吐出量
のむらが生じている場合であっても、インク吐出量の補
正範囲が広いため、従来では補正できなかったような濃
度むらをも補正することができる。そして、このことに
より適切に液体吐出を行うことができる。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を詳細に説明する。
【0040】図2は本発明の一実施形態に係るインクジ
ェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【0041】図2において、ヒータボード(素子基板)
1のそれぞれは電気熱変換素子2(以下、発熱体ともい
う)が360DPIの密度で列状に128個設けられた
ものである。また、ヒータボード1には外部からの電気
信号を受け、これにより任意のタイミングで発熱体2を
駆動するための信号パッド、その駆動のための電力など
を供給するための電力パッド等からなるパッド1403
が設けられている。各ヒータボード1上には、後述する
第2液流路を形成するための隔壁72およびこの隔壁に
接続する分離壁30が設けられる。分離壁30には、各
発熱体2に対応して可動部材31が形成され、これによ
り後述されるように、第2液流路での発泡圧力をインク
吐出口を含む第1液流路側へ効率良く伝えることができ
る。以上のヒータボード1は、アルミニウムで作られた
支持基板としてのベースプレート70上にその発熱体2
の配列方向に11個が設けられている。この結果、実施
形態のインクジェットヘッドは1408個の発熱体を備
えることになる。
【0042】ベースプレート70にはヒータボード1と
同様に配線基板1400が接着貼付されている。この際
ヒータボード1上のパッド1403と配線基板1400
上に設けられた信号・電力供給パッド1401とが所定
の位置関係になるように接着貼付される。また、配線基
板1400には、外部からの記録信号や駆動電力を供給
するためのコネクタ1402が設けられている。
【0043】天板50は、インク吐出口18を形成した
オリフィスプレートを一体に備え、また、後述のよう
に、第2液流路を形成するための溝が設けられる。この
天板50は、上述の分離壁30の可動部材31との位置
関係を所定の位置関係になるように合せて結合される。
この結合の方法としては、バネ等によって機械的に押え
込んだり、接着剤によって固定したりそれらを組み合わ
せたりすることなど種々の方法を用いることができる。
【0044】図3はこのような本実施形態例の液体吐出
ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図を示してお
り、図4はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示し
ている。
【0045】本実施形態例の液体吐出ヘッドは、液体を
吐出するための吐出エネルギー発生素子として、液体に
熱エネルギーを作用させる発熱体2(本実施形態例にお
いては40μm×105μmの形状の発熱抵抗体)が素
子基板1に設けられており、この素子基板上に発熱体2
に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐
出口18に連通していると共に、複数の液流路10に液
体を供給するための共通液室13に連通しており、吐出
口から吐出された液体に見合う量の液体をこの共通液室
13から受け取る。
【0046】この液流路10の素子基板上には、前述の
発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有す
る材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31
が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液
流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニ
ングして形成した土台(支持部材)34等に固定されて
いる。これによって、可動部材は保持されると共に支点
(支点部分)33を構成している。
【0047】この可動部材31は、液体の吐出動作によ
って共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側
へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定
端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端
(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位
置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程
度の距離を隔てて配されている。この発熱体と可動部材
との間が気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の
種類や形状および配置はこれに限られることなく、後述
するように気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状お
よび配置であればよい。なお、上述した液流路10は、
後に取り上げる液体の流れの説明のため、可動部材31
を境にして直接吐出口18に連通している部分を第1の
液流路14とし、気泡発生領域11や液体供給路12を
有する第2の液流路16の2つの領域に分けて説明す
る。
【0048】発熱体2を発熱させることで可動部材31
と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用
し、液体にUSP4,723,129に記載されている
ような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発
生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用し、可
動部材31は図3(b)、(c)もしくは図4で示され
るように支点33を中心に吐出口側に大きく開くように
変位する。可動部材31の変位若しくは変位した状態に
よって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長
が吐出口側に導かれる。
【0049】ここで、本発明の基本的な吐出原理の一つ
を説明する。本発明において最も重要な原理の1つは、
気泡に対面するように配された可動部材が気泡の圧力あ
るいは気泡自体に基づいて、定常状態の第1の位置から
変位後の位置である第2の位置へ変位し、この変位する
可動部材31によって気泡の発生に伴う圧力や気泡自身
を吐出口18が配された下流側へ導くことである。
【0050】この原理を可動部材を用いない従来の液流
路構造を模式的に示した図5と本発明の図7とを比較し
てさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口方向への
圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の伝搬方向をV
Bとして示した。
【0051】図5で示されるような従来のヘッドにおい
ては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制す
る構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV1
〜V8のように気泡表面の垂線方向となり様々な方向を
向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼす
VA方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜V
4即ち気泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の圧
力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐出
速度等に直接寄与する重要な部分である。さらにV1は
吐出方向VAの方向に最も近いため効率よく働き、逆に
V4はVAに向かう方向成分は比較的少ない。
【0052】これに対して、図7で示される本発明の場
合には、可動部材31が図5の場合のように様々な方向
を向いていた気泡の圧力伝搬方向V1〜V4を下流側
(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向に変換するも
のであり、これにより気泡40の圧力が直接的に効率よ
く吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向
自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下流方向に導か
れ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡
の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力
伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力また吐出
速度等の根本的な向上を達成することができる。
【0053】次に図3に戻って、本実施形態例の液体吐
出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0054】図3(a)は、発熱体2に電気エネルギー
等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が
熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可
動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対
し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に
設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可
動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも
発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通
って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで
可動部材31が配されている。
【0055】図3(b)は、発熱体2に電気エネルギー
等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって
気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸
騰に伴う気泡を発生させた状態である。
【0056】このとき可動部材31は気泡40の発生に
基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口
方向に導くように第1位置から第2位置へ変位する。こ
こで重要なことは前述したように、可動部材31の自由
端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点33を上流
側(共通液室側)に位置するように配置して、可動部材
の少なくとも一部を発熱体の下流部分すなわち気泡の下
流部分に対面させることである。
【0057】図3(c)は気泡40がさらに成長した状
態であるが、気泡40発生に伴う圧力に応じて可動部材
31はさらに変位している。発生した気泡は上流より下
流に大きく成長すると共に可動部材の第1の位置(点線
位置)を越えて大きく成長している。このように気泡4
0の成長に応じて可動部材31が徐々に変位して行くこ
とで気泡40の圧力伝搬方向や堆積移動のしやすい方
向、すなわち自由端側への気泡の成長方向を吐出口に均
一的に向かわせることができることも吐出効率を高める
と考えられる。可動部材は気泡や発泡圧を吐出口方向へ
導く際もこの伝達の妨げになることはほとんどなく、伝
搬する圧力の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や
気泡の成長方向を制御することができる。
【0058】図3(d)は気泡40が、前述した膜沸騰
の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態
を示している。
【0059】第2の位置まで変位していた可動部材31
は、気泡の収縮による負圧と可動部材自身のばね性によ
る復元力によって図3(a)の初期位置(第1の位置)
に復帰する。また、消泡時には、気泡発生領域11での
気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体
積分を補うために上流側(B)、すなわち共通液室側か
ら流れのVD1、VD2のように、また、吐出口側から
流れのVcのように液体が流れ込んでくる。 以上、気
泡の発生に伴う可動部材の動作と液体の吐出動作につい
て説明したが、以下に本発明の液体吐出ヘッドにおける
液体のリフィルについて詳しく説明する。
【0060】図3を用いて本発明における液供給メカニ
ズムをさらに詳しく説明する。
【0061】図3(c)の後、気泡40が最大体積の状
態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補
う体積の液体が気泡発生領域に、第1液流路14の吐出
口18側と第2液流路16の共通液室側13から流れ込
む。可動部材31を持たない従来の液流路構造において
は、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液
室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に
近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに起
因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものであ
る。)。
【0062】このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さ
い場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ
込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特
に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を
小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメ
ニスカスMの後退が大きくなり、リフィル時間が長くな
って高速印字を妨げることとなっていた。
【0063】これに対して本実施形態例は可動部材31
を設けたため、気泡の体積Wを可動部材31の第1位置
を境に上側をW1、気泡発生領域11側をW2とした場
合、消泡時に可動部材が元の位置に戻った時点でメニス
カスの後退は止まり、その後残ったW2の体積分の液体
供給は主に第2流路16の流れVD2からの液供給によ
って成される。これにより、従来、気泡Wの体積の半分
程度に対応した量がメニスカスの後退量になっていたの
に対して、それより少ないW1の半分程度のメニスカス
後退量に抑えることが可能になった。
【0064】さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時
の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿っ
て、主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行
うことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0065】ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消
泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカス
の振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっ
ていたが、本実施形態例の高速リフィルにおいては可動
部材によって吐出口側の第1液流路14の領域と、気泡
発生領域11との吐出口側での液体の流通が抑制される
ためメニスカスの振動を極めて少なくすることができる
ことである。
【0066】このように本発明は、第2流路16の液供
給路12を介しての発泡領域への強制リフィルと、上述
したメニスカス後退や振動の抑制によって高速リフィル
を達成することで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、ま
た記録の分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実
現することができる。
【0067】本発明の構成においてはさらに次のような
有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡の発生によ
る圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制することで
ある。発熱体2上で発生した気泡の内、共通液室13側
(上流側)の気泡による圧力は、その多くが、上流側に
向かって液体を押し戻す力(バック波)になっていた。
このバック波は、上流側の圧力と、それによる液移動
量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こし、これらは
液体の液流路内へのリフィルを低下させ高速駆動の妨げ
にもなっていた。本発明においては、まず可動部材31
によって上流側へのこれらの作用を抑えることでもリフ
ィル供給性の向上をさらに図っている。
【0068】次に、本実施形態例の更なる特徴的な構造
と効果について、以下に説明する。
【0069】本実施形態例の第2液流路16は、発熱体
2の上流に発熱体2と実質的に平坦につながる(発熱体
表面が大きく落ち込んでいない)内壁を持つ液体供給路
12を有している。このような場合、気泡発生領域11
および発熱体2の表面への液体の供給は、可動部材31
の気泡発生領域11に近い側の面に沿って、VD2のよ
うに行われる。このため、発熱体2の表面上に液体が淀
むことが抑制され、液体中に溶存していた気体の析出
や、消泡できずに残ったいわゆる残留気泡が除去され易
く、また、液体への蓄熱が高くなりすぎることもない。
従って、より安定した気泡の発生を高速に繰り返し行う
ことができる。なお、本実施形態例では実質的に平坦な
内壁を持つ液体供給路12を持つもので説明したが、こ
れに限らず、発熱体表面となだらかに繋がり、なだらか
な内壁を有する液供給路であればよく、発熱体上に液体
の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない形状であ
ればよい。
【0070】また、気泡発生領域への液体の供給は、可
動部材の側部(スリット35)を介してVD1から行わ
れるものもある。しかし、気泡発生時の圧力をさらに有
効に吐出口に導くために図3で示すように気泡発生領域
の全体を覆う(発熱体面を覆う)ように大きな可動部材
を用い、可動部材31が第1の位置へ復帰することで、
気泡発生領域11と第1液流路14の吐出口に近い領域
との液体の流抵抗が大きくなるような形態の場合、前述
のVD1から気泡発生領域11に向かっての液体の流れ
が妨げられる。しかし、本発明のヘッド構造において
は、気泡発生領域に液体を供給するための流れVD1が
あるため、液体の供給性能が非常に高くなり、可動部材
31で気泡発生領域11を覆うような吐出効率向上を求
めた構造を取っても、液体の供給性能を落とすことがな
い。
【0071】ところで、可動部材31の自由端32と支
点33の位置は、例えば図8で示されるように、自由端
が相対的に支点より下流側にある。このような構成のた
め、前述した発泡の際に気泡の圧力伝搬方向や成長方向
を吐出口側に導く等の機能や効果を効率よく実現できる
のである。さらに、この位置関係は吐出に対する機能や
効果のみならず、液体の供給の際にも液流路10を流れ
る液体に対する流抵抗を小さくしでき高速にリフィルで
きるという効果を達成している。これは図8に示すよう
に、吐出によって後退したメニスカスMが毛管力により
吐出口18へ復帰する際や、消泡に対しての液供給が行
われる場合に、液流路10(第1液流路14、第2液流
路16を含む)内を流れる流れS1、S2、S3に対
し、逆らわないように自由端と支点33とを配置してい
るためである。
【0072】補足すれば、本実施形態例図3において
は、前述のように可動部材31の自由端32が、発熱体
2を上流側領域と下流側領域とに2分する面積中心3
(発熱体の面積中心(中央)を通り液流路の長さ方向に
直交する線)より下流側の位置に対向するように発熱体
2に対して延在している。これによって発熱体の面積中
心位置3より下流側で発生する液体の吐出に大きく寄与
する圧力、又は気泡を可動部材31が受け、この圧力及
び気泡を吐出口側に導くことができ、吐出効率や吐出力
を根本的に向上させることができる。
【0073】さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用
して多くの効果を得ている。
【0074】また、本実施形態例の構成においては可動
部材31の自由端が瞬間的な機械的変位を行っているこ
とも、液体の吐出に対して有効に寄与している考えられ
る。
【0075】次に、以上説明したインクジェットヘッド
における各吐出口毎の吐出量補正(以下、ビット補正と
もいう)について説明する。
【0076】本実施形態のビット補正は、発熱体に印加
する駆動パルス(駆動信号)のパルス幅等を変調して行
うものである。すなわち、本実施形態で用いる駆動パル
スは、発泡に至らない熱エネルギーを発生するためのプ
レパルスと、このパルス印加の後、一定の休止期間をお
いて印加されるメインパルスとからなり、本実施形態で
は、このうち、プレパルスのパルス幅等は休止期間を変
調することによって吐出量を変化させる。これにより、
記録媒体上に形成されるドットの大きさを変化させるこ
とができ、各吐出口により形成されるドットの大きさを
均一にし濃度むらの補正を行うことができる。
【0077】以上のビット補正を上述した本実施形態の
インクジェットヘッドに適用する場合を、従来より知ら
れる、いわゆるバブルジェット方式のインクジェットに
適用する場合と比較しつつ説明する。
【0078】図8は駆動パルスのうちプレパルスのパル
ス幅P1(図10参照)を変調した場合の、本実施形態
のヘッドにおける吐出量変化;Aと、従来のヘッドにお
ける吐出量変化;Bを示し、図9は、休止期間P2(図
10参照)を変調した場合の、同様に本実施形態のヘッ
ドにおける吐出量変化;Aと従来のヘッドにおける吐出
量変化;Bを示す図である。
【0079】図8および図9から明らかなように、プレ
パルス幅P1および休止期間P2のいずれを変調する場
合にあっても、本実施形態のヘッドおよび従来ヘッドの
いずれも、ほぼ等しいプレパルス幅P1(約2μse
c)および休止期間P2(約4μsec)で最大吐出量
を得る。しかし、この最大吐出量を含め、本実施形態の
ヘッドの方がより吐出量が多く、また、その変化も大き
い。この結果、本実施形態のヘッドにビット補正を適用
した場合、より大きな補正幅を実現することが可能とな
る。換言すれば、濃度むらが比較的大きな範囲で生じて
いるヘッドに対しても本実施形態のビット補正を有効に
適用することができる。
【0080】本実施形態のインクジェットヘッドのこの
ような濃度むらを行う上での利点は、そのヘッド構成に
基づく次のような考察により本願発明者等が新たに見出
したことである。
【0081】すなわち、従来のヘッドの構成において
は、発熱体駆動により発生した気泡の液流路上流側への
成長は、本実施形態のヘッドのように可動部材によって
規制されないため、発泡力の少ない部分が上流側のイン
クに向かって作用するのに対し、本実施形態のヘッドに
おいては、この流路上流側へのこのような発泡力の逃げ
を大部分可動部材で抑制することができる。その結果、
従来のヘッドでは、例えば気泡を発生させるための投入
エネルギーを増加させて発泡体積を大きくしても上述の
上流側への発泡圧力の逃げもそれに伴って大きくなり、
投入エネルギーの増加に伴う発泡体積の増大が直接的に
吐出量の増加として十分に反映されないのに対し、本実
施形態のヘッドの場合には、上述のように、上流側への
発泡力の逃げを良好に抑制できるため、投入エネルギー
の増加に伴う発泡体積の増加のに応じて吐出量を大きく
変化させることができ、上述のビット補正等の補正をよ
り有効になすことができると考えられるからである。
【0082】なお、本実施形態のヘッド構成によれば、
上述した考察と同様の理由から、インク吐出の挙動は発
熱体より上流側の液流路の構造等の影響は受け難く、こ
のため、吐出量等は発熱体より下流側(吐出口側)の精
度で定まるともいえる。このことは、下流側(主に吐出
口)の精度を一定以上のものとしておけば、例えば本実
施形態で用いる長尺のヘッドの場合でも製造誤差による
吐出量のばらつき範囲を小さくできることを意味するも
のである。本実施形態のヘッドは、このような利点が上
述したビット補正に関する利点と相乗的に作用し、濃度
むら低減について極めて良好な効果を発揮し得るもので
ある。
【0083】図11は、以上説明した本実施形態のイン
クジェットにおけるビット補正のための概略構成を示
し、ヒータボード上に形成されるプレヒート選択回路等
を示すものである。なお、図11に示す構成はインクジ
ェットヘッドの11個のヒータボード(図2参照)の各
々に設けられることは勿論である。
【0084】図11に示すように、記録開始時等、所定
のタイミングでROM1003に格納される各吐出口毎
の吐出量情報が装置本体のCPU(不図示)によって読
み出される。CPUはこの各吐出口毎の吐出量情報に応
じたプレヒート選択信号をプレヒート選択回路1Sに供
給するように制御する。また、本実施形態では、プレヒ
ートパルスのパルス幅を制御して吐出量の変調を行うた
め、4段階の吐出量に対応した4種類のプレヒート幅の
1つ選択可能なものとする。このため、プレヒートのパ
ルス幅を定める4種類のプレヒート信号PH1*〜PH
4*がプレヒート選択回路1Sに供給される。
【0085】図12はドライバ回路1dおよびプレヒー
ト選択回路1Sの詳細な構成を示す回路図である。
【0086】ドライバ回路1dは、概略発熱体2−1〜
2−128およびこれら発熱体を個別に駆動するための
スイッチングトランジスタ201d、さらにはこれらの
スイッチングトランジスタ201dに、各制御信号に応
じて駆動信号を供給するためのアンド素子、オア素子を
備える。そして、これらのアンド素子には、128個の
発熱体2−1〜2−128を16個毎のブロック毎に分
割駆動するためのブロックイネーブル信号BENB0〜
BENB2や各ブロック内で奇数番目および偶数番目の
発熱体を個別に駆動するためのイネーブル信号ODD、
EVEN、さらには発熱体にメインパルスを印加するた
めのメインヒートイネーブル信号MHENB*が供給さ
れる。
【0087】一方、プレヒート選択回路1Sのシフトレ
ジスタ105Sには、上記各吐出口毎の吐出量情報に応
じて“1”または“0”の組のプレヒート選択信号が予
め2回に分けて送られ、これらはそれぞれラッチ信号L
ATA*およびLATB*によって、それぞれセレクト
AラッチおよびセレクトBラッチにラッチされる。そし
て、選択回路101Sではこれら発熱体毎のプレヒート
選択信号の組合せに応じて4つのプレヒート信号PH1
*〜PH4*の中から1つが選択されて出力される。こ
の選択は、具体的には選択信号の“1”または“0”の
4通りの組合せに応じてプレヒート信号PH1*〜PH
4*が対応づけられることによって可能となる。なお、
本実施例では、各発熱体毎に駆動信号を選択している
が、これに限らず、複数の発熱体毎に駆動信号を選択し
てもよい。
【0088】なお、図12に示す本実施形態のドライバ
回路およびプレヒート選択回路の構成によれば、プレヒ
ートパルスは吐出データにかかわらず、つまり、吐出の
有無にかかわらず各発熱体に印加される。これにより、
各液流路間で大きな温度差を生じないようにすることが
できる。
【0089】以上の構成により、例えば吐出量が少ない
特性を有する吐出口の発熱体にはパルス幅の長いプレパ
ルスが印加され、結果として各吐出口の吐出量が均一化
されることになる。
【0090】なお、本実施形態では、各吐出口毎の吐出
量情報をROMから読み出すものとしたが、出荷後に例
えばサービスマン等により濃度むら測定を行い、吐出量
情報を書き換えることができるようRAMに格納するよ
うにしてもよい。
【0091】以下、図面を参照して本発明の他の実施形
態例について説明する。
【0092】本実施形態例においても主たる液体の吐出
原理については先の実施形態例と同じであるが、本実施
形態例においては液流路を複流路構成にすることで、さ
らに熱を加えることで発泡させる液体(発泡液)と、主
として吐出される液体(吐出液)とを分けることができ
るものである。
【0093】図13は、本実施形態例の液体吐出ヘッド
の流路方向の断面模式図を示しており、図14はこの液
体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0094】本実施形態例の液体吐出ヘッドは、液体に
気泡を発生させるための熱エネルギーを与える発熱体2
が設けられた素子基板1上に、発泡用の第2液流路16
があり、その上に吐出口18に直接連通した吐出液用の
第1液流路14が配されている。
【0095】第1液流路の上流側は、複数の第1液流路
に吐出液を供給するための第1共通液室15に連通して
おり、第2液流路の上流側は、複数の第2液流路に発泡
液を供給するための第2共通液室に連通している。
【0096】但し、発泡液と吐出液を同じ液体とする場
合には、共通液室を一つにして共通化させてもよい。
【0097】第1と第2の液流路の間には、金属等の弾
性を有する材料で構成された分離壁30が配されてお
り、第1液流路と第2の液流路とを区分している。な
お、発泡液と吐出液とができる限り混ざり合わない方が
よい液体の場合には、この分離壁によってできる限り完
全に第1液流路14と第2液流路16の液体の流通を分
離した方がよいが、発泡液と吐出液とがある程度混ざり
合っても、問題がない場合には、分離壁に完全分離の機
能を持たせなくてもよい。
【0098】発熱体の面方向上方への投影空間(以下吐
出圧発生領域という。;図13中のAの領域とBの気泡
発生領域11)に位置する部分の分離壁は、スリット3
5によって吐出口側(液体の流れの下流側)が自由端
で、共通液室(15、17)側に支点33が位置する片
持梁形状の可動部材31となっている。この可動部材3
1は、気泡発生領域11(B)に面して配されているた
め、発泡液の発泡によって第1液流路側の吐出口側に向
けて開口するように動作する(図中矢印方向)。図14
においても、発熱体2としての発熱抵抗部と、この発熱
抵抗部に電気信号を印加するための配線電極5とが配さ
れた素子基板1上に、第2の液流路を構成する空間を介
して分離壁30が配置されている。
【0099】可動部材31の支点33、自由端32の配
置と、発熱体との配置の関係については、先の実施形態
例と同様にしている。
【0100】また、先の実施形態例で液供給路12と発
熱体2との構造の関係について説明したが、本実施形態
例においても第2液流路16と発熱体2との構造の関係
を同じくしている。
【0101】次に図15を用いて本実施形態例の液体吐
出ヘッドの動作を説明する。
【0102】ヘッドを駆動させるにあたっては、第1液
流路14に供給される吐出液と第2の液流路16に供給
される発泡液として同じ水系のインクを用いて動作させ
た。
【0103】発熱体2が発生した熱が、第2液流路の気
泡発生領域内の発泡液に作用することで、先の実施形態
例で説明したのと同様に発泡液にUSP4,723,1
29に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡4
0を発生させる。
【0104】本実施形態例においては、気泡発生領域の
上流側を除く、3方からの発泡圧の逃げがないため、こ
の気泡発生にともなう圧力が吐出圧発生部に配された可
動部材6側に集中して伝搬し、気泡の成長をともなって
可動部材6が図15(a)の状態から図15(b)のよ
うに第1液流路側に変位する。この可動部材の動作によ
って第1液流路14と第2液流路16とが大きく連通
し、気泡の発生に基づく圧力が第1液流路の吐出口側の
方向(A方向)に主に伝わる。この圧力の伝搬と、前述
のような可動部材の機械的変位によって液体が吐出口か
ら吐出される。
【0105】次に、気泡が収縮するに伴って可動部材3
1が図15(a)の位置まで戻ると共に、第1液流路1
4では吐出された吐出液体の量に見合う量の吐出液体が
上流側から供給される。本実施形態例においても、この
吐出液体の供給は前述の実施形態例と同様に可動部材が
閉じる方向であるため、吐出液体のリフィルを可動部材
で妨げることがない。
【0106】本実施形態例は、可動部材の変位に伴う発
泡圧力の伝搬、気泡の成長方向、バック波の防止等に関
する主要部分の作用や効果については先の第1実施形態
例等と同じであるが、本実施形態例のような2流路構成
をとることによって、さらに次のような長所がある。
【0107】すなわち、上述の実施形態例の構成による
と、吐出液と発泡液とを別液体とし、発泡液の発泡で生
じた圧力によって吐出液を吐出することができる。この
ため従来、熱を加えても発泡が十分に行われにくく吐出
力が不十分であったポリエチレングリコール等の高粘度
の液体であっても、この液体を第1の液流路に供給し、
発泡液に発泡が良好に行われる液体(エタノール:水=
4:6の混合液1〜2cP程度等)や低沸点の液体を第
2の液流路に供給することで良好に吐出させることがで
きる。
【0108】また、発泡液として、熱を受けても発熱体
の表面にコゲ等の堆積物を生じない液体を選択すること
で、発泡を安定化し、良好な吐出を行うことができる。
【0109】さらに、本発明のヘッドの構造においては
先の実施形態例で説明したような効果をも生じるため、
さらに高吐出効率、高吐出力で高粘性液体等の液体を吐
出することができる。
【0110】また、加熱に弱い液体の場合においてもこ
の液体を第1の液流路に吐出液として供給し、第2の液
流路で熱的に変質しにくく良好に発泡を生じる液体を供
給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を与えることな
く、しかも上述のように高吐出効率、高吐出力で吐出す
ることができる。
【0111】<その他の実施形態例>以上、本発明の液
体吐出ヘッドや液体吐出方法の要部の実施形態例につい
て説明を行ったが、以下にこれらの実施形態例に好まし
く適用できる実施態様例について図面を用いて説明す
る。但し、以下の説明においては前述の1流路形態の実
施形態例と2流路形態の実施形態例のいずれかを取り上
げて説明する場合があるが特に記載しない限り、両実施
形態例に適用しうるものである。
【0112】<液流路の天井形状>図16は本発明の液
体吐出ヘッドの流路方向断面図であるが、第1液流路1
3(若しくは図3における液流路10)を構成するため
の溝が設けられた溝付き部材50が分離壁30上に設け
られている。本実施形態例においては可動部材の自由端
32位置近傍の流路天井の高さが高くなっており、可動
部材の動作角度θをより大きく取れるようにしている。
この可動部材の動作範囲は、液流路の構造、可動部材の
耐久性や発泡力等を考慮して決定すればよいが、吐出口
の軸方向の角度を含む角度まで動作することが望ましい
と考えられる。
【0113】また、この図で示されるように吐出口の直
径より可動部材の自由端の変位高さを高くすることで、
より十分な吐出力の伝達が成される。また、この図で示
されるように、可動部材の自由端32位置の液流路天井
の高さより可動部材の支点33位置の液流路天井の高さ
の方が低くなっているため、可動部材の変位よる上流側
への圧力波の逃げがさらに有効に防止できる。
【0114】<第2液流路と可動部材との配置関係>図
17は、上述の可動部材31と第2の液流路16との配
置関係を説明するための図であり、同図(a)は分離壁
30、可動部材31近傍を上方から見た図であり、同図
(b)は、分離壁30を外した第2液流路16を上方か
ら見た図である。そして、同図(c)は、可動部材6と
第2液流路16との配置関係を、これらの各要素を重ね
ることで模式的に示した図である。なお、いずれの図も
図面下方が吐出口が配されている前面側である。
【0115】本実施形態例の第2の液流路16は発熱体
2の上流側(ここでの上流側とは第2共通液室側から発
熱体位置、可動部材、第1流路を経て吐出口に向う大き
な流れの中の上流側のことである。)に狭窄部19を持
っており、発泡時の圧力が第2液流路16の上流側に容
易に逃げることを抑制するような室(発泡室)構造とな
っている。
【0116】従来のヘッドのように、発泡する流路と液
体を吐出するための流路とが同じで、発熱体より液室側
に発生した圧力が共通液室側に逃げないように狭窄部を
設けるヘッドの場合には、液体のリフィルを充分考慮し
て、狭窄部における流路断面積があまり小さくならない
構成を採る必要があった。
【0117】しかし、本実施形態例の場合、吐出される
液体の多くを第1液流路内の吐出液とすることができ、
発熱体が設けられた第2液流路内の発泡液はあまり消費
されないようにできるため、第2液流路の気泡発生領域
11への発泡液の充填量は少なくて良い。従って、上述
の狭窄部19における間隔を数μm〜十数μmと非常に
狭くできるため、第2液流路で発生した発泡時の圧力を
あまり周囲に逃がすことをさらに抑制でき、集中して可
動部材側に向けることができる。そしてこの圧力を可動
部材31を介して吐出力として利用することができるた
め、より高い吐出効率、吐出力を達成することができ
る。ただ、第1液流路16の形状は上述の構造に限られ
るものではなく、気泡発生に伴う圧力が効果的に可動部
材側に伝えられる形状であれば良い。
【0118】なお、図17(c)で示されるように可動
部材31の側方は、第2液流路を構成する壁の一部を覆
っており、このことで、可動部材31の第2液流路への
落ち込みが防止できる。これによって、前述した吐出液
と発泡液との分離性をさらに高めることができる。ま
た、気泡のスリットからの逃げの抑制ができるため、さ
らに吐出圧や吐出効率を高めることができる。さらに、
前述の消泡時の圧力による上流側からのリフィルの効果
を高めることができる。
【0119】なお、図15(b)や図16においては、
可動部材6の第1の液流路14側への変位に伴って第2
の液流路4の気泡発生領域で発生した気泡の一部が第1
の液流路14側に延在しているが、この様に気泡が延在
するような第2流路の高さにすることで、気泡が延在し
ない場合に比べ更に吐出力を向上させることができる。
この様に気泡が第1の液流路14に延在するようにする
ためには、第2の液流路16の高さを最大気泡の高さよ
り低くすることが望ましく、この高さを数μm〜30μ
mとすることが望ましい。なお、本実施形態例において
はこの高さを15μmとした。
【0120】<可動部材および分離壁>図18は可動部
材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設け
られたスリットであり、このスリットによって、可動部
材31が形成されている。同図(a)は長方形の形状で
あり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動部材
の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が広く
なっており、可動部材の耐久性が向上する形状である。
動作の容易性と耐久性が良好な形状として、図17
(a)で示したように、支点側の幅が円弧状に狭くなっ
ている形態が望ましいが、可動部材の形状は第2の液流
路側に入り込むことがなく、容易に動作可能な形状で、
耐久性に優れた形状であればよい。
【0121】先の実施形態例においては、板状可動部材
31をおよびこの可動部材を有する分離壁5は厚さ5μ
mのニッケルで構成したが、これに限られることなく可
動部材、分離壁を構成する材質としては発泡液と吐出液
に対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作す
るための弾性を有し、微細なスリットが形成できるもの
であればよい。
【0122】可動部材の材料としては、耐久性の高い、
銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白
金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、および
その合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、ス
チレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のア
ミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシ
ル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を
持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、
そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐イ
ンク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケ
ル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および
耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングした
もの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、
ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエー
テルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイ
ミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水
酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する
樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポ
キシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等の
アミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を
持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラ
ミックおよびその化合物が望ましい。
【0123】分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレー
ト、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケ
トン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリ
イミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の
近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱
性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合
物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、
金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もし
くは表面にチタンや金をコーティングしたものが望まし
い。
【0124】また、分離壁の厚さは、分離壁としての強
度を達成でき、可動部材として良好に動作するという観
点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、
0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0125】なお、可動部材31を形成するためのスリ
ット35の幅は本実施形態例では2μmとしたが、発泡
液と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止
したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカス
を形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑
制すればよい。例えば、発泡液として2cP(センチポ
アズ)程度の液体を用い、吐出液として100cP以上
の液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混
液を防止することができるが、3μm以下にすることが
望ましい。
【0126】<素子基板>以下に液体に熱を与えるため
の発熱体が設けられた素子基板の構成について説明す
る。
【0127】図19は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面
図を示したもので、図19(a)は後述する保護膜があ
るヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0128】素子基板1上に第2液流路16、分離壁3
0、第1液流路14、第1液流路を構成する溝を設けた
溝付き部材50が配されている。
【0129】素子基板1には、シリコン等の気体107
に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチ
ッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体を構成
するハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タンタ
ル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵
抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウ
ム等の配線電極(0.2〜1.0μm厚)を図11のよ
うにパターニングされている。この2つの配線電極10
4から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を流
し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリコ
ンやチッ化シリコン等の保護層を0.1〜2.0μm厚
で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテー
ション層(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、
インク等の各種の液体から抵抗層105を保護してい
る。
【0130】特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧
力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性
を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)
等が耐キャビテーション層として用いられる。
【0131】また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み
合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよく
その例を図19(b)に示す。このような保護層を必要
としない抵抗層の材料としてはイリジュウム−タンタル
−アルミ合金等が挙げられる。
【0132】このように、前述の各実施形態例における
発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱
部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含
むものでもよい。
【0133】本実施形態例においては、発熱体として電
気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有
するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液
を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるもの
であればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受
けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受ける
ことで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0134】なお、前述の素子基板1には、前述の発熱
部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供
給するための配線電極104で構成される電気熱変換体
の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するための
トランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等
の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込ま
れていてもよい。
【0135】また、前述のような素子基板1に設けられ
ている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出する
ためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介し
て図20で示されるような矩形パルスを印加し、配線電
極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施
形態例のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パル
ス幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHz
で加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作に
よって、吐出口から液体であるインクを吐出させた。し
かしながら、駆動信号の条件はこれに限られることな
く、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号で
あればよい。
【0136】<2流路構成のヘッド構造>以下に、第
1、第2の共通液室に異なる液体を良好に分離して導入
でき部品点数の削減を図れ、コストダウンを可能とする
液体吐出ヘッドの構造例について説明する。
【0137】図21は、このような液体吐出ヘッドの構
造を示す模式図であり、先の実施形態例と同じ構成要素
については同じ符号を用いており、詳しい説明はここで
は省略する。
【0138】本実施形態例においては、溝付き部材50
は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複
数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流
路14に共通して連通し、各第1の液流路3に液体(吐
出液)を供給するための第1の共通液室15を構成する
凹部とから概略構成されている。
【0139】この溝付部材50の下側部分に分離壁30
を接合することにより複数の第1液流路14を形成する
ことができる。このような溝付部材50は、その上部か
ら第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を
有している。また、溝付部材50は、その上部から分離
壁30を突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2
の液体供給路21を有している。
【0140】第1の液体(吐出液)は、図21の矢印C
で示すように、第1液体供給路20を経て、第1の共通
液室15、次いで第1の液流路14に供給され、第2の
液体(発泡液)は、図21の矢印Dで示すように、第2
液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2
液流路16に供給されるようになっている。
【0141】本実施形態例では、第2液体供給路21
は、第1液体供給路20と平行して配されているが、こ
れに限ることはなく、第1共通液室15の外側に配され
た分離壁30を貫通して、第2共通液室17に連通する
ように形成されればどのように配されてもよい。
【0142】また、第2液体供給路21の太さ(直径)
に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。
第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、
矩形状等でもよい。
【0143】また、第2共通液室17は、溝付部材50
を分離壁30で仕切ることによって形成することができ
る。形成の方法としては、図22で示す本実施形態例の
分解斜視図のように、素子基板上にドライフィルムで共
通液室枠と第2液路壁を形成し、分離壁を固定した溝付
部材50と分離壁30との結合体と素子基板1とを貼り
合わせることにより第2共通液室17や第2液流路16
を形成してもよい。
【0144】本実施形態例では、アルミニュウム等の金
属で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液
に対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生
する発熱体としての電気熱変換素子が複数設けられた素
子基板1が配されている。
【0145】この素子基板1上には、第2液路壁により
形成された液流路16を構成する複数の溝と、複数の発
泡液流路に連通し、それぞれの発泡液路に発泡液を供給
するための第2共通液室(共通発泡液室)17を構成す
る凹部と、前述した可動壁31が設けられた分離壁30
とが配されている。
【0146】符号50は、溝付部材である。この溝付部
材は、分離壁30と接合されることで吐出液流路(第1
液流路)14を構成する溝と、吐出液流路に連通し、そ
れぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1の共
通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、
第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐
出液供給路)20と、第2の共通液室17に発泡液を供
給するための第2の供給路(発泡液供給路)21とを有
している。第2の供給路21は、第1の共通液室15の
外側に配された分離壁30を貫通して第2の共通液室1
7に連通する連通路に繋がっており、この連通路によっ
て吐出液と混合することなく発泡液を第2の共通液室1
5に供給することができる。
【0147】なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板
50の配置関係は、素子基板1の発熱体に対応して可動
部材31が配置されており、この可動部材31に対応し
て吐出液流路14が配されている。また、本実施形態例
では、第2の供給路を1つ溝付部材に配した例を示した
が、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液供
給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に比
例して決めればよい。
【0148】このような流路断面積の最適化により溝付
部材50等を構成する部品をより小型化することも可能
である。
【0149】以上説明したように本実施形態例によれ
ば、第2液流路に第2液体を供給する第2の供給路と、
第1液流路に第1液体を供給する第1の供給路とが同一
の溝付部材としての溝付天板からなることにより部品点
数が削減でき、工程の短縮化とコストダウンが可能とな
る。
【0150】また第2液流路に連通した第2の共通液室
への、第2液体の供給は、第1液体と第2液体を分離す
る分離壁を突き抜ける方向で第2液流路によって行なわ
れる構造であるため、前記分離壁と溝付部材と発熱体形
成基板との貼り合わせ工程が1度で済み、作りやすさが
向上すると共に、貼り合わせ精度が向上し、良好に吐出
することができる。
【0151】また、第2液体は、分離壁を突き抜けて第
2液体共通液室へ供給されるため、第2液流路に第2液
体の供給が確実となり、供給量が十分確保できるため、
安定した吐出が可能となる。
【0152】<吐出液体、発泡液体>先の実施形態例で
説明したように本発明においては、前述のような可動部
材を有する構成によって、従来の液体吐出ヘッドよりも
高い吐出力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出するこ
とができる。本実施形態例の内、発泡液と吐出液とに同
じ液体を用いる場合には、発熱体から加えられる熱によ
って劣化せずに、また加熱によって発熱体上に堆積物を
生じにくく、熱によって気化、凝縮の可逆的状態変化を
行うことが可能であり、さらに液流路や可動部材や分離
壁等を劣化させない液体であれば種々の液体を用いるこ
とができる。
【0153】このような液体の内、記録を行う上で用い
る液体(記録液体)としては従来のバブルジェット装置
で用いられていた組成のインクを用いることができる。
【0154】一方、本発明の2流路構成のヘッドを用
い、吐出液と発泡液を別液体とした場合には、発泡液と
して前述のような性質の液体を用いればよく、具体的に
は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ
プロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オク
タン、トルエン、キシレン、二塩化メチレン、トリクレ
ン、フレオンTF、フレオンBF、エチルエーテル、ジ
オキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、
アセトン、メチルエチルケトン、水等およびこれらの混
合物が挙げられる。
【0155】吐出液としては、発泡性の有無、熱的性質
に関係なく様々な液体を用いることができる。また、従
来吐出が困難であった発泡性が低い液体、熱によって変
質、劣化しやすい液体や高粘度液体等であっても利用で
きる。
【0156】ただし、吐出液の性質として吐出液自身、
又は発泡液との反応によって、吐出や発泡また可動部材
の動作等を妨げるような液体でないことが望まれる。
【0157】記録用の吐出液体としては、高粘度インク
等をも利用することができる。その他の吐出液体として
は、熱に弱い医薬品や香水等の液体を利用することもで
きる。
【0158】本発明においては、吐出液と発泡液の両方
に用いることができる記録液体として以下のような組成
のインクを用いて記録を行ったが、吐出力の向上によっ
てインクの吐出速度が高くなったため、液滴の着弾精度
が向上し非常に良好な記録画像を得ることができた。
【0159】 染料インク(粘度2cps)の組成 (C.I.フードブラック2)染料 3重量% ジエチレングリコール 10重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 5重量% 水 77重量% また、発泡液と吐出液に以下で示すような組成の液体を
組み合わせて吐出させて記録を行った。その結果、従来
のヘッドでは吐出が困難であった十数cps粘度の液体
はもちろん150cPという非常に高い粘度の液体でさ
えも良好に吐出でき、高画質な記録物を得ることができ
た。
【0160】 発泡液1の組成 エタノール 40重量% 水 60重量% 発泡液2の組成 水 100重量% 発泡液3の組成 イソプロピルアルコール 10重量% 水 90重量% 吐出液1顔料インク(粘度約15cps)の組成 カーボンブラック 5重量% スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1重量% (酸価140、重量平均分子量8000) モノエタノールアミン 0.25重量% グリセリン 69重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 3重量% 水 16.75重量% 吐出液2(粘度55cps)の組成 ポリエチレングリコール200 100重量% 吐出液3(粘度150cps)の組成 ポリエチレングリコール600 100重量% ところで、前述したような従来吐出されにくいとされて
いた液体の場合には、吐出速度が低いために、吐出方向
性のバラツキが助長され記録紙上のドットの着弾精度が
悪く、また吐出不安定による吐出量のバラツキが生じこ
れらのことで、高品位画像が得にくかった。しかし、上
述の実施形態例の構成においては、気泡の発生を発泡液
を用いることで充分に、しかも安定して行うことができ
る。このことで、液滴の着弾精度向上とインク吐出量の
安定化を図ることができ記録画像品位を著しく向上する
ことができた。
【0161】<液体吐出装置>図23は、前述の液体噴
射ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示してい
る。本実施例では特に吐出液体としてインクを用いたイ
ンク吐出記録装置を用いて説明する液体吐出装置のキャ
リッジHCは、インクを収容する液体タンク部90と液
体吐出ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリッ
ジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される記
録紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。
【0162】不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ
上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号
に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液
体が吐出される。
【0163】また、本実施例の液体吐出装置において
は、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための
駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャ
リッジに伝えるためのギア112、113キャリッジ軸
115等を有している。この記録装置及びこの記録装置
で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対し
て液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ること
ができた。
【0164】図24は、本発明の液体吐出方法および液
体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録を動作させるた
めの装置全体のブロック図である。
【0165】記録装置は、ホストコンピュータ300よ
り印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装
置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると
同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘ
ッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力され
る。CPU302はROM303に保存されている制御
プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデ
ータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、
印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0166】またCPU302は前記画像データを記録
用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同
期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モー
タを駆動するための駆動データを作る。画像データおよ
びモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、
モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動
モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミン
グで駆動され画像を形成する。
【0167】また、本装置は、図12で説明したように
CPUが所定タイミングでROM1003に格納される
各吐出口毎の吐出量情報を読み出し、この情報に基づい
た信号を供給する。
【0168】上述のような記録装置に適用でき、インク
等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、各種の
紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用
いられるプラスチック材、布帛、アルミニュウムや銅等
の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板
等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ
等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0169】また上述の記録装置として、各種の紙やO
HPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパ
クトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチ
ック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、
皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木
材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミック
ス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して
記録を行う記録装置、又布帛に記録を行う捺染装置等を
も含むものである。
【0170】またこれらの液体吐出装置に用いる吐出液
としては、夫々の被記録媒体や記録条件に合わせた液体
を用いればよい。
【0171】<記録システム>次に、本発明の液体吐出
ヘッドを記録ヘッドとして用い被記録媒体に対して記録
を行う、インクジェット記録システムの一例を説明す
る。
【0172】図25は、前述した本発明の液体吐出ヘッ
ド201を用いたインクジェット記録システムの構成を
説明するための模式図である。本実施例における液体吐
出ヘッドは、被記録媒体150の記録可能幅に対応した
長さに360dpiの間隔で吐出口を複数配したフルラ
イン型のヘッドであり、イエロー(Y),マゼンタ
(M),シアン(C),ブラック(Bk)の4色に対応
した4つのヘッドをホルダ202によりX方向に所定の
間隔を持って互いに平行に固定支持されている。
【0173】これらのヘッドに対してそれぞれ駆動信号
供給手段を構成するヘッドドライバ307から信号が供
給され、この信号に基づいて各ヘッドの駆動が成され
る。
【0174】各ヘッドには、吐出液としてY,M,C,
Bkの4色のインクがそれぞれ204a〜204dのイ
ンク容器から供給されている。なお、符号204eは発
泡液が蓄えられた発泡液容器であり、この容器から各ヘ
ッドに発泡液が供給される構成になっている。
【0175】また、各ヘッドの下方には、内部にスポン
ジ等のインク吸収部材が配されたヘッドキャップ203
a〜203dが設けられており、非記録時に各ヘッドの
吐出口を覆うことでヘッドの保守を成すことができる。
【0176】符号206は、先の各実施例で説明したよ
うな各種、非記録媒体を搬送するための搬送手段を構成
する搬送ベルトである。搬送ベルト206は、各種ロー
ラにより所定の経路に引き回されており、モータドライ
バ305に接続された駆動用ローラにより駆動される。
【0177】本実施例のインクジェット記録システムに
おいては、記録を行う前後に被記録媒体に対して各種の
処理を行う前処理装置251および後処理装置252を
それぞれ被記録媒体搬送経路の上流と下流に設けてい
る。
【0178】前処理と後処理は、記録を行う被記録媒体
の種類やインクの種類に応じて、その処理内容が異なる
が、例えば、金属、プラスチック、セラミックス等の被
記録媒体に対しては、前処理として、紫外線とオゾンの
照射を行い、その表面を活性化することでインクの付着
性の向上を図ることができる。また、プラスチック等の
静電気を生じやすい被記録媒体においては、静電気によ
ってその表面にゴミが付着しやすく、このゴミによって
良好な記録が妨げられる場合がある。このため、前処理
としてイオナイザ装置を用い被記録媒体の静電気を除去
することで、被記録媒体からごみの除去を行うとよい。
また、被記録媒体として布帛を用いる場合には、滲み防
止、先着率の向上等の観点から布帛にアルカリ性物質、
水溶性物質、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチ
オ尿素から選択される物質を付与する処理を前処理とし
て行えばよい。前処理としては、これらに限らず、被記
録媒体の温度を記録に適切な温度にする処理等であって
もよい。
【0179】一方、後処理は、インクが付与された被記
録媒体に対して熱処理、紫外線照射等によるインクの定
着を促進する定着処理や、前処理で付与し未反応で残っ
た処理剤を洗浄する処理等を行うものである。
【0180】なお、本実施例では、ヘッドとしてフルラ
インヘッドを用いて説明したが、これに限らず、前述し
たような小型のヘッドを被記録媒体の幅方向に搬送して
記録を行う形態のものであってもよい。
【0181】
【発明の効果】上述したように、可動部材を用いる新規
な吐出原理に基づく本発明の液体吐出方式、ヘッド等に
よると、発生する気泡とこれによって変位する可動部材
との相乗効果を得ることができ、吐出口近傍の液体を効
率よく吐出できるため、従来のバブルジェット方式の吐
出方式、ヘッド等に比べて吐出効率を向上できる。
【0182】このような新規な液体吐出ヘッドに対し
て、前述のように各発熱体毎もしくは複数の発熱体毎に
駆動信号を選択することで製造誤差によるインク吐出量
のむらを低減することができるだけでなく、ヘッド自体
に吐出量のむらが生じている場合であっても、インク吐
出量の補正範囲が広いため、従来では補正できなかった
ような濃度むらをも補正することができる。そして、こ
のことにより適切に液体吐出を行うことができる。
【0183】また、さらに特徴的な構成によれば、低温
や低湿で長期放置を行った場合であっても不吐出になる
ことを防止でき、仮に不吐出になっても予備吐出や吸引
回復といった回復処理をわずかに行うだけで正常状態に
即座に復帰できる利点もある。これに伴い、回復時間の
短縮や回復による液体の損失を低減でき、ランニングコ
ストも大幅に下げることが可能である。
【0184】また、リフィル特性を向上した構成によれ
ば、連続吐出時の応答性、気泡の安定成長、液滴の安定
化を達成して、高速液体吐出による高速記録また高画質
記録を可能にすることができた。
【0185】また、2流路構成のヘッドにおいて発泡液
として、発泡しやすい液体や、発熱体上への堆積物(こ
げ等)が生じにくい液体を用いることで、吐出液の選択
の自由度が高くなり、発泡が生じにくい高粘性液体、発
熱体上に体積物を生じやすい液体等、従来のバブルジェ
ット吐出方法で吐出することが困難であった液体につい
ても良好に吐出することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の液体吐出ヘッドの液流路構造を説明する
ための図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッ
ドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す模式断面
図である。
【図4】本発明の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図であ
る。
【図5】従来のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示
す模式図である。
【図6】本発明のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を
示す模式図である。
【図7】本発明の液体の流れを説明するための模式図で
ある。
【図8】ダブルパルスのプレパルス変調による吐出量の
変化を本発明の一実施形態に係るヘッドと従来のヘッド
について比較して示す線図である。
【図9】ダブルパルスの休止期間を変調した場合の吐出
量の変化を同様に示す線図である。
【図10】上記ダブルパルスの波形を模式的に示す図で
ある。
【図11】本発明の一実施形態に係るプレヒートパルス
のパルス幅変調によるビット補正のための構成を示すブ
ロック図である。
【図12】図11に示すドライバ回路およびプレヒート
選択回路の詳細を示す回路図である。
【図13】本発明の他の実施例における液体吐出ヘッド
(2流路)の断面図である。
【図14】本発明の他の実施例における液体吐出ヘッド
の部分破断斜視図である。
【図15】可動部材の動作を説明するための図である。
【図16】可動部材と第1液流路の構造を説明するため
の図である。
【図17】可動部材と液流路の構造を説明するための図
である。
【図18】可動部材の他の形状を説明するための図であ
る。
【図19】本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図である。
【図20】駆動パルスの形状を示す模式図である。
【図21】本発明の液体吐出ヘッドの供給路を説明する
ための断面図である。
【図22】本発明のヘッドの分解斜視図である。
【図23】液体吐出装置の概略構成図である。
【図24】装置ブロック図である。
【図25】液体吐出記録システムを示す図である。
【符号の説明】
1 素子基板 1d ドライバ回路 1S プレヒート選択回路 2 発熱体 10 液流路 11 気泡発生領域 12 供給路 13 共通液室 14 第1液流路 15 第1共通液室 16 第2液流路 17 第2共通液室 18 吐出口 19 狭窄部 20 第1供給路 21 第2供給路 22 第1液流路壁 23 第2液流路壁 24 凸部 30 分離壁 31 可動部材

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体を吐出する複数の吐出口と、該吐出
    口のそれぞれに連通する液流路と、該液流路内に位置し
    液体に気泡を発生させるための発熱体が配された気泡発
    生領域と、この気泡発生領域に面して配され、支点に対
    して前記吐出口に近い側に自由端が配された可動部材と
    を有する液体吐出ヘッドと、 前記発熱体のそれぞれもしくは複数ごとに発熱体に与え
    る駆動信号の種類を選択するための選択手段と、 を有することを特徴とする液体吐出装置。
  2. 【請求項2】 前記可動部材に対面して発熱体が設けら
    れており、該発熱体と前記可動部材との間が気泡発生領
    域であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装
    置。
  3. 【請求項3】 前記発熱体は前記駆動信号の供給を受け
    ることで発熱する電気熱変換体であることを特徴とする
    請求項2に記載の液体吐出装置。
  4. 【請求項4】 前記駆動信号の種類を選択することは、
    前記電気熱変換体に対して供給される駆動信号の印加時
    間の長さを選択することであることを特徴とする請求項
    3に記載の液体吐出装置。
  5. 【請求項5】 前記液体吐出ヘッドには、複数種の幅の
    駆動信号が供給され、前記選択手段は各電気熱変換体毎
    に、複数種の幅の駆動信号から一つを選択する手段であ
    ることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
  6. 【請求項6】 前記液体吐出ヘッドは装置に固定されて
    使用されるヘッドであることを特徴とする請求項1に記
    載の液体吐出装置。
  7. 【請求項7】 前記駆動信号は、第1のパルスと第2の
    パルスとこれらのパルス間に配された休止時間を持つダ
    ブルパルス信号であることを特徴とする請求項5に記載
    の液体吐出装置。
  8. 【請求項8】 前記複数種の幅の駆動信号は前記第1の
    パルスのパルス幅と、休止時間の幅の違いによって種類
    が分かれることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出
    装置。
  9. 【請求項9】 前記液流路は、前記吐出口に連通する第
    1の液流路と前記気泡発生領域を有する第2の液流路と
    を有し、前記可動部材は前記第1の液流路と前記第2の
    液流路との間に配置されていることを特徴とする請求項
    1に記載の液体吐出装置。
  10. 【請求項10】 前記気泡は、発熱体が発生した熱が液
    体に伝わることで、液体に膜沸騰現象を生じさせ、該膜
    沸騰現象によって発生した気泡であることを特徴とする
    請求項1に記載の液体吐出装置。
  11. 【請求項11】 前記発熱体の全面が前記可動部材に面
    していることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装
    置。
  12. 【請求項12】 前記可動部材は前記第1の液流路と第
    2の液流路との間に配された分離壁の一部として構成さ
    れていることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装
    置。
  13. 【請求項13】 前記第1の液流路に供給される液体と
    前記第2の液流路に供給される液体とが同じ液体である
    ことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
  14. 【請求項14】 前記第1の液流路に供給される液体と
    前記第2の液流路に供給される液体とが異なる液体であ
    ることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
  15. 【請求項15】 前記液体吐出ヘッドから液体を吐出さ
    せるための駆動信号を供給する駆動信号供給手段をさら
    に有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装
    置。
  16. 【請求項16】 前記液体吐出ヘッドから吐出された液
    体を受ける被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段を
    さらに有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐
    出装置。
  17. 【請求項17】 前記吐出口が被記録媒体の記録可能領
    域の全幅に渡って、複数配されていることを特徴とする
    請求項1に記載の液体吐出装置。
  18. 【請求項18】 請求項1に記載の液体吐出装置と、記
    録後の被記録媒体に対して、前記液体の定着を促す後処
    理装置と、を有することを特徴とする記録システム。
  19. 【請求項19】 請求項1に記載の液体吐出装置と、記
    録前の被記録媒体に対して、前記液体の定着を増すため
    の前処理装置と、を有することを特徴とする記録システ
    ム。
  20. 【請求項20】 液体を吐出する複数の吐出口と、該吐
    出口のそれぞれに連通する液流路と、該液流路内に位置
    し液体に気泡を発生させるための発熱体が配された気泡
    発生領域と、この気泡発生領域に面して配され、支点に
    対して前記吐出口に近い側に自由端が配された可動部材
    とを有する液体吐出ヘッドを用い、 前記発熱体のそれぞれもしくは複数ごとに発熱体に与え
    る駆動信号の種類を選択し、選択された駆動信号に基づ
    いて前記気泡発生領域に気泡を発生させることを特徴と
    する液体吐出方法。
  21. 【請求項21】 前記可動部材に対面して発熱体が設け
    られており、該発熱体と前記可動部材との間が気泡発生
    領域であることを特徴とする請求項20に記載の液体吐
    出方法。
  22. 【請求項22】 前記発熱体は電気信号の供給を受ける
    ことで発熱する電気熱変換体であることを特徴とする請
    求項21に記載の液体吐出方法。
  23. 【請求項23】 前記駆動信号の種類を選択すること
    は、前記電気熱変換体に対して供給される駆動信号の印
    加時間の長さを選択することを特徴とする請求項22に
    記載の液体吐出方法。
  24. 【請求項24】 前記液体吐出ヘッドには、複数種の幅
    の駆動信号が供給され、各電気熱変換体毎に複数種の幅
    の電気信号から一つを選択することを特徴とする請求項
    23に記載の液体吐出方法。
  25. 【請求項25】 前記駆動信号は、第1のパルスと第2
    のパルスとこれらのパルス間に配された休止時間を持つ
    ダブルパルス信号であることを特徴とする請求項24に
    記載の液体吐出方法。
  26. 【請求項26】 前記複数種の幅の駆動信号は前記第1
    のパルスのパルス幅と、休止時間の幅の違いによって種
    類が分かれることを特徴とする請求項25に記載の液体
    吐出方法。
  27. 【請求項27】 前記気泡は、発熱体が発生した熱が液
    体に伝えることで、液体に膜沸騰現象を生じさせ、該膜
    沸騰現象によって発生した気泡であることを特徴とする
    請求項20に記載の液体吐出方法。
  28. 【請求項28】 前記発熱体の全面が前記可動部材に面
    していることを特徴とする請求項21に記載の液体吐出
    方法。
JP18366596A 1996-06-07 1996-07-12 液体吐出装置および液体吐出方法 Pending JPH1024586A (ja)

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EP97303927A EP0811490B1 (en) 1996-06-07 1997-06-06 Liquid ejection method and apparatus
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