JPH10244482A - ロボット制御装置 - Google Patents

ロボット制御装置

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JPH10244482A
JPH10244482A JP4947497A JP4947497A JPH10244482A JP H10244482 A JPH10244482 A JP H10244482A JP 4947497 A JP4947497 A JP 4947497A JP 4947497 A JP4947497 A JP 4947497A JP H10244482 A JPH10244482 A JP H10244482A
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electric current
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克弘 小室
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ロボットの外力に対する柔軟度合いを一定と
し、安定した従動動作が可能なロボット制御装置を提供
することを目的とする。 【解決手段】重力トルク値に基づいてサーボモータに供
給する電流の制限値が決定されるため、ロボットのその
時の姿勢を維持するのに最低必要なトルク(電流値)を
基準として制限値を設定することができる。従って、ロ
ボットの従動動作中にロボットの姿勢が変化しても各姿
勢に対応した制限値となるため、外力の方向に関係なく
柔軟度合いを一定にでき、従動動作を安定したものにで
きる。また、ロボットの姿勢を維持するのに必要なトル
クは常に確保されるため、電流制限を作用させた時に、
トルクが不足してロボットの姿勢が変化することはな
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外力に対してロボ
ットが従動的に動作するロボットの制御装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、ロボットが作業する際にワークま
たは加工機側からロボットに対して外力が作用する場合
がある。このような場合、ロボットをその外力に追従す
るように同期制御を行うか、ハンド部に弾性部材等を有
するフローティングブラケットを取り付けて、機械的に
外力を逃がす手段が行われていた。
【0003】しかし、上記した同期制御の場合には制御
プログラムが複雑になり、フローティングブラケットの
場合には、コスト高になるという欠点がある。このため
特開平2−145278号に開示されているようなロボ
ットの各軸を駆動するサーボモータに供給する電流を制
限する方法が行われている。この技術は、サーボモータ
に供給する最大電流を通常よりも低く制限することによ
って、ロボットにその最大電流よりも大きな電流を必要
とする負荷が作用すると、ロボットはその負荷に負け柔
軟な状態になることを利用して、ロボットを外力に対し
て従動させるようにしたものである。この電流制限を用
いることによって、簡単な方法で外力に対するロボット
の従動動作を実現することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来の
電流制限は、図12に示すようにサーボモータのトルク
(電流値)0を基準としてプラス、マイナス両方向にα
%という形式で設定されている。しかし、ロボットのあ
る動作に対して電流制限を行う場合、各サーボモータレ
ベルで見た場合の電流値の変化は、必ずしもトルク0を
中心として変化するわけではない。このため、例えばロ
ボットの特定の動作における外力が作用しない状態での
あるサーボモータの電流指令値の変化が図12の曲線L
1で示すように不規則に変動するものである場合、電流
指令値に対する電流制限幅は、プラス方向にd1、マイ
ナス方向にd2となり、異なったものとなる。これは方
向によって、ロボットが外力に耐え得る力が異なること
になり、柔軟度合いが一定にならないという問題があ
る。
【0005】また、曲線L1の二点鎖線部分で示すよう
にロボットの姿勢を維持するのに必要なトルクが、既に
電流制限幅を越えている状態で電流制限を作用させた場
合、トルクの不足分d3だけロボットの姿勢が外力に関
係なく重力に負けて変化してしまうという問題があっ
た。本発明は以上述べた問題を解決するためになされた
ものであり、ロボットの外力に対する柔軟度合いを一定
とし、安定した従動動作が可能なロボット制御装置を提
供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ための請求項1に記載された手段は、サーボモータによ
って駆動される複数の軸を備えたロボットを制御するロ
ボット制御装置において、前記ロボットの姿勢に応じた
重力トルク値を演算する演算手段と、この演算手段によ
って演算された前記重力トルク値に基づいて前記サーボ
モータに供給する電流の制限値を決定する制限値決定手
段と、この制限値決定手段によって決定された制限値内
に前記サーボモータに供給する電流を制限して前記サー
ボモータを駆動する電流制限手段とを備えたものであ
る。
【0007】請求項2に記載された手段は、請求項1に
記載のロボット制御装置おいて、前記演算手段は、前記
重力トルク値と共に前記ロボットの加速度トルク値を演
算し、前記制限値決定手段は、前記重力トルク値と前記
加速度トルク値に基づいて前記サーボモータに供給する
電流の制限値を決定し、前記電流制限手段は、前記重力
トルク値と前記加速度トルク値に基づいた制限値内に前
記サーボモータに供給する電流を制限するものである。
【0008】請求項3に記載された手段は、外部装置か
らロボットに作用する外力に対して前記ロボットを従動
的に動作させる従動動作手段を備えたロボット制御装置
において、外力に対して前記ロボットを移動させる方向
を記憶する移動方向記憶手段と、前記従動動作手段によ
って前記ロボットが従動動作を行う間、前記移動方向記
憶手段に記憶された移動方向と直交する方向に前記ロボ
ットが移動した誤差量を検出する誤差量検出手段と、こ
の誤差量検出手段によって検出された誤差量があらかじ
め設定された設定範囲以内かを判別する判別手段と、こ
の判別手段によって前記誤差量が前記設定範囲より外れ
る場合、前記移動方向記憶手段に記憶された移動方向に
基づいて前記ロボットの従動動作を補正する動作補正手
段とを備えたものである。 (作用)請求項1において、演算手段はロボットの姿勢
に応じた重力トルク値を演算し、制限値決定手段はこの
重力トルク値に基づいてサーボモータに供給する電流の
制限値を決定する。そして、電流制限手段は、この制限
値内にサーボモータに供給する電流を制限する。このた
め制限値以上の電流が必要な外力がロボットに作用した
時には、ロボットは外力に対して柔軟に従動する状態と
なる。
【0009】請求項2では、請求項1の重力トルクに加
えて加速度トルク値も考慮して電流の制限値が決定され
る。請求項3において、従動動作手段によって、ロボッ
トが外力に対して従動的に動作している間、誤差量検出
手段は移動方向記憶手段に記憶された移動方向と直交す
る方向にロボットが移動した誤差量を検出し、この誤差
量があらかじめ設定された設定範囲から外れることが判
別手段によって判別された場合には、動作補正手段によ
り移動方向記憶手段に記憶された移動方向に基づいてロ
ボットの従動動作が補正される。従って、ロボットの従
動動作があらかじめ定められた方向から一定値以上ずれ
た場合のみ移動方向が補正される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面
を参照して説明する。図1は本実施の形態の全体構成を
示した図である。図1において10は6軸垂直多関節ロ
ボット、30は搬出装置31(外部装置)を備えたダイ
キャストマシン、40はダイキャストマシン30から搬
出したワークWを載置する載置台である。
【0011】ロボット10は、固定ベース27上にロー
テータ11(1軸)が鉛直な軸線を中心に水平面内で回
転自在に支持され、ローテータ11上には、第1アーム
12(2軸)が水平な軸線を中心に揺動自在に支持され
ている。この第1アーム12には第2アーム13(3
軸)が水平な軸線を中心に揺動自在に支持されている。
また、ローテータ11上には、水平な軸線を中心に揺動
自在に第1リンク18が支持されており、この第1リン
ク18と第2アーム13の末端が第2リンク19で連結
されいる。従って、第2アーム13は、第1リンク18
が駆動されることによって揺動するようになっている。
【0012】第2アーム13の先端部には、4軸、5
軸、6軸を備える手首部14が回動可能に支持されてい
る。手首部14の先端のフランジには、一対の把持爪1
7a(図5参照)を有するハンド17が取り付けられて
いる。ダイキャストマシン30は、鋳造されたワークW
をガイド37に沿って搬出する搬出装置31を備えてい
る。搬出装置31は、図略のシリンダによって駆動され
るものであり、ワークWの搬出を開始する位置(後退
端)にあることを検出するリミットスイッチ35と、搬
出装置31がワークWの搬出を完了する位置(前進端)
にあることを検出するリミットスイッチ36を備えてい
る。
【0013】次に図2に基づいてロボット10の制御装
置の主な構成について説明する。図2において80は中
央処理装置(CPU)である。この中央処理装置80に
は、メモリ81、各軸に対応するサーボユニット91〜
96およびティーチングボックス70が接続されてい
る。サーボユニット91〜96はそれぞれサーボCPU
とメモリを備えており、中央処理装置80から出力され
る指令回転角信号θ1〜θ6、重力トルク値Gf1〜G
f6、イナーシャ値JL1〜JL6等に基づいて、ロボ
ット10が有する1軸から6軸を駆動するためのサーボ
モータM1〜M6を制御する。各サーボモータM1〜M
6に連結されたエンコーダE1〜E6の出力α1〜α6
は中央処理装置80およびサーボユニット91〜96に
入力しており、中央処理装置80による各軸の重力トル
ク値およびイナーシャ値の演算とサーボユニット91〜
96による位置フィードバック制御および速度フィード
バック制御等に用いられる。
【0014】メモリ81はロボット10の動作プログラ
ムを記憶するプログラムエリアや、教示点等の加工に必
要なデータを記憶する加工データエリア、エンコーダE
1〜E6の出力α1〜α6等を記憶する制御データエリ
ア等を備えている。ティーチングボックス70は、ロボ
ットの教示作業や、動作プログラムを入力するためのも
のであり、動作プログラム等を表示するディスプレイ7
0aと、ロボット10に対する動作指令や、動作プログ
ラム等の入力を行うキーボード70bを備えている。
【0015】また、中央処理装置80は、ダイキャスト
マシン30の制御装置37からの出力信号を入力するよ
うになっている。この出力信号には、搬出装置31に設
けられたリミットスイッチ35,36の出力信号等があ
る。上記サーボユニット91〜96は、図3に示す回路
の機能をディジタル制御によって達成するものである。
即ち、サーボユニット91〜96は、位置ループ40
1、速度ループ402を備えると共に、重力トルクフィ
ードフォワード405、加速度トルクフィードフォワー
ド406、速度フィードフォワード407を備えてい
る。重力トルクフィードフォワード405および加速度
トルクフィードフォワード406は、速度ループ402
後の指令値に入力され、速度フィードフォワード407
は、位置ループ401後の指令値に入力されるようにな
っている。
【0016】また、速度ループ402に重力トルクフィ
ードフォワード405および加速度トルクフィードフォ
ワード406が入力された後には、電流制限部403が
設けられており、この電流制限部403で定められた電
流指令値は、アンプ部404に出力されるようになって
いる。後述するように電流制限部403は、重力トルク
フィードフォワード405の重力トルク値Gfに基づい
て電流制限値を決定するようになっている。
【0017】以上の構成に基づいて本実施の形態の作用
を説明する。図4に示すように本実施の形態では、ロボ
ット10は初期位置P0(図略)から移動を開始し、P
1の位置においてダイキャストマシン30から搬出され
たワークWを把持する。そして搬出装置31の搬出動作
に従動しながら搬出装置31が搬出を完了する搬出完了
点P1’までワークWを把持し続ける。この従動動作に
おいて本実施の形態の特徴部分である後述する電流制限
が実行される。また、従動動作をより安定的なものとす
るため、従動動作時にロボットの動作軌跡を補正する補
正演算が行われる。
【0018】ロボット10は、搬出が完了したP1’の
位置から載置台40上の位置P2にワークWを移載した
後、初期位置P0に復帰して1サイクルを終了する。以
上の動作において、上記P0,P1,P2の位置におけ
るロボット10の位置および姿勢が教示点データとして
メモリ81に記憶されている。この教示点データは作業
者があらかじめティーチングボックス70により教示す
るものである。なお、本実施の形態では、ティーチング
をより容易とするために、位置P1’は教示点とせず、
単にロボット10が搬出装置31の動作に従動して移動
する位置となっているが、教示点として記憶しておくこ
とも可能である。
【0019】また、作業者は、ハンド17の位置および
姿勢の基準となる工具座標系をあらかじめ設定しておく
必要ある。本実施の形態の場合、工具座標系は図5に示
すようにハンド17が有する2つの把持爪17aの中間
に座標原点PTが設定され、この座標原点PTに対して
3つの姿勢ベクトルが設定されている。即ち、ハンド1
7がワークWに接近する方向を示すアプローチベクトル
Aは、ハンド17がワークWに取り付けられている突設
部Waを把持した時、搬出装置31がワークWを搬出す
る方向Awと平行な方向となるように設定されている。
ただし、図5の場合、アプローチベクトルAとワークW
の搬出方向Awとは逆向きとなる。また、一方の把持爪
17aから他方の把持爪17aに向かう方向にオリエン
トベクトルO、アプローチベクトルAとオリエントベク
トルOの両者に直交し、右手系をなす方向にノーマルベ
クトルNが設定されている。
【0020】次に図6に示すフローチャートにより本実
施の形態の全体の流れを説明する。動作開始時のステッ
プ100おいてロボット10は、初期位置P0に位置し
ている。ステップ102においてダイキャストマシン3
0の加工が終了し、搬出装置31のリミットスイッチ3
5がONとなり、ワークWが搬出開始位置に設置された
ことが検出されると、ステップ104に移行し、ロボッ
ト10は教示点P1に移動して、ワークWの突設部Wa
を把持する。
【0021】ロボット10に設置された図略のリミット
スイッチがONとなり、ワークWの把持が完了すると、
ステップ106においてロボット10は、従動動作モー
ドとなる。従動動作モードが開始されると、ロボット1
0のモータM1〜M6に対する最大電流の制限幅が後述
する通常の制限幅より低減された電流制限状態となる。
この電流制限については後に図7,8にて詳述する。こ
の電流制限によって、ロボット10は搬出装置31から
の外力によって従動的に変位可能となる。なお、本実施
の形態では6軸全てに対して電流制限を行っているが、
従動動作に関与しない軸がある場合は必ずしも全ての軸
に電流制限を行う必要はない。
【0022】ロボット10がワークWを把持したことに
対応して、搬出装置31がワークWの搬出動作を開始す
ると、ステップ108では、従動動作モードとなったロ
ボット10が搬出装置31の搬出方向に沿って滑らかに
移動するように補正演算を行う。この補正演算について
は後に図9,10によって詳述する。ステップ110で
は、搬出装置31のリミットスイッチ36がONとな
り、ワークWの搬出動作が完了すると、従動動作モード
から通常の動作を実行する通常モードに変更する。即
ち、モータM1〜M6に対する電流制限状態を解除し、
電流の制限幅を通常の状態とする。この後、ステップ1
12に移行し、ロボット10は現在位置P1’から載置
台40上の教示点P2までワークWを移載する。これに
より一連のワークWの取り出し作業は終了し、ステップ
114に移行して、ロボット10は初期位置P0に戻
り、動作を終了する(ステップ116)。
【0023】次に上記した電流制限について説明する。
本実施の形態は、従来サーボモータのトルク0を基準に
設定されていた電流制限幅を、サーボユニット91〜9
6の制御で使用するために中央処理装置80が逐次演算
する重力トルク値Gfを利用して、この重力トルク値を
基準に電流制限幅を設定するものである。まず重力トル
ク値Gfの求め方の概要について説明する。
【0024】各軸の重力トルク値Gf1〜Gf6は、ロ
ボット10をモデル化することによって以下のように求
められる。なお、1軸の重力トルク値Gf1は0となる
理由は、ロボット10を床面に設置した場合、1軸は床
面に対して垂直な軸となり重力トルクが作用しないため
である。 Gf1=0 Gf2=g1・m1 +g4・m4+R1(m2+m3+
m6)+g6・m6 Gf3=g2・m2+g3・m3−g5・m5+g6・
m6 Gf4=−g3・m3−g6・m6 Gf5=g3・m3+g6・m6 Gf6=g6・m6 ただし、 g1:1軸から第1アーム12の重心までの水平距離 g2:2軸から第2アーム13の重心までの水平距離 g3:手首部軸心(4軸、5軸)から手首部14重心ま
での水平距離 g4:第2リンク19軸心より第2リンク19の重心ま
での水平距離 g5:第1リンク18軸心より第1リンク18の重心ま
での水平距離 g6:6軸よりハンド17の重心までの水平距離 R1:第1アーム12の長さ m1:第1アーム12の質量 m2:第2アーム13の質量 m3:手首部14の質量 m4:第2リンク19の質量 m5:第1リンク18の質量 m6:ハンド17の質量 なお、g1からg6はロボット10の姿勢に応じて変化
する変数である。
【0025】次に図7により補間周期毎に各サーボユニ
ット91〜96にて実行される各軸における電流制限部
403の作用を説明する。ステップ200で電流制限部
403が実行される。この時、電流制限部403には、
上記式に基づいて中央処理装置80において演算された
ロボット10の現在の姿勢に対応した重力トルク値Gf
と、重力トルクフィードフォワード405および加速度
フィードフォワード406が入力された速度ループ40
2からの電流指令値Ioが入力されている。なお、重力
トルク値Gfは電流指令値に換算された値となってい
る。
【0026】ステップ202では、現在が従動動作モー
ドであるか通常モードであるかを判別する。上記したス
テップ106で従動動作モードに設定されている場合は
(YES)、ステップ204に移行して重力トルク値G
fを基準とした電流制限を行う。また、通常モードに設
定されている場合は(NO)、従来のサーボモータのト
ルク0を基準とした通常の電流制限を行うため、ステッ
プ216に移行する。
【0027】従動動作モードでは、ステップ204にて
電流指令値Ioが電流制限の上限値を越えていないかを
判断する。この上限値は、重力トルク値Gfを基準とし
て設定されてGf+dとなり、制限幅dは後述する通常
モードの制限幅Imax,Iminより小さい値に設定
されている。このステップ204において、電流指令値
Ioが電流制限の上限値Gf+dを越えていないならば
(YES)、ステップ208に移行する。また、電流指
令値Ioが電流制限の上限値Gf+dを越えているなら
ば(NO)、ステップ206に移行して、電流指令値I
oを上限値Gf+dとし、ステップ212に移行する。
【0028】ステップ208では、電流指令値Ioが電
流制限の下限値を下回っていないかを判断する。電流制
限の下限値は、上限値と同様に重力トルク値Gfを基準
として設定され、Gf−dとなる。電流指令値Ioが下
限値Gf−dを下回っていないならば(YES)、ステ
ップ212に移行する。また、電流指令値Ioが電流制
限の上限値Gf−diを越えているならば(NO)、ス
テップ210に移行して、電流指令値Ioを下限値Gf
−diとし、ステップ212に移行する。
【0029】ステップ212では、ステップ206から
210で決定した電流指令値Ioをアンプ部404に出
力し、電流制限部の作用を終了する(ステップ21
4)。一方、ステップ216以降の通常モードの場合
は、上記したように電流制限幅がトルク0を基準とした
上限値Imaxと下限値Iminに設定される点が異な
るのみで基本的を流れは同じであるため説明を省略す
る。
【0030】以上の過程によって、電流指令値Ioは、
ロボットの姿勢に対応した重力トルク値Gfを基準とし
て電流が制限され、この制限幅を越える電流値を必要と
する外力がロボット10に作用した場合には、ロボット
10は柔軟な状態となる。図8は、あるサーボユニット
におけるロボット10が教示点P1から搬出完了点P
1’まで従動動作する時の電流制限の様子を示したもの
である。曲線L2は、ロボット10のモデルより中央処
理装置80が演算した重力トルク値Gfの変化を示した
ものであり、曲線L2−1,L2−2は、曲線L2の重
力トルク値Gfに基づいて設定された制限幅の上限値お
よび下限値の変化を示したものである。また、曲線L3
は実際にロボット10を教示点P1から搬出完了点P
1’まで外力を作用させずに移動させた場合に出力され
た電流指令値の変化を示したものである。これから判る
ように、制限幅を実際のロボット10の電流変化にほぼ
対応して設定することが可能となる。
【0031】次に図9および図10のフローチャートに
基づいて上記したステップ108における補正演算につ
いて説明する。この補正演算は、ロボット10が搬出装
置31からの外力によって従動的に変位する際、ハンド
17の姿勢を一定に保ちつつ、搬出装置31の動きに滑
らかに追従して、ロボット10に余分な負荷を生じさせ
ないための制御を行うものである。以下の説明では、ロ
ボット10の移動における補間時tでの同時変換行列を
Kt、この同時変換行列Ktにおける姿勢データをC
t、位置データPtとする。従って、同時変換行列Kt
は数1で表される。
【0032】
【数1】
【0033】なお、上記数1において、(Ntx,Nt
y,Ntz),(Otx,Oty,Otz),(At
x,Aty,Atz),(Ptx,Pty,Ptz)
は、ロボット座標系から見た補間時tにおけるノーマル
ベクトルNt、オリエントベクトルOt、アプローチベ
クトルAt、位置ベクトルPtの各成分である。上記し
たステップ108において補正演算プログラムが起動さ
れると(ステップ300)、ステップ302では、補間
時tにおけるエンコーダE1〜E6の出力αt1〜αt
6を入力して、順変換し、同時変換行列Kt’を求め
る。
【0034】ステップ304では、現在従動動作中のロ
ボット10が所定の範囲以上に搬出装置31の搬出方向
Awから誤差を生じていないかを判断する。この誤差h
は次のように求める。図9に示すように、まず教示点P
1から教示点P1におけるアプローチ方向A1方向に点
Bを設定する。この教示点P1から点Bまでの距離は、
教示点P1から搬出完了位置P1’までの距離より十分
長い値にあらかじめ設定されたものである。このように
点Bを設定することによって、教示点P1と点Bを通る
直線Sが求まる。誤差hはロボット10の現在位置であ
る同時変換行列Kt’の位置ベクトルPt’から直線S
までの直線距離であるから以下の数2の関係より位置ベ
クトルPt’から直線Sへ垂直に下ろした点Hの位置が
求まる。
【0035】
【数2】
【0036】この数2によって求めた点Hの位置と位置
ベクトルPt’の距離を求めることにより誤差hを求め
ることができる。従って、誤差hがあらかじめ設定され
た範囲r内にある場合、即ち、図9のように直線Sを中
心とする許容半径rの円柱内に位置ベクトルPt’が存
在する場合は(YES)、ロボット10の補正演算を行
う必要がないため、ステップ306にて目標同時変換行
列Kt=Kt’としてステップ312に移行する。
【0037】また、誤差hがあらかじめ設定された範囲
内にない場合は(NO)、ロボット10の追従動作の軌
跡が許容範囲以上に誤差を生じていることを示している
ため、ステップ308に移行して補正演算を行う。な
お、このように補正演算を行う前にステップ304にて
補正を必要とするか否かを判断する理由は後に詳述す
る。
【0038】ステップ308では、同時変換行列Kt’
の位置ベクトルPt’を用いて目標位置データPtを求
める。即ち、目標位置ベクトルPtは以下の数3で表さ
れる。
【0039】
【数3】
【0040】数3において、Pp1は教示点P1におけ
る位置ベクトルであり、Signは、現在の位置ベクト
ルPt’が教示点P1におけるアプローチベクトルA1
に対して正逆いずれの方向かを示すものであり、アプロ
ーチベクトルA1に対してロボット10が移動している
方向を示している。また、Spは、ロボット10が教示
点P1からtまでの間に移動した距離であり以下の数4
によって求まる。
【0041】
【数4】
【0042】ステップ310では、ステップ308によ
って求めた目標位置ベクトルPtと、教示点P1の姿勢
ベクトルCp1より、目標同時変換行列Kt=〔Cp
1,Pt〕を求め、ステップ312にてこれを逆変換
し、指令回転角信号θt1〜θt6を求めてサーボユニ
ット91〜96に出力する。以上のステップで従動動作
モードの1サイクルを終了する。
【0043】ステップ314では、ロボット10がP
1’の位置まで移動し、搬出装置31によるワークWの
搬出が完了したか否かを判別する。この判別はワークW
の搬出完了を示す搬出装置31のリミットスイッチ36
がONしたか否かを判別する。ワークWの搬出が完了し
たと判別された場合(YES)、ステップ320に移行
して補正演算を終了し、図6におけるステップ110に
移行する。また、ワークWの搬出が完了していないと判
別された場合(NO)、ステップ316に移行する。
【0044】ステップ316は、従動動作モードが開始
されて所定の時間が経過したかを判別する。これは、搬
出装置31のリミットスイッチ36に異常が生じた等の
理由によりリミットスイッチ36がONしない場合が考
えられるためである。従って、従動動作モードが開始さ
れて所定の時間が経過した場合には(YES)、ステッ
プ318に移行して警告を発する等の異常処理を行う。
また、所定の時間が経過していない場合には(NO)、
現在まだ正常な状態でワークWの搬出が行われているた
め、ステップ302に戻り、補正演算を繰り返す。
【0045】以上述べたように本実施の形態では、搬出
装置31からワークWが搬出される動作に従動的にロボ
ット10が移動する際、ワークWが搬出される方向に常
にロボット10の位置を補正すると共に、姿勢はワーク
Wを把持した教示点P1の姿勢を保持するようにしたた
め、ロボット10が搬出装置31からの外力によって従
動的に移動しても余分な力が作用することはなく、滑ら
かな動作が実現でき、ロボット10の耐久性が向上す
る。
【0046】次に上記ステップ304における補正演算
を行うか否かを判断する理由について説明する。図11
(a)の模式図に示すように搬出装置31から搬出され
るワークWは、搬出が開始されてしばらくの間は、ガイ
ド37によって支持されており、この状態では、仮に上
記補正演算を行わなくとも、ガイド37の存在によって
ロボット10が従動動作によって移動する方向と搬出装
置31の搬出方向Awとはほぼ一致した状態となる。し
かし、図11(b)のように搬出の最終段階でワークW
がガイド37から外れると、ワークWは自由な状態とな
り、ロボット10の従動的に移動する方向と搬出装置3
1の搬出方向Awとがロボット10の剛性等によって、
一致しない状態となり結果的にロボット10に余分な負
荷がかかることになる。このため、上記したような補正
演算によって、ロボット10の従動的に移動する方向を
搬出方向Awに補正するのである。
【0047】しかし、この補正方向は、上記したように
教示点P1にて教示したアプローチベクトルA1に基づ
くものであるため、アプローチベクトルA1と搬出方向
Awとの間には、教示誤差が存在し必ずしも一致しな
い。このため、図11(c)に示すように教示誤差があ
る状態で厳密にアプローチベクトルA1に基づいて補正
を行うと、むしろロボット10の移動に伴って位置誤差
dDが増大し、ワークWをガイド37に押し付け、特に
ガイド37の出口近傍Cでは大きな力が作用し、ワーク
Wまたはガイド37を傷める可能性がある。このため、
本実施の形態では、ある一定の範囲では補正を行わずガ
イド37による案内に従う遊びの状態を設けることによ
って、ワークWまたはガイド37を傷めず、かつある一
定以上の誤差が生じた場合には適切な補正が行われるよ
うにしているのである。
【0048】次に他の実施の形態について説明する。上
記実施の形態では、ロボット10のアプローチ方向と、
搬送装置31の搬出方向とを平行とすることによって、
ロボット10の従動動作の際に常に教示時のアプローチ
方向A1に動作を補正するようにしているが、搬送装置
31の搬出方向をあらかじめ記憶するようにしておき、
この方向にロボット10をの動作を補正するようにして
も良い。例えば、上記実施の形態では教示しなかった点
P1’を教示し、教示点P1から教示点P1’に向かう
方向をベクトルBvとして記憶する。このベクトルBv
の方向にロボット10を補正すれば良く、上記数3は以
下の数5となる。なお、この場合は上記した工具座標系
の設定において、アプローチベクトルAをワークWの搬
出方向Awと平行となるように設定する必要はない。
【0049】〔数5〕 Pt=Pp1 + Sign・Sp・Bv また、上記実施の形態では、ロボット10の姿勢を常に
教示点P1の姿勢データCp1に保持している。しか
し、搬送装置31からの外力に応じてロボット10の姿
勢を変化させたほうが都合が良い場合は、ステップ30
2で求めた同時変換行列Kt’の姿勢データCt’を用
いて、ステップ310の目標同時変換行列KtをKt=
〔Ct’,Pt〕として求めれば良い。このように上記
した式は、搬送装置31とロボット10の構成に応じて
種々の変更が許されることは勿論である。
【0050】さらに、以上述べた実施の形態では、図3
における重力トルクフィードフォワード405の重力ト
ルク値Gfに基づいて電流制限幅を設定したが、重力ト
ルク値Gfに加えてロボット10の加速度トルクを考慮
して電流制限幅を設定しても良い。即ち、加速度トルク
フィードフォワード406は、下記の式に基づいて設定
されているため、この加速度トルクフィードフォワード
406から得られる値を利用することができる。
【0051】(Jm+JL)/Kt ただし、JLはロボット10のイナーシャ値、Jmは各
サーボモータのロータのイナーシャ値であり固定値であ
る。また、Ktはトルク定数であり固定値である。ま
た、加速度トルクの求め方は、特開平6−190750
号等の公知技術を利用することができる。このように重
力トルク値Gfに加えて加速度トルクを考慮することに
よって、ロボット10の動作によって生じる加速度トル
クに対応して電流制限幅を設定できるため、より安定し
たロボット10の従動動作を実現できる。
【0052】
【発明の効果】請求項1では、重力トルク値に基づいて
サーボモータに供給する電流の制限値が決定されるた
め、ロボットのその時の姿勢を維持するのに最低必要な
トルク(電流値)を基準として制限値を設定することが
できる。従って、ロボットの従動動作中にロボットの姿
勢が変化しても各姿勢に対応した制限値となるため、外
力の方向に関係なく柔軟度合いを一定にでき、従動動作
を安定したものにできる。
【0053】また、ロボットの姿勢を維持するのに必要
なトルクは常に確保されるため、電流制限を作用させた
時に、トルクが不足してロボットの姿勢が変化すること
はない。請求項2では、請求項1の重力トルク値に加速
度トルク値を加えて電流の制限値を決定するため、姿勢
変化に応じて生じる加速度の影響が考慮され、より安定
した従動動作が可能となる。
【0054】請求項3では、ロボットに外力に対する従
動動作を行わせる際、ロボットの従動動作があらかじめ
定められた方向から一定値以上ずれた場合にのみ移動方
向を補正するようにしたため、設定されたロボットの従
動方向と外力の方向との間に誤差があったとしても、そ
の誤差を増大させることなく安定した従動動作が可能と
なる。
【0055】なお、この請求項3による従動動作の補正
は、請求項1,2のような電流制限によってロボットを
柔軟な状態にする場合だけでなく、サーボモータに対す
る位置ループゲインや速度ループゲイン等を通常よりも
低減させてロボットを柔軟な状態にする場合にも用いる
ことかできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の全体構成を示した図であ
る。
【図2】本発明の実施の形態の電気的構成を示した図で
ある。
【図3】本発明の実施の形態のサーボユニットの処理を
示したブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態の作用を説明するための図
である。
【図5】本発明の実施の形態の工具座標系の設定を説明
するための図である。
【図6】本発明の実施の形態の全体的流れを示したフロ
ーチャートである。
【図7】本発明の実施の形態の電流制限部の作用を示し
たフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態の電流制限の様子を示した
図である。
【図9】本発明の実施の形態の補正演算を示した図であ
る。
【図10】本発明の実施の形態の補正演算を示したフロ
ーチャートである。
【図11】本発明の実施の形態の補正演算の作用を説明
するための図である。
【図12】従来の技術を説明するための図である。
【符号の説明】
10 ロボット 17 ハンド 30 ダイキャストマシン 31 搬出装置 A アプローチベクトル W ワーク Aw 搬出方向

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サーボモータによって駆動される複数の
    軸を備えたロボットを制御するロボット制御装置におい
    て、 前記ロボットの姿勢に応じた重力トルク値を演算する演
    算手段と、 この演算手段によって演算された前記重力トルク値に基
    づいて前記サーボモータに供給する電流の制限値を決定
    する制限値決定手段と、 この制限値決定手段によって決定された制限値内に前記
    サーボモータに供給する電流を制限して前記サーボモー
    タを駆動する電流制限手段とを備えたことを特徴とする
    ロボット制御装置。
  2. 【請求項2】 前記演算手段は、前記重力トルク値と共
    に前記ロボットの加速度トルク値を演算し、前記制限値
    決定手段は、前記重力トルク値と前記加速度トルク値に
    基づいて前記サーボモータに供給する電流の制限値を決
    定し、前記電流制限手段は、前記重力トルク値と前記加
    速度トルク値に基づいた制限値内に前記サーボモータに
    供給する電流を制限することを特徴とする請求項1に記
    載のロボット制御装置。
  3. 【請求項3】 外部装置からロボットに作用する外力に
    対して前記ロボットを従動的に動作させる従動動作手段
    を備えたロボット制御装置において、 外力に対して前記ロボットを移動させる方向を記憶する
    移動方向記憶手段と、 前記従動動作手段によって前記ロボットが従動動作を行
    う間、前記移動方向記憶手段に記憶された移動方向と直
    交する方向に前記ロボットが移動した誤差量を検出する
    誤差量検出手段と、 この誤差量検出手段によって検出された誤差量があらか
    じめ設定された設定範囲以内かを判別する判別手段と、 この判別手段によって前記誤差量が前記設定範囲より外
    れる場合、前記移動方向記憶手段に記憶された移動方向
    に基づいて前記ロボットの従動動作を補正する動作補正
    手段とを備えたことを特徴とするロボット制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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JP2010194645A (ja) * 2009-02-24 2010-09-09 Kawasaki Heavy Ind Ltd ロボット、電流制限装置及び電流制限方法
JP2017514714A (ja) * 2014-02-21 2017-06-08 エスカー−テヒノロギーズ ウーゲーSk−Technologies Ug 同時平行処理時間で単一のステーションの機械加工ユニットを装填し取り出すためのロボット・セル

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JP2017514714A (ja) * 2014-02-21 2017-06-08 エスカー−テヒノロギーズ ウーゲーSk−Technologies Ug 同時平行処理時間で単一のステーションの機械加工ユニットを装填し取り出すためのロボット・セル

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