JPH10237201A - 高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法 - Google Patents

高分子量ポリオレフィン多孔フィルムの製造方法

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JPH10237201A
JPH10237201A JP3896197A JP3896197A JPH10237201A JP H10237201 A JPH10237201 A JP H10237201A JP 3896197 A JP3896197 A JP 3896197A JP 3896197 A JP3896197 A JP 3896197A JP H10237201 A JPH10237201 A JP H10237201A
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film
stretching
porous
molecular weight
precursor
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JP3896197A
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Kazuo Yagi
和雄 八木
Akinao Hashimoto
暁直 橋本
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 インフレーションフィルム成形で得られる高
分子量ポリオレフィンからなる無孔、不透気性フィルム
を、二段階の異なる条件の延伸操作を組み合わせること
により、空孔率と透気性に優れた高引張強度の高分子量
ポリエチレン透気性多孔フィルムを得る製造方法を提供
する。 【解決手段】 極限粘度が4dl/g以上である高分子
量ポリオレフィンを、機械軸方向に結晶配向するように
フィルム成形して結晶化度が60%以上の不透気性前駆
体フィルムとし、ついで該前駆体フィルムを結晶分散温
度以下の温度における第一の延伸で、該前駆体フィルム
の長さに対して150%ないし300%の長さになるよ
うに延伸することにより多孔化し、さらに結晶分散温度
を超える温度における第二の延伸で、該延伸多孔化フィ
ルムの長さに対して110%ないし300%の長さにな
るように延伸および熱処理を行うことにより多孔構造を
固定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子量ポリオレ
フィン透気性多孔フィルムの製造方法に関するものであ
り、より詳しくは、インフレーションフィルム成形で得
られる高分子量ポリエチレンからなる無孔、不透気性フ
ィルムを、二段階の異なる条件の延伸操作を組み合わせ
ることにより、空孔率と透気性に優れた高引張強度の高
分子量ポリエチレン透気性多孔フィルムを得る製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からポリエチレンを含めたポリオレ
フィン透気性多孔フィルムの成形法は良く知られ、通常
の分子量領域にあるポリオレフィンの場合は成形性に富
むために、フィルム化の方法としては、インフレーショ
ンフィルム成形法やT−ダイシート成形法が一般的であ
る。これらの成形法を利用して多孔化する場合、非相溶
の有機物や無機物を混入してフィルム、シートとし、こ
れを延伸等の外力で非相溶成分との界面を破壊し開孔す
る方法や、混入した非相溶成分や無機物をそれを溶解す
るような有機溶剤や酸、アルカリで処理することにより
多孔化する方法が一般的である。
【0003】しかしながら、フィルム成形装置で得られ
た実質的に無機物や可塑剤、溶剤を含まないポリオレフ
ィンフィルムまたはシートが、多孔フィルムを得るため
の前駆体フィルムとして用いられる例は少ない。実質的
に可塑剤や溶剤を含まないポリオレフィンフィルムまた
はシートから調製される多孔フィルムの例としては、特
開昭62−121737号公報で開示されている押出冷
延伸法が挙げられる。該公報には、T−ダイフィルム成
形装置などで高倍率に溶融延伸して得られる前駆体ポリ
オレフィンフィルムを一軸冷延伸した後、一軸熱延伸す
ることにより、優れた透気性を有する連続気泡の微孔性
ポリオレフィンフィルムを製造する方法が述べられてい
る。
【0004】この方法で得られるフィルムでは、用いら
れるポリオレフィンの分子量が溶融成形可能な汎用分子
量に限定される。また溶融延伸した際に機械軸(長さ方
向)に沿って配列したラメラ結晶の堆積構造を形成さ
せ、ラメラ結晶間を冷延伸することにより空孔化し、多
孔フィルムとしている。この方法では汎用分子量域の原
料であるため、強度が低いばかりでなく、冷延伸は原理
的に一軸でなければならないため、フィルムの引張強度
バランスが著しく悪く、機械方向に垂直な方向(幅方
向)での引張強度は20MPa以下にとどまり、産業的
な利用が制限されている。
【0005】この方法によるフィルムの幅方向の強度を
改善するための技術として、特開昭55−161830
号公報に微小孔性フィルムの溶媒延伸製法が開示されて
いる。この方法は、特定の特性を持つポリエチレンを用
い、T−ダイフィルム成形法やインフレーションフィル
ム成形法で前駆体フィルムを調製し、これを特定の非水
溶媒からなる膨潤剤に十分な時間接触させ、そして膨潤
剤と接触しながら二軸に延伸し、その後、延伸状態を保
ちながら膨潤剤を除去することにより、開放セル型微小
孔性フィルムを得ている。
【0006】確かに、この方法は、機械軸方向に延伸し
た後、横方向に300%程度まで延伸でき、引張強度の
バランスを改良しているように見えるが、その引張強度
は極めて低く、延伸後のフィルムの強度は、延伸前フィ
ルムと同程度かそれ以下にとどまり、高々30MPaに
すぎない。しかも、装置も二軸延伸装置であるため複雑
であり、溶媒を用いないという工業上の利点も達成され
ていない。
【0007】極限粘度[η]が4.0dl/g以上の高
分子量ポリオレフィンは、汎用ポリオレフィンに比較し
て耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性に優れているため、エ
ンジニアリングプラスチックとして種々の分野で用いら
れている。また、このような優れた性質を有する高分子
量ポリオレフィンからフィルムまたはシートを成形する
ことが研究されてきた。
【0008】しかしながら、高分子量ポリオレフィン
は、汎用のポリオレフィンに比べて溶融粘度が極めて高
いため、汎用ポリオレフィンのように一般の押出成形機
によってフィルムまたはシートに成形することは不可能
である。このため高分子量ポリオレフィンフィルムまた
は高分子量ポリオレフィンシートを成形する場合、圧縮
成形でプレスシートを作成するか、圧縮成形でブロック
を成形しこれを桂剥きしてシートやフィルムを得る方法
が、僅かに知られているに過ぎない。このようにして得
られた高分子量ポリオレフィンシートおよびフィルム
は、上述のように耐衝撃性や耐摩耗性に優れた成形体で
はあるが、引張特性には汎用ポリオレフィンフィルムと
比較して識別化できるほどの特徴は見られない。また連
続生産することは出来ず、生産効率の観点からも改善の
余地が残されている。
【0009】従って、高分子量ポリオレフィンから引張
特性の優れたシートおよびフィルムを得ようとする場合
には、高分子量ポリオレフィンと相溶性を持つ溶剤や可
塑剤を用いてその溶融粘度を低下させて、汎用成形機で
シートやフィルムを成形し、さらに延伸や脱溶剤、脱可
塑剤の操作を行うことが常識となっている。
【0010】高分子量ポリオレフィンを用いたフィルム
の連続成形法として、例外的に知られる方法は、本出願
人の出願に係る特開昭62−122736号公報に開示
された特殊なインフレーションフィルム成形法による方
法がある。該公報に開示されたフィルムは、耐透湿性に
優れるところに特徴をもつ非透気性非多孔フィルムであ
る。
【0011】ところで、高分子量ポリオレフィン透気性
多孔フィルムを製造する方法は既に提案されてきてお
り、これらの技術は二つに大別される。
【0012】まず第一の群に分類される技術は、特開昭
52−114671号公報(工業技術院長)に示される
ものである。該公報中には、中密度・高密度の超高分子
量ポリエチレンを加熱状態に保って伸長を開始し、所定
の伸度まで伸長した後、融点以下の温度に冷却固定する
ことを特徴とするポリエチレン多孔質材料の製造方法が
開示されている。この方法で用いられる高分子量ポリオ
レフィンは、重量平均分子量が3×105 ないし2×1
6 (極限粘度[η]に換算すると約4ないし15dl
/gに相当する)の範囲にあるポリエチレンである。
【0013】この製造方法は、可塑剤や溶剤を用いるこ
となく高分子量多孔性ポリエチレンを得ることができる
点で先進的である。しかしながら、該公報には、前駆体
フィルムの調製法が詳しく記載されていない。該特許の
技術に対応する学術文献として、「配向結晶化した高分
子量ポリエチレンのフィブリル構造」:[KoubunshiRonb
unshu,Vol.34,No.9,653(1977)]があるが、その中での前
駆体フィルムの調製は、前述のように圧縮成形(プレス
シート)や圧縮成形されたブロックを桂剥きしたスカイ
ブシートが用いられている。先に述べたようにこれらの
成形はバッチ成形であり、インフレーションフィルム成
形などの連続法に比較すると生産効率が著しく低いとい
う実用上の問題がある。また延伸は、前駆体フィルムの
融点以上で行われるために、延伸後のフィルムにおいて
も引張強度は低い。さらに一軸延伸の場合には幅方向の
引張強度は著しく弱く、二軸延伸の場合でも全方向で見
て50MPa以下の引張強度にとどまっている。
【0014】第二の群に分類される技術は、溶液法、可
塑剤法と呼ばれるものである。溶液法として例示される
技術としては、特開平3−105851号公報があり、
その中では高分子量ポリエチレンと流動パラフィンを混
合して製膜した後、特定条件で延伸し、ついで流動パラ
フィンを塩化メチレンで除去する微孔性フィルムの製造
方法が開示されている。
【0015】可塑剤法として例示される技術としては、
特開昭60−197752号公報があり、その中では粘
度平均分子量40万(極限粘度[η]に換算して約4d
l/g)以上の高分子量ポリエチレン0.5ないし55
重量%に対して、炭素数15以上のアルコール類、エー
テル類、ケトン類又はエステル類より選ばれる常温固体
で、かつ、該高分子量ポリエチレンより融点が低い可塑
剤(流れ性改良剤)99.5ないし45重量%を均一に
混合した組成物を、固化させることなく、溶融状態でシ
ートまたはフィルムに成形し、成形の途中または成形の
後に可塑剤を低級アルコールもしくは水、または低級ア
ルコールと水の混合物で抽出することを特徴とする多孔
性ポリエチレンシートまたはフィルムの製造方法が開示
されている。
【0016】これら、溶液法と可塑剤法に共通する点
は、高分子量ポリオレフィンに相溶する溶剤もしくは可
塑剤を多量(高分子量ポリオレフィンに対し少なくとも
その等量以上)に用いること、そしてその溶剤もしくは
可塑剤を除去してフィルムを多孔化するために、溶剤も
しくは可塑剤と相溶するさらに別の溶剤を多量に用いる
点にある。また機械的には、これらの操作に加えて延伸
操作を行うために、装置が極めて煩雑である。
【0017】以上のように、従来、ポリオレフィンの透
気性多孔フィルムを製造する方法としては、原料のポリ
オレフィンに加えて可塑剤、無機添加剤、非相溶有機化
合物等の少なくとも一種の添加物をポリオレフィンと等
量以上加えて原反フィルムおよびシートを作製し、その
あと溶剤、酸、アルカリ等で多孔化させるか、あるいは
延伸により多孔化する方法、または添加物を加えない場
合には、機械的強度が弱いかバランスに劣ることを前提
として、少なくとも一軸に特定条件で延伸する方法が知
られているだけである。
【0018】ところで、近年、ポリオレフィンの多孔フ
ィルムの需要が高まっている。例えば、ろ過材料の用途
では、耐酸・アルカリ性や衛生性の観点から食品分野等
で注目され、最近、ビバレッジ用途のろ過フィルムや排
水処理用ろ過フィルムに広く用いられるようになってい
る。また近年着目されている非水系電池セパレータで
は、耐溶剤性、安全性の観点から電池セパレータ適性が
期待されている。これらの期待に応えるためには、前述
の押出冷延伸法では、機械強度に満足できる多孔フィル
ムが得られないこと、また上述のような、第一の群の技
術では、生産面で非効率的であること、さらに第二の群
に属する技術では、多量の溶剤を使うために環境衛生性
や安全性の確保、そして作業員の健康的負荷への対策の
ために、技術的にも設備的にも多大な負担が強いられて
いる。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的とすると
ころは、インフレーションフィルム成形法等で得られる
実質的に添加物を含有しない不透気性高分子量ポリオレ
フィンフィルムを前駆体フィルムとして、さらにそれを
特定条件で延伸、熱処理することにより、押出冷延伸法
では得られない多孔フィルムの機械的強度の改良された
ポリオレフィン透気性多孔フィルムを提供することであ
り、また、高分子量ポリエチレンを用いた上述の二群に
分類した先行技術が、生産面で有する煩雑な工程や、環
境衛生性、安全性の観点から問題のある工程のない高分
子量ポリエチレン透気性多孔フィルムの製造方法を提供
することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために提案されたものであって、二段階の異なる
条件での延伸操作を組み合わせて行うことにより、空孔
率と透気性に優れた高引張強度の高分子量ポリエチレン
透気性多孔フィルムを製造する点に特徴を有するもので
ある。
【0021】すなわち、本発明によれば、極限粘度が4
dl/g以上である高分子量ポリオレフィンを、機械軸
方向に結晶配向するようにフィルム成形して結晶化度が
60%以上の不透気性前駆体フィルムとし、ついで該前
駆体フィルムを結晶分散温度以下の温度における第一の
延伸で、該前駆体フィルムの長さに対して150%ない
し300%の長さになるように延伸することにより多孔
化し、さらに結晶分散温度を超える温度における第二の
延伸で、該延伸多孔化フィルムの長さに対して110%
ないし300%の長さになるように延伸および熱処理を
行うことにより多孔構造を固定することを特徴とした高
分子量ポリオレフィン透気性多孔フィルムの製造方法。
【0022】また、本発明によれば、前記結晶配向する
操作が熱処理を含むものである上記高分子量ポリオレフ
ィン透気性多孔フィルムの製造方法が提供される。
【0023】また、本発明によれば、前記フィルム成形
がインフレーションフィルム成形法によるものである上
記高分子量ポリオレフィン透気性多孔フィルムの製造方
法が提供される。
【0024】また、本発明によれば、前記高分子量ポリ
オレフィンが高分子量ポリエチレンである上記高分子量
ポリオレフィン透気性多孔フィルムの製造方法が提供さ
れる。
【0025】また、本発明によれば、得られる高分子量
ポリエチレン透気性多孔フィルムが、空孔率30%以
上、透気度1500秒/100cc以下である上記高分
子量ポリエチレン透気性多孔フィルムの製造方法が提供
される。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の高分子量ポリオ
レフィン透気性多孔フィルムの製造方法について、原
料、前駆体フィルムの調製方法、延伸方法、および得ら
れる多孔フィルムの特徴について述べる。
【0027】〈原料〉本発明に用いる高分子量ポリオレ
フィンとは、エチレンまたはプロピレン単独、もしくは
エチレンにプロピレンや炭素数4ないし8のα−オレフ
ィンを単独もしくは二つ以上組み合わせたもの、あるい
はプロピレンに炭素数4ないし8のα−オレフィンを単
独もしくは二つ以上組み合わせたものを、例えばチーグ
ラー系触媒を用いたスラリー重合法により、重合して得
られたものが用いられる。とくに好ましい重合体は、エ
チレン単独重合体であるが、エチレンと、少量のプロピ
レンもしくは炭素数4ないし8のα−オレフィンの単独
ないし二つ以上の組み合わせによる共重合体であって、
共重合量が5モル%以下のものも好適に用いることがで
きる。
【0028】分子量は、極限粘度[η]で4dl/g以
上のものが良く、上限は、インフレーションフィルム成
形時において支障がない限り特に限定されないが、25
dl/g以下が好ましく、5dl/g以上、20dl/
g以下がさらに好ましい。極限粘度[η]が4dl/g
を下回るものでは、高強度を得ることができない。また
極限粘度[η]で25dl/gを超えるものは、次に述
べるように、前駆体フィルムを成形する際に溶融粘度が
高すぎてインフレーションフィルム成形性に劣る傾向が
ある。
【0029】分子量分布、すなわち重量平均分子量(M
w)/数平均分子量(Mn)は成形性の制約を受けなけ
れば狭ければ狭い方がよい。ゲルパーミエーションクロ
マトグラフィーで測定される値で20以下、好ましくは
10以下である。
【0030】インフレーションフィルム成形で得られた
高分子量ポリオレフィンからなる不透気性フィルムは、
実質的に高分子量ポリオレフィンからなる。実質的に高
分子量ポリオレフィンからなるということは、インフレ
ーションフィルム成形時に、原料ポリオレフィンが多量
の溶剤や可塑剤を含まないということである。従って、
耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、アンチブロッキング
剤、スリップ剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに
添加して使用される各種添加剤が本発明の目的を損なわ
ない範囲で配合されていても良い。これらの含有量は、
総量で10%以下、好ましくは5%以下、さらに好まし
くは2%以下である。
【0031】〈前駆体フィルム〉高分子量ポリオレフィ
ンのなかで極限粘度[η]で5dl/g未満のものは、
通常のインフレーションフィルム成形法によって得るこ
とができる。通常のインフレーションフィルム成形法と
は、例えば「プラスチックの押出成形とその応用」[澤
田慶司著、出版社:誠文堂新光社(1966年)]の第
4編2章に述べられたポリエチレンやポリプロピレンで
行われる一般的な方法である。
【0032】一方、高分子量ポリオレフィンのなかで極
限粘度[η]で5dl/g以上のものは、以下に述べる
インフレーションフィルム成形法で前駆体フィルムを調
製することができる。
【0033】すなわち、高分子量ポリオレフィンをスク
リュー押出機で溶融し、次いでマンドレルがスクリュー
の回転に伴って、または単独に回転する少なくともL/
Dが5以上のスクリューダイから押し出した後、溶融状
態のチューブ状フィルムの内部に気体を吹き込んで膨張
させて冷却し、フィルムとなすことを特徴とするインフ
レーション成形法によって得られる。
【0034】ここで、Lはマンドレルとアウターダイで
構成されるチューブダイの長さ、またDはマンドレルと
アウターダイのクリアランスすなわちダイリップの厚さ
である。インフレーションフィルム成形装置に関する態
様は、本出願人の出願に係る特開昭62−122736
号公報および特願平08−237865号に詳述されて
いる。
【0035】本発明で前駆体フィルムを調製するための
好ましい条件は、ドラフト比を膨比に対して大きく取る
ことである。ドラフト比とは、冷却固化したチューブフ
ィルムの引き取り速度とインフレーションフィルムダイ
のリップ出口での樹脂の流出速度(線速度)との比であ
り、また膨比とは、冷却固化したチューブフィルムの直
径とインフレーションフィルムダイのリップの平均直径
との比である。この場合、ドラフト比は5以上の範囲で
適宜調整されるが、好ましい範囲は10以上である。さ
らに、膨比は2ないし5の範囲で適宜調整されるが、な
かでも好ましい範囲は3以下である。
【0036】いずれの方法においても、得られる前駆体
フィルムは、極限粘度[η]で4ないし25dl/gの
もので、機械方向(すなわちフィルムの長手方向)の引
張強度で100MPa以上、機械方向に垂直な方向(す
なわちフィルムの幅方向)の引張強度で70MPa以上
であり、温度40℃および相対湿度90%の条件下で透
湿係数が0.45g・mm/m2 ・24hr以下の非透
湿フィルムであり、かつ、非多孔不透気性フィルムであ
る。不透気性フィルムとは、後述する透気性試験におい
て、透気度が10000秒/100cc以上のフィルム
である。得られる前駆体フィルムの厚さには特に制限は
ないが、後に続く延伸や熱処理工程での取扱いの都合
で、好ましくは10ないし500μm、さらに好ましく
は10ないし100μmである。
【0037】示差走査型熱分析計(DSC)による結晶
融解熱から求められる前駆体フィルムの結晶化度は、6
0%以上、好ましくは65%以上である。上述のインフ
レーションフィルム成形法で得られたフィルムであって
結晶化度が60%を下回るフィルムは、熱処理で多孔化
した場合に空孔率が30%以上を達成できない場合があ
る。この場合、前述のように高結晶化をさせることによ
って、例えば、予め気体(空気)雰囲気下で行う予備的
な熱処理等で結晶化度を60%以上として熱処理工程に
供することも好ましい態様である。
【0038】前駆体フィルムは、機械軸方向に、一軸に
結晶配向していることが好ましい。フィルムが一軸に結
晶配向しているということは、フィルム面内でポリエチ
レンの単位結晶のa軸、b軸およびc軸において、分子
鎖方向に対応するc軸が機械軸に沿って、統計分布とし
て、フィルム面に平行に存在している状態をいう。
【0039】この状態は、X線回折装置による観測で以
下のようにして確認することができる。すなわち、フィ
ルムのスルー(THROUGTH)方向からX線を入射
して回折パターンを観察したときに、配向係数fcが
0.2以上、好ましくは0.5以上であるような状態で
ある。fcの求め方および計算方法は、「高分子のX線
回折(上)」(LEROY E. ALEXANDER
著、桜田一郎監訳、化学同人)の「選択配向」の節に記
載されている通りである。
【0040】特にfcが0.2を下回るフィルムでは、
結晶化度が前記条件を満たしている場合でも、熱処理で
多孔化することが出来ない場合がある。
【0041】また繊維軸方向の結晶は、10ないし40
nmの結晶サイズを持ったものの繰り返し構造をとること
が好ましい。すなわちこの結晶・結晶間が次行程の延伸
操作で開孔するものと考えられる。この構造は、フィル
ムの小角X線散乱パターンの観察による長周期から確認
することができる。
【0042】〈熱処理〉上述の様に主としてインフレー
ションフィルム成形で得られた前駆体フィルムの結晶化
度が60%に満たない場合は、熱処理を行い、結晶化度
を60%以上にすることが大切である。該熱処理は、雰
囲気の状態にもよるが例えばポリエチレンの場合、10
0ないし145℃の温度で、1分間以上といった条件
で、処理後の結晶化度が処理前に比較して結晶化度とし
て10ないし20%程度増大するような条件で行うこと
が好ましい。この時、前駆体フィルムは、収縮を妨げる
ように、好ましくは少なくとも一方向で、最も好ましく
は、直交する二方向で固定されていることが好ましい。
収縮が余儀なくされる場合の好ましい収縮の許容範囲
は、長さおよび幅方向で10%以下である。
【0043】熱処理は、前駆体フィルムの結晶化度が6
0%以上であっても、行うことは、後の多孔化行程で、
多孔化させるためには有効である。熱処理の雰囲気は、
前駆体フィルムと適度の親和性を持つ液体の中でおこな
ってもよいが、好ましくは空気中である。
【0044】上記方法で得られた前駆体フィルムまたは
前駆体フィルムを熱処理したものは、以下に述べる機械
軸方向の延伸により多孔化を行う。多孔化の行程は大別
して二行程に分けられる。まず最初の行程は、第一の延
伸であり、これは、先に述べたように、結晶・結晶間を
開孔させて多孔化する行程である。この行程は、ポリエ
チレンの結晶の変形が妨げられるような、臨界温度以下
の温度でかつ比較的早い変形速度で行われる。この構造
は、結晶・結晶間に亀裂が入った状態で、孔の構造とし
ては、形態および形状維持性の観点から好ましい構造で
はない。
【0045】そこで第二の行程として第二の延伸が、第
一の行程より高い温度でかつ結晶が変形する温度におい
て行われ、これにより、孔形態を整えるとともに、孔構
造の安定化を図る。この行程は、まず臨界温度よりも高
い温度でかつ融点以下の温度での延伸により行われる
が、延伸と収縮を組み合わせもよい。第二の延伸は比較
的小さな変形速度で行われる。
【0046】臨界温度とは、ポリエチレン結晶の分子運
動性が活発になる温度であり、一般的には結晶分散温度
と呼ばれているものである。この温度は、結晶の状態や
結晶化度によって異なり、また測定するときの変形速度
によっても異なるがポリエチレンの場合、約50ないし
80℃である。この温度は、試料形状にもよるがたとえ
ば、バイブロン(オリエンテック社製:型式DDV−1
またはDDV−2型)で測定し、決定することができ
る。条件としては、昇温速度5℃/分、周波数110ヘ
ルツが例として提案されるが、好ましくは周波数を延伸
の際の変形速度と同じにする方が精度の点で好ましい。
【0047】〈多孔化のための延伸(第一の延伸)〉開
孔多孔化するための最初の延伸操作は、基本的には、フ
ィルムの機械軸方向に延伸する一軸延伸である。ただ
し、幅方向を固定した一定幅一軸延伸や幅方向の延伸を
二倍以下に抑えた二軸延伸でもよい。延伸温度は、先に
述べたように結晶分散温度以下の温度で延伸される。結
晶分散温度より低く、できるだけそれに近い温度が好ま
しい。そのために結晶分散温度はできるだけ正確に求め
る必要がある。延伸温度は目安として結晶分散温度より
50ないし10℃程度低い温度である。
【0048】延伸速度は、一対のロールで延伸するなら
ば、ロール間距離とロールの速度差で決まる。前駆体フ
ィルムの延伸前の長さを基準にして、100%/分以
上、好ましくは200%/分以上、さらに好ましくは3
00%/分以上である。延伸倍率は、同様に前駆体フィ
ルムの延伸前の長さを基準として150%ないし300
%である。
【0049】フィルムの機械軸に垂直な方向について
は、できるだけ収縮を妨げるような延伸条件が好まし
い。このためには一対のロール間距離を短くしたり、延
伸時にテンタークリップのような治具で固定するなどの
工夫が提案される。
【0050】延伸の方法は、先に述べたように横方向の
幅の収縮(幅落ち)を最小限に抑えた一軸延伸が好まし
いが、その他の方法として、テンタークリップで横方向
の収縮を妨げた一軸延伸や、通常の二軸延伸試験機で行
われる全テンタークリップ方式による逐次もしくは同時
二軸延伸であり、さらには、一段目を一対のロールで延
伸し、次いでテンタークリップで横方向に延伸する連続
逐次二軸延伸または、連続テンタークリップ方式の連続
同時二軸延伸等が適用できる。
【0051】延伸行程にかけられた前駆体フィルムは、
白色の多孔フィルムに変化する。この多孔フィルムは、
透気性を有した多孔フィルムであるが、延伸終了後、機
械軸方向の固定を解除すると容易に収縮する。また比較
的弱い力で伸張する。収縮したフィルムの透気性は悪
く、ガーレー秒で3000秒/cc以上を示す。またガ
ーレー秒値も不安定である。
【0052】〈孔構造の固定化(第二の延伸)〉多孔化
したフィルムは、さらに孔構造を固定化し、引張強度や
引張弾性率を向上させるためにさらに延伸を行う。延伸
温度は、先の延伸と異なり臨界温度すなわち結晶分散温
度を超えて高く、結晶融点以下の温度範囲で行う。好ま
しくは、結晶分散温度より10℃程度高い温度から、結
晶融点より10℃程度低い温度の間で行われる。具体的
な目安としては90ないし120℃である。
【0053】延伸速度は前述の延伸の場合に比較して低
く、100%/分以下、好ましくは50%/分以下、さ
らに好ましくは10%/分以下である。延伸倍率は延伸
多孔化したフィルムを基準として、110ないし300
%である。第一の延伸で行った延伸と第二の延伸で行っ
た延伸との積、すなわち全延伸倍率は、前駆体フィルム
を基準として400%以下であることが好ましい。
【0054】〈ヒートセット〉第二の最終的な延伸の
後、フィルムの皺の除去、空孔率やフィルム厚みの調
整、フィルムの表面摩擦係数の低減化のためのヒートセ
ットを行っても良い。ヒートセット時の条件は、気体
(空気)雰囲気下で温度、処理時間、フィルムの伸縮条
件がフィルムの熱的特性の制御し易さの観点から適宜選
ばれる。一般的な条件は、温度は処理フィルムの融点−
40℃ないし融点未満、処理時間は5秒ないし60秒程
度行う。フィルムの伸縮は機械軸方向では拘束状態か収
縮率20%以内の範囲、機械軸に垂直な方向では拘束状
態かまたは収縮率10%以内の範囲の中から条件が選ば
れる。
【0055】〈高分子量ポリエチレン透気性多孔フィル
ム〉本発明で製造されるフィルムは、フィルム機械軸方
向にラメラが配列し、それらのラメラをフィブリルやマ
イクロフィブリルで連結した構造を持ったラメラ・ラメ
ラ間が開孔した多孔フィルムであり、多孔フィルムとし
て好適な空孔率とそれに基づく透気性を有する。また多
孔フィルムでありながら強度特に引張強度に優れてい
る。空孔率は、延伸前フィルムの処理や延伸条件またヒ
ートセットの条件を適宜選択することにより、約30な
いし60%の範囲で選択することができる。透気性は、
ガーレー値で1500秒/100cc以下、好ましく
は、1000秒/100cc以下、さらに好ましくは8
00秒/100cc以下である。
【0056】引張強度は、空孔率の選択にもよるが、フ
ィルムの実際の断面積に基づいて計算して、機械軸方向
で100MPa以上、好ましくは150MPa以上、さ
らに好ましくは200MPa以上であり、機械軸方向に
垂直な幅方向の場合、50MPa以上、好ましくは75
MPa以上、さらに好ましくは100MPa以上であ
る。孔径は、多孔化の条件にもよるが、本方法で得られ
るものは、水銀法ポロシメーターで測定し、極大細孔径
で、0.2μmないし3μm程度である。
【0057】次に、本発明の前駆体フィルムを成形する
ための好適なインフレーションフィルム成形装置を示す
図1について説明する。このインフレーションフィルム
成形装置は、溝付シリンダー2と、圧縮比が1ないし
2.5、好ましくは、1.3ないし1.8の範囲の第一
スクリュー3とを有する押出機1を備えており、この第
1スクリュー3の先端部には、トーピド10がネジによ
って連結されている。このトーピド10は、第一スクリ
ュー3の先端部で樹脂が滞留するのを防ぐため、円錐状
に形成することが好ましい。
【0058】また、トーピド10の先端、すなわち、溶
融樹脂の流れ方向下流側には、スクリューダイ20が、
その軸線をトーピド10の軸線方向と直交する方向へ向
けた状態で設けられている。このスクリューダイ20
は、トーピド10と対向する位置に第二スクリュー21
を備えており、この第二スクリュー21は、駆動手段
(図示せず)によって、第一スクリュー3とは、独立に
回転されるようになっている。
【0059】また、第二スクリュー21は、図1の上方
へいくに従って、次第に縮径する略円柱状のスペースが
形成された中空状のアウターダイ22を備えており、こ
のアウターダイ22のスペースにマンドレル23が挿通
されている。このマンドレル23は第二スクリュー21
の先端部(上端部)に固着されており、第二スクリュー
21と共に回転されるようになっている。
【0060】また、第二スクリュー21の内部及びマン
ドレル23の内部には気体流路24が形成されている。
この気体流路24は、第二スクリュー21の下端から金
属シャフトを通って安定棒26の先端まで形成されてい
る。
【0061】なお、上記インフレーションフィルムの製
造装置では、溝付きシリンダー2の溝部2Aにより、超
高分子量ポリオフィン粉末が押出機前方へ安定して供給
されるようになっている。上記のスクリューダイ20
は、L/Dが5以上、好ましくは、15以上、更に好ま
しくは20ないし70であり、第二スクリュー先端部2
0Aの樹脂流路の断面積S1 とスクリューダイ中間部2
0Bの樹脂流路の断面積S2 との比(S1 /S2 )が
0.5ないし2.0、好ましくは0.8ないし1.5と
される。また、前記S2 とスクリューダイ出口20Cの
樹脂流路の断面積S3 との比(S2 /S 3 )が2.0な
いし10.0、好ましくは3.0ないし6.0の範囲に
ある。
【0062】また、S1 /S2 は、0.5ないし2.0
の範囲であれば特に問題はないが、S2 /S3 の比が
2.0未満では、溶融樹脂が完全に融着されず、一方、
10を超えると樹脂圧が過大となり、チューブ状フィル
ムの押出成形が困難となる。
【0063】スクリューダイ20の流路は前述の如く、
基本的には、スクリューダイ出口20Cに向かって流路
面積が狭くなる。すなわち、テーパダイであるが、スク
リューダイ上端部は、流路面積が変化しない、いわゆる
ストレートであることが成形品の寸法精度を高度に保持
することができるので好ましい。なお、ストレート部
は、通常L/Dが0.1ないし0.5程度である。
【0064】本発明のインフレーションフィルムの製造
装置は前記構成を具備することが重要な特徴であり、ス
クリューダイ20の下流側には、スクリューダイ20か
ら押し出されたパイプ状のパリソン30をエアシリンダ
ー25で冷却した後、気体流路24を通して、空気等の
気体により膨張比1.1ないし20倍に膨張させ、厚さ
10ないし100μmのインフレーションフィルム31
とし、それを折り畳んだ後引取る安定板、ピンチロー
ル、引取機(いすれも図示せず)等、公知のインフレー
ションフィルム成形機が具備する装置を有する。
【0065】また、必要に応じて、アウターダイ22の
上端部内方へ安定棒26が、エアーリング25、さらに
は、防風筒27を挿通した状態に設けられており、安定
棒26は、金属シャフトとシャフトに遊嵌されたパイプ
形状物から構成され、金属シャフトは、マンドレルの先
端とネジにより連結されている。金属シャフトは第二ス
クリュー21の回転に同調して回転するが、パイプ形状
物はシャフトに遊嵌されているので、パイプ形状物の外
表面に接触しながら直線的に押出されるパリソン30を
捩じることはない。
【0066】上記インフレーションフィルムの製造装置
の押出機1から押出された溶融樹脂は、スクリューダイ
20の第二スクリュー21に受け止められる。また、上
記第二スクリュー21の回転数は押出機1の図1に示す
圧力計11で示される圧力の値が一定範囲となるように
設定されている。スクリューダイ20から押出された溶
融状態のパリソン30は、押出し速度よりも速い速度で
引き取られる。次いで、気体流路を経て安定棒の先端か
ら放出される気体により所定の膨比に膨張されてインフ
レーションフィルムが得られる。なお、図1では、スク
リューダイが立設されているが、床面に平行に横設され
たものであってもよい。
【0067】本発明における各種特性は、下記の方法に
よって測定されたものである。
【0068】〈極限粘度〉本明細書中での極限粘度はデ
カリン溶媒にて135℃で測定する値である。測定法は
ASTM D4020に基づいて行う。
【0069】〈膜厚の測定〉東京精密株式会社製膜厚測
定機ミニアックス(型式DH−150型)にて測定し
た。
【0070】〈空孔率〉試料重量を測定し、フィルムの
密度を0.95g/cm3 として、緻密フィルムとして
の厚みを計算で求め、上述の膜厚測定機による値との関
係で求めた。 ここで、Toは膜厚測定機で求めた実際のフィルムの厚
み、そして、Twは重量から計算した空孔率0%のフィ
ルムの厚みである。
【0071】〈引張強度〉オリエンテック社製引張試験
機テンシロン(型式RTM100型)で室温(23℃)
で行った。ASTM D882の方法A(試料幅15m
m)により測定し、算出した。
【0072】〈透気性の測定(ガーレー試験)〉AST
M D726に準じ、フィルムを標準ガーレーデンソメ
ーター(GurleyDensometer:東洋精機製作所製B型ガー
レーデンソメーター)により測定した。
【0073】〈融点の測定〉本発明にいうところの融点
は、ASTM D3417により、示差走査型熱量計
(DSC)により測定した値である。
【0074】〈結晶化度〉本発明による結晶化度は、示
差走査熱量計(DSC)により、ASTM D3417
に示された条件で融点を測定した際に、同時に測定され
る融解熱量を用い、理論結晶融解熱量の値に対する比率
として計算で求めた。
【0075】〈配向係数の測定〉理学電気(株)製X線
回折装置(型番RU300)にて、測定した。
【0076】〈結晶分散温度の測定〉粘弾性測定装置
(バイブロンDDV1型:オリエンテック社製)を用
い、フィルムの機械軸方向に切り出した試料を用いて、
110Hz、5℃/分の昇温速度で測定した温度分散曲
線から求めた値。
【0077】〈分子量分布の測定〉高温GPC(ゲルパ
ーミエーションクロマトグラフ:ウォータース社製15
0C型)で求めた値。
【0078】
【発明の効果】本発明によれば、可塑剤や溶剤を実質的
に使用することなく、比較的簡単なプロセスで、高強度
で透気性に優れた高分子量ポリオレフィンの多孔フィル
ムを製造することができ、とくに夾雑物を嫌う食品分野
でのろ過フィルム等に有効な多孔フィルムを得ることが
できる。
【0079】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を説明する
が、この実施例は本発明の好適な態様を説明するための
ものであり、発明の要旨を超えない限りこれに限定され
るものではない。
【0080】〈実施例1〉図1に示すインフレーション
フィルムの製造装置において、以下の仕様の装置を用い
て、高分子量ポリエチレン前駆体フィルムを調製した。
【0081】〈装置の仕様〉 押出機のスクリュー(以下、第一スクリューと呼ぶ)の
外径50mmφ; 第一スクリュー有効長さ1210mm(L/D=2
2); 第一スクリューフライトピッチ30mm(一定); 第一スクリュー圧縮比1.8; スクリューダイの有効長さ1075mm(L/D=3
0); ダイ出口アウターダイ内径36mmφ; ダイ出口マンドレル外径30mmφ; スクリューダイ(以下第二スクリューと呼ぶ)のスクリ
ュー外径50mmφ; 第二スクリュー有効長さ160mm(L/D=3.
2); 第二スクリューののフライトピッチ30mm(一定); 第二スクリューの圧縮比1.0; 安定棒の外径26mmφ; 安定棒の長さ400mm;
【0082】〈上記インフレーションフィルム装置を用
いた不透気性前駆体フィルムの調製〉高分子量ポリエチ
レン(極限粘度[ η] =14dl/g、融点=136
℃、嵩密度=0.47g/cm3 )のパウダーを用い、
図1に示す押出機のジョイント部(J)、ダイ基部(D
1)およびダイ先端部(D2)の設定温度を各々280
℃、200℃、170℃にし、第一スクリュー回転数を
15回転/分、第二スクリューの回転数を5回転/分に
設定して、環状の樹脂を押し出してスクリューダイ上部
にあるピンチロール(図示せず)で引き取る。その後、
第二スクリュー内部のマンドレルから安定棒まで連結さ
れた気体流路を通して、圧縮空気を吹き込み環状溶融押
出物を膨らませて、不透気性前駆体フィルムを調製し
た。このときフィルムを約150mmの直径になるよう
に膨らませ、さらにピンチロールで引き取ることによ
り、折り径(ピンチロールで挟んで折った後のフィルム
の幅)で235mm、フィルム厚さで約60μmのフィ
ルムを得た。
【0083】計算で求めたドラフト比は10、膨比は5
であった。表1に前駆体フィルムの特性を示す。 表1 ──────────────────────────────────── 厚み 結晶化度 透気性 配向係数 長周期 引張強度 MD TD (μm) (%) (秒/100cc) fc (nm) (MPa) (MPa) ──────────────────────────────────── 60 63 10000 以上 0.61 320 185 120 ──────────────────────────────────── MD:機械軸方向、TD:幅方向 粘弾性測定により求めた結晶分散温度は83℃であっ
た。このフィルムを試料Aとした。
【0084】〈熱処理〉前述の処理で得られた不透気性
前駆体フィルムを以下の方法で熱処理を行った。ピンチ
ロールで挟んで引き取ったフィルムを一対のスナップロ
ールと乾式空気循環オーブンを利用して連続熱処理を行
った。フィルムの移送速度は1m/分に設定し、オーブ
ンの温度は、105℃に設定した。ロールの移送速度は
送り出し側、引き取り側ともに等速であり、オーブンの
有効長は1.2mである。得られたフィルムの幅は22
5mmで、幅方向の収縮率は5%以内であった。
【0085】熱処理後のフィルム特性を表2に示した。 表2 ──────────────────────────────────── 厚み 結晶化度 透気性 配向係数 長周期 引張強度 MD TD (μm) (%) (秒/100cc) fc (nm) (MPa) (MPa) ──────────────────────────────────── 62 70 10000 以上 0.56 270 170 130 ──────────────────────────────────── MD:機械軸方向、TD:幅方向 粘弾性測定により求めた結晶分散温度は87℃であっ
た。このフィルムを試料Bとした。
【0086】〈多孔化のための延伸(第一の延伸)〉得
られた不透気性前駆体フィルム(試料A)及び熱処理を
施したフィルム(試料B)を以下のようにして多孔化の
ための延伸を行った。前工程で得られたフィルムは幅方
向に両側約10mmを切り取り、幅200mmの二枚の
フィルムとし、それぞれを紙管に巻き取り、以後、その
片方を用いて、一枚のフィルムで取り扱った。
【0087】熱処理で用いた一対のスナップロールと乾
式空気循環オーブンを利用して連続延伸を行った。オー
ブンの温度は65℃に設定し、送り出し側のロール速度
を2.5m/分、引き取り側ロール速度を5m/分とし
て元の長さの200%(2倍)に延伸し、延伸フィルム
を紙管に巻き取った。巻き取られたフィルムは、処理前
の半透明状態から、白色の不透明フィルムに変化した。
フィルムの幅方向の長さは190mmで、フィルムは約
5%幅方向に収縮した。フィルムを紙管から巻き出し
て、非拘束状態で放置すると、5分で元の長さの約13
0%まで収縮した。このときオーブンの有効長は1.2
mであり、計算で求める平均滞留時間は0.32分で、
これから計算される延伸速度は312.5%/分であっ
た。
【0088】〈孔構造固定のための最終的な延伸(第二
の延伸)〉紙管に巻き取った多孔延伸フィルムを用いて
直ちに、第二の延伸を行った。第一の延伸同様に一対の
スナップロールと乾式空気循環オーブンを利用して連続
延伸を行った。オーブンの温度は105℃に設定し、送
り出し側のロール速度を0.20m/分、引き取り側ロ
ール速度を0.24m/分として元の長さの120%
(1.2倍)に延伸し、延伸フィルムを紙管に巻き取っ
た。フィルムを紙管から巻き出して、5分間非拘束状態
で放置したが、収縮しなかった。このときオーブンの有
効長は、1.2mであり、計算で求める平均滞留時間は
5.45分で、これから計算される延伸速度は3.7%
/分であった。不透気性前駆体フィルムに対しての全変
形比は240%すなわち2.4倍であった。
【0089】得られた透気性多孔フィルムの特性を表3
に示した。 表3 ──────────────────────────────────── 試料 フィルム厚み 空孔率 最大細孔径 透気性 引張強度 MD TD (μm) (%) (μm) (秒/100cc) (MPa) (MPa) ──────────────────────────────────── A 43 42 0.4 560 210 70 B 58 55 0.5 240 190 82 ────────────────────────────────────
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において高分子量ポリオレフィン前駆体
フィルムを成形するためのインフレーションフィルム製
造装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 押出機 3 第一スクリュー 20 スクリューダイ 21 第二スクリュー 22 アウターダイ 23 マンドレル 24 気体流路 26 安定棒 27 防風筒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B29L 7:00 C08L 23:06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極限粘度が4dl/g以上である高分子
    量ポリオレフィンを、機械軸方向に結晶配向するように
    フィルム成形して結晶化度が60%以上の不透気性前駆
    体フィルムとし、ついで該前駆体フィルムを結晶分散温
    度以下の温度における第一の延伸で、該前駆体フィルム
    の長さに対して150%ないし300%の長さになるよ
    うに延伸することにより多孔化し、さらに結晶分散温度
    を超える温度における第二の延伸で、該延伸多孔化フィ
    ルムの長さに対して110%ないし300%の長さにな
    るように延伸および熱処理を行うことにより多孔構造を
    固定したことを特徴とする高分子量ポリオレフィン透気
    性多孔フィルムの製造方法。
  2. 【請求項2】前記結晶配向する操作が熱処理を含むもの
    である請求項1記載の高分子量ポリオレフィン透気性多
    孔フィルムの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記フィルム成形がインフレーションフ
    ィルム成形法によるものである請求項1または2記載の
    高分子量ポリオレフィン透気性多孔フィルムの製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記高分子量ポリオレフィンが高分子量
    ポリエチレンである請求項1ないし3のいずれか1記載
    の高分子量ポリオレフィン透気性多孔フィルムの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 得られる高分子量ポリエチレン透気性多
    孔フィルムが、空孔率30%以上、透気度1500秒/
    100cc以下である請求項4記載の高分子量ポリエチ
    レン透気性多孔フィルムの製造方法。
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