JPH10235877A - 記録ヘッドおよび記録ヘッドの製造方法 - Google Patents

記録ヘッドおよび記録ヘッドの製造方法

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JPH10235877A
JPH10235877A JP3796697A JP3796697A JPH10235877A JP H10235877 A JPH10235877 A JP H10235877A JP 3796697 A JP3796697 A JP 3796697A JP 3796697 A JP3796697 A JP 3796697A JP H10235877 A JPH10235877 A JP H10235877A
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JP
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ink
recording head
flow path
coating layer
coating material
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JP3796697A
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Hideo Yasutomi
英雄 保富
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Minolta Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より確実に記録ヘッド内のインクによる気泡
の抱込みを阻止する記録ヘッドおよび記憶ヘッドの製造
方法を提供する。 【解決手段】 層形成部材70は、管71を備え、管7
1の一方は流入路26a,28aに、他方は親水性のコ
ーティング材料(たとえばアクリル酸)を収容する図示
せぬ容器に接続されている。ノズル46a,46bから
吸引を行なうと、流入路26a,28a、インク供給室
42、インクインレット44、インクキャビティ40お
よびノズル46の内壁に全体的にコーティング材料が付
着する。吸引を停止し、記録ヘッド3を加熱すると、記
録ヘッド3内のインクとの全ての接触部である流入路2
6a,28a、インク供給室42、インクインレット4
4、インクキャビティ40およびノズル46の内壁に親
水性のコーティング層が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記録ヘッドおよび
記録ヘッドの製造方法に関し、特に、インクを吐出する
ことによって画像を形成する記録ヘッドおよび記録ヘッ
ドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の記録ヘッドは、主にイン
クジェットプリンタのような画像形成装置に用いられ、
基板と、基板上に形成された加圧部と、インクを収容し
加圧部によって加圧されることによる収容部とから主に
構成される。また、上述の基板,加圧部,収容部はそれ
ぞれ機能が異なるため通常異なる部材からなり、接着剤
を用いて互いに接続される。
【0003】このような記録ヘッドの構成部材に疎水性
の部材が含まれていると、その部材のインクによるぬれ
が悪くあまりぬれないため、記録ヘッドのインク流路内
を流通するインクが気泡を抱込んでしまう。そこで、イ
ンクの気泡抱込みを阻止すべく、インクの収容部を構成
する筐体の一壁面を親水性の樹脂を成形したもので構成
した記録ヘッドがあったが、インクの気泡抱込みの原因
は、構成部材が疎水性であることのみではなかったた
め、このような記録ヘッドでは、インクの気泡抱込みを
阻止することはできなかった。
【0004】気泡抱込みの他の原因としては、次のこと
が挙げられる。記録ヘッドのインク流路が複数の部材に
わたるよう構成されていると、各部材の表面に前述の親
水性樹脂がコートされてあっても、インク流路には部材
同士の接続部分等の凹凸が存在することになる。たとえ
ば部材寸法の微小な違いによる部材間の隙間や、接着剤
の厚さの不均一さに起因する隙間である。たとえ構成部
材に親水性のコーティングを施されていたとしても、こ
のインク流路の凹凸には施されていない。つまり、この
凹凸にコーティングが施されていないことが、記録ヘッ
ドの収容するインクの気泡抱込みの他の原因であった。
【0005】そこで、使用前の記録ヘッドのインク流路
の壁面にインクを付着させた後乾燥させて、インク流路
の壁面に溶媒の除去されたインク層を形成した記録ヘッ
ドがあった。
【0006】しかし、インク流路の壁面に上述のインク
層を形成しても、そのインク層は、単に乾燥により付着
していることから、たとえば通常の使用においてインク
を流通させた後記録ヘッドの吐出口の詰まりを防止する
ために吐出口の吸引を行なった場合に剥がれたり、流通
するインクに溶解してしまう可能性が高く、このような
記録ヘッドではインクの気泡抱込みを継続して阻止する
ことは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述のような気泡の抱
込みがあると、記録ヘッドの収容部のインクに加えられ
るべき加圧部からの圧力が、抱込まれた気泡がクッショ
ンとなってしまいインクに十分に伝えられなかったり、
抱込まれた気泡がインクの代わりに記録ヘッドから吐出
されてしまうことによる「インク抜け」が生じたりする
という、インクの吐出不良を生じてしまう。
【0008】また、インク流路の全部分にインク流路の
凹凸部をカバーできるようなコーティングを施しておく
ことも考えられるが、各部材ごとにコートする工程が発
生するだけでなく、部材同士の接着性にも影響する。こ
の場合、特に、加圧部として圧電素子が使用され、その
圧電素子が凹凸部にあると、その凹凸部からインクが圧
電素子に浸透してしまい、さらに吐出性能を低下させて
しまう。
【0009】本発明は、上述の課題を解決するためにな
されたものであり、その目的は、より確実に記録ヘッド
内のインクによる気泡の抱込みを阻止する記録ヘッドお
よび記録ヘッドの製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明
は、インクを吐出して画像を形成する記録ヘッドであっ
て、前記記録ヘッド内のインクとの全ての接触部に対し
て形成された親水性のコーティング層を含むことを特徴
としている。
【0011】請求項1に記載の発明によると、記録ヘッ
ドのインク流路の本来形成されることを意図していない
隙間等も含めてインクの接する全表面上に親水性のコー
ティング層が形成されていることから、記録ヘッド内の
インクに接触する面とインクとの接触角を小さくでき
る。つまり、インクに接触する面をインクによってぬれ
やすくすることができる。
【0012】これにより、記録ヘッド内を流れるインク
による気泡の抱込みを確実に阻止することができ、記録
ヘッドにおいて、インク抜け等のインクの吐出不良を防
止することができ、また、構成部材へのインクの浸透も
防止できる。
【0013】請求項2に記載の本発明は、インクを吐出
して画像を形成する記録ヘッドの製造方法であって、前
記記録ヘッド内のインク流路の形成の最終段階におい
て、前記記録ヘッド内のインク流路の表面上に親水性の
コーティング層を形成することを特徴としている。
【0014】請求項2に記載の発明によると、インク流
路の形成の最終段階においてインク流路のインクに接触
する面上に親水性のコーティング層が形成されるため、
インク流路に存在する凹凸がコーティング層により覆わ
れてこれにより、インク抜け等のインクの吐出不良を発
生しにくい記録ヘッドを製造することができる。
【0015】請求項3に記載の本発明は、請求項2に記
載の発明の構成に加えて、前記インク流路の表面上に親
水性のコーティング材料を付着させた後、前記付着させ
た親水性のコーティング材料に層形成のためのエネルギ
を与えることにより、前記親水性のコーティング層を形
成することを特徴としている。
【0016】請求項3に記載の発明によると、インク流
路の表面上に親水性のコーティング材料を付着させ、そ
の付着させたコーティング材料に、そのコーティング材
料をコーティング層とするための、層形成のためのエネ
ルギを与えられる。
【0017】これにより、容易にインク流路全体にコー
ティング層を形成することができる。
【0018】請求項4に記載の本発明は、請求項3に記
載の発明の構成に加えて、前記層形成のためのエネルギ
は、熱エネルギであることを特徴としている。
【0019】請求項4に記載の発明によると、コーティ
ング層を形成するためのエネルギとして、インク流路の
インクと接触する面に付着されているコーティング材料
に熱エネルギが与えられる。
【0020】これにより、より容易にコーティング層を
形成することができる。請求項5に記載の本発明は、請
求項3に記載の発明の構成に加えて、前記層形成のため
のエネルギは、光エネルギであることを特徴としてい
る。
【0021】請求項5に記載の発明によると、コーティ
ング層を形成するためのエネルギとして、インク流路の
インクと接触する面に付着されているコーティング材料
に光エネルギが与えられる。
【0022】これにより、より容易にコーティング層を
形成することができる。請求項6に記載の本発明は、請
求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の発明の構成に
加えて、前記親水性のコーティング材料は、酸素原子ま
たは窒素原子のいずれか一方を含む化合物を含有するこ
とを特徴としている。
【0023】請求項6に記載の発明によると、コーティ
ング材料が、酸素原子または窒素原子のいずれか一方を
含む化合物を含有するように構成される。
【0024】これにより、親水性のコーティング層を形
成するための親水性のコーティング材料を、より容易に
構成することができる。
【0025】請求項7に記載の本発明は、請求項3〜請
求項5のいずれか1項に記載の発明の構成に加えて、前
記親水性のコーティング材料は、金属原子を含む化合物
を含有する、ことを特徴としている。
【0026】請求項7に記載の発明によると、コーティ
ング材料が、金属原子を含む化合物を含有するように構
成される。
【0027】これにより、親水性のコーティング層を形
成するための親水性のコーティング材料が、より容易に
構成することができ、また、コーティング材料が金属原
子を含むため、記録ヘッドにおけるインク流路のインク
と接触する面に金属からなる部分がある場合には、コー
ティング層を、インク流路の該金属からなる部分に対し
てより確実に形成することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態の一例
を、図を参照しつつ説明する。
【0029】図1は、記録ヘッドを含むインクジェット
記録装置1の概略構成を示す斜視図である。
【0030】インクジェット記録装置1は、用紙やOH
Pシートなどの記録媒体である記録シート2と、インク
ジェット方式の記録ヘッド3と、記録ヘッド3をその底
面に保持するキャリッジ4と、キャリッジ4を記録シー
ト2の記録面に平行に往復移動させるための揺動軸5,
6と、キャリッジ4を揺動軸5,6に沿って往復駆動さ
せる駆動モータ7と、駆動モータ7の回転をキャリッジ
の往復運動に変えるためのタイミングベルト9、アイド
ルプーリ8とを含んでいる。
【0031】また、インクジェット記録装置1は、記録
シート2を搬送経路に沿って案内するガイド板を兼ねる
プラテン10と、プラテン10との間の記録シート2を
押さえ浮きを防止する紙押さえ板11と、記録シート2
を排出するための排出ローラ12、拍車ローラ13と、
記録ヘッド3のインク吐出不良時に良好な状態の回復さ
せる回復系14と、記録シート2を手動で搬送するため
の紙送りノブ15とを含んでいる。
【0032】記録シート2は、手差しあるいはカットシ
ートフィーダ等の給紙装置によって記録ヘッド3とプラ
テン10とが対向する記録部へ送り込まれる。この際、
図示しない紙送りローラの回転量が制御され、記録部へ
の搬送が制御される。
【0033】記録ヘッド3には、圧電素子が用いられ
る。圧電素子には電圧が印加され、歪みが生じる。この
歪みは、インクで満たされたチャンネルの容積を変化さ
せる。この容積の変化により、チャンネルに設けられた
ノズルからインクが吐出され、記録シート2への記録が
行なわれる。
【0034】キャリッジ4は、駆動モータ7、アイドル
プーリ8、タイミングベルト9により、記録シート2の
桁方向(記録シートを横切る方向)に主走査し、キャリ
ッジ4の底面に取付けられた記録ヘッド3は1ライン分
の画像を記録する。1ラインの記録が終わるごとに、記
録シート2の縦方向に送られ副走査され、次のラインが
記録される。
【0035】図2、図3および図4は、記録ヘッドの構
成を説明するための図である。図2は、記録ヘッド3の
部分的な下面図であり、図3は、図2のIII−III
線に沿う矢視断面図であり、図4は、図3のIV−IV
線に沿う矢視断面図である。なお、図2、図3および図
4では、ベースプレート36、振動板34、隔壁32に
形成されている流入路26a,28a(図9参照)は、
図示を省略している。
【0036】記録ヘッド3は、大径ヘッド部26と小径
ヘッド部28を含む。これら大径ヘッド部26と小径ヘ
ッド部28とは、チャンネルプレート30、隔壁32、
振動板34、ベースプレート36とを一体に重ねた構造
となっている。また、チャンネルプレート30の隔壁3
2との対向面と反対側の表面上には、撥水コート層99
が形成されている。
【0037】チャンネルプレート30は、金属セラミッ
ク,ガラスまたは合成樹脂などからなる。隔壁32との
対向面は電鋳またはフォトリソグラフィ等により微細加
工され、大径ヘッド部26と小径ヘッド部28とにはそ
れぞれにインク41を収容する複数のインクキャビティ
40と、各インクキャビティ40をインク供給室42に
連結するインクインレット44が形成されている。ま
た、大径用ノズル46aは、小径用ノズル46bよりも
径が大きい。なお、ここでは、大径用,小径用ノズルを
有する記録ヘッドを例示しているが、本発明は、これに
限定されるものではなく、単一径のノズルを有する記録
ヘッドでもよい。
【0038】図2に示すように、大径ヘッド部26と小
径ヘッド部28とのインクキャビティ40は、大径ヘッ
ド部26と小径ヘッド部28とが対向する方向に向かっ
て伸びる長溝状にかつ平行に形成されている。また、イ
ンク供給室42とインクキャビティ40とは、中央線3
8を挟んで対称に形成されており、図示しないインクタ
ンクに接続されている。
【0039】隔壁32としては、導電材料からなる薄肉
フィルムが使用されており、チャンネルプレート30と
振動板34との間に固定されている。なお、隔壁32
は、所定の張力が加わった状態で固定されている。
【0040】振動板34は、PZT振動子等の圧電素子
48を含む。その上面と下面には、それぞれ共通電極、
個別電極として利用される導電性金属層が設けられてい
る。また、振動板34は、まずベースプレート36に導
電性接着剤で固定され、その後ダイシング加工により縦
方向溝65(図4参照)と横方向溝64(図3参照)と
が形成され、分断される。この分断によって、各インク
キャビティ40に対応する圧電素子48と、隣接する圧
電素子48の間に位置する仕切り壁51と、これらを囲
む壁50とが分離される。
【0041】また、上述のダイシング加工により圧電素
子48の上下に設けられた導電性金属層もそれぞれ前述
の縦方向溝65と横方向溝64とにより分離され、隔壁
32に対向する金属層が共通電極48a、ベースプレー
ト36に対向する金属層が個別電極48bとされる。
【0042】ベースプレート36は、セラミック、金
属、ガラスまたは合成樹脂等からなる。振動板34との
対向面には、大径ヘッド部26、小径ヘッド部28の圧
電素子48に対応して導電リード部がスパッタリングま
たは蒸着等の周知の技術により形成されている。そして
上述のように形成された個別電極48bは、対応する導
電リード部に導電性接着剤を介して電気的に導通する。
【0043】また、これら共通電極48aと個別電極4
8bとが対向する領域においては、各圧電素子48は、
それぞれ高温下で分極処理されて活性化されている。
【0044】そして、共通電極48aと個別電極48b
との間に所定の電圧が印加されると、圧電素子48は変
形する。この圧電素子48の変形は、隔壁32に伝えら
れ、これにより、インクキャビティ40内のインク41
が加圧され、大径用ノズル46aおよび/または小径用
ノズル46bを介してインク滴を記録シートに向かって
吐出する。
【0045】撥水コート層99は、インクに対してぬれ
性の低い(接触角が大きい)材料を含有させ、必要に応
じて、適当な樹脂に公知の防カビ剤または抗菌剤を含有
させ、それとチャネルプレート30上のノズル46の吐
出口を除いた場所に塗布して形成されるものである。な
お、上記の樹脂の一例としては、ルミフロン(旭硝子社
製FEVE系塗料用フッ素樹脂の商品名)が挙げられ
る。
【0046】以上のような構成の記録ヘッド3では、キ
ャリッジ4内の記録ヘッド3の上部に配置されるインク
カートリッジ内に接続された図示しないインクタンクか
らインク供給室42にインク41が供給される。インク
供給室42のインク41は、インクインレット44を介
して各インクキャビティ40に分配される。
【0047】インクジェット記録装置1では、圧電素子
48の両端に設けられた共通電極48aと個別電極48
bとの間に印字信号である所定の電圧が印加され、応じ
て、圧電素子48は隔壁32を押す方向に変形する。圧
電素子48の変形は、隔壁32に伝えられ、これにより
インクキャビティ40内のインク41が加圧され、ノズ
ル46を介してインク滴を記録シート2に向かって吐出
する。
【0048】次に、インクジェット記録装置1の回復系
14(図1参照)の一例を図を参照して説明する。図5
は、回復系14の一例である吸引キャップ16の動作の
概略を説明するための斜視図である。
【0049】記録ヘッド3のクリーニング時には、記録
ヘッド3は、揺動軸5,6に沿って矢印a方向に移動す
ることにより、吸引キャップ16の前方に達し、(図7
に示す)メンテナンス位置にある状態となる。
【0050】キャップ吸引とは、記録ヘッド3がメンテ
ナンス位置にある状態で、記録ヘッド3のノズル46を
有する面を吸引キャップ16に密着させ、モータ18に
よって駆動されるピストンポンプ17によって矢印bの
方向にエアを吸引しつつ、インクの吐出を行なうことで
ある。このキャップ吸引により、ノズル周縁に混入し
た、印字に影響を与える気泡やごみ等を除去し、記録ヘ
ッド3のノズル周縁を正常な状態へと回復させることが
できる。
【0051】なお、自己パージとは、記録ヘッド3の圧
電素子48に、印字とは関係なく電圧を印加して、イン
クキャビティ40内のインク41を加圧し、ノズル46
から強制的にインク滴等を吐出させることである。この
自己パージを前述のキャップ吸引の前に行なうことによ
り、記録ヘッド3のノズル周縁を、より効果的に正常な
状態へと回復させることができる。
【0052】図6は、回復系14の一例の吸引キャップ
16の構成を概略的に説明する斜視図であり、図7は、
図6の吸引キャップ16の動作を説明するための吸引キ
ャップ16および記録ヘッド3の部分的な模式的断面図
である。
【0053】吸引キャップ16は、キャップ筐体52
と、キャップ取付け部材54と、ゴムキャップ56と、
スポンジ62と、吸引穴58とを含んでいる。
【0054】記録ヘッド3は、矢印C(図7参照)をノ
ズル46のインク吐出方向としているが、記録ヘッド3
がメンテナンス位置にある状態では、スポンジ62、ゴ
ムキャップ56および撥水コート層99により囲まれた
部分が気密性を保つように、撥水コート層99はゴムキ
ャップ56に密着する。
【0055】キャップ吸引時においては、記録ヘッド3
から吐出されるインクは、スポンジ62に吸収される。
【0056】なお、回復系14は、前述の吸引キャップ
16とともに、記録ヘッド3の撥水コート層99の表面
を摺擦して記録ヘッド3のノズルを有する撥水コート層
99に付着しているインクを除去する図示せぬワイピン
グ装置を、吸引キャップの隣に備えていてもよい。
【0057】図8は、キャリッジ4に記録ヘッド3およ
びインクカートリッジ80を装着する様子を示す、キャ
リッジ4の一部分、記録ヘッド3およびキャリッジ4上
に装着された記録ヘッド3の斜視図である。なお、図8
における矢印pは、図1における記録ヘッド3の記録シ
ート2に向けたインクの吐出方向を示している。また、
図8におけるキャリッジ4には、図1において示した揺
動軸5,6を通していた穴は省略されている。
【0058】記録ヘッド3は、キャリッジ4の底面に装
着されており、キャリッジ4は、インクカートリッジ8
0を出し入れする際に開閉される蓋4aを有している。
そして、インクカートリッジ80は、記録ヘッド3のイ
ンクキャビティ40にインクを供給するためのインク供
給口(図示せず)を底面に有し、インクカートリッジ8
0と記録ヘッド3は、供給管31で接続されている。
【0059】なお、本実施の形態では、インクカートリ
ッジ80は、キャリッジ4に着脱可能に内蔵されている
が、記録ヘッド3と一体的に形成され外部からインクの
補給を行なうような形態のものであってもよい。
【0060】本実施の形態における記録ヘッド3では、
前述のインクカートリッジ80から供給されるインク
は、ベースプレート36、振動板34、隔壁32におい
て適宜形成された流入路(後述する流入路26a,28
a)を経て、大径ヘッド部26と小径ヘッド部28のそ
れぞれのインク供給室42に供給される。つまり、本実
施の形態における記録ヘッド3においては、ベースプレ
ート36、振動板34、隔壁32においてそれぞれ形成
された流入路(後述する流入路26a,28a)、なら
びに、インク供給室42、インクインレット44、イン
クキャビティ40およびノズル46により、インクカー
トリッジ80から供給されノズル46から吐出されるイ
ンクの流路が構成されていることになる。これらにより
構成される、インクカートリッジ80から供給されノズ
ル46から吐出される記録ヘッド3内のインクの流路
を、以下「インク流路」と呼ぶことにする。
【0061】そして、本実施の形態における記録ヘッド
3では、上述のインク流路に親水性のコーティング層が
形成されている。
【0062】そこで、次に、記録ヘッド3のインク流路
における親水性のコーティング層の形成について説明す
る。
【0063】図9は、図3の記録ヘッド3に、コーティ
ング層形成用の層形成部材70を接続させた状態を示す
図である。
【0064】層形成部材70は、内部に管71を備えて
いる。そして、層形成部材70は、記録ヘッド3のベー
スプレート36に接続されている。管71のベースプレ
ート36に接続されている方の一端は、二手に分かれて
おり、それぞれは、ベースプレート36、振動板34お
よび隔壁32の内部に形成されているインク通過用の流
入路26a,28aのベースプレート36側の一端にそ
れぞれ接続されている。なお、流入路26a,28aの
それぞれの他端は、大径ヘッド部26と小径ヘッド部2
8のそれぞれのインク供給室42に接続されている。
【0065】一方、管71の他端(流入路26a,28
aと接続されていない方の一端)は、コーティングする
材料を収容する図示せぬ容器に接続されている。
【0066】なお、インク供給室42の流入路26a,
28aとの接続部分にはインクを流入させる等のための
穴が形成されている。
【0067】ここで、コーティング層の形成の具体的な
一例として、アクリロニトリルをコーティング材料とし
て使用する例を説明する。まず、インク供給室42、イ
ンクキャビティ40、インクインレット44およびノズ
ル46、隔壁32、振動板34、圧電素子48およびベ
ースプレート36の各部品を、適当な加工を施し、上述
の流入路26a,28aを形成する。
【0068】そして、流入路26a,28aの形成が完
了した後に、コーティング材料であるアクリロニトリル
を収容する容器が接続されている層形成部材70を、図
9のように記録ヘッド3に接続する。
【0069】そして、図7に示した吸引キャップ16の
ような吸引装置を記録ヘッド3の撥水コート層99を有
する面側に接続し、吸引装置に層形成部材70の一端に
接続されている容器内のアクリロニトリルを吸引させ
る。このようにして、コーティング材料であるアクリロ
ニトリルを、上述のインク流路の各壁面に付着させるこ
とができる。
【0070】そして、インク流路の内壁に、一様に、コ
ーティング材料であるアクリロニトリル付着したところ
で吸引装置による吸引を停止する。そして、記録ヘッド
3から吸引装置および層形成部材70を離間し、記録ヘ
ッド3を150℃で30分間加熱する。これにより、イ
ンク流路の内壁に付着したアクリロニトリルは、重合等
により層を形成する。
【0071】このようにして形成した層をコーティング
層Aとする。なお、上述のコーティング層形成に用いる
コーティング材料としては、加熱により重合を開始する
ものに限定されるわけではない。つまり、たとえばアジ
ポニトリルをコーティング材料として用い、加熱によっ
て乾燥させて生じる膜をコーティング層とすることもで
きる。この場合、インク流路の壁面は、インクが通過す
る部分であって、特に機械的応力を受けるような領域で
はないので、コーティング層の形成が表面処理程度でも
構わないのである。
【0072】上述の加熱は、たとえば、記録ヘッド3を
別途設けられるオーブン等の加熱装置の上に配置して行
なうことができる。
【0073】上述のようなコーティング層は、インク流
路の壁面が通常使用される水性のインクによりぬれやす
くするために形成される。したがって、コーティング層
を形成することにより、形成しない場合と比較して、イ
ンク流路の壁面とインクの接触角が小さくなることが期
待される。
【0074】ここで、インク流路の一部であるインクキ
ャビティ40の内壁は、たとえばニッケル電鋳処理がさ
れていることがあるが、ニッケル電鋳処理された表面と
一般の水溶性のインクの接触角は、60°〜70°程度
であり、インク流路の他の部分と一般の水溶性のインク
の接触角もほぼこの程度であると考えられる。
【0075】したがって、コーティング層を構成するコ
ーティング材料は、コーティング層を形成したことによ
り、インク流路の壁面と通常使用される水溶性インクと
の接触角は、55°以下、好ましくは、10°〜50°
となるよう構成されるべきであると考えられる。
【0076】そこで、本実施の形態では、コーティング
層を形成するコーティング材料としては、親水性の化合
物を含有させている。
【0077】上述の親水性の化合物としては、構成要素
として、酸素原子または窒素原子の少なくとも一方を含
む親水性の化合物が好ましい。
【0078】また、上述の親水性の化合物としては、構
成要素として、金属原子を含んでいる化合物が好まし
い。記録ヘッドにおいて、インク流路に金属からなる部
分を含んでいるものが多く、コーティング材料として、
金属原子を含む化合物を含んでいることにより、該金属
からなる部分に対してコーティング層がより安定して形
成されることが考えられるからである。
【0079】また、上述の親水性の化合物としては、構
成要素として、熱または光により重合を開始するモノマ
ーが好ましい。重合反応は連鎖的に起こるものであるの
で、より確実にコーティング層を形成することができる
と考えられるからである。
【0080】ここで、加熱によりコーティング層を形成
する別の例を示すと、たとえばコーティング材料とし
て、アクリロニトリルのかわりにエチレングリコールと
メタクリル酸エステルを重量比で1:1に混合したもの
を用い、130℃で60分加熱することによりコーティ
ング層(コーティング層Bとする)を形成することもで
きる。
【0081】また、コーティング材料は、常温で液体の
物質に限定されるものではない。コーティング材料とし
て気体の物質を用いることもできる。ここで、コーティ
ング材料として、液体の物質と気体の物質を用い、2段
階でコーティング層を構成する方法について説明する。
この場合は、まず、第1のコーティング材料として、フ
ェニルクロロシランをインク供給室42、インクキャビ
ティ40、インクインレット44およびノズル46の内
壁に付着させ、250℃で30分の加熱を行なった後、
第2のコーティング材料としてビニルクロロシランの気
体をインク供給室42、インクキャビティ40、インク
インレット44およびノズル46の内部に充填し、18
0℃で30分の加熱を行うことにより、コーティング層
(コーティング層Cとする)を形成することもできる。
【0082】また、表1に、本実施の形態のコーティン
グ層を形成することのできるコーティング材料(化合
物)の例を挙げる。
【0083】
【表1】
【0084】なお、表1に挙げた化合物の中で、アジポ
ニトリル、フタロニトリル、テトラヒドロフラン、N−
カルボキシアミノ酸無水物、2−ピロリジノン、エチレ
ングリコール、o−クレゾール、ジメチルアミンおよび
フェニルクロロシランについては、重合能はないと思わ
れるが、前述のとおり、これらをコーティング材料とし
て用いて、インク流路の表面処理ができればよいのであ
る。
【0085】なお、表1に挙げた化合物の中で、特に、
ケトンまたはアルコールは、コーティング層の形成に用
いるのに好ましい化合物である。爆発性などの危険がな
く、コーティング層形成の作業が行ないやすいからであ
る。
【0086】ここで、上述のような各方法によるコーテ
ィング層の形成の効果について説明する。
【0087】記録ヘッド3のインクキャビティの内壁の
材料の一例であるニッケル電鋳を行なった板の表面に上
述の各方法により形成されたコーティング層A〜Cの3
つのコーティング層をそれぞれ形成した板とインク(表
3に示す組成のインク)との接触角を測定した。また、
ニッケル電鋳を行なった板そのもの(コーティング層が
形成がなく前述の板と同一形状)とインク(表3に示す
組成のインク)との接触角を測定した。表2に測定結果
を示す。
【0088】
【表2】
【0089】表2から、上述のコーティング層A〜Cが
形成されているインクキャビティの内壁は、コーティン
グ層が形成されていない場合と比較して、インクとの接
触角が格段に小さくなっている。
【0090】したがって、上述のコーティング層A〜C
を形成すると、形成しない場合と比較して、板の表面が
インクにぬれやすくなることがわかった。
【0091】また、上述のコーティング層A〜Cがイン
ク流路の壁面に形成されている記録ヘッドと、コーティ
ング層が形成されていない記録ヘッドをそれぞれ用い、
本実施の形態において説明したインクジェット記録装置
1において、周波数5kHzのパルスを圧電素子に印加
して印字を行なった。このとき印加したパルスの波形を
図10に示す。
【0092】ここで、コーティング層が形成されていな
い記録ヘッドを用いた場合には、1000回のドット印
字を行なった場合、15回の、内部に発生した気泡が原
因と見られる「インク抜け」が見られた。
【0093】一方、上述のコーティング層A〜Cがイン
ク流路の壁面に形成されている記録ヘッドを用いた場合
には、いずれも、1000回のドット印字を行なっても
「インク抜け」は見られなかった。
【0094】つまり、コーティング層が形成されたイン
ク流路の壁面は、コーティング層が形成されていない壁
面と比較して、インクによってぬれやすいため、インク
カートリッジから供給されノズルから吐出されるインク
が気泡を抱込みにくくなるのである。
【0095】以上説明した本実施の形態においては、コ
ーティング層は、インク流路の壁面に付着させたコーテ
ィング材料を加熱によりコーティング層としたが、本発
明におけるコーティング層の形成方法は、これに限定さ
れるものではない。内壁に付着させたコーティング材料
を光照射によりコーティング層とすることも考えられ
る。
【0096】図11は、記録ヘッド3のインク流路の壁
面に付着させたコーティング材料を光照射によってコー
ティング層とする層形成部材170を記録ヘッド3に装
着させた場合の記録ヘッド3および層形成部材の断面図
である。
【0097】図11を用いて、光照射によるコーティン
グ層の形成について説明する。層形成部材170は、記
録ヘッド3のベースプレート36の一面に、図9を用い
て説明した層形成部材70と同様に接続されている。ま
た、管171の一端は、二手に分かれており、それぞれ
は、管71(図9参照)と同様に、記録ヘッド3のベー
スプレート36等に形成されている流入路26a,28
aに接続されている。
【0098】また、管171は、光ファイバ172を内
包している。この層形成部材170を用いたコーティン
グ層の形成は、まず、図9を用いて説明したように、記
録ヘッド3のインク流路の壁面に適当なコーティング材
料を付着させた後、そのコーティング材料に、光ファイ
バ172により所望の波長の光を照射することにより行
う。
【0099】上述のような光ファイバ172を用いた光
照射によりコーティング層を形成する例としては、たと
えばコーティング材料としてメタクリル酸エステルを用
い、適当な波長の光を光ファイバ172から照射して、
メタクリル酸エステルを光開始重合によりコーティング
層とする例がある。
【0100】なお、上述のような光開始重合によりコー
ティング層を形成するためのコーティング材料は、メタ
クリル酸エステルに限定されるものではなく、記録ヘッ
ド3のインク流路の壁面に付着させることができるもの
であればよい。
【0101】また、この場合に用いられるコーティング
材料は、光照射により光開始重合を行なうものに限定さ
れるものではない。光照射により昇華して膜を形成する
ような物質であってもよい。
【0102】このように、コーティング層の形成のため
のエネルギとして光を用いることにより、記録ヘッド3
の構成要素として熱を加えたくない材料が用いられてい
る場合でも、コーティング層を形成することができる。
【0103】また、以上説明したコーティング層の形成
においては、インク流路の壁面にコーティング材料を付
着させるために、層形成部材を接続させた記録ヘッド3
の撥水コート層99のある面を吸引装置に密着させ、イ
ンク流路を吸引することにより行なったが、インク流路
へのコーティング材料の付着は、この方法に限定される
ものではない。インク流路へのコーティング材料の付着
の別の方法の一例を、以下に、説明する。
【0104】図12は、ベルジャー100と真空ポンプ
(図示省略)を用いて、記録ヘッド3のインク流路の壁
面にコーティング材料を付着させる様子を示す図であ
る。
【0105】図12を参照して、ベルジャー100内の
台106上にはビーカ107が載置され、ビーカ107
の中には支え台108が載置されている。記録ヘッド3
はベルジャー100内で支え台108により支持されて
おり、記録ヘッド3の撥水コート層99の裏側には、管
271を内包する層形成部材270が接続されている。
なお、層形成部材270および管271は、記録ヘッド
3に対して、(図9を用いて説明した)層形成部材70
および管71と同様の位置関係にあることから、これら
の構成については説明を省略する。なお、管271の一
端は、ベルジャー100の外にあるコック102を備え
る容器101に接続されている。
【0106】ベルジャー100は、蓋体110と本体1
11とからなり、蓋体110と本体111との間にはパ
ッキン100a,100bが挟まれており、ベルジャー
100内が密閉できるようになっている。なお、蓋体1
10には、大気リーク弁として用いられるバルブ103
を含む管が挿入されている。バルブ103を含む管と蓋
体110との間には、パッキン103a,103bが挟
まれている。また、容器101と蓋体110との間に
は、パッキン101a,101bが挟まれている。
【0107】また、ベルジャー100は、図示せぬ真空
ポンプに接続されており、その真空ポンプとの間には、
バルブ104がある。なお、真空ポンプは図中の矢印v
の方向に吸引するように構成されている。また、バルブ
104と真空ポンプとを接続する管は途中で分岐してお
り、その分岐した管には大気リーク弁として用いられる
バルブ105がある。また、バルブ104と真空ポンプ
との間のバルブ105につながる分岐点より真空ポンプ
側には、液体窒素等による図示せぬコールドトラップが
設けられている。
【0108】図12に示す装置を用いて、記録ヘッド3
のインク流路の壁面に、コーティング材料の一例として
アクリル酸を付着させる例について説明する。
【0109】まず、コック102、バルブ103、バル
ブ104およびバルブ105を閉じて真空ポンプの運転
を始める。そして、バルブ104を開き、ベルジャー1
00内を適度に真空にした後、バルブ104を閉じ、コ
ック102を徐々に開き、容器101内にあるアクリル
酸をベルジャー100内に移す。アクリル酸が、管27
1を介して記録ヘッド3のインク流路を経てノズル46
から適度に零れ落ち、インク流路の壁面にアクリル酸が
付着したと判断したら、コック102を閉じる。そし
て、バルブ103を開いてリークし、ベルジャー100
内の記録ヘッド3を取出す。
【0110】このようなコーティング材料の付着方法に
よると、コーティング材料を、記録ヘッド3のインク流
路の壁面に、気泡を含まないように付着させることがで
きる。したがって、この付着方法により付着させたコー
ティング材料を用いて層形成させた場合、形成する層内
に気泡が含まれにくくなり、よりインク流路の壁面に密
着したコーティング層を形成することができる。
【0111】以上説明した本実施の形態でのコーティン
グ材料のインク流路への付着方法では、インク流路の壁
面に全体的にコーティング材料を付着させることができ
る。したがって、インク流路全体に、コーティング層を
形成させることができる。
【0112】また、以上説明した本実施の形態において
は、インクジェット記録装置1の記録ヘッド3のインク
流路のコーティング層は、記録ヘッド3のインク流路の
形成の最終段階で形成されている。
【0113】ここで、コーティング層を、インク流路の
形成の最終段階で形成したことの効果について説明す
る。
【0114】この効果を説明するための比較例として、
以下のようにして作製した記録ヘッドを用意した。
【0115】まず、前述のコーティング層A(アクリロ
ニトリルをコーティング材料とし、加熱により形成した
層)を記録ヘッド3のベースプレート36、振動板3
4、隔壁32においてそれぞれ形成された流路、ならび
に、インク供給室42、インクインレット44、インク
キャビティ40およびノズル46の各部材のインク流路
を構成する部分に形成した。なお、この場合、各部材の
インク流路を構成する部分とは、たとえばインク供給室
やインクキャビティではインクと接触する内壁であり、
ベースプレートや振動板ではそれぞれに通る流入路26
a,28aのインクと接触する内壁である。
【0116】そして、コーティング層Aを形成した上記
の各部品を組み立てて接着することにより、比較例の記
録ヘッドを作製した。つまり、この比較例として作製さ
れた記録ヘッドは、本実施の形態において説明したコー
ティング層Aがインク流路に形成されているのではある
が、そのコーティング層Aは、記録ヘッドのインク流路
の構成要素の組み立ておよび接着の前に形成されている
ことになる。つまり、コーティング層はインク流路の最
終段階で形成されたのではない。
【0117】ここで、本実施の形態において、コーティ
ング層Aをインク流路に形成されている記録ヘッドを記
録ヘッドPとし、比較例として作製されたインク流路の
構成要素の組み立ておよび接着前にコーティング層Aを
形成された記録ヘッドを記録ヘッドQとする。これら2
つの記録ヘッド(記録ヘッドPおよび記録ヘッドQ)を
それぞれ図8に示すようにキャリッジに装着し、表3に
示す組成のインクを用い、インクジェット記録装置1に
おいて実際に次のような実験1および実験2を行なっ
た。なお、表3中の多価アルコールとしてはたとえばジ
エチレングリコールがあり、多価アルコールエーテルと
しては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが
ある。また、実験1および実験2の結果を表4に示す。
【0118】
【表3】
【0119】実験1 記録ヘッドのノズルから連続して100回インクを吐出
させた。
【0120】実験2 上記の実験1を行なった後、インクカートリッジ内のイ
ンクタンク(インクが充填されている部材)をインクカ
ートリッジから一度抜き出し(この状態では、インクカ
ートリッジにはインクが入っていない状態である)、吸
引キャップ16により記録ヘッドの吸引(図7参照)を
行なった後、再度インクタンクをインクカートリッジに
装着し、ノズルから連続して100回インクを吐出させ
た(記録ヘッドの吸引は、公知の液送ポンプ(0.6c
c/min.)で1分間吸引することによりを行なっ
た)。
【0121】
【表4】
【0122】表4から、記録ヘッドQでは、実験1およ
び実験2においてインクの吐出されるべき時にインクが
吐出されない「ドット印字欠落」が生じている(100
回のインク吐出のうち、実験1では3ドット欠落、実験
2では5ドット欠落)が、記録ヘッドPでは、実験1お
よび実験2のいずれにおいても「ドット印字欠落」は生
じていない。これは、両記録ヘッドにおいてコーティン
グ層を形成する段階が異なることが原因となっていると
考えられる。
【0123】つまり、記録ヘッドPではインク流路を構
成する各要素の接続部分等の微少な凹凸をインク流路形
成の最終段階で形成されたコーティング層により覆うこ
とができるが、記録ヘッドQでは各要素をコーティング
後に接続しているため前述の凹凸をコーティングで覆う
ことができない。このため、記録ヘッドQでは、記録ヘ
ッドPよりもインク流路がインクにぬれにくくなり、イ
ンクに抱込まれた気泡がインクの代わりに吐出されてし
まうことによる「インク抜け」が記録ヘッドPよりも起
こりやすくなっていると考えられる。一方、記録ヘッド
Pでは、上記の2つの実験においてドット印字の欠落が
なかったことから、この程度では、「インク抜け」は起
こらない、と考えられる。
【0124】また、記録ヘッドPでは、前述の凹凸をコ
ーティング層により覆われるため、記録ヘッドQと比較
して、インクの圧電素子48への浸透がかなり起こり難
いことも、上述のインク吐出性能の違いの要因となって
いると考えられる。
【0125】このように、上記記録ヘッドPの構成によ
り、より確実に記録ヘッド内のインクによる気泡の抱込
みを阻止する記録ヘッドが提供された。
【0126】なお、以上説明した実施の形態において、
記録ヘッド3により、インクを吐出して画像を形成する
記録ヘッドが構成され、記録ヘッド3のインク流路に形
成されたコーティング層により、記録ヘッド内のインク
との全ての接触部に対して形成された親水性のコーティ
ング層が構成されている。
【0127】なお、上記の親水性コーティング層は、表
4の結果から、記録ヘッド内のインク流路の形成の最終
段階において形成されることが好ましい。
【0128】なお、今回開示された実施の形態は、全て
の点で例示であって制限的なものではないと考えられる
べきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく前
掲の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれること
が意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の記録ヘッドを含むインク
ジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の記録ヘッドの部分的な下面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う矢視断面図であ
る。
【図4】図3のIV−IV線に沿う矢視断面図である。
【図5】図1の回復系の一例である吸引キャップの動作
の概略を説明するための斜視図である。
【図6】図5の吸引キャップの構成を概略的に説明する
斜視図である。
【図7】図5の吸引キャップおよび記録ヘッドの部分的
な模式的断面図である。
【図8】キャリッジに記録ヘッドおよびインクカートリ
ッジを装着する様子を示す斜視図である。
【図9】図3の記録ヘッドに、コーティング層形成用の
層形成部材を接続させた状態を示す図である。
【図10】本実施形態のインクジェット記録装置におい
て、印加したパルスの波形を示す図である。
【図11】記録ヘッドのインク流路の壁面に付着させた
コーティング材料を光照射によってコーティング層とす
る層形成部材を記録ヘッドに装着させた場合の記録ヘッ
ドおよび層形成部材の断面図である。
【図12】ベルジャーと真空ポンプを用いて、記録ヘッ
ドのインク流路の壁面にコーティング材料を付着させる
様子を示す図である。
【符号の説明】
3 記録ヘッド 26a,28a 流入路 34 振動板 36 ベースプレート 40 インクキャビティ 42 インク供給室 48 圧電素子 50,51 壁 70 層形成部材 71 管 99 撥水コート層

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを吐出して画像を形成する記録ヘ
    ッドであって、 前記記録ヘッド内のインクとの全ての接触部に対して形
    成された親水性のコーティング層を含む、記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 インクを吐出して画像を形成する記録ヘ
    ッドの製造方法であって、 前記記録ヘッド内のインク流路の形成の最終段階におい
    て、前記記録ヘッド内のインク流路の表面上に親水性の
    コーティング層を形成する、記録ヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記インク流路の表面上に親水性のコー
    ティング材料を付着させた後、前記付着させた親水性の
    コーティング材料に層形成のためのエネルギを与えるこ
    とにより、前記親水性のコーティング層を形成する、請
    求項2に記載の記録ヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記層形成のためのエネルギは、熱エネ
    ルギである、請求項3に記載の記録ヘッドの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記層形成のためのエネルギは、光エネ
    ルギである、請求項3に記載の記録ヘッドの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記親水性のコーティング材料は、酸素
    原子または窒素原子のいずれか一方を含む化合物を含有
    する、請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の記録
    ヘッドの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記親水性のコーティング材料は、金属
    原子を含む化合物を含有する、請求項3〜請求項6のい
    ずれか1項に記載の記録ヘッドの製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6866366B2 (en) 2002-04-23 2005-03-15 Hitachi, Ltd. Inkjet printer and printer head
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