JPH10221346A - 血液凝固能の測定方法 - Google Patents

血液凝固能の測定方法

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JPH10221346A
JPH10221346A JP2558497A JP2558497A JPH10221346A JP H10221346 A JPH10221346 A JP H10221346A JP 2558497 A JP2558497 A JP 2558497A JP 2558497 A JP2558497 A JP 2558497A JP H10221346 A JPH10221346 A JP H10221346A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 反応系におけるフィブリン塊の生成速度を抑
制して凝固時間(測定可能時間)を延長することによ
り,測定を終了した時点でも,生成されたフィブリン塊
が反応セルの壁面に固着しないようにして,測定後の反
応セルの再使用を可能にすると共に,一般的な自動分析
装置で測定できるようにすること。 【解決手段】 試薬を希釈液で希釈する希釈工程(S1
02)と,希釈した試薬を用いて,所定量の検体および
試薬を反応セルに分注し,混合させることにより,希釈
した反応系を作成する反応系作成工程(S103)と,
反応系の濁度を光学的に測定する濁度測定工程(S10
4)と,濁度に基づいて,検体の血液凝固能が正常範囲
であるか,血液凝固能が高いことによる異常範囲である
か,血液凝固能が低いことによる異常範囲であるかを判
定する判定工程(S105)と,測定済みの反応セルを
洗浄する洗浄工程(S106)と,を含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,検体と試薬とを混
合させて反応系を作成し,反応系でフィブリン塊が生成
されることによって生じる濁度を光学的に測定して検体
の血液凝固能を測定する血液凝固能の測定方法に関し,
より詳細には,フィブリン塊の生成速度を抑制すること
により,血液凝固能の測定可能時間を延長して一般の自
動分析装置の使用を可能とすると共に,反応セルの再使
用を図れるようにした血液凝固能の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】血液検査項目の一つとして,血液凝固能
を測定して,検体(ここでは,検査対象者の血液成分)
の凝血障害の鑑別を行う項目が知られている。具体的に
は,この凝血障害の鑑別を行う項目の代表的なものとし
て,PT測定用試薬を用いて検体のプロトロンビン時間
(PT)を測定するPT項目や,APTT測定用試薬を
用いて検体の活性化部分トロンボプラスチン時間(AP
TT)を測定するAPTT項目等がある。
【0003】また,血液凝固能の測定方法としては,
検体と試薬とを混合させて反応系を作成し,該反応系で
フィブリン塊が生成されることによって生じる粘度変化
を測定する方法や,検体と試薬とを混合させて反応系
を作成し,該反応系でフィブリン塊が生成されることに
よって生じる濁度を光学的に測定する方法の2つの方法
がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記従
来の血液凝固能の測定方法によれば,フィブリン塊の生
成によって生じる粘度変化または濁度を測定すること
で,血液凝固能を測定しているものの,反応系における
フィブリン塊の生成速度が速いため,測定を終了した時
点で,生成されたフィブリン塊が凝固して反応セルの壁
面に固着してしまうという問題点があった。
【0005】換言すれば,血液凝固能の測定に使用する
反応セルは,使い捨てセルを用いる必要があるため,コ
ストがかかるという問題点や,使い捨てセルが使用可能
な自動分析装置でしか測定できないという問題点があっ
た。
【0006】また,の粘度変化を測定する方法では,
例えば,カップ(反応セル)の中にスチールボールを入
れ,検体と試薬とを混合し,フィブリン塊の生成に伴っ
て粘度が上昇してくると一定速度で回っているカップ中
のスチールボールがカップと一緒に動き始めることを利
用して,このボールが動き始める時間を凝固時間として
測定しているが,このような測定が行える専用の測定装
置が必要であるという問題点があった。換言すれば,一
般の自動分析装置を用いて測定を行うことができないと
いう問題点があった。
【0007】一方,濁度を測定する方法では,原理的
には,使い捨てセルが使用可能な自動分析装置であれ
ば,その装置を使用して血液凝固能の測定を行うことが
できるものの,現実的には,フィブリン塊の生成速度が
速く,凝固時間(換言すれば,測定可能時間)が短いた
め,測光ポイント(反応開始から濁度の測光を行うまで
の測光間隔)が20秒程度に設定されている一般的な自
動分析装置では,測定時点で既に反応が終了しているこ
とになり,濁度の測定が行えないという問題点があっ
た。特に,PT項目の測定では,PTの正常範囲の凝固
時間が10秒前後と短いため,一般的な自動分析装置で
は,前述したように測光ポイントの関係で測定できなか
った。
【0008】さらに,上記従来の濁度を測定する方法
によれば,フィブリン塊の生成速度が速く,凝固時間
(換言すれば,測定可能時間)が短いため,血液凝固能
の測定を行う場合に,検体の血液凝固能が正常範囲であ
るか(換言すれば,正常範囲の時間内で凝固が終了した
か),血液凝固能が低いことによる異常範囲であるか
(換言すれば,正常範囲の時間より長く凝固時間がかか
ったか)の2種類の鑑別しか行えなず,血液凝固能が高
いことによる異常範囲の場合(正常範囲より短い時間で
凝固してまう場合)には,一般的な自動分析装置の測光
ポイントでは過凝固の状態で測定されて正常範囲として
鑑別されてしまうという不具合があった。
【0009】本発明は上記に鑑みてなされたものであっ
て,反応系におけるフィブリン塊の生成速度を抑制して
凝固時間(測定可能時間)を延長することにより,測定
を終了した時点でも,生成されたフィブリン塊が反応セ
ルの壁面に固着しないようにして,測定後の反応セルの
再使用を可能にすると共に,一般的な自動分析装置で測
定できるようにすることを目的とする。
【0010】本発明は上記に鑑みてなされたものであっ
て,反応系におけるフィブリン塊の生成速度を抑制して
凝固時間(測定可能時間)を延長することにより,血液
凝固能が高いことによる異常範囲の場合(正常範囲より
短い時間で凝固してまう場合)でも,一般的な自動分析
装置で測定できるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに,請求項1に係る血液凝固能の測定方法は,検体と
試薬とを混合させて反応系を作成し,前記反応系でフィ
ブリン塊が生成されることによって生じる濁度を光学的
に測定して前記検体の血液凝固能を測定する血液凝固能
の測定方法において,前記検体または/および試薬を希
釈液で希釈する希釈工程と,前記希釈工程で希釈した前
記検体または/および試薬を用いて,所定量の前記検体
および試薬を反応セルに分注し,混合させることによ
り,希釈した反応系を作成する反応系作成工程と,前記
希釈した反応系の濁度を光学的に測定する濁度測定工程
と,前記濁度測定工程で測定した濁度に基づいて,前記
検体の血液凝固能が正常範囲であるか,血液凝固能が高
いことによる異常範囲であるか,血液凝固能が低いこと
による異常範囲であるかを判定する判定工程と,前記濁
度測定工程で濁度を測定した後に,測定済みの前記反応
セルを洗浄する洗浄工程と,を含むものである。
【0012】また,請求項2に係る血液凝固能の測定方
法は,請求項1記載の血液凝固能の測定方法において,
前記希釈液が,前記希釈した反応系の塩濃度を前記フィ
ブリン塊の生成に適した塩濃度の範囲から外すために,
あらかじめNaClおよびCaCl2 が添加されている
か,またはNaClおよびCaCl2 を含まないもので
ある。
【0013】また,請求項3に係る血液凝固能の測定方
法は,請求項1または2記載の血液凝固能の測定方法に
おいて,前記希釈した反応系で,前記検体が20倍希釈
程度で希釈された状態であり,前記試薬が100倍希釈
程度で希釈された状態であるものである。
【0014】また,請求項4に係る血液凝固能の測定方
法は,検体と試薬とを混合させて反応系を作成し,前記
反応系でフィブリン塊が生成されることによって生じる
濁度を光学的に測定して前記検体の血液凝固能を測定す
る血液凝固能の測定方法において,前記反応系の塩濃度
を前記フィブリン塊の生成に適した塩濃度の範囲から外
すために,前記試薬にNaClおよびCaCl2 を添加
する塩添加工程と,所定量の前記検体および試薬を反応
セルに分注し,混合させることにより,反応系を作成す
る反応系作成工程と,前記反応系の濁度を光学的に測定
する濁度測定工程と,前記濁度測定工程で測定した濁度
に基づいて,前記検体の血液凝固能が正常範囲である
か,血液凝固能が高いことによる異常範囲であるか,血
液凝固能が低いことによる異常範囲であるかを判定する
判定工程と,前記濁度測定工程で濁度を測定した後に,
測定済みの前記反応セルを洗浄する洗浄工程と,を含む
ものである。
【0015】また,請求項5に係る血液凝固能の測定方
法は,請求項1〜4記載のいずれか一つの血液凝固能の
測定方法において,前記試薬が,PT測定用試薬または
APTT測定用試薬であるものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下,本発明の血液凝固能の測定
方法について,〔実施の形態1〕,〔実施の形態2〕,
〔実施の形態3〕の順で,図面を参照して詳細に説明す
る。
【0017】〔実施の形態1〕実施の形態1の血液凝固
能の測定方法(以下,希釈法と記載する)は,検体また
は/および試薬を希釈液で希釈して,これら検体,試薬
および希釈液を混合した反応系(すなわち,希釈した反
応系)においてフィブリン塊の生成反応を行わせること
により,該フィブリン塊の生成速度を抑制して凝固時間
(測定可能時間)を延長できるようにしたものである。
【0018】ただし,既存の血液凝固能の測定方法の発
想では,最も血液凝固を効率的に行える条件で,確実に
フィブリン塊を生成して血液凝固能を測定することを目
的としているため,フィブリン塊の生成を抑制すること
は考えにくかった。また,従来,反応系を希釈した場合
に,検体の血液凝固(フィブリン塊の生成反応)が起こ
るか否か検証されておらず,またフィブリン塊が生成さ
れた場合でも血液凝固能の測定に利用できるが否か検証
されていなかった。
【0019】したがって,以下に示すように, 希釈法(実施の形態1の血液凝固能の測定方法)の概
略フローチャート, 希釈法の検討項目 希釈法の同時再現性 希釈法と従来法との相関性 の順で,希釈法の説明と共に,希釈法によって従来法と
同様に血液凝固能を測定できることを証明する。
【0020】希釈法の概略フローチャート 図1は,実施の形態1の血液凝固能の測定方法(希釈
法)の概略フローチャートを示す。ここでは,検体のプ
ロトロンビン時間(PT)から血液凝固能を測定する場
合を例として説明する。
【0021】また,使用する検体,試薬,希釈液,測定
装置および測定条件は以下の通りである。 検体:血液凝固検査で用いる検体は,血漿であり,全血
から血球等(赤血球,白血球,血小板)を除去したもの
である。具体的には,抗凝固剤を入れた真空採血管で採
血し,採血した全血を遠心分離すると血漿(検体)が得
られる。 試薬:市販のPT測定用試薬(商品名:トロンボプラス
チン・C,販売元:株式会社ミドリ十字)を用いる。 希釈液:HEPES緩衝液30mMに,NaCl(13
0mM),CaCl2(12.5mM)を添加して塩濃
度を調整する。次に,この緩衝液をPH7.35に調整
し,希釈液とする。 希釈条件(希釈倍率):希釈液396μlを用いて試薬
4μlを希釈(100倍希釈)する。その後,試薬・希
釈液の混合液400μlを検体20μlを用いて希釈
(約20倍希釈)し,希釈した反応系とする。 測定装置:一般的な自動分析装置を用いる。具体的に
は,日立製作所製の自動分析装置(7050形日立自動
分析装置)を使用する。 測光ポイント:自動分析装置7050の1ポイント20
秒の測光間隔において,5−32ポイントの範囲の少な
くとも二つのポイントを,濁度(吸光度)の測光ポイン
トして設定する。
【0022】図1のフローチャートにおいて,先ず,検
体,試薬または希釈液が入ったカップをそれぞれ自動分
析装置に載置する(S101)。このとき,載置された
検体のカップは室温に保たれ,試薬および希釈液のカッ
プはそれぞれ冷却されている。
【0023】次に,試薬4μlと希釈液396μlを混
合したものを所定の反応セルに分注する(S102:請
求項1の希釈工程)。これによって,試薬が希釈(10
0倍希釈)されたことになる。
【0024】次に,ステップS102で希釈した試薬が
入った反応セルに,検体4μlを分注し,混合させるこ
とにより,希釈した反応系を作成する(S103:請求
項1の反応系作成工程)。なお,ここで検体を分注した
時点を0ポイントとして測光ポイントのカウントが開始
される。
【0025】ステップS103で検体を分注してから,
あらかじめ設定した測光ポイント(例えば,10ポイン
ト)に到達すると,前記希釈した反応系の吸光度(濁
度)を光学的に測定する(S104:請求項1の濁度測
定工程)。
【0026】ステップS104で測定した吸光度(濁
度)に基づいて,検体の血液凝固能が正常範囲である
か,血液凝固能が高いことによる異常範囲であるか,血
液凝固能が低いことによる異常範囲であるかを判定する
(S105:請求項1の判定工程)。具体的には,自動
分析装置のプリンタまたは表示部に,測定した吸光度を
表示し,オペレータ(分析者)が目視で吸光度を確認し
て,あらかじめ検証された正常値の吸光度の範囲に入っ
ているか,または上下の何れに外れているかに基づい
て,正常値の吸光度の範囲の場合に検体の血液凝固能が
正常範囲であると判定し,正常値の範囲を超えている場
合に検体の血液凝固能が高いことによる異常であると判
定し,正常値の範囲より低い場合に検体の血液凝固能が
低いことによる異常であると判定する。なお,この判定
工程は,あらかじめ判定プログラムを作成して,自動分
析装置に組み込むことにより,自動化することができる
のは勿論である。
【0027】その後,ステップS103で吸光度(濁
度)を測定した後に,測定済みの反応セルを洗浄する
(S106:請求項1の洗浄工程)。なお,希釈法で
は,希釈した反応系を用いることにより,フィブリン塊
の生成速度を抑制して凝固時間(測定可能時間)が延長
されているため,測定を終了した時点でも,生成された
フィブリン塊が反応セルの壁面に固着しない。したがっ
て,一般的な自動分析装置に備わっている洗浄工程で,
使用済みの反応セルを容易に洗浄することができ,測定
後の反応セルの再使用が可能となる。
【0028】前述したように実施の形態1の血液凝固能
の測定方法(希釈法)によれば,反応系におけるフィブ
リン塊の生成速度を抑制して凝固時間(測定可能時間)
を延長することにより,測定を終了した時点でも,生成
されたフィブリン塊が反応セルの壁面に固着しないよう
にして,測定後の反応セルの再使用が可能となる。
【0029】また,凝固時間(測定可能時間)を延長す
ることにより,測光ポイントを大きくすることができる
ため,一般的な自動分析装置で測定することができる。
【0030】さらに,血液凝固能が高いことによる異常
範囲の場合(正常範囲より短い時間で凝固してまう場
合)でも,一般的な自動分析装置で測定することができ
る。
【0031】希釈法の検討項目 次に,前述した希釈法で説明したように,反応系を希釈
した場合に,反応系におけるフィブリン塊の生成速度を
抑制して凝固時間(測定可能時間)の延長が行えるこ
と,および検体の血液凝固能の測定が行えること,につ
いて具体的に説明する。
【0032】希釈法を実施する場合に,反応系を希釈す
ることによって,フィブリン塊の生成速度が自動分析装
置で測定するのに適した生成速度に抑制され,かつ,測
定した吸光度(濁度)から血液凝固能の判定を確実に行
えることが重要(必須条件)である。
【0033】このため,希釈法を実施するための検討項
目として,以下の項目を設定し,上記必須条件を満たす
ようにこれらの項目を検討した。なお,これらの検討項
目は互いに影響し合うため,多種多様な条件で実験を行
った結果に基づいて,最終的にそれぞれの項目の実験が
最適に行える条件で希釈法を実施した。
【0034】また,測定装置としては,一般的な自動分
析装置を用いることを前提とし,一般的な自動分析装置
の1ポイント20秒の測光間隔において,5−32ポイ
ントの範囲で測光を行った。
【0035】−1 検量線データ(希釈法のΔODと
従来法の凝固時間との関係) 先ず,図2の検量線データを参照して,希釈法のΔOD
と従来法の凝固時間との関係について説明する。なお,
ΔODは一定時間の吸光度差を示し,ここでは,自動分
析装置における5ポイント目の吸光度と32ポイント目
の吸光度との差(32ポイント目の吸光度−5ポイント
目の吸光度)を示す。
【0036】従来の粘度変化を測定する方法で測定した
際の凝固時間が,11.3秒,15.5秒,21.7
秒,25.4秒,30.2秒の5つの種類の検体を準備
する。これら5つの検体を,希釈法(図1の概略フロー
チャートで示した方法)を用いて5ポイント目の吸光度
と32ポイント目の吸光度との差(ΔOD)を求め,以
下の結果を得た。 凝固時間(11.3秒) → ΔOD(1385) 凝固時間(15.5秒) → ΔOD (724) 凝固時間(21.7秒) → ΔOD (397) 凝固時間(25.4秒) → ΔOD (259) 凝固時間(30.2秒) → ΔOD (132)
【0037】次に,希釈法におけるΔODと従来法の凝
固時間とを用いて図2に示すように検量線データを作成
した。これにより,希釈法で測定したΔODを従来法の
凝固時間に換算することができ,希釈法による血液凝固
能の判定(鑑別)を行う際の基準を得ることができる。
なお,この検量線データが実際に使用可能であること
は,後述する希釈法の同時再現性と希釈法と従来法
との相関性によって明らかになる。
【0038】−2 希釈液中の塩濃度の検討 次に,希釈液中の塩濃度の影響について説明する。本発
明者は,希釈法の実験を行う過程で,希釈液の塩濃度を
調整しない場合(すなわち,塩が無添加の場合)に検体
中の塩濃度の違いによって,従来法で凝固時間が同じ検
体でも,希釈法で測定したΔODの値にずれが生じるこ
とを発見した。これは反応系の塩濃度が検体の塩濃度の
みに依存するため,その影響が大きく現れるものと推定
される。換言すれば,反応系の塩濃度によってフィブリ
ン塊の生成が影響を受けることを発見し,最適な希釈液
の塩濃度について検討した。
【0039】図3は,希釈液中のNaCl,CaCl2
濃度の影響を示す説明図である。ここでは,試薬(トロ
ンボプラスチン・C)を4μl,希釈液(HEPES緩
衝液,PH7.35)を396μl,検体(正常血漿と
高度異常血漿の2種類)を20μlとして,図示の如
く,塩濃度(NaCl,CaCl2 )を変えて希釈法を
実施し,ΔOD(吸光度差:32−5ポイント)を測定
して塩濃度の影響を調べた。なお,図3において,ΔO
D1は検体が正常血漿の場合の吸光度差,ΔOD2は検
体が高度異常血漿の場合の吸光度差を示す。
【0040】先ず,NaCl,CaCl2 を添加しない
場合,ΔOD1は1352,ΔOD2は130であっ
た。この値を塩濃度の影響の判定値として用いる。判定
値としては,できるだけΔODが大きいほど再現性や,
異常と正常の分離能が大きくなるので好ましい。
【0041】次に,NaClを130mMとして,Ca
Cl2 を3〜50mMの範囲で変えたところ,CaCl
2 が12.5mMで最も判定値に近い値を示した。
【0042】次に,CaCl2 を12.5mMとして,
NaClを30〜500mMの範囲で変えたところ,N
aClが30mMで最も判定値に近い値を示した。
【0043】さらに,NaCl:130mM,CaCl
2 :12.5mMのΔOD1,2と,NaCl:30m
M,CaCl2 :12.5mMのΔOD1,2との比較
から,NaCl:130mM,CaCl2 :12.5m
Mが最も判定値に近い値であることが分かった。
【0044】上記の結果より,試薬(トロンボプラスチ
ン・C)を4μl,希釈液(HEPES緩衝液,PH
7.35)を396μl,検体(正常血漿と高度異常血
漿の2種類)を20μlとして用いる場合の希釈法にお
いて,希釈液の塩濃度をNaCl:130mM,CaC
2 :12.5mMに調整することが望ましいことが明
らかになった。
【0045】−3 希釈倍率の検討 次に,希釈倍率について説明する。希釈倍率の影響とし
ては,反応系中における試薬の希釈倍率および検体の希
釈倍率の影響の両方が考えられる。したがって,図4に
示すように,試薬:希釈液:検体のそれぞれの比率を変
えて希釈した反応系を生成し,希釈法で1分後(3ポイ
ント目)の吸光度OD01と10分後(30ポイント目)
の吸光度OD10を求め,反応速度比(OD10/OD01
を求めた。この反応速度比がOD10/OD01≦1の場
合,1分後に既に凝固が殆ど終了しており,10分後ま
でフィブリン塊の生成状態に変化がないことを示してい
る。また,OD10/OD01≒10の場合には,反応速度
が緩やかで,かつ,反応タイムコースが直線(10分間
の反応の進行状態がほぼ時間に比例している)であるこ
とを示している。
【0046】さらに,反応セルを洗浄して再使用する目
的から,フィブリン塊の生成が進み過ぎて,フィブリン
塊が反応セルに固着(凝固)することは望ましくないの
で,従来の粘度変化を測定する方法を用いて凝固の程度
を観測し,十分な時間(例えば,検体が正常血漿の場合
には11秒以上)経過してもスチールボールが動かない
場合に,『凝固しない』と判定し,スチールボールが動
くが1回転せずに元に戻る場合に,『わずかに凝固す
る』と判定し,スチールボールが1回転以上動く場合
に,『凝固する』と判定し,凝固(すなわち,フィブリ
ン塊の固着発生)の程度の目安とした。
【0047】図4に示すように,反応速度比が大きく,
凝固の程度が『凝固しない』であるものを探すと,試薬
4μl:希釈液396μl:検体20μlで測定した結
果が該当することが分かる。これより,希釈した反応系
で,検体が20倍希釈程度で希釈された状態であり,試
薬が100倍希釈程度で希釈された状態であることが望
ましいことが明らかである。
【0048】図5は,このようにして求めた希釈倍率
(試薬4μl:希釈液396μl:検体20μl)を用
いて,希釈法で1−32ポイントの各ポイントのOD
(吸光度)を測定し,OD(反応状態)と時間(ポイン
ト)との反応タイムコースを作成したものである。図5
の反応タイムコースから明らかなように,反応開始時か
ら4ポイント目までは,反応速度が安定していない(す
なわち,反応タイムコースが折れ線となっており,また
傾斜が大きい)ものの,5ポイント目以降は,ほぼ直線
となって反応が安定している。この直線が緩やかである
ほど,フィブリン塊の生成が抑制されていることを示
し,さらに直線度が高い程,フィブリン塊の生成が安定
的に時間に比例して進んでいることを示している。
【0049】−4 希釈液種類の検討 次に,希釈液の種類について検討結果を示す。希釈液と
して,イミダゾール緩衝液,グリシン緩衝液,HEPE
S緩衝液を用いて,それぞれの緩衝液396μlにNa
Cl(130mM),CaCl2 (12.5mM)を添
加して塩濃度を調整し,PH7.35に調整した。
【0050】さらにこれらの希釈液を用いて,試薬(ト
ロンボプラスチン・C)を4μl,希釈液を396μ
l,検体(正常血漿と高度異常血漿の2種類)を20μ
lとして,希釈法で32−5ポイントのΔOD1(検体
が正常血漿の場合の吸光度差),ΔOD2(検体が高度
異常血漿の場合の吸光度差)を求めた。
【0051】図6は,上記希釈液の種類に対応した検討
結果を示す。図示の如く,イミダゾール緩衝液,グリシ
ン緩衝液,HEPES緩衝液の何れを希釈液として用い
ても大差なく,希釈法に使用可能であることが明らかに
なった。
【0052】−5 希釈法の検討結果 以上の各検討項目の結果より,希釈法を実施する場合の
反応系の希釈条件として,以下のことが明らかになっ
た。
【0053】第1に,試薬(トロンボプラスチン・C)
を4μl,希釈液(HEPES緩衝液,PH7.35)
を396μl,検体(正常血漿と高度異常血漿の2種
類)を20μlとして用いる場合の希釈法において,希
釈液の塩濃度をNaCl:130mM,CaCl2 :1
2.5mMに調整することが望ましい。
【0054】第2に,希釈した反応系で,検体が20倍
希釈程度で希釈された状態であり,試薬が100倍希釈
程度で希釈された状態であることが望ましい。
【0055】第3に,希釈液は,イミダゾール緩衝液,
グリシン緩衝液,HEPES緩衝液の何れを用いても良
い。
【0056】希釈法の同時再現性 次に,上記希釈法の検討結果に基づいて,実施の形態1
の血液凝固能の測定方法(希釈法)を実施した場合の同
時再現性について説明する。
【0057】図7は,希釈法の同時再現性を示すための
説明図である。検体として正常血漿を用いて,同一の測
定条件で10回の測定を行った。また,検体として高度
異常血漿を用いて,同一の測定条件で10回の測定を行
った。なお,ここでは,希釈法で測定したOD値を図2
の検量線データを用いて従来法(従来の粘度変化を測定
する方法)の凝固時間(秒)に変換した値を測定結果と
して示す。
【0058】図7に示すように,それぞれ平均値Xが1
1.1(秒)と23.9(秒)であり,再現性が2.4
%と2.3%であった。この結果より,本発明の希釈法
の再現性が十分に高く,血液凝固能の測定に使用可能で
あることが明らかである。
【0059】希釈法と従来法との相関性 次に,希釈法と従来法(従来の粘度変化を測定する方
法)との相関性について説明する。図8は,複数の検体
(30検体)を,それぞれ希釈法と従来法の両方で測定
し,相関図を作成したものである。図示の如く,非常に
相関度(R=0.825)の高い対応を示しており,従
来法で正常範囲と判定される範囲の検体は,希釈法でも
正常範囲と判定される領域に分布しており,希釈法が従
来法と同様に血液凝固能の測定に使用可能であることが
明らかである。
【0060】〔実施の形態2〕実施の形態2の血液凝固
能の測定方法(以下,希釈法と記載する)は,基本的に
実施の形態1の血液凝固能の測定方法と同様であり,試
薬としてAPTT測定用試薬を用いてAPTT項目を測
定するようにしたものである。
【0061】ただし,APTT項目の測定では,試薬と
してAPTT測定用試薬を用いて,検体の活性化部分ト
ロンボプラスチン時間(APTT)を測定するため,一
連のフィブリン塊の生成反応サイクルにおいて,実施の
形態1で示したPT測定用試薬と,APTT測定用試薬
の作用部位が異なる。
【0062】したがって,ここでは,APTT測定用試
薬の作用部位に違いによる希釈法の変更部分のみを詳細
に説明する。
【0063】APTT測定用試薬は,第1試薬(商品
名:アクチン)と第2試薬(CaCl 2 )との2つの試
薬からなる。これは,検体と第1試薬とを反応させて,
約3〜5分間放置し,活性化を行った後,第2試薬をト
リガーとしてフィブリン塊の生成を行うためである。
【0064】また,APTT項目の測定では,フィブリ
ン塊の生成速度がPT項目の測定と比較して遅いため,
自動分析装置での測光ポイントを19−32に設定す
る。また,測光ポイントのカウントは,検体と第2試薬
とを混合した時点から開始する。
【0065】また,希釈液の塩濃度は,基本的に実施の
形態1と同様であるが,前述したようにCaCl2 が第
2試薬として添加されるため,希釈液の塩濃度はNaC
lのみで調整するものとする。
【0066】なお,上記の相違点は,血液凝固能の測定
を行う当業者にとっては,周知のことであり,実施の形
態1の希釈法で示した概略フローチャート(図1参照)
を変更して容易にAPTTの測定を行うことができる。
【0067】さらに試薬の変更に伴って試薬の希釈倍率
を変更した。詳細は後述するが,APTT測定用試薬の
場合,実験によって希釈倍率10倍が最適であった。
【0068】次に,APTT測定用試薬を用いた場合の
希釈法の実施例について具体的に説明する。測定は以下
の条件で行った。検体:正常血漿 試薬:第1試薬(商品名:アクチン),第2試薬(Ca
Cl2 ) 希釈液:希釈液として第1〜第3の3種類を用意する。
第1の希釈液は,イミダゾール緩衝液(50mM)にN
aCl(100mM)を添加して塩濃度を調整する。第
2の希釈液は,HEPES緩衝液(30mM)にNaC
l(130mM)を添加して塩濃度を調整する。第3の
希釈液は,HEPES緩衝液(30mM)はNaClの
添加なし。すなわち,塩濃度の調整なし。なお,これら
の希釈液はPH7.35に調整する。 測定装置:一般的な自動分析装置を用いる。具体的に
は,日立製作所製の自動分析装置(7050形日立自動
分析装置)を使用する。 測光ポイント:自動分析装置7050の1ポイント20
秒の測光間隔において,19−32ポイントの範囲の少
なくとも二つのポイントを,濁度(吸光度)の測光ポイ
ントして設定する。
【0069】上記のように複数の希釈液(第1の希釈液
〜第3の希釈液)をそれぞれ単独に用いて,第1試薬お
よび第2試薬を,10倍希釈,50倍希釈,100倍希
釈で希釈し,それぞれの場合について,以下のように希
釈法でΔOD(32ポイント目の吸光度と19ポイント
目の吸光度の差)を求めた。
【0070】先ず,第1試薬(アクチン)を上記の希釈
倍率で希釈してR1とし,次に,第2試薬(1.25m
MのCaCl2 )を同様に希釈してR2とする。
【0071】次に,検体をSとして,S/R1/R2=
20μl/250μl/250μlの比率で,検体Sに
R1を添加後,5分間活性化した後,R2を添加し,R
2添加後19−32ポイントで測光(吸光度の測定)を
行った。図9にその測定結果を示す。
【0072】図9から明らかなように,各希釈液におい
て,それぞれ10倍希釈以外ではΔODが良好に測定で
きなかった。したがって,APTT測定用試薬を用いた
場合には,試薬(第1試薬および第2試薬)を10倍希
釈することが望ましい。
【0073】次に,上記希釈法の検討結果に基づいて,
実施の形態2の血液凝固能の測定方法(希釈法)を実施
した場合の同時再現性について説明する。
【0074】図10(a),(b)は,希釈法の同時再
現性を示すための説明図である。同図(a)が第1の希
釈液を用いて10倍希釈で,検体として正常血漿を用い
て,同一の測定条件で10回の測定を行った場合,およ
び検体として高度異常血漿を用いて,同一の測定条件で
10回の測定を行った場合を示す。同図(b)が第2の
希釈液を用いて10倍希釈で,検体として正常血漿を用
いて,同一の測定条件で10回の測定を行った場合,お
よび検体として高度異常血漿を用いて,同一の測定条件
で10回の測定を行った場合を示す。なお,ここでは,
希釈法で測定したOD値をあらかじめ作成した検量線デ
ータを用いて従来法(従来の粘度変化を測定する方法)
の凝固時間(秒)に変換した値を測定結果として示す。
【0075】図10(a)に示すように,それぞれ平均
値Xが38.1(秒)と44.6(秒)であり,再現性
が0.96%と0.87%であった。この結果より,本
発明の希釈法の再現性が十分に高く,血液凝固能の測定
に使用可能であることが明らかである。
【0076】また,図10(b)に示すように,それぞ
れ平均値Xが36.0(秒)と46.4(秒)であり,
再現性が1.74%と1.52%であった。この結果よ
り,本発明の希釈法の再現性が十分に高く,血液凝固能
の測定に使用可能であることが明らかである。
【0077】図11(a),(b)は,希釈法と従来法
(従来の粘度変化を測定する方法)との相関性を示す説
明図である。同図(a)は,第1の希釈液・10倍希釈
の場合の相関図を示し,同図(b)は,第2の希釈液・
10倍希釈の場合の相関図を示す。なお,複数の検体
(30検体)を,それぞれ希釈法と従来法の両方で測定
し,相関図を作成したものである。
【0078】同図(a),(b)に示すように,非常に
相関度(R=0.845,R=0.862)の高い対応
を示しており,従来法で正常範囲と判定される範囲の検
体は,希釈法でも正常範囲と判定される領域に分布して
おり,希釈法が従来法と同様に血液凝固能の測定に使用
可能であることが明らかである。
【0079】〔実施の形態3〕実施の形態3の血液凝固
能の測定方法(以下,塩濃度調整法と記載する)は,反
応系の塩濃度をフィブリン塊の生成に適した塩濃度の範
囲から外すことにより,該フィブリン塊の生成速度を抑
制して凝固時間(測定可能時間)を延長できるようにし
たものである。
【0080】図12は,実施の形態3の血液凝固能の測
定方法の概略フローチャートを示す。ここでは,検体の
プロトロンビン時間(PT)から血液凝固能を測定する
場合を例として説明する。
【0081】図12のフローチャートにおいて,先ず,
検体または試薬が入ったカップをそれぞれ自動分析装置
に載置する(S1201)。
【0082】次に,所定の反応セルに試薬を分注し,続
いてNaCl,CaCl2 を添加して塩濃度を調整する
(S1202:請求項4の塩添加工程)。
【0083】次に,ステップS1202で塩濃度を調整
した試薬の入った反応セルに,検体を分注し,混合させ
ることにより,反応系を作成する(S1203:請求項
4の反応系作成工程)。なお,ここで検体を分注した時
点を0ポイントとして測光ポイントのカウントが開始さ
れる。
【0084】ステップS1203で検体を分注してか
ら,あらかじめ設定した測光ポイント(例えば,10ポ
イント)に到達すると,前記希釈した反応系の吸光度
(濁度)を光学的に測定する(S1204:請求項4の
濁度測定工程)。
【0085】ステップS1204で測定した吸光度(濁
度)に基づいて,検体の血液凝固能が正常範囲である
か,血液凝固能が高いことによる異常範囲であるか,血
液凝固能が低いことによる異常範囲であるかを判定する
(S1205:請求項4の判定工程)。
【0086】その後,ステップS1203で吸光度(濁
度)を測定した後に,測定済みの反応セルを洗浄する
(S1206:請求項4の洗浄工程)。なお,塩濃度調
整法では,塩濃度を調整した反応系を用いることによ
り,フィブリン塊の生成速度を抑制して凝固時間(測定
可能時間)が延長されているため,測定を終了した時点
でも,生成されたフィブリン塊が反応セルの壁面に固着
しない。したがって,一般的な自動分析装置に備わって
いる洗浄工程で,反応セルを容易に洗浄することがで
き,測定後の反応セルの再使用が可能である。
【0087】前述したように実施の形態3の血液凝固能
の測定方法(塩濃度調整法)によれば,反応系における
フィブリン塊の生成速度を抑制して凝固時間(測定可能
時間)を延長することにより,測定を終了した時点で
も,生成されたフィブリン塊が反応セルの壁面に固着し
ないようにして,測定後の反応セルの再使用が可能とな
る。
【0088】また,凝固時間(測定可能時間)を延長す
ることにより,測光ポイントを大きくすることができる
ため,一般的な自動分析装置で測定することができる。
【0089】さらに,血液凝固能が高いことによる異常
範囲の場合(正常範囲より短い時間で凝固してまう場
合)でも,一般的な自動分析装置で測定することができ
る。
【0090】
【発明の効果】以上説明したように,本発明の血液凝固
能の測定方法(請求項1)は,検体と試薬とを混合させ
て反応系を作成し,反応系でフィブリン塊が生成される
ことによって生じる濁度を光学的に測定して検体の血液
凝固能を測定する血液凝固能の測定方法において,検体
または/および試薬を希釈液で希釈する希釈工程と,希
釈工程で希釈した検体または/および試薬を用いて,所
定量の検体および試薬を反応セルに分注し,混合させる
ことにより,希釈した反応系を作成する反応系作成工程
と,希釈した反応系の濁度を光学的に測定する濁度測定
工程と,濁度測定工程で測定した濁度に基づいて,検体
の血液凝固能が正常範囲であるか,血液凝固能が高いこ
とによる異常範囲であるか,血液凝固能が低いことによ
る異常範囲であるかを判定する判定工程と,濁度測定工
程で濁度を測定した後に,測定済みの反応セルを洗浄す
る洗浄工程と,を含むため,反応系におけるフィブリン
塊の生成速度を抑制して凝固時間(測定可能時間)を延
長することにより,測定を終了した時点でも,生成され
たフィブリン塊が反応セルの壁面に固着しないようにし
て,測定後の反応セルの再使用を可能にでいる。また般
的な自動分析装置で測定することができる。さらに血液
凝固能が高いことによる異常範囲の場合(正常範囲より
短い時間で凝固してまう場合)でも,一般的な自動分析
装置で測定できる。
【0091】また,本発明の血液凝固能の測定方法(請
求項2)は,請求項1記載の血液凝固能の測定方法にお
いて,希釈液が,希釈した反応系の塩濃度をフィブリン
塊の生成に適した塩濃度の範囲から外すために,あらか
じめNaClおよびCaCl 2 が添加されているか,ま
たはNaClおよびCaCl2 を含まないものであるた
め,フィブリン塊の生成速度の抑制を良好に行える。
【0092】また,本発明の血液凝固能の測定方法(請
求項3)は,請求項1または2記載の血液凝固能の測定
方法において,希釈した反応系で,検体が20倍希釈程
度で希釈された状態であり,試薬が100倍希釈程度で
希釈された状態であるため,フィブリン塊の生成速度の
抑制を良好に行える。
【0093】また,本発明の血液凝固能の測定方法(請
求項4)は,検体と試薬とを混合させて反応系を作成
し,反応系でフィブリン塊が生成されることによって生
じる濁度を光学的に測定して検体の血液凝固能を測定す
る血液凝固能の測定方法において,反応系の塩濃度をフ
ィブリン塊の生成に適した塩濃度の範囲から外すため
に,試薬にNaClおよびCaCl2 を添加する塩添加
工程と,所定量の検体および試薬を反応セルに分注し,
混合させることにより,反応系を作成する反応系作成工
程と,反応系の濁度を光学的に測定する濁度測定工程
と,濁度測定工程で測定した濁度に基づいて,検体の血
液凝固能が正常範囲であるか,血液凝固能が高いことに
よる異常範囲であるか,血液凝固能が低いことによる異
常範囲であるかを判定する判定工程と,濁度測定工程で
濁度を測定した後に,測定済みの反応セルを洗浄する洗
浄工程と,を含むため,反応系におけるフィブリン塊の
生成速度を抑制して凝固時間(測定可能時間)を延長す
ることにより,測定を終了した時点でも,生成されたフ
ィブリン塊が反応セルの壁面に固着しないようにして,
測定後の反応セルの再使用を可能にでいる。また般的な
自動分析装置で測定することができる。さらに血液凝固
能が高いことによる異常範囲の場合(正常範囲より短い
時間で凝固してまう場合)でも,一般的な自動分析装置
で測定できる。
【0094】また,本発明の血液凝固能の測定方法(請
求項5)は,請求項1〜4記載のいずれか一つの血液凝
固能の測定方法において,試薬が,PT測定用試薬また
はAPTT測定用試薬であるため,検体のプロトロンビ
ン時間(PT)または検体の活性化部分トロンボプラス
チン時間(APTT)から血液凝固能を測定することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の血液凝固能の測定方法(希釈
法)の概略フローチャートである。
【図2】検量線データ(希釈法のΔODと従来法の凝固
時間との関係)を示す説明図である。
【図3】希釈液中のNaCl,CaCl2 濃度の影響を
示す説明図である。
【図4】希釈倍率の影響を示す説明図である。
【図5】反応タイムコースを示す説明図である。
【図6】希釈液種類の検討結果を示す説明図である。
【図7】実施の形態1の血液凝固能の測定方法(希釈
法)の同時再現性を示すための説明図である。
【図8】実施の形態1の血液凝固能の測定方法(希釈
法)と従来法(従来の粘度変化を測定する方法)との関
係を示す相関図である。
【図9】実施の形態2の血液凝固能の測定方法(希釈
法)における望ましい希釈倍率を示す説明図である。
【図10】実施の形態2の血液凝固能の測定方法(希釈
法)の同時再現性を示すための説明図である。
【図11】実施の形態2の血液凝固能の測定方法(希釈
法)と従来法(従来の粘度変化を測定する方法)との関
係を示す相関図である。
【図12】実施の形態4の血液凝固能の測定方法(塩濃
度調整法)の概略フローチャートである。
【符号の説明】
ΔOD 一定時間の吸光度差

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検体と試薬とを混合させて反応系を作成
    し,前記反応系でフィブリン塊が生成されることによっ
    て生じる濁度を光学的に測定して前記検体の血液凝固能
    を測定する血液凝固能の測定方法において,前記検体ま
    たは/および試薬を希釈液で希釈する希釈工程と,前記
    希釈工程で希釈した前記検体または/および試薬を用い
    て,所定量の前記検体および試薬を反応セルに分注し,
    混合させることにより,希釈した反応系を作成する反応
    系作成工程と,前記希釈した反応系の濁度を光学的に測
    定する濁度測定工程と,前記濁度測定工程で測定した濁
    度に基づいて,前記検体の血液凝固能が正常範囲である
    か,血液凝固能が高いことによる異常範囲であるか,血
    液凝固能が低いことによる異常範囲であるかを判定する
    判定工程と,前記濁度測定工程で濁度を測定した後に,
    測定済みの前記反応セルを洗浄する洗浄工程と,を含む
    ことを特徴とする血液凝固能の測定方法。
  2. 【請求項2】 前記希釈液は,前記希釈した反応系の塩
    濃度を前記フィブリン塊の生成に適した塩濃度の範囲か
    ら外すために,あらかじめNaClおよびCaCl2
    添加されているか,またはNaClおよびCaCl2
    含まないことを特徴とする請求項1記載の血液凝固能の
    測定方法。
  3. 【請求項3】 前記希釈した反応系で,前記検体が20
    倍希釈程度で希釈された状態であり,前記試薬が100
    倍希釈程度で希釈された状態であることを特徴とする請
    求項1または2記載の血液凝固能の測定方法。
  4. 【請求項4】 検体と試薬とを混合させて反応系を作成
    し,前記反応系でフィブリン塊が生成されることによっ
    て生じる濁度を光学的に測定して前記検体の血液凝固能
    を測定する血液凝固能の測定方法において,前記反応系
    の塩濃度を前記フィブリン塊の生成に適した塩濃度の範
    囲から外すために,前記試薬にNaClおよびCaCl
    2 を添加する塩添加工程と,所定量の前記検体および試
    薬を反応セルに分注し,混合させることにより,反応系
    を作成する反応系作成工程と,前記反応系の濁度を光学
    的に測定する濁度測定工程と,前記濁度測定工程で測定
    した濁度に基づいて,前記検体の血液凝固能が正常範囲
    であるか,血液凝固能が高いことによる異常範囲である
    か,血液凝固能が低いことによる異常範囲であるかを判
    定する判定工程と,前記濁度測定工程で濁度を測定した
    後に,測定済みの前記反応セルを洗浄する洗浄工程と,
    を含むことを特徴とする血液凝固能の測定方法。
  5. 【請求項5】 前記試薬は,PT測定用試薬またはAP
    TT測定用試薬であることを特徴とする請求項1〜4記
    載のいずれか一つの血液凝固能の測定方法。
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