JPH10219399A - B含有ステンレス鋼及びb含有ステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents

B含有ステンレス鋼及びb含有ステンレス鋼材の製造方法

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JPH10219399A
JPH10219399A JP9027371A JP2737197A JPH10219399A JP H10219399 A JPH10219399 A JP H10219399A JP 9027371 A JP9027371 A JP 9027371A JP 2737197 A JP2737197 A JP 2737197A JP H10219399 A JPH10219399 A JP H10219399A
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Haruhiko Kajimura
治彦 梶村
Shuji Yoshida
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Abstract

(57)【要約】 【課題】中性子吸収能力が高く、しかも熱間加工性に優
れ、原子力関連の中性子遮蔽材に好適なB含有ステンレ
ス鋼及びB含有ステンレス鋼材の製造方法の提供。 【解決手段】C:0.05%以下、Si:0.1〜1.0%、Mn:
0.2〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cu:0.5
%以下、Ni:7〜15%、Cr:18〜25%、Mo:0.01〜1.5
%、Al:0.005%〜0.2%、B:0.9〜2.5%、Sn+Pb:0.0
3%以下、N:0.04%以下、残部はFe及び不純物からな
り、Ni+0.5Mn+3B+30(C+N)+11.6−1.36(Cr+1.5
Si+Mo)の値が−10以上4以下であるB含有ステンレス
鋼。上記に記載の化学組成を有する鋼を1100〜1210
℃に加熱した後、成形比が 4以上の分塊圧延又は熱間鍛
造を行い、次いで熱間圧延する B含有ステンレス鋼材の
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核燃料輸送用容
器、核燃料保管用ラック及び使用済み核燃料保管用ラッ
クなどの原子力関連の中性子遮蔽材として用いられるB
含有ステンレス鋼及びB含有ステンレス鋼材の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】Bは中性子捕獲作用が大きいため、Bを
含有するオーステナイトステンレス鋼は中性子の制御材
及び遮蔽材として、核燃料輸送用容器、核燃料保管用ラ
ック及び使用済み核燃料保管用ラックなどに用いられき
た。
【0003】一方、近年では前記の容器やラックに対し
て、特に、小形化と低コスト化が求められるようにな
り、B含有ステンレス鋼を薄肉に加工することが必要に
なって、中性子吸収能力(中性子捕獲能力)が高く、且
つ製造性に優れたB含有ステンレス鋼の開発が強く要望
されている。
【0004】火力原子力発電Vol.43、No.6
(1992年)の第692〜696ページには、ラック
用としてSUS304を基本の化学組成としてBを0.
7%前後含有させたステンレス鋼が報告されている。し
かし、Bは(Cr、Fe)2Bとして析出するので、基
地(マトリックス)中のCr濃度の低下が起こり耐食性
を劣化させてしまう。このため、例えば特開昭62−2
22049号公報には、SUS304よりもCr含有量
を高くしたB含有ステンレス鋼が提案されている。
【0005】一方、(Cr、Fe)2B が析出すると、
ステンレス鋼の熱間加工性は著しく損なわれ、核燃料輸
送用容器や核燃料保管用などのラックの素材となる鋼板
を通常の方法で熱間圧延して製造すると割れが発生して
しまう。つまり、圧延が進むにつれてステンレス鋼板の
温度が低下するので、B含有ステンレス鋼を通常の方法
で熱間圧延して鋼板を製造すれば耳割れが発生するよう
になり、歩留まりの低下をきたしてコストが嵩む。一
方、ステンレス鋼板を圧延する途中で再加熱処理を繰り
返し、温度を回復させてから更に圧延することで、耳割
れの発生を防止することが可能であるが、再加熱処理を
繰り返すことにより製造コストが増加してしまう。前記
の圧延途中での再加熱処理回数を低減するために初期の
加熱温度を高めれば、圧延進行に伴うステンレス鋼板の
温度低下を防止することができる。しかし、初期の加熱
温度を上げた場合には、前記した(Cr、Fe)2B が
溶融するので、圧延で大きな割れが生じて所望の鋼板が
得られない。
【0006】このようにB含有ステンレス鋼について
は、(Cr、Fe)2B の析出に伴うCr濃度の低下に
よる耐食性の劣化を防止するとともに、熱間圧延時の加
工性をも高めた化学組成とする必要がある。しかし、前
記の特開昭62−222049号公報で提案されたB含
有ステンレス鋼においては、熱間圧延時の加工性を確保
するという点では充分でない場合もあった。
【0007】特開昭61−201726号公報には、B
を添加したステンレス鋼の熱間加工時の問題を解決する
ために、鋼塊をそのままか又は長方形状に整形後、鋼塊
の少なくとも4主面を鉄筒にて密着包囲し、分塊圧延又
は鍛造により圧着させてから熱間圧延する「B含有オー
ステナイトステンレス鋼の製造方法」が開示されてい
る。しかし、この公報で提案された方法では、製造工程
が複雑になってコストが大幅に嵩んでしまう。
【0008】特許第2546549号には、B含有ステ
ンレス鋼の化学組成としてAl、S及びOの含有量をそ
れぞれ0.003%以下に制限し且つ特定の条件で熱間
圧延するか、S及びOの含有量が前記の値でAl含有量
が0.3%以下の場合には1100℃以上の温度で5時
間以上ソーキング処理してから特定の条件で熱間圧延す
る「B含有オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法」
が開示されている。しかし、この公報で提案された技術
もAlの含有量を0.003%以下と極めて低くしたり
1100℃以上の温度で5時間以上ソーキング処理する
必要があるため、コストが嵩むものである。
【0009】特開平5−263133号公報には、鋳造
後に特定の条件で中間熱間圧延を施した後で、特定の条
件で加熱して最終熱間圧延する「耳割れ発生のないB含
有オーステナイト系ステンレス鋼の製造方法」が開示さ
れている。しかし、この公報で提案された技術の場合、
鋳造後の中間熱間圧延の圧下率が僅かに30〜70%で
あるため、最終熱間圧延時に充分な熱間加工性が得られ
ずに再加熱処理を必要とし、コストが嵩んでしまう場合
もあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、中性子吸収能力が高く、しかも熱
間加工性に優れ、核燃料輸送用容器、核燃料保管用ラッ
ク及び使用済み核燃料保管用ラックなどの原子力関連の
中性子遮蔽材に好適なB含有ステンレス鋼及びB含有ス
テンレス鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)のB含有ステンレス鋼及び(2)のB含有ステン
レス鋼材の製造方法にある。
【0012】(1)重量%で、C:0.05%以下、S
i:0.1〜1.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:
0.05%以下、S:0.02%以下、Cu:0.5%
以下、Ni:7〜15%、Cr:18〜25%、Mo:
0.01〜1.5%、Al:0.005%〜0.2%、
B:0.9〜2.5%、Sn+Pb:0.03%以下、
N:0.04%以下、残部はFe及び不可避不純物から
なり、且つ下記式で表される値が−10以上4以下で
あることを特徴とするB含有ステンレス鋼。
【0013】 Ni+0.5Mn+3B+30(C+N)+11.6−1.36(Cr+1. 5Si+Mo)・・・・・ なお、式における元素記号はその元素の重量%での含
有量を示す。
【0014】(2)上記(1)に記載の化学組成を有す
る鋼を1100〜1210℃に加熱した後、成形比が4
以上の分塊圧延又は熱間鍛造を行い、次いで熱間圧延す
ることを特徴とするB含有ステンレス鋼材の製造方法。
【0015】なお、本発明でいう「成形比」とは、A0
を加工前の断面積、Aを加工後の断面積とした場合の
(A0/A)のことを指す。
【0016】
【発明の実施の形態】ステンレス鋼の中性子吸収能力を
高めるにはBを添加すれば良いが、B含有ステンレス鋼
は上述したように熱間加工性が極めて劣る。このため、
既に述べた核燃料輸送用容器や核燃料保管用などのラッ
クの小形化のために、B含有量を高めたステンレス鋼を
通常の方法で加工して薄肉の鋼材に仕上げることは極め
て難しい。
【0017】そこで本発明者らは、B含有ステンレス鋼
の化学組成と熱間加工性との関係について詳細に検討し
た。その結果、下記の事項が明らかになった。
【0018】(a)B含有ステンレス鋼を素材として薄
肉の鋼材、なかでも厚みの薄い鋼板を圧延する場合に問
題となる熱間加工性(熱間圧延性)を高めるためには、
上記熱間圧延の前工程である分塊圧延や熱間鍛造時の加
工度(成形比)を大きくして、凝固時に生成した(C
r、Fe)2B (以下、ボライドという)を均一分散さ
せることが重要である。
【0019】(b)熱間圧延の前工程である分塊圧延や
熱間鍛造時の加工度(成形比)を大きくするためには、
凝固組織として適正量のフェライトを生成させた組織と
すれば良い。この組織とすることによってフェライトが
延性を確保する役割を担うので硬いボライドが析出して
いても割れを生ずることなく大きな加工度を付与でき
る。
【0020】(c)前記式の値が特定の範囲にある場
合に上記(b)の凝固組織における適正量のフェライト
を生成させることができる。
【0021】(d)B含有ステンレス鋼中の不純物元素
としてのSn、Pb及びCuはボライドの融点を下げて
しまうので、これら不純物元素によってB含有ステンレ
ス鋼の熱間加工性は低下してしまう。
【0022】(e)一般にBを含有しないステンレス鋼
の凝固点は約1400℃以上と高く、この場合には上記
の不純物元素(Sn、Pb及びCu)はほぼ均一な状態
で凝固する。しかし、B含有ステンレス鋼の場合には、
最終凝固温度が1200℃程度まで下がり、且つB添加
により固相線と液相線が大きく離れるので、Sn、Pb
及びCuは偏析しやすくなる。そして、偏析したSnと
Pbはそれ自体が低融点であり、又、CuはBと反応し
て低融点(1013℃)の共晶化合物を形成するため、
熱間加工性は大きく低下してしまう。
【0023】(f)上記の(d)及び(e)から、B含
有ステンレス鋼中の不純物元素としてのSnとPbの含
有量、なかでもSn+Pbの含有量、並びにCuの含有
量を規制すれば、B含有ステンレス鋼の熱間加工性が大
きく上昇する。
【0024】(g)ボライドが析出したB含有ステンレ
ス鋼の変形抵抗は高いが、N含有量を規制すれば、変形
抵抗を小さく抑えることができる。
【0025】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0026】以下、本発明の各要件について詳しく説明
する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味す
る。
【0027】(A)鋼の化学組成 C:Cは、溶接熱影響部でCrと結合してCr236
して析出し、基地のCr濃度を低下させて耐食性を劣化
させてしまう。したがって、C含有量を0.05%以下
とした。なお、C含有量は0.03%以下とすることが
好ましい。
【0028】Si:Siは、脱酸のために必要な元素で
あり0.1%以上含有させる。しかし、過剰のSiは熱
間加工性を劣化させ、特にその含有量が1%を超えると
熱間加工性の劣化が著しくなる。このため、Siの含有
量を0.1〜1.0%とした。なお、Si含有量の上限
は0.7%に抑えることが好ましい。
【0029】Mn:Mnは、脱酸作用を有する。更に、
MnにはSを固定して熱間加工性を高める作用もある。
しかし、その含有量が0.2%未満では添加効果に乏し
い。一方、2.0%を超えると、オーステナイト相を安
定化させてしまうので却って熱間加工性の劣化をきた
す。したがって、Mn含有量を0.2〜2.0%とし
た。なお、Mn含有量は0.8〜1.5%とすることが
好ましい。
【0030】P:Pは、耐食性及び熱間加工性を低下さ
せ、特にその含有量が0.05%を超えると耐食性及び
熱間加工性の劣化が著しくなる。したがって、Pの含有
量を0.05%以下とした。
【0031】S:Sは、粒界に偏析して熱間加工時の割
れ発生の原因となるし、Mnと化合したMnSが孔食の
起点になって耐食性低下の原因になる場合もある。特に
その含有量が0.02%を超えると熱間加工性の劣化が
著しくなるし、更に、耐食性の劣化が顕著になる場合も
ある。したがって、Sの含有量を0.02%以下とし
た。なお、S含有量は0.01%以下とすることが好ま
しい。
【0032】Cu:Cuは、特にその含有量が0.5%
を超えるとBと反応して低融点の共晶化合物を形成する
ので、熱間加工性の著しい低下を招く。したがって、C
uの含有量を0.5%以下とした。なお、Cuの含有量
は0.3%以下とすることが好ましい。
【0033】Ni:Niは、ステンレス鋼をオーステナ
イト組織とするために必要な元素であり、少なくとも7
%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が1
5%を超えるとオーステナイト相を安定化させてしまう
ので却って熱間加工性の劣化をきたす。したがって、N
i含有量を7〜15%とした。なお、Ni含有量の上限
は12%とすることが好ましい。
【0034】Cr:Crは、ステンレス鋼の耐食性確保
のために必須の元素であり、B含有ステンレス鋼ではボ
ライドが析出して基地のCr濃度が低下して耐食性が低
下するので、18%以上含有させる必要がある。耐食性
を高めるためにはCr含有量は多いほど良いが、25%
を超えて含有させると、Crがフェライト安定化元素で
あるため、Niを初めとするオーステナイト形成元素を
多量に添加する必要がありコストが嵩む。更に熱間加工
性の劣化を招く。したがって、Cr含有量を18〜25
%とした。なお、熱間加工性の観点からCr含有量の上
限を23%以下にすることが望ましい。
【0035】Mo:Moは、耐食性、なかでも耐孔食性
や耐隙間腐食性を高める作用がある。しかし、その含有
量が0.01%未満では表面の不働態皮膜が強化され
ず、このため耐孔食性の充分な向上が達成されない。一
方、1.5%を超えると熱間加工性の著しい劣化を招
く。したがって、Mo含有量を0.01〜1.5%とし
た。なお、Mo含有量の下限は0.05%とすることが
好ましい。
【0036】Al:Alは、脱酸作用を有し、Bが極め
て酸化されやすい元素であるので、B含有ステンレス鋼
の溶製の際、Bを添加する前にAlで充分脱酸しておく
必要がある。しかし、その含有量が0.005%未満で
は添加効果に乏しい。一方、0.2%を超えると鋼中の
Nと結合してAlNを形成し、熱間加工性の劣化を招
く。したがって、Al含有量を0.005〜0.2%と
した。
【0037】B:Bは、中性子吸収のために必須の元素
であり、0.9%以上含有させる必要がある。しかし、
その含有量が2.5%を超えると熱間加工性の著しい劣
化をきたす。したがって、Bの含有量を0.9〜2.5
%とした。
【0038】Sn+Pb:Sn及びPbはボライドの融
点を下げるとともに、偏析したSnとPbはそれ自体が
低融点であるのでので、B含有ステンレス鋼の熱間加工
性を低下させ、特にSnとPbの含有量の和(Sn+P
b)が0.03%を超えると熱間加工性の劣化が著しく
なる。したがって、SnとPbの含有量の和(Sn+P
b)を0.03%以下とした。なお、Sb+Pbは0.
02%以下に制限することが好ましい。
【0039】N:Nは、Niに代わる強力なオーステナ
イト形成元素であり、且つ耐食性を高めるのに有効な元
素であるが、熱間加工性を劣化させ、特にその含有量が
0.04%を超えると変形抵抗が極めて大きくなるので
熱間加工性の劣化が著しくなる。したがって、Nの含有
量を0.04%以下とした。なお、N含有量は0.03
%以下とすることが好ましい。
【0040】式:前記した式は、凝固組織における
フェライト生成量と相関を有するもので、B含有ステン
レス鋼の熱間加工性評価指標となる。後述の実施例で示
すように、式の値が−10未満の場合と、4を超える
場合には熱間加工性が低い。したがって、本発明におい
ては、前記式で表される値を−10以上4以下とし
た。
【0041】上記の化学組成を有する鋼は、熱間で分塊
圧延又は鍛造されて鋼片となり、次いで熱間で圧延され
て所望の鋼材に仕上げられる。
【0042】(B)熱間加工条件 本発明は、僅かなフェライトを生成させて凝固させたB
含有ステンレス鋼を所望の鋼材に仕上げるに際し、熱間
圧延の前工程である分塊圧延や熱間鍛造の加工度(成形
比)を大きくすることによって、凝固時に生成したボラ
イドを均一分散させて熱間加工性(熱間圧延性)を高め
ようとするものである。
【0043】熱間圧延の前工程である分塊圧延や熱間鍛
造のための加熱温度が1100℃未満では、変形抵抗が
大きいので分塊圧延や熱間鍛造を大きな加工度で行うこ
とができず、このため、凝固時に生成したボライドは均
一分散しないので、次に熱間圧延しても所望の鋼材が得
難い。一方、上記加熱温度が1210℃を超えると、不
純物元素としてのSn、Pb及びCuを規制した鋼であ
っても、ボライドが溶融してしまうので、分塊圧延や熱
間鍛造で割れが生じ、次の熱間圧延で所望の鋼材が得ら
れない。したがって、分塊圧延又は熱間鍛造のための加
熱温度を1100〜1210℃とした。
【0044】上記の熱間圧延の前工程である分塊圧延や
熱間鍛造の加工度(成形比)は4以上とする必要があ
る。この場合には、凝固時にデンドライト樹幹に集合し
たボライドを分散、細粒化させた均一組織とすることが
でき、次に熱間圧延すれば所望の鋼材が容易に得られ
る。つまり、上記の成形比が4未満の場合には熱間圧延
前の鋼材の変形能が低いため熱間圧延で所謂「耳割れ」
が生じてしまうのに対して、成形比が4以上の場合には
ボライドを分散、細粒化させた均一組織となっているの
で変形能が充分高く、耳割れを生ずることなく所定の厚
さまで容易に熱間圧延することができる。この成形比は
大きければ大きいほど良いので上限は特に規定する必要
はない。
【0045】上記の加熱温度、上記の成形比で加工され
た鋼材は、次に熱間圧延を施されて所望の鋼材に加工さ
れる。なお、耳割れを生ずることなく所定の厚さまで容
易に熱間圧延するためには、前記熱間圧延に際して鋼材
を1100〜1210℃に加熱することが望ましい。
【0046】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼1〜17を通常の方
法で30kg真空炉溶製し、鋼塊(インゴット)の表面
からの距離が中心部までの1/2である部位から、直径
が10mmで長さが130mmの試験片を切り出し、所
謂グリーブル試験を行って熱間加工性を調査した。すな
わち、一旦1200℃まで加熱後、所定の試験温度まで
冷却し、その温度で1/秒の引張速度で引張り試験を行
い、絞りと変形抵抗を測定した。
【0047】又、表1に示す化学組成の鋼18は通常の
方法で1トン真空炉溶製し、1200℃に加熱した後、
鍛造比(成形比)を0〜6.5の範囲で変化させて熱間
鍛造した。次いで、各熱間鍛造材から、50mm×15
0mm×250mmの厚板材を切り出し、熱間圧延に供
した。熱間圧延は上記の各厚板を1150℃に加熱した
後、厚さ10mmまで圧延し、圧延後は耳割れの状況を
目視で評価し、耳割れを生じたものはその長さを測定し
た。
【0048】なお、表1に記載の鋼のうち、鋼1〜9及
び鋼18は本発明鋼で、鋼10〜17は成分のいずれか
が本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較鋼であ
る。
【0049】
【表1】
【0050】各種試験結果の一例を図1〜5に示す。な
お、各図中のデータポイントの数字は供試鋼に対応する
ものである。
【0051】図1及び図2はそれぞれ、グリーブル試験
機による引張り試験を1190℃で行った場合の絞りに
及ぼすSnとPbの含有量の和(Sn+Pb)とCu含
有量の影響を示すものである。
【0052】図1から、Sn+Pbを0.03%以下に
すれば、50%以上の絞りが得られ、1190℃での熱
間加工性は優れたものであることがわかる。一方、Sn
+Pbが高い比較鋼である鋼12と鋼17では1190
℃での絞りが50%を下回っており熱間加工性が劣る。
なお、グリーブル試験機による引張り試験で絞りが50
%以上あれば、実機による熱間加工で所望の鋼材を加工
することができる。
【0053】図2から、Cu含有量が0.5%以下の場
合に50%以上の絞りが得られ、1190℃での熱間加
工性は優れたものであることがわかる。一方、Cu含有
量が高い比較鋼である鋼11と鋼16では1190℃で
の絞りが50%を大きく下回っており熱間加工性が劣
る。なお、Cu含有量が0.5%以下であってもSi含
有量が本発明で規定する値を超える鋼10の場合には、
熱間加工性は極めて劣っている。
【0054】図3は、グリーブル試験機による引張り試
験を1100℃で行った場合の変形抵抗に及ぼすN含有
量の影響を示すものである。図3からN含有量とともに
変形抵抗が増加し、パワーの大きな熱間加工設備が必要
になることがわかる。N含有量を0.04%以下に制限
すれば、変形抵抗を140MPa以下に抑えることがで
き、通常の熱間加工設備で容易に加工することができ
る。
【0055】図4は、グリーブル試験機による引張り試
験を950℃で行った場合の絞りに及ぼす式の値の影
響を示すものである。式の値が−10を下回る場合
(鋼14)と式の値が4を超える場合(鋼15)の絞
りはいずれも50%を下回り熱間加工性が劣ることが明
らかである。
【0056】図5に鋼18を用いた場合の耳割れ長さに
及ぼす鍛造比(成形比)の影響を示す。なお、耳割れ長
さが0は耳割れが生じなかったことを示す。鍛造比が上
がるにつれて耳割れ長さが小さくなり、鍛造比が4以上
の場合には耳割れを生じないことが判明した。
【0057】
【発明の効果】本発明のB含有ステンレス鋼は熱間加工
性に優れるので、核燃料輸送用容器、核燃料保管用ラッ
ク及び使用済み核燃料保管用ラックなどの原子力関連の
中性子遮蔽材の素材として利用することができる。この
ステンレス鋼を素材としたB含有ステンレス鋼材は本発
明の方法によって、比較的低コストで容易に製造するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例においてグリーブル試験機による引張り
試験を1190℃で行った場合の絞りに及ぼすSnとP
bの含有量の和(Sn+Pb)の影響を示す図である。
【図2】実施例においてグリーブル試験機による引張り
試験を1190℃で行った場合の絞りに及ぼすCuの影
響を示す図である。
【図3】実施例においてグリーブル試験機による引張り
試験を1100℃で行った場合の変形抵抗に及ぼすN含
有量の影響を示す図である。
【図4】実施例においてグリーブル試験機による引張り
試験を950℃で行った場合の絞りに及ぼす式の値の
影響を示す図である。
【図5】実施例における耳割れ長さに及ぼす鍛造比(成
形比)の影響を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.05%以下、Si:
    0.1〜1.0%、Mn:0.2〜2.0%、P:0.
    05%以下、S:0.02%以下、Cu:0.5%以
    下、Ni:7〜15%、Cr:18〜25%、Mo:
    0.01〜1.5%、Al:0.005%〜0.2%、
    B:0.9〜2.5%、Sn+Pb:0.03%以下、
    N:0.04%以下、残部はFe及び不可避不純物から
    なり、且つ下記式で表される値が−10以上4以下で
    あることを特徴とするB含有ステンレス鋼。 Ni+0.5Mn+3B+30(C+N)+11.6 −1.36(Cr+1.5Si+Mo)・・・・・ なお、式における元素記号はその元素の重量%での含
    有量を示す。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の化学組成を有する鋼を1
    100〜1210℃に加熱した後、成形比が4以上の分
    塊圧延又は熱間鍛造を行い、次いで熱間圧延することを
    特徴とするB含有ステンレス鋼材の製造方法。
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