JPH10218641A - 抗菌・防かび性ガラス及びそのガラスを含有する樹脂組成物 - Google Patents

抗菌・防かび性ガラス及びそのガラスを含有する樹脂組成物

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JPH10218641A
JPH10218641A JP1886697A JP1886697A JPH10218641A JP H10218641 A JPH10218641 A JP H10218641A JP 1886697 A JP1886697 A JP 1886697A JP 1886697 A JP1886697 A JP 1886697A JP H10218641 A JPH10218641 A JP H10218641A
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JP
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glass
resin
antibacterial
weight
oxide
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Application number
JP1886697A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Matsuoka
博 松岡
Hidekazu Tanaka
秀和 田中
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Nippon Glass Fiber Co Ltd
Original Assignee
Nippon Glass Fiber Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH10218641A publication Critical patent/JPH10218641A/ja
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C2204/00Glasses, glazes or enamels with special properties
    • C03C2204/02Antibacterial glass, glaze or enamel

Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗菌性と防かび性を併せ持ち、かつこれを長
期間持続させることのできるガラス、並びにこのガラス
の特性を維持しつつ、銀による変色を抑制し、かつブリ
スターの形成を抑制できる前記ガラスを含有する樹脂組
成物を提供すること。 【解決手段】 その組成中に、酸化アルミニウム、酸化
亜鉛、酸化銅及び酸化銀を含むガラスを製造する。この
ガラスは、水に浸漬された場合に、一定の成分が水中へ
溶出し、その重量減少率が3〜15重量%であることを
特徴とする。また、このガラスを不飽和ポリエステル等
の樹脂に含有させ、当該樹脂内にこのガラスを均一に分
散させる、又は当該樹脂の表面に付着させる。前記ガラ
スを含有した樹脂組成物は、抗菌性と防かび性を長期間
維持し、銀による樹脂の変色を抑制することが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、菌の増殖を抑制
し、かつ菌を減少させる性質(以後、抗菌性という)
と、かびの増殖を抑制し、かつかびを減少させる性質
(以後、防かび性という)を併せ持つガラス、及びその
ガラスを含有する樹脂組成物に関する。更には、抗菌性
と防かび性を長期間に渡り発揮するガラス、並びに当該
ガラスが含有された樹脂組成物において、当該ガラスの
前記特性を発揮しつつ、加熱による表面凹凸の形成が抑
制される樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】銀又は銀イオン及び銅又は銅イオンは、
接触した菌を破壊する性質をもつことが以前から知られ
ている。この性質を利用して、何らかの担体に銀又は銅
を保持させ、必要時に銀、銅又はそれらのイオンとして
溶出させる技術が、これまでに開発されている。
【0003】例えば、ゼオライト,アパタイト等に銀を
担持させたもの、又はホウケイ酸ガラスに銀を含有させ
たもの(特開平6−219771号公報)などの無機系
抗菌剤が挙げられる。
【0004】上記無機系抗菌剤は、通常はフレーク又は
粉末の状態で製品、特に熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂
と混ぜ合わされて使用されたり、また抗菌加工が必要な
ところ、主に製品の表面に直接吹き付けられたり、接着
されたりして使用される。これらの抗菌性樹脂製品や抗
菌加工が施された製品の表面に水が付着すると、無機系
抗菌剤中の銀が水分中に徐々に溶け出し、当該製品の表
面に銀又は銀イオンが存在するようになる。この結果、
当該製品の表面は、付着した菌に対し抗菌性を示す。
【0005】しかし、当該製品は、かびに対して防かび
性を余り示さない。これは、銀又は銀イオン自体が防か
び性を余り強く示さないことが原因である。上記無機系
抗菌剤を用いて製品に抗菌性と共に防かび性をも求める
ようとすると、当該無機系抗菌剤は、銀自体の弱い防か
び性を補うために、銀を大量に含有する必要がある。特
に、無機系抗菌剤の中でもガラスの場合は、その組成に
おいて酸化銀を3重量%以上含有する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ガラス
の組成において、酸化銀が3重量%以上含まれる様にな
ると、以下の問題が新たに発生する。すなわち、当該ガ
ラスを含有した製品においては、水への銀又は銀イオン
の溶出量が多い為に、製品の外観を変色させてしまう欠
点が発生する。これは水に溶け出した銀又は銀イオンが
銀として、又は酸化銀として製品の表面に析出してしま
うため、並びに水分中に存在する銀イオンが製品、特に
樹脂と反応するためであると考えられる。また、銀自体
が高価なものであるため、このガラスを含有する製品の
製造コストが高くなってしまう。
【0007】上記銀による製品の外観変色を防止するた
めに、銀を使用しない、すなわちアンモニア又はアミン
をイオン交換により担持させた抗菌剤が開発されている
(特開平1−24860号公報)。しかし、当該抗菌剤
は、抗菌性及び防かび性が共に前記銀含有の無機系抗菌
剤よりも弱く実用的でない。
【0008】また、銀に限らず水に溶出可能な成分がガ
ラス中に多く含まれると、次のような問題が発生する。
つまり、当該ガラスを含有する製品、特に樹脂組成物
は、水と接触した状態、又は水と接触した後にその表面
の水分を取り除いた状態で加熱されると、その表面に小
さな凹凸、いわゆるブリスターを形成し易い。このブリ
スター形成の原因は、当該ガラスを含有する樹脂組成物
中に存在する水が熱せられることにより、その蒸気圧が
高くなり、樹脂組成物の表面を押し上げる為であると考
えられる。
【0009】このことについて、以下に詳しく述べる。
当該ガラスを含有する樹脂組成物は、水と接触した場合
に、当該ガラスから水に溶出可能な成分を溶出し、水を
樹脂組成物の内部に取り込む。取り込まれた水は、樹脂
組成物中に存在する前記ガラスの内部又はその周辺に蓄
えられることとなる。よって、当該ガラスの水への溶出
量が多い場合は、それに比例して、この樹脂組成物中に
蓄えられる水の量も多くなる。
【0010】また、樹脂組成物中に取り込まれた水は、
樹脂組成物内から外へ出難く、蒸発し難いので、長期間
に渡り樹脂組成物中に潜在する性質を有する。よって、
樹脂組成物が水と接触した後に、その表面を拭く等して
水気を排除したとしても、上記の性質により、樹脂組成
物中に蓄えられた水を完全に排除することは困難であ
る。
【0011】結果として、水に対する溶出量の多いガラ
スを含有する樹脂組成物は、一度水に接触すると、その
表面にブリスターを形成し易くなると言うことができ
る。この発明は、以上のような従来技術に存在する問題
点に着目してなされたものである。その目的とするとこ
ろは、抗菌性と防かび性を併せ持つガラスと、当該ガラ
スを製品、特に樹脂に含有させた場合に、抗菌性及び防
かび性を発揮しつつ、銀及び酸化銀の析出、並びに樹脂
と銀イオンとの反応による外観変色とブリスターの形成
を抑制できる樹脂組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1に記載の発明の抗菌・防かび性ガラス
は、酸化アルミニウム(Al2 3 )、酸化亜鉛(Zn
O)、酸化銅(CuO)及び酸化銀(Ag2 O)を含有
するガラスであって、水に浸漬した場合に、その重量減
少率が3〜15%であるものである。
【0013】請求項2に記載の発明の抗菌・防かび性ガ
ラスは、請求項1に記載の発明において、ガラスの組成
が、酸化ケイ素(Si O2 ):15〜55重量%、酸化
ホウ素(B2 3 ):25〜50重量%、酸化ナトリウ
ム(Na2 O):2〜15重量%、酸化アルミニウム
(Al2 3 ):3〜20重量%、酸化亜鉛(Zn
O):3〜20重量%、酸化銅(CuO):1〜5重量
%及び酸化銀(Ag2 O):0.1〜3重量%の範囲内
にあるものである。
【0014】請求項3に記載の発明の抗菌・防かび性ガ
ラスは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
ガラスの組成中の酸化アルミニウム及び酸化亜鉛の含有
量が、合計で10〜25重量%であるものである。
【0015】請求項4に記載の発明の抗菌・防かび性ガ
ラスは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明にお
いて、平均粒径が1〜50μm の粉体であるものであ
る。請求項5に記載の発明の抗菌・防かび性樹脂組成物
は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム及びエラストマ
ーからなる群より選ばれた少なくとも1つに、請求項1
〜4のいずれか1項に記載の抗菌・防かび性ガラスを含
有させたものである。
【0016】請求項6に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物は、抗菌・防かび性ガラスを含有させた請求項
5に記載の発明において、熱可塑性樹脂が、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、
ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリアセタ−ル、ポ
リビニルアルコ−ル、ポリカ−ボネ−ト、アクリル樹
脂、フッ素樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチ
レン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・ス
チレン共重合樹脂(AS樹脂)、ウレタン樹脂又はエチ
レン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)であり、熱
硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル、シリコ−ン樹脂、
変性シリコ−ン樹脂、フェノ−ル樹脂、ユリア樹脂、メ
ラミン樹脂又はエポキシ樹脂であり、エラストマーが、
ポリウレタンエラストマ−又はポリエステルエラストマ
−であるものである。
【0017】請求項7に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物は、請求項5又は請求項6に記載の発明におい
て、前記抗菌・防かび性ガラスを、0.1〜10重量%
含有させたものである。
【0018】請求項8に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の発明
において、強化材として無機繊維を含有させたものであ
る。請求項9に記載の発明の抗菌・防かび性樹脂組成物
は、請求項8に記載の発明において、無機繊維がガラス
繊維であるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。先ず、抗菌・防かび性ガラスについ
て説明する。この抗菌・防かび性ガラスは、水に浸漬し
た場合、当該ガラス中の一定の成分が水分中へ溶出し、
3〜15%の重量減少を起こすものである。当該ガラス
の組成は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅及び酸
化銀を含有し、ガラスを形成するために、その他に酸化
ケイ素等が含有される。酸化銅と酸化銀がガラス原料に
両方含まれていることが、重要な点である。
【0020】酸化アルミニウムと酸化亜鉛は、ほぼ同じ
性質である。すなわち、このどちらの成分も、当該ガラ
ス中の水に溶出可能な成分の溶出する量の微調整に関与
している。しかし、酸化アルミニウム又は酸化亜鉛のど
ちらか一だけでは、この溶出する量を3〜15重量%に
調整することができない。これら2種の原料が併用され
ることにより、相乗効果が発揮されて、初めて前記溶出
する量を適正値に調整することができる。
【0021】酸化銅又は酸化銀は、このガラスに抗菌性
と防かび性を付与する。前述のように、酸化銅と酸化銀
を含むガラスは、水との接触により、銅又は銅イオン及
び銀又は銀イオンを水分中へと溶出する。当該溶出され
た銅又は銅イオンは、防かび性に優れており、一方溶出
された銀又は銀イオンは、抗菌性に優れている。従来の
技術の様に、銀又は銀イオンだけで抗菌性と防かび性の
両方の機能を発揮させるには、ガラスに銀を大量に含有
させなければならない。しかし、ガラス中の銀の含有量
が多くなると、このガラスを含有した製品の外観が、前
述のように変色してしまう。
【0022】この変色を抑制するために、ガラスに酸化
銅を導入する。酸化銅と酸化銀の両方を併用することに
より、酸化銀の含有量を抑えることができる。この結
果、抗菌性及び防かび性に優れたガラスと製品が初めて
得られる。また、当該製品は、その外観の変色を抑える
ことができる。
【0023】ここで、前述の水に溶出するとは、銅、
銀、亜鉛、アルミニウム又はその他のガラス中の成分
が、水分中に溶け出すことをいう。これら成分の水に溶
出する量は、抗菌・防かび性ガラス及びそのガラスを含
有する製品の性質を大きく左右する。しかし、同じ原料
から同じ方法で製造されたガラスであっても、その溶出
する量は、そのガラスの形態や水に接触している期間な
どより変化するものである。よって、ここで当該ガラス
の水に溶出する量(以下、溶出量とする)の定義につい
て述べる。ガラスの溶出量とは、平均粒径が25μm の
ガラス粉末を蒸留水に懸濁させ、室温25℃で50時間
撹拌した後、濾過し、600℃で2時間加熱乾燥させた
ガラス粉末の重量減少分をいう。
【0024】ガラスの溶出量は、3〜15重量%、好ま
しくは5〜10重量%である。この溶出量が15重量%
より多い場合は、上記ガラス中の溶出可能な成分の水へ
の溶出が短期間で起こり、また当然に防かび性に優れた
銅及び抗菌性に優れた銀の水への溶出も短期間で行われ
ることになる。この場合は、抗菌性と防かび性の発揮さ
れる期間が短くなり、実際の使用において不都合であ
る。また、銀の溶出が短期間で起こると、当該ガラスを
含有した製品の表面の銀及び銀イオンの密度が高くなり
過ぎて、外観の変色が著しく発生する。更に、この製
品、特に樹脂組成物を一度水と接触させた後に加熱する
と、その樹脂組成物中に水が存在するためにブリスター
が発生する。反対に、溶出量が3重量%より少ない場合
は、銅と銀の溶出量も少なくなり、当該ガラス及びそれ
を含有する製品において、抗菌性と防かび性が発揮され
なくなる。
【0025】以下に、好ましいガラスの組成について説
明する。ガラスの組成は、酸化ケイ素(Si O2 ):1
5〜55重量%、酸化ホウ素(B2 3 ):25〜50
重量%、酸化ナトリウム(Na2 O):2〜15重量
%、酸化アルミニウム(Al2 3 ):3〜20重量
%、酸化亜鉛(ZnO):3〜20重量%、酸化銅(C
uO):1〜5重量%及び酸化銀(Ag2 O):0.1
〜3重量%の範囲内にある場合に、この発明の効果をよ
り良く発揮できる。
【0026】上記のガラスの組成範囲は、以下の理由に
基づいている。酸化ケイ素は、ガラスの骨格をなすもの
であって、その含有量は好ましくは15〜55重量%で
あり、更に好ましくは30〜50重量%である。酸化ケ
イ素の含有量が15重量%未満の場合は、ガラスの骨格
が不十分となり、当該ガラスの水への溶出量を抑制する
ことができなくなる。この場合、当該ガラスが水に接触
すると、銅及び銀の水分中への溶出が一気に起き、抗菌
性又は防かび性を発揮できる期間は極端に短くなる。そ
の結果、これを含有する製品は、抗菌性又は防かび性を
発揮できる期間が極端に短くなり、かつ銀又は銀イオン
が一気に溶出するので、製品の外観が変色する。また、
当該ガラスを含有する樹脂組成物に、ブリスターが発生
し易くなる。反対に、酸化ケイ素の含有量が55重量%
より多い場合は、ガラスの骨格が必要以上に強固なもの
となり、銀又は銅の水への溶出を抑制し過ぎる。この結
果、当該ガラス及びそれを含有した製品は、抗菌性及び
防かび性を発揮できなくなる。
【0027】酸化ホウ素は、水に溶出可能な成分の溶出
を促進する働きをすると考えられている。すなわち、酸
化ホウ素は、水に溶出可能な成分に対して、酸化ケイ素
とは反対の作用をする。
【0028】酸化ホウ素の含有量は好ましくは25〜5
0重量%であり、更に好ましくは30〜45重量%であ
る。その含有量が25重量%未満の場合は、水への銅及
び銀の溶出が少なくなり過ぎる。この結果、酸化ケイ素
の含有量が55重量%より多い場合と同様に、抗菌性及
び防かび性が発揮されなくなる。反対に、酸化ホウ素の
含有量がが50重量%より多い場合は、水への銅及び銀
の溶出が一気に起こり、酸化ケイ素の含有量が15重量
%未満の場合と同様の結果となる。
【0029】酸化ナトリウムは、ガラスの原料を溶融す
る際に、溶融を促進し、かつ溶解(ガラスを均質にす
る)を促す物質である。酸化ナトリウムの含有量は好ま
しくは2〜15重量%であり、更に好ましくは3〜15
重量%である。当該含有量が2重量%未満の場合は、溶
融及び溶解を促進する効果が弱くなり、ガラス原料が溶
け難く、かつ均一に混ざり難くなる。反対に、当該含有
量が15重量%より多い場合、溶融及び溶解を促進する
効果は2〜15重量%の場合と比べて変わらない。しか
し、ナトリウムは、水に溶解可能な成分である。よっ
て、この場合に当該ガラスが水に接触すると、大量のナ
トリウムが水分中へ溶出していくこととなる。つまり、
ガラスの溶出量が適正範囲より多くなる。ガラスの水へ
の溶出量が多くなると、それに伴って水分中への銅及び
銀の溶出量が増加する。その結果、当該ガラスが水と接
触した場合、銅及び銀を一気に溶出する様になってしま
う。これまでも述べたように、銅及び銀が一気に溶出さ
れれば、抗菌性及び防かび性の持続時間が極端に短くな
り、かつ製品を変色させ、外観を悪化させてしまう。ま
た、この場合は、これを含有する樹脂組成物にブリスタ
ーが発生し易くなる。
【0030】酸化アルミニウムは、水に溶出可能な成分
の溶出量の微調整に寄与するものである。酸化アルミニ
ウムの含有量は、好ましくは2〜20重量%であって、
更に好ましくは6〜15重量%である。酸化アルミニウ
ムの含有量が20重量%より多い場合は、溶出量が少な
くなり過ぎる。この結果、当該ガラスを含有した製品
は、抗菌性又は防かび性が弱くなるか、発揮されなくな
る。また、酸化アルミニウムには、ガラスの溶融温度を
高くする性質があるため、その含有量が多いとガラスの
溶融が困難となる。反対に、その含有量が3重量%未満
の場合は、溶出量が多くなり過ぎ、上記と同様に抗菌性
と防かび性の有効期間の短縮、当該ガラスを含有する製
品の変色及びブリスターの発生等の不具合が発生する。
【0031】酸化亜鉛の含有量は、好ましくは3〜20
重量%であって、更に好ましくは6〜15重量%であ
る。酸化亜鉛は、上記酸化アルミニウムとほぼ同じ性質
を持っており、その含有量が20重量%より多いと、抗
菌性と防かび性が発揮されなくなる。反対に、その含有
量が3重量%未満の場合は、溶出量が多くなり過ぎ、抗
菌性と防かび性の有効期間の短縮、当該ガラスを含有す
る製品の表面の変色及びブリスターの発生等の不具合が
発生する。
【0032】上述のように、銅又は銅イオンは防かび性
に優れており、一方銀又は銀イオンは抗菌性に優れてい
る。ガラスにおいて、酸化銅の含有量は好ましくは1〜
5重量%、更に好ましくは2〜5重量%、特に好ましく
は3〜5重量%である。酸化銅が1重量%未満では、防
かび性が不充分であり、また5重量%より多くなるとガ
ラス溶解が困難となる不具合点が新たに発生する。
【0033】酸化銀の含有量は好ましくは0.1〜3重
量%であって、更に好ましくは0.5〜3重量%、特に
好ましくは0.5〜2重量%である。酸化銀が0.1重
量%未満では抗菌性能が不充分であり、反対に3重量%
より多くなると前述のような樹脂組成物の変色の問題が
発生する。
【0034】上記酸化アルミニウムと酸化亜鉛の含有量
には、一定の相関関係があり、それを以下に説明する。
酸化アルミニウムと酸化亜鉛は、ほぼ同じ性質を有す
る。しかし、前記ガラス原料のどちらか一方だけが含有
された場合は、ガラスの溶出量を3〜15重量%の適正
値に調整することが困難である。よって、この2種は常
に併用されるので、ガラスの組成においては、各々の含
有量ではなくその合計量で取り扱う方が、前記ガラスの
性質をより正確に把握できる。
【0035】酸化アルミニウムと酸化亜鉛の合計の含有
量は、好ましくは10〜25重量%であり、更に好まし
くは15〜20重量%である。この合計含有量が25重
量%より多い場合は、溶出量が抑制され過ぎて、ガラス
とこれを含有する樹脂組成物は、抗菌性と防かび性を発
揮できない。また、この場合は、当該ガラスに失透(結
晶化)が起こり、加工や後処理が難しくなる。反対に、
この合計含有量が10重量%未満である場合は、溶出量
が適正値の15重量%を越えてしまい、抗菌性と防かび
性の有効期間の短縮等の不具合が発生する。
【0036】ガラスにおける酸化アルミニウムと酸化亜
鉛との含有量の重量比率は、酸化アルミニウム/酸化亜
鉛=0.8〜1.5の範囲が好ましい。この範囲内にあ
る場合に、ガラスの溶出量を調節する機能について、こ
の2つの成分は相乗効果を効果的に発揮する。
【0037】ガラスの形態は、特に限定されないが、繊
維状、織物状、フェルト状、チップ状、フイルム状、フ
レーク状又は粉末状等が挙げられる。これら形態の中で
も、抗菌性・防かび性を発揮し易いのは、フレーク状又
は粉末状である。なぜなら、当該ガラスが水と接触し、
銅及び銀が水分中へ溶出することにより始めて、抗菌性
・防かび性は発揮される。よって、同じ質量ならば、当
該ガラスの水と接触する面積が大きいほど、銅及び銀が
効率よく水分中へ溶出することになる。このことから、
抗菌・防かび性ガラスの形態は、フレーク状及び粉末状
が好適であるといえる。
【0038】上記のガラスの粉末は、下記の樹脂等に配
合されたり、成形後の樹脂等の表面に何らかの方法で付
着されたりして使用される。ガラス粉末の粒度は、平均
粒径が好ましくは1〜50μm、更に好ましくは5〜2
5μmである。平均粒径が50μmより大きいと、ガラ
スの粉末は、下記の樹脂等に配合した場合に均一分散が
困難になる。また、反対に平均粒径を1μmより小さく
しても、特別な効果は発生せず、粉砕にただ余分な時間
を要するだけである。
【0039】また、フレーク状のガラス(以下、ガラス
フレークとする)は、一般に強化材として下記の樹脂等
自身に含有されたり、また塗装膜の強化材として塗料の
中に含有されたりする。よって、ガラスフレークを抗菌
・防かび性ガラスで作成すれば、強化材と抗菌・防かび
剤としての2つの機能が両立できる。
【0040】強化材として使用されるガラスフレークの
大きさは、樹脂又は塗料等に均一に撹拌されなければな
らないことから、長径10〜1000μm、厚み1〜1
0μmのものが一般的に使用されている。ガラスフレー
クの大きさが上記適正範囲よりも大きい又は厚い場合
は、樹脂又は塗料等での均一撹拌が困難となり、反対に
適正範囲より小さい又は薄い場合は、強化材としての機
能を発揮し得ない。
【0041】次に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム
又はエラストマー(以下、これらを纏めて樹脂という)
から選ばれた少なくとも1種に、前記のガラスを含有さ
せた抗菌・防かび性樹脂組成物について説明する。
【0042】この抗菌・防かび性樹脂組成物は、上述の
抗菌性と防かび性を併せ持ったガラスを樹脂全体に均一
に配合したもの、又は樹脂の成形後における成形体の必
要な個所に当該ガラスを付着させたものである。
【0043】この樹脂組成物において、付着とは、何ら
かの形で当該ガラスが樹脂成形体の表面にのみ被覆され
て存在することをいう。配合とは、樹脂成形体の表面の
みならず内部にも均一に当該ガラスが存在することをい
う。更に含有とは、前記付着と配合のどちらも含む概念
である。
【0044】樹脂に抗菌・防かび性ガラスを配合する方
法は、特に限定されないが、通常は樹脂に熱又は熱と圧
力をかけ樹脂の粘度を下げた状態で、当該ガラスを混入
させ、強制撹拌する方法が採用されている。また、樹脂
成形体に前記ガラスを付着させる方法は、特に限定され
ないが、通常は樹脂成形体の表面に当該ガラスを接触さ
せて、ガラスの上からローラ又は型などを押し付ける機
械的圧力による方法、又は樹脂成形体の表面に塗装する
際の塗料に当該ガラスを混入させ、塗装膜とする方法な
どが挙げられる。
【0045】熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ塩
化ビニリデン、ポリアミド、ポリアセタ−ル、ポリビニ
ルアルコ−ル、ポリカ−ボネ−ト、アクリル樹脂、フッ
素樹脂、ABS共重合樹脂、AS共重合樹脂、ウレタン
樹脂又はEVA共重合樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂と
しては、不飽和ポリエステル、シリコ−ン樹脂、変性シ
リコ−ン樹脂、フェノ−ル樹脂、ユリア樹脂、メラミン
樹脂又はエポキシ樹脂が好ましい。ゴムは、天然ゴム又
は合成ゴムのいずれでも良い。エラストマーとしては、
ポリウレタンエラストマ−又はポリエステルエラストマ
−が好ましい。これらの樹脂は、抗菌・防かび性ガラス
から溶出する成分、すなわち銅、銀、ナトリウム、カル
シウム及びこれらのイオン等と比較的反応し難いからで
ある。よって、樹脂の外観変色が起こり難く、かつ抗菌
性及び防かび性が滅殺され難い。また、上記樹脂の中で
も、不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹
脂、ABS樹脂又はフェノール樹脂は、使用用途の広
さ、価格の安さ等からこの発明の樹脂として更に好まし
い。
【0046】前記樹脂組成物における抗菌・防かび性ガ
ラスの含有量は、好ましくは0.1〜10重量%であ
り、更に好ましくは1〜5重量%である。当該ガラスの
含有量が0.1重量%未満であると、当該樹脂中に配合
された場合に、抗菌性と防かび性が発揮されなくなって
しまう。反対に、その含有量が10重量%より多い場
合、抗菌性及び防かび性は、0.1〜10重量%の場合
と変わらない。しかし、抗菌・防かび性ガラスは一般に
高価であるため、樹脂組成物の製造コストが高くなって
しまう。また、この場合は、樹脂組成物の外観変色が発
生する。
【0047】次に、抗菌・防かび性ガラスを含有した樹
脂組成物に強化材を含有させる場合について説明する。
樹脂は、元々強度が低く、曲げや引っ張りなどの外部か
らの力に対して変形、割れ又は断裂等を容易に引き起こ
す。そのため従来から、樹脂に強化材を含有させること
が広く一般に行われてきた。
【0048】樹脂に含有させる強化材としては、有機繊
維、無機繊維、金属繊維、前記繊維の織物、前記各繊維
のフェルト(不織布)、無機及び金属のフレーク又は無
機及び金属のチップ等が挙げられる。この中でも無機繊
維は、一般に化学的に安定で、強度が高く、また広く市
場に出回っているので入手し易く、かつ安価である。こ
れらの理由で、樹脂の強化材として、無機繊維が広く用
いられている。
【0049】上記無機繊維の形態は、特に限定されない
が、繊維状に限らず織物、フェルト、チョップドストラ
ンド(繊維を適当な長さで切断したもの、通常は1〜5
0mmである)又はスライバー等が挙げられる。
【0050】抗菌・防かび性樹脂組成物に強化材として
含有される無機繊維の種類は、特に限定されないが、通
常は炭素繊維又はガラス繊維である。特に、ガラス繊維
は、古くから樹脂の強化材として使用されてきた歴史が
あるので、樹脂との接着等の問題の解決が他の無機繊維
に比べて容易である。
【0051】以上のように、この実施形態によれば、次
のような効果が発揮される。 (1)酸化銅と酸化銀を併用することにより、ガラス
は、抗菌性と防かび性を併せ持つことができる。
【0052】(2)酸化アルミニウムと酸化亜鉛を併用
することにより、ガラスは、水への溶出量を適正範囲内
に抑制することができ、その結果抗菌性と防かび性を長
期間に渡り発揮することができる。
【0053】(3)前記(1)と(2)の効果を有する
ガラスを含有することにより、その製品は、抗菌性と防
かび性を長期間に渡り効果的に発揮できる。 (4)溶出量の抑制されたガラスを含有することによ
り、その樹脂組成物は、ブリスターの形成を抑制でき
る。
【0054】(5)防かび性に有効な銅を使用すること
により、高価な銀の含有量が抑えられ、上記ガラスの製
造コストを引き下げることができる。 (6)ガラス中の銀の含有量が抑えられることにより、
当該ガラスを含有した製品の外観変色を抑えることがで
きる。
【0055】(7)上記ガラスの粒径を1〜50μmに
することにより、製品に配合した場合に、当該ガラスの
均一分散が容易になる。
【0056】
【実施例】この発明の実施例と比較例で製造されたガラ
ス粉末及びそれを含有する樹脂組成物について、以下の
測定、判定方法及び判定基準によってその性能が判断さ
れる。
【0057】(1)製造されたガラス粉末の水への溶出
量の測定 下記実施例及び比較例で製造されたガラスを、平均粒径
25μm の粉末状に粉砕し、100mlの蒸留水に5g懸
濁した。これを室温25℃で50時間撹拌した後、濾過
し、600℃で2時間加熱乾燥した。この加熱乾燥後の
ガラス粉末の重量減少分を、そのガラスの水への溶出量
とした。
【0058】(2)樹脂組成物の抗菌性と防かび性の性
能判定 (a)使用する菌株の種類 (イ)細菌 大腸菌 :IFO3301 黄色ブドウ球菌:IFO12732 (ロ)かび アスペルギウス ニジェール(Aspergillus
niger) ペニシリウム(Penicillium) キトミウム(Chaetomium) グリオクラデュウム(Gliocladium) オレオバスデュウム(Aureobasidium) (b)判定方法 (イ)抗菌性の判定 銀等無機抗菌剤研究会制定 ”抗菌加工製品の抗菌試験法I (1995年版)” (ロ)防かび性の判定 ASTM G−21−90 (c)判定基準 抗菌性と防かび性の性能判定基準は、下記表1に記載す
る。ここで表1の抗菌性の欄のND及びlog Bとは、”
抗菌加工製品の抗菌試験法I (1995年版)”による
試験結果において、ND:培養後の生菌数が0、log
B:培養後の生菌数を常用対数で示した値である。ま
た、表1の防かび性の欄の区分0〜4の判定は、AST
MG−21に従い、表2の通りである。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】(3)熱水耐久性能判定 下記実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、90℃
の恒温水槽に500時間浸漬した後(以下、この工程を
熱水処理と称する)に、以下の項目についてその性能の
判定を行った。
【0062】(a)ブリスタ− ブリスターとは、樹脂組成物の表面のフクレ又は白斑点
のことをいう。ここで、白斑点とは、樹脂組成物の本来
の色と異なる白いツブツブをいう。この白いツブツブが
成長して、樹脂組成物の表面が広範囲に渡り盛り上が
り、フクレとなる。
【0063】(イ)判定方法 判定方法は、樹脂組成物の表面を肉眼で観察して行う。 (ロ)判定基準 判定基準は、表1に示す。
【0064】(b)変色判定 (イ)判定方法 抗菌・防かび性ガラスを含有しない樹脂成形体(熱水浸
漬なし)と実施例又は比較例で製造されたガラスを含有
した樹脂成形体の色差(△E)を測色色差計(日本電色
工業株式会社製Z−1001DP型)で測定し、次式に
従って変色性を算出した。
【0065】△E1 =△E* −△EX ここで、△E1 :ガラス含有の樹脂成形体の変色、△E
x :ガラス含有の樹脂成形体の色差、△E* :ガラスを
含有しない樹脂成形体の色差である。
【0066】(ロ)判定基準 判定基準は、表1に示す。 (c)抗菌性 使用する細菌、判定方法及び判定基準は、上記の樹脂組
成物の抗菌性と防かび性の性能判定と同様である。
【0067】(d)防かび性 使用するかび、判定方法及び判定基準は、上記の樹脂組
成物の抗菌性と防かび性の性能判定と同様である。
【0068】以下に、実施例及び比較例について述べ、
この発明を更に具体的に説明する。 (実施例1)ガラスの原料は、電気炉で1100〜13
00℃に加熱されて、2時間溶融状態におかれた。その
後、冷却固化したガラスは、ボ−ルミルで粉砕され、平
均粒径25μmになった段階で、上記水への溶出量の測
定が行われた。また、この測定の後粉砕は続けられ、粒
径5〜15μm(平均粒径10μm)の粉末状にまで粉
砕された。
【0069】このガラスの組成は、SiO2 :30重量
%、B2 3 :42重量%、Na2O:4.5重量%、
Al2 3 :8重量%、ZnO:10重量%、CuO:
5重量%及びAg2 O:0.5重量%であった。
【0070】このガラス粉末は、1重量%の割合で市販
の不飽和ポリエステル樹脂に配合された。その後、この
不飽和ポリエステル樹脂は、通常の方法で市販の反応促
進剤と硬化剤が微量混合され、300×300mmのテ
フロン製の型枠に厚さ10mmとなるように流し込まれ
た。室温で24時間静置された後に、この樹脂は、90
℃で3時間加熱され、樹脂成形板とされた。当該樹脂成
形板は、50×50×10mmに切断され、上記ガラス
の溶出量、抗菌性、防かび性、ブリスターの成形及び表
面変色の各項目について、その性能が判定された。
【0071】実施例1〜実施例4の測定及び判定の結果
を、下記の表3に示す。 (実施例2)実施例1と同様にして、ガラス粉末が得ら
れた。このガラスの組成は、SiO 2 :35重量%、B
2 3 :40重量%、Na2 O:4重量%、Al
2 3 :10重量%、ZnO:8重量%、CuO:2重
量%及びAg2 O:1重量%であった。このガラス粉末
は、1重量%の割合で市販の不飽和ポリエステル樹脂に
配合された。その後、実施例1と同様にして、樹脂成形
体を製造し、その性能判定を行った。
【0072】(実施例3)実施例1と同様にして、ガラ
ス粉末が得られた。このガラスの組成は、SiO 2 :4
0重量%、B2 3 :35重量%、Na2 O:4重量
%、Al2 3 :10重量%、ZnO:7重量%、Cu
O:3重量%及びAg2 O:1重量%であった。このガ
ラス粉末は、1重量%の割合で市販の不飽和ポリエステ
ル樹脂に配合された。その後、実施例1と同様にして、
樹脂成形体を製造し、その性能判定を行った。
【0073】(実施例4)実施例1と同様にして、ガラ
ス粉末が得られた。このガラスの組成は、SiO 2 :4
8重量%、B2 3 :30重量%、Na2 O:3重量
%、Al2 3 :8重量%、ZnO:8重量%、Cu
O:1重量%及びAg2 O:2重量%である。このガラ
ス粉末は、2重量%の割合で市販の不飽和ポリエステル
樹脂に配合された。その後、実施例1と同様にして、樹
脂成形体を製造し、その性能判定を行った。
【0074】(比較例1)実施例1と同様にして、ガラ
ス粉末が得られた。このガラスの組成は、SiO 2 :3
5重量%、B2 3 :50重量%、Na2 O:14重量
%及びAg2 O:1重量%である。このガラス粉末は、
1重量%の割合で市販の不飽和ポリエステル樹脂に配合
された。その後、実施例1と同様にして、樹脂成形体を
製造し、その性能判定を行った。
【0075】比較例1〜比較例3の測定と判定の結果
を、下記の表4に示す。 (比較例2)実施例1と同様にして、ガラス粉末が得ら
れた。このガラスの組成は、SiO 2 :40重量%、B
2 3 :35重量%、Na2 O:4重量%、ZnO:2
0重量%及びAg2 O:1重量%である。このガラス粉
末は、1重量%の割合で市販の不飽和ポリエステル樹脂
に配合された。その後、実施例1と同様にして、樹脂成
形体を製造し、その性能判定を行った。
【0076】(比較例3)実施例1と同様にして、ガラ
ス粉末が得られた。このガラスの組成は、SiO 2 :4
3重量%、B2 3 :35重量%、Na2 O:4重量
%、Al2 3 :8重量%、ZnO:9重量%及びAg
2 O:1重量%である。このガラス粉末は、2重量%の
割合で市販の不飽和ポリエステル樹脂に配合された。そ
の後、実施例1と同様にして、樹脂成形体を製造し、そ
の性能判定を行った。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】上記実施例1〜4の測定及び判定の結果よ
り、ガラスの溶出量、抗菌性及び防かび性、並びに熱水
処理後のブリスター形成、変色、抗菌性及び防かび性に
ついて、この発明の範囲内においては、良好に効果を発
揮できた。
【0080】これに対し比較例1では、ガラスの溶出
量、樹脂成形直後の防かび性、並びに熱水処理後のブリ
スターの形成、変色、抗菌性及び防かび性が不良であっ
た。比較例1は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化
銅を含まない点で、この発明の範囲外である。このこと
より、酸化アルミニウムと酸化亜鉛を含まないでガラス
の溶出量を適正範囲内に収めることは難しいことが解
る。熱水処理後の抗菌性が不良だったのは、ガラスの溶
出量が多いため、短期間に大部分の銀が溶出してしま
い、その有効期間が短くなってしまったものと考えられ
る。同様に、熱水処理後のブリスターの形成は、ガラス
の溶出量の多さが原因であると考えられる。また、熱水
処理後の変色は、銀の含有量がこの発明の範囲内にある
ことから、ガラスの溶出量の多さの影響であると考えら
れる。
【0081】次に、比較例2では、ガラスの溶出量及び
樹脂成形直後の防かび性、並びに熱水処理後のブリスタ
ーの形成、抗菌性及び防かび性が不良であった。比較例
2は、酸化アルミニウムと酸化銅を含まない点で、この
発明の範囲外である。また、比較例1とは、ガラス原料
に酸化亜鉛を含む点で異なる。このことから、酸化亜鉛
のみを適量含んでいても、ガラスの溶出量を適正値に調
節できないことが解る。次に、比較例3では、樹脂成形
直後の防かび性及び熱水処理後の防かび性が不良であっ
た。比較例3は、酸化銅を含まない点で、この発明の範
囲外である。また、比較例2とは、酸化アルミニウムを
含む点で異なる。このことから、酸化銅を含むことが、
防かび性を発揮するには重要であることが解る。同様
に、酸化アルミニウムと酸化亜鉛を共に含んで初めて、
ガラスの溶出量を適正範囲内に抑えることができること
が解る。また、ガラスの溶出量が適正範囲内に入ってい
れば、熱水処理後であっても抗菌性を発揮できることが
解る。
【0082】なお、前記実施形態を次のように変更して
具現化することも可能である。 (a)抗菌・防かび性ガラスを、長径10〜1000μ
m、厚さ1〜10μmのフレーク状とし、このガラスを
樹脂組成物に配合する。または、樹脂成形体等の表面に
塗装する際の塗料にこのガラスを配合し、抗菌性と防か
び性を有する被膜を形成させる。
【0083】さらに、前記実施形態から把握される技術
思想について以下に記載する。 (1)ガラスの形態が、長径が10〜1000μm、厚
さが1〜10μmのフレーク状である請求項1〜3のい
ずれか1項に記載の抗菌・防かび性ガラス。
【0084】このガラスフレークを樹脂組成物に配合さ
せた場合、抗菌性と防かび性を発揮しつつ、請求項8又
は請求項9で述べたような強化材を別途必要とせずに、
変形や外部からの力に抵抗力のある樹脂組成物を得るこ
とができる。
【0085】
【発明の効果】この発明は、以上のように構成されてい
るため、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発
明の抗菌・防かび性ガラスによれば、酸化銅と酸化銀を
併用することにより、抗菌性と防かび性を併せて発揮で
きると共に、製造コストを低く抑えることができる。ま
た、酸化アルミニウムと酸化亜鉛を併用することによ
り、当該ガラスの水への溶出量を適正範囲内に収めるこ
とができる。この結果として、当該ガラス及びそれを含
有する製品は、抗菌性と防かび性を長期間発揮させるこ
とができ、特に当該ガラスを含有した樹脂組成物におい
ては、ブリスターと変色の発生を抑制することができ
る。
【0086】請求項2に記載の発明の抗菌・防かび性ガ
ラスによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、当
該ガラスの水への溶出量を効果的に調節でき、抗菌性及
び防かび性を最適に発揮することができる。
【0087】請求項3に記載の発明の抗菌・防かび性ガ
ラスによれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効
果に加え、当該ガラスの水への溶出量の調節を容易に
し、かつ当該ガラスの結晶化を抑制することができる。
【0088】請求項4に記載の発明の抗菌・防かび性ガ
ラスによれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発
明の効果に加え、当該ガラスは、樹脂に配合された場合
に、より均一に拡散される。
【0089】請求項5に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物によれば、抗菌性及び防かび性を効果的に発揮
しつつ、当該樹脂組成物の変色を抑制することができ
る。請求項6に記載の発明の抗菌・防かび性樹脂組成物
によれば、請求項5に記載の発明の効果に加え、抗菌性
及び防かび性を良好に発揮させることができる。
【0090】請求項7に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物によれば、請求項5又は請求項6に記載の発明
の効果に加え、上記抗菌・防かび性ガラスを好適範囲内
で上記樹脂と配合することにより、抗菌性と防かび性を
確実に発揮させることができる。
【0091】請求項8に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物によれば、請求項5〜7に記載の発明の効果に
加え、曲げ又は引っ張り等の外部からの力に強い抵抗力
を発揮することができる。
【0092】請求項9に記載の発明の抗菌・防かび性樹
脂組成物によれば、請求項8に記載の発明の効果に加
え、製造コストが低く、かつ入手し易い材料を用いるこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 101/00 C08L 101/00

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化アルミニウム(Al2 3 )、酸化
    亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)及び酸化銀(Ag2
    O)を含有し、水に浸漬した場合の重量減少率が3〜1
    5%である抗菌・防かび性ガラス。
  2. 【請求項2】 その組成が、 酸化ケイ素(Si O2 ): 15〜55 重量%、 酸化ホウ素(B2 3 ): 25〜50 重量%、 酸化ナトリウム(Na2 O): 2〜15 重量%、 酸化アルミニウム(Al2 3 ): 3〜20 重量%、 酸化亜鉛(ZnO): 3〜20 重量%、 酸化銅(CuO): 1〜5 重量%及び 酸化銀(Ag2 O): 0.1〜3 重量% の範囲内にある請求項1に記載の抗菌・防かび性ガラ
    ス。
  3. 【請求項3】 前記ガラス組成において、酸化アルミニ
    ウム及び酸化亜鉛の含有量が、合計で10〜25重量%
    である請求項1又は請求項2に記載の抗菌・防かび性ガ
    ラス。
  4. 【請求項4】 平均粒径が1〜50μm の粉体である請
    求項1〜3のいずれか1項に記載の抗菌・防かび性ガラ
    ス。
  5. 【請求項5】 熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム及び
    エラストマーからなる群より選ばれた少なくとも1つ
    に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗菌・防かび
    性ガラスを含有させた抗菌・防かび性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポ
    リプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ塩
    化ビニリデン、ポリアミド、ポリアセタ−ル、ポリビニ
    ルアルコ−ル、ポリカ−ボネ−ト、アクリル樹脂、フッ
    素樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重
    合樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共
    重合樹脂(AS樹脂)、ウレタン樹脂又はエチレン・酢
    酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)であり、前記熱硬化
    性樹脂は、不飽和ポリエステル、シリコ−ン樹脂、変性
    シリコ−ン樹脂、フェノ−ル樹脂、ユリア樹脂、メラミ
    ン樹脂又はエポキシ樹脂であり、前記エラストマーは、
    ポリウレタンエラストマ−又はポリエステルエラストマ
    −である請求項5に記載の抗菌・防かび性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 前記抗菌・防かび性ガラスの含有量は、
    0.1〜10重量%である請求項5又は請求項6に記載
    の抗菌・防かび性樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 強化材として無機繊維を含有させた請求
    項5〜7のいずれか1項に記載の抗菌・防かび性樹脂組
    成物。
  9. 【請求項9】 前記無機繊維はガラス繊維である請求項
    8に記載の抗菌・防かび性樹脂組成物。
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