JPH1020819A - 発光表示素子 - Google Patents

発光表示素子

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JPH1020819A
JPH1020819A JP19520396A JP19520396A JPH1020819A JP H1020819 A JPH1020819 A JP H1020819A JP 19520396 A JP19520396 A JP 19520396A JP 19520396 A JP19520396 A JP 19520396A JP H1020819 A JPH1020819 A JP H1020819A
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yttrium oxide
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light
yttrium
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修 中村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低消費電力で寿命の長い発光表示素子を提供
する。 【解決手段】 基板2上にAl膜3を形成し、その上に
イットリウム膜4Aと体心立方格子の結晶系をもつ酸化
イットリウム膜4Bを形成してカソード電極5とする。
酸化イットリウム膜4B上に、順次、電子輸送層6、正
孔輸送層7、ITOでなるアノード電極8を形成する。
このように、カソード電極5における電子輸送層6と接
合する面に酸化イットリウム膜4Bを形成することによ
り、カソードから電子輸送層4Bへ電子を注入し易くな
る。このため、低消費電力でカソード寿命の長いの発光
表示素子を実現することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、発光表示素子に
関し、さらに詳しくは、EL(electro luminescence)
表示素子、フィールドエミッションディスプレイ(以
下、FEDという)、プラズマディスプレイパネル(以
下、PDPという)などの自発光を行う表示素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、自発光を行う表示素子としては、
CRT(cathode-ray tube)、EL表示素子、FED、
PDPなどがある。なかでも、EL表示素子、FED、
PDPに関しては、薄型・軽量・低消費電力化を達成さ
せる可能性があるため、その改良が盛んに行われてい
る。特に、EL表示素子においては、近年、電荷注入型
の発光寿命の長い有機EL材料が開発されて注目を浴び
ている。このEL表示素子は、有機EL層をカソード電
極とアノード電極とで挟んだ構成となっている。カソー
ド電極には仕事関数の小さいアルカリ金属、アルカリ土
類金属などの金属材料が使われている。また、アノード
電極には透明なITO(indium tin oxide)が使われて
いる。
【0003】FEDは、アノード電極とカソード電極と
の間に蛍光体が配置された構成であり、カソード電極か
ら放出された冷電子が蛍光体に入射して発光を起こす仕
組みになっている。PDPは、アノード電極とカソード
電極との間に希ガスが封止された構成である。このPD
Pにおいては、カソード電極から放出された冷電子が、
電界で加速されてガス分子と衝突し、励起したり電離を
起こさせたりしながらアノード電極に進み、発生された
陽イオンもカソード電極と衝突して二次電子放出を起こ
し、絶縁破壊である放電を始める。このとき、励起され
た電子は、そのエネルギーを光として放出する仕組みに
なっている。この光のスペクトルは、封止されたガスの
種類によってことなるが、それ自体を表示光とするか或
いはこの光を蛍光体やカラーフィルタに入射させて、色
表示を行うことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したEL表示素子
においては、アノード電極が化学的に安定な材料である
のに対し、カソード電極を構成するアルカリ金属やアル
カリ土類金属が非常に酸化されやすいため、素子寿命を
縮める原因となっている。このため、アルカリ金属やア
ルカリ土類金属と同等もしくはそれ以上の電子放出性を
有し、かつ化学的安定性の高いカソード電極材料の開発
が望まれている。FEDおよびPDPのカソード電極に
おいては、電極材料自体が電子放出にともなってスパッ
タしてしまい、輝度が低下してしまうという問題があっ
た。
【0005】この発明の解決しようとする課題は、カソ
ード電極の安定性と電子放出性の向上を図り、長寿命で
低消費電力な発光表示素子を得るにはどのような手段を
講じればよいかという点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
カソード電極とアノード電極とを備え、前記カソード電
極から電子が放出される発光表示素子において、前記カ
ソード電極の少なくとも表面に希土類酸化物層が形成さ
れていることを特徴としている。請求項1記載の発明に
おいては、電子放出性の高い希土類酸化物層がカソード
電極の表面に形成されているため、低電圧で電子放出を
行うことができ、発光表示素子の低消費電力化を達成す
ることができる。また、化学的安定性の高い希土類酸化
物を用いることにより、カソード電極の耐久性を高める
ことができ、ひいては発光表示素子の長寿命化を達成す
ることができる。
【0007】請求項2記載の発明は、前記カソード電極
が、導電性材料層上に希土類元素膜が形成され、かつ前
記希土類元素膜の表面に前記希土類酸化物層が形成され
てなることを特徴としている。請求項2記載の発明にお
いては、導電性の高い導電性材料層上に比較的導電性の
高い希土類元素が形成され、希土類元素膜の表面に電子
放出性の高い希土類酸化物層が形成されているため、カ
ソード電極から効率的に電子を放出させることができ
る。このため、発光表示素子の低消費電力化を達成する
ことができる。
【0008】請求項3記載の発明は、前記カソード電極
が、導電性材料層上に希土類酸化物層が成膜された構成
であることを特徴としている。請求項3記載の発明にお
いては、希土類酸化物を、膜厚制御性の良好な、例えば
イオンプレーティングや蒸着法などを用いて、導電性材
料層上に直接形成することができるため均一性の高いカ
ソード電極を形成することができる。このため、面方向
に画素が複数配置された発光表示素子とした場合に、面
内均一性の高い表示を行うことが可能となる。
【0009】請求項4記載の発明は、前記希土類酸化物
が、R23-x(Rは希土類元素、xは0.0以上1.0以
下)で表されることを特徴としている。請求項4記載の
発明においては、電子放出性の高い希土類酸化物(R2
3-x)層がカソード電極の表面に形成されているた
め、低電圧で電子放出を行うことができ、発光表示素子
の低消費電力化を達成することができる。また、化学的
安定性の高い希土類酸化物を用いることにより、カソー
ド電極の耐久性を高めることができ、ひいては発光表示
素子の長寿命化を達成することができる。
【0010】請求項5記載の発明は、希土類酸化物が、
酸化イットリウムであることを特徴としている。酸化イ
ットリウムは仕事関数が低く、高い電子放出性であるの
で、効率よく発光することができ、また、耐スパッタ性
にも優れているので長い時間発光することができる。
【0011】請求項6記載の発明では、前記カソード電
極と前記アノード電極との間に有機EL層が挟まれてい
ることを特徴としている。請求項6記載の発明において
は、アノード電極から有機EL層へ正孔が注入され、カ
ソード電極から有機EL層へ電子が注入されて発光を起
こす。このとき、カソード電極から有機EL層への電子
注入性(放出性)が高いため、低電圧で電子注入を行う
ことができ、EL発光素子の低消費電力化を達成するこ
とが可能となる。
【0012】請求項7記載の発明は、前記有機EL層
が、前記カソード電極に接合する電子輸送層と、前記ア
ノード電極に接合する正孔輸送層と、を備えた積層構造
であることを特徴としている。有機EL層としては、例
えばアルミニウム錯体であるトリス(8−キノリレー
ト)アルミニウム錯体(以下、Alq3という)でなる
電子輸送層と、例えばポリビニルカルバゾール(以下、
PVCzという)と2,5−ビス(1−ナフチル)オキサ
ジアゾール(以下、BNDという)とを混合してなる正
孔輸送層と、を積層して構成する。請求項7記載の発明
においては、アノード電極から正孔輸送層へ正孔が注入
され、カソード電極から電子輸送層へ電子が注入され、
正孔輸送層と電子輸送層との界面近傍で電子と正孔とが
再結合して発光を起こす。特に、この発明によれば、発
光表示素子の長寿命化に加え、カソード電極が電子輸送
層への電子注入性の向上に起因して、有機EL発光素子
の低消費電力化を進めることができる。
【0013】請求項8記載の発明は、前記カソード電極
および前記アノード電極間には希ガスが封止され、前記
カソード電極および前記アノード電極間に電圧の印加に
よりプラズマを発生させることを特徴としている。請求
項8記載の発明においては、カソード電極とアノード電
極との間に電圧を印加すると、カソード電極から放出さ
れた電子は電界で加速されて希ガス分子と衝突し、励起
されたり電離を起こしたりしながらアノード電極へ進
む。このとき、陽イオンもカソード電極と衝突して二次
電子放出を起こして放電を始める。励起された電子は、
エネルギーを光として放出して通常の状態に戻る。この
ような作用において、この発明ではカソード電極からの
電子放出性が高くなるため、PDPの低消費電力化を達
成することができる。
【0014】請求項9記載の発明は、前記カソード電極
から放出される電子が蛍光材料層に入射することを特徴
としており、FEDの構成を有している。請求項9記載
の発明においては、カソード電極表面を希土類酸化物層
とすることにより、カソード電極からの電子放出性が高
くなり、FEDの低消費電力化を達成することができ
る。また、カソード電極表面の希土類酸化物が化学的安
定性を有しているため、カソード電極からのスパッタ物
が発生するのを抑制することができる。このため、電極
の耐久性ならびに発光寿命を向上することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明に係る発光表示素
子の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。 (実施形態1)図1はこの発明に係る発光表示素子の実
施形態1を示す断面図である。同図中1は発光表示素子
としての電荷注入型の有機EL発光素子であり、耐熱性
を有する例えばシリカガラスまたは、合成樹脂でなる絶
縁性の基板2の上に、順次、導電性材料層としてのアル
ミニウム(Al)膜3、希土類元素膜としてのイットリ
ウム膜4A、希土類酸化物層としての酸化イットリウム
膜4B、電子輸送層6、正孔輸送層7、およびアノード
電極8が積層されて構成されている。Al膜3とイット
リウム膜4Aと酸化イットリウム膜4Bとは、カソード
電極5を構成している。電子輸送層6は、Alq3で形
成されている。正孔輸送層7は、PVCzとBNDと蛍光
色素としてのクマリン6;(3-(2′-Benzothiazolyl)
-7-diethylaminocoumarin)との混合物で形成されてい
る。これら電子輸送層6と正孔輸送層7は、有機EL層
を構成している。アノード電極8は、ITOで形成され
ている。以下に、Alq3、PVCz、BNDおよびク
マリン6の構造式を示す。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0016】上記した酸化イットリウム膜4Bは、その
結晶格子として単純立方格子、面心立方格子、体心立方
格子、体心立方格子と単純立方格子との中間型、単純立
方格子と面心立方格子との中間型があり、いずれも良好
な電子放出性を有する。また、これら各種の結晶格子を
有する酸化イットリウム膜4Bをカソード電極表面に用
いることにより、安定的に電子放出を行うカソード電極
となる。
【0017】ここで、各結晶系の酸化イットリウムにつ
いて説明する。図2はイットリウムが大気酸化されてな
る酸化イットリウムの結晶格子のX線回折パターンを、
図3はイットリウムが主に水素雰囲気中で酸化されてな
る酸化イットリウムの結晶格子の状態を示すX線回折パ
ターンを示している。図2に示した酸化イットリウム
は、その格子定数が10.60Åであり、その結晶系は
体心立方格子(以下、I型格子という)と指数づけられ
た。図3に示した酸化イットリウムは、その格子定数が
14.85Åであり、その結晶系は単純立方格子(以
下、II型格子という)と指数づけられた。図10に示し
た酸化イットリウムは、その格子定数が5.21Åであ
り、その結晶系は面心立方格子(以下、III型格子とい
う)と指数付けされた。他に結晶系がI型格子とII型格
子との中間型のI−II型格子やII型格子とIII型格子の
中間型のII−III型格子があり、これら異なる結晶系の
酸化イットリウム膜の厚さ方向の電気抵抗を調べたとこ
ろ、いずれも電気伝導性が確認された。
【0018】放電特性では、II型格子の酸化イットリウ
ム膜、II−III型格子の酸化イットリウム膜、III型格子
の酸化イットリウム膜を用いた電極が相対的に最も放電
電圧が低く、次いでI−II型格子、I型格子の順に低
い。このような酸化イットリウムは仕事関数が低く、極
めて良好な電子放出特性を有しているため、低電流で効
率よく電子を電子輸送層または電子輸送性の発光層に注
入することができるので、有機EL素子のカソード電極
として用いることにより高い発光効率を実現することが
できる。また、3000時間以上連続放電を行うことが
でき、カソード電極の長寿命化を可能にした。
【0019】上記実施形態では、カソード電極5および
アノード電極8を互いに直交する複数のストライプ形状
にした高時分割駆動のドットマトリクス表示にしてもよ
いし、カソード電極5あるいはアノード電極8の一方
を、それぞれ薄膜トランジスタに接続された複数の画素
電極とし、他方を共通電極としたアクティブ駆動でもよ
く、また、カソード電極5およびアノード電極8の少な
くとも一方を、文字、図形の形状にして表示を行っても
よい。
【0020】次に、本実施形態のEL発光素子1の製造
方法1〜4について説明する。 (製造方法1)以下、本実施形態1のEL発光素子1の
製造方法1について説明する。この方法によって、電極
表面にY23-x(xは0.0以上1.0以下である)でな
る電子放出性を有する膜が形成できる。まず、基板2を
洗浄する。次いで、基板2の表面に、Al膜3をスパッ
タ法により形成し、その上にイットリウムを例えば抵抗
加熱や電子ビームなどの手法を用いて蒸着またはスパッ
タして、膜厚が500Å〜5000Å程度のイットリウ
ム膜を成膜する。
【0021】その後、基板2を反応炉内に搬入し、イッ
トリウム膜の表面を酸化処理する。この反応炉は、気体
導入路と気体排出路とを備え、所定の流量で水素
(H2)ガスが気体導入路から導入され、常に炉内が水
素ガスで満たされるように設定されている。なお、この
反応炉内には、酸素(O2)および/または酸素含有物
の濃度が1体積%以下、望ましくは1000ppm以
下、さらに望ましくは100ppm以下存在するように
制御されている。酸素含有物としては、例えば水蒸気を
用いることができる。なお、酸素および/または酸素含
有物の濃度は、気体導入路と気体排出路とに繋がってい
る酸素を吸着するフィルタおよび水を吸着するフィルタ
と、炉内に導入される水素濃度を制御することにより予
め制御することができる。
【0022】次に、炉内の温度を常温から600℃程度
の温度まで100℃/15分〜100℃/5分の割合で
昇温し、600℃程度で10〜60分間加熱する。この
酸化処理工程は、300℃以上1000℃以下の範囲、
望ましくは500℃以上700℃以下の範囲で行えばよ
い。また、昇温の割合は、100℃/20分〜100℃
/5分の割合であればよい。このようにして、基板2上
のイットリウム膜4A表面に酸化イットリウム膜4Bを
形成することができる。
【0023】この後は、脱水素処理工程を行う。すなわ
ち、基板2を減圧雰囲気(1×10-3Torr以下、望まし
くは1×10-6Torr以下)中で、350℃以上、望まし
くは450℃以上800℃以下で15分間加熱し、イッ
トリウム膜4Aおよび酸化イットリウム膜4B中に含ま
れている水素を除去する。
【0024】次に、酸化イットリウム膜4B上にAlq
3をディップコートもしくはスピンコートなどの湿式成
膜により塗布して電子輸送層6を形成する。その後、電
子輸送層6上に、PVCzとBNDとクマリン6との混
合物を同じくディップコートもしくはスピンコートなど
の湿式成膜により塗布して正孔輸送層7を形成する。そ
の後、正孔輸送層7上にITOでなるアノード電極8
を、スパッタ法により形成する。なお、カソード電極5
とアノード電極8とは、対向する部分に駆動電圧が印加
されることにより発光する領域が形成される訳である
が、この発光領域を画素単位に形成する際には、カソー
ド電極5とアノード電極8とが互いに平面的に見て交差
するようなパターン、すなわちカソード電極5とアノー
ド電極8とをそれぞれストライプ状に形成する場合に
は、両電極が互いに異なる方向に延在されるようにパタ
ーニングする工程が必要となることは言うまでもない。
また、両電極のうち一方が表示領域全面に亙って形成さ
れた平板状の電極で、他方の電極が各画素毎に矩形状ま
たは円形状にパターニングされた構成としてもよい。
【0025】以上、製造方法1について説明したが、上
記方法において酸素および/または酸素含有物の濃度を
変えると以下に説明するような特徴を有する酸化イット
リウムとなる。
【0026】まず、酸素および/または酸素含有物の濃
度が100ppmオーダを越える水素雰囲気下で膜厚3
000Å程度のイットリウム膜を加熱酸化すると、図4
のX線回折パターンに示されるような4500Å程度の
I型格子(体心立方格子)に指数付けされた酸化イット
リウム膜が形成される。このI型格子の酸化イットリウ
ム膜は、格子定数が10.60Åであり、図5に示すよ
うに29°近傍の強度ピークに特徴がある。
【0027】上記製造方法において、酸素および/また
は酸素含有物の濃度が10ppmオーダ程度の水素雰囲
気下で膜厚3000Å程度のイットリウム膜を加熱酸化
すると図6のX線回折パターンに示されるような450
0Å程度のII型格子と指数付けされた酸化イットリウム
膜が形成される。このII型格子の酸化イットリウム膜
は、格子定数が14.85Åであり、図7に示すように
29°近傍に大きい強度ピークが1つと29.6°近傍
に大きい強度ピークが1つあるのが特徴である。
【0028】上記製造方法において、酸素および/また
は酸素含有物の濃度が100ppmオーダ程度(II型格
子のみの酸化イットリウム膜が形成されるより薄い程
度)の水素雰囲気下で膜厚3000Å程度のイットリウ
ム膜を加熱酸化すると、図8のX線回折パターンに示さ
れるような4500Å程度のI型格子とII型格子(単純
立方格子)との中間型(I-II型)と指数付けされた酸化
イットリウム膜が形成される。このI-II型格子の酸化イ
ットリウム膜は、図9に示すように29°近傍に大きい
強度ピークが1つと、その右肩(29.6近傍)に小さ
い強度ピークが1つあるのが特徴である。
【0029】上記製造方法において、酸素および/また
は酸素含有物の濃度が1ppmオーダ程度の水素雰囲気
下で膜厚3000Å程度のイットリウム膜を加熱酸化す
ると、図10のX線回折パターンに示されるような45
00Å程度の面心立方格子(以下、III型格子という)
と指数付けされた酸化イットリウム膜が形成される。こ
のIII型格子の酸化イットリウム膜は、格子定数が5.2
1Åであり、図11に示すように29.6°近傍に大き
い強度ピークが1つあるのが特徴である。
【0030】上記製造方法において、酸素および/また
は酸素含有物の濃度が、III型格子のみの酸化イットリ
ウム膜が形成される濃度より濃く、II型格子のみの酸化
イットリウム膜が形成されるより薄い程度の水素雰囲気
下で膜厚3000Å程度のイットリウム膜を加熱酸化す
ると、図12のX線回折パターンに示されるような45
00Å程度の、II型格子とIII型格子との中間型(以
下、II-III型格子という)と指数付けされた酸化イット
リウム膜が形成される。このII-III型格子の酸化イット
リウム膜は、29.6°近傍に大きい強度ピークが1つ
と、その左肩(29°近傍)に小さい強度ピークが1つ
あるのが特徴である。
【0031】上記したように、水素雰囲気内の酸素濃度
を制御することにより、酸化イットリウム膜の結晶系を
制御することができる。上記製造方法により形成された
酸化イットリウムからなる電極を、希ガスと水銀が封入
された、管径2.6φ、長さ63.5mmの管内に対向し
て配置して定電流下での放電試験を行なった。III型格
子、II-III型格子の管は、いずれも放電電圧が167
V、II型格子の管は、172V、I−II型格子、I型格
子の管は、それぞれ176V、182Vであった。比較
実験としてNi電極を用いた管では、225Vであっ
た。ニッケル電極より大幅に放電電圧が低いということ
は、これら結晶系の酸化イットリウムのほうが大幅に電
子放出性が高いことを示している。因に、ニッケルの仕
事関数は5.15eVであるが、これらの結晶系の酸化
イットリウムの仕事関数はこの値より大幅に小さいとい
うことが確認できる。このため、上記した実施形態1の
ように、上記結晶系の酸化イットリウム膜をEL発光素
子のカソード電極として用いれば、図1に示した電子輸
送層6への電子を注入し易くなり、EL発光素子の低消
費電力化を達成することができる。また、これらの酸化
イットリウムは、放電によるスパッタが少なく、表面を
覆うことにより下地である金属のスパッタを抑制できる
ことが確認された。
【0032】なお、本実施形態では、希土類酸化物を構
成する希土類元素としてしては、イットリウムを用いた
が、この他に、スカンジウム(Sc)、ランタン(L
a)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオ
ジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(S
m)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、
テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミ
ウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(T
m)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の
中から選択することができる。また、希土類酸化物は、
アノード電極材料より低仕事関数の材料であれば、上記
材料に限定されるものではない。 (製造方法2)以下、本実施形態のEL発光素子1の製
造方法2を説明する。この方法においても、電極表面に
23-x(xは0.0以上1.0以下である)でなる電子
放出性を有する膜が形成できる。
【0033】まず、基板2を洗浄する。次いで、基板2
の表面に、Al膜3をスパッタ法により形成し、その上
にイットリウムを例えば抵抗加熱や電子ビームなどの手
法を用いて蒸着またはスパッタして、膜厚が500Å〜
5000Å程度のイットリウム膜を成膜する。
【0034】その後、基板2を反応炉内に搬入し、イッ
トリウム膜の表面を酸化処理する。この反応炉は、気体
導入路と気体排出路とを備え、所定の流量でアルゴン
(Ar)が気体導入路から導入され、常に炉内がアルゴ
ンで満たされるように設定されている。なお、この反応
炉内には、酸素(O2)および/または酸素含有物の濃
度が1体積%以下、望ましくは1000ppm以下、さ
らに望ましくは100ppm以下存在するように制御さ
れている。酸素含有物としては、例えば水蒸気が炉内に
存在し、また極微量の水素が存在する。なお、酸素およ
び/または酸素含有物の濃度は、気体導入路と気体排出
路とに繋がっている酸素を吸着するフィルタおよび水を
吸着するフィルタと、炉内に導入されるアルゴン濃度を
制御することにより予め制御することができる。
【0035】次に、アルゴン雰囲気で炉内の温度を常温
から600℃程度の温度まで100℃/15分〜100
℃/5分の割合で昇温し、600℃程度で10〜60分
加熱する。この酸化処理工程は、300℃以上1000
℃以下の範囲、望ましくは500℃以上700℃以下の
範囲で行えばよい。また、昇温の割合は、100℃/2
0分〜100℃/5分の割合であればよい。このように
して、基板2上のイットリウム膜4A表面に酸化イット
リウム膜4Bを形成することができる。
【0036】このように形成された酸化イットリウム膜
の結晶系は、実質的に上記した製造方法1と同様であ
り、酸素および/または酸素含有物の濃度に応じて制御
することができ、I型格子、I-II型格子、II型格子の酸
化イットリウム膜の生成が確認できた。この製造方法2
では、上記製造方法1が水素雰囲気でイットリウム膜を
参加しているのに対し、アルゴン雰囲気下で酸化が行わ
れている点で異なる。また、この製造方法2では、アル
ゴン雰囲気下で酸化が行われているので基板2、Al膜
3、イットリウム膜内に水素が実質的に混入されていな
ければ、生成された酸化イットリウム膜内に水素がほと
んど混入されず、脱水素処理を施す必要がない。このた
め、上記製造方法1に比較して工程数が少なくてすむ。
ただし、基板2、Al膜3、イットリウム膜のいずれか
に水素が含まれている場合は、脱水素処理を必要とす
る。また、電子輸送層6、正孔輸送層7、アノード電極
8などの形成方法は、上記した製造方法1と同様であ
る。
【0037】(製造方法3)以下、本実施形態のEL発
光素子1の製造方法3を説明する。この方法において
も、電極表面にY23-x(xは0.0以上1.0以下であ
る)でなる電子放出性を有する膜が形成できる。
【0038】まず、基板2を洗浄する。次いで、基板2
の表面に、Al膜3をスパッタ法により形成し、その上
にイットリウムを例えば抵抗加熱や電子ビームなどの手
法を用いて蒸着またはスパッタして、膜厚が20000
Å〜40000Å程度のイットリウム膜を成膜する。次
に、イットリウム膜の上に、アモルファス状の酸化イッ
トリウム膜を、イオンプレーティング法により500〜
2000Å程度の膜厚に成膜する。
【0039】その後、基板2を反応炉内に搬入し、イッ
トリウム膜の表面を酸化処理する。この反応炉は、気体
導入路と気体排出路とを備え、所定の流量で水素
(H2)ガスが気体導入路から導入され、常に炉内が水
素ガスで満たされるように設定されている。なお、この
反応炉内には、酸素(O2)および/または酸素含有物
の濃度が1体積%以下、望ましくは1000ppm以
下、さらに望ましくは100ppm以下存在するように
制御されている。なお、酸素含有物としては、例えば水
蒸気を用いることができる。なお、酸素および/または
酸素含有物の濃度は、気体導入路と気体排出路とに繋が
っている酸素を吸着するフィルタおよび水を吸着するフ
ィルタと、炉内に導入される水素濃度を制御することに
より予め制御することができる。
【0040】次に、炉内の温度を常温から600℃程度
の温度まで100℃/15分〜100℃/5分の割合で
昇温させ、600℃程度で10〜60分間加熱する。こ
の酸化処理工程は、300℃以上1000℃以下の範
囲、望ましくは500℃以上700℃以下の範囲で行え
ばよい。また、昇温の割合は、100℃/20分〜10
0℃/5分の割合であればよい。このようにして、基板
2上のイットリウム膜4A表面に酸化イットリウム膜4
Bを形成することができる。
【0041】この後は、脱水素処理工程を行う。すなわ
ち、基板2を減圧雰囲気(1×10-3Torr以下、望まし
くは1×10-6Torr以下)中で、350℃以上、望まし
くは450℃以上800℃以下で15分間加熱し、酸化
イットリウム膜4B内に含まれている水素を除去する。
また、電子輸送層6、正孔輸送層7、アノード電極8な
どの形成方法は、上記した製造方法1と同様である。
【0042】このような製造方法3によって、I型格
子、I-II型格子、II型格子の酸化イットリウム膜の生成
が確認された。
【0043】(製造方法4)以下、本実施形態のEL発
光素子1の製造方法4を説明する。この方法において
も、電極表面にY23-x(xは0.0以上1.0以下であ
る)でなる電子放出性を有する膜が形成できる。
【0044】まず、基板2を洗浄する。次いで、基板2
の表面に、Al膜3をスパッタ法により形成し、その上
にイットリウムを例えば抵抗加熱や電子ビームなどの手
法を用いて蒸着またはスパッタして、膜厚が20000
Å〜40000Å程度のイットリウム膜を成膜する。次
に、イットリウム膜の上に、アモルファス状の酸化イッ
トリウム膜を、イオンプレーティング法により500〜
2000Å程度の膜厚に成膜する。
【0045】その後、基板2を反応炉内に搬入し、酸化
処理を施す。この反応炉は、気体導入路と気体排出路と
を備え、所定の流量でアルゴン(Ar)が気体導入路か
ら導入され、常に炉内がアルゴンで満たされるように設
定されている。なお、この反応炉内には、酸素(O2
および/または酸素含有物の濃度が1体積%以下、望ま
しくは1000ppm以下、さらに望ましくは100p
pm以下存在するように制御されている。酸素含有物と
しては、例えば水蒸気が炉内に存在する。なお、酸素お
よび/または酸素含有物の濃度は、気体導入路と気体排
出路とに繋がっている酸素を吸着するフィルタおよび水
を吸着するフィルタと、炉内に導入されるアルゴン濃度
を制御することにより予め制御することができる。
【0046】次に、アルゴン雰囲気で炉内の温度を常温
から600℃程度の温度まで100℃/15分〜100
℃/5分の割合で昇温し、600℃程度で10〜60分
間加熱する。この酸化処理工程は、300℃以上100
0℃以下の範囲、望ましくは500℃以上700℃以下
の範囲で行えばよい。また、昇温の割合は、100℃/
20分〜100℃/5分の割合であればよい。このよう
にして、基板2上のイットリウム膜4A表面に所定結晶
系の酸化イットリウム膜4Bを形成することができる。
なお、電子輸送層6、正孔輸送層7、アノード電極8な
どの形成方法は、上記した製造方法1と同様である。
【0047】なお、この製造方法4では、アルゴン雰囲
気下で酸化を行っているため、基板2、Al膜3、イッ
トリウム膜内に水素が実質的に混入されていなければ、
生成された酸化イットリウム膜内に水素がほとんど混入
されない。このため、脱水素処理を施す必要がなく、工
程数を製造方法1に比較して少なくすることができる。
ただし、基板2、Al膜、イットリウム膜のいずれかに
水素が含まれている場合は、脱水素処理を行うことが望
ましい。このように形成された酸化イットリウム膜の結
晶系は、酸素および/または酸素含有物の濃度に応じて
制御することができ、I型格子、I-II型格子、II型格子
の酸化イットリウム膜の生成が確認できた。なお、イオ
ンプレーティング法で成膜された酸化イットリウム膜の
酸化前の膜厚が1000Å程度の場合、酸素濃度が10
0ppmオーダでI型格子、10ppmオーダでII型格
子の酸化イットリウムの生成が確認された。
【0048】本実施形態のEL発光素子1では、カソー
ド電極5の表面に形成された酸化イットリウム膜4Bの
電気抵抗が、数十Ω以下と小さく、電気伝導性を示して
いる。これに加えて、酸化イットリウムは、その仕事関
数が小さく、高い電子放出性を有する。酸化イットリウ
ムは、このような特性を持つため良好なカソード電極と
して用いることができる。このため、本実施形態のEL
発光素子は、発光電圧の低い低消費電力な駆動を行うこ
とができる。また、酸化イットリウム自体が、化学的に
安定な物質であるため、電極の寿命を長くすると共に、
素子自体の寿命を長くすることができる。なお、本実施
形態では、電子輸送層としてAlq3を、正孔輸送層と
してPVCzとBNDを混合したものを用いたが、この
他各種のEL材料を適用することができる。また、EL
層の構造も2層構造に限定されるものではなく、電子輸
送層と正孔輸送層との間に発光層を設けた3層構造でも
よい。
【0049】図17に示すように、4500Å程度のI
型格子の酸化イットリウム膜では可視光波長域での透過
性は概ね50%を超えており、基板2、Al膜3、イッ
トリウム膜4Aの厚さ等を制御して可視光波長域におい
て透過性を持たせれば、I型格子のEL発光素子1の発
光を基板2側から出射することができる。
【0050】イットリウム膜4Aは、酸化イットリウム
4Bを生成する際にAl膜3の酸化による電気的絶縁を
防止するとともに各層間の接合性を良好にするものであ
るが、このような中間層はイットリウムに限ることな
く、所定の仕事関数であれば他の導電性材料でもよい。
【0051】以上、実施形態1に係るEL発光素子とそ
の製造方法1〜4について説明したが、次に、実施形態
2に係るEL発光素子について以下に説明する。
【0052】(実施形態2)図13は、本発明をEL発
光素子に適用した実施形態2の断面図である。本実施形
態においては、基板2上にAl膜3が形成され、このA
l膜3の上に酸化イットリウム膜4Bが形成され、酸化
イットリウム膜4Bの上に順次、電子輸送層6、正孔輸
送層7、アノード電極8が形成された構成となってい
る。なお、他の構成は、上記した実施形態1と同様であ
る。
【0053】次に、本実施形態のEL発光素子1の製造
方法を説明する。この方法においても、電極表面にY2
3-x(xは0.0以上1.0以下である)でなる電子放
出性を有する膜が形成できる点では、上記した製造方法
1および2と同様であるが、この製造方法ではAl膜3
上に直接、酸化イットリウム膜を形成する点で異なる。
【0054】まず、基板2を洗浄する。次いで、基板2
の表面にAl膜3をスパッタ法により形成し、その上に
イオンプレーティングによりアモルファス状の酸化イッ
トリウム膜を、膜厚が1000Å〜5000Å程度にな
るように成膜する。
【0055】その後、基板2を反応炉内に搬入する。こ
の反応炉は、気体導入路と気体排出路とを備え、所定の
流量で水素(H2)ガスが気体導入路から導入され、常
に炉内が水素ガスで満たされるように設定されている。
なお、この反応炉内には、酸素(O2)および/または
酸素含有物の濃度が1体積%以下、望ましくは1000
ppm以下、さらに望ましくは100ppm以下存在す
るように制御されている。酸素含有物としては、例えば
水蒸気を用いることができる。なお、酸素および/また
は酸素含有物の濃度は、気体導入路と気体排出路とに繋
がっている酸素を吸着するフィルタおよび水を吸着する
フィルタと、炉内に導入される水素濃度を制御すること
により予め制御することができる。
【0056】次に、炉内の温度を常温から600℃程度
の温度まで100℃/15分〜100℃/5分の割合で
昇温し、600℃程度で10〜60分加熱する。この酸
化処理工程は、300℃以上1000℃以下の範囲、望
ましくは500℃以上700℃以下の範囲で行えばよ
い。また、昇温の割合は、100℃/20分〜100℃
/5分の割合であればよい。このようにして、基板2表
面に酸化イットリウム膜を形成することができる。
【0057】この後は、脱水素処理工程を行う。すなわ
ち、基板2を減圧雰囲気(1×10-3Torr以下、望まし
くは1×10-6Torr以下)中で、350℃以上、望まし
くは450℃以上800℃以下で15分間加熱し、酸化
イットリウム膜中に含まれている水素を除去する。ま
た、電子輸送層6、正孔輸送層7、アノード電極8など
の形成方法は、上記した製造方法1と同様である。
【0058】このような製造方法によって、I型格子、
I-II型格子、II型格子の酸化イットリウム膜の生成が確
認された。本実施形態のEL発光素子においても、上記
した実施形態1のEL発光素子と同様に、カソード電極
5の表面に形成された、上記の結晶系をもつ酸化イット
リウム膜4Bの電気抵抗が、数十Ω以下と小さく、電気
伝導性を示している。これに加えて、酸化イットリウム
は、その仕事関数が小さく、高い電子放出性を有する。
酸化イットリウムは、このような特性を持つため良好な
カソード電極として用いることができる。このため、本
実施形態のEL発光素子は、発光電圧を低い低消費電力
な駆動を行うことができる。また、酸化イットリウム自
体が、化学的に安定な物質であるため、電極の寿命を長
くすると共に、素子自体の寿命を長くすることができ
る。
【0059】(実施形態3)図14は、本発明をEL発
光素子に適用した実施形態3の断面図である。本実施形
態においては、上記実施形態1のカソード電極5を構成
するAl膜3を、ITO膜9に代えたものであり、他の
構成、作用、効果は上記実施形態1と同様である。ま
た、ITO膜9上にイットリウム膜4Aと酸化イットリ
ウム膜4Bとを形成する方法も上記実施形態1と同様で
ある。
【0060】(実施形態4)以下、アドレス信号光を発
生させるアドレス発光部と、表示光を発生させる表示部
と、を有する発光表示素子に、本発明を適用した実施形
態4について説明する。図15は、実施形態4の発光表
示素子の断面図である。同図中11は、発光表示素子で
ある。この発光表示素子11は、表示部12と、アドレ
ス発光部13と、から大略構成されている。
【0061】表示部12は、例えばシリカガラス或いは
合成樹脂などの透明基板14の裏面に、表示領域全面に
亙って、順次ITO膜15、酸化イットリウム膜16が
積層されている。これらITO膜15と酸化イットリウ
ム膜16とが、表示駆動用カソード電極17を構成して
いる。この表示駆動用カソード電極17の形成方法は、
透明基板14上にITO膜15を形成した後、上記した
実施形態2と同様の方法を用いて形成することができ
る。なお、本実施形態において酸化イットリウム膜16
の結晶系は、特に光透過性の良好な上記したI型格子
(体心立方格子)のものを用いる。
【0062】次に、酸化イットリウム膜16上(裏面)
には、表示領域全面に亙って、順次、Alq3でなる電
子輸送層18、PVCzとBNDとを混合してなる正孔
輸送層19が周知の方法で形成されている。なお、発光
領域である正孔輸送層19の各ドット部分には、電子と
正孔の再結合により発光する光を吸収し、それぞれR
(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に発光する
蛍光材料を含有するように形成すれば、多色表示が可能
となる。正孔輸送層19の上(裏面)には、アモルファ
スシリコン(a−Si)にn型不純物(例えば、リン)
をドープしてなるドープ層20が表示領域全面に亙って
形成されている。また、ドープ層20の上(裏面)に
は、アモルファスシリコンでなる光導電層21が表示領
域全面に亙って形成されている。なお、ドープ層20と
光導電層21は、後記するアドレス発光部13側から照
射される白色光(アドレス光)が入射した部分だけに内
部に電子−正孔対を生成し、導電性を示すようになる。
そして、光導電層21の上(裏面)には、所定方向に平
行に並ぶ複数の表示駆動用アノード電極22がストライ
プ状に形成されている。なお、この表示駆動用アノード
電極22の材料としては、後記するアドレス光に対して
透明性をもつITOが用いられている。上記したITO
膜15から表示駆動用アノード電極22までの部材によ
り、表示部12が構成されている。
【0063】表示駆動用アノード電極22が形成された
光導電層21の上(裏面)には、例えばシリコン窒化膜
やシリコン酸化膜でなる、平坦化絶縁膜23が周知の平
坦化技術を用いて形成されている。そして、この平坦化
絶縁膜23の上(裏面)には、表示駆動用アノード電極
22と対向して平面的に重なるように、表示駆動用アノ
ード電極22と同じ本数のアドレス駆動用カソード電極
24が形成されている。このアドレス駆動用カソード電
極24は、ITOでなる電極基体25の表面に薄い膜厚
の酸化イットリウム膜26が形成されて構成されてい
る。なお、酸化イットリウム膜26の結晶系は、上記し
た表示駆動用カソード電極17の酸化イットリウム膜1
6と同様に、光透過性の良好なI型格子(体心立方格
子)のものを用いる。
【0064】そして、アドレス駆動用カソード電極24
が形成された平坦化絶縁膜23の上(裏面)にはAlq
3でなる電子輸送層27、PVCzとBNDと白色発光
材料とを混合してなる正孔輸送層28が周知の技術で順
次積層するように形成されている。さらに、正孔輸送層
28の裏面には、ITOでなる、複数のアドレス駆動用
アノード電極29が、上記したアドレス駆動用カソード
電極24と平面的に見て交差するように、ストライプ状
に形成されている。
【0065】以下、本実施形態の発光表示素子11の作
用・動作を説明する。まず、アドレス発光部13におい
て、線順次走査により選択されたアドレス駆動用カソー
ド電極24とアドレス駆動用アノード電極29との間に
所定電圧が印加されると、電子輸送層27と正孔輸送層
28との界面近傍で電子と正孔との再結合が起こり、図
15に示すようにアドレス光(白色光)aが光導電層2
1およびドープ層20に向けて出射する。なお、このと
き、電子輸送層27と正孔輸送層28との界面と、光導
電層21およびドープ層20と、の距離は、実際には十
分に近い距離(アドレス光が空間周波数を維持して入射
し得る距離)であるため、対応する領域の光導電層21
およびドープ層20のみに入射する。このため、所定の
アドレスから発光するアドレス光が、隣接するドット部
分の光導電層21およびドープ層20に入射してその領
域に電子−正孔対を生成することはない。電子−正孔対
が生成された光導電層21およびドープ層20を介する
ことにより、表示駆動用アノード電極22から正孔輸送
層19へ正孔を注入することが可能となる。これによっ
て、表示駆動用アノード電極22と表示駆動用カソード
電極17との間に印加されていた表示駆動電圧は、正孔
輸送層19と電子輸送層18とでなる有機EL層の対応
するドット部分に印加される。なお、表示駆動用の電極
間には、直流駆動電圧、パルス電圧、交流電圧などを用
いることができる。この結果、表示部12の発光により
図15に示すように表示光bが前方に向けて照射され、
表示を行うことができる。
【0066】特に、本実施形態の発光表示素子11にお
いては、上記したように、表示駆動用カソード電極17
およびアドレス駆動用カソード電極24の表面層が酸化
イットリウム膜16、26で構成されている。酸化イッ
トリウム膜は、その電気抵抗が、上記したように数十Ω
以下と小さく電気伝導性をもち、これに加えて、仕事関
数が十分小さいため、高い電子放出性を有する。このた
め、本実施形態の発光表示素子11は、表示部12およ
びアドレス発光部13において、発光電圧を低くするこ
とができ、低消費電力な駆動を行うことができる。ま
た、酸化イットリウム自体が、化学的に安定な物質であ
るため、従来からの課題であるカソード電極の寿命を長
くすると共に、素子自体の寿命を長くすることができ
る。
【0067】次に、上記した発光表示素子11における
各構成部材の光透過性について説明する。透明基板1
4、ITO膜15、電子輸送層18は、表示光(可視
光)bに対して良好な光透過性をもつ。また、表示駆動
用アノード電極22、平坦化絶縁膜23、電極基体2
5、電子輸送層27は、アドレス光(可視光)に対して
透過性をもつ。そこで、酸化イットリウム膜16の表示
光bに対する透過性と、酸化イットリウム膜26のアド
レス光aに対する透過性が重要となる。
【0068】ここで、酸化イットリウムの光学的特性に
ついて説明する。まず、石英基板上に電子ビーム蒸着に
より成膜された膜厚3000Å程度のイットリウム膜を
所定濃度の水素雰囲気下で600℃程度の温度で15分
間加熱して得られた酸化イットリウム膜と、石英基板上
に電子ビーム蒸着により成膜された膜厚3000Å程度
のイットリウム膜を大気中で700℃程度の温度で30
分間加熱して得られた酸化イットリウム膜を用意した。
【0069】上記した所定濃度の水素雰囲気下で酸化さ
れた酸化イットリウムは、上記したII型格子であり、石
英基板上の酸化イットリウムの光透過特性を図16に示
す。光透過率は、石英および酸化イットリウムのいずれ
も介さない光の光量を100とした場合の、石英および
酸化イットリウムを透過した光の光量の相対的な割合で
ある。光反射率は、所定の光量の光に対して表面が平滑
なアルミニウム(Al)板の反射光量を100とした場
合の、石英および酸化イットリウムで反射された光の光
量の相対的な割合ある。
【0070】大気酸化された酸化イットリウムはI型格
子であり、その光透過特性を図17に示す。図17に示
すI型格子の酸化イットリウム膜の場合は、光透過率が
波長が500nm〜2500nmの範囲において常に5
0%を越えている。これに対して、図16に示したII型
格子の酸化イットリウム膜の場合は、光透過率が波長5
00nm〜2500nmの範囲において常に20%より
低い。また、I型格子の酸化イットリウム膜の場合に
は、光反射率が波長500nm〜2500nmの範囲で
常に40%以下である。これに対しII型格子の酸化イッ
トリウム膜の場合には、光反射率が波長500nm〜2
500nmの範囲において数%〜75%の間で変化して
おり、最大反射率は60%を越えている。このように異
なる結晶系の酸化イットリウムどうしは、光学的特性が
大きく異なることがわかる。このことから、本実施形態
の発光表示素子11のカソードとしては、I型格子の酸
化イットリウムを用いることで、アドレス光aや表示光
bの光利用効率を向上できることがわかる。
【0071】次に、物質固有の光学的指標の1つとして
吸収端(absorption edge)について、上記I型格子お
よびII型格子の酸化イットリウムについて調べてみた。
吸収端は、一般的にX線または光の連続吸収スペクトル
において、波長がこれ以上長くなると吸収率が急激に減
少するようになる部分またはその端のことをいう。ここ
では、吸収端を光透過率が測定不可となる値まで落ち込
んだところと定義する。図18は、所定濃度の水素雰囲
気下で酸化されたII型格子の酸化イットリウムの吸収端
を示している。図19は、大気中で酸化されたI型格子
の酸化イットリウムの吸収端を示している。図19に示
した酸化イットリウムでは、約5.9eVであるのに対
し、図18に示した酸化イットリウムでは、4.0eV
以下になっている。このことからII型格子の酸化イット
リウムがI型格子の酸化イットリウムに比べ低エネルギ
ー側にシフトしていることがわかる。以上のことから、
酸化イットリウムでは、その結晶系に応じて様々な光学
的特性が異なることがわかる。
【0072】上記各実施形態では、正孔輸送層および電
子輸送層で再結合による発光を表示光として用いてもよ
いし、再結合による発光を吸収してより長波長域の可視
光を発光してもよい。
【0073】また実施形態4では、光導電層21に、可
視光に光吸収性がなく紫外線に光吸収性があるZnO
(酸化亜鉛)を用い、正孔輸送層19にはPVCzとB
NDとの混合物、電子輸送層18にはAlq3を用いれ
ば、アドレス発光部13から紫外線の発光させ、紫外線
が照射されない状態では絶縁性であった光導電層21が
アドレス発光部13からの紫外線の波長域の光を吸収す
ることにより厚さ方向に導電性をもたらすことができ
る。この作用に従って、予め表示駆動用カソード電極1
7および表示駆動用アノード電極22間に印加される電
圧により、表示駆動用アノード電極22から光導電層2
1およびドープ層20を介して正孔輸送層19に正孔が
注入され、表示駆動用カソード電極17から電子輸送層
18に電子が注入され、表示部12で再結合を行ない、
表示光bが照射される。このように光導電層21が紫外
線の波長域のみで導電性をもたらすよう設定されている
ので、表示部12にアドレス光以外の可視光が入射した
としても誤動作が発生することはない。
【0074】(実施形態5)図20は、本発明をPDP
に適用した実施形態5を示す断面図である。本実施形態
のPDPは、直流駆動のカラーPDPである。同図中9
1はPDPであり、それぞれ赤色、緑色、青色を表示す
る複数の画素から構成されている。各画素は、透明な上
基板92と下基板93との間に設けられた格子状あるい
はストライプ状の障壁101により区分けされている。
下基板93上には、補助カソード電極94が各画素の中
央に配置されている。補助カソード電極94は、ニッケ
ル(Ni)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、
マンガン(Mo)の中から少なくとも1つ選択される導
体からなる基体95と、基体95上に形成された希土類
酸化物層としての酸化イットリウム膜96と、から構成
されている。補助カソード電極94の周囲には、データ
電極97が電極94と離間して配置されている。補助カ
ソード電極94を中心としたデータ電極97の外側方向
にはアモルファスシリコンなどでなる電流制御膜98が
配置されている。また、電流制御膜98のさらに外側に
はカソード電極102が配置されている。カソード電極
102は、Ni、Cr、Al、Moの中から少なくとも
1つ選択される導体からなる基体103と、基体103
上に形成された希土類酸化物層としての酸化イットリウ
ム膜104と、から構成されている。この電流制御膜9
8は、データ電極97からの電流のふらつきを抑制して
いる。電流制御膜98の抵抗は、膜厚、長さ、アモルフ
ァスシリコン中に添加される不純物などにより設定する
ことができる。
【0075】また、下基板93上には、補助カソード電
極94の酸化イットリウム膜96とカソード電極102
の酸化イットリウム膜104を除く全面に絶縁膜105
が設けられている。補助カソード電極94の周囲の絶縁
膜105上には、補助障壁106が形成されている。障
壁101および補助障壁106は、各画素毎に、赤色に
発光する蛍光体107R、緑色に発光する蛍光体107
G、青色に発光する蛍光体107Bがそれぞれ設けられ
ている。蛍光体107Rとしては、(Y,Gd)B
3:Eu3+:Y23:Eu3+があり、蛍光体107G
としては、Zn2SiO4:Mn,BaAl1219:Mn
があり、蛍光体107Bとしては、BaMgAl
1423:Eu2+,SrMg(SiO42:Eu2+があ
る。
【0076】上基板92には、各画素に応じて、赤色に
分光するカラーフィルタ111R、緑色に分光するカラ
ーフィルタ111G、青色に分光するカラーフィルタ1
11Bが設けられている。カラーフィルタ111R、1
11G、111Bの表面には、ITOからなる透明電極
112が設けられている。また、上基板92と下基板9
3と障壁101に囲まれた空間には、ヘリウム(H
e)、キセノン(Xe)を含む希ガス113が封入され
ている。
【0077】上記した構成のPDP91においては、カ
ソード側の表面層に酸化イットリウム膜104が形成さ
れているため、電子放出性を大幅に向上させ、PDPの
低消費電力化を達成することができる。酸化イットリウ
ム膜96、104は、結晶系として、I型格子、I−II
型格子、II型格子、II−III型格子、III型格子がある
が、放電特性の観点からは、II−III型格子、III型格子
が最も好ましく、次いでII型格子、I−II型格子、I型
格子の順によく、いずれも発光輝度の高い表示を行なう
ことができる。また、本実施形態では、カソード電極の
一部として耐スパッタ性に優れている酸化イットリウム
が電極94、102の基体95、103を覆うように形
成されているので酸化イットリウム膜128のみならず
基体95、103のスパッタも抑制することができ、画
素内のスパッタによる汚染や電子放出性の経時的な逓減
にともなう発光輝度の低下を抑制することができる。
【0078】次に、上記したPDP91の駆動方法につ
いて説明する。第1に、透明電極112と補助カソード
電極94との間に所定の電圧を印加することにより補助
プラズマを発生させる。第2に、各画素には表示に応じ
たデータ電圧がデータ電極97に印加され、電流制御膜
98から制御された電流がカソード電極102に流れ
る。カソード電極102と透明電極112との間には、
補助プラズマの補助により、プラズマがすばやく発生す
る。このプラズマにより希ガスからの紫外線が発生し、
紫外線が各画素の蛍光体に当たり、所定の波長域の光を
発光し、上基板92を透過して表示される。
【0078】また、外光がPDP91に入射すると、カ
ラーフィルタ111R、111G、111Bにより各色
に分光されて上基板92から出射されるので、蛍光体1
07R、107G、107Bの発光に加え、より色相の
濃い色で表示することができる。また、カラーフィルタ
111R、111G、111Bは分光しているので、外
光の反射によるちらつきを抑制することができ、見やす
い表示が可能となる。
【0079】なお、上記したPDP91は、蛍光体を用
いたカラー発光であったが、蛍光体を用いずにプラズマ
発光による橙色を表示色に用いるPDPにも本発明をで
きることは言うまでもない。
【0080】上記PDP91に用いる希土類酸化物を構
成する希土類元素としてしては、イットリウムの他に、
スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、セリウム
(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、
プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピ
ウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(T
b)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、
エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウ
ム(Yb)、ルテチウム(Lu)の中から選択すること
ができる。また、基体95、103は、アノード電極で
ある透明電極112より低仕事関数の材料であれば、上
記材料に限定されるものではない。
【0081】(実施形態6)図21は、本発明をFED
に適用した実施形態6の断面図である。同図中121は
FEDであり、それぞれ赤色、緑色、青色を表示する複
数の画素から構成され、各画素は、互いに離間して配置
された透明な上基板122と下基板123との間に格子
状あるいはストライプ状の障壁により区分けされてい
る。下基板123上には、輝度データ電圧が印加される
データ電極124が設けられ、そのデータ電極124の
上には、アモルファスシリコンからなる電流制御膜12
5が形成されている。電流制御膜125の上には、1画
素につき、約2000程度の数の円錐状のカソード電極
126が設けられている。カソード電極126は、円錐
状のNi、Cr、Al、Moの中から少なくとも1つ選
択される基体127と、その表面に形成された酸化イッ
トリウム膜128と、から構成されている。各カソード
電極126は、隣接するカソード電極126と絶縁膜1
29を介している。絶縁膜129上には、カソード電極
126上が解放しているゲート電極130が設けられて
いる。この電流制御膜125は、データ電極124から
の電流のふらつきを抑制するため、電流を制限してい
る。電流制御膜125の抵抗は、膜厚、長さ、アモルフ
ァスシリコン中に添加される不純物などにより設定する
ことができる。
【0082】上基板122には、カソード電極126と
対向面にITOからなるアノード電極の透明電極131
が設けられており、透明電極131の表面には、赤色に
発光する蛍光体132R、緑色に発光する蛍光体132
G、青色に発光する蛍光体132Bがそれぞれ設けられ
ている。
【0083】次に、本実施形態のFEDの駆動方法につ
いて説明する。まず、透明電極131おデータ電極12
4との間に各画素の応じたデータ電圧が印加される。デ
ータ電極124からは、電流制御膜125を介して制御
された電流がカソード電極126の基体127に流れ
る。色表示する画素のゲート電極130には選択電圧が
印加され、ゲート電極130により選択されたカソード
電極126は、データ電圧に応じてカソード電極126
の先端の酸化イットリウム膜128から電子が放出され
る。
【0084】放出された電子は、所定の電圧が印加され
た透明電極131の方に寄せられている。このため、電
子は透明電極131の表面にある蛍光体132R、13
2G、132Bに当たり、蛍光体132R、132G、
132Bが可視光を発光して、可視光が透明基板122
を透過してカラー表示される。なお、本実施形態ではカ
ラー表示を行うFEDの構成について説明したが、単色
表示を行う構成としても勿論よい。酸化イットリウム膜
128は、結晶系として、I型格子、I−II型格子、II型
格子、II−III型格子、III型格子があるが、放電特性の
観点からは、II−III型格子、III型格子が最も好まし
く、次いでII型格子、I−II型格子、I型格子の順によ
く、いずれも発光輝度の高い表示を行なうことができ
る。また、FED121は、上基板122と下基板12
3との間の空間は電子の授受を良好に行なうために減圧
雰囲気下にあり、このため放電による電極のスパッタが
著しい装置であるが、本実施形態では、カソード電極の
一部として耐スパッタ性に優れている酸化イットリウム
が基体127を覆うように形成されているので酸化イッ
トリウム膜128のみならず基体127のスパッタも抑
制することができ、画素内のスパッタによる汚染や電子
放出性の経時的な逓減にともなう発光輝度の低下を抑制
することができる。
【0085】以上、本実施形態では酸化イットリウム膜
を用いて電子放出性の向上を図ったFEDについて説明
したが、希土類酸化物を構成する希土類元素としてイッ
トリウムの他に、スカンジウム(Sc)、ランタン(L
a)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオ
ジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(S
m)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、
テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミ
ウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(T
m)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)の
中から選択することができる。
【0086】また、上記した実施形態6においては、円
錐状のNi、Cr、Al、Moの中から少なくとも1つ
選択される材料でなる基体127の表面に酸化イットリ
ウム膜128を形成した構成であるが、円錐状の酸化イ
ットリウムのみを電流制御膜125の上に直接形成して
も同様の効果を得ることが可能である。このような構成
のカソード電極126を形成するには、図22に示すよ
うな形成方法を用いればよい。すなわち、図22(a)
に示すように、下基板123の上にメタルでなるデータ
電極124をパターニングする。さらに、データ電極1
24の上にアモルファスシリコン膜でなる電流制御膜1
25を形成する。その後、全面に酸化イットリウム膜1
28を形成する。なお、酸化イットリウム膜の形成方法
は、例えばイオンプレーティングによりアモルファス状
の酸化イットリウム膜を形成して水素雰囲気下で酸化処
理を行う。その後、酸化イットリウム膜128上にフォ
トレジスト140を塗布して、露光・現像を行って図2
2(a)に示すようなパターンを形成する。次に、下地
のアモルファスシリコン膜と選択比のとれるエッチング
液を用いて酸化イットリウム膜128を等方性エッチン
グする。すると、図22(b)に示すように略円錐状の
酸化イットリウム膜128が形成できる。これを用いて
下基板123側を形成することができる。
【0087】なお、上記した本実施形態においては、メ
タルでなる基体127の表面に酸化イットリウム膜12
8を形成した構成であるが、基体127の表面に、順次
イットリウム膜、酸化イットリウム膜を形成した構成と
しても勿論よい。
【0088】以上、実施形態1〜6について説明した
が、希土類酸化物としては、上記したもの他に、希土類
を含むペロブスカイト酸化物をカソード電極の表面に用
いることができる。希土類を含むペロブスカイト酸化物
としては、例えば、La1-xSrxMnO3-y、Nd1-x
xMnO3-y、La1-xCaxMnO3-y、Nd1-xCax
MnO3-y、Nd1-xPdxMnO3-y、(LaNd)1-x
SrxMnO3-y、(LaNd)1-xCaxMnO3-y
(0≦x<0.5、y≧0)などを用いることができ
る。
【0089】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、この発
明によれば、カソード電極の電子放出性が向上すると共
に、耐久性を向上させることができる。このため、低消
費電力で寿命の長い発光表示素子を実現することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をEL発光素子に適用した実施形態1を
示す断面図。
【図2】イットリウムが大気酸化されてなる酸化イット
リウムの結晶格子のX線回折パターンを示すグラフ。
【図3】イットリウムが主に水素雰囲気中で酸化されて
なる酸化イットリウムの結晶格子の状態を示すX線回折
パターンを示すグラフ。
【図4】酸素および/または酸素含有物の濃度が100
ppmオーダを越える水素雰囲気下でイットリウム膜を
加熱酸化して形成された酸化イットリウムのX線回折パ
ターンを示すグラフ。
【図5】酸素および/または酸素含有物の濃度が100
ppmオーダを越える水素雰囲気下でイットリウム膜を
加熱酸化して形成された酸化イットリウムのX線強度を
示すグラフ。
【図6】酸素および/または酸素含有物の濃度が10p
pmオーダ程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加熱
酸化して形成された酸化イットリウムのX線回折パター
ンを示すグラフ。
【図7】酸素および/または酸素含有物の濃度が10p
pmオーダ程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加熱
酸化して形成された酸化イットリウムのX線強度を示す
グラフ。
【図8】酸素および/または酸素含有物の濃度が100
ppmオーダ程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加
熱酸化して形成された酸化イットリウムのX線回折パタ
ーンを示すグラフ。
【図9】酸素および/または酸素含有物の濃度が100
ppmオーダ程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加
熱酸化して形成された酸化イットリウムのX線強度を示
すグラフ。
【図10】酸素および/または酸素含有物の濃度が1p
pmオーダ程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加熱
酸化して形成された酸化イットリウムのX線回折パター
ンを示すグラフ。
【図11】酸素および/または酸素含有物の濃度が1p
pmオーダ程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加熱
酸化して形成された酸化イットリウムのX線強度を示す
グラフ。
【図12】酸素および/または酸素含有物の濃度が、II
I型格子のみの酸化イットリウム膜が形成される濃度よ
り濃く、II型格子のみの酸化イットリウム膜が形成され
るより薄い程度の水素雰囲気下でイットリウム膜を加熱
酸化して形成された酸化イットリウムのX線回折パター
ンを示すグラフ。
【図13】本発明をEL発光素子に適用した実施形態2
を示す断面図。
【図14】本発明をEL発光素子に適用した実施形態3
を示す断面図。
【図15】本発明に係る発光表示素子の実施形態4を示
す断面図。
【図16】II型格子の結晶系をもつ酸化イットリウムの
光透過特性を示すグラフ。
【図17】I型格子の結晶系をもつ酸化イットリウムの
光透過特性を示すグラフ。
【図18】水素雰囲気下で酸化されたII型格子の酸化イ
ットリウムの吸収端を示すグラフ。
【図19】大気中で酸化されたI型格子の酸化イットリ
ウムの吸収端を示すグラフ。
【図20】本発明をPDPに適用した実施形態5を示す
断面図。
【図21】本発明をFEDに適用した実施形態6を示す
断面図。
【図22】(a)および(b)はFEDのカソード電極
の形成方法を示す工程断面図。
【符号の説明】
1 EL発光素子 3 Al膜 4A イットリウム膜 4B 酸化イットリウム膜 5 カソード電極 6 電子輸送層 7 正孔輸送層 8 アノード電極 9 ITO膜 11 発光表示素子 16 酸化イットリウム膜 26 酸化イットリウム膜 104 酸化イットリウム膜 128 酸化イットリウム膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01J 31/12 H01J 31/12 C H05B 33/26 H05B 33/26

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カソード電極とアノード電極とを備え、
    前記カソード電極から電子が放出される発光表示素子に
    おいて、 前記カソード電極の少なくとも表面に希土類酸化物層が
    形成されていることを特徴とする発光表示素子。
  2. 【請求項2】 前記カソード電極は、導電性材料層上に
    希土類元素膜が形成され、前記希土類元素膜の表面に前
    記希土類酸化物層が形成されていることを特徴とする請
    求項1記載の発光表示素子。
  3. 【請求項3】 前記カソード電極は、導電性材料層上に
    希土類酸化物層が成膜されていることを特徴とする請求
    項1記載の発光表示素子。
  4. 【請求項4】 前記希土類酸化物は、R23-x(Rは希
    土類元素、xは0.0以上1.0以下)で表されることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発光表示素
    子。
  5. 【請求項5】 前記希土類酸化物は、酸化イットリウム
    であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか
    に記載の発光表示素子。
  6. 【請求項6】 前記カソード電極と前記アノード電極と
    の間に有機EL層が挟まれていることを特徴とする請求
    項1〜請求項5のいずれかに記載の発光表示素子。
  7. 【請求項7】 前記有機EL層は、前記カソード電極に
    接合する電子輸送層と、前記アノード電極に接合する正
    孔輸送層と、を備えた積層構造であることを特徴とする
    請求項6記載の発光表示素子。
  8. 【請求項8】 前記カソード電極および前記アノード電
    極間には希ガスが封止され、前記カソード電極および前
    記アノード電極間に電圧の印加によりプラズマが発生さ
    せることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに
    記載の発光表示素子。
  9. 【請求項9】 前記カソード電極から放出される電子が
    蛍光材料層に入射することを特徴とする請求項1〜請求
    項5のいずれかに記載の発光表示素子。
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