JPH10206728A - 光学素子及びそれを用いた走査光学装置 - Google Patents

光学素子及びそれを用いた走査光学装置

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JPH10206728A
JPH10206728A JP1749397A JP1749397A JPH10206728A JP H10206728 A JPH10206728 A JP H10206728A JP 1749397 A JP1749397 A JP 1749397A JP 1749397 A JP1749397 A JP 1749397A JP H10206728 A JPH10206728 A JP H10206728A
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optical
lens
optical element
scanning
scanning direction
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JP1749397A
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Hiroshi Nakanishi
弘 中西
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複屈折を低減させて、スポット径の肥大化を
少なくし、光学性能の優れた光学素子及びそれを用いた
走査光学装置を得ること。 【解決手段】 子線方向に対して母線方向に長尺な光学
素子において、該母線方向の使用される光学領域の全て
の領域において、該子線方向の任意の位置での光学素子
の高さがその位置における光学素子の光軸方向の厚みよ
り薄いこと。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光学素子及びそれを
用いた走査光学装置に関し、特に光源手段から光変調さ
れ出射した光束を回転多面鏡より成る光偏向器で偏向反
射させた後、fθ特性を有する結像光学系(fθレン
ズ)を介して被走査面上を光走査して画像情報を記録す
るようにした、例えば電子写真プロセスを有するレーザ
ービームプリンター(LBP)やディジタル複写機等の
装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来よりレーザービームプリンター等の
走査光学装置においては画像信号に応じて光源手段から
光変調され出射した光束を、例えば回転多面鏡(ポリゴ
ンミラー)より成る光偏向器により周期的に偏向させ、
fθ特性を有する結像光学系によって感光性の記録媒体
(感光ドラム)面上にスポット状に集束させ、その面上
を光走査して画像記録を行なっている。
【0003】図12は従来の走査光学装置の要部概略図
である。同図において光源手段101から出射した発散
光束(レーザービーム)はコリメーターレンズ102に
より略平行光束に変換され、副走査方向にのみ所定の屈
折力を有するシリンドリカルレンズ103に入射してい
る。シリンドリカルレンズ103に入射した平行光束の
うち主走査断面内においてはそのまま平行光束の状態で
射出する。また副走査断面内においては集束して回転多
面鏡(ポリゴンミラー)から成る光偏向器104の偏向
面104aにほぼ線像として結像している。そして光偏
向器104の偏向面で偏向反射された光束を球面レンズ
105とトーリックレンズ106とから成るfθ特性を
有する結像光学系(fθレンズ系)100により折り返
しミラー107を介して被走査面としての感光ドラム面
110上に導光し、該光偏向器104を矢印A方向に回
転させることによって、該感光ドラム面110上を主走
査方向に光走査して画像情報の記録を行なっている。
【0004】この種の走査光学装置の光学系(走査光学
系)に使用されるレンズとしては上記の如くコリメータ
レンズ102、シリンドリカルレンズ103、そしてf
θレンズ系100を構成する球面レンズ105及びトー
リックレンズ106等がある。又走査光学系によっては
シリンドリカルレンズを光偏向器と被走査面との間の光
路内に設けたものもある。
【0005】従来、これらのレンズにはガラスの研磨レ
ンズが使用されていたが、低コスト化や光学性能の向上
を図る為に、近年、非球面形状が容易に作れる型を用い
て成形されたプラスチックモールドレンズ(射出成形も
しくは射出圧縮成形もしくは圧縮成形にて成形)やガラ
スモールドレンズ(プレス成形もしくは射出成形にて成
形)等が使用されてきている。
【0006】また、プラスチックモールドレンズでは、
従来よりその材質としてアクリル(PMMA)樹脂が用
いられているが、近年になって吸湿時のピント変動の問
題に対する対策として、アクリル樹脂より低吸湿のポリ
カーボネート樹脂やオレフィン系樹脂やスチレン樹脂等
が用いられるようになってきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記に示
した複数のレンズのうち少なくとも1つのレンズをプラ
スチック(またはガラス)モールド成形により製作する
となると、成形時の冷却過程における熱応力によりレン
ズ内部に複屈折が発生し、被走査面上でのスポット形状
(スポット径)を肥大化させるという問題点があった。
【0008】また、プラスチックモールド成形の場合、
アクリル樹脂以外(例えばポリカーボネート樹脂やオレ
フィン系樹脂やスチレン系樹脂等)の樹脂を使用した場
合、分子構造上からレンズ内の複屈折が更に大きく発生
するという問題点があった。
【0009】次に上記の問題点について説明する。
【0010】図6は図12に示したfθレンズ系の一要
素を構成するトーリックレンズの形状を示した要部斜視
図である。同図において106はトーリックレンズ、1
12はコバ面、113,114は各々レンズ面、x(x
軸)は光軸方向、y(y軸)は主走査方向(母線方
向)、z(z軸)は副走査方向(子線方向)である。
【0011】同図においては一点鎖線で示すb1〜b2
までの間の主走査方向の領域が、このトーリックレンズ
106で使用される光学領域(レーザービームが走査さ
れる領域)である。このトーリックレンズ106の主走
査方向のレンズ全長は100mmである。
【0012】図7は図6に示したトーリックレンズ10
6を真上、即ちz軸方向から見たときの要部断面図であ
る。図8(A)は図7においてトーリックレンズ106
の中心で最も厚肉の所を横切ったときのC−C断面図で
あり、ここでの光軸方向の厚みd3は15mmであり、
副走査方向のレンズの高さh2は10mmである。図8
(B)は図7においてトーリックレンズ106の光学領
域中(b1〜b2)の両端部付近の最も薄肉の所を光軸
方向に平行にカットしたときのD−D断面図であり、こ
こでの光軸方向の厚みd4は5mmであり、副走査方向
のレンズの高さh2は中心部と同様10mmである。
【0013】ここでこのトーリックレンズ(レンズ)1
06がプラスチックモールド、あるいはガラスモールド
により成形される場合、型の中に入ったプラスチック
(あるいは成形されるガラス)は、初期はその型の温度
より高く、その為そのプラスチック(あるいはガラス)
の熱は型に奪われていってプラスチック(あるいはガラ
ス)は型に接している所から徐々に冷却固化していく。
レンズ106の厚肉の所の内部は最後に冷却固化してい
くのだが、プラスチック(あるいはガラス)は冷却して
いくに従い収縮していくので、そのとき表面層付近は既
に冷却固化してしまったプラスチック(あるいはガラ
ス)を内部に引き寄せようとする。このときプラスチッ
ク(あるいはガラス)の分子(あるいは原子)は内部に
向かって並ぼうとする。これが配向である。また冷却固
化してしまったレンズ106の表面層付近には、この内
部収縮によりストレスを受ける。これが熱応力である。
【0014】図7,図8(A),(B)にその配向及び
熱応力の発生の様子を矢印で示してある。この熱応力の
向きはレンズの肉厚の変化する所、具体的には図7に示
すレンズ106の中心部でのC−Cと周辺部でのD−D
の中間の所が図7に示したように光軸方向に対し斜め方
向の向きとなる。
【0015】一般に半導体レーザーから出射した光束
(レーザービーム)の偏光方向(偏光成分)は主走査方
向か副走査方向であるので、この偏光方向に対し配向及
び熱応力の方向が0°か90°でなくて傾きをもつ場
合、その角度と熱応力の大きさに比例してレンズ内部に
は複屈折が観察される。
【0016】図9は図11に示す光学系を用いてレンズ
106内部の複屈折をx軸方向から観察した結果を示し
た説明図である。尚、図11はレンズ内部の複屈折の観
察を行なう為の光学系の要部概略図であり、同図におい
て31は光源、32,33は各々偏光板、106はレン
ズ(トーリックレンズ)、35はアイポイント(=観察
位置)である。各偏光板32,33の偏光軸の向きはレ
ンズ106の主走査方向と副走査方向に合わせてクロス
ニコルの状態に設定してある。
【0017】図9において白地領域121は複屈折が比
較的少なくΔnが10-6オーダーの所であるが、斜線領
域122は複屈折が大きく観察される所でΔnが10-5
オーダーの所である。この為、同図に示すようにレンズ
の厚肉部(中央部)と薄肉部(周辺部)においては偏光
軸の向きとレンズ内部の配向及び熱応力の向きが一致、
あるいは90°の角度をもっているので複屈折は少なく
見えるが、その厚肉部と薄肉部の中間の所(図9では1
15の位置)では配向及び熱応力の向きが偏光軸の向き
に対して0°あるいは90°以外の傾きをもっているの
で斜線領域に複屈折が多く発生する。
【0018】図10は図9に示す位置115を通過した
ときの光束のスポット形状(スポット径)を示した説明
図である。本来、スポット形状は同図に示す破線101
のような略円形状をしていなければならないものが、複
屈折の影響を受けて実線102で示すような副走査方向
に長い楕円形状となり、光量も低下して、シャープさに
かけるスポットとなっている。その為、例えばこのよう
なスポットを用いて画像形成を行なった場合には、高品
位な画像が得られないという問題点が生じてくる。
【0019】本発明の第1の目的は、型を用いて成形さ
れた光学素子(レンズ)の主走査方向の使用される光学
領域の全ての領域において、副走査方向の任意の位置で
の光学素子の高さがその位置における光学素子の光軸方
向の厚みより薄くなるように製作することにより、複屈
折の影響を少なくして、被走査面上でスポット形状を良
好に形成することのできる光学素子及びそれを用いた走
査光学装置の提供にある。
【0020】本発明の第2の目的は、上記光学素子をプ
ラスチックまたはガラス等の素材を使用して型を用いて
成形することにより、光学性能に優れた光学素子及びそ
れを用いた走査光学装置の提供にある。
【0021】本発明の第3の目的は、上記光学素子を吸
湿時におけるピント変動の少ない光学性能の優れたプラ
スチックモールドレンズ用のプラスチック材質より成形
することにより、ピント変動の影響を低減させることの
できる光学素子及びそれを用いた走査光学装置の提供に
ある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の光学素子は、
(1) 子線方向に対して母線方向に長尺な光学素子におい
て、該母線方向の使用される光学領域の全ての領域にお
いて、該子線方向の任意の位置での光学素子の高さがそ
の位置における光学素子の光軸方向の厚みより薄いこと
を特徴としている。
【0023】特に(1-1) 前記光学素子の子線方向の任意
の位置での高さをh、その位置における光軸方向の厚み
をdとしたとき、 1.1h < d なる条件を満足することや、(1-2) 前記光学素子は型を
用いて成形されていることや、(1-3) 前記光学素子の材
質はプラスチックであることや、(1-4) 前記光学素子の
材質はガラスであることや、(1-5) 前記光学素子の材質
はポリカーボネート樹脂もしくは変性ポリカーボネート
樹脂であることや、(1-6) 前記光学素子の材質はノルボ
ルネン樹脂もしくはオレフィン系樹脂であることや、(1
-7) 前記光学素子の材質はスチレン系樹脂であること、
等を特徴としている。
【0024】本発明の走査光学装置は、(2) 光源手段か
ら出射した光束の状態を他の状態に変換する第1の光学
素子と、該変換された光束を偏向素子の偏向面上に導く
第2の光学素子と、該偏向素子で偏向された光束を被走
査面上に結像させる第3の光学素子と、を有する走査光
学装置において、該第1、第2、第3の光学素子のうち
少なくとも1つの光学素子は主走査方向の使用される光
学領域の全ての領域において、副走査方向の任意の位置
での光学素子の高さがその位置における光学素子の光軸
方向の厚みより薄いことを特徴としている。
【0025】(2-1) 前記第1、第2、第3の光学素子の
うち少なくとも1つの光学素子の副走査方向の任意の位
置での高さをh、その位置における光軸方向の厚みをd
としたとき、 1.1h < d なる条件を満足することや、(2-2) 前記第1、第2、第
3の光学素子のうち少なくとも1つの光学素子は型を用
いて成形されていることや、(2-3) 前記第1、第2、第
3の光学素子のうち少なくとも1つの光学素子の材質は
プラスチックであることや、(2-4) 前記第1、第2、第
3の光学素子のうち少なくとも1つの光学素子の材質は
ガラスであることや、(2-5) 前記第1、第2、第3の光
学素子のうち少なくとも1つの光学素子の材質はポリカ
ーボネート樹脂もしくは変性ポリカーボネート樹脂であ
ることや、(2-6) 前記第1、第2、第3の光学素子のう
ち少なくとも1つの光学素子の材質はノルボルネン樹脂
もしくはオレフィン系樹脂であることや、(2-7) 前記第
1、第2、第3の光学素子のうち少なくとも1つの光学
素子の材質はスチレン系樹脂であること、等を特徴とし
ている。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態1の要部
概略図である。
【0027】同図において1は光源手段であり、例えば
半導体レーザーより成っている。2は第1の光学素子と
してのコリメーターレンズであり、光源手段1から出射
された発散光束を平行光束に変換している。3は絞りで
あり、通過光束(光量)を制限している。4は第2の光
学素子としてのシリンドリカルレンズであり、副走査方
向にのみ所定の屈折力を有しており、絞り3を通過した
光束を副走査断面内で後述する光偏向器5の偏向面にほ
ぼ線像として結像させている。5は偏向素子としての光
偏向器であり、例えばポリゴンミラー(回転多面鏡)よ
り成っており、モーター等の駆動手段11により矢印A
方向に一定速度で回転している。10は第3の光学素子
としての集光機能とfθ特性を有するfθレンズ系(結
像光学系)であり、球面レンズ6と後述する素材及び形
状より成るトーリックレンズ7とより成っており、光偏
向器5の偏向面によって偏向反射された画像情報に基づ
く光束を被走査面としての感光ドラム面9上に結像さ
せ、かつ該光偏向器5の偏向面の面倒れを補正してい
る。8は折り返しミラー、12は検出ミラー(水平同期
検出ミラー)であり、感光ドラム面9上の走査開始位置
を調整する為の書込み同期信号検知用の光束を光センサ
ー(BDセンサー)13側へ反射させている。
【0028】本実施形態において半導体レーザー1より
出射した発散光束はコリメーターレンズ2により略平行
光束に変換され、絞り3によって該光束(光量)を制限
してシリンドリカルレンズ4に入射している。シリンド
リカルレンズ4に入射した平行光束のうち主走査断面内
においてはそのまま平行光束の状態で射出する。また副
走査断面内においては集束して光偏向器5の偏向面のほ
ぼ線像(主走査方向に長手の線像)として結像してい
る。そして光偏向器5の偏向面で偏向反射された光束は
fθレンズ系10により折り返しミラー8を介して感光
ドラム面9上に導光され、該光偏向器5を矢印A方向に
回転させることによって、該感光ドラム面9上を主走査
方向に光走査している。これにより画像記録を行なって
いる。
【0029】図2は本発明に関わる図1に示したトーリ
ックレンズの形状を示す要部斜視図である。
【0030】同図において7はトーリックレンズ、22
はコバ面、23,24は各々レンズ面、x(x軸)は光
軸方向、y(y軸)は主走査方向(母線方向)、z(z
軸)は副走査方向(子線方向)である。
【0031】尚、本実施形態においてはトーリックレン
ズ7を例に挙げて以下説明するが、該トーリックレンズ
7に限らず、例えばコリメータレンズ2、シリンドリカ
ルレンズ4、そして球面レンズ6等にも同様に適用する
ことができる。更に走査光学系によっては光偏向器と被
走査面との間に配したシリンドリカルレンズにも適用す
ることができる。即ち、本実施形態では走査光学装置の
光学系(走査光学系)を構成する全てのレンズに対して
適用可能である。
【0032】同図においては一点鎖線で示すa1〜a2
までの間の主走査方向の領域が、このトーリックレンズ
(以下単に「レンズ」とも称す。)7で使用される光学
領域(レーザービームが走査される領域)である。この
トーリックレンズ7の主走査方向のレンズ全長は100
mmである。
【0033】図3は図2に示したトーリックレンズ7を
真上、即ちz軸方向から見たときの要部断面図である。
図4(A)は図3においてトーリックレンズ7の中心で
最も厚肉の所を横切ったときのA−A断面図であり、こ
こでの光軸方向の厚みd1は20mmであり、副走査方
向のレンズの高さh1は6mmである。図4(B)は図
3においてトーリックレンズ7の光学領域中(a1〜a
2)の両端部付近の最も薄肉の所を光軸方向に平行にカ
ットしたときのB−B断面図であり、ここでの光軸方向
の厚みd2は10mmであり、副走査方向のレンズ高さ
h1は中心部と同様6mmである。
【0034】図4(A),(B)における副走査方向の
レンズの高さh1はレンズ面上を走査するレーザービー
ムの光束径よりも寸法が大きければ良い。一般にレーザ
ービームの光束径は2〜3mmであり、本実施形態にお
ける光束径はほぼ2mmであるので、副走査方向のレン
ズの高さh1を光束の上下に各々2mmの余裕を設けて
6mmとして形成している。
【0035】本実施形態ではこのレンズ7の主走査方向
の使用される光学領域の全ての領域において、副走査方
向の任意の位置でのレンズ7の高さがその位置における
レンズ7の光軸方向の厚みより薄くなるように製作して
いる。特にこのレンズ7の副走査方向の任意の位置での
高さの寸法をh、その位置における光軸方向の厚みの寸
法をdとしたとき 1.1h < d ‥‥‥‥‥(1) なる条件を満足するように形成している。
【0036】条件式(1)はレンズ7の副走査方向の高
さと光軸方向の厚みとの比に関し、条件式(1)を外れ
ると複屈折の影響が大きくなり、被走査面上でスポット
形状を良好に形成することが難しくなってくるので良く
ない。
【0037】本実施形態ではこのレンズ7を型を用いた
成形、例えばプラスチックモールドあるいはガラスモー
ルドより成形しており、具体的にはプラスチックモール
ドとして射出成形、射出圧縮成形、そして圧縮成形等を
用いており、またガラスモールドとしてはプレス成形、
射出成形等を用いている。
【0038】ここでこのレンズ7がプラスチックモール
ド(あるいはガラスモールド)により成形される場合、
金型(不図示)の中に入ったプラスチック(あるいは成
形されるガラス)は、初期はその金型の温度より高く、
その為そのプラスチック(あるいはガラス)の熱は金型
に奪われていって、プラスチック(あるいはガラス)は
金型に接している所から徐々に冷却固化していく。レン
ズ7の厚肉の所の内部は最後に冷却固化していくのだ
が、プラスチック(あるいはガラス)は冷却していくに
従い収縮していくので、そのとき表面層付近は既に冷却
固化してしまったプラスチック(あるいはガラス)を内
部に引き寄せようとする。また冷却固化してしまったレ
ンズ7の表面層付近には、この内部収縮によりストレス
(熱応力)を受ける。
【0039】図3,図4(A),(B)にその熱応力の
発生の様子を矢印で示してある。尚、射出成形において
は、この熱応力の他に射出流動時に発生するせん断応力
もあるが、図1や前記図6に示したような厚肉のレンズ
においては熱応力の影響の方が大きいので、ここではせ
ん断応力は無視しても差し支えない。
【0040】この熱応力の向きは図3に示すようにレン
ズ7の肉厚の変化する所、具体的には同図に示すレンズ
7の中心部でのA−Aと周辺部でのB−Bの中間の所で
副走査方向のレンズ7の高さhの方が主走査方向の使用
される光学領域における光軸方向の厚みdより薄くなっ
ているので光軸方向の冷却より副走査方向、即ちコバ面
22からの冷却の方が先行し支配的となる。従ってレン
ズ7全体は高さが略等しい副走査方向から、ごく周辺部
を除いて略一様に冷却されるので図3に示したような光
軸方向の厚みの違いによる厚肉部の冷却収縮に伴って発
生するレンズ中央部へ向かう熱応力は低減させられ、無
視できるレベルとなる。
【0041】従って、主走査方向の使用される光学領域
の全ての領域において、レンズ内部の熱応力の向きは副
走査方向に略揃うことになり、光源手段から出射した光
束の偏光方向(通常は副走査方向か主走査方向)に対
し、その角度は略0°かもしくは90°となる。これに
より本実施形態においては前記図9に示した複屈折の様
子とは異なり図5に示すように主走査方向及び副走査方
向の使用される光学領域24の全ての領域において複屈
折が問題とないレベルとなり、光束のスポット形状(ス
ポット径)を肥大化させることもなく、光学性能の優れ
たレンズを得ることができる。尚、図5におけるレンズ
内部の複屈折の観察の様子は前述した図9の観察と同様
である。
【0042】また、走査光学系を構成するレンズに使用
されるプラスチックの材質としては従来、アクリル樹脂
が大半を占めていたが、該アクリル樹脂は吸湿しやす
く、吸湿するとレンズ内部に密度の分布ができてその密
度の分布は屈折率の分布であり、吸湿してから飽和に至
る過程おいて、該屈折率分布の様子が変化することから
ピント変動を起こし、初期の光学性能は優れていても湿
度変動で光学性能が悪化するという問題点があった。
【0043】そこで本実施形態では表−1に示すように
プラスチックの材質としてアクリル樹脂よりも吸湿の少
ないポリカーボネート樹脂、もしくは変性ポリカーボネ
ート樹脂、もしくはノルボルネン樹脂、もしくはオレフ
ィン系樹脂、もしくはスチレン系樹脂等を使用してい
る。
【0044】
【表1】 ところがこれらの樹脂はその分子構造中にベンゼン環や
五員環構造等をもち、剛直な構造であるがために応力を
ためやすく、複屈折が多く発生するという傾向がある。
【0045】しかしながら本実施形態における走査光学
装置においてはレンズ内部に応力が発生したとき、それ
が光源手段から出射した光束の偏光方向(偏光成分)と
一致、もしくは90°の角度であれば問題はない。
【0046】そこで前述の如く図2に示すような主走査
方向の使用される光学領域の全ての領域において、副走
査方向の任意の位置でのレンズの高さhがその位置にお
ける光軸方向の厚みdより薄くなるようにレンズを製作
することにより、該レンズ内部の熱応力の向きは副走査
方向に向くことになり、これにより上記の問題点を解消
している。
【0047】尚、本実施形態におけるレンズ素材につい
てはガラスやプラスチックに限定されるのではなく、型
を用いて成形できるものであれば、例えばガラスとプラ
スチックの複合材料等であっても本発明は前述の実施形
態と同様に適用することができる。
【0048】このように本実施形態においては上述の如
く走査光学系を構成する複数のレンズ(光学素子)のう
ち型を用いて成形された少なくとも1つのレンズを主走
査方向の使用される光学領域の全ての領域において、副
走査方向の任意の位置でのレンズの高さがその位置にお
けるレンズの光軸方向の厚みより薄くなるように製作す
ることにより、例えば型成形時に、副走査方向の冷却が
先に進行し、該副走査方向からレンズ全体が固化してし
まって光軸方向のレンズの厚みの違いによる厚肉部の冷
却収縮に伴って発生するレンズ厚肉部の中心部へ向かう
熱応力を低減させることができ、これにより光束の偏光
方向に対して問題となる複屈折を低減化させスポット径
の肥大化を少なくしている。
【0049】また、本実施形態では上述の如く走査光学
系を構成する複数のレンズ(光学素子)のうち少なくと
も1つのレンズにプラスチック(あるいはガラス)の素
材を使用して型を用いて成形することにより、非球面レ
ンズを容易に製作することができ、これにより光学性能
の優れたレンズを安価に製造している。
【0050】更に本実施形態においては上述の如くプラ
スチックレンズの材質をポリカーボネート樹脂、もしく
は変性ポリカーボネート樹脂、もしくはノルボルネン樹
脂、もしくはオレフィン系樹脂、もしくはスチレン系樹
脂等より製作することにより、アクリル(PMMA)樹
脂より複屈折が発生しやすい樹脂であっても、副走査方
向の任意の位置でのレンズの高さを主走査方向の使用さ
れる光学領域の全ての領域において、その位置における
レンズの光軸方向の厚みより薄くなるように製作するこ
とにより、複屈折の影響を少なくして副走査方向のスポ
ット形状を良好に形成することができ、かつ上記に示し
た材質の樹脂等を使用することにより、従来アクリル樹
脂を用いることで問題点になっていた湿度による吸湿で
のピント変動の影響を低減させている。
【0051】
【発明の効果】本発明の第1の発明によれば、前述の如
く走査光学装置の光学系を構成する複数の光学素子(レ
ンズ)のうち型を用いて成形された少なくとも1つの光
学素子の副走査方向の任意の位置でのレンズの高さを主
走査方向の使用される光学領域の全ての領域において、
その位置におけるレンズの光軸方向のレンズの厚みより
薄くすることにより、光束の偏光方向(偏光成分)に対
して問題となる複屈折を低減させることができ、又スポ
ット径の肥大化を少なくすることができ、これにより光
学性能の優れた光学素子及びそれを用いた走査光学装置
を達成することができる。
【0052】本発明の第2の発明によれば、前述の如く
走査光学装置の光学系を構成する複数の光学素子(レン
ズ)のうちに少なくとも1つの光学素子をプラスチック
またはガラス等の素材を使用して型を用いて成形するこ
とにより、例えば光学面が非球面となっているレンズを
容易に製作することができ、これにより光学性能の優れ
たレンズを製造することができる光学素子及びそれを用
いた走査光学装置を達成することができる。
【0053】本発明の第3の発明によれば、前述の如く
走査光学装置の光学系を構成する複数の光学素子(レン
ズ)のうちに少なくとも1つの光学素子の素材として低
吸湿のプラスチックを使用することにより、湿度による
吸湿でのピント変動の影響を少なくすることができ、こ
れにより光学性能の優れた光学素子及びそれを用いた走
査光学装置を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1の要部概略図
【図2】 図1に示したトーリックレンズの形状を示す
斜視図
【図3】 図2のレンズをz軸方向から見たときの断面
【図4】 図3に示したレンズのA−A断面図とB−B
断面図
【図5】 図2に示したレンズの複屈折の様子を示す説
明図
【図6】 従来の走査光学系に使用されるレンズの斜視
【図7】 図6のレンズをz軸方向から見たときの説明
【図8】 図7に示したレンズのC−C断面図とD−D
断面図
【図9】 図6に示したレンズの複屈折の様子を示す説
明図
【図10】 図6に示したレンズによるスポット形状の
様子を示す説明図
【図11】 複屈折の観察の様子を示す説明図
【図12】 従来の走査光学装置の要部概略図
【符号の説明】
1 光源手段 2 第1の光学素子(コリメーターレンズ) 3 絞り 4 第2の光学素子(シリンドリカルレンズ) 5 光偏向器 6 球面レンズ 7 トーリックレンズ 8 折り返しミラー 9 被走査面(感光ドラム面) 10 第3の光学素子(fθレンズ)

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 子線方向に対して母線方向に長尺な光学
    素子において、 該母線方向の使用される光学領域の全ての領域におい
    て、該子線方向の任意の位置での光学素子の高さがその
    位置における光学素子の光軸方向の厚みより薄いことを
    特徴とする光学素子。
  2. 【請求項2】 前記光学素子の子線方向の任意の位置で
    の高さをh、その位置における光軸方向の厚みをdとし
    たとき、 1.1h < d なる条件を満足することを特徴とする請求項1記載の光
    学素子。
  3. 【請求項3】 前記光学素子は型を用いて成形されてい
    ることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子。
  4. 【請求項4】 前記光学素子の材質はプラスチックであ
    ることを特徴とする請求項3記載の光学素子。
  5. 【請求項5】 前記光学素子の材質はガラスであること
    を特徴とする請求項3記載の光学素子。
  6. 【請求項6】 前記光学素子の材質はポリカーボネート
    樹脂もしくは変性ポリカーボネート樹脂であることを特
    徴とする請求項4記載の光学素子。
  7. 【請求項7】 前記光学素子の材質はノルボルネン樹脂
    もしくはオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求
    項4記載の光学素子。
  8. 【請求項8】 前記光学素子の材質はスチレン系樹脂で
    あることを特徴とする請求項4記載の光学素子。
  9. 【請求項9】 光源手段から出射した光束の状態を他の
    状態に変換する第1の光学素子と、該変換された光束を
    偏向素子の偏向面上に導く第2の光学素子と、該偏向素
    子で偏向された光束を被走査面上に結像させる第3の光
    学素子と、を有する走査光学装置において、 該第1、第2、第3の光学素子のうち少なくとも1つの
    光学素子は主走査方向の使用される光学領域の全ての領
    域において、副走査方向の任意の位置での光学素子の高
    さがその位置における光学素子の光軸方向の厚みより薄
    いことを特徴とする走査光学装置。
  10. 【請求項10】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子の副走査方向の任意の位置
    での高さをh、その位置における光軸方向の厚みをdと
    したとき、 1.1h < d なる条件を満足することを特徴とする請求項9記載の走
    査光学装置。
  11. 【請求項11】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子は型を用いて成形されてい
    ることを特徴とする請求項9又は10記載の走査光学装
    置。
  12. 【請求項12】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子の材質はプラスチックであ
    ることを特徴とする請求項11記載の走査光学装置。
  13. 【請求項13】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子の材質はガラスであること
    を特徴とする請求項11記載の走査光学装置。
  14. 【請求項14】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子の材質はポリカーボネート
    樹脂もしくは変性ポリカーボネート樹脂であることを特
    徴とする請求項12記載の走査光学装置。
  15. 【請求項15】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子の材質はノルボルネン樹脂
    もしくはオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求
    項12記載の走査光学装置。
  16. 【請求項16】 前記第1、第2、第3の光学素子のう
    ち少なくとも1つの光学素子の材質はスチレン系樹脂で
    あることを特徴とする請求項12記載の走査光学装置。
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JP2002174787A (ja) * 2000-09-29 2002-06-21 Canon Inc マルチビーム走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置
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