JPH10180818A - 射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法 - Google Patents

射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法

Info

Publication number
JPH10180818A
JPH10180818A JP35579796A JP35579796A JPH10180818A JP H10180818 A JPH10180818 A JP H10180818A JP 35579796 A JP35579796 A JP 35579796A JP 35579796 A JP35579796 A JP 35579796A JP H10180818 A JPH10180818 A JP H10180818A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mold
resin layer
resin
resin film
injection molding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP35579796A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroyuki Atake
浩之 阿竹
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority to JP35579796A priority Critical patent/JPH10180818A/ja
Publication of JPH10180818A publication Critical patent/JPH10180818A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 射出成形にてウェルドラインを発生させず
に、成形品を作る。 【解決手段】 射出成形金型として、得られる成形品M
の少なくとも表側となる面M1に対応するキャビティ面
3aに、成形後は成形品と離型し金型側に残る樹脂層4
を存在させた金型とする。この金型で射出成形する。樹
脂層は、例えばキャビティ面形状に成形した樹脂フィル
ムを用いる。樹脂フィルムの成形は、例えば樹脂層を存
在させる射出成形金型のキャビティ面に真空孔を設けて
真空成形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形品の表面にウ
ェルドラインの発生しない射出成形金型と、それを用い
た射出成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】加熱溶融させた樹脂を金型内に射出し樹
脂を冷却・固化させて樹脂成形品を得る射出成形方法
は、一度金型を作ってしまえば、複雑な立体形状の物品
でも、容易に大量生産できる等の数々の利点がある事か
ら、あらゆる分野の各種物品の製造方法として、広く普
及している。ところが、この射出成形方法には、溶融樹
脂をそれよりも低温の金型内に注入して、金型により冷
却し、固化させて成形品と得るという、射出成形プロセ
スの本質に起因し、根本的に解消することは非常に困難
であるウェルドライン発生という問題がある。ウェルド
ラインは、加熱された溶融樹脂が型内に射出され、型内
に広がって充満していく時に、ゲートの位置、形状及び
個数等と成形品形状との関係で、溶融樹脂が分流された
後に、合体する場合に、その合体する部分に現れる。そ
れは、型内を流れる溶融樹脂の先端は、型による冷却で
最も温度が低く、増粘し、或いは一部固化しかかった状
態となる為、分流後に合体する樹脂は、特に冷やされた
先端部分の樹脂同士が(少なくとも外観上)不完全に合
体し、完全には融合一体化いないことによる。そして、
このウェルドラインは、美観を損ねたり、成形品の強度
低下を来す原因になる。
【0003】そこで、従来、ウェルドラインが発生して
も美観を損ねない様にしたり、ウェルドラインそのもの
発生を防止するため、次の様な方法が取られてきた。 雌型と雄型とで温度差をつけて成形する。すなわち、
成形品の表側となる面を形作る方の型を高温とする。例
えば、成形品表側面となるのが雌型ならば、雌型の温度
を雄型よりも高めに設定する。逆に、成形品表面側が雄
型ならば、雄型を雌型よりも高温とする。この方法は、
型温度を高くして、ウェルドライン発生原因となる溶融
樹脂の急冷を和らげて、ウェルドライン発生そのものを
防止する方法である。 成形型に金属製の金型ではなく樹脂製の樹脂型を用い
る。成形型の材料に、金属よりも熱伝導性が悪い樹脂を
用いることで、溶融樹脂の急冷を防ぐ方法である。その
結果、上記同様に、ウェルドラインの発生そのものを
防止する。 特開昭58−42438号公報では、射出成形後の成
形品の表面にシルクスクリーン印刷で着色インキを印刷
し、成形品に出来たウェルドラインを隠蔽してしまう。 特公平4−52766号公報では、射出成形の雌雄両
型間に透明な熱可塑性樹脂フィルムを挿入し、該樹脂フ
ィルムの間に樹脂を射出する。その結果、該樹脂フィル
ムは射出樹脂に溶着し、得られる成形品は、成形品表面
を該樹脂フィルムが被覆したものとなる。この方法は、
樹脂フィルムをキャビティ面と射出樹脂間に介在させ、
金属よりも熱伝導性が悪い樹脂フィルムの断熱効果によ
り、上記同様にウェルドライン発生原因となる溶融樹
脂の急冷を和らげて、ウェルドライン発生そのものを防
止する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
上記各方法には次のような問題があった。 の雌雄金型に温度差をつける方法では、温度差があり
過ぎると、射出時に雌雄両金型間の膨張の差により雌雄
金型がかじり、型開きに支障を来すことがあるという問
題があった。また、金型温度が高くなると、冷却までの
時間も長くなり、成形のサイクルタイムが長くなると言
う問題もあった。なお、雌雄両型の温度を高めに設定す
ると、サイクルタイムがより長くなるので、ウェルドラ
インが発生しても問題とならない裏側面となる方の型温
度は、そのままとしておくことになる。 の樹脂型を用いる方法では、金属製の型に比べて機械
的強度、及び耐熱性が劣り、耐久性難点があり、大量生
産に向かないという問題があった。 の着色インキでウェルドラインを覆い隠す方法では、
成形品表面にインキ層を印刷する仕様のものしか適用で
きない。また、成形品の仕様を表面に印刷するものに変
更できたとしても、成形工程に加えて、新たに印刷工程
が増えてコストアップとなる。更に、ウェルドラインそ
のものは存在するので、ウェルドラインによる成形品機
械的強度低下の問題は解消できないという問題があっ
た。 の樹脂フィルム介在下で射出成形する方法では、上記
、及びにおける各問題点は解消するが、成形品表
面には印刷インキ層こそ無いが、樹脂フィルムは成形品
材料の一部として使われ、樹脂フィルムで被覆されてし
まうことに変わりなく、その為、成形品の表面物性が樹
脂フィルムの物性に依存してしまう。また、成形品表面
の光沢感も変わってしまう。更に、元々、樹脂フィルム
で表面被覆しない成形品については、本来不要な材料
(樹脂フィルム)を消費するという問題等もあった。し
かも、特に、コストダウンが要求される分野では、得ら
れた成形品の表面をそのまま用いることが望まれてお
り、上記〜のうち、の後印刷やのフィルム被覆
による方法は基本的に採用できなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで上記課題を解決す
る為に本発明の射出成形方法では、例えば、次の様な金
型を用いて射出成形する。すなわち、キャビティに面す
る型面であるキャビティ面のうち、成形品の少なくとも
表側となる面に対応するキャビティ面に、成形後は成形
品と離型し金型側に残る樹脂層が存在する射出成形金型
を用いる。樹脂層には、例えば、キャビティ面形状に成
形された樹脂フィルムを用いる。また、キャビティ面形
状に成形された樹脂フィルムは、樹脂層を存在させる金
型自身を用いて真空成形又は真空圧空成形された樹脂フ
ィルムを用いる。射出成形を繰り返して樹脂層が消耗
し、樹脂層の交換が必要ななったときは、該樹脂層を除
去してから、樹脂フィルムを真空成形するなりして、新
たな樹脂層をキャビテイ面に存在させることで、射出成
形金型の樹脂層のみを交換し、しかる後、射出成形を再
開し続行する。以上の様に樹脂層をキャビティ面に存在
させることで、樹脂層が断熱層として働き、ウェルドラ
イン発生原因である溶融樹脂の急冷を和らげ、ウェルド
ライン発生を防ぐ。更に、樹脂層の断熱効果を高め、ウ
ェルドライン発生の防止効果を、より高める為、該樹脂
層の熱伝導率κと厚みΔxとの比、κ/Δxが特定の範
囲となるように選定する。
【0006】以下、図面を参照しながら、本発明の、射
出成形方法及びその金型について詳述する。
【0007】先ず、図1は、キャビティ面に樹脂層が存
在する本発明の射出成形金型を用いて、射出成形する本
発明の射出成形方法を概念的に示す概念図であり、図1
(A)が型締め前、図1(B)が型締め時、図1(C)
が射出後、図1(D)が型開き後を示す。図2〜図6
は、(樹脂層存在前の)射出成形金型を用いて樹脂フィ
ルムを成形して樹脂層をキャビティ面に設けて本発明の
射出成形金型とした後、この射出成形金型で射出成形
し、樹脂層消耗時は再度樹脂フィルムを成形して樹脂層
を交換して、射出成形を繰り返すことができる工程を概
念的に説明する説明図である。図2は樹脂フィルムを型
内に供給している状態を示し、図3は樹脂フィルムを加
熱軟化させている状態、図4は樹脂フィルムを射出成形
金型(雌型)を利用して真空圧空成形して樹脂層をキャ
ビティ面に存在させた状態、図5は型締め後に樹脂を射
出している状態、図6は冷却、型開き後に、樹脂層が積
層されていない成形品200が取り出される状態を示
す。そして、図7は、本発明による成形品の一例を示す
平面図。図8は図7の成形品用の射出成形金型のうち
で、キャビティ面に樹脂層を存在させた方の雌型を示す
説明図で、(A)は斜視図、(B)は(A)のA−A線
での断面図である。
【0008】図1は本発明の射出成形金型の一例とし
て、雌型1と雄型2とからなる金型を示すが、本発明の
射出成形金型は、キャビティ6(図1(B)参照)に面
する型面であるキャビティ面3a及び3bのうち、得ら
れる成形品Mの少なくとも表側となる面M1に対応する
キャビティ面3aについて、樹脂層4が存在し、該樹脂
層の下が通常の金属等からなる金型で、該樹脂層の表面
が実際上のキャビティ面を成す金型である。なお、樹脂
層4は金型(雌型1)のキャビティ基盤面5上に存在す
る。樹脂層を存在させるキャビティ面を、成形品の少な
くとも表側面に対応する面とするのは、成形品裏面側に
ウェルドラインが発生しても美観を損ねることは無いか
らである。もちろん、成形品の表も裏も両面とも最終製
品として露出する面となるのであれば、両面ともにウェ
ルドラインが発生しては美観を損ねるので、成形品裏面
側となる面に対応するキャビティ面にも樹脂層を存在さ
せることが好ましい。また、ウェルドラインによる機械
的強度低下の解消を図る目的でも同様である。例えば、
成形品表側のみウェルドライン発生を防ぐなら、一組の
金型において、成形品の表側面に対応する方が、凹部を
有する雌型(キャビティ型)の場合は、樹脂層を存在さ
せるべきキャビティ面はキャビティ型面である。逆に、
成形品表側面に対応する方が、凸部を有する雄型(コア
型)であれば、樹脂層を存在させるべきキャビティ面は
コア型面である。
【0009】更に図1により、本発明の射出成形方法を
説明すれば、先ず最初は図1(A)の如く、キャビティ
6に面する型面であるキャビティ面3a及び3bのう
ち、成形品Mの少なくとも表側となる面に対応するキャ
ビティ面3aに、成形後は成形品と離型し金型側に残る
樹脂層4を存在させた射出成形金型を用意する。図面の
例では、樹脂層4を存在させる方の金型は雌型(キャビ
ティ型)1であり、雄型(コア型)のキャビティ面3b
は、成形品裏側となるので樹脂層は存在させていない。
なお、ここでキャビティ面3bにも、樹脂層を存在させ
れば、成形品裏面側のウェルドライン発生も防げる。次
に、図1(B)の如く、雌型1及び雄型2を係合して型
締めをすると、雌型1及び雄型の各キャビティ面3a及
び3bによって、キャビティ6が形成される。次に、図
1(C)の如く、キャビティ6内に溶融した樹脂を射出
し、射出樹脂Pでキャビティを充填する(ゲートは図示
略)。次いで、図1(D)の如く、雌型1及び雄型2を
型開きすれば、樹脂層4は成形品Mと離型し、金型(雌
型1)側に残り、成形品Mが得られる。樹脂層は成形品
と離型し金型側に残るので、1回の射出成形で使い捨て
にする必要はない。引き続き射出成形することができ
る。樹脂層は消耗するまで何回でも使用する。樹脂層が
消耗したならば、樹脂層のみを後述する方法で新規な樹
脂層と取り替えて、後は通常の射出成形同様に成形を繰
り返せば良い。
【0010】本発明の射出成形金型は、樹脂層以外の部
分は、樹脂以外の材料であれば、従来の金属製の金型と
同様の各種金型用鋼材を用いる。例えば、S50C、S
55C、SCM3、SCM4等の鋼材である。従って、
全てが樹脂からなる樹脂型ではないので、その機械的強
度等は、ベースとなる金属により保持される。勿論、金
型の材料等としては、鋼材の他にも、純鉄、ステンレス
鋼等の鉄合金、銅、等の他の金属、或いはセラミックス
を使うことも可能である。更に必要であれば、多孔質の
金属或いはセラミックスを用いることも可能である。ま
た、樹脂層を設けるキャビティ基盤面は、成形品表面を
形作るキャビティ面そのものでは無いから、例えば、成
形品表面を平滑面とする場合でも、キャビティ基盤面は
平滑面仕上げとすることは必ずしも必要ではない。むし
ろ、後述の樹脂フィルムの真空成形又は真空圧空成形
を、樹脂層を存在させる射出成形金型自身を用いて行う
場合には、ある程度の粗面としておいた方が、空気の抜
けが良く、真空吸引をより完璧に行える利点がある。
【0011】樹脂層4は熱伝導を低下させる断熱層とし
て用いる。樹脂層はその下の面(キャビティ基盤面5)
と接着している事は必ずしも必要ではない。樹脂層は、
成形品と離型し、金型側に残る層であれば良い。樹脂層
4は、実質的なキャビティ面3aを成す層でもある。樹
脂は金属よりも熱伝導性が悪いので、この熱伝導性の悪
さを積極的に本発明では利用する。樹脂層の厚さは、樹
脂層が無い場合のウェルドラインの発生状況によっても
異なるが、樹脂層の熱伝導率をκ〔cal/s・cm・
℃〕、樹脂層の厚さをΔx〔μm〕としたときに、κ/
Δx<3.0×10-2となる様な厚さとすることが好ま
しい。κ/Δx≧3.0×10-2となると、充分な断熱
効果が得られない。(なお、比κ/ΔxにおけるκとΔ
xには前記の各単位による数値を用いる。)また、κ/
Δxがこの条件を満たしても厚さが余り薄いと、また耐
熱性がそれほどで無い時に溶融樹脂の熱で溶かされて流
されたり、破れや皺が発生し易く、この点からは、厚さ
Δxは、通常0.05mm以上が好ましい。また、厚み
は1.0mmもあれば充分であり、1.0mmを越える
と、ウェルドライン発生防止効果が飽和してくる上に、
樹脂層そのものを形成しにくくなる。この点からは、通
常1.0mm以下とする。また、後述する樹脂フィルム
を成形して樹脂層とする場合にも、成形しにくくなる。
【0012】樹脂層の条件設定を比κ/Δxで設定する
は、次の理由による。すなわち、樹脂層の材料に耐熱性
が充分にある材料を用いた場合、樹脂層の断熱効果は、
樹脂層自体の熱伝導率κが小さい程良く、一方、樹脂層
の厚さΔxは大きい程良い。従って、同じ厚さの樹脂層
であっても、熱伝導率κの大小によって断熱効果には違
いがでてくることになる。ここに、幾つかの樹脂の熱伝
導率κを表1示す。
【0013】
【表1】
【0014】表中のPVCはポリ塩化ビニル、PSはポ
リスチレン、ABSはABS樹脂(アクリロニトリル−
ブタジエン−スチレン共重合体)、ASはアクリロニト
リル−スチレン樹脂、PPはポリプロピレン、PMMA
はポリメタクリル酸メチル、PBTはポリブチレンテレ
フタレート、PETはポリエチレンテレフタレート、P
TEFはポリテトラフルオロエチレンを示す。表1の如
く、熱伝導率κは、樹脂により4倍以上の開きがあり、
これが樹脂層を同じ厚さにしても、断熱効果の違いとな
る。従って、断熱効果に反比例する要因である熱伝導率
κを分子に、正比例する要因である厚さΔxを分母とし
て、κ/Δxで評価すれば、これらを総合評価でき、樹
脂層の条件設定の基準となるパラメータを導出できるの
ではと考えた。そして、各種樹脂のフィルムで厚さを変
えて射出成形し、ウェルドライン発生状況から断熱効果
を評価した結果、κ/Δx<3.0×10-2となる範囲
で、樹脂層の樹脂及びその厚さを設定すれば、より的確
に条件設定でき、好ましい結果が得られることが判明し
た。以下の表2にκ/Δx<3.0×10-2を満たす厚
さΔxの範囲を示す。表2の如く、樹脂によって、厚さ
範囲の下限に開きがあるのが分かるであろう。表2に従
えば、樹脂層に列記した樹脂を用いる場合は、おおよそ
100μm以上のものを用いれば良いことを示してい
る。なお、勿論であるが、樹脂層に選定する樹脂材料
は、その耐熱性が射出されてくる射出樹脂温度に耐え得
る材料である必要がある。耐熱性の高い樹脂材料を用い
れば、射出樹脂温度の低い成形樹脂にも、射出樹脂温度
の高い成形樹脂にも共通に使えるが、耐熱性の高い樹脂
材料では、そのフィルムの成形性の点で、より高温で成
形する必要が生じる。この為、射出樹脂に合わせて、適
宜、樹脂層の樹脂材料は選定すれば良い。一般的には射
出樹脂の温度よりも、樹脂層4中の溶融温度或いは融点
を、より高くなる様に選定する。
【0015】
【表2】
【0016】ところで、キャビティ面3aを樹脂層4
(の面)で形成して、キャビティ面3aに樹脂層を存在
させる手法としては、樹脂を適当な溶媒等に溶解又は分
散した樹脂液を、樹脂層を形成すべき部分のキャビティ
基盤面5にスプレー、デッピング等の塗工手段で塗布し
たり、或いは、樹脂層を設けるキャビティ基盤面5の凹
凸形状が複雑でなければ樹脂フィルムをラミネートして
も良い。塗布による樹脂層はキャビティ基盤面に接着し
ているが、ラミネートによる樹脂層は、キャビティ基盤
面に接着しておらず単に接しているだけのこともある。
また、樹脂フィルムを用いない方法では、フィルム成形
性を考慮して樹脂材料を選定する必要がなく、PTEF
等の高耐熱性の樹脂材料も用いることができる。
【0017】なお、キャビティ面を樹脂層で形成すると
いう事は、樹脂層形成前のキャビティ基盤面を元のキャ
ビティ面とすれば、元のキャビティ面に樹脂層を設け
て、実質的なキャビティ面を樹脂層で形成することであ
る。従って、成形品の寸法精度の要求がそれほどでな
く、樹脂層の厚みが薄い場合には、樹脂層を存在させな
い元のキャビティ面(キャビティ基盤面)を用いて、成
形品を成形することも可能であり、同一金型を樹脂層を
用いる射出成形と樹脂層を用いない射出成形の両方の射
出成形金型の共用とすることができる。
【0018】また、樹脂フィルムのラミネートにおい
て、樹脂層を設けるキャビティ基盤面の凹凸形状が複雑
な場合には、該凹凸形状で樹脂フィルムを成形したもの
を樹脂層とすれば良い。樹脂フィルムを成形するには、
真空成形型を用いて、真空成形や真空圧空成形すれば良
い。真空成形型には、樹脂層を存在させる射出成形金型
のキャビティ基盤面と同一形状の専用の(別の)真空成
形型を用いても良いし、樹脂層を存在させる射出成形金
型(のキャビティ基盤面)そのものを用いても良い。樹
脂フィルムの真空成形型を射出成形金型と兼用する後者
の場合は、樹脂フィルムを成形後、キャビティ基盤面に
追従して該面に接した状態の樹脂フィルムをそのまま樹
脂層として用いることができる上、細かい凹凸の面にも
対応し易い点で好ましい。後者の場合、真空成形型兼用
の射出成形金型には、当然ながら、吸引孔や吸引溝とな
る通気孔を設けておく。吸引孔及び吸引溝となる通気孔
は、キャビティ基盤面の他にパーティング面等に設けて
も良い。多孔質体の金型を用いる場合は、多孔質の孔を
通して、樹脂フィルムを真空成形することもできる。
【0019】なお、射出成形金型を真空成形型と兼用す
る樹脂フィルムの成形方法は、射出成形同時絵付方法と
して知られている、例えば、特公昭50−19132号
公報、実公平1−10186号公報等に開示された方法
を利用すれば良い。樹脂フィルムの射出成形金型による
成形は、例えば、樹脂層を存在させる金型のパーティン
グ面に樹脂フィルムを固定後、ヒータ(熱盤)などを用
いて樹脂フィルムを加熱軟化させた後、金型に設けた通
気孔により、キャビティ基盤面と樹脂フィルム間に空気
を吸引して(また、真空圧空成形の場合には、更に樹脂
フィルムの外側面を圧空により押圧し)、樹脂フィルム
をキャビティ基盤面に沿って追従変形させて吸引密着さ
せる。熱盤としては、樹脂フィルムと密着して接触し、
熱伝導にて加熱する接触加熱方式のものでも、又樹脂フ
ィルムから離れた位置からの赤外線ヒータ等からの輻射
熱、又は誘電加熱にて加熱する非接触式のものでも、い
ずれでも良い。通気孔による真空引きは、樹脂フィルム
の成形目的では、樹脂フィルム成形が済めば開放しても
構わないが、その後の射出成形にて、型締め、射出成
形、型開きの全射出成形工程を通じて、真空引きを連続
して行っておくことで樹脂層固定を行い、樹脂フィルム
による樹脂層が、型開き時に成形品と共に金型から離れ
難くすることができる。この際、樹脂層交換の時は真空
引きを解除する。解除の際は、通気孔から逆に正圧の気
体を吹き出して、樹脂層の取り除きが楽にできる様にし
ても良い。
【0020】なお、樹脂フィルムの成形を別の成形型
で、真空成形法又は真空圧空成形法により行う場合は、
射出成形金型と同形状の成形型を用いて、樹脂フィルム
を上記した接触式の熱盤、非接触式の輻射熱や誘電加熱
にて加熱軟化させた上で、真空又は真空圧空成形にて該
成形型の内部形状に成形させた後、離型し、成形された
樹脂フィルムを、射出成形金型の所定箇所に装着させる
ことにより、キャビティ面に樹脂層を存在させることが
できる。なお、この様な場合にも、樹脂層を存在させる
射出成形金型には、樹脂層固定目的での吸引孔や吸引溝
となる通気孔を設けておいても良い。
【0021】なお、樹脂フィルムを射出成形金型或いは
別の成形型で成形して、樹脂層とする場合、キャビティ
面の凹凸形状によっては、絞りの深い所では充分に型形
状に追従しないこともあるが、最初の射出成形の射出圧
及び溶融樹脂の熱により、樹脂フィルムは完全にキャビ
ティ基盤面に押し当てられて成形される。従って、最初
の射出成形から、キャビティ基盤面の凹凸形状を反映し
た(樹脂層による)キャビティ面で、射出成形すること
ができる。もっとも、凹凸形状が大きかったり、樹脂フ
ィルムの成形性が悪ければ、この限りではない。
【0022】次に、樹脂層の耐久性であるが、従来から
射出成形型には耐久性の点から硬質の金属が多用される
が、実質的にキャビティ面となる樹脂層に樹脂フィルム
を用いて実際に行ってみると、同一の樹脂層で交換せず
に500ショット程度の射出成形は可能である。従っ
て、成形樹脂フィルムによる樹脂層が消耗したら、再
度、消耗した樹脂層を取り払い、新たな樹脂フィルムを
成形して、取り替えれば良い。この様に、樹脂層に樹脂
フィルムを用いる場合は、消耗の都度、取り替えること
で、大した手間もなく、大量連続生産が可能である。射
出成形型に直接塗工する方法では、塗布された樹脂液の
乾燥等に時間を要すが、樹脂フィルムの場合は前記乾燥
工程が不要で、連続生産に支障を来さない利点がある。
【0023】樹脂層に樹脂フィルムを用いる場合、該樹
脂フィルムとしては、射出樹脂と密着しない離型性、溶
融樹脂の熱によって融解して流れたり、破れたり、皺に
なったりしない耐熱性を備えたものであれば、その材料
は限定されない。また、真空成形する場合には、さらに
成形適性を備えたものであれば良い。また、樹脂フィル
ムに射出樹脂との離型性が不足する場合は、樹脂フィル
ムの射出樹脂が接する面を、シリコーン樹脂や、フッ素
樹脂でコーティングして離型層を形成しておけば良い。
また、樹脂フィルムのキャビティ基盤面と接する側の面
には、型開き時に樹脂フィルムが成形品に取られない様
に、射出成形時は金型側に接着して残り、樹脂層交換時
は軽い外力でキャビティ基盤面と容易に剥離する、エチ
レン酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合体等の熱可
塑性樹脂等による弱い接着力の接着剤層を設けておいて
も良い。樹脂フィルムの樹脂材料の具体例としては、例
えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、酢酸ビニ
ル−塩化ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビ
ニル重合体、ポリスチレン、アクリル−スチレン共重合
体、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイ
ロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エ
ラストマー等のポリオレフィン系樹脂、酢酸セルロー
ス、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エ
チレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリ
アリレート等のポリエステル系樹脂、ブタジエンゴム、
クロロプレンゴム、シリコーンゴム等のゴム系樹脂、ポ
リフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹
脂、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱
可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー、アクリ
ル系樹脂、ポリカーボネート等を用いることができる。
また、成形性の点からは、樹脂フィルムは、強延伸より
は弱延伸又は無延伸されたものが好ましい。また、樹脂
フィルムは単層でも良いし、或いは2層以上の同種又は
異種のフィルムの積層体であっても良い。また、樹脂フ
ィルムの厚さΔx、及び熱伝導率κは、前記の基準に従
って選定することが好ましい。
【0024】また、樹脂層の表面は、射出樹脂に接する
キャビティ面であるから、該キャビティ面に凹凸模様を
施すことで、成形品表面に凹凸模様を射出成形と同時に
賦形できる。凹凸模様を施すには、樹脂フィルムから樹
脂層を形成する場合にて、成形前の元になる樹脂フィル
ムに、ヘアライン加工、サンドブラスト加工、エンボス
加工、シリクスクリーン印刷等による凸層形成等によ
り、樹脂フィルム表面に凹凸又は凸状からなる凹凸模様
を形成しておけば良い。凹凸模様は、例えば、石目模
様、皮絞模様、木目模様、図形等の抽象模様、文字等で
ある。
【0025】なお、本発明の射出成形方法で用いること
が出来る射出樹脂は特に制限されず、従来公知の各種射
出成形用樹脂が使用できる。例えば、ポリ塩化ビニル、
ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、
ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重
合体)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエ
チレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を使用でき
る。
【0026】以下、本発明の射出成形方法の一例とし
て、(樹脂層存在前の)射出成形金型自身を用いて樹脂
フィルムを真空成形又は真空圧空成形で成形して、キャ
ビティ基盤面に樹脂層を設けて、樹脂層でキャビティ面
を形成した本発明の射出成形金型を用意した後、この射
出成形金型を用いて射出成形し、樹脂層が消耗時は、再
度樹脂フィルムを成形して樹脂層のみを交換して、射出
成形を繰り返すことができる射出成形方法を、図2〜図
6を参照しながら更に詳述する。
【0027】先ず、図2で、本射出成形方法で用いる射
出成形装置100を概説しておく。雌型(キャビティ
型)70の樹脂層を存在させるべき凹形状のキャビィテ
ィ基盤面60には、樹脂フィルムFの成形用の通気孔7
4が多数穿孔され、通気孔74は図示しない真空ポンプ
に連結し、樹脂フィルムの予備成形時は真空引きできる
様になっている。この雌型70は移動可能なダイプレー
トである可動盤76に固定される。可動盤76は背面の
油圧等による流体圧シリンダ90で図面左右方向に可動
するピストン(ラム)92に連結され、型締め時は、可
動盤76と摺動自在のタイバー20で案内されて図面右
方向に移動し、雌型70を雄型80に係合、合体させ
る。また、型開き時は図2の待機位置に雌型70を移動
させる。一方、雄型(コア型)80は凸形状のキャビテ
ィ面(コア型面)82を有し、コア型面82には射出樹
脂充填用のゲート84が開口している。またゲート84
の背面には射出ノズルが位置する。雄型80は固定的な
ダイプレートである固定盤86に固定される。シート搬
送用可動グリップ50は、図面上下方向に移動可能で、
図示しない供給ロール等から供給される連続帯状の樹脂
フィルムFを、雌型70と雄型80との間の型内に挿入
する。樹脂フィルムFは、表裏が有る場合は、射出樹脂
との離型性を有する離型面側を図面右側の射出樹脂側を
向く様にして雌雄型間の空間に最初は挿入される。雌型
70の下部に設置されたシート把持具51は、下方に突
出した先端部を残す様にシート搬送用可動グリップ50
で把持され型内に挿入された樹脂フィルムFの該先端部
を、把持し、樹脂フィルムFを固定する。シート把持具
51が樹脂フィルムFを固定後は、シート搬送用可動グ
リップ50は樹脂フィルムFの把持を解除し、図3の如
く両型の上方に退避する。シート把持具51は、下記の
シートクランプ40が樹脂フィルムFを雌型70のパー
ティング面に固定するまでの間及びシートクランプ40
が樹脂フィルムFを固定している間は、樹脂フィルムF
を固定する。樹脂フィルムによる樹脂層が消耗し、樹脂
層の交換が必要な時は、シート把持具51及びシートク
ランプ40は同時に樹脂フィルムFを開放する。
【0028】また、図面左右方向に移動可能な額縁状の
シートクランプ40は、雌型70のパーティング面に沿
って設けられており、シート搬送用可動グリップ50で
型内に挿入されて、シート把持具51に下側先端部を把
持された樹脂フィルムFを、キャビティ基盤面60の外
側四方で、雌型70のパーティング面に押圧し固定す
る。なお、このシートクランプ40は、雌型70のキャ
ビティ基盤面60で樹脂フィルムFを成形する際、及び
後の射出成形中の樹脂フィルム固定用である。また、雄
型80が有するパーティング面には、シートクランプ4
0に対応する位置に、凹形状のクランプ受溝88が型締
め時の逃所として設けてある。このシートクランプ40
は、雌型70内に摺動自在に挿入された駆動ロッドに連
結し、これによって雌型パーティング面に接近したり、
離れたりして、樹脂フィルムFの固定、開放を行い、樹
脂フィルムからなる樹脂層の交換と、固定を可能にして
いる。また、熱盤30が、図3に図示の如く、型開き時
は雌型70と雄型80間の移動し、型締め時は型外(図
面上方)に退避すべく、油圧シリンダのラム32により
図面上下方向に移動可能に、また型間に移動した後は、
図示しない油圧シリンダ等の可動手段により図面左右方
向に移動可能に設けられている。熱盤30は、樹脂フィ
ルムの成形の為に、シートクランプ40で雌型70のパ
ーティング面に押圧固定された樹脂フィルムFに間隙を
開けて接近して、樹脂フィルムFを輻射熱による非接触
加熱する。熱盤30と樹脂フィルムFと接近距離は、シ
ートクランプ40を間に挟むことによって一定に維持さ
れる。また、シートカッタ34が、熱盤30の上方に設
けられており、熱盤30が図面左方へ移動して樹脂フィ
ルムFを押圧する際に熱盤30と共に移動し、型内の所
定位置まで挿入された連続帯状の樹脂フィルムFを、樹
脂層形成に見合う大きさに切断し、シート供給側(上流
側)と分離させ、樹脂フィルム成形時、及び後の連続的
な射出成形時のシートに加わる熱や応力が、上流側へ波
及する事を防ぐ。なお、シートカッタ34としては刃物
又は加熱線条を用いる。
【0029】次に、上記装置による本発明の射出成形方
法の一例を詳述する。先ず、樹脂層を金型に備えるべ
く、樹脂フィルムFを図2に示す如く型内に供給する。
連続帯状の樹脂フィルムFを、その先端を上下動するシ
ート搬送用可動グリップ50で挟持して図面下側に搬送
して行き、型開きした雌型70と雄型80との間に出来
た型内の空間に挿入する。なお、樹脂フィルムFに表裏
がある場合は、その離型面側を雄型80のキャビティ面
82側に向けて挿入する。そして、所定位置まで樹脂フ
ィルムFを搬送したら、その下方の先端部をシート把持
具51に把持固定させた後、シート搬送用可動グリップ
50は樹脂フィルムFを開放し、図面上方の待機位置に
退避させた後、樹脂フィルムFを、シートクランプ40
によって、雌型70のパーティング面にキャビティ基盤
面60の外側周囲で押圧し固定する。
【0030】そして、図3に示す如く、樹脂フィルムF
を雌型70に固定したら、次いで、ラム32で上下動作
する熱盤30を、退避位置から雌雄型間に移動させ、次
に雌型方向に移動させて、樹脂フィルムFに近接させて
樹脂フィルムFを加熱して軟化させる。又、熱盤30を
樹脂フィルムFに接近させる際に、シートカッタ34で
連続帯状の樹脂フィルムFを樹脂層の形成一回分の大き
さに切断する。そして、シートカッタ34で切断した樹
脂フィルムFの送り出し側先端の切断端部を、シート搬
送用可動グリップ50で再び把持して樹脂フィルムFを
少し上流側へ引き上げて、次回の樹脂層形成時の待機位
置とする。
【0031】次に、図4に示す如く、雌型70に設けら
れた通気孔74から、キャビティ基盤面60と樹脂フィ
ルムF間に形成された空間内の空気を吸気することで、
樹脂フィルムFの表裏に空気圧差を与えて、雌型70の
キャビティ基盤面60の形状に追従密着させる様に、樹
脂フィルムFを成形して、キャビティ基盤面60上に樹
脂フィルムFからなる樹脂層4を形成して、樹脂層4に
よるキャビティ面62を形成する。なお、樹脂フィルム
成形は雌型70側の通気孔74から吸気して真空成形す
るか、熱盤30の熱盤面に通気孔を設け、熱盤30の圧
搾空気の吹出しを併用して真空圧空成形する。なお、こ
こまでは、熱盤30及びシートクランプ40は、雌型7
0のパーティング面を押圧したままである。
【0032】そして、図5に示す如く、熱盤30を図面
上方の型外に退避させる。なお、シートクランプ40
は、樹脂フィルムF交換時までは射出成形中、樹脂層4
となる樹脂フィルムFを押圧したままである。また、通
気孔74からも、以降の射出成形中も真空引きをしたま
まである。以上で、樹脂フィルムFの真空成形又は真空
圧空成形により、キャビティ面62に樹脂層4を存在さ
せた射出形成金型の用意が完了したことになる。
【0033】そして、以降は、樹脂フィルムFによる樹
脂層4が消耗し、交換が必要になるまでは、射出成形を
繰り返す。すなわち、流体圧シリンダ90によりピスト
ン(ラム)92を図面右方向に動かし、雌型70を雄型
80に係合、合体させて型締めを行う。そして、雌型7
0及び雄型80間に形成されるキャビティ(成形窩)内
に、ゲートから溶融樹脂PL を射出、充填して、射出成
形を行う。次いで、図6に示す如く、樹脂が冷却して固
化した後、雌型70を図面左方向に移動して雄型から離
して型開きすると、樹脂層4は金型(雌型70)側に残
り、樹脂層4と離型し、樹脂層4が表面に積層されてい
ない成形品200を型内から取出す。そして、この離型
・取出工程中は、シートクランプ40による樹脂フィル
ムFの押圧、及び通気孔74からの樹脂フィルムFの吸
引は続行したままであり、これによって、成形品200
に付着して樹脂層4がキャビティ基盤面60から剥脱す
る事を防止する。
【0034】そして、樹脂層が消耗したら、シートクラ
ンプ40、及びシート把持具51を開放し、また通気孔
74からは真空引きの代わりに圧空を吹き出して、樹脂
層4となっていた樹脂フィルムFをキャビティ基盤面6
0から浮かして、樹脂フィルムを取り払う。次いで、新
規な樹脂層を備えるべく、図2〜図3に示した工程を繰
り返して、樹脂フィルムを形成して新しい樹脂層をキャ
ビテぃ面に存在させる。そして、射出成形を繰り返す。
【0035】この様にして、本発明によれば、樹脂層の
交換が必要となっても、大した手間も要せず簡単に、樹
脂フィルムを形成して新たな樹脂層に取り替えながら、
ウェルドラインの無い成形品を製造することがてきる。
【0036】以上の如き本発明によって、ウェルドライ
ンが無い成形品が得られるが、本発明によって得られる
成形品は、各種用途に使用できる。例えば、建築物内装
材、建具、家具、什器、自動車、電車等の車両内装材、
厨房、浴槽、浴室等の住設機器、箱等の容器等として用
いられる。
【0037】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により更に
説明する。実施例及び比較例では図7に示す様な、ゲー
トG1、G2は左右2箇所にあり、中央部に窓部が開口
する洗濯機の蓋部材を成形品Mとして成形した。この蓋
は、コストダウンの為に成形後は表面塗装等は行わず、
成形品の表面がそのまま最終製品の表面となる。従っ
て、成形品の表側面にはウェルドラインWが発生する
と、製品不良となってしまうものである。
【0038】(実施例)金型として、成形品表側面を形
作る雌型1には、図8に示す如く、樹脂フィルムを真空
成形できる様に、そのキャビティ基盤面5に真空引き用
の吸引孔及び吸引溝となる通気孔7a及び7bを設け、
先ず、この型のパーティング面に厚さ150μmの塩化
ビニル樹脂フィルムFをシートクランプ(図示略)で固
定した後、板状の電熱ヒータを樹脂フィルム近傍に配置
して、樹脂フィルムを加熱軟化させ、雌型のキャビティ
基盤面と樹脂フィルム間の空気を真空吸引して、樹脂フ
ィルムをキャビティ基盤面形状に追従させて、キャビテ
ィ基盤面に樹脂層を設けて、樹脂層からなるキャビティ
面を有する雌型とした。一方、雄型の方は従来通りの通
常の金型を用意した。そして、金型の温度設定は、雌型
の温度を50℃、雄型の温度も50℃に設定して、射出
樹脂としてABS樹脂を用い、樹脂温度220℃で、射
出成形して成形品を作製した。なお、雌型では、樹脂フ
ィルムを射出成形金型のキャビティ基盤面に密接させる
為に、射出成形中も、樹脂フィルム成形時の真空吸引は
連続して行い、又、シートクランプによる押圧も継続し
て行った。
【0039】(比較例1)一般的な射出成形金型を用
い、金型温度は従来の設定条件として、成形品表側面を
形作る雌型の温度を50℃、雄型の温度も50℃に設定
して、射出樹脂及び樹脂温度は、実施例と同様にして射
出成形して成形品を作製した。そして、雌型のキャビテ
ィ面に樹脂層を全く設けなかった。
【0040】(比較例2)比較例1において、成形品表
側面を形作る方の型の雌型の温度は80℃に設定した、
他は比較例1と同様にして射出成形した。
【0041】(射出成形結果)上記実施例及び比較例で
得られた成形品について、ウェルドラインの発生状況を
評価した。比較例1は、600ショット成形した全成形
品にウェルドラインが発生して不良品となった。比較例
2はウェルドラインは発生しないが、射出成形金型が雄
型の方の膨張が大きいため、型の係合が悪くなり、連続
射出成形で型を破損する恐れがあり1ショットのみで成
形を中断した。一方、実施例では、600ショット成形
した全成形品にウェルドラインは発生せず、樹脂層とし
て設けた塩化ビニル樹脂製の樹脂フィルムと、射出樹脂
のABS樹脂とは、型開き時に離型し、樹脂フィルムは
金型側に残留し、樹脂フィルムと成形品とは型開きと同
時に離れた。ただ、パーティング面に有る樹脂フィルム
は、型締め時は雌雄型により押圧されてつぶされ、50
0ショット程度で傷みはじめてバリが発生し始め、又、
キャビティ面内でも表面の平滑性が低下して来た。樹脂
フィルムを剥がして除去し、再度新しい樹脂フィルムを
真空成形して新たな樹脂層を設けて、射出成形したとこ
ろ、最初と同様に何ら異常なくウェルドラインの無い成
形品を生産することができた。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、得られる成形品のウェ
ルドラインの発生を防ぐことができる。また、金型のキ
ャビティ面に存在させる樹脂層として、樹脂フィルムを
用いれば、容易に樹脂層を設けることができる。また、
樹脂層が消耗時には容易に交換することができる。そし
て、樹脂層の熱伝導率κ〔cal/s・cm・℃〕と、
厚さΔx〔μm〕との比κ/Δxを、κ/Δx<3.0
×10-2としたことにより、このウェルドライン防止効
果を、より確実なもととすることが出来た。また、樹脂
フィルムをキャビティ面形状とするのに、樹脂層を存在
させる射出成形金型自身を真空成形型として用いて真空
成形又は圧空成形すれば、容易に凹凸形状のキャビティ
面となる樹脂層を設ける事が出来、ひいては、凹凸形状
のある成形品でも、ウェルドラインが無いもの得られ
る。しかも、射出成形金型を真空成形型と兼用すると、
射出成形金型を真空形成型とする際の通気孔からの真空
引きを射出成形中も連続して行うことで、型開き時に樹
脂層である樹脂フィルムが金型側に残り成形品に取られ
ない様にし易い。また、樹脂層の交換時は、通気孔から
逆に圧空を送り、樹脂フィルムを金型から浮かして、樹
脂フィルムを取り払い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】キャビティ面に樹脂層が存在する射出成形金型
を用いた射出成形方法を説明する概念図。
【図2】本発明の射出成形方法の一形態として、キャビ
ティ面に存在させる樹脂層を、樹脂フィルムを射出成形
金型自身で成形することで設けて、射出成形する一連の
工程を説明する概念図:樹脂フィルムを型内に供給して
いる状態。
【図3】同:樹脂フィルムを加熱軟化させている状態。
【図4】同:樹脂フィルムを射出成形金型を利用して真
空成形して樹脂層をキャビティ面に存在させた状態。
【図5】同:型締め後に、溶融樹脂を射出している状
態。
【図6】同:冷却、型開き後に、成形品が取り出される
状態。
【図7】本発明による成形品の一例を示す平面図(A)
と斜視図(B)。
【図8】図2の成形品用の射出成形金型で、キャビティ
面に樹脂層を存在させた方の雌型の説明図で、(A)は
斜視図、(B)は(A)のA−A線での断面図。
【符号の説明】
1 雌型(キャビティ型) 2 雄型(コア型) 3a キャビティ面(キャビティ型面) 3b キャビティ面(コア型面) 4 樹脂層 5 キャビティ基盤面 6 キャビティ 7 吸引溝及び吸引孔となる通気孔 20 タイバー 30 熱盤 32 ラム 34 シートカッタ 40 シートクランプ 50 シート搬送用可動グリップ 60 キャビティ基盤面 62 キャビティ面(キャビティ型面) 70 雌型 74 通気孔 76 可動盤 80 雄型 82 コア型面(キャビティ面) 84 ゲート 86 固定盤 88 クランプ受溝 90 流体圧シリンダ 92 ピストン(ラム) 100 射出成形装置 200 成形品 F 樹脂フィルム G1、G2 ゲート位置 M 成形品 M1 成形品の表側面 P 射出樹脂 PL 溶融樹脂 PS 固化樹脂 W ウェルドライン

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キャビティに面する型面であるキャビテ
    ィ面のうち、成形品の少なくとも表側となる面に対応す
    るキャビティ面に、成形後は成形品と離型し金型側に残
    る樹脂層が存在する、射出成形金型。
  2. 【請求項2】 樹脂層が、キャビティ面形状に成形され
    た樹脂フィルムである、請求項1記載の射出成形金型。
  3. 【請求項3】 キャビティ面形状に成形された樹脂フィ
    ルムが、樹脂層を存在させる金型自身を用いて真空成形
    又は真空圧空成形された樹脂フィルムである、請求項2
    記載の射出成形金型。
  4. 【請求項4】 樹脂層の熱伝導率をκ〔cal/s・c
    m・℃〕、厚さをΔx〔μm〕としたとき、κ/Δx<
    3.0×10-2となる請求項1〜3のいずれか1項に記
    載の射出成形金型。
  5. 【請求項5】 射出成形金型のキャビティに加熱された
    溶融樹脂を射出して、冷却固化させて成形品を得る射出
    成形方法において、 (A) キャビティに面する型面であるキャビティ面のう
    ち、成形品の少なくとも表側となる面に対応するキャビ
    ティ面に、成形後は成形品と離型し金型側に残る樹脂層
    を存在させた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の射
    出成形金型を用意し、 (B) 次いで、上記射出成形金型を用いて射出成形を複数
    回以上繰り返して、上記樹脂層と離型し上記樹脂層が表
    面に積層されてい無い成形品を成形し、 (C) キャビティ面に存在する樹脂層の交換が必要となっ
    たときは、該樹脂層を除去してから、上記(A) の工程に
    より、キャビティ面に新たな樹脂層を存在させること
    で、射出成形金型の樹脂層のみを交換し、しかる後、上
    記(B) の工程により射出成形を行う、射出成形方法。
  6. 【請求項6】 上記(A) の工程で、キャビティ面に存在
    させる樹脂層として、該樹脂層を存在させる金型自身を
    用いて、樹脂フィルムを真空成形又は真空圧空成形する
    ことで、樹脂フィルムによる樹脂層をキャビティ面に存
    在させて、射出成形金型を用意する、請求項5記載の射
    出成形方法。
JP35579796A 1996-12-25 1996-12-25 射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法 Withdrawn JPH10180818A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35579796A JPH10180818A (ja) 1996-12-25 1996-12-25 射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35579796A JPH10180818A (ja) 1996-12-25 1996-12-25 射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10180818A true JPH10180818A (ja) 1998-07-07

Family

ID=18445802

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP35579796A Withdrawn JPH10180818A (ja) 1996-12-25 1996-12-25 射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10180818A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007032495A1 (ja) * 2005-09-16 2007-03-22 Tanazawa Hakkosha Co., Ltd. 樹脂成形用金型及び樹脂成形品
JP6994277B1 (ja) * 2021-02-15 2022-01-14 内藤プロセス株式会社 射出成形品の製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007032495A1 (ja) * 2005-09-16 2007-03-22 Tanazawa Hakkosha Co., Ltd. 樹脂成形用金型及び樹脂成形品
JP6994277B1 (ja) * 2021-02-15 2022-01-14 内藤プロセス株式会社 射出成形品の製造方法
JP2022123957A (ja) * 2021-02-15 2022-08-25 内藤プロセス株式会社 射出成形品の製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0782908B1 (en) Foil-decorating injection molding machine and foil-decorating injection molding method
JP2004508978A (ja) 成形品を調製するための方法および装置
JP5493391B2 (ja) 樹脂成形品の成形方法
JPH02283413A (ja) 射出成形金型及びこれを使用する絵付射出成形方法
JPH0852761A (ja) 成型同時絵付方法
JPS58132529A (ja) 射出同時成形工法
JPH10128921A (ja) 装飾シート、装飾樹脂成形品、及び装飾樹脂成形品の製造方法
JPH10180818A (ja) 射出成形金型及びそれを用いた射出成形方法
EP0549809A1 (en) Method of manufacturing laminated molding
JP2000233437A (ja) 装飾層を有するブロー成形品を製造するための方法とブロー成形金型
JPH07227877A (ja) 射出成形同時絵付方法及び装置
JP2000043094A (ja) 射出成形同時絵付用転写シート、及び射出成形同時絵付方法
TWI490128B (zh) 轉印加飾品之製造方法、轉印加飾裝置及轉印加飾品
JP3689513B2 (ja) 射出成形同時絵付装置及び方法
JP2000006199A (ja) 射出成形同時絵付け用金型装置
JPH10156870A (ja) 射出成形同時絵付装置及び方法
JP2013226681A (ja) インモールド成形装置
JPH1119967A (ja) 射出成形同時絵付け装置及びその方法
JP4043594B2 (ja) 射出成形同時絵付方法
JP3198326B2 (ja) 積層成形品の製造方法
JP5537885B2 (ja) 樹脂成形品の成形方法
JPH1170543A (ja) 射出成形同時絵付方法及び装置
JP2000108131A (ja) 加飾成形品の製造方法および加飾成形用金型
JPH10202666A (ja) 加飾成形品の製造方法
JPS5989114A (ja) 積層成形品の真空圧空成形方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20040302