JPH101732A - 耐食耐熱Ni基合金 - Google Patents

耐食耐熱Ni基合金

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JPH101732A
JPH101732A JP34757996A JP34757996A JPH101732A JP H101732 A JPH101732 A JP H101732A JP 34757996 A JP34757996 A JP 34757996A JP 34757996 A JP34757996 A JP 34757996A JP H101732 A JPH101732 A JP H101732A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ごみ焼却ボイラ排ガスなどの塩化物、硫酸
塩、酸化物などを含むダストが存在する雰囲気中で優れ
た耐高温腐食性を発揮する塑性加工性、溶接性、高温強
度特性、高温長時間使用時の組織安定性が良好な耐食耐
熱Ni基合金を提供すること。 【解決手段】 成分組成が重量%でC:0.01〜0.
3%、Si:2〜4.3%、P:0.03%以下、S:
0.03%以下、Cr:22〜31%、Fe:8〜30
%、Mn:0.1〜3%、Nb及び/又はTa:0.1
〜1%、Ti:0.03〜0.6%、Al:0.03〜
0.6%、B:0.001〜0.01%、不可避不純物
及び残部Niからなることを特徴とする耐食耐熱Ni基
合金。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はごみ焼却ボイラ排ガ
スなどの塩化物、硫酸塩、酸化物などを含むダストが存
在する雰囲気中で優れた耐高温腐食性を発揮する塑性加
工性、溶接性、高温強度特性、高温長時間使用時の組織
安定性が良好な耐食耐熱Ni基合金に関する。
【0002】
【従来の技術】都市ごみ、産業廃棄物等には多種多様な
物質が含まれており、中でもCl、Sは燃焼によりHC
l、SO2 を発生するとともに同時に含まれるNa、
K、Caなどのアルカリ、アルカリ土類金属あるいはP
b、Znなどの重金属類と反応して低融点の塩化物、硫
酸塩の混合塩を含むダストを生成する。このような腐食
性ガス、付着ダストの存在下では従来の低合金鋼、ステ
ンレス鋼、Ni基合金、Co基合金は大きな腐食速度を
示す。中でも上記燃焼炉の廃熱を回収し、発電を行うた
めのボイラではボイラ管の腐食損傷が激しく、省エネル
ギー、省資源、環境保全の面から強力に進められている
ボイラの高効率化に対して優れた耐食性を発揮するボイ
ラ管用高温耐食材料の出現が求められている。
【0003】例えば、既存のNi基合金の625合金
(Alloy625)はこのような環境下で比較的良好
な耐食性を示すことが知られているが、Al、Ti、N
bを多く含んでおり、これらによりNi3 Nbなどの金
属間化合物が析出するため、高温強度が高い反面、チュ
ーブ成形性、チューブ曲げ加工性があまり良くなく、ボ
イラへ使用する際に形状等が限定される。また、500
℃以上の高温で長時間使用する場合、金属間化合物の析
出が進行するため脆化傾向を示すなど、高温での組織安
定性が悪く、高温高圧下で使用する場合使用温度などに
制限を受ける。さらに、高濃度のMoを含有することも
チューブ成形性悪化、コスト増加を招く要因となってい
る。
【0004】一方、上記のような環境下で良好な耐食性
を発揮する合金として、Siを比較的多く含むCr−N
i−Fe系合金が提案されている(例えば特公平3−6
9977号公報、特開平4−83842号公報など)。
Siを多く含む合金では一般にNi3 Siなどの金属間
化合物が析出するため、チューブ成形性、加工性、溶接
性を悪化させるほか、高温長時間使用時に脆化、耐食性
劣化などが起こるためボイラ管としての利用は例が見ら
れず、成分的な工夫が必要であるが、前出の公報に記載
された技術でもこのようなシームレス管成形性、高温長
時間使用時の組織安定性は考慮されていない。
【0005】また、廃棄物燃焼環境下で使用される材料
の耐食性評価の精度を向上させるためには、実機に付着
する塩化物、硫酸塩、酸化物の混合したダスト雰囲気を
模擬した実験室条件下、あるいは実機中での評価が不可
欠となっているが、前記の公報ではこのような評価がな
されておらず、ボイラ管としての耐食性の判定が困難で
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術
の実情に鑑み、ごみ焼却ボイラ排ガスなどの塩化物、硫
酸塩、酸化物などを含むダストが存在する雰囲気中で優
れた耐高温腐食性を発揮する塑性加工性、溶接性、高温
強度特性、高温長時間使用時の組織安定性が良好な耐食
耐熱Ni基合金を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は(1)成分組成
が重量%でC:0.01〜0.3%、Si:2〜4.3
%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:
22〜31%、Fe:8〜30%、Mn:0.1〜3
%、Nb及び/又はTa:0.1〜1%、Ti:0.0
3〜0.6%、Al:0.03〜0.6%、B:0.0
01〜0.01%、不可避不純物及び残部Niからなる
ことを特徴とする耐食耐熱Ni基合金、(2)前記
(1)の耐食耐熱Ni基合金にN、Mo、W及びCoか
らなる群から選ばれる1種以上の元素を、重量%でN:
0.05〜0.5%、Mo:0.3〜5%、W:0.5
〜3%、Co:0.5〜3%となるような範囲で添加し
てなることを特徴とする耐食耐熱Ni基合金及び(3)
前記(1)又は(2)の耐食耐熱Ni基合金に希土類金
属、アルカリ土類金属及びZrからなる群から選ばれる
1種以上の元素を、重量%で希土類金属:0〜0.1
%、アルカリ土類金属:0〜0.1%、Zr:0〜0.
2%となるような範囲で添加してなることを特徴とする
耐食耐熱Ni基合金である。
【0008】本発明の耐食耐熱Ni基合金は、前記従来
技術の課題を解決するため、廃棄物燃焼環境などの高温
腐食性条件下で使用できる優れた高温耐食性を有する材
料を開発すべく鋭意研究を行った結果見出されたもので
ある。本発明合金の成分、組成は従来の材料と比較して
次のような特徴を有している。
【0009】ClやSを含む燃焼ガス及び溶融ダスト付
着環境下で起こる高温腐食は複数の反応が同時に起こる
複合腐食であるが、その反応としてはHCl、Cl2
るいは塩化物による塩化反応、SOx、H2 Sあるいは
硫酸塩による硫化反応、O2、H2 O等による酸化反応
及び溶融塩に対する溶解反応などがあり、これらが同時
に起こる条件下ではCr、Si、Fe及びNi量の最適
化により腐食反応を抑制する必要がある。
【0010】オーステナイト系ステンレス鋼やCr−N
i−Fe−Si合金ではCr、SiはそれぞれCr2
3 、SiO2 等の酸化物あるいはこれらの複合酸化物を
形成する保護皮膜形成元素であり、従来より酸化、硫化
に対しては有効なことが確認されており、通常それぞれ
Cr:15重量%以上、Si:2重量%以上が添加され
る。一方、塩化に対してはNiが有効であり、通常N
i:14重量%以上が添加される。Cr、Si、Feは
添加量によっては有害となる場合も見られているが,最
適添加量については未だ充分に解明されていなかった。
【0011】本発明者らは、複合腐食反応下で最も耐食
性が良好となる成分範囲を鋭意研究した結果、Cr、N
i、Fe、Siの成分添加量を前記範囲とすることによ
り、これら4元素の複合添加効果が発揮され、今までに
ない高耐食性が得られることがわかった。Siは添加量
が多い場合、Ni3 Si等の金属間化合物が析出するた
め高温における組織不安定、脆化、塑性加工困難等の不
具合を生じる。このような不具合を解消するため、本発
明合金ではCr量を22重量%以上と増加させ、Si量
を4.3重量%以下に規制することにより有害な金属間
化合物が多く析出することを防止し、オーステナイト単
相組織とすることにより上記特性の改善をはかった。
【0012】SiはNiと低融点共晶を形成し易いた
め、溶接時の耐高温割れ、熱間加工性等の面で有害な元
素であるが、少量のMn、Nb及び/又はTa、Moを
添加することでこれらの影響を防止した。
【0013】Nb及び/又はTa、MoはClに対する
耐食性に有効な元素であり、これらの元素の少量添加に
よりさらに耐食性の改善をはかることができる。なお、
P及びSについては溶接性、耐食性に有害な成分である
ため、できるだけ少量とするのが好ましい。
【0014】本発明の合金においては高温引張特性、ク
リープ特性を改善するためC、Nb及び/又はTa、T
i、Al、Bを少量添加して炭化物及び金属間化合物に
よる析出強化、固溶強化をはかっている。N、Zr等を
少量添加することによっても同様の効果が得られる。
【0015】本発明の合金は少量元素の添加、特にM
n、また、必要によりCoの少量添加により、特にシー
ムレス管加工性が向上するため、ボイラなどの厚肉、小
径チューブの製作が容易となった。また、希土類金属
(La、Ce、Yなど)、アルカリ土類金属(Ca、M
gなど)の微量添加は合金の清浄化に寄与し、上記各性
質の改善作用があり、特に酸化反応に対して有効と考え
られる。
【0016】本発明の合金の均一化熱処理は1100〜
1200℃で行い、また、鍛造、熱間加工は1000〜
1200℃の範囲で行うのが最適である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の合金はその主要構成元素
であるNi、Cr、Si、Feの複合添加効果及び少量
のMn、C、Nb及び/又はTa、Ti、Al、Bの添
加により、Cl、Sの存在下で優れた耐高温腐食性を
発揮、高温長時間使用下における多量の金属間化合物
の析出を防止し、金属組織の安定化を達成、鍛造性、
熱間加工性を改善してシームレスチューブ等の製造性を
向上、溶接割れを防止するなど、高温耐食材料、特に
ボイラ管としての優れた性能を発揮する。各元素の効果
及び合金元素組成を限定した理由については以下に記述
する。
【0018】(1)Cr、Si、Fe:これらの元素は
それぞれCr2 3 、SiO2 、Fe 3 4 (Fe2
3 )として燃焼ガス中にて緻密な酸化皮膜を形成する元
素であり、特にCr、SiはSOxあるいはH2 S又は
硫酸塩による高温腐食環境下で有効な耐食性付与元素と
して知られている。しかし,これら元素単独では強い腐
食性を有するHClあるいはCl2 及び塩化物を含む溶
融ダスト付着下では耐食性の発揮が十分ではない。
【0019】本発明の合金では基材であるNiにCrを
22〜31重量%、好ましくは23〜28重量%、Si
を2〜4.3重量%、好ましくは2.5〜4重量%、F
eを8〜30重量%、好ましくは9〜28重量%添加
し、複合添加効果により従来のNi基合金に比べ格段に
優れた耐食性を発揮させている。Crがこの成分範囲よ
り多く含まれた場合には耐食性が劣化し、また少ない場
合にはNi3 Si等の金属間化合物が多く出現し、熱間
加工性の低下、高温長時間使用による組織の不安定化、
材料の脆化が促進される。一方、Siは多い程耐食性が
向上するが加工性、溶接性の低下が起こるため上限を
4.3重量%とした。さらに、Feは本発明の合金成分
として不可欠な耐食性向上元素であり、前記範囲内にお
いて最もよい耐食性を示す。FeはClの多少にかかわ
らず良好な耐食性を維持するためには16重量%以下、
好ましくは9〜13重量%とすることが必要であるが、
Clが少なくSの多い条件下では30重量%まで増加さ
せても625合金に比較して良好な耐食性を保持してい
る。そのため、Feの上限値を30重量%とした。耐食
性の許容範囲内においてFeの含有量を増すことにより
塑性加工性が向上する効果がある。
【0020】(2)Ni:Niはオーステナイト単相組
織を得るために不可欠な元素であり、本合金のベース金
属であって、Clに対する耐食性向上に不可欠な元素で
ある。52重量%以上の量が必要である。なお、Niの
含有量は35重量%以上とし、Clの多少にかかわらず
良好な耐食性を維持するためには52重量%以上とする
のが好ましい。
【0021】(3)C:Cの含有量が多くなるとクロム
炭化物の粒界析出などにより耐食性を劣化させ、脆化を
促進する要因となるため上限を0.3重量%とした。一
方、微量の添加は高温強度、耐クリープ性の向上に有効
であり、下限を0.01重量%とした。好ましい範囲と
しては0.01〜0.05重量%である。
【0022】(4)P、S:不純物として含有される
P、Sは耐食性を劣化させるのみならず、熱間加工性、
溶接性などの加工性を悪くするため少ない方が好まし
く、上限を0.03重量%とした。
【0023】(5)Nb、Ta:Nb及びTaは炭化物
の安定化、Cの固定及び耐食性向上に有効であるが、時
効性、組織安定性の面から両者の合計で0.1〜1重量
%、好ましくは0.25〜0.35重量%とした。
【0024】(6)Mn:Mnは脱S効果などにより不
純物による害を除く他、少量の添加により耐食性、加工
性、溶接性を改善する効果を有しており、耐食性を劣化
させない範囲で0.1〜3重量%、好ましくは0.5〜
1.5重量%の少量を添加することとした。
【0025】(7)Al、Ti:Al及びTiは脱酸化
剤として一般に用いられるが、多量に添加すると金属間
化合物が生成し、組織安定性、塑性加工性が悪くなるた
め両者とも上限を0.6重量%とした。一方、Ni
3 (Al,Ti)等の析出による高温強度向上効果を付
与するためには0.03重量%以上の添加が必要であ
る。好ましい範囲としてはいずれも0.05〜0.4重
量%である。
【0026】(8)B:Bの少量の添加は結晶粒界の強
化に有効ではあるが、多量に添加すると金属間化合物析
出による脆化、加工性低下につながるため、上限を0.
01重量%とした。
【0027】また、本発明の耐食耐熱Ni基合金は前記
元素を基本構成成分とするものであるが、さらに目的に
応じて以下に示す元素を少量あるいは微量添加すること
により前記基本組成合金の性質を改善することができ
る。
【0028】(9)N:Nは窒化物の析出により高温強
度向上に有効である。また、オーステナイト相の安定
化、粒界腐食の防止に有効であるが、多量の添加により
材料の脆化、時効性を促進するため0.05〜0.5重
量%の範囲内で添加する。
【0029】(10)Mo:MoはCrの添加と合せて
耐食性向上、強度向上に寄与する元素であるが、多量に
添加すると塑性加工性が劣化するため上限を5重量%と
設定した。一方、溶接性、耐食性などの性質改善には
0.3重量%以上の添加が必要である。好ましい範囲と
しては0.5〜3重量%である。
【0030】(11)W:WはMoと同様な効果を有す
る元素であるが、多量の添加は機械加工性に有害なため
0.5〜3重量%の少量添加とするのが好ましい。
【0031】(12)Co:Coは耐食性を劣化させ
ず、塑性加工性を向上させる効果があり0.5〜3重量
%の範囲で添加することができる。
【0032】(13)希土類元素:La、Ce、Y、H
fなどの希土類元素は、酸化皮膜の密着性を向上させ、
耐硫化性、耐酸化性向上に有効であり、また材料の清浄
化にも有効であることから機械的性質を大きく変えない
0.1重量%以下の範囲で添加することができる。
【0033】(14)Zr、アルカリ土類金属:Zr及
びCa、Mgなどのアルカリ土類金属はNi基合金の結
晶粒界を強化し、耐クリープ性などを改善する必要があ
る場合にZrは0.2重量%以下、アルカリ土類金属は
0.1重量%以下の微量添加することができる。
【0034】本発明の耐食耐熱Ni基合金は都市ごみ、
産業廃棄物、汚泥などの不均一な廃棄物を燃焼させる焼
却炉及びこれに付属するボイラ、金属部品、火格子など
の高温耐食性を要求される部材に好適に適用できる。ま
た、同様なCl、Sを含む高温雰囲気下におかれる化石
燃料燃焼装置、化学プラント、一般機器の高温耐食材料
としても優れた耐食性、耐熱性、組織安定性を発揮す
る。この耐食耐熱Ni基合金の利用形態としてはシーム
レスチューブ、圧延板のほか、鋳物あるいはクラッド管
などが可能である。また、粉末を製作することにより溶
射、肉盛、粉末成形品などとして利用することもでき
る。
【0035】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明する。 〔実験例1〕本発明の耐食耐熱Ni基合金における主要
成分であるCr、Fe及びSi、任意添加成分であるM
oの成分範囲を定めるため、Ni基合金にそれぞれの成
分を添加し、その添加量の腐食減量との関係を調べた。
試料はそれぞれの組成の原料を使用し、後述の実施例1
と同様の方法により試験片を作製した。試験方法も後述
の実施例1と同様の方法により行った。
【0036】図3は4Si−10Fe−Ni基合金に対
するCrの添加効果を示すが、灰AにおいてはCr量が
22〜31重量%で腐食減量が最小値となる。一方、灰
BではCr量による大きな差は見られない。両方の灰に
ついて良好な耐食性を発揮する成分範囲として上記範囲
を定めた。
【0037】図4は20Cr−4Si−Ni基合金に対
するFeの添加効果を示す。灰A、BともFe10重量
%のところで腐食減量の最小値が認められており、既存
合金の625合金との差が小さい灰Bにおいても、Fe
量が8〜16重量%の範囲で良好な耐食性を示す。この
ようなFe10重量%での腐食減量は、図3の傾向か
ら、Cr量を25重量%とすることによりさらに低下
し、良好な耐食性となることは明らかである。一方、C
lの少ない灰AについてはFeが30重量%程度までは
625合金に比較して腐食減量が半分以下という良好な
耐食性を示している。ただし、Cr量が多い場合、Fe
量が30重量%を超えると550℃以上の高温で長時間
使用するとα相、σ相等の異相が析出しやすくなり、耐
食性劣化、脆化など性能低下が大きくなる。
【0038】図5は20Cr−Ni基合金に対するSi
の添加効果を示す。この場合は、A、B両灰ではSi量
による傾向は逆傾向を示しているが、灰Aの結果からS
iが2重量%以上においてインコネル625(625合
金)より耐食性向上が見られる。Si量の上限値4.3
重量%については、後述する高温での組織安定性により
決定した。
【0039】図6は20Cr−4Si−Ni基合金に対
するMoの添加効果を示す。Moは両灰ともに耐食性向
上に有効であるが、5重量%を超えて添加した場合には
σ相等の析出を促進するため、材質の脆化あるいは塑性
加工性が悪くなることから上限を5重量%とした。
【0040】後述の表2に示す合金は、上記のCr、F
e及びSiを添加したNi基合金にさらにC、Mn、N
b及び/又はTa、Al、Ti及びBを添加し、さらに
必要によりN、Mo、W、Co、希土類金属、アルカリ
土類金属及びZrからなる群から選ばれる1種以上が少
量添加されたものであり、これらの少量添加元素の効果
については前述のとおりである。
【0041】〔実施例1〕本発明の耐食耐熱Ni基合金
のごみ焼却炉燃焼ガス環境下における耐食性を評価する
ため、実験室模擬環境下で腐食試験を行った。試験は図
1に示すように磁性ルツボ1内に充填した灰(表1の灰
A又は灰B)2の中に試験片3を埋め込み、密閉容器中
で表1に示す組成の混合ガスが550℃で毎分600ミ
リリットル流れる環境下に100時間保持した後、腐食
減量及び粒界腐食深さを測定することによって行った。
試験片は表2に示す組成の原料を使用し、20kgの原
料を真空溶解してインゴットを作製し、1150℃で均
一化熱処理後、1000〜1200℃で熱間鍛造を行
い、最終的に1150℃で溶体化処理を行って得た厚さ
20mmの板状試験材から縦14mm、横14mm、厚
さ3mmの小試験片を加工して供試した。試験結果を表
3に示す。
【0042】表3の結果から、本発明合金である試験材
No.1〜8は熱間鍛造のクラック発生が見られず、鍛
造性が良好であるとともに実機から採取したClが2.
24重量%及び10.1重量%である灰A及びBの付着
条件において、例えば既存合金625(試験材No.1
2)に比べ腐食減量が非常に小さく、従来の比較合金に
比べ優れた耐食性を有していることがわかる。一方、試
験材No.9、10では灰Aの条件では既存合金より耐
食性が優れており、このようなClの少ない実機条件で
は高耐久性を有すると考えられる。また、この種の環境
においてしばしば発生が見られる粒界腐食等の局部腐食
の発生がほとんど認められない。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】〔実施例2〕本発明合金の高温長時間使用
時の組織安定性、金属間化合物の析出傾向を調査するた
め、表2に示した組成の試験片を使用して550℃で1
000時間の加熱試験を行い、硬さ変化を調べた。な
お、試験は実施例1に準じて作製した縦14mm、横1
4mm、厚さ3mmの試験片を用いて行った。試験結果
を表4に示すが、本発明合金の組成範囲では硬さ変化が
小さく(約HV170以下)、組織安定性が優れている
ことがわかる。一方、比較合金では約HV250以上と
金属間化合物の析出により大きな硬さ変化を示してい
る。
【0047】特に、Cr及びSiについては組織安定性
に重要であり、比較合金の試験材No.14〜16にお
けるCr:20.1重量%以下、Si:4.34重量%
以上では金属間化合物析出による硬さの増加が大きい。
そのためCrの下限を22重量%、Siの上限値を4.
3重量%とした。
【0048】
【表4】
【0049】〔実施例3〕実施例2で使用した試験材の
代表的なものについて溶接試験を行った。試験は図2に
示すように厚さ20mmの板状試験片上にTIGにて溶
かし込み溶接、625フィラーを使用したMAG溶接を
行い、表面及び断面における溶接欠陥、溶接割れの確認
を行った。その結果は表5に示すとおりであり、溶接ビ
ート及びHAZ部における有害な欠陥は見られず良好な
溶接性を有していることが確認された。
【0050】
【表5】
【0051】
【発明の効果】本発明のNi基合金は、ごみ焼却炉燃焼
ガス中などCl、Sを多く含む高温腐食環境下において
優れた耐高温腐食性を有し、かつ、高温長時間使用時の
組織安定性、溶接性、塑性加工性が優れた耐食耐熱Ni
基合金である。このNi基合金はシームレスチューブ、
クラッドチューブあるいは粉末などの任意の形態で安価
に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における腐食試験の状況を示す説明
図。
【図2】実施例3における溶接試験の状況を示す説明
図。
【図3】4Si−10Fe−Ni基合金のCr含有量と
腐食減量の関係を示す図。
【図4】20Cr−4Si−Ni基合金のFe含有量と
腐食減量の関係を示す図。
【図5】20Cr−Ni合金のSi含有量と腐食減量の
関係を示す図。
【図6】20Cr−4Si−Ni合金のMo含有量と腐
食減量の関係を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 保田 静生 神奈川県横浜市中区錦町12番地 三菱重工 業株式会社横浜製作所内 (72)発明者 中川 裕二 神奈川県横浜市中区錦町12番地 三菱重工 業株式会社横浜製作所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成分組成が重量%でC:0.01〜0.
    3%、Si:2〜4.3%、P:0.03%以下、S:
    0.03%以下、Cr:22〜31%、Fe:8〜30
    %、Mn:0.1〜3%、Nb及び/又はTa:0.1
    〜1%、Ti:0.03〜0.6%、Al:0.03〜
    0.6%、B:0.001〜0.01%、不可避不純物
    及び残部Niからなることを特徴とする耐食耐熱Ni基
    合金。
  2. 【請求項2】 請求項1の耐食耐熱Ni基合金にN、M
    o、W及びCoからなる群から選ばれる1種以上の元素
    を、重量%でN:0.05〜0.5%、Mo:0.3〜
    5%、W:0.5〜3%、Co:0.5〜3%となるよ
    うな範囲で添加してなることを特徴とする耐食耐熱Ni
    基合金。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2の耐食耐熱Ni基合金に
    希土類金属、アルカリ土類金属及びZrからなる群から
    選ばれる1種以上の元素を、重量%で希土類金属:0〜
    0.1%、アルカリ土類金属:0〜0.1%、Zr:0
    〜0.2%となるような範囲で添加してなることを特徴
    とする耐食耐熱Ni基合金。
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